2σ Guide

自動車運転死傷処罰法の内容と
適用される場面

危険運転致死傷、過失運転致死傷、飲酒・薬物・病気類型、発覚免脱、無免許加重を、条文構造と実務上の証拠から整理します。

8類型 危険運転致死傷
267,304件 令和6年の過失運転致傷
2026年4月17日 参議院本会議可決
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自動車運転死傷処罰法の内容と 適用される場面

危険運転致死傷、過失運転致死傷、飲酒・薬物・病気類型、発覚免脱、無免許加重を、条文構造と実務上の証拠から整理します。

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自動車運転死傷処罰法の内容と 適用される場面
危険運転致死傷、過失運転致死傷、飲酒・薬物・病気類型、発覚免脱、無免許加重を、条文構造と実務上の証拠から整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 自動車運転死傷処罰法の内容と 適用される場面
  • 危険運転致死傷、過失運転致死傷、飲酒・薬物・病気類型、発覚免脱、無免許加重を、条文構造と実務上の証拠から整理します。

POINT 1

  • 自動車運転死傷処罰法の内容と適用される場面の全体像
  • 交通事故の刑事責任を、危険性・悪質性・証拠関係から層状に整理する法律です。
  • 危険運転
  • 危険状態運転
  • 発覚免脱

POINT 2

  • 自動車運転死傷処罰法と道路交通法・民事責任・行政処分の違い
  • 同じ事故でも、刑事、民事、行政は目的と判断対象が異なります。
  • 正式名称は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律です。
  • 平成25年に成立し、平成26年5月20日に施行されました。
  • 本法の第1条でいう自動車には、道路交通法上の自動車と原動機付自転車が含まれます。

POINT 3

  • 自動車運転死傷処罰法の条文構造と刑の重さ
  • 第2条から第6条までを並べると、危険運転と通常の過失の間に複数の層があることが分かります。

POINT 4

  • 第2条の危険運転致死傷が適用される場面
  • 数値だけでは決まらない
  • 飲酒・薬物では呼気・血液の数値に加え、発話、視線、反応、事故態様、医療記録を総合します。
  • 速度超過だけでは足りない
  • 第2条2号では、その道路状況で進行制御が困難になるほどの高速度かが問題になります。

POINT 5

  • 第3条・第4条・第5条・第6条が適用される場面
  • 1. 飲酒・薬物の影響が疑われる状態で運転:事故前の摂取、服用、発話、ふらつき、運転態様を確認します。
  • 2. 過失により人を死傷させた:事故結果と運転行為の関係を見ます。
  • 3. 発覚免脱の検討:追加飲酒、検査回避、現場離脱の目的を証拠から確認します。
  • 4. 別罪・別手続の検討:救護義務違反や報告義務違反など道路交通法上の問題を分けて見ます。

POINT 6

  • 自動車運転死傷処罰法の典型事例と誤解されやすい境界
  • 報道の印象だけで条文を決めず、類型ごとの要件に沿って整理します。
  • 交通事故の刑事評価では、社会的に重大に見える事故でも、危険運転致死傷罪に自動的に当てはまるわけではありません。
  • 運転態様、主観、道路規制、証拠の有無を、条文ごとに確認する必要があります。

POINT 7

  • 自動車運転死傷処罰法で重要になる証拠と専門職
  • 1. 安全確保・通報・初期証拠:警察・救急への連絡、現場写真、相手方情報、目撃者、映像保存が後の条文判断の土台になります。
  • 2. 診断と検査:受傷内容、意識状態、血液・尿検査、薬物・アルコール、死亡事故の死因分析が重要になります。
  • 3. 現場再現と車両解析:実況見分、速度推定、制動距離、EDR、ドラレコ解析により、回避可能性や危険速度を検討します。
  • 4. 刑事・民事・行政を分ける:刑事処分、損害賠償、免許処分は別の手続として並行し、資料の使われ方も異なります。

POINT 8

  • 自動車運転死傷処罰法の実務上の注意点と2026年春の法案動向
  • 1. 改正法案が国会へ提出:危険運転致死傷罪の対象行為の明確化・追加、酒酔い運転等に関する罰則対象行為の明確化が示されました。
  • 2. 参議院法務委員会へ付託:参議院の議案審議情報では、同日に法務委員会へ付託されたことが確認できます。
  • 3. 参議院で可決し衆議院へ送付:法務委員会で可決され、翌日に参議院本会議で全会一致により可決されました。

