2σ Guide

ガバナンス報告書の
作成ポイント

企業統治の設計、運用実態、証跡、他開示との整合性を、投資家との対話に耐える形で整理するための実務ポイントを解説します。

6層 作成時の点検軸
2025年7月 記載要領改訂
2027年7月末 改訂コード対応案
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ガバナンス報告書の 作成ポイント

企業統治の設計、運用実態、証跡、他開示との整合性を、投資家との対話に耐える形で整理するための実務ポイントを解説します。

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ガバナンス報告書の 作成ポイント
企業統治の設計、運用実態、証跡、他開示との整合性を、投資家との対話に耐える形で整理するための実務ポイントを解説します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • ガバナンス報告書の 作成ポイント
  • 企業統治の設計、運用実態、証跡、他開示との整合性を、投資家との対話に耐える形で整理するための実務ポイントを解説します。

POINT 1

  • ガバナンス報告書の作成ポイントを全体像からつかむ
  • 定型欄を埋める作業ではなく、企業統治の設計・運用・改善を説明する開示として整理します。
  • 提出済みであることより、説明できることが重要です
  • 制度適合性
  • 会社固有性

POINT 2

  • ガバナンス報告書の定義と一次資料の確認ポイント
  • 用語の意味と、最初に確認すべき取引所・金融庁資料を整理します。
  • ガバナンス報告書を作成する前に、用語をそろえることが重要です。
  • ここで整理する表は、報告書に頻出する概念と実務上の注意点を対応させたものです。
  • 各列は「概念」「意味」「注意点」を示し、用語の違いが記載の深さにどう影響するかを読み取れます。

POINT 3

  • ガバナンス報告書の作成体制と標準工程
  • 1. 最新資料の確認:記載要領、コード、FAQ、取引所通知、金融庁資料を確認します。
  • 2. 前年度版と他開示の差分管理:前年度の報告書と、有価証券報告書、事業報告、招集通知、統合報告書、決算説明資料、ウェブサイトを照合します。
  • 3. 社内情報の収集:取締役会、各委員会、内部監査、IR、サステナビリティ、人事、財務、知財、法務から情報を集めます。
  • 4. コード実施状況の確認:各原則について、実施か、説明が必要な未実施かを確認します。
  • 5. 説明欄と改善計画の作成:現状、理由、代替措置、今後の対応、期限、取締役会の関与を記載します。
  • 6. レビュー・確認・提出後管理:法務、IR、経理財務、内部監査、外部専門家がレビューし、必要に応じて取締役会や委員会で確認します。

POINT 4

  • ガバナンス報告書のコンプライ・オア・エクスプレイン作成ポイント
  • 1. 対象原則を特定:市場区分と適用範囲を確認します。
  • 2. 実施状況を確認:制度の有無だけでなく、運用と証跡を確認します。
  • 3. 理由と代替措置を説明:会社固有の事情、リスク認識、検討期限を書きます。
  • 4. 運用実態を説明:会議体、頻度、改善状況を記載します。
  • 5. 取締役会の関与を確認:議論状況、今後の見直し、次回更新方針を残します。

POINT 5

  • ガバナンス報告書の主要開示項目と資本市場対応
  • 政策保有株式、取締役会、報酬、実効性評価、株主対話、資本コスト対応を一体で確認します。
  • 主要開示項目は、個別論点に見えて相互につながっています。
  • 各項目から、単なる制度紹介ではなく、取締役会がどのように監督し、改善しているかを確認できます。
  • 保有目的、資本コスト、配当、取引利益、戦略上の関係、代替手段、縮減方針、議決権行使基準を有価証券報告書と整合させます。

POINT 6

  • ガバナンス報告書で内部統制・リスク管理・適時開示をどう書くか
  • 金融
  • 金融商品取引法、銀行法、保険業法、マネロン・テロ資金供与対策を確認します。
  • 医薬・ヘルスケア
  • 薬機法、医療広告、臨床研究、GxPへの対応を整理します。

POINT 7

  • ガバナンス報告書の整合性チェックと実務テンプレート
  • 他の開示文書、会社規模、よくある失敗、専門家レビューをまとめて点検します。
  • プライム市場
  • スタンダード市場
  • グロース市場

