2σ Guide

国際取引で準拠法を
日本法にできるかの交渉

日本法を契約準拠法にする交渉を、通則法、CISG、仲裁、強行法規、執行可能性、条項例、社内チェックまで一体で整理します。

5つ切り分ける主要論点
2009年CISGの日本での効力発生
1961年日本のニューヨーク条約加入
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国際取引で準拠法を 日本法にできるかの交渉

日本法を契約準拠法にする交渉を、通則法、CISG、仲裁、強行法規、執行可能性、条項例、社内チェックまで一体で整理します。

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国際取引で準拠法を 日本法にできるかの交渉
日本法を契約準拠法にする交渉を、通則法、CISG、仲裁、強行法規、執行可能性、条項例、社内チェックまで一体で整理します。
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  • 国際取引で準拠法を 日本法にできるかの交渉
  • 日本法を契約準拠法にする交渉を、通則法、CISG、仲裁、強行法規、執行可能性、条項例、社内チェックまで一体で整理します。

POINT 1

  • 国際取引で準拠法を日本法にできるかの交渉の全体像
  • 日本法を選べる場面と、同時に設計すべき論点を先に整理します。
  • 日本法準拠は可能でも、交渉設計が成否を分けます
  • 契約本体の法選択
  • 裁判管轄または仲裁

POINT 2

  • 国際取引で準拠法を日本法にできるかを見る基本用語
  • 準拠法、管轄、仲裁、強行法規、公序、CISGを混同しないための整理です。
  • 準拠法条項の基本表現
  • CISGを意識する理由
  • 国際取引で準拠法を日本法にできるかを交渉する前に、似ている用語を分ける必要があります。

POINT 3

  • 国際取引で準拠法を日本法にできる法的根拠
  • 1. 当事者が選択した地の法による:法律行為の成立と効力について、当事者が選択した地の法によるという原則が置かれています。
  • 2. 準拠法を定めない場合:最も密接な関係がある地の法による枠組みが問題になります。
  • 3. 締結後の準拠法変更:当事者は準拠法を変更できますが、第三者の権利を害することはできません。
  • 4. 契約本体と別に扱われる領域:物権や登録を要する権利は目的物所在地法によるとされる場面があります。

POINT 4

  • 国際取引で準拠法を日本法にする設計とハーグ原則
  • 1. 企業間の国際商事契約か:消費者契約や雇用契約では保護法制の制限が強くなります。
  • 2. 現地強行法規が関わるか:販売、労務、データ、輸出管理、税務、知財、担保を分けて確認します。
  • 3. 準拠法と紛争解決を分けられるか:日本法準拠と中立地仲裁、英語手続、3名仲裁人を組み合わせる余地を検討します。
  • 4. 部分的な適用法を明記:現地規制、税務、データ、知財などを個別に切り分けます。
  • 5. 日本法準拠を提案:契約条項の具体化と手続面の中立性を合わせて提示します。

POINT 5

  • 国際取引で準拠法を日本法にするメリットと反論への備え
  • 日本企業側の利点と、相手方の不安を緩和する方法をまとめます。
  • 予測可能性が高い
  • 日本法制に沿ったリスク配分
  • 契約管理コストの抑制

POINT 6

  • 国際取引で準拠法を日本法にしても残る外国法リスク
  • 消費者契約
  • 労働契約
  • 海外駐在、現地採用、業務委託と雇用の区別、リモートワーク、解雇、競業避止では、労務提供地法などを確認します。

POINT 7

  • 国際取引で準拠法を日本法にする紛争解決と執行
  • 1. 相手方資産の所在地を確認:銀行口座、売掛金、在庫、知財、株式、不動産の所在地を把握します。
  • 2. 日本判決を執行しやすいか:承認・執行法制、送達、公序、相互保証が問題にならないかを確認します。
  • 3. 国際仲裁を検討:ニューヨーク条約の枠組み、仲裁地、機関、言語、仲裁人を定めます。
  • 4. 日本裁判所も候補:東京地方裁判所などの専属管轄と送達・翻訳実務を明記します。

POINT 8

  • 国際取引で準拠法を日本法にする契約類型別ポイント
  • 売買、代理店、ライセンス、SaaS、M&A、業務委託、金融で見るべき論点です。
  • 準拠法交渉の重要度は、契約類型によって変わります。
  • 各項目の右側の説明から、準拠法条項で処理する部分と、別条項や現地法確認が必要な部分を読み分けます。
  • 現地の代理店保護法、競争法、フランチャイズ 規制、解除通知期間、補償金、商標使用、広告規制、競業避止を確認します。

