2σ Guide

高次脳機能障害で認められる
後遺障害等級は何級か

交通事故後の記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害について、1級から9級を中心に、12級・14級との違い、必要資料、賠償への影響を整理します。

1・2級介護を要する等級
3・5・7・9級労務制限の中核
4,000万円自賠責1級上限
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高次脳機能障害で認められる 後遺障害等級は何級か

まず中核となる1級、2級、3級、5級、7級、9級と、周辺的に問題となる12級・14級を整理します。

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高次脳機能障害で認められる 後遺障害等級は何級か
まず中核となる1級、2級、3級、5級、7級、9級と、周辺的に問題となる12級・14級を整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 高次脳機能障害で認められる 後遺障害等級は何級か
  • まず中核となる1級、2級、3級、5級、7級、9級と、周辺的に問題となる12級・14級を整理します。

POINT 1

  • 高次脳機能障害で認められる後遺障害等級の全体像
  • まず中核となる1級、2級、3級、5級、7級、9級と、周辺的に問題となる12級・14級を整理します。
  • 1級・2級・3級・5級・7級・9級
  • 12級・14級
  • 画像・意識障害・生活変化

POINT 2

  • 高次脳機能障害で認められる後遺障害等級の結論
  • 自賠法施行令の条項、等級の核心、自賠責保険金額の上限を一覧で確認します。
  • 高次脳機能障害の本筋は1級・2級・3級・5級・7級・9級
  • 上記のうち、高次脳機能障害そのものの評価として本筋になるのは、1級、2級、3級、5級、7級、9級です。
  • あわせて、運動麻痺などの 合併 神経症状も考慮されます。

POINT 3

  • 高次脳機能障害と後遺障害等級の意味
  • 病名、症状固定、等級、損害賠償への影響を分けて理解します。
  • 2.1 高次脳機能障害とは何か
  • 2.2 後遺障害とは何か
  • 2.3 等級とは何か

POINT 4

  • 高次脳機能障害の後遺障害等級 ― 1級から9級の違い
  • 1. 脳外傷による高次脳機能障害が疑われる:画像、意識障害、症状経過、生活変化を確認
  • 2. 常時または随時の介護が必要か:安全管理、服薬、外出、火気、衛生、行動面を見る
  • 3. 介護必要性が中心:常時介護は1級、随時介護は2級が問題になります
  • 4. 介護までは不要でも労務に服せるか:持続性、正確性、対人調整、安全性、配慮の限界を見る
  • 5. 労務制限が中心:3級、5級、7級、9級、または周辺的に12級・14級を検討します

POINT 5

  • 高次脳機能障害の後遺障害等級で見られる資料
  • 画像、意識障害、神経心理学的検査、日常生活状況報告を組み合わせて説明します。
  • 4.1 画像資料: CT、MRI、頭部画像の意味
  • 4.2 受傷直後の意識障害: 救急記録、搬送記録、GCS
  • 4.3 神経心理学的検査: 何が分かるのか

POINT 6

  • 高次脳機能障害の後遺障害等級で争われる因果関係
  • 事故による脳外傷か、別疾患との区別、画像所見が乏しい場合の補強を整理します。
  • 5.1 事故による脳外傷か
  • 5.2 事故前からの症状や別疾患との区別
  • 5.3 画像がない、または軽症頭部外傷の場合

POINT 7

  • 高次脳機能障害の後遺障害等級を左右する評価軸
  • 介護必要性、労働能力、社会生活能力、症状の一貫性を見ます。
  • 6.1 介護必要性
  • 6.2 労働能力
  • 6.3 社会生活能力

POINT 8

  • 高次脳機能障害の後遺障害等級を支える専門職と証拠
  • 事故、医療、保険、法律、福祉、就労、事故解析が重なって評価されます。
  • 交通事故による高次脳機能障害は、単独の専門分野だけでは評価できません。
  • 現場、医療、保険、法律、福祉、就労、事故解析が重なります。

まとめ

  • 高次脳機能障害で認められる 後遺障害等級は何級か
  • 高次脳機能障害で認められる後遺障害等級の全体像:まず中核となる1級、2級、3級、5級、7級、9級と、周辺的に問題となる12級・14級を整理します。
  • 高次脳機能障害で認められる後遺障害等級の結論:自賠法施行令の条項、等級の核心、自賠責保険金額の上限を一覧で確認します。
  • 高次脳機能障害と後遺障害等級の意味:病名、症状固定、等級、損害賠償への影響を分けて理解します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

高次脳機能障害で認められる後遺障害等級の全体像

まず中核となる1級、2級、3級、5級、7級、9級と、周辺的に問題となる12級・14級を整理します。

交通事故で頭部を受傷し、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害、人格変化などが残った場合、それが自賠責保険実務上の「脳外傷による高次脳機能障害」と評価されることがあります。この場合に中心となる後遺障害等級は、別表第一第1級1号、別表第一第2級1号、別表第二第3級3号、別表第二第5級2号、別表第二第7級4号、別表第二第9級10号です。つまり、実務上の中核的な答えは「1級、2級、3級、5級、7級、9級」です。

ただし、すべての頭部外傷後の物忘れや集中困難が、直ちに高次脳機能障害として1級から9級に評価されるわけではありません。医学的には脳の器質的病変、受傷当初の意識障害、画像資料、神経心理学的検査、症状経過、事故前後の日常生活や就労就学の変化などを総合して判断します。症状が軽い場合や、高次脳機能障害としての立証が十分ではない場合には、別表第二第12級13号または第14級9号の「局部の神経症状」として評価される余地もありますが、これは高次脳機能障害の中核等級とは区別して理解すべきです。

このページでは、交通事故被害者が「自分や家族は何級になり得るのか」「弁護士に相談する価値がある段階か」「どの資料が重要か」を判断できるよう、医療、法律、保険、損害調査、福祉、事故解析の観点を統合して解説します。

次の3つの整理は、等級を見る入口を示したものです。高次脳機能障害では、重い介護必要性だけでなく、労務制限や周辺的な神経症状との違いも問題になるため、まずどの枠組みで検討されるかを読み取ることが重要です。