まとめ

  • 自動車運転死傷処罰法の内容と 適用される場面
  • 自動車運転死傷処罰法の内容と適用される場面の全体像:交通事故の刑事責任を、危険性・悪質性・証拠関係から層状に整理する法律です。
  • 自動車運転死傷処罰法と道路交通法・民事責任・行政処分の違い:同じ事故でも、刑事、民事、行政は目的と判断対象が異なります。
  • 自動車運転死傷処罰法の条文構造と刑の重さ:第2条から第6条までを並べると、危険運転と通常の過失の間に複数の層があることが分かります。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

自動車運転死傷処罰法の内容と適用される場面の全体像

交通事故の刑事責任を、危険性・悪質性・証拠関係から層状に整理する法律です。

自動車運転死傷処罰法は、交通事故一般を処罰するだけの法律ではありません。自動車の運転で人を死傷させた事案のうち、危険性や悪質性が高い類型、アルコール・薬物・特定の病気が関わる類型、発覚免脱の類型、通常の過失類型、無免許による加重類型を整理した刑罰法規です。

次の一覧は、この法律の評価軸を5つに分けたものです。事故結果だけでなく、運転態様、主観、事故後行動、医療所見、現場資料が条文選択に関わるため重要で、各項目からどの事実が刑事評価に結び付くかを読み取れます。

Axis 1

危険運転

飲酒・薬物、高速度、あおり運転、赤信号の殊更無視、通行禁止道路進行など、危険性の高い8類型を見ます。

Axis 2

危険状態運転

運転開始時に正常運転困難までは至らなくても、走行中に危険状態へ陥るおそれがある場合を扱います。

Axis 3

発覚免脱

飲酒・薬物影響の発覚を免れる目的で、事故後に追加飲酒や現場離脱などを行う場面を見ます。

Axis 4

通常の過失

前方不注視、安全確認不足、一時停止違反など、多くの人身事故で中心になる第5条を扱います。

Axis 5

無免許加重

対象犯罪に無免許運転が重なると、道路交通法違反にとどまらず刑が加重されることがあります。

次の要点は、実務で特に意識すべき数字をまとめたものです。危険運転致死傷より過失運転致死傷の件数が圧倒的に多いこと、危険運転は8類型に限って厳密に検討されること、2026年春の法案は現行法と分けて読む必要があることを読み取れます。

条文選択は、事故の重さだけでなく事実の組み合わせで決まります

令和6年の検挙状況では、過失運転致死2,050件、過失運転致傷267,304件に対し、危険運転致死35件・致傷463件、第3条類型の致死6件・致傷292件とされています。危険運転か過失運転かは、速度、主観、道路規制、映像、飲酒・薬物、病歴、事故後行動などを総合して判断されます。

Section 01

自動車運転死傷処罰法と道路交通法・民事責任・行政処分の違い

同じ事故でも、刑事、民事、行政は目的と判断対象が異なります。

正式名称は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律です。平成25年に成立し、平成26年5月20日に施行されました。令和2年改正では、あおり運転に対応する類型が危険運転致死傷罪に追加され、令和7年6月1日からは刑罰体系の改正により拘禁刑の表記で読む必要があります。

次の比較表は、道路交通法、民事責任、行政処分と本法の違いを整理したものです。各列は、何を目的にし、どの手続で、何が主な争点になるかを示しており、一つの交通事故から複数の手続が同時に進むことを読み取れます。

分野主な目的典型的な争点
自動車運転死傷処罰法人を死傷させた運転行為の刑事評価危険運転、過失、発覚免脱、無免許加重
道路交通法道路交通上のルール違反の規制信号無視、速度超過、救護義務違反、妨害運転
民事責任被害者の損害回復過失割合、損害額、治療経過、後遺障害等級
行政処分運転免許の管理と交通安全免許停止、取消し、違反点数、仮停止
注意民事で過失割合が小さいことと刑事責任が軽いことは同じではありません。刑事では、運転上必要な注意義務違反、その違反と結果との因果関係、条文の構成要件が別に検討されます。