まとめ

  • 国際取引で準拠法を 日本法にできるかの交渉
  • 国際取引で準拠法を日本法にできるかの交渉の全体像:日本法を選べる場面と、同時に設計すべき論点を先に整理します。
  • 国際取引で準拠法を日本法にできるかを見る基本用語:準拠法、管轄、仲裁、強行法規、公序、CISGを混同しないための整理です。
  • 国際取引で準拠法を日本法にできる法的根拠:通則法7条、8条、9条、13条を中心に、選べる範囲と限界を見ます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

国際取引で準拠法を日本法にできるかの交渉の全体像

日本法を選べる場面と、同時に設計すべき論点を先に整理します。

国際取引で準拠法を日本法にできるかは、多くの企業間取引では肯定的に考えられます。日本の国際私法である法の適用に関する通則法は、法律行為の成立と効力について、当事者が選択した地の法によるという考え方を置いています。

ただし、法的に日本法を選べることと、交渉上それが最も合理的であることは同じではありません。国際取引で準拠法を日本法にできるかの交渉では、準拠法、日本の裁判所、東京仲裁、契約書の言語、日本企業に有利な条件を別々の論点として扱う必要があります。

次の強調部分は、このページ全体の結論を示しています。準拠法条項だけを見るのではなく、紛争解決、強行法規、執行可能性、商業上の譲歩を組み合わせて読むことが重要で、交渉時にはどの要素を譲れないかを切り分ける手掛かりになります。

日本法準拠は可能でも、交渉設計が成否を分けます

日本法を契約準拠法にしつつ、紛争解決地をシンガポール、香港、ロンドン、ニューヨーク、パリなどに置く設計もあり得ます。逆に、日本の裁判所を選んでも、物権、担保、知財登録、労働、消費者、税務、データ保護には外国法が関わることがあります。

交渉で切り分けるべき主要論点は次の5つです。この一覧は、相手方とのやり取りで何を説明し、何を追加調査し、何を契約条項に落とすべきかを確認するためのものです。

Point 01

契約本体の法選択

契約の成立、解釈、履行義務、債務不履行、損害賠償、解除、時効などを日本法で判断できるかを検討します。

Point 02

裁判管轄または仲裁

日本の裁判所、東京仲裁、中立地仲裁、外国裁判所のどれを選ぶかで手続費用と相手方の受け止め方が変わります。

Point 03

強行法規の介入

消費者、労働、代理店、知財、税務、データ、輸出管理などは、日本法準拠だけでは排除できないことがあります。

Point 04

判決や仲裁判断の執行

相手方の資産がどこにあるか、日本判決または仲裁判断をその国で実行できるかを契約前から確認します。

Point 05

商業上の譲歩

準拠法を日本法にする代わりに、言語、仲裁地、仲裁人、責任制限、CISGの扱いなどでバランスを取ります。

要点国際取引で準拠法を日本法にできるかの交渉は、「日本法にしたい」と主張する場面ではなく、法選択、紛争解決、執行、強行法規、譲歩条件を組み合わせる設計問題です。
Section 01

国際取引で準拠法を日本法にできるかを見る基本用語

準拠法、管轄、仲裁、強行法規、公序、CISGを混同しないための整理です。

国際取引で準拠法を日本法にできるかを交渉する前に、似ている用語を分ける必要があります。用語の違いを押さえると、相手方が本当に拒否しているのが日本法なのか、日本の裁判所なのか、日本語手続なのかを読み分けられます。

次の比較表は、契約交渉で混同されやすい基本用語の役割を整理したものです。どの欄が契約の実体判断に関わり、どの欄が手続や執行に関わるかを読み取ると、条項の修正箇所を特定しやすくなります。

用語意味交渉上の注意点
準拠法契約の成立、解釈、履行義務、損害賠償、解除、時効などを判断する法です。英文契約ではGoverning Law、Applicable Lawなどと表現されます。
裁判管轄どの国や地域の裁判所で訴訟を行うかという問題です。準拠法を日本法にしても、外国裁判所で争う設計はあり得ます。
仲裁裁判所ではなく、当事者が選んだ仲裁人または仲裁廷に判断を委ねる制度です。仲裁機関、仲裁地、言語、仲裁人の人数を準拠法と別に定めます。
仲裁地仲裁手続を法的に支える国や地域です。単なる会議場所ではありません。東京を仲裁地にする場合、通常は日本の仲裁法が手続の基礎になります。
強行法規当事者の合意で排除できない法規範です。労働、消費者、競争、データ保護、輸出管理、税務などで問題になります。
公序法秩序の基本原則に反する結果を排除する考え方です。外国判決や仲裁判断の承認・執行が制限される理由になり得ます。
CISG国際物品売買契約に関する国連条約です。日本法を選んでも、国際物品売買ではCISGが適用される余地があります。