中核

1級・2級・3級・5級・7級・9級

脳外傷による高次脳機能障害として中心的に検討される等級です。介護必要性と労務制限の程度が大きな分岐になります。

周辺

12級・14級

頭痛、めまい、記憶力低下感などが残っても、高次脳機能障害としての重い生活制限や労働制限を十分に示せない場合に問題になります。

資料

画像・意識障害・生活変化

病名だけではなく、脳の器質的病変、受傷直後の状態、検査、症状経過、事故前後の生活や就労就学の変化を総合します。

Section 01

高次脳機能障害で認められる後遺障害等級の結論

自賠法施行令の条項、等級の核心、自賠責保険金額の上限を一覧で確認します。

「高次脳機能障害で認められる後遺障害等級は何級か」という問いに対する実務上の答えは、次の表に集約されます。

次の比較表は、この章で扱う項目を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを比べて、等級判断や資料整理で何を確認するかを読み取ることです。

区分等級自賠法施行令上の該当条項等級の核心自賠責保険金額の上限
介護を要する後遺障害別表第一第1級第1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの4,000万円
介護を要する後遺障害別表第一第2級第2級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの3,000万円
介護を要しない後遺障害別表第二第3級第3級3号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの2,219万円
介護を要しない後遺障害別表第二第5級第5級2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの1,574万円
介護を要しない後遺障害別表第二第7級第7級4号神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの1,051万円
介護を要しない後遺障害別表第二第9級第9級10号神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの616万円
周辺的に問題となる等級別表第二第12級第12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの224万円
周辺的に問題となる等級別表第二第14級第14級9号局部に神経症状を残すもの75万円

上記のうち、高次脳機能障害そのものの評価として本筋になるのは、1級、2級、3級、5級、7級、9級です。12級と14級は、頭痛、めまい、記憶力低下感、集中困難などの訴えが残っていても、高次脳機能障害としての重い社会生活制限や労働制限まで認定されない場合の周辺的な評価として理解するのが安全です。

損害保険料率算出機構は、脳外傷による高次脳機能障害であると認定されれば、その症状に応じて自賠法施行令別表第一または別表第二の後遺障害等級に該当するものとして取り扱うと説明しています。あわせて、運動麻痺などの合併神経症状も考慮されます。

次の強調表示は、等級表を読むときの結論を短くまとめたものです。金額の上限だけで重さを判断するのではなく、介護、労務制限、神経症状のどこが中心になるかを読み取ることが重要です。

高次脳機能障害の本筋は1級・2級・3級・5級・7級・9級

12級・14級は局部の神経症状として周辺的に問題になる等級です。中核等級に当たるかは、症状名ではなく、生活・就労・介護への具体的な影響で検討されます。

Section 02

高次脳機能障害と後遺障害等級の意味

病名、症状固定、等級、損害賠償への影響を分けて理解します。

2.1 高次脳機能障害とは何か

高次脳機能障害とは、脳の損傷により、記憶、注意、計画、判断、感情調整、対人行動などに障害が生じ、その結果として日常生活や社会生活に制約が生じる状態です。国立障害者リハビリテーションセンターの高次脳機能障害情報・支援センターは、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの症状を示し、これらにより日常生活または社会生活に制約がある状態を高次脳機能障害として説明しています。

交通事故で問題になりやすいのは、頭部に強い外力が加わり、脳挫傷、急性硬膜下血腫、くも膜下出血、びまん性軸索損傷などの脳損傷が生じた後、外見上は回復しているように見えても、記憶、注意、感情、判断、社会的行動が事故前とは変わってしまうケースです。

具体的には、次のような変化が問題になります。

次の比較表は、この章で扱う項目を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを比べて、等級判断や資料整理で何を確認するかを読み取ることです。

症状群一般的な現れ方交通事故後の生活で問題になる場面
記憶障害新しいことを覚えられない、同じ質問を繰り返す、約束を忘れる服薬管理、通院予定、仕事の指示、学校の課題管理
注意障害気が散る、ミスが多い、複数作業ができない、疲れやすい運転、調理、事務作業、接客、工場作業、学習
遂行機能障害段取りが立てられない、計画を実行できない、優先順位がつけられない家事、職場復帰、金銭管理、納期管理
社会的行動障害怒りやすい、衝動的、自己中心的、場に合わない発言をする家庭内関係、職場の対人関係、学校生活、近隣関係
病識低下本人が障害を自覚しない、過大に「できる」と言う受診拒否、示談判断、復職判断、事故再発リスク

ここで重要なのは、高次脳機能障害は「本人が困っている症状」だけでなく、「周囲から見た行動変化」「事故前後の生活機能の差」「社会参加の困難」を評価する障害であるという点です。本人に自覚が乏しいことも珍しくないため、家族、介護者、職場、学校、リハビリ職の観察記録が極めて重要になります。

2.2 後遺障害とは何か

交通事故実務でいう「後遺障害」は、単に症状が残っていることではありません。一般に、治療を継続してもこれ以上大きな改善が見込めない状態、すなわち症状固定後に、事故との相当因果関係があり、医学的に説明可能で、等級表上の障害に該当するものを指します。

日本損害保険協会は、交通事故によるけがの治療を続けても事故前の状態にまで回復せず、残存症状が自賠法の後遺障害等級表上の障害に該当する場合に、等級に応じた補償を受けられると説明しています。また、後遺障害は、別表第一の介護を要する第1級から第2級と、別表第二の第1級から第14級に分かれ、数字が小さいほど重い障害であるとされています。

高次脳機能障害では、症状固定時点での画像、神経心理学的検査、リハビリ経過、日常生活状況、就労就学状況を総合して、1級から9級、または周辺的に12級や14級に当たるかを判断します。

2.3 等級とは何か

後遺障害等級は、損害賠償額を直接そのまま決めるものではありません。しかし、後遺障害慰謝料、逸失利益、将来介護費、装具費、住宅改造費などの評価に強く影響します。自賠責保険には各等級の支払限度額がありますが、それは損害賠償総額の上限ではなく、自賠責保険から支払われる範囲の上限です。損害が自賠責限度額を超える場合には、任意保険、加害者本人、裁判上の請求などが問題になります。

したがって、高次脳機能障害で何級に認定されるかは、生活再建のための資金、介護体制、復職可能性、家族の負担、将来設計に直結します。

Section 03

高次脳機能障害の後遺障害等級 ― 1級から9級の違い

介護必要性と労務制限を軸に、各等級の専門的な意味を整理します。

次の判断の流れは、等級の分岐を介護必要性と労務制限の順番で整理したものです。上から順に、常時介護、随時介護、終身労務不能、軽易な労務への限定、相当な労務制限へと確認していくと、表の等級差を読み取りやすくなります。