POINT 8

  • ガバナンス報告書の作成ポイントに関するFAQ
  • 実務で迷いやすい質問を、一般的な制度説明として整理します。
  • Q1. ガバナンス報告書は誰が作成するのが一般的ですか。
  • Q2. すべてのコード原則を実施していると書けばよいですか。
  • Q3. 他の資料へのURL参照だけで足りますか。

まとめ

  • ガバナンス報告書の 作成ポイント
  • ガバナンス報告書の作成ポイントを全体像からつかむ:定型欄を埋める作業ではなく、企業統治の設計・運用・改善を説明する開示として整理します。
  • ガバナンス報告書の定義と一次資料の確認ポイント:用語の意味と、最初に確認すべき取引所・金融庁資料を整理します。
  • ガバナンス報告書の作成体制と標準工程:商事法務、IR、経理財務、内部監査、人事、外部専門家がどの順序で関与するかを整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

ガバナンス報告書の作成ポイントを全体像からつかむ

定型欄を埋める作業ではなく、企業統治の設計・運用・改善を説明する開示として整理します。

ガバナンス報告書は、東京証券取引所に上場する会社が提出する「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を中心とする文書です。会社の機関設計、取締役会の構成、社外役員の独立性、内部統制、リスク管理、株主との対話、政策保有株式、資本コストや株価を意識した経営、サステナビリティ、人的資本・知的財産への投資などを、外部から検証できる形で説明します。

投資家、取引先、金融機関、従業員、求職者、規制当局、株主アクティビスト、社外役員候補者、M&Aの相手方、監査法人、格付機関は、この報告書から会社の統治思想と内部統制の実効性を読み取ります。そのため、単なる定型開示ではなく、実際の統治構造、運用実態、課題認識、改善計画を、法令・上場規則・コーポレートガバナンス・コードの趣旨に沿って説明することが重要です。

次の重要ポイントは、ガバナンス報告書に求められる説明の中核を示しています。読者にとって重要なのは、制度名の有無ではなく、会社固有の事情、取締役会の関与、他の開示文書との整合性まで読み取れるかどうかです。

提出済みであることより、説明できることが重要です

良いガバナンス報告書は、制度適合性、会社固有性、運用実態、証跡可能性、他開示との整合性、対話可能性を同時に満たします。抽象的な理念だけでなく、誰が、どの会議体で、何を確認し、どの資料で裏付けるのかまで整理することが作成の出発点です。

次の六つの観点は、報告書全体を点検するための整理軸です。各項目の違いを押さえると、記載が制度説明に偏っていないか、運用や証跡まで届いているかを確認しやすくなります。

01

制度適合性

上場規則、記載要領、コーポレートガバナンス・コード、金融商品取引法開示との整合を確認します。

02

会社固有性

業種、規模、資本構成、親子上場、海外展開、規制業種、成長段階に応じた説明にします。

03

運用実態

制度を設けているだけでなく、実際にどのように機能しているかを具体的に説明します。

04

証跡可能性

取締役会資料、議事録、規程、委員会記録、KPI、社内報告資料で裏付けられる状態にします。

05

他開示との整合性

有価証券報告書、事業報告、招集通知、統合報告書、決算説明資料、ウェブサイトと矛盾させません。

06

対話可能性

投資家、株主、従業員、取引先から問われたときに、記載内容を説明できる状態にします。

Section 01

ガバナンス報告書の定義と一次資料の確認ポイント

用語の意味と、最初に確認すべき取引所・金融庁資料を整理します。

ガバナンス報告書を作成する前に、用語をそろえることが重要です。ここで整理する表は、報告書に頻出する概念と実務上の注意点を対応させたものです。各列は「概念」「意味」「注意点」を示し、用語の違いが記載の深さにどう影響するかを読み取れます。

概念意味実務上の注意点
ガバナンス報告書上場会社が提出するコーポレート・ガバナンスに関する報告書を中心に指します。任意資料を含む広い説明資料と区別し、東証提出様式を中心に整えます。
コーポレートガバナンス経営陣の意思決定を規律し、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を支える仕組みです。不祥事防止だけでなく、資本効率、成長投資、人的資本、知的財産、リスクテイクにも関係します。
コーポレートガバナンス・コード上場会社が実効的な企業統治を実現するための原則です。プライム・スタンダードでは各原則、グロースでは基本原則の実施状況説明が中心になります。
コンプライ・オア・エクスプレイン各原則を実施するか、実施しない場合には理由を説明する仕組みです。形式的に全原則を実施済みとするのではなく、未実施の理由、代替措置、移行計画を説明します。