準拠法条項の基本表現

日本法を契約準拠法にする基本表現は、契約全体の解釈と履行を日本法に結び付けるためのものです。ただし、この一文だけでは裁判管轄、仲裁地、強行法規、CISG排除、執行可能性までは処理できません。

This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan.
本契約は、日本法に準拠し、日本法に従って解釈されるものとする。
注意準拠法と裁判管轄は別です。日本法を準拠法にしても、紛争解決地を外国に置くことはあり得ます。外国裁判所が日本法を適用する場合には、日本法の立証、専門家意見、翻訳、手続費用が問題になり得ます。

CISGを意識する理由

日本はCISGの締約国であり、日本については2009年8月1日に効力が発生しています。国際物品売買でCISGを排除したい場合は、単に日本法と書くだけでは足りない可能性があるため、CISGを適用しない旨を明記する設計が検討されます。

Section 03

国際取引で準拠法を日本法にする設計とハーグ原則

国際商事契約で法選択を説明し、一部に異なる法を置く考え方を整理します。

国際商事契約における法選択では、当事者自治と予測可能性が重視されます。ハーグ国際私法会議の国際商事契約における法選択に関するハーグ原則は拘束力のある条約ではありませんが、国際的な企業間取引で法選択を説明する際の参考になります。

次の比較表は、契約全体を単純に日本法へ寄せるのではなく、領域ごとに適用法を分ける考え方を示しています。どの項目を日本法で安定させ、どの項目を現地の強行法規や権利国法に委ねるかを読み取ることが重要です。

項目適用法の設計例
契約本体の解釈、履行、解除、損害賠償日本法
現地販売、広告、表示、消費者対応販売国の強行法
担保設定、登記、優先順位担保目的物所在地法
知財権の成立、有効性、登録権利国法
個人データ処理データ主体所在地、処理地などの強行法
税務、関税、輸出入、制裁各適用法

抵触法規則を除くという文言

英文契約では、選択した法の抵触法規則によって別の法へ戻る複雑化を避けるため、次のような文言を置くことがあります。この文言は日本法を選ぶ趣旨を明確にするものですが、強行法規や公序による制限まで消すものではありません。

excluding its conflict-of-laws rules
抵触法規則を除く日本法に準拠する。

次の判断の流れは、相手方が「日本法は取引と関係が薄い」と反論したときの検討順序を示します。上から順に、商事契約か、強行法規の例外があるか、紛争解決を中立化できるかを確認すると、法選択の説明が整理しやすくなります。

日本法選択を提案する前の判断の流れ

企業間の国際商事契約か

消費者契約や雇用契約では保護法制の制限が強くなります。

現地強行法規が関わるか

販売、労務、データ、輸出管理、税務、知財、担保を分けて確認します。

準拠法と紛争解決を分けられるか

日本法準拠と中立地仲裁、英語手続、3名仲裁人を組み合わせる余地を検討します。

懸念が残る
部分的な適用法を明記

現地規制、税務、データ、知財などを個別に切り分けます。

説明可能
日本法準拠を提案

契約条項の具体化と手続面の中立性を合わせて提示します。

Section 04

国際取引で準拠法を日本法にするメリットと反論への備え

日本企業側の利点と、相手方の不安を緩和する方法をまとめます。

日本企業にとって日本法準拠は、社内説明、契約審査、監査、紛争初動の予測可能性を高める効果があります。一方で、海外企業にとっては未知の法体系に見えるため、相手方の費用、言語、手続中立性への不安を減らす提案が必要です。

次の一覧は、日本法を選ぶ実務上の利点を整理したものです。各項目は、相手方を説得するためだけでなく、自社の社内承認で準拠法を日本法にする理由を説明する材料としても重要です。