介護必要性と労務制限から見る判断の流れ

脳外傷による高次脳機能障害が疑われる

画像、意識障害、症状経過、生活変化を確認

常時または随時の介護が必要か

安全管理、服薬、外出、火気、衛生、行動面を見る

介護必要性が中心

常時介護は1級、随時介護は2級が問題になります

介護までは不要でも労務に服せるか

持続性、正確性、対人調整、安全性、配慮の限界を見る

労務制限が中心

3級、5級、7級、9級、または周辺的に12級・14級を検討します

3.1 別表第一第1級1号: 常に介護を要する状態

第1級1号は、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」です。高次脳機能障害では、認知、行動、人格変化、運動麻痺、嚥下、歩行、失禁、危険行動などが重なり、日常生活全般に常時の見守りや介助が必要な場合に問題になります。

たとえば、以下のような状態が想定されます。

次の比較表は、この章で扱う項目を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを比べて、等級判断や資料整理で何を確認するかを読み取ることです。

評価領域第1級に近づく事情
安全管理火の不始末、徘徊、転倒、交通場面での危険判断不能などがあり、目を離せない
基本的日常生活食事、排泄、入浴、更衣、服薬、衛生管理に常時介助や監督が必要
行動面強い衝動性、暴力、著しい易怒性、著しい脱抑制があり、常時の管理を要する
認知面重度の記憶障害、見当識障害、判断力低下により単独生活が不可能
介護体制家族だけでは支え切れず、在宅介護、施設、訪問支援などが恒常的に必要

ここでいう「常に介護」は、単なる家族の心配ではなく、生命身体の安全、衛生、生活維持のために継続的な介助や監視を要する程度を指します。脳外傷後の高次脳機能障害では、身体麻痺が軽く見えても、危険認識、衝動制御、服薬管理、金銭管理、外出管理などが崩れて、実質的に常時介護が必要になることがあります。

3.2 別表第一第2級1号: 随時介護を要する状態

第2級1号は、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」です。第1級ほど常時ではないものの、日常生活の重要場面で介護、監督、声かけ、判断支援が必要で、単独生活や安全な社会生活が困難な場合に問題になります。

「随時介護」とは、24時間一瞬も目を離せないという状態ではないが、必要な場面で反復して介助や見守りが必要な状態と理解できます。たとえば、外出、服薬、金銭管理、火気使用、対人トラブル、予定管理、医療受診、食事管理などで、家族や支援者が介入しなければ生活が破綻する場合です。

高次脳機能障害では、本人が「できる」と言っていても、実際には財布をなくす、予定を忘れる、危険な外出をする、怒りを抑えられない、詐欺被害に遭いやすい、調理中に火を消し忘れるといった問題が出ることがあります。このような実生活上の危険が、介護必要性の評価で重要になります。

3.3 別表第二第3級3号: 終身労務に服することができない状態

第3級3号は、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」です。介護を要する第1級または第2級ほどではないとしても、労務に就くことが生涯にわたり困難と評価される重度の障害です。

高次脳機能障害では、身の回りのことは一定程度できても、仕事として求められる持続性、正確性、対人調整、指示理解、記憶、段取り、危険回避、責任遂行が著しく損なわれている場合があります。家庭内では「何とか過ごせる」が、職場では作業速度、ミス、対人トラブル、疲労、予定管理の障害により就労が成立しない、という評価が典型です。

第3級では、単に元の職種に戻れないというだけでは足りません。軽作業、保護的就労、短時間就労なども含め、労務に服する能力が実質的に失われたといえる程度が問題になります。

3.4 別表第二第5級2号: 特に軽易な労務以外には服せない状態

第5級2号は、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」です。第3級よりは労務能力が残っているものの、通常就労は極めて難しく、特別に単純で負荷の低い作業に限られる状態です。

たとえば、短時間、単純、反復的、対人負荷が少ない、危険判断を要しない、責任が限定される作業であれば可能だが、通常の会社勤務、顧客対応、複数作業、納期管理、機械操作、運転業務、管理職業務は困難というケースです。

第5級では、医学的検査だけでなく、復職試行、職場でのミス、配置転換、退職経緯、就労支援記録、作業療法士や職業評価の意見が重要になります。事故前に高い職務能力があった人ほど、事故後の変化を具体的に記録する必要があります。

3.5 別表第二第7級4号: 軽易な労務以外には服せない状態

第7級4号は、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」です。第5級よりは社会生活や就労の可能性が残りますが、通常の労務に広く従事できる状態ではありません。

高次脳機能障害では、以下のような事案で第7級が問題になります。

次の比較表は、この章で扱う項目を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを比べて、等級判断や資料整理で何を確認するかを読み取ることです。

領域具体例
作業速度事故前より処理速度が大きく低下し、同僚と同じ仕事量をこなせない
正確性指示漏れ、記録漏れ、計算ミス、確認不足が反復する
持続性半日程度で強い疲労や頭痛が出て、集中が続かない
対人面感情調整が難しく、職場内外でトラブルを起こす
段取り複数工程の作業、予定変更、優先順位の判断が難しい

第7級では、職場や学校で「配慮があれば何とかできる」のか、「配慮しても軽易な業務に限定される」のかが争点になります。単に成績や評価が落ちたというだけでなく、障害の内容と仕事上の制約を結びつけて示す必要があります。

3.6 別表第二第9級10号: 労務が相当な程度に制限される状態

第9級10号は、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」です。高次脳機能障害の等級認定で比較的多く争点になるのが、この第9級です。

第9級は、一般就労が全く不可能とまではいえないが、事故前と同じ水準の就労、職務範囲、作業効率、対人対応、責任遂行が難しく、相当な制限がある状態です。

具体的には、次のような事情が重視されます。

次の比較表は、この章で扱う項目を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを比べて、等級判断や資料整理で何を確認するかを読み取ることです。

評価項目第9級に関係しやすい事情
職務内容複雑な判断、同時処理、顧客対応、運転、危険作業が困難
勤務時間フルタイム勤務が難しい、休憩や短時間勤務が必要
作業品質ミスが増え、確認者や補助者が必要
対人関係怒りやすさ、言い間違い、空気を読めない言動が業務上支障となる
昇進や配置元の職位や職種から外れ、軽作業や補助業務に限定された

第9級は「働けているから非該当」と単純に判断されるものではありません。家族、職場、学校が強い配慮をしているため表面上は働けているだけ、というケースもあります。逆に、仕事の支障が主観的訴えにとどまり、客観的資料が乏しいと、9級まで届かないことがあります。

