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後遺障害慰謝料と逸失利益は
別々に請求できるのか

交通事故で後遺障害が残った場合、慰謝料と逸失利益は原則として別項目です。ただし、逸失利益は労働能力低下と将来収入減の立証が必要です。

2項目慰謝料と逸失利益
14級5%代表的な喪失率
6529万超公開判決の逸失利益例
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後遺障害慰謝料と逸失利益は 別々に請求できるのか

交通事故で後遺障害が残った場合、慰謝料と逸失利益は原則として別項目です。

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後遺障害慰謝料と逸失利益は 別々に請求できるのか
交通事故で後遺障害が残った場合、慰謝料と逸失利益は原則として別項目です。
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  • 後遺障害慰謝料と逸失利益は 別々に請求できるのか
  • 交通事故で後遺障害が残った場合、慰謝料と逸失利益は原則として別項目です。

POINT 1

  • 後遺障害慰謝料と逸失利益は原則として別々に請求できます
  • 苦痛を補う項目
  • 将来収入を補う項目
  • 自動認定ではない
  • 何を表すか、なぜ分けるのか、どこを読み取るかを意識すると、二重取りではない理由がつかみやすくなります。

POINT 2

  • 後遺障害慰謝料と逸失利益で迷いやすい問題点
  • 結論からいえば、原則として、後遺障害慰謝料と逸失利益は別個の損害項目として請求できます。
  • したがって、法的性質が異なる以上、同時に発生し得ます。
  • ただし、後遺障害等級が認定されたからといって、逸失利益まで自動的に認められるわけではありません。
  • 逆に、重い 高次脳機能障害 などでは、後遺障害慰謝料と高額の逸失利益を明確に区別して認定したものもあります。

POINT 3

  • 後遺障害慰謝料と逸失利益は制度上も別項目です
  • 交通事故の損害賠償では、被害者に生じた損害が複数の項目に分解されます。
  • 典型的には、治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益、将来介護費、装具費、文書費などです。
  • 読者が迷いやすいのは、次の二点です。
  • この疑問はもっともです。

POINT 4

  • 後遺障害慰謝料と逸失利益の定義を押さえる
  • 2-1. 法律構造から見た結論
  • 2-2. 裁判所実務から見た結論
  • したがって、交通事故によって生じた損害のうち、財産的損害と 非財産的損害は、理論上も実務上も区別して評価されます。
  • そのうえで、国土交通省の自賠責支払基準は、「後遺障害による損害は、逸失利益及び慰謝料等」とすると明示しています。

POINT 5

  • 後遺障害慰謝料と逸失利益が二重取りではない理由
  • 1. 後遺障害の存在:事故との因果関係、診断書、画像、診療録を確認します。
  • 2. 労働能力への影響:職務内容、減収、配置転換、作業制限を見ます。
  • 3. 逸失利益を算定:基礎収入、喪失率、期間、係数で計算します。
  • 4. 慰謝料側で評価:逸失利益が否定される可能性があります。

POINT 6

  • 逸失利益が認められるための要件
  • 4-1. 評価対象が違うからである
  • 4-2. ただし「同じ不利益を二度数える」ことはできない
  • 両者が同時に請求できる最大の理由は、埋める損害が違う からです。
  • たとえば、右手の 可動域制限が残った美容師を考えてみてください。

POINT 7

  • 後遺障害慰謝料が認められるための要件
  • 5-1. 後遺障害の存在と事故との因果関係
  • 5-2. 労働能力の低下
  • 5-3. 基礎収入
  • 5-4. 労働能力喪失率

POINT 8

  • 裁判例が示す後遺障害慰謝料と逸失利益の分かれ方
  • 後遺障害慰謝料は、逸失利益ほど収入資料には依存しません。
  • 主に問題になるのは、後遺障害の内容・程度・生活への影響・将来不安です。
  • また、国土交通省は、後遺障害による補償内容として、逸失利益と並んで 慰謝料等を明示しています。
  • ただし、訴訟や任意保険交渉では、自賠責の最低限補償とは別に、事案ごとの個別事情を踏まえた認定がされます。