本法の第1条でいう自動車には、道路交通法上の自動車と原動機付自転車が含まれます。普通自動車、二輪車、原付は対象になり得ますが、通常の自転車はこの法律の自動車には含まれません。

Section 02

自動車運転死傷処罰法の条文構造と刑の重さ

第2条から第6条までを並べると、危険運転と通常の過失の間に複数の層があることが分かります。

現行法の骨格は、第1条の定義、第2条の危険運転致死傷、第3条のアルコール・薬物・病気類型、第4条の発覚免脱、第5条の過失運転致死傷、第6条の無免許加重で整理できます。

次の比較表は、各条文の内容と要点を対応させたものです。条文番号の列は検討順を、内容の列は罪名・定義を、要点の列は実務上どの事実を見るかを示しており、まず第2条か第5条かだけでなく中間類型を確認する必要があることを読み取れます。

条文内容要点
第1条定義自動車、無免許運転の定義
第2条危険運転致死傷8類型の危険運転
第3条アルコール・薬物・病気類型危険状態に陥るおそれのある状態で運転し、実際に正常運転困難に陥って死傷させた場合
第4条発覚免脱飲酒・薬物の発覚を免れる目的の隠蔽行為
第5条過失運転致死傷一般的な過失による死傷事故
第6条無免許運転による加重一定類型では無免許で刑が重くなる

次の比較表は、各条文の法定刑の概要を並べたものです。重さの違いは、危険性、悪質性、結果、無免許の有無によって変わるため、単に死亡事故か負傷事故かだけでなく、どの条文に当てはまるかを読み取ることが重要です。

条文法定刑の概要
第2条負傷は15年以下の拘禁刑、死亡は1年以上の有期拘禁刑
第3条負傷は12年以下の拘禁刑、死亡は15年以下の拘禁刑
第4条12年以下の拘禁刑
第5条7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。軽傷では刑免除の余地あり
第6条対象条文に応じて加重
Section 03

第2条の危険運転致死傷が適用される場面

危険運転は社会的関心が高い一方、8類型への該当性が厳密に問われます。

第2条は本法の中核です。現行法では危険運転致死傷の対象行為が8類型に整理され、令和2年改正であおり運転に対応する前方停止等や高速道路等で停止・徐行を強いる妨害行為が追加されました。

次の比較表は、第2条の8類型を、典型的な場面と実務上の争点で整理したものです。類型ごとに見る証拠が異なるため重要で、アルコール・薬物、高速度、妨害目的、赤信号の認識、通行禁止道路該当性など、どの事実が決め手になり得るかを読み取れます。

類型の要旨典型的な場面実務上の争点
1アルコール・薬物で正常運転困難ひどく酩酊したまま走行し衝突飲酒量、ふらつき、反応低下、毒性所見
2制御困難な高速度走行極端な高速度でカーブ進入し制御喪失速度、道路状況、回避可能性、車両挙動
3制御技能を有しない運転操縦技能がない者が運転単なる未熟さではなく技能欠如といえるか
4妨害目的の割込み・接近幅寄せ、急な割込み、著しい接近妨害目的、接近態様、危険速度
5妨害目的の前方停止等前に出て急停止するなどして進路妨害妨害目的、停止位置、接近方法
6高速道路等で停止・徐行を強いる妨害高速道路で前に出て止める、急減速させる高速道路・専用道路該当性、停止または徐行強制の有無
7赤信号を殊更に無視明確に赤信号を無視して交差点進入殊更性、危険速度、信号サイクル
8通行禁止道路の進行歩行者専用道路や逆走等を危険速度で進行通行禁止道路該当性、危険速度

次の注意点一覧は、危険運転で争われやすい境界をまとめたものです。条文に乗るかどうかは事故の印象だけでは決まらないため、数値、映像、道路条件、主観、車両挙動のどこを確認するかを読み取ることが大切です。