Benefit 01

予測可能性が高い

社内法務、外部専門家、経営陣、監査、会計、税務、内部統制が日本法前提でリスクを把握しやすくなります。

Benefit 02

日本法制に沿ったリスク配分

債務不履行、損害賠償、契約不適合責任、解除、時効、保証、債権譲渡などを日本法の体系で検討できます。

Benefit 03

契約管理コストの抑制

外国法レビュー、翻訳、法律意見、専門家証人への依存を減らし、日本企業側の初期分析を進めやすくなります。

Benefit 04

日本の裁判や仲裁との親和性

日本法準拠と日本裁判所、または東京仲裁を組み合わせると、判断機関が日本法を扱いやすくなります。

次の比較表は、海外企業から出やすい反論と、それに対して検討できる緩和策を並べています。左欄が相手方の懸念、右欄が契約条項や交渉運営で示せる対応です。

相手方の反論対応の方向性
日本法を知らない英語契約、主要論点メモ、専門家レビュー期間、公式英訳の活用を提案します。
外国裁判所で日本法を適用する費用が不安日本裁判所、東京仲裁、日本法に詳しい仲裁人を選べる仕組みを検討します。
日本企業に有利すぎるように見える準拠法は日本法とし、仲裁地、言語、仲裁人構成で中立性を確保します。
CISGや損害賠償の扱いが不明CISGの適用有無、責任上限、間接損害、特別損害、逸失利益を明文化します。
現地法に反する可能性がある強行法規、許認可、税務、データ保護、輸出管理の例外を明記します。
交渉「日本法でなければ契約しない」と言うより、「契約準拠法は日本法とし、手続面は英語仲裁や中立仲裁人で調整する」と提案する方が合意形成しやすくなります。
Section 05

国際取引で準拠法を日本法にしても残る外国法リスク

消費者、労働、代理店、知財、データ、輸出管理、税務、倒産を確認します。

日本法を契約準拠法にしても、相手国、履行地、販売地、資産所在地、ユーザー所在地などの強行法規が適用されることがあります。ここを見落とすと、契約書上は日本法でも、現地で解除、補償、罰則、届出、データ移転、税務処理に問題が生じます。

次の一覧は、日本法準拠だけでは排除しにくい主なリスク領域です。各項目がどの所在地や取引類型と結び付くかを読み取ると、現地専門家に確認すべき範囲を絞り込めます。

消費者契約

越境EC、アプリ、SaaS、デジタルコンテンツ、旅行、金融サービス、サブスクリプションでは、ユーザー所在地の消費者保護法が問題になります。

労働契約

海外駐在、現地採用、業務委託と雇用の区別、リモートワーク、解雇、競業避止では、労務提供地法などを確認します。

販売代理店とフランチャイズ

解除通知期間、補償金、登録、情報開示、競業避止、価格拘束、テリトリー制限に現地法が介入することがあります。

知的財産権

特許、商標、意匠の成立、有効性、侵害、登録、税関差止めは権利国法の影響を受けます。

個人情報とデータ保護

データ主体、処理地、委託先、クラウド環境、越境移転、漏えい通知、AI利用、監督当局の権限を確認します。

輸出管理と経済制裁

外為法、米国制裁、EU制裁、国連制裁、再輸出規制は契約準拠法で自由に排除できません。

税務、関税、移転価格

ロイヤルティ、サービスフィー、技術支援料、コミッションでは、源泉税、VAT/GST、関税評価、PE認定を確認します。

倒産、再生、執行

倒産手続、相殺、否認、担保権実行、優先債権、管財人の権限は倒産手続地法の影響を受けます。

次の比較表は、準拠法よりも実効性が重要になりやすい回収手段を整理しています。相手方の信用リスクが高い場合は、日本法準拠の有無だけでなく、前払い、担保、保証、停止権などをどこまで条項化できるかを読み取ります。

リスク場面検討しやすい実効策
相手方の信用不安前払い、信用状、親会社保証、担保、所有権留保、エスクローを検討します。
段階的な履行が必要段階納品、検収、支払停止、期限の利益喪失、監査権を組み合わせます。
現地規制が不明許認可、制裁、輸出管理、税務、データ保護の表明保証と協力義務を置きます。
契約終了時の混乱在庫、データ、成果物、知財、秘密情報、顧客対応、移行支援を明記します。
Section 06

国際取引で準拠法を日本法にする紛争解決と執行

日本裁判所、国際仲裁、外国仲裁地、執行可能性を一体で検討します。

準拠法が日本法であっても、相手方が任意に履行しなければ、相手方資産のある国で強制執行を考える必要があります。日本法準拠は契約解釈の基礎であり、執行可能性を直接保証するものではありません。

次の判断の流れは、日本法準拠と紛争解決条項を組み合わせる際の検討順序です。上から順に、相手方資産、裁判と仲裁、手続地、言語、仲裁人構成を確認することで、勝った後に回収できるかという視点を早めに入れられます。