まとめ

  • 後遺障害慰謝料と逸失利益は 別々に請求できるのか
  • 後遺障害慰謝料と逸失利益は原則として別々に請求できます:苦痛を補う項目
  • 後遺障害慰謝料と逸失利益で迷いやすい問題点:結論からいえば、原則として、後遺障害慰謝料と逸失利益は別個の損害項目として請求できます。
  • 後遺障害慰謝料と逸失利益は制度上も別項目です:交通事故の損害賠償では、被害者に生じた損害が複数の項目に分解されます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

後遺障害慰謝料と逸失利益は原則として別々に請求できます

次の3つの項目は、2つの損害項目の違いを最初に理解するための整理です。何を表すか、なぜ分けるのか、どこを読み取るかを意識すると、二重取りではない理由がつかみやすくなります。

慰謝料

苦痛を補う項目

後遺障害が残ったこと自体の精神的・肉体的苦痛を評価します。

逸失利益

将来収入を補う項目

労働能力低下により将来得られなくなる収入を評価します。

留保

自動認定ではない

逸失利益は、就労への影響や収入資料により別途検討されます。

Section 01

後遺障害慰謝料と逸失利益で迷いやすい問題点

交通事故の被害者から非常に多く寄せられる疑問の一つが、「後遺障害慰謝料と逸失利益は別々に請求できるのか」という点です。 結論からいえば、原則として、後遺障害慰謝料と逸失利益は別個の損害項目として請求できます。

もっとも、ここでいう「別々に請求できる」とは、単に名称が二つあるという意味ではありません。 後遺障害慰謝料は精神的・肉体的苦痛という非財産的損害を埋める項目であり、逸失利益は労働能力の低下により将来失われる収入という財産的損害を埋める項目です。したがって、法的性質が異なる以上、同時に発生し得ます。

ただし、後遺障害等級が認定されたからといって、逸失利益まで自動的に認められるわけではありません。 裁判例には、後遺障害自体は認めつつも、労働能力喪失までは認めず、逸失利益を否定し、その影響を後遺障害慰謝料で評価したものがあります。逆に、重い高次脳機能障害などでは、後遺障害慰謝料と高額の逸失利益を明確に区別して認定したものもあります。

この記事は、警察実務、医療、リハビリ、保険実務、損害算定、裁判実務、生活再建支援という交通事故実務の複数分野を横断しつつ、一般の読者にもわかるように用語を定義しながら、この問題を体系的に解説します。

重要この記事の最重要結論
「後遺障害慰謝料と逸失利益は別々に請求できるのか」という問いへの答えは、原則としてはいです。
ただし、逸失利益は別途の立証が必要であり、常に認められるわけではない、という留保が付きます。

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Section 02

後遺障害慰謝料と逸失利益は制度上も別項目です

交通事故の損害賠償では、被害者に生じた損害が複数の項目に分解されます。典型的には、治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益、将来介護費、装具費、文書費などです。 このうち、事故直後には主として治療費・休業損害・入通院慰謝料が問題になり、症状固定後には後遺障害慰謝料・逸失利益が前面に出ます。

読者が迷いやすいのは、次の二点です。

  1. 後遺障害慰謝料を受けるなら、後遺障害の不利益はもう全部そこに入っているのではないか。
  2. 逸失利益を請求すると、後遺障害慰謝料との二重取りになるのではないか。

この疑問はもっともです。 なぜなら、どちらも「後遺障害が残ったこと」を前提に生じるからです。 しかし、法的に見ると、両者は同じ事実から派生するが、評価対象が異なる損害です。ここを正確に理解することが、示談・訴訟・自賠責請求のすべてで決定的に重要になります。

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Section 03

後遺障害慰謝料と逸失利益の定義を押さえる

2-1. 法律構造から見た結論

民法709条は、不法行為によって生じた損害の賠償責任を定め、同710条は財産以外の損害、すなわち慰謝料の対象となる損害の賠償を認めています。 したがって、交通事故によって生じた損害のうち、財産的損害非財産的損害は、理論上も実務上も区別して評価されます。