数値だけでは決まらない

飲酒・薬物では呼気・血液の数値に加え、発話、視線、反応、事故態様、医療記録を総合します。

速度超過だけでは足りない

第2条2号では、その道路状況で進行制御が困難になるほどの高速度かが問題になります。

妨害目的が重要

あおり運転類型では、単なる進路変更ミスではなく、通行妨害目的を示す事情が必要です。

見落としと殊更無視は別

赤信号では、明確な認識のもとで無視したか、危険速度だったかが争点になります。

Section 04

第3条・第4条・第5条・第6条が適用される場面

危険運転と通常の過失の間には、飲酒・薬物・病気、発覚免脱、無免許加重があります。

第3条は、運転開始時点では第2条ほど明白な正常運転困難状態ではなくても、アルコール・薬物・政令上の病気により、走行中に正常な運転が困難な状態へ陥るおそれがあるまま運転し、実際にその状態へ陥って死傷結果を発生させた場合を扱います。

次の比較表は、第3条から第6条までの適用場面をまとめたものです。第2条の危険運転だけを見ていると落としやすい中間類型を整理するために重要で、飲酒・薬物・病気、事故後の隠蔽目的、一般的過失、無免許がどのように評価へ影響するかを読み取れます。

条文適用場面主な確認資料
第3条アルコール・薬物・政令上の病気で、走行中に正常運転困難状態へ陥るおそれがあるまま運転した場合飲酒量、服薬、診療録、発作歴、主治医説明、事故直前の症状
第4条飲酒・薬物の影響の発覚を免れる目的で、追加飲酒や現場離脱などをした場合事故時刻、検査時刻、逃走経路、事故後飲酒、同乗者供述、位置情報
第5条運転上必要な注意を怠って人を死傷させた通常の過失事故実況見分、視認可能距離、制動距離、反応時間、信号、道路状況
第6条第2条の一部、第3条、第4条、第5条に無免許運転が重なった場合免許照会、停止処分歴、国際免許・外国免許の有効性

次の一覧は、第3条の病気類型で政令上問題となる疾病を整理したものです。病気があること自体で直ちに成立するわけではなく、運転時の危険状態と実際の発症・因果関係が必要であることを読み取るのが重要です。

1

統合失調症

安全運転に必要な認知・予測・判断・操作能力を欠くおそれのある症状を呈するものが対象です。

限定列挙
2

てんかん

意識障害または運動障害をもたらす発作が再発するおそれがあるものが対象です。睡眠中のみ再発するものは除かれます。

発作歴
3

再発性の失神・低血糖症

運転中に意識や操作能力へ影響するおそれがあったか、事故時に実際に影響したかが問題になります。

医療記録
4

そう鬱病・睡眠障害

法令上の文言に該当する症状と、運転に支障が生じるおそれ、事故結果との関係を確認します。

因果関係

次の判断の流れは、事故後の行動が第4条に結び付くかを考えるための整理です。上から下へ事実を確認し、単なる逃走や救護義務違反と、飲酒・薬物の発覚を免れる目的の行為を分けて読み取る必要があります。

発覚免脱を検討する順番

飲酒・薬物の影響が疑われる状態で運転

事故前の摂取、服用、発話、ふらつき、運転態様を確認します。

過失により人を死傷させた

事故結果と運転行為の関係を見ます。

目的あり
発覚免脱の検討

追加飲酒、検査回避、現場離脱の目的を証拠から確認します。

目的不明
別罪・別手続の検討

救護義務違反や報告義務違反など道路交通法上の問題を分けて見ます。

Section 05

自動車運転死傷処罰法の典型事例と誤解されやすい境界

報道の印象だけで条文を決めず、類型ごとの要件に沿って整理します。

交通事故の刑事評価では、社会的に重大に見える事故でも、危険運転致死傷罪に自動的に当てはまるわけではありません。運転態様、主観、道路規制、証拠の有無を、条文ごとに確認する必要があります。

次の比較表は、適用されやすい典型事例と主に問題となる条文を対応させたものです。場面の列は事故の特徴を、条文の列は検討入口を示しており、飲酒、速度、あおり運転、信号、通行禁止、通常過失、無免許で見るべき条文が変わることを読み取れます。