次の比較表は、「開示」「説明」「証跡」の役割を分けて見るためのものです。ガバナンス報告書では、外部に出す情報だけでなく、その理由と裏付けをそろえる必要があります。三つの列を横に読むと、記載作業がどの社内資料とつながるかを確認できます。

区分意味確認すべきこと
開示外部に情報を公表することです。様式に記載しただけで十分か、他資料への参照だけに依存していないかを確認します。
説明なぜその仕組みを採用し、どう運用しているかを述べることです。抽象的な美辞麗句ではなく、会社固有の理由と会議体の関与を示します。
証跡議事録、規程、委員会記録、KPI、社内報告資料などの裏付けです。後日の照会、投資家対話、不祥事対応に備えて保管・更新します。

法令・規則・実務指針では、まず東証の記載要領を確認します。2025年7月改訂版では、コード実施状況、資本コストや株価を意識した経営、内部統制、適時開示体制などが整理されています。さらに、FAQではIR体制整備義務化、資本コスト・株価対応の入力項目、買収への対応方針への用語変更などが示されています。

金融庁の有価証券報告書レビューや記述情報の開示の好事例集は、政策保有株式、内部統制、サステナビリティ、コーポレートガバナンス関連開示の品質向上に役立ちます。2026年4月10日公表のコード改訂関連資料では、改訂後のコードを踏まえた報告書を2027年7月末までに提出する案も示されており、提出前には必ず最新資料を確認する必要があります。

注意このページは一般的な情報整理です。実際の提出時期、記載内容、取引所対応は、会社の状況と最新の規則・取引所実務により変わります。
Section 02

ガバナンス報告書の作成体制と標準工程

商事法務、IR、経理財務、内部監査、人事、外部専門家がどの順序で関与するかを整理します。

ガバナンス報告書は、商事法務や取締役会事務局だけで完結しません。次の一覧は、関与者ごとの役割と確認観点を示しています。読者にとって重要なのは、どの部門がどの論点を支え、報告書の記載がどの専門領域にまたがるかを理解することです。

関与者主な役割確認すべき観点
法務・商事法務全体統括、法令・上場規則・コード対応記載要領適合性、虚偽・誤認表示リスク、取締役会運営、委員会構成
外部専門家重要論点のレビュー、親子上場、買収対応、不祥事対応独立性、利益相反、開示責任、紛争予防、登記事項との整合
IR・経営企画投資家対話、資本政策、事業ポートフォリオの説明資本コスト、成長投資、KPI、投資家が読む文脈、更新頻度
経理財務・会計財務指標、内部統制、監査関連ROE、ROIC、WACC、PBR、J-SOX、監査体制
人事・労務人的資本、多様性、労務管理女性管理職比率、人材育成、内部環境整備、労務リスク
内部監査・コンプライアンス業務プロセス、統制評価、通報制度、法令遵守内部統制の実効性、改善状況、研修、通報処理、再発防止
サステナビリティ・知財ESG、気候変動、人的資本、知財投資統合報告書や有価証券報告書との整合、事業戦略との接続

次の時系列は、作成プロジェクトの標準的な順番を示しています。上から下へ進むほど、資料確認から取締役会・提出後対応へ移ります。順番を確認することで、情報収集やレビューを後回しにして提出直前に矛盾が出るリスクを下げられます。

Step 01

最新資料の確認

記載要領、コード、FAQ、取引所通知、金融庁資料を確認します。

Step 02

前年度版と他開示の差分管理

前年度の報告書と、有価証券報告書、事業報告、招集通知、統合報告書、決算説明資料、ウェブサイトを照合します。

Step 03

社内情報の収集

取締役会、各委員会、内部監査、IR、サステナビリティ、人事、財務、知財、法務から情報を集めます。

Step 04

コード実施状況の確認

各原則について、実施か、説明が必要な未実施かを確認します。

Step 05

説明欄と改善計画の作成

現状、理由、代替措置、今後の対応、期限、取締役会の関与を記載します。

Step 06

レビュー・確認・提出後管理

法務、IR、経理財務、内部監査、外部専門家がレビューし、必要に応じて取締役会や委員会で確認します。提出後はウェブサイト掲載、投資家対話、証跡保管を行います。

Section 03

ガバナンス報告書のコンプライ・オア・エクスプレイン作成ポイント

未実施理由は弁解ではなく、統治上の選択と改善計画を説明する欄です。

コンプライ・オア・エクスプレインでは、「検討中」「必要に応じて対応」という抽象表現だけでは不十分です。次の比較表は、良い説明に含めるべき要素を示しています。各行を確認すると、未実施の事実だけでなく、理由、代替措置、リスク認識、取締役会の関与まで説明できているかを点検できます。