紛争解決と執行可能性の判断の流れ

相手方資産の所在地を確認

銀行口座、売掛金、在庫、知財、株式、不動産の所在地を把握します。

日本判決を執行しやすいか

承認・執行法制、送達、公序、相互保証が問題にならないかを確認します。

不安が大きい
国際仲裁を検討

ニューヨーク条約の枠組み、仲裁地、機関、言語、仲裁人を定めます。

説明可能
日本裁判所も候補

東京地方裁判所などの専属管轄と送達・翻訳実務を明記します。

次の比較表は、日本法準拠と紛争解決地の代表的な組合せです。各行の利点と弱点を読み比べると、準拠法を日本法にする代わりにどの手続条件を譲歩できるかが見えてきます。

組合せ利点注意点
日本法+日本裁判所日本法の解釈と手続が日本で行われ、社内説明や証拠整理がしやすくなります。相手方資産が日本にない場合、外国で日本判決を執行する必要があります。
日本法+東京仲裁日本法の予測可能性と国際仲裁の執行可能性を組み合わせやすくなります。仲裁人報酬、機関管理費、翻訳、専門家費用が高額になることがあります。
日本法+外国仲裁地相手方にとって中立的に見え、日本企業のホームという印象を下げられます。仲裁地法、取消裁判所、日本法に詳しい仲裁人の確保を確認します。
日本法+外国裁判所相手国の手続に合わせられる場合があります。外国裁判所で日本法を立証する費用と時間がかかることがあります。

仲裁条項で落とせない要素

準拠法条項だけでは、裁判か仲裁か、専属管轄か非専属管轄か、仲裁機関、仲裁地、仲裁人の数、仲裁人の資格、手続言語、仲裁合意の準拠法、仮処分、送達方法、契約書言語、電子署名、証拠開示、秘密保持が未確定のまま残ります。

重要仲裁機関名の誤記、仲裁地の不明確、仲裁人選任方法の欠落、言語の不明確、複数契約間の不整合、裁判管轄条項との矛盾は、紛争時に重大な争点になり得ます。
Section 07

国際取引で準拠法を日本法にする契約類型別ポイント

売買、代理店、ライセンス、SaaS、M&A、業務委託、金融で見るべき論点です。

準拠法交渉の重要度は、契約類型によって変わります。国際物品売買ではCISG、代理店では現地保護法制、ライセンスでは権利国法、SaaSではデータ保護が中心になり、同じ日本法準拠でも確認すべき項目が異なります。

次の一覧は、契約類型ごとに日本法準拠と合わせて確認すべき論点を整理したものです。各項目の右側の説明から、準拠法条項で処理する部分と、別条項や現地法確認が必要な部分を読み分けます。

国際物品売買

CISGの適用有無、所有権移転、危険移転、インコタームズ、検査期間、不適合通知、輸出入許可、製造物責任、関税、支払条件を明記します。

CISG輸出入

販売店・代理店

現地の代理店保護法、競争法、フランチャイズ規制、解除通知期間、補償金、商標使用、広告規制、競業避止を確認します。

現地保護法制解除補償

ライセンス・共同開発

対象知財、バックグラウンドIP、フォアグラウンドIP、改良発明、共同出願、独占性、ロイヤルティ、源泉税、輸出管理、侵害対応を具体化します。

権利国法技術移転

SaaS・クラウド・データ取引

データ保護、セキュリティ、サービスレベル、障害対応、再委託、越境移転、生成AI利用、ログ保存、データ削除を個別に設計します。

データ保護越境移転
M

M&A・株式譲渡・事業譲渡

対象会社の設立地法、会社法、金融規制、競争法、外資規制、税務、労務、知財、データ保護を複合的に確認します。

会社法外資規制

国際業務委託・開発委託

成果物、検収、知財帰属、再委託、秘密保持、個人情報、輸出管理、支払条件、終了後の返還を明確にします。

検収成果物

国際金融・担保

市場標準、貸主団、担保所在地、口座所在地、債権債務者所在地、金融規制により、日本法を選ぶ余地が変わります。

担保所在地市場標準
Section 08

国際取引で準拠法を日本法にする交渉戦略

日本法を通す理由、譲歩材料、相手方反論への回答を準備します。

交渉では、「当社が日本企業だから日本法にしたい」だけでは説得力が弱くなります。契約審査期間の短縮、内部統制、監査、予測可能性、条項の明確化、英語仲裁による中立性など、相手方が受け入れやすい理由に置き換える必要があります。

次の比較表は、日本企業側の希望と譲歩可能な代替案を並べたものです。左欄を維持したい場合に、右欄のどの条件で相手方の不安を下げられるかを読み取ると、交渉パッケージを作りやすくなります。

交渉項目日本企業側の希望例譲歩可能な代替案
契約準拠法日本法日本法+一部現地法、または中立法
裁判管轄東京地方裁判所非専属管轄、または仲裁への変更
仲裁地東京シンガポール、香港、ロンドンなど
仲裁機関JCAAICC、SIAC、HKIACなど
手続言語日本語英語
仲裁人日本法に詳しい仲裁人3名仲裁人、中立国籍の議長
CISG排除適用しつつ条項で修正
責任制限日本法前提の上限上限額、除外損害、補償範囲の明文化
強行法規日本法中心現地強行法規の例外を明記
執行日本判決仲裁判断