3.7 第12級13号と第14級9号: 周辺的な神経症状

第12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」、第14級9号は「局部に神経症状を残すもの」です。これらは自賠法施行令別表第二に定められた神経症状の等級です。

高次脳機能障害の文脈では、次のような場合に周辺的に問題になります。

  1. 頭痛、めまい、倦怠感、集中困難、記憶力低下感などが残るが、高次脳機能障害としての社会生活制限や労働制限を十分に示せない場合。
  2. 画像所見や受傷当初の意識障害、症状経過の資料が乏しく、脳外傷による高次脳機能障害としての因果関係が争われる場合。
  3. 神経心理学的検査では一定の低下があっても、事故前後の生活機能の変化が限定的である場合。
  4. 精神症状、痛み、睡眠障害、抑うつ、不安などが混在し、脳外傷性の高次脳機能障害としては評価しにくい場合。

ただし、12級や14級は「高次脳機能障害そのものの典型等級」と言い切るより、頭部外傷後の神経症状として周辺的に問題になる等級と表現する方が正確です。相談段階では、1級から9級の高次脳機能障害として立証できるのか、12級や14級の神経症状にとどまるのかを分けて検討する必要があります。

Section 04

高次脳機能障害の後遺障害等級で見られる資料

画像、意識障害、神経心理学的検査、日常生活状況報告を組み合わせて説明します。

4.1 画像資料: CT、MRI、頭部画像の意味

高次脳機能障害の認定では、頭部CT、MRIなどの画像資料が重要な判断要素になります。損保料率機構のリーフレットも、高次脳機能障害を認定するためには、CT、MRIなどの画像検査資料、とくに頭部画像が重要であり、事故直後から症状固定までの画像検査資料の提出を求めると説明しています。

画像で確認されやすい所見には、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、脳室拡大、脳萎縮、びまん性軸索損傷を示唆する所見などがあります。事故直後のCTでは出血が確認され、その後のMRIで脳損傷や萎縮が問題になることもあります。

もっとも、画像所見が明らかでないからといって、常に高次脳機能障害が否定されるわけではありません。国土交通省は2018年の見直しで、MTBI、軽度外傷性脳損傷の診断名が審査対象要件に明記され、画像所見が明らかでない事案では、より詳細な臨床所見の収集に努めることになったと公表しています。

したがって、画像は強力な資料ですが、画像だけで全てが決まるわけではありません。受傷当初の意識障害、症状経過、神経心理学的検査、生活変化の資料を合わせて提出することが重要です。

4.2 受傷直後の意識障害: 救急記録、搬送記録、GCS

脳外傷による高次脳機能障害では、事故直後に意識障害があったか、どの程度続いたかが重要です。意識消失、ぼんやりしていた、同じことを繰り返した、事故の記憶がない、救急隊到着時に混乱していた、病院でのGCSが低かった、外傷後健忘があった、という情報は、脳外傷の重症度や因果関係を評価するうえで重要です。

資料としては、救急隊活動記録、救急搬送記録、初診時カルテ、看護記録、画像検査指示、転院時診療情報提供書、入院サマリー、ICU記録などがあります。損保料率機構のリーフレットも、画像資料を得ることが難しい場合には、受傷当初の意識障害の有無や程度、症状経過等を把握するため、救急搬送時の記録や転院先への連絡文書などの提出を求めることがあると説明しています。

警察の実況見分調書や事故発生状況報告書だけでは、意識障害の医学的評価としては不十分なことがあります。医療記録と救急記録を早めに確保することが重要です。

4.3 神経心理学的検査: 何が分かるのか

神経心理学的検査は、記憶、注意、遂行機能、処理速度、知能、言語、視空間認知などを客観的に評価する検査群です。代表例として、WAIS、WMS、RBMT、TMT、BADS、CAT、CPT、FAB、MMSE、HDS-Rなどがあります。

ただし、検査結果は単独で等級を機械的に決めるものではありません。高次脳機能障害の等級は、検査の数値、日常生活状況、就労状況、介護状況、事故前の能力、教育歴、職歴、既往症、抑うつや疼痛の影響などを総合して判断します。

同じ検査点数でも、以下のように評価が変わることがあります。

次の比較表は、この章で扱う項目を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを比べて、等級判断や資料整理で何を確認するかを読み取ることです。

事情評価への影響
事故前は高度な専門職で、事故後に単純作業も困難労働能力低下が大きく評価されやすい
家族が予定管理、金銭管理、外出管理を全面的に代行実際の生活能力は検査以上に低い可能性がある
検査時だけ頑張れるが、日常では疲労で持続しない持続性や実生活上の障害を別途示す必要がある
抑うつ、不眠、疼痛が強く、認知検査に影響脳外傷性の障害と二次的精神症状の切り分けが必要

検査は「点数が悪いほど重い等級」という単純なものではなく、生活と仕事の障害を説明する医学的資料として位置付けるべきです。

4.4 日常生活状況報告: 家族の観察が重要な理由

高次脳機能障害では、本人が症状を自覚しないことがあります。また、診察室では短時間の受け答えができるため、医師にも重さが伝わりにくいことがあります。損保料率機構は、高次脳機能障害の認定では、事故前後で被害者の日常生活、就労就学、社会生活が具体的にどのように変化したかも重要であり、医師、家族、介護者に報告書を作成してもらうことがあると説明しています。

家族が作成する資料では、抽象的に「物忘れがひどい」と書くより、次のように具体化する方が有用です。

次の比較表は、この章で扱う項目を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを比べて、等級判断や資料整理で何を確認するかを読み取ることです。

抽象的な表現有用な具体化
物忘れがひどい同じ質問を1日に10回以上する。通院日を前日に伝えても当日忘れる。服薬を家族が管理している。
怒りっぽい以前はなかった暴言が週数回ある。店員や家族に突然怒鳴る。子どもが同席を怖がる。
仕事ができない復職後、伝票入力ミスが増え、確認者が必要になった。2カ月で配置転換となった。
一人で外出できない道に迷って帰れず家族が迎えに行った。信号確認を忘れて車道に出た。
お金の管理ができない同じ物を何度も買う。請求書を放置する。ATM操作を誤る。

