2σ Guide

反社会的勢力排除条項による解除の実務

反社条項による解除は、条項の有無だけでは決まりません。契約根拠、該当事実、証拠、社内手続、解除後の影響をそろえ、組織として安全に関係遮断するための実務を整理します。

10段階解除実務
5要素解除前確認
3水準証拠評価
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Overview

目次

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

  1. このページの目的と前提
  2. 「反社会的勢力」とは何か
  3. 反社会的勢力排除条項の法的性質
  4. 解除実務の全体像
  5. 契約締結前の反社チェック
  6. 条項設計の実務
  7. 解除判断の要件整理
  8. 証拠・調査・外部機関連携
  9. 解除通知の作成と送付
  10. 解除後の処理
  11. 既存契約・約款・グループ会社・再委託先への対応
  12. 典型場面別の実務ポイント
  13. 紛争化した場合の主張立証
  14. 実務チェックリスト
  15. 条項例・通知例
  16. 参考資料
Video

反社会的勢力排除条項による解除の実務

反社条項による解除は、条項の有無だけでは決まりません。

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反社会的勢力排除条項による解除の実務
反社条項による解除は、条項の有無だけでは決まりません。
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  • 反社会的勢力排除条項による解除の実務
  • 反社条項による解除は、条項の有無だけでは決まりません。

POINT 1

  • 目次
  • 反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

POINT 2

  • 反社会的勢力排除条項による解除の目的と前提
  • 反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。
  • 契約根拠
  • 証拠評価
  • 解除後処理

POINT 3

  • 2. 「反社会的勢力」とは何か
  • 反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。
  • 2.1 一般的な定義
  • 2.2 暴力団、暴力団員、暴力団関係者
  • 2.3 政府指針の五原則

POINT 4

  • 3. 反社会的勢力排除条項の法的性質
  • 反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。
  • 3.1 約定解除権としての位置づけ
  • 3.2 表明保証違反としての位置づけ
  • 3.3 誓約条項としての位置づけ

POINT 5

  • 4. 解除実務の全体像
  • 1. 端緒の把握:営業、法務、コンプライアンス、内部通報窓口で疑義を把握します。
  • 2. 契約と証拠の確認:解除条項、該当事実、証拠、同一性、社内決裁を確認します。
  • 3. 外部相談とリスク評価:警察、暴追センター、弁護士等への相談要否と安全対策を整理します。
  • 4. 解除通知・取引停止:通知方法、効力発生日、債権債務、情報・アカウント処理を進めます。
  • 5. 追加調査・保留:相手方説明要求、取引制限、継続監視を検討します。

POINT 6

  • 5. 契約締結前の反社チェック
  • 反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。
  • 5.1 反社チェックは解除実務の前提である
  • 5.2 取得すべき基本情報
  • 5.3 調査方法の限界

POINT 7

  • 6. 条項設計の実務
  • 反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。
  • 6.1 条項設計の基本構造
  • 6.2 定義条項の注意点
  • 6.3 表明保証の対象者

POINT 8

  • 7. 解除判断の要件整理
  • 1. 契約根拠を確認:暴排条項、誓約書、約款、個別契約、解除対象範囲を特定します。
  • 2. 該当事実と証拠を評価:属性、行為、関係性、同一性、情報源の信頼性を確認します。
  • 3. 手続と影響を整理:社内決裁、外部相談、通知方法、債権債務、システム、役職員安全を確認します。
  • 4. 解除・取引停止を具体化:通知文案、到達方法、解除後処理、外部対応を詰めます。
  • 5. 追加調査・保留:相手方説明要求、外部相談、継続監視、取引制限を検討します。

まとめ

  • 反社会的勢力排除条項による解除の実務
  • 目次:反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。
  • 反社会的勢力排除条項による解除の目的と前提:反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。
  • 2. 「反社会的勢力」とは何か:反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Section 01

反社会的勢力排除条項による解除の目的と前提

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

次の重要ポイント一覧は、解除実務で同時に管理すべき三つの視点を整理しています。なぜ重要かというと、通知だけを急ぐと、証拠・社内決裁・解除後処理のどこかが不足し、紛争時に説明が難しくなるためです。契約、証拠、安全の三点がそろっているかを確認してください。