次の比較表は、相手方から出やすい典型的な反論と回答の方向性です。左欄の表現をそのまま感情的な拒否と見ず、右欄のように契約上の不安へ分解して対応することが重要です。

相手方の反論回答の方向性
日本法を知らない主要論点メモ、公式英訳、専門家レビュー期間を提供します。
日本の裁判所は不利に見える裁判ではなく英語仲裁、中立仲裁地、3名仲裁人を提案します。
日本語手続は困る契約言語と仲裁言語を英語にします。
CISGとの関係が不明CISGを適用するか排除するか明記します。
現地法に反する可能性がある強行法規、許認可、税務、データ保護の例外を置きます。
執行できるか不安相手方資産国を確認し、必要なら仲裁を選びます。
日本法では損害賠償が不十分損害項目、責任上限、補償、特別救済を条項で補います。
契約標準から外れる取引額、リスク、社内承認要件を説明し、部分修正案を示します。

契約書で不確実性を減らす

相手方が日本法を知らない場合、抽象的に日本法へ委ねるより、定義、注文、納品、検収、支払条件、表明保証、契約不適合、解除、損害賠償、責任上限、補償、秘密保持、個人情報、知財、監査権、不可抗力、制裁・輸出管理、腐敗防止、終了後の効果、言語優先順位、通知、完全合意、変更、譲渡を具体化する方が合意しやすくなります。

Section 09

国際取引で準拠法を日本法にする条項例

CISG排除、JCAA仲裁、東京地裁管轄、強行法規の例外、部分的準拠法を確認します。

以下の条項例は、一般的な構成を理解するためのものです。取引類型、相手国、資産所在地、税務、規制、紛争解決方針によって修正が必要であり、個別契約にそのまま使えるものではありません。

日本法準拠+CISG排除

国際物品売買で日本法を選び、CISGを排除したい場合に検討される構成です。契約の成立、有効性、解釈、履行、違反、終了、終了後の義務まで対象を広げ、CISGを適用しない旨を明記する点を読み取ります。

This Agreement and any dispute, controversy or claim arising out of or in connection with this Agreement, including its formation, validity, interpretation, performance, breach, termination and post-termination obligations, shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan, excluding its conflict-of-laws rules. The United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods shall not apply to this Agreement.
本契約ならびに本契約に起因しまたは関連する一切の紛争、論争または請求(本契約の成立、有効性、解釈、履行、違反、終了および終了後の義務を含む。)は、抵触法規則を除く日本法に準拠し、同法に従って解釈されるものとする。国際物品売買契約に関する国際連合条約は、本契約に適用されないものとする。

日本法準拠+JCAA仲裁+英語手続

日本法を準拠法としながら、紛争解決を仲裁に寄せる構成です。仲裁規則、仲裁地、手続言語、仲裁人の数、仲裁合意の準拠法を明記する点が重要です。

This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan, excluding its conflict-of-laws rules. All disputes, controversies or differences arising out of or in connection with this Agreement, including any question regarding its existence, validity, interpretation, performance, breach or termination, shall be finally settled by arbitration under the Commercial Arbitration Rules of the Japan Commercial Arbitration Association. The seat of arbitration shall be Tokyo, Japan. The language of arbitration shall be English. The number of arbitrators shall be three. The governing law of the arbitration agreement contained in this clause shall be the laws of Japan.
本契約は、抵触法規則を除く日本法に準拠し、同法に従って解釈されるものとする。本契約に起因しまたは関連して生じる一切の紛争、論争または意見の相違(本契約の存在、有効性、解釈、履行、違反または終了に関する問題を含む。)は、日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従い、仲裁により最終的に解決されるものとする。仲裁地は日本国東京とする。仲裁手続の言語は英語とする。仲裁人の数は3名とする。本条に含まれる仲裁合意の準拠法は日本法とする。

日本法準拠+東京地方裁判所専属管轄

日本裁判所での解決を前提にする構成です。日本法の解釈と訴訟手続を日本で進めやすい一方、相手方資産が海外にある場合の執行可能性を別に確認する必要があります。

This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan, excluding its conflict-of-laws rules. The Tokyo District Court shall have exclusive jurisdiction as the court of first instance over any dispute arising out of or in connection with this Agreement.
本契約は、抵触法規則を除く日本法に準拠し、同法に従って解釈されるものとする。本契約に起因しまたは関連して生じる一切の紛争については、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