等級認定では、家族の負担がどれほど大きいかだけでなく、その負担が医学的な高次脳機能障害に由来する生活制限として説明できるかが問われます。

Section 05

高次脳機能障害の後遺障害等級で争われる因果関係

事故による脳外傷か、別疾患との区別、画像所見が乏しい場合の補強を整理します。

5.1 事故による脳外傷か

高次脳機能障害の等級認定では、まず「事故による脳外傷があるか」が問題になります。頭部に外力が加わったこと、事故直後から脳外傷を疑う所見があったこと、画像や臨床経過に整合性があることが重要です。

事故態様としては、歩行者や自転車が自動車にはねられた、バイクで転倒した、車内で頭部を強打した、高速度衝突で強い加減速が加わった、車外放出があった、ヘルメットや車体に損傷がある、などが問題になります。

交通事故鑑定や車両損傷の視点では、車両の変形、フロントガラスの割れ、ヘルメットの損傷、エアバッグ展開、ドライブレコーダー、EDR、路面痕跡などが、頭部外力の大きさや方向を裏付けることがあります。医学資料だけでなく、事故態様の証拠が重要になる事案もあります。

5.2 事故前からの症状や別疾患との区別

高次脳機能障害に似た症状は、うつ病、不安障害、PTSD、睡眠障害、慢性疼痛、発達障害、認知症、薬剤影響、アルコール問題、内科疾患でも生じます。したがって、事故前からの症状や既往歴、事故後に新たに現れた変化、症状の時間的経過を整理する必要があります。

国立障害者リハビリテーションセンターの診断基準でも、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外し、先天性疾患、周産期脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外するとされています。

これは、事故前から発達障害や認知特性がある人が救済されないという意味ではありません。事故前の状態と事故後に新たに加わった障害を丁寧に分け、事故によってどの機能がどれだけ低下したかを示す必要があるという意味です。

5.3 画像がない、または軽症頭部外傷の場合

軽度外傷性脳損傷、MTBIでは、画像所見が明らかでない場合があります。国土交通省は2018年の見直しで、MTBIや軽度外傷性脳損傷の診断がなされている事案が審査対象から漏れないよう、審査対象要件に明記し、画像所見が明らかでない事案では詳細な臨床所見の収集に努めると公表しました。

ただし、これは「画像がなくても必ず高次脳機能障害として認定される」という意味ではありません。むしろ画像がない場合ほど、救急記録、意識障害、神経症状、検査経過、家族報告、就労就学変化、他疾患の除外が厳密に見られます。

Section 06

高次脳機能障害の後遺障害等級を左右する評価軸

介護必要性、労働能力、社会生活能力、症状の一貫性を見ます。

6.1 介護必要性

第1級と第2級では、介護必要性が中核です。ここでいう介護は、身体介助だけではありません。高次脳機能障害では、認知や行動の障害により、見守り、声かけ、危険回避、金銭管理、服薬管理、外出管理、対人トラブル防止が必要になることがあります。

重要なのは、家族が実際に何を、どれくらいの頻度で、なぜ行っているかです。介護日誌、訪問看護記録、リハビリ記録、ケアプラン、障害福祉サービス利用記録、写真、動画、家計や服薬の管理表が役立つことがあります。

6.2 労働能力

第3級、5級、7級、9級では、労働能力の制限が中核になります。元の職場に戻れないというだけでなく、どの範囲の労務なら可能か、どの程度の配慮が必要か、一般就労が可能か、保護的環境でなければ難しいかを検討します。

評価では、次の資料が重要です。

次の比較表は、この章で扱う項目を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを比べて、等級判断や資料整理で何を確認するかを読み取ることです。

資料意味
復職時の診断書、産業医意見書就労制限、勤務時間、危険業務制限が分かる
職場の上司や人事の意見書ミス、配置転換、退職理由、配慮内容が分かる
休職、退職、減収資料事故後の収入や職務能力の変化を示す
就労支援機関の記録作業能力、持続力、対人面の課題を示す
学校記録小児や学生の学習、対人、行動変化を示す

高次脳機能障害では、本人が「仕事はできる」と言うこともあります。しかし、実際には家族が毎朝起こし、職場が単純作業だけを与え、上司が全て確認し、同僚が対人トラブルを処理している場合があります。そのような支援の存在を見落とすと、等級が低く評価されるおそれがあります。

6.3 社会生活能力

高次脳機能障害の評価は、職業能力だけではありません。家庭生活、地域生活、学校生活、対人関係、金銭管理、交通利用、医療受診、意思決定能力も重要です。

特に、主婦、学生、高齢者、幼児、無職者、自営業者では、会社勤務の有無だけでは障害の重さを測れません。家事能力、育児能力、学業、対人関係、地域活動、生活管理能力を具体的に示す必要があります。

6.4 症状の一貫性と経時的変化

事故直後から現在までの症状がどのように変化したかも重要です。高次脳機能障害は急性期から始まり、多少軽減しながら慢性期へ続く臨床像として説明されます。損保料率機構も、脳外傷後の急性期に始まり、慢性期へ続く認知障害、行動障害、人格変化などを特徴的臨床像として説明しています。

事故後しばらくしてから初めて強く訴えられた症状は、事故との因果関係や他原因との関係が争われやすくなります。早期から医師に伝え、カルテに残しておくことが重要です。

Section 07

高次脳機能障害の後遺障害等級を支える専門職と証拠

事故、医療、保険、法律、福祉、就労、事故解析が重なって評価されます。

交通事故による高次脳機能障害は、単独の専門分野だけでは評価できません。現場、医療、保険、法律、福祉、就労、事故解析が重なります。

次の比較表は、この章で扱う項目を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを比べて、等級判断や資料整理で何を確認するかを読み取ることです。

専門職実務上の役割等級認定との関係
警察官、交通捜査担当事故態様、実況見分、衝突位置、信号、過失の記録頭部外力や事故の重大性、因果関係の前提になる
救急隊員、救急救命士意識状態、搬送時所見、受傷直後の状態記録意識障害、外傷後健忘、初期症状の重要資料になる
脳神経外科医、救急医脳損傷の診断、画像評価、急性期治療高次脳機能障害の医学的基盤を示す
リハビリテーション科医機能評価、症状固定、社会復帰計画後遺障害診断書や生活機能評価に関係する
言語聴覚士、作業療法士、公認心理師神経心理学的評価、生活訓練、認知訓練検査結果と実生活上の制約を結びつける
看護師、医療ソーシャルワーカー入院中の行動、退院支援、家族支援日常生活上の困難や介護状況を示す
保険会社担当者、損害調査担当請求資料の確認、損害調査資料不足や照会事項に関係する
弁護士資料収集、被害者請求、異議申立、示談交渉、訴訟等級、損害額、将来介護費、逸失利益の主張を整理する
社会保険労務士、福祉職障害年金、労災、福祉サービス、復職支援生活再建と公的制度利用に関係する
交通事故鑑定人、車両解析者衝突速度、衝撃方向、ドラレコ、EDR、車両損傷頭部外力の存在や事故態様の争点を補強する