また、自動車損害賠償保障法3条は、運行供用者に対し、他人の生命又は身体を害したことによって生じた損害の賠償責任を負わせています。 そのうえで、国土交通省の自賠責支払基準は、「後遺障害による損害は、逸失利益及び慰謝料等」とすると明示しています。

つまり、法令と公的支払基準のレベルで、後遺障害による損害はすでに

  • 逸失利益
  • 慰謝料等

に分けて把握されています。 この意味で、「後遺障害慰謝料と逸失利益は別々に請求できるのか」という問いに対し、制度の正面からの答えはできるです。

2-2. 裁判所実務から見た結論

裁判所が公開している交通事故用の訴状書式でも、損害項目として

  • 逸失利益(後遺障害が残ったため得られなくなった収入等)
  • 慰謝料
  • 負傷したことによる入通院慰謝料
  • 後遺障害が残ったことによる慰謝料

別欄で記載されています。

これは単なる書式の問題ではありません。 裁判所が交通事故訴訟を処理するにあたり、逸失利益と後遺障害慰謝料を別個の損害項目として審理することを示すものです。 実際、裁判所公開判決にも、後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料をそれぞれ独立に算定している例が見られます。

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Section 04

後遺障害慰謝料と逸失利益が二重取りではない理由

次の判断の流れは、逸失利益が認められるかを検討する順番を示します。上から下へ進み、分岐では資料が具体的かどうかを読み取ってください。

逸失利益を検討する順番

後遺障害の存在

事故との因果関係、診断書、画像、診療録を確認します。

労働能力への影響

職務内容、減収、配置転換、作業制限を見ます。

具体的
逸失利益を算定

基礎収入、喪失率、期間、係数で計算します。

弱い
慰謝料側で評価

逸失利益が否定される可能性があります。

次の表は、直前のテーマで扱う項目を比較して整理したものです。列ごとの違いを読むことで、金額や要件の判断に影響する点を確認できます。

項目法的性質何を埋める損害か典型的な立証資料
後遺障害慰謝料非財産的損害後遺障害が残ったことによる精神的・肉体的苦痛、生活上の不利益後遺障害診断書、診療録、画像、日常生活状況、家族の陳述等
逸失利益財産的損害労働能力低下により、将来得られなくなった収入収入資料、源泉徴収票、確定申告書、勤務先証明、後遺障害診断書、画像、職務内容資料等

3-1. 後遺障害とは何か

国土交通省は、後遺障害を、受傷した傷害が治ったときに身体に残された精神的又は肉体的な毀損状態で、傷害と後遺障害との間に相当因果関係が認められ、かつ、その存在が医学的に認められる症状と説明しています。

ここでいう「治った」とは、一般語の「完全に元どおりになった」という意味ではありません。 実務では、症状固定、すなわち「症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行ってもその医療効果が期待できなくなった時」を意味します。

3-2. 後遺障害慰謝料とは何か

後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ったことそのものによる苦痛を金銭評価するものです。 たとえば、慢性的な疼痛、不安、しびれ、可動域制限、感覚障害、外貌変化、失語、高次脳機能障害、視野障害、排尿障害などにより、人生の質が落ちることへの補償です。

3-3. 逸失利益とは何か

国土交通省は、逸失利益を、身体に残した障害による労働能力の減少で、将来発生するであろう収入減と説明しています。 要するに、事故がなければ得られたはずの将来収入が、後遺障害のために得られなくなった分です。

そのため、逸失利益の中心は、次の要素で構成されます。

  1. 基礎収入
  2. 労働能力喪失率
  3. 労働能力喪失期間
  4. 中間利息控除のための係数(ライプニッツ係数等)