場面主に問題となる条文
泥酔状態で蛇行し、歩行者をはねた第2条1号
住宅街や山道で極端な高速度走行により制御を失った第2条2号
あおり運転で幅寄せ・割込みを繰り返して衝突させた第2条4号
相手車両の前で停止して進路を塞ぎ、事故に至らせた第2条5号
高速道路上で相手を停止・徐行に追い込み、死傷結果が生じた第2条6号
赤信号を明確に無視して交差点へ高速進入した第2条7号
通行禁止道路や逆方向規制区間へ危険速度で進入した第2条8号
飲酒の影響で運転困難状態へ陥るおそれがあるまま走行し事故を起こした第3条1項
てんかん等の発作リスクを抱えた状態で走行し、発作で事故を起こした第3条2項
飲酒事故後に発覚逃れ目的で現場を離れた第4条
脇見、一時停止無視、確認不足など通常の不注意事故第5条
上記のいずれかに無免許が重なった第6条

次の比較表は、誤解されやすい境界を正確な整理に置き換えたものです。左列はよくある短絡的な理解を、右列は条文要件に沿った見方を示しており、危険運転と過失運転、発覚免脱と救護義務違反、病気類型の限定性を読み取れます。

よくある誤解正確な整理
スピード違反で死亡事故なら全部危険運転致死傷罪第2条2号は制御困難な高速度が必要で、単なる速度違反では足りません。
逃げたら全部第4条第4条は発覚免脱目的が必要で、単純な救護義務違反と同一ではありません。
病気がある人の事故は全部第3条対象疾病は施行令で限定され、運転時の危険状態と実際の発症・因果関係が必要です。
信号無視事故なら全部第2条7号殊更に無視し、かつ危険速度が必要です。見落とし事故とは区別されます。
事故があれば必ず本法本法は人身結果を前提にします。物損のみなら通常は道路交通法や民事の問題です。
自転車事故にもそのまま適用される第1条上の自動車には通常の自転車は含まれません。
Section 06

自動車運転死傷処罰法で重要になる証拠と専門職

法律知識だけでなく、現場、医療、車両、法律実務の資料が条文選択を支えます。

自動車運転死傷処罰法の適用を正確に判断するには、法律知識だけでは足りません。速度、視認可能性、制動距離、飲酒・薬物、病気、受傷機転、事故後行動などを、複数の専門資料で確認します。

次の一覧は、実務で重要になる証拠を分野別に整理したものです。左から分野、主な資料、関与する専門職を示しており、どの条文でも客観資料と専門的評価が結び付いていることを読み取れます。

1

現場証拠

ブレーキ痕、擦過痕、破片散乱、停止位置、標識、信号、路面標示、道路幅員、見通し、照明、天候、防犯カメラ、ドラレコ、車載データを確認します。

現場
2

医療証拠

救急搬送記録、診断書、カルテ、血液・尿検査、意識状態、神経学的所見、死亡事故での死因や毒性分析が重要です。

医療
3

工学・車両証拠

速度推定、衝突角度、回避可能性、制動・操舵装置、EDR、ECU、ドラレコ解析、車両故障の有無を見ます。

車両
4

法律実務上の整理

条文構成、故意・過失、因果関係、違法収集証拠、共犯、被害者参加、示談、量刑を整理します。

手続

次の時系列は、事故直後から刑事・民事・行政の確認へ進む順番を表しています。上から下へ時間が進み、証拠は早い段階ほど失われやすいため、映像、医療記録、車両データ、手続の分岐を順に確認することを読み取れます。

事故直後

安全確保・通報・初期証拠

警察・救急への連絡、現場写真、相手方情報、目撃者、映像保存が後の条文判断の土台になります。

医療初期

診断と検査

受傷内容、意識状態、血液・尿検査、薬物・アルコール、死亡事故の死因分析が重要になります。

捜査・調査

現場再現と車両解析

実況見分、速度推定、制動距離、EDR、ドラレコ解析により、回避可能性や危険速度を検討します。

手続整理

刑事・民事・行政を分ける

刑事処分、損害賠償、免許処分は別の手続として並行し、資料の使われ方も異なります。

Section 07

自動車運転死傷処罰法の実務上の注意点と2026年春の法案動向

被害者側・加害者側の双方で、刑事、民事、行政を分けて考える必要があります。

被害者側では、診断書、画像所見、救急搬送記録、ドラレコ、防犯カメラ、通話記録、位置情報、事故直後の写真を早期に確保することが重要です。加害者側では、事故後に説明を変える、証拠を作る、飲酒・薬物・服薬・病歴を軽く扱う、車両データを保存しないといった行動が、刑事評価や民事・行政の手続に影響する可能性があります。