このように、高次脳機能障害の後遺障害等級は、医学的診断名だけで決まるものではなく、事故、医療、生活、就労、介護、損害の全体像で判断されます。

Section 08

高次脳機能障害の後遺障害等級申請と必要資料

被害者請求、事前認定、基礎資料、後遺障害診断書の記載事項を整理します。

8.1 被害者請求と事前認定

自賠責保険に対する後遺障害申請には、大きく分けて、被害者が自ら相手方自賠責保険会社に請求する方法と、加害者側任意保険会社を通じて手続を進める方法があります。損保料率機構のリーフレットも、被害者からの請求と加害者からの請求の2つの方法があり、いずれの方法でも後遺障害等級の認定方法は同じと説明しています。

高次脳機能障害のように資料の選別と補強が重要な事案では、被害者請求を検討する価値があります。被害者請求では、どの資料を出すか、どのような生活状況報告を添えるか、神経心理学的検査や画像の不足をどう補うかを主体的に組み立てやすいためです。

次の時系列は、申請準備から結果後の検討までの順番を示します。高次脳機能障害では、後から不足資料を補うより、初回申請前に事故、医療、生活、就労就学の情報をそろえることが重要で、各段階で何を残すかを読み取ってください。

事故直後

救急記録と画像を確保する

意識障害、外傷後健忘、頭部画像、搬送時所見など、後から作れない資料を早めに確認します。

治療中

生活変化を医療記録へつなぐ

家族や職場、学校の観察を整理し、診察やリハビリで具体的に伝えます。

症状固定前後

後遺障害診断書を整える

画像、検査、日常生活、社会生活、就労就学への影響が具体的に記載されているか確認します。

結果後

不足資料を分析する

非該当や低い等級の場合は、同じ資料の再提出ではなく、不足点を補う資料を検討します。

8.2 基礎資料

損保料率機構のリーフレットでは、後遺障害による損害を請求する際の基礎資料として、保険金請求書、交通事故証明書、事故発生状況報告書、診断書、後遺障害診断書、頭部画像検査資料、診療報酬明細書、通院交通費明細書、印鑑証明書などが挙げられています。

高次脳機能障害では、これに加えて、次の資料を検討します。

次の比較表は、この章で扱う項目を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを比べて、等級判断や資料整理で何を確認するかを読み取ることです。

追加資料目的
救急隊活動記録受傷直後の意識障害、混乱、外傷状況を示す
初診時カルテ、入院記録事故直後の医学的所見を示す
画像CD、読影レポート脳損傷や経時的変化を示す
神経心理学的検査結果記憶、注意、遂行機能などを客観評価する
日常生活状況報告書事故前後の生活変化を示す
家族、介護者、職場、学校の報告書本人の自覚不足を補い、実生活上の障害を示す
リハビリ記録機能訓練の経過、残存障害を示す
休職、退職、配置転換、減収資料労働能力への影響を示す
介護サービス資料介護必要性を示す

8.3 後遺障害診断書に書かれるべき事項

後遺障害診断書は、単に「高次脳機能障害」と病名を書く書類ではありません。等級判断に必要な情報が具体的に記載されていることが重要です。

特に重要な事項は次のとおりです。

  1. 事故日、受傷機転、診断名。
  2. 脳画像所見、検査日、画像の経時的変化。
  3. 意識障害の有無、程度、持続時間。
  4. 記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害の内容。
  5. 神経心理学的検査結果。
  6. 日常生活動作、社会生活、就労就学への影響。
  7. 介護、見守り、家族支援の必要性。
  8. 症状固定日。
  9. 今後の改善見込み。

医師が全ての生活情報を把握しているとは限りません。家族や弁護士が、事故前後の変化、職場や学校での問題、介護状況を整理し、医師に正確に伝えることが重要です。

Section 09

高次脳機能障害の後遺障害等級で弁護士に相談する場面

資料収集、申請方法、異議申立、損害額の整理が必要になりやすい場面をまとめます。

高次脳機能障害は、交通事故後遺障害の中でも専門性が高い分野です。次のいずれかに当てはまる場合、早期に交通事故と高次脳機能障害に詳しい弁護士へ相談する価値があります。

次の比較表は、この章で扱う項目を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを比べて、等級判断や資料整理で何を確認するかを読み取ることです。

相談を急ぐべき場面理由
頭部外傷、脳出血、脳挫傷、びまん性軸索損傷などの診断がある高次脳機能障害の資料収集を早期に始める必要がある
事故後に性格、記憶、注意、段取り、感情が明らかに変化した本人の自覚が乏しく、家族資料が重要になる
保険会社から示談を急かされている症状固定、後遺障害申請、将来損害を見落とすおそれがある
後遺障害が非該当または低い等級だった異議申立や追加資料の検討が必要になる
MRIやCTに明確な所見がないが症状が重い臨床所見、救急記録、生活資料で補強する必要がある
小児、学生、高齢者、主婦、自営業者の事案労働能力だけでは障害を測りにくい
家族が介護で疲弊している将来介護費、福祉制度、生活再建を同時に考える必要がある

弁護士は医学的診断を行う職種ではありません。しかし、医学資料、事故資料、生活資料、損害資料を整理し、後遺障害申請、異議申立、示談交渉、訴訟でどのように主張立証するかを設計する役割を担います。

Section 10

高次脳機能障害の後遺障害等級が非該当・低等級になりやすい理由

資料不足、生活変化の記録不足、就労事実の強調、画像所見の乏しさ、示談後の発覚に注意します。

次の一覧は、非該当や低い等級につながりやすい5つのリスクをまとめたものです。どれも「症状がない」という意味ではなく、症状と事故、生活、就労就学を結びつける資料が不足すると評価が下がりやすいことを読み取る必要があります。