CONTRACT

契約根拠

契約書、約款、申込書、誓約書に、表明保証、誓約、調査協力、無催告解除があるかを確認します。

EVIDENCE

証拠評価

公的資料、外部相談、報道、録音、社内記録、同姓同名確認を整理し、風評だけの断定を避けます。

SAFETY

解除後処理

債権債務、在庫、情報、アカウント、再委託先、役職員安全、社内外説明を同時に処理します。

このページは、企業法務、コンプライアンス、内部監査、リスクマネジメント、経営管理、取引審査、契約管理に携わる実務家、ならびに反社会的勢力との関係遮断に悩む企業経営者・担当者を対象に、「反社会的勢力排除条項による解除の実務」を体系的に整理するものです。

反社会的勢力排除条項は、契約書の末尾に置かれる定型的な条項に見えやすい。しかし、実際に解除する局面では、単に「反社条項があるから解除する」という発想だけでは足りません。解除の有効性、証拠の十分性、相手方への通知方法、警察・暴力追放運動推進センター・弁護士との連携、社内決裁、取引停止後の債権債務処理、再委託先・関連契約への波及、風評・名誉毀損・個人情報保護への配慮まで、複数の実務課題が同時に発生します。

このページは一般的な法務実務の解説であり、個別事案に対する法律意見ではありません。実際の解除、取引停止、通報、訴訟、仮処分、刑事対応を行う場合には、事案の証拠関係、契約文言、業種規制、条例、社内規程、取引の公共性、相手方属性、継続取引の実態を確認したうえで、弁護士その他の専門家に相談する必要があります。

Section 02

2. 「反社会的勢力」とは何か

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

次の重要ポイント一覧は、政府指針の五原則を解除実務に置き換えたものです。なぜ重要かというと、原則を抽象論で終わらせず、通知前後の具体的な行動に変換する必要があるためです。各項目から、自社の解除手続に不足する行動を確認してください。

1

組織対応

事業部門だけで判断せず、法務、コンプライアンス、経営、内部監査が関与します。

体制決裁
2

外部連携

警察、暴追センター、弁護士、業界団体、フォレンジック専門家へ必要に応じて相談します。

相談証拠
3

関係遮断

契約、個別発注、アカウント、再委託先、情報アクセス、支払を整理します。

遮断安全
4

法的対応

解除、仮処分、訴訟、被害届、刑事告訴などを検討します。

民事刑事
5

資金提供禁止

口止め料、迷惑料、協賛金、便宜供与などに流れず、窓口を一本化します。

禁止統制

2.1 一般的な定義

「反社会的勢力」という語は、すべての法令で完全に同一の定義が置かれている概念ではありません。実務では、政府指針、金融庁監督指針、警察庁資料、各都道府県の暴力団排除条例、業界団体のモデル条項、企業の社内規程を組み合わせて理解します。

金融庁の監督指針では、反社会的勢力を属性面と行為面の双方から把握する考え方が示されています。属性面では、暴力団、暴力団員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等が典型です。行為面では、暴力的要求行為、法的責任を超えた不当要求、脅迫的言動・暴力、風説流布・偽計・威力による信用毀損または業務妨害などが問題となります。

反社会的勢力排除条項による解除の実務では、この「属性」と「行為」の二軸を分けて考えることが重要です。相手方が暴力団員等であることが明らかな場合と、相手方自身の属性は不明だが、取引担当者が脅迫的言動や不当要求をしている場合とでは、解除根拠、証拠、通知文言、社内説明の組み立てが異なります。

2.2 暴力団、暴力団員、暴力団関係者

東京都暴力団排除条例では、「暴力団」「暴力団員」「暴力団関係者」などの概念が定められています。条例上の「暴力団関係者」には、暴力団員のほか、暴力団または暴力団員と密接な関係を有する者が含まれます。

ただし、「密接な関係」は安易に認定してよい概念ではありません。警視庁の解説では、暴力団員と幼なじみである、写真に一緒に写っている、親族に暴力団員がいる、風評がある、といった事情だけで直ちに暴力団関係者と判断するわけではないと説明されています。一方で、暴力団員と認識しながら頻繁にゴルフや会食をする、暴力団事務所の行事に参加する、暴力団の威力を利用する、利益供与をする、といった事情は「社会的に非難されるべき関係」と評価され得る。