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Section 05

逸失利益が認められるための要件

4-1. 評価対象が違うからである

両者が同時に請求できる最大の理由は、埋める損害が違うからです。

  • 後遺障害慰謝料
  • 人格的・生活的・精神的な不利益を評価する
  • 逸失利益
  • 経済的・就労的な不利益を評価する

たとえば、右手の可動域制限が残った美容師を考えてみてください。 その人には、

  • 利き手に障害が残ったこと自体の精神的・肉体的苦痛
  • 施術速度や正確性の低下、職種変更、売上減、昇進停滞等による将来収入減

の両方が生じ得ます。 前者を後遺障害慰謝料で、後者を逸失利益で評価するのは、法理上自然です。

4-2. ただし「同じ不利益を二度数える」ことはできない

ここが実務上の重要な留保です。 両者は別項目ですが、同一の不利益を重複して評価することは許されません。

たとえば、症状はあるが労働能力への現実的・将来的影響が弱く、他覚所見も乏しい事案では、裁判所は

  • 逸失利益は認めない
  • そのかわり、労働への不安や不便さを後遺障害慰謝料で一定程度評価する

という処理をすることがあります。

広島高裁の公開判決では、左手指の痛み・しびれについて後遺障害等級14級相当を認めつつも、労働能力の喪失を来すものとまでは認められないとして逸失利益を否定し、労働への影響は後遺障害慰謝料で考慮するのが相当であると判断しました。

したがって、正確には次のように理解すべきです。

重要原則
後遺障害慰謝料と逸失利益は別個に請求できる。
ただし
逸失利益が認められるためには、労働能力低下の独自の立証が必要であり、それが足りないときは、慰謝料だけで評価されることがある。

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Section 06

後遺障害慰謝料が認められるための要件

後遺障害慰謝料よりも、一般に争いが大きくなりやすいのは逸失利益です。 なぜなら、逸失利益は「将来の収入減」という仮定計算を含むため、被告側・保険会社側が争いやすいからです。

5-1. 後遺障害の存在と事故との因果関係

当然ですが、まず事故と相当因果関係のある後遺障害が必要です。 その前提資料として、後遺障害診断書、診療録、画像資料、神経学的所見、心理検査、リハビリ記録などが重要になります。 損害保険料率算出機構も、後遺障害請求に当たり、後遺障害診断書画像資料(レントゲン、CT、MRI等)の提出を求めています。

5-2. 労働能力の低下

後遺障害があることと、労働能力が落ちたことは同義ではありません。 たとえば、軽微なしびれが残っても職務遂行に現実的影響が乏しければ、逸失利益は否定され得ます。 逆に、外見上は軽く見えても、実際には集中力低下、記憶障害、感情コントロール障害、巧緻運動障害などが強く、就労維持が困難であれば、逸失利益は大きく認められ得ます。

5-3. 基礎収入

逸失利益は、まず「何を基礎収入とするか」で大きく変わります。 自賠責支払基準では、有職者については原則として事故前1年間の収入額後遺障害確定時の年齢別平均給与額の高い方を採用し、幼児・児童・生徒・学生・家事従事者については全年齢平均給与額を用いる構造が採られています。

これは重要です。 つまり、専業主婦(主夫)や学生、子どもであっても、逸失利益の議論が当然に排除されるわけではないのです。

5-4. 労働能力喪失率

自賠責実務には、等級に対応した労働能力喪失率表があります。代表例を挙げると次のとおりです。

次の表は、直前のテーマで扱う項目を比較して整理したものです。列ごとの違いを読むことで、金額や要件の判断に影響する点を確認できます。

等級労働能力喪失率
14級5%
12級14%
9級35%
7級56%
5級79%
3級100%

ただし、これは絶対的な機械算定表ではありません。 裁判所は、障害の内容、職業、年齢、就労実態、回復可能性などを総合して、等級に対応する率をそのまま採用しないことがあります。

裁判所公開判決の一例では、自賠責上は複数障害の併合により後遺障害等級3級と認定されていたにもかかわらず、裁判所は、なお一定の就労可能性があるとみて、労働能力喪失率を79%と判断しました。 この点は、等級が高いから直ちに逸失利益満額、という単純図式ではないことを示しています。

5-5. 労働能力喪失期間

むち打ちの神経症状のように将来的改善が見込まれる場合は、労働能力喪失期間が限定されることがあります。 反対に、高次脳機能障害や重い機能障害では、67歳までの就労可能年数全体が問題になることがあります。