要素記載すべき内容
対象原則どの原則・補充原則を実施していないかを明確にします。
現状現在どのような体制・運用になっているかを書きます。
未実施の理由会社の規模、事業特性、移行段階、人的資源、資本構成など具体的理由を示します。
代替措置原則そのものは未実施でも、同趣旨を補う仕組みがあるかを説明します。
リスク認識未実施により生じ得るリスクをどう把握しているかを書きます。
今後の方針実施予定、検討プロセス、期限、判断基準を示します。
取締役会の関与取締役会または委員会でどのように議論したかを記載します。
更新方針次回更新時に何を見直すかを明確にします。

次の判断の流れは、コード原則への対応を整理するときの順番を表しています。上から下へ確認し、分岐では「実施済みか」「説明が必要か」「代替措置があるか」を読み取ります。この順番を使うと、形式的な丸付けではなく、説明責任に耐える記載へつなげやすくなります。

コード対応の判断の流れ

対象原則を特定

市場区分と適用範囲を確認します。

実施状況を確認

制度の有無だけでなく、運用と証跡を確認します。

未実施
理由と代替措置を説明

会社固有の事情、リスク認識、検討期限を書きます。

実施済み
運用実態を説明

会議体、頻度、改善状況を記載します。

取締役会の関与を確認

議論状況、今後の見直し、次回更新方針を残します。

たとえば「現在検討中であり、必要に応じて対応します」という記載だけでは、何を、なぜ、いつまでに、誰が、どのように検討しているのかが伝わりません。独立社外取締役を取締役会議長としていない場合でも、創業者が事業知見を持つこと、任意の指名・報酬委員会で独立した監督機能を補っていること、社外取締役のみの会合で議題設定・議事運営に意見を出していること、実効性評価を踏まえ継続検討することまで説明すれば、統治上の選択として理解されやすくなります。

Section 04

ガバナンス報告書の主要開示項目と資本市場対応

政策保有株式、取締役会、報酬、実効性評価、株主対話、資本コスト対応を一体で確認します。

主要開示項目は、個別論点に見えて相互につながっています。次の一覧は、投資家や専門家が読み取る主な観点をまとめたものです。各項目から、単なる制度紹介ではなく、取締役会がどのように監督し、改善しているかを確認できます。

1

政策保有株式

保有目的、資本コスト、配当、取引利益、戦略上の関係、代替手段、縮減方針、議決権行使基準を有価証券報告書と整合させます。

資本効率
2

関連当事者間取引

親会社、創業者、主要株主、グループ会社との取引について、事前申請、利益相反者の除外、独立社外取締役や特別委員会の関与、公正性確認を説明します。

利益相反
3

取締役会構成とスキル・マトリックス

社外取締役の人数だけでなく、事業戦略に必要な知見が備わっているか、不足スキルをどう補うかを示します。

監督機能
4

指名・報酬プロセス

CEO・取締役・執行役員の選任・解任基準、後継者計画、任意委員会の独立性、報酬決定プロセス、中長期的企業価値との連動を説明します。

透明性
5

取締役会実効性評価

評価方法、対象、評価項目、抽出課題、改善策、前年課題への進捗を記載します。

改善
6

株主との対話

誰が投資家と対話し、意見が経営会議・取締役会へどう報告され、経営判断にどう反映されるかを説明します。

IR

資本コストや株価を意識した経営は、短期的な株価対策ではありません。次の表は、記載の基本構造を段階ごとに示しています。左列の順番で確認すると、現状分析から施策、取締役会モニタリング、更新方針まで抜けがないかを読み取れます。