事故直後の記録不足

救急記録、初診記録、画像、意識障害の記録が乏しいと、事故との関係が争われやすくなります。

生活変化が医療資料にない

本人が診察で「大丈夫」と話すと、家族が見ている困りごとが診断書に反映されにくくなります。

就労事実だけが強調される

短時間勤務、配置転換、補助業務、上司の確認などの配慮を記録しないと、働けているように見えやすくなります。

画像所見への補強不足

画像所見が乏しい場合ほど、臨床所見、症状経過、家族報告、就労就学変化の整理が重要になります。

示談後の発覚

後から障害が明らかになる場合があるため、疑いがある段階では後遺障害申請前の示談に注意が必要です。

10.1 事故直後の資料が不足している

事故後しばらく経ってから「記憶力が落ちた」と訴えても、救急記録、初診記録、画像、意識障害の記録が乏しいと、事故との因果関係が争われやすくなります。事故直後の資料は後から作ることができないため、早めの収集が重要です。

10.2 家族の困りごとが医学資料に反映されていない

家族は深刻な変化を感じていても、診察時に本人が「大丈夫」と言い、医師のカルテには詳細が残っていないことがあります。この場合、後遺障害診断書も軽くなり、等級が低く評価されるおそれがあります。

10.3 就労している事実だけが強調される

第9級や第7級では、就労しているかどうかだけではなく、どのような配慮で就労しているかが重要です。短時間勤務、配置転換、補助業務、家族送迎、上司の確認、同僚のフォローがなければ働けない場合、その実態を資料化する必要があります。

10.4 画像所見がないことへの対策がない

画像所見が明らかでない事案では、臨床所見や経過資料の重要性が高まります。国土交通省の2018年の見直しは、MTBIや軽度外傷性脳損傷の診断名を審査対象要件に明記し、画像所見が明らかでない事案で詳細な臨床所見の収集に努める方向を示しました。

しかし、画像がない場合に資料を補わなければ、非該当や低い等級になるリスクは高いままです。

10.5 示談後に問題が明らかになる

高次脳機能障害では、本人も家族も当初は障害に気付かず、後から問題が表面化することがあります。損保料率機構のリーフレットも、被害者本人に症状の認識が全くないケースや、家族も当初は障害に気付かないケース、診察で見逃されやすいケースがあると注意喚起しています。

安易に示談すると、後から上位等級が認定されても追加請求が難しくなることがあります。リーフレットも、小児のように成長発達に伴って社会的適応障害が判明する場合があること、示談書には障害悪化や上位等級認定時に再度請求できる趣旨の条項を盛り込むことが重要と説明しています。

Section 11

小児の高次脳機能障害と後遺障害等級の見方

成長発達に伴って、就学、進級、集団生活、就職活動で障害が見えやすくなることがあります。

小児では、事故直後には目立たなかった問題が、就学、進級、受験、集団生活、部活動、就職活動の段階で明らかになることがあります。幼児期には求められる社会的機能が少ないため、記憶障害、遂行機能障害、社会的行動障害が見えにくいことがあります。

損保料率機構のリーフレットは、小児の場合、成長発達に伴う環境変化により社会的適応障害等が判明する場合があるため、社会的適応障害の判断が可能となる時期まで審査を行わないという考え方や、一旦審査を行い、成長発達によって障害が判明した場合に再審査請求を行う考え方があると説明しています。

小児事案では、次の資料が重要になります。

次の比較表は、この章で扱う項目を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを比べて、等級判断や資料整理で何を確認するかを読み取ることです。

資料見るべき点
母子手帳、発達記録事故前の発達状態
保育園、幼稚園、学校の記録事故前後の集団生活や学習変化
通知表、個別支援計画注意、行動、学習面の変化
教員、スクールカウンセラーの意見対人関係、衝動性、疲労、学習困難
家庭内記録宿題、忘れ物、感情調整、生活習慣の変化

小児では、早すぎる症状固定や示談が後の生活再建を困難にすることがあります。医師、学校、福祉、弁護士を含めた長期的視点が必要です。

Section 12

高次脳機能障害の後遺障害等級と賠償金の関係

自賠責保険金額は民事上の損害賠償総額の上限ではなく、慰謝料、逸失利益、将来介護費などが別途問題になります。

12.1 自賠責保険金額と損害賠償総額は違う

等級表には自賠責保険金額が定められています。しかし、これは自賠責保険から支払われる限度額であり、民事上の損害賠償総額と同じではありません。重度高次脳機能障害では、自賠責限度額を大きく超える損害が生じることがあります。

問題になりやすい損害項目は次のとおりです。

次の比較表は、この章で扱う項目を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを比べて、等級判断や資料整理で何を確認するかを読み取ることです。

損害項目内容
後遺障害慰謝料後遺障害そのものによる精神的苦痛
逸失利益労働能力低下による将来収入の減少
将来介護費家族介護、職業介護、施設費用
住宅改造費手すり、段差解消、見守り設備など
装具、福祉機器車椅子、歩行器、認知支援機器など
交通費、通院費医療、リハビリ、相談支援への移動費
休業損害症状固定までの収入減少
家族付添費家族の介護や通院付添の負担

12.2 逸失利益と等級

後遺障害等級は、逸失利益の計算にも影響します。日本損害保険協会は、後遺障害等級に認定されると、等級に応じた慰謝料や、年齢や職業などに応じて支払われる逸失利益に対する保険金の支払いを受けられると説明しています。

高次脳機能障害では、事故前の収入だけでなく、事故前の職務内容、将来の昇進可能性、資格、学歴、年齢、就労継続可能性、家族の支援、職場の配慮、症状の悪化可能性が問題になります。

主婦、学生、幼児、高齢者、自営業者では、通常の給与所得者とは異なる資料が必要になります。たとえば、学生なら学業成績、進学可能性、就労可能性、学校生活での制約が重要になります。主婦なら家事労働能力の低下を具体的に示す必要があります。

Section 13

高次脳機能障害の後遺障害等級に不服がある場合の手続

異議申立、紛争処理、訴訟では、不足資料を分析して追加することが重要になります。

後遺障害等級の結果に不服がある場合、保険会社に対して異議申立を行うことができます。損保料率機構も、調査結果や支払われた保険金または損害賠償額に不服がある場合には、異議申立として保険会社に再度請求できると説明しています。

異議申立では、同じ資料を再提出するだけでは結果が変わりにくいことがあります。何が不足していたのかを分析し、次のような資料を追加する必要があります。

  1. 新たな画像読影、専門医意見書。
  2. 神経心理学的検査の追加実施。
  3. 救急記録、転院記録、初診カルテの追加提出。
  4. 家族、職場、学校の詳細な生活状況報告。
  5. 介護記録、福祉サービス記録。
  6. 事故態様に関する資料、ドラレコ、車両損傷資料。
  7. 前医、後医、リハビリ職の意見整理。