強行法規・物権・知財・税務の例外

契約本体は日本法にしつつ、担保、物権、不動産、知財、税務、関税、労務、データ保護、制裁、輸出管理、倒産などは強行的に適用される法に従う趣旨を明確にする構成です。

Notwithstanding the governing law clause above, matters relating to the creation, perfection, priority or enforcement of security interests, title to or registration of real property or intellectual property rights, tax, customs, employment, data protection, sanctions, export control, insolvency, and other mandatory regulatory matters shall be governed by the laws mandatorily applicable to such matters.
上記準拠法条項にかかわらず、担保権の設定、対抗要件、優先順位もしくは実行、不動産または知的財産権の権原もしくは登録、税務、関税、労務、データ保護、制裁、輸出管理、倒産その他の強行的な規制事項については、当該事項に強行的に適用される法令に従うものとする。

部分的準拠法条項

契約全体を日本法にしつつ、別紙や特定の現地規制事項だけを別の法に寄せる構成です。どの部分だけを別法にするのかを限定する点が重要です。

Except as expressly provided otherwise in this Agreement, this Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan. Schedule 3 shall be governed by the laws of [Country/State] solely to the extent it concerns mandatory local regulatory requirements applicable to the distribution of the Products in [Territory].
本契約に別段の明示的な定めがある場合を除き、本契約は日本法に準拠し、同法に従って解釈されるものとする。別紙3は、[地域]における本製品の販売に適用される現地の強行的規制要件に関する限度で、[国・州]法に準拠するものとする。
Section 10

国際取引で準拠法を日本法にする実務チェックリスト

締結前、交渉時、締結後に分けて確認項目を整理します。

準拠法交渉は、契約締結の直前だけでなく、取引設計の初期から確認するほど精度が上がります。相手方、資産、履行地、販売地、データ処理地、税務、証拠、社内承認を早い段階で把握すると、準拠法と紛争解決の条項が現実に機能しやすくなります。

次のチェックリストは、契約締結前に確認すべき項目をまとめたものです。左欄で分野を確認し、右欄の質問に答えられない項目を追加調査の対象として読み取ります。

確認項目主な質問
当事者契約当事者はどの法人か。親会社保証は必要か。
所在地当事者、資産、履行地、販売地、データ処理地はどこか。
契約類型売買、委託、ライセンス、代理店、SaaS、M&A、金融のどれか。
強行法規消費者、労働、競争、データ、輸出管理、税務、金融、医薬などはないか。
CISG国際物品売買か。CISGを適用するか排除するか。
紛争解決裁判か仲裁か。仲裁地、機関、言語、仲裁人はどうするか。
執行相手方資産はどこにあり、判決・仲裁判断を執行できるか。
証拠証拠は日本語か英語か。電子データ、ログ、メールは保全できるか。
翻訳契約言語、参考訳、優先言語をどう定めるか。
税務支払名目、源泉税、VAT/GST、関税、移転価格に問題はないか。
社内承認準拠法、責任上限、紛争解決は社内基準を満たすか。

次の時系列は、交渉時から締結後までの管理項目を並べたものです。順番に沿って、相手方の拒否理由の切り分け、契約間の整合、証拠保存、規制変更の追跡を続けることが重要です。

交渉時

拒否理由を分解する

相手方が拒否しているのが日本法、日本裁判所、日本語手続、CISG排除、執行不安のどれかを切り分けます。

条項調整

複数契約の整合を確認する

契約本体、別紙、注文書、SOW、利用規約、データ処理契約の準拠法と紛争解決条項を合わせます。

締結後

契約管理システムへ登録する

準拠法、管轄、仲裁地、言語、更新期限、責任上限、解除条件を管理項目として登録します。

運用中

証拠と規制変更を追跡する

履行証拠、通知、ログ、メールを保存し、輸出管理、制裁、データ保護、税務の変更を継続的に確認します。

Section 11

国際取引で準拠法を日本法にする専門職連携

法務、外部専門家、知財、税務、労務、データ、内部統制の役割を分けます。

国際取引で準拠法を日本法にできるかの交渉は、法務担当だけで完結しません。契約の種類とリスクに応じて、税務、会計、知財、労務、データ保護、輸出管理、内部統制、翻訳の担当者が同じ前提で動く必要があります。

次の一覧は、専門職や社内担当ごとの主な役割を整理したものです。どの担当がどのリスクを見るかを読み取ることで、準拠法交渉を契約レビューだけに閉じず、事業運用と紛争対応までつなげられます。