段階記載すべき内容確認する指標・観点
現状分析資本収益性と市場評価の現状を示します。ROE、ROIC、営業利益率、PBR、PER、株価推移、時価総額、資本コスト、WACC
課題認識市場評価が低い理由、収益性不足、成長期待不足、開示不足、資本政策の課題を整理します。事業別ROIC、投下資本、キャッシュ創出力、政策保有株式
方針中長期的にどの水準や方向性を目指すかを示します。中期経営計画、資本配分方針、成長領域
施策成長投資、事業撤退、M&A、研究開発、人材投資、政策保有株式縮減、株主還元を説明します。実行可能性、期限、投資家説明との整合
ガバナンス取締役会でのモニタリング、KPI、投資家対話、報酬制度との連動を示します。取締役会報告頻度、KPI、報酬設計
進捗更新前回開示から何が変わったかを毎年更新します。決算説明資料、報告書、IRサイトの整合

IR体制・英文開示では、単なる広報活動ではなく、株主・投資家との建設的対話を支える統治機能として説明することが重要です。IR担当部署、責任者、担当役員、決算説明会、個別面談、スモールミーティング、個人投資家説明会、投資家意見の社内共有、取締役会への報告頻度、フェア・ディスクロージャー、インサイダー情報管理、英文開示体制、ウェブサイト掲載方針、緊急時の対応を整理します。

実務英文開示は単なる翻訳ではありません。日本語を英訳しやすい構文に整え、用語集を持ち、日本語版と英語版の差分、将来見通し、免責文言、数値、日付を重点確認します。
Section 05

ガバナンス報告書で内部統制・リスク管理・適時開示をどう書くか

制度の有無ではなく、情報の流れ、報告経路、改善プロセスを説明します。

内部統制の記載は、「整備しています」という一文で終わらせないことが重要です。次の一覧は、内部統制、リスク管理、グループガバナンス、適時開示を横断して見るためのものです。各項目の列を読むと、報告書に必要な運用説明と証跡の方向性が分かります。

領域記載する観点読み取るべきポイント
コンプライアンス体制基本方針、行動規範、委員会構成、開催頻度、研修、内部通報、調査、不利益取扱い防止違反発生時に情報がどこへ上がり、誰が判断し、どう再発防止へつながるか
リスク管理体制事業、財務、サイバー、サプライチェーン、地政学、災害、品質、人的リスクの棚卸し主要リスクの識別、評価、対応、モニタリング、取締役会報告の流れ
業法・規制リスク金融、医薬・ヘルスケア、食品、建設・不動産、IT・AI・データ、製造業、グローバル規制会社の業種固有リスクが一般論でなく反映されているか
グループガバナンス子会社管理規程、重要事項の承認・報告、海外子会社、親会社・支配株主との取引管理少数株主保護、利益相反管理、内部監査の対象範囲
適時開示体制情報収集、開示要否判断、承認、公表、公平性、事後管理投資者保護のため、迅速・正確・公平な開示が機能するか
不祥事時の対応情報集約、事実確認、外部専門家起用、取締役会報告、投資家説明危機時に通常の開示体制が実効的に動くか

リスクの所在は業種によって変わります。次の注意要素の一覧は、業種ごとに報告書へ反映しやすい代表的な規制リスクを示しています。自社の業種に近い項目から、抽象的なリスク管理説明で終わっていないかを読み取ります。

金融

金融商品取引法、銀行法、保険業法、マネロン・テロ資金供与対策を確認します。

医薬・ヘルスケア

薬機法、医療広告、臨床研究、GxPへの対応を整理します。

食品

食品表示法、景品表示法、品質管理、回収対応を確認します。

建設・不動産

建設業法、宅建業法、下請法、開発許認可を整理します。

IT・AI・データ

個人情報保護法、著作権、AI利用、サイバーセキュリティを確認します。

グローバル企業

経済制裁、贈収賄防止、競争法、海外子会社管理を整理します。

買収への対応方針では、「買収を防ぐ」発想だけでなく、企業価値・株主共同の利益を確保するために、買収提案への対応プロセスをどう設計するかを説明します。方針の有無、導入目的、発動要件、独立委員会の関与、株主意思確認、取締役会の判断基準、廃止・更新条件を明確にします。

支配株主を有する会社では、親会社や創業者株主との取引、役員兼任、事業機会の配分、資金移動、ブランド・知財使用、委託取引における少数株主保護が重要です。支配株主との関係の基本方針、独立社外取締役の役割、利益相反取引の審査手続、特別委員会の運用、親会社からの独立性を整理します。