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Section 07

裁判例が示す後遺障害慰謝料と逸失利益の分かれ方

後遺障害慰謝料は、逸失利益ほど収入資料には依存しません。 主に問題になるのは、後遺障害の内容・程度・生活への影響・将来不安です。

自賠責支払基準では、後遺障害慰謝料等の額が等級ごとに定められており、たとえば別表第2では、第1級1150万円から第14級32万円までの表が置かれています。 また、国土交通省は、後遺障害による補償内容として、逸失利益と並んで慰謝料等を明示しています。

ただし、訴訟や任意保険交渉では、自賠責の最低限補償とは別に、事案ごとの個別事情を踏まえた認定がされます。 現に、公開判決では、高次脳機能障害等の重い事案につき、後遺障害慰謝料として2000万円を認定した例があります。

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Section 08

後遺障害慰謝料と逸失利益の算定構造

7-1. 典型例1――両方とも明確に認められる

大阪府警車両との交差点事故に関する裁判所公開判決では、被害者に高次脳機能障害等が残り、裁判所は

  • 後遺障害逸失利益 ― 6529万5253円
  • 後遺障害慰謝料 ― 2000万円

別建てで認定しました。

この事例が示すのは、重い後遺障害により就労上の打撃が大きい場合、後遺障害慰謝料と逸失利益は並列的に計上されるという、交通事故実務の標準形です。

7-2. 典型例2――後遺障害はあるが、逸失利益は否定される

これに対し、左手指の痛み・しびれについて14級相当を認めた公開判決では、裁判所は、

  • 後遺障害自体は認める
  • しかし客観的な他覚所見が明確でなく、労働能力喪失までは認めない
  • したがって逸失利益は否定
  • 労働への影響は後遺障害慰謝料で考慮

という整理を採りました。

この事例が示すのは、「後遺障害がある」ことと「逸失利益が認められる」ことは別問題だということです。

7-3. 典型例3――等級は出発点にすぎない

さらに上記高次脳機能障害の事例では、自賠責の併合等級3級があるにもかかわらず、裁判所は労働能力喪失率を79%に修正しています。 この点は、後遺障害等級は重要な指標だが、裁判所を機械的に拘束するものではないことを示します。

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Section 09

後遺障害慰謝料と逸失利益の立証資料

次の時系列は、事故後にどの資料が重要になるかを整理したものです。順番に沿って読むことで、症状固定後に慰謝料だけでなく逸失利益の資料へ比重が移ることを確認できます。

事故直後

事故状況と受傷の記録

事故証明、実況見分、ドラレコ、初診時診断を整理します。

治療中

症状と検査の推移

診療録、画像、神経学的所見、リハビリ記録を残します。

症状固定

後遺障害診断書

残存症状、可動域、生活制限を記載してもらいます。

示談前

損害項目の内訳確認

慰謝料、逸失利益、休業損害などを分けて確認します。

8-1. 逸失利益の基本式

計算式
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応する係数

この式のうち、紛争になりやすいのは次の三点です。

  1. 基礎収入を実収入で見るのか、平均賃金で見るのか
  2. 喪失率を等級どおりに採るのか、修正するのか
  3. 喪失期間を何年とみるのか

8-2. 後遺障害慰謝料との関係

一方、後遺障害慰謝料は、上記のような数式計算よりも、障害の内容・程度・生活影響・年齢・職種・日常生活制限・将来不安等を総合評価する色彩が強い項目です。 だからこそ、逸失利益で十分に捉えきれない人格的損害を埋める役割を持ちます。

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Section 10

自賠責請求・示談・訴訟での位置づけ

9-1. 法的には別々である

これはすでに見たとおりです。 法令、公的支払基準、裁判所書式のいずれも、両者を別項目として扱っています。

9-2. 実務では、逸失利益の立証が勝負になる

被害者側が「後遺障害等級が出たから当然に逸失利益も出る」と考えるのは危険です。 むしろ、実務では次のような事情があると、逸失利益が厳しく争われます。

  • 他覚所見が弱い
  • 症状と職務内容の結び付きが弱い
  • 実収入が事故後も維持されている
  • 転職可能性や代替就労可能性が高い
  • 既往症や加齢変化の寄与が問題となる