専門職・担当主な役割
法務担当・企業内弁護士契約全体のリスク評価、社内方針、交渉方針、稟議、外部専門家管理を担います。
外部弁護士・外国法事務弁護士日本法上の有効性、外国法リスク、仲裁・訴訟戦略、強行法規、執行可能性を確認します。
仲裁人・ADR実務家仲裁条項、仲裁地、機関、言語、仲裁人選任、暫定保全、執行可能性を検討します。
知財法務担当・弁理士ライセンス、共同開発、商標使用、技術移転、権利国法、登録制度を確認します。
税理士・公認会計士源泉税、VAT/GST、移転価格、関税、収益認識、引当金、内部統制を確認します。
社会保険労務士・労務法務担当海外駐在、現地雇用、業務委託、リモートワーク、解雇、競業避止を確認します。
コンプライアンス・輸出管理・プライバシー担当制裁、贈収賄防止、輸出管理、データ保護、内部通報、インシデント対応を確認します。
内部監査・内部統制・リーガルオペレーション担当契約審査プロセス、承認権限、証跡保存、期限管理、法務KPIを管理します。
法律翻訳者・契約翻訳者英文契約と日本語訳の整合性、専門用語、条項間の矛盾防止を支えます。
Section 12

よくある誤解とFAQ

日本法準拠に関する誤解を、一般的な制度説明として整理します。

国際取引の準拠法交渉では、日本法、管轄、仲裁、CISG、強行法規、費用の話が混ざりやすくなります。次の一覧は誤解されやすい点を整理したもので、どこが別論点かを読み取ると、契約条項の修正方針を誤りにくくなります。

日本法にすれば日本で裁判できる

準拠法と裁判管轄は別です。日本法を選んでも、管轄条項がなければ外国で訴えられる可能性があります。

外国の強行法規は関係ない

労働、消費者、競争、データ保護、輸出管理、税務、金融、知財、不動産、倒産などは、当事者の法選択にかかわらず適用され得ます。

CISGは当然排除される

国際物品売買では、CISGが適用される可能性があります。排除したい場合は明示的な条項を置く設計が検討されます。

仲裁は必ず安い

国際仲裁は、仲裁人報酬、機関管理費、専門家費用、翻訳、証拠整理で高額になることがあります。

大企業相手の交渉は無理

標準契約を全面変更できなくても、重要条項の部分修正、強行法規の例外、データ処理契約、CISG排除などを交渉できる場合があります。

Q. 日本法準拠にすれば、外国法の確認は不要ですか。

一般的には、契約本体の解釈や履行義務を日本法で整理できる場合でも、消費者、労働、競争、データ保護、輸出管理、税務、知財、担保、倒産などには外国法が関わる可能性があります。取引類型、履行地、販売地、資産所在地、ユーザー所在地によって結論が変わるため、具体的な対応は資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q. 準拠法を日本法、仲裁地をシンガポールにできますか。

一般的には、契約準拠法と仲裁地を分ける設計はあり得ます。ただし、仲裁地法、仲裁判断取消しの管轄、仲裁人選任、手続言語、仲裁合意の準拠法、日本法の立証方法によって実務上の負担が変わる可能性があります。具体的な条項設計は、対象国と仲裁機関を確認したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q. CISGを排除しないと必ず不利になりますか。

一般的には、CISGを適用するか排除するかは、売買の内容、相手国、救済条項、検査通知、損害賠償、所有権移転、インコタームズとの関係によって評価が変わります。CISGを排除する場合も、適用する場合も、契約本文で売主・買主の救済を具体化する必要があります。

Q. 相手方が日本法を知らない場合、どう説明すればよいですか。

一般的には、社内承認、契約審査期間、内部統制、監査、紛争初動の予測可能性を理由として説明しつつ、英語契約、英語仲裁、中立仲裁人、主要論点メモ、レビュー期間を組み合わせる方法が検討されます。相手方の懸念が費用、言語、手続、中立性のどれにあるかで対応は変わります。

Q. 条項例をそのまま契約に入れてよいですか。

一般的には、条項例は構成を理解するための材料にとどまります。取引類型、相手国、資産所在地、税務、規制、データ、知財、執行可能性、社内承認によって修正が必要になる可能性があります。個別の契約では、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Reference

参考資料

法令・公的資料

  • 法の適用に関する通則法
  • 仲裁法
  • 民事訴訟法118条
  • 民事執行法24条
  • 最高裁判所平成9年7月11日判決(外国判決と懲罰的損害賠償に関する判例)

国際取引・仲裁に関する資料

  • Hague Principles on Choice of Law in International Commercial Contracts
  • Convention of 30 June 2005 on Choice of Court Agreements Status Table
  • Convention of 2 July 2019 on Recognition and Enforcement of Foreign Judgments in Civil or Commercial Matters Status Table
  • Convention on the Recognition and Enforcement of Foreign Arbitral Awards
  • United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods
  • Japan Commercial Arbitration Association Model Arbitration Clauses