この点は解除実務上きわめて重要です。相手方を反社会的勢力であると断定することは、取引停止だけでなく名誉・信用に重大な影響を及ぼします。したがって、企業は、風評、匿名情報、インターネット上の断片的情報だけで解除に踏み切るのではなく、客観資料、外部専門機関の照会結果、相手方からの説明、過去の取引経過、契約条項の文言を総合評価すべきです。

2.3 政府指針の五原則

反社会的勢力対応の基本姿勢として、金融庁監督指針にも引用されている政府指針の考え方が実務の基礎となります。主要な要素は、次の五つです。

  1. 組織として対応すること
  2. 外部専門機関と連携すること
  3. 取引関係を含め一切の関係を遮断すること
  4. 有事において民事・刑事の法的対応を行うこと
  5. 裏取引や資金提供を禁止すること

反社会的勢力排除条項による解除は、この五原則のうち、特に「取引関係を含めた一切の関係遮断」と「有事における民事・刑事の法的対応」の実践です。ただし、関係遮断は、感情的・場当たり的に取引を切ることではありません。証拠に基づき、社内外の専門家と連携し、法的リスクを管理しながら、契約上・実務上の接点を最小化する作業です。

Section 04

4. 解除実務の全体像

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

次の判断の流れは、解除実務の入口から通知後処理までの進み方を示します。なぜ重要かというと、解除通知だけを先行させると、証拠、決裁、解除後のシステム停止や清算が追いつかないためです。上から下へ順に確認し、最後に遮断後の接点管理まで必要な点を読み取ってください。

解除実務の進め方

端緒の把握

営業、法務、コンプライアンス、内部通報窓口で疑義を把握します。

契約と証拠の確認

解除条項、該当事実、証拠、同一性、社内決裁を確認します。

外部相談とリスク評価

警察、暴追センター、弁護士等への相談要否と安全対策を整理します。

要件充足
解除通知・取引停止

通知方法、効力発生日、債権債務、情報・アカウント処理を進めます。

要件不足
追加調査・保留

相手方説明要求、取引制限、継続監視を検討します。

反社会的勢力排除条項による解除の実務は、次の順序で進めるのが基本です。

段階実務作業主な担当
1端緒の把握営業、法務、コンプライアンス、内部通報窓口
2契約書・約款・申込書・保証書の確認法務、企業内弁護士、外部弁護士
3反社該当性または不当要求行為の事実確認法務、コンプライアンス、調査部門、外部専門家
4証拠保全法務、内部監査、デジタルフォレンジック担当
5外部機関への相談警察、暴追センター、弁護士、業界団体
6リスク評価法務、経営、リスク管理、事業部門
7解除・取引停止の決裁権限者、取締役会、コンプライアンス委員会
8解除通知・取引停止通知法務、弁護士、担当部署
9解除後の債権債務・在庫・情報・システム処理経理、営業、購買、IT、法務
10紛争・報復・不当要求への対応経営、法務、警察、弁護士

重要なのは、入口段階から「解除通知を出すこと」だけをゴールにしないことです。反社会的勢力排除条項による解除の目的は、相手方との契約関係を適法・安全に遮断し、自社・役職員・顧客・株主・取引先を守ることです。したがって、解除通知の前後で、物品・金銭・情報・システム・人員・顧客接点・再委託先・共同事業・保証関係がどのように動くかを具体的に設計しなければなりません。

Section 05

5. 契約締結前の反社チェック

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

5.1 反社チェックは解除実務の前提である

反社会的勢力排除条項による解除を適切に行うには、契約締結前の反社チェックが不可欠です。締結前に何を確認したか、どの資料を取得したか、どのデータベースを照会したか、どの部署が承認したかが、後日の解除判断や訴訟対応で重要な証跡となります。

金融庁監督指針は、取引開始前の適切な事前審査、契約書や取引約款への暴力団排除条項の導入、既存契約についても必要に応じた対応を求める考え方を示しています。また、金融庁のパブリックコメント回答では、すべての契約書に一律に排除条項を導入することが当然に求められるわけではないが、契約関係や取引状況に応じて適切に排除できる体制が必要であるという考え方が示されています。