次の比較表は、被害者側と加害者側の注意点を並べたものです。立場ごとに必要な資料と避けるべき行動が異なるため、刑事だけでなく民事・行政・生活再建も同時に見通す必要があることを読み取れます。

立場押さえる点理由
被害者側医療記録を早期に確保する刑事でも民事でも、診断書、画像所見、救急搬送記録が中核資料になります。
被害者側映像と客観資料を失わないドラレコ、防犯カメラ、通話記録、位置情報は時間とともに失われます。
被害者側刑事、民事、行政を分ける刑事処罰があっても損害賠償や後遺障害認定が自動で決まるわけではありません。
加害者側事故後の説明変更や証拠作出を避ける発覚免脱や証拠隠滅方向の評価を招く危険があります。
加害者側飲酒・薬物・睡眠・服薬・病歴を軽視しない第2条、第3条、第4条の成否に直結します。
加害者側車両とデータを保存する故障主張、回避可能性、速度推定に必要となることがあります。

次の時系列は、2026年5月17日時点で公式議案経過から確認できる改正法案の動きを整理したものです。現行法解説と未成立・未公布の改正内容を混ぜると読者が誤認しやすいため、日付ごとの手続状況を分けて読み取ることが重要です。

2026年3月31日

改正法案が国会へ提出

危険運転致死傷罪の対象行為の明確化・追加、酒酔い運転等に関する罰則対象行為の明確化が示されました。

2026年4月13日

参議院法務委員会へ付託

参議院の議案審議情報では、同日に法務委員会へ付託されたことが確認できます。

2026年4月16日・17日

参議院で可決し衆議院へ送付

法務委員会で可決され、翌日に参議院本会議で全会一致により可決されました。公布年月日と法律番号は同ページ上で未記載でした。

確認このページでは現行法の基本構造と、2026年5月17日時点で公表・確認できる法案動向を分けて説明しています。衆議院の審議終了、公布年月日、法律番号が未記載の段階では、未公布・未施行の内容をすでに適用される現行法として扱わないことが重要です。
Section 08

自動車運転死傷処罰法でよくある質問

条文の一般的な整理です。個別事件の結論は証拠関係で変わります。

死亡事故なら必ず危険運転致死傷罪になりますか

一般的には、死亡という結果だけで危険運転致死傷罪になるわけではないとされています。第2条の各類型に該当する危険な運転行為、主観、速度、道路状況、飲酒・薬物、映像などが問題になります。ただし、事故態様、証拠関係、医療資料によって判断は変わります。具体的な見通しは、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

事故後に現場を離れたら第4条になりますか

一般的には、第4条は単純な逃走や救護義務違反ではなく、飲酒・薬物の影響の有無や程度の発覚を免れる目的が中心とされています。ただし、事故後の飲酒、検査回避、時間経過、同乗者供述、位置情報などで結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

病気がある人の事故はすべて第3条ですか

一般的には、病気があること自体で第3条が直ちに適用されるわけではないとされています。対象疾病は施行令で限定され、運転時の危険状態、発症の予見可能性、実際の発症、事故との因果関係が問題になります。ただし、診療録、服薬状況、主治医説明、事故直前の症状によって結論は変わります。具体的には専門家へ相談する必要があります。

Reference

この記事の参考情報源

法令・国会資料

  • e-Gov法令検索「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」
  • e-Gov法令検索「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律施行令」
  • 参議院「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律及び道路交通法の一部を改正する法律案」議案審議情報
  • 参議院「同法律案」本会議投票結果
  • 参議院法制局「懲役・禁錮の拘禁刑への一本化」
  • 参議院「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案」議案要旨

警察・統計・実務資料

  • 警察庁「危険!あおり運転はやめましょう」
  • 警察庁「警察白書 交通事故事件の検挙状況」
  • 広島県警察「自動車運転死傷処罰法の施行について」
  • 参議院常任委員会調査室・特別調査室「法務及び司法行政に関する主な課題」