自賠責保険・共済紛争処理機構は、自賠責保険または共済からの支払いに係る紛争の公正かつ適確な解決による被害者保護を目的とする機関です。

さらに、民事訴訟では、自賠責の等級認定が重要な参考資料になる一方、裁判所が独自に後遺障害の有無や程度を判断することもあります。訴訟では、医学意見書、尋問、介護実態、職場資料、将来損害の立証が一層重要になります。

Section 14

高次脳機能障害の後遺障害等級相談前チェック

事故態様、意識障害、画像、診断名、生活変化、就労就学、家族負担を整理します。

弁護士、医師、保険会社、相談機関に相談する前に、次の点を整理すると、相談の精度が上がります。

次の比較表は、この章で扱う項目を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを比べて、等級判断や資料整理で何を確認するかを読み取ることです。

チェック項目具体的に確認すること
事故態様どこに頭をぶつけたか、ヘルメットや車体損傷、ドラレコの有無
意識障害意識消失、記憶欠落、混乱、GCS、救急搬送記録
画像CT、MRI、画像CD、読影レポート、事故直後と現在の比較
診断名脳挫傷、外傷性くも膜下出血、硬膜下血腫、びまん性軸索損傷など
症状記憶、注意、遂行機能、行動、人格変化、疲労、頭痛
日常生活服薬、金銭、外出、家事、危険行動、対人トラブル
就労就学休職、退職、配置転換、成績低下、支援学級、職場配慮
家族負担見守り、介助、送迎、金銭管理、感情対応、介護時間
既往症事故前の精神疾患、発達特性、認知症、脳疾患、薬剤
手続症状固定日、後遺障害診断書、申請方法、時効、示談状況
Section 15

高次脳機能障害の後遺障害等級でよくある質問

画像所見、復職、本人の病識、12級・14級、示談後の問題、相談時期を一般情報として整理します。

Q1. MRIに異常がなければ高次脳機能障害は認められないのですか

一般的には、画像所見は重要な資料とされています。ただし、画像所見が明らかでない事案でも、受傷当初の意識障害、症状経過、神経心理学的検査、生活変化、他原因の除外などによって評価が変わる可能性があります。具体的な見通しは、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 仕事に復帰していると9級は認められないのですか

一般的には、仕事に復帰している事実だけで第9級10号が否定されるものではないとされています。ただし、短時間勤務、配置転換、補助業務、上司の確認、同僚の支援、家族の送迎や予定管理の有無によって判断が変わる可能性があります。具体的には、就労実態を示す資料を整理して専門家へ相談する必要があります。

Q3. 本人が障害を認めない場合はどう整理されますか

一般的には、高次脳機能障害では病識低下が問題になることがあるとされています。ただし、本人の自己申告だけでなく、家族、職場、学校、リハビリ職、介護者の観察記録によって実生活上の障害が把握される可能性があります。具体的な伝え方や資料化は、医師や弁護士等の専門家に相談する必要があります。

Q4. 12級や14級は高次脳機能障害の等級ですか

一般的には、高次脳機能障害そのものの中核的な等級は1級、2級、3級、5級、7級、9級と整理されます。ただし、頭部外傷後に認知症状や神経症状が残っても、重い生活制限や労働制限まで認定されない場合には、12級13号や14級9号の神経症状が問題になる可能性があります。個別の評価は資料により変わります。

Q5. 示談後に高次脳機能障害に気付いた場合はどうなりますか

一般的には、示談後の追加請求の可否は示談書の内容や後から判明した事情によって変わるとされています。高次脳機能障害では、後から問題が表面化する可能性があるため、症状固定や後遺障害申請前の示談は不利益につながることがあります。具体的には、示談書と医療資料を確認して弁護士等へ相談する必要があります。

Q6. 弁護士に相談する時期は後遺障害結果が出た後でよいですか

一般的には、高次脳機能障害では申請前の資料収集が重要とされています。ただし、事故態様、症状、画像、意識障害、生活変化、保険会社とのやり取りによって相談時期の重要性は変わります。具体的な対応方針は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家に相談する必要があります。

Section 16

高次脳機能障害で認められる後遺障害等級の整理

病名ではなく、医学的根拠、意識障害、画像、検査、生活状況、就労就学、介護必要性を総合して判断されます。

高次脳機能障害で認められる後遺障害等級は何級かという問いへの結論は、次のとおりです。

交通事故による脳外傷性の高次脳機能障害として中心的に認定対象となる等級は、別表第一第1級1号、別表第一第2級1号、別表第二第3級3号、別表第二第5級2号、別表第二第7級4号、別表第二第9級10号です。分かりやすく言えば、1級、2級、3級、5級、7級、9級です。

その分岐は、重い順に、常時介護を要するか、随時介護を要するか、終身労務に服せないか、特に軽易な労務以外に服せないか、軽易な労務以外に服せないか、労務が相当程度制限されるか、という評価軸で整理できます。

一方で、症状が軽い場合、画像や意識障害の資料が乏しい場合、事故との因果関係が明確でない場合、または高次脳機能障害としての社会生活制限を十分に示せない場合には、12級13号や14級9号の神経症状としての評価にとどまる可能性があります。

最終的な等級は、病名ではなく、脳外傷の医学的根拠、受傷直後の意識障害、画像、神経心理学的検査、症状経過、日常生活状況、就労就学状況、介護必要性、家族や職場の支援実態を総合して判断されます。高次脳機能障害は見逃されやすく、本人にも自覚が乏しいことがあるため、疑いがある段階で医師、リハビリ職、福祉職、弁護士などに早めに相談し、資料を体系的に残すことが重要です。

Reference

この記事の参考情報源

公的・中立的な資料

  • 国立障害者リハビリテーションセンター 高次脳機能障害情報・支援センター「高次脳機能障害を理解する」
  • 損害保険料率算出機構「脳外傷による高次脳機能障害の後遺障害認定」
  • 損害保険料率算出機構「脳外傷による高次脳機能障害の後遺障害認定について」リーフレット
  • 国土交通省「自賠責保険における高次脳機能障害の後遺障害認定に係る損害調査方法の充実が図られます」
  • 一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構「自賠責保険(共済)における後遺障害の等級と保険金額」
  • 一般社団法人 日本損害保険協会「後遺障害等級への認定で補償される賠償金についてわかりやすく解説」