Section 06

ガバナンス報告書の整合性チェックと実務テンプレート

他の開示文書、会社規模、よくある失敗、専門家レビューをまとめて点検します。

ガバナンス報告書は単独で存在する文書ではありません。次の表は、矛盾が起こりやすい項目を整理したものです。左列の項目ごとに、どの開示文書と照合する必要があるかを読み取ることで、提出直前の修正漏れを防ぎやすくなります。

項目矛盾の例
独立役員独立役員届出書と報告書の記載が異なる。
取締役会構成招集通知の候補者情報とスキル・マトリックスが不整合になる。
政策保有株式有価証券報告書では縮減方針、報告書では関係維持を強調している。
サステナビリティ統合報告書のマテリアリティと報告書の説明がずれる。
内部統制内部統制報告書の開示すべき重要な不備と報告書が整合しない。
役員報酬有価証券報告書の報酬方針と報告書の説明が異なる。
会社機関登記事項、定款、招集通知、報告書の機関設計が一致しない。
IR体制IRサイトでは窓口を掲載しているが、報告書に体制説明がない。

市場区分ごとの説明の重点は異なります。次の一覧は、プライム、スタンダード、グロースで読み手が注目しやすい点を整理しています。自社の市場区分に応じて、どの列の説明を厚くするべきかを読み取ります。

Prime

プライム市場

海外機関投資家、英文開示、独立社外取締役、資本コスト、サステナビリティ、人的資本、気候変動、事業ポートフォリオが重視されます。

Standard

スタンダード市場

限られた経営資源の中で、会社規模に応じた合理的な体制と改善計画を示すことが有効です。

Growth

グロース市場

成長スピード、創業者依存、内部管理体制の発展途上性、人員不足を認識し、強化計画を説明します。

項目別チェックでは、全体、コンプライ・オア・エクスプレイン、取締役会、資本コスト、内部統制、IR・適時開示を分けて確認します。次の比較表では、各領域で最低限確認したい問いを並べています。列ごとの問いに答えられない箇所が、追記・修正の候補です。

領域主要チェック
全体最新の記載要領・コード・市場区分、前回提出版との差分、他開示との整合、日付・数値・役職名を確認したか。
説明欄未実施原則、具体的理由、代替措置、今後の方針、取締役会での議論を書いたか。
取締役会・委員会構成、独立性、スキル・マトリックス、指名・報酬委員会、後継者計画、実効性評価を説明したか。
資本コスト・株価ROE、ROIC、PBR、資本コスト、成長投資、株主還元、政策保有株式縮減、取締役会モニタリングを整理したか。
内部統制・リスク管理基本方針、運用状況、内部通報、研修、危機対応、サイバーリスク、グループ会社管理を記載したか。
IR・適時開示投資家対話、取締役会への報告、情報収集・判断・承認・公表、英文開示、フェア・ディスクロージャーを確認したか。

実務で使う文案は、会社固有の事情に合わせて調整する必要があります。次の重要ポイントは、各欄に入れるべき構造を示したもので、読者は角括弧部分を自社の事実に置き換える前提で確認できます。

説明欄当社は、〔対象原則〕について、現時点では〔未実施事項〕を実施していません。その理由は、〔会社固有の事情〕です。もっとも、当該原則の趣旨である〔目的〕を重要と認識し、代替措置として〔代替措置〕を実施しています。取締役会では〔検討頻度・検討内容〕を確認し、今後〔期限・条件〕を目途に〔方針〕を検討します。
資本対応当社は、〔ROE、ROIC、PBR、株価、資本コスト等〕の現状を踏まえ、〔課題〕を認識しています。取締役会では〔分析指標〕を用いて、〔事業ポートフォリオ、成長投資、株主還元、政策保有株式等〕を定期的に検証しています。
IR体制当社は、IR担当部署として〔部署名〕を設置し、〔担当役員〕が統括しています。投資家との対話で得られた意見は、〔会議体〕を通じて経営陣および取締役会に報告され、経営戦略、資本政策、開示改善に反映しています。
内部統制コンプライアンスは〔委員会・責任部署〕が統括し、研修、内部通報制度、重大事案の取締役会報告を実施しています。リスク管理は〔体制〕により、主要リスクの識別・評価・対応を行います。
実効性評価年1回、全取締役および監査役等を対象に、構成、議題設定、資料の質、審議時間、戦略議論、リスク管理、資本政策、サステナビリティ、社外役員への情報提供を評価します。