9-3. 示談では「総額」ではなく「内訳」を確認すべきである

示談提示では、金額が一括で示され、何がどこまで含まれているのか不明瞭なことがあります。 しかし、争点整理の観点からは、

  • 治療費
  • 休業損害
  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 逸失利益
  • その他の将来費用

を分けて確認することが不可欠です。 少なくとも自賠責の制度説明では、請求者に対して支払金額や後遺障害等級、その判断理由等を書面で示す仕組みが案内されています。

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Section 11

後遺障害慰謝料と逸失利益でよくある誤解

次のQ&A一覧は、誤解しやすい論点を一般的な制度説明としてまとめたものです。各項目では、結論が個別事情で変わる点を読み取ってください。

Q1

等級があれば逸失利益も自動ですか

一般的には、等級は重要な出発点とされています。ただし、労働能力低下の有無や期間は別途検討されます。具体的な見通しは資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

自動ではない
Q2

二重取りになりますか

一般的には、慰謝料は非財産的損害、逸失利益は財産的損害として区別されます。ただし、同じ不利益を重ねて評価することはできません。

別項目
Q3

主婦や学生は対象外ですか

一般的には、家事従事者や学生にも基礎収入の考え方があります。ただし、年齢、生活状況、資料の有無で判断が変わります。

基礎収入

交通事故の後遺障害賠償は、単なる金額計算ではありません。 実際には、事故発生の証拠、医学的評価、就労実態、生活再建状況が一体となって初めて、後遺障害慰謝料と逸失利益の双方が説得力を持ちます。

次の表は、直前のテーマで扱う項目を比較して整理したものです。列ごとの違いを読むことで、金額や要件の判断に影響する点を確認できます。

分野主な役割後遺障害慰謝料への影響逸失利益への影響
警察・事故解析事故態様、衝撃方向、因果関係の基礎事実を固める障害発生の前提事実を支える同左
医師・画像診断傷病名、症状固定、後遺障害診断、画像所見障害の存在・重さを直接示す労働能力低下の医学的基盤を示す
PT・OT・ST・心理職機能障害、ADL/IADL、認知面・行動面の制限を具体化生活の質低下を可視化する実際の就労制約を具体化する
勤務先・人事・税務資料収入、休職、配置転換、昇進制限、確定申告間接的基礎収入と将来不利益を直接示す
保険実務・損害調査必要資料の収集、等級認定、支払項目の整理請求の形を整える請求の形を整える
弁護士・裁判実務法的整理、二重評価の回避、主張立証計画慰謝料増減事由の整理喪失率・期間・基礎収入の法的主張を構成

この表からわかるとおり、後遺障害慰謝料は医証だけで決まらず、逸失利益は収入資料だけでも決まりません。 交通事故実務では、複数分野の資料が噛み合ってはじめて、両者の請求が安定します。

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Section 12

示談前に確認したいチェックリスト

11-1. 自賠責では

自賠責は、被害者に対する基本補償を確保する制度であり、後遺障害については、障害の程度に応じて逸失利益および慰謝料等が支払われます。 被害者請求における後遺障害の時効起算点は、原則として症状固定日です。

11-2. 訴訟では

訴訟では、自賠責等級認定や支払基準は重要資料ですが、それで自動的に結論が決まるわけではありません。 裁判所は、公開判決が示すとおり、後遺障害の内容、実収入、職種、就労可能性、客観的所見の有無などを総合考慮し、逸失利益や慰謝料額を独自に認定します。

11-3. 実務上の含意

したがって、被害者がとるべき姿勢は明確です。

  • 後遺障害慰謝料と逸失利益を最初から分けて把握すること
  • 逸失利益は別途立証が必要だと理解すること
  • 示談案の内訳を確認すること
  • 症状固定前後で請求項目が変わることを理解すること

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Section 13

後遺障害慰謝料と逸失利益のまとめ

誤解1 後遺障害等級が認定されたら、逸失利益も自動的に認められる

誤りです。 等級は重要な出発点ですが、労働能力低下の有無・程度・期間は別途争われます。

誤解2 後遺障害慰謝料を請求したら、逸失利益は二重取りになる

原則として誤りです。 後遺障害慰謝料は非財産的損害、逸失利益は財産的損害であり、別個の損害です。

誤解3 専業主婦、学生、子どもには逸失利益がない

誤りです。 自賠責支払基準は、幼児・児童・生徒・学生・家事従事者について全年齢平均給与額を基礎にする建付けを採っています。

誤解4 症状固定とは治療をやめた日のことだ

正確ではありません。 症状固定は、医学上一般に認められた医療を尽くしても効果が期待できない状態を意味し、医師判断が基礎になります。

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Section 14

13. 実務上のチェックリスト

13-1. 後遺障害慰謝料と逸失利益の双方を視野に入れるなら、最低限そろえたい資料

  1. 診断書、後遺障害診断書
  2. 画像資料(XP、CT、MRI等)
  3. 診療録、リハビリ記録、神経心理学的検査結果
  4. 事故前収入資料(源泉徴収票、給与明細、確定申告書等)
  5. 勤務先の休業損害証明、配置転換・復職制限・減収資料
  6. 家事従事者であれば世帯資料、学生であれば就学状況資料
  7. 生活制限の具体例を示すメモや家族の陳述
  8. 事故状況資料(事故証明、実況見分、ドラレコ等)

13-2. 示談前に確認したい質問

  • 後遺障害慰謝料はいくらか
  • 逸失利益はいくらか
  • 労働能力喪失率は何%で見ているか
  • 労働能力喪失期間は何年で見ているか
  • 基礎収入は何を採用しているか
  • 後遺障害等級とその判断理由は何か

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Section 15

14. まとめ

「後遺障害慰謝料と逸失利益は別々に請求できるのか」という問いに対する、専門実務に耐える答えは次のとおりです。

  1. 原則として、別々に請求できる。

法律上も、自賠責支払基準上も、裁判所書式上も、両者は別項目である。

  1. 二重取りではない。

後遺障害慰謝料は非財産的損害、逸失利益は財産的損害を埋める。

  1. ただし、逸失利益は自動ではない。

労働能力低下の具体的立証が弱ければ、逸失利益は否定され、影響が慰謝料側で評価されることがある。

  1. 等級は出発点にすぎない。

裁判所は、等級、職業、年齢、症状、画像、就労実態を総合して、喪失率や期間を修正し得る。

  1. 勝負は資料で決まる。

医学資料、画像、就労資料、生活制限資料、事故資料を横断的に整えることが不可欠である。

したがって、実務的に最も正確な言い方をするなら、結論は次の一文に尽きます。

重要後遺障害慰謝料と逸失利益は、原則として別々に請求できる。だが、逸失利益は別途の厳密な立証を要し、その立証に失敗すると、後遺障害慰謝料のみで処理されることがある。

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Reference

この記事の参考資料

公的資料と中立的な実務資料を中心に確認しています。

参考資料

  • e-Gov法令検索「民法」第709条・第710条
  • e-Gov法令検索「自動車損害賠償保障法」第3条
  • 国土交通省「自賠責保険・共済の限度額と補償内容」
  • 国土交通省「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」第3「後遺障害による損害」
  • 国土交通省「労働能力喪失率表」
  • 損害保険料率算出機構「政府の保障事業『ご請求に関する書類』」および「自賠責保険(共済)損害調査のしくみ」
  • 千葉地方裁判所「訴状書式(交通事故の人損・物損に関する書式)」PDF
  • 裁判所ウェブサイト掲載判決(PDFファイル名 80255.pdf)。高次脳機能障害等を伴う交通事故につき、後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料を別建てで認定した事例
  • 裁判所ウェブサイト掲載判決(PDFファイル名 3837.pdf)。後遺障害14級相当を認めつつ、労働能力喪失を否定して逸失利益を認めず、後遺障害慰謝料で評価した事例
  • 国土交通省「損害賠償を受けるときは?」。症状固定の定義、後遺障害請求の時効、支払説明の案内を含む