よくある失敗は、前年コピー、抽象的表現、他文書との矛盾、取締役会の関与が見えない記載、長期間の「検討中」、URL参照への過度な依存、リスクの過度な隠蔽です。改善策は、差分管理表を作り、法務・経理・IR・商事法務が共同で横断レビューを行い、「誰が、いつ、どの会議体で、何を、どの基準で、どのように判断するか」を本文に残すことです。

専門家レビューでは、弁護士・企業内弁護士が法令、上場規則、虚偽表示、利益相反、訴訟リスクを確認します。会計・監査担当は財務指標、資本コスト、内部統制、政策保有株式を確認します。税務、登記、人事労務、内部監査、IR、危機管理の担当者も、それぞれの観点から実態と記載のずれを確認します。

中小規模上場会社や上場準備会社では、すべてを一度に完璧にするより、必須事項、投資家から質問されやすい事項、不祥事・開示ミス時のリスクが大きい事項、中期経営計画と直結する事項、将来的な改善計画として説明できる事項に優先順位を付けることが現実的です。

Section 07

ガバナンス報告書の作成ポイントに関するFAQ

実務で迷いやすい質問を、一般的な制度説明として整理します。

Q1. ガバナンス報告書は誰が作成するのが一般的ですか。

一般的には、商事法務、法務、取締役会事務局、IR、経営企画が中心になることが多いとされています。ただし、資本コスト、人的資本、内部統制、リスク管理、サステナビリティ、知財、労務などを含むため、単独部署ではなく横断チームで作成することが望ましいと考えられます。具体的な体制は会社規模や市場区分により変わるため、必要に応じて外部専門家にも確認する必要があります。

Q2. すべてのコード原則を実施していると書けばよいですか。

一般的には、実施していない原則があるのに形式的に実施済みと記載することは避けるべきとされています。未実施の場合でも、理由、代替措置、今後の方針を具体的に説明することで、投資家との対話の基礎になります。個別の記載方針は会社の状況と最新の取引所実務により変わります。

Q3. 他の資料へのURL参照だけで足りますか。

一般的には、参照自体は有用ですが、本文に要点がないと読者に伝わりにくいとされています。リンク切れや資料更新のリスクもあるため、重要項目は報告書本文に概要を記載し、詳細資料への参照は補助的に用いることが実務的です。具体的な参照方法は、記載要領と各社の開示方針を確認する必要があります。

Q4. 資本コストや株価を意識した経営では何を書きますか。

一般的には、現状分析、課題認識、施策、取締役会の関与、進捗更新を書くことが重要とされています。単に「企業価値向上に努める」と書くだけでは情報価値が低く、ROE、ROIC、PBR、WACC、成長投資、事業ポートフォリオ、株主還元、政策保有株式などを整理する必要があります。

Q5. 内部統制はどの程度詳しく書くべきですか。

一般的には、規程名や会議体名の羅列だけでなく、情報がどのように収集され、誰が判断し、どの会議体へ報告され、どのように改善されるかを説明することが重要です。ただし、セキュリティ上または危機管理上、過度に詳細な運用情報を開示すべきでない場合もあります。

Q6. 不祥事が発生した場合、更新を検討すべきですか。

一般的には、不祥事の内容、適時開示の有無、再発防止策、内部統制への影響、取締役会・委員会の関与によって判断が変わるとされています。重大な統治上の変更が生じた場合には、更新の要否を法務、IR、監査法人、外部専門家等と検討する必要があります。

Q7. 英文開示は日本語をそのまま翻訳すればよいですか。

一般的には、単なる直訳では不十分な場合があります。用語の統一、海外投資家の理解、将来見通し表現、日本語版との一致、同時性・公平性が重要です。専門翻訳者と法務・IRのレビューを組み合わせることが望ましいとされています。

Reference

参考資料

公的・中立的な一次情報

  • 東京証券取引所「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」
  • 東京証券取引所「コーポレート・ガバナンス・コード」
  • 東京証券取引所「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領」
  • 東京証券取引所FAQ「最近におけるガバナンス報告書記載要領の改訂内容について」
  • 金融庁「有価証券報告書レビュー」
  • 金融庁「記述情報の開示の好事例集」
  • 東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コードの改訂案の公表について」
  • 東京証券取引所「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」
  • 東京証券取引所「IR体制・IR活動」