5.2 取得すべき基本情報

企業間取引で最低限取得すべき情報は、次のとおりです。

区分取得情報
法人基本情報商号、本店所在地、法人番号、登記簿、代表者、役員、事業内容
実質支配情報株主、親会社、実質的支配者、支配関係、資本関係
取引関係者代理人、媒介者、紹介者、再委託先、保証人、実務担当者
本人確認情報代表者・個人事業主の氏名、生年月日、住所、本人確認資料
取引目的取引の目的、資金使途、商品・サービスの利用目的
契約関連資料申込書、見積書、発注書、取引基本契約、誓約書
審査結果データベース照会結果、新聞記事検索、社内承認記録

警視庁の解説では、警察等へ相談する場合に、対象者の氏名、生年月日、住所、契約書、疑わしいと考える理由を示す資料を準備することが望ましいとされています。この実務は、解除時だけでなく契約前審査にも応用できます。

5.3 調査方法の限界

反社チェックには限界があります。一般企業が警察の内部情報に自由にアクセスできるわけではありません。商業登記、新聞記事、インターネット検索、反社チェックサービス、業界情報、社内データベース、過去の取引履歴には、それぞれ誤情報、同姓同名、古い情報、風評情報、名誉毀損リスクがあります。

したがって、反社チェックの目的は「絶対に見落とさないこと」ではなく、「取引リスクに応じた合理的な確認を行い、その過程を記録すること」です。高リスク取引、公共性の高い取引、現金性の高い取引、匿名性の高い取引、第三者を介した取引、反社利用リスクの高い不動産・金融・建設・芸能・広告・産廃・警備・人材・中古品・暗号資産関連取引では、通常よりも深い確認が必要となります。

Section 06

6. 条項設計の実務

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

6.1 条項設計の基本構造

実務上、反社条項は次の部品で構成します。

  1. 定義条項
  2. 表明保証条項
  3. 誓約条項
  4. 調査協力条項
  5. 再委託先・代理人・媒介者への流用条項
  6. 無催告解除条項
  7. 期限の利益喪失条項
  8. 損害賠償・費用負担条項
  9. 解除による損害不補償条項
  10. 残存条項

単純なひな形では、「甲または乙が暴力団等に該当する場合、相手方は催告なく解除できる」といった一文に留まることがあります。しかし、実際の紛争では、役員、実質支配者、株主、従業員、代理人、紹介者、再委託先、保証人、共同事業者、フランチャイズ加盟者など、誰の属性を問題にできるのかが争点になる。したがって、契約類型に応じて対象範囲を具体化する必要があります。

6.2 定義条項の注意点

定義条項は広く書きすぎても狭く書きすぎても問題があります。

狭すぎる定義では、暴力団員本人にしか適用できず、暴力団関係企業、実質支配、名義利用、資金提供、便宜供与、威力利用、不当要求に対応できません。逆に広すぎる定義では、単なる風評、遠い親族関係、過去の接触、社会的に非難できない関係まで含むように読めてしまい、解除の相当性が疑われる。

実務上は、政府指針・警察庁資料・都道府県条例・業界モデル条項で一般に用いられる概念を基礎にしつつ、「これらに準ずる者」という包括文言を置きます。ただし、包括文言だけで解除するのではなく、解除通知では具体的な該当事由をできる限り特定します。

6.3 表明保証の対象者

表明保証の対象者は、契約相手方本人だけでは不十分です。法人取引では、次の者を含めることを検討します。

  • 代表者
  • 役員
  • 執行役員
  • 実質的支配者
  • 主要株主
  • 親会社・子会社
  • 代理人
  • 媒介者
  • 取引担当者
  • 再委託先
  • 共同事業者
  • 保証人
  • 名義貸し先

ただし、全ての契約で同じ範囲にすべきではありません。たとえば、少額のスポット購入と、長期の販売代理店契約、資金供与を伴う金融取引、フランチャイズ契約、公共工事、M&A、ライセンス契約では、相手方に求める調査・表明の範囲は異なります。

6.4 調査協力条項

解除実務で盲点になりやすいのが、調査協力条項です。反社該当性が疑われる場面では、相手方に対して、役員名簿、株主構成、実質的支配者情報、再委託先情報、代理人・紹介者情報、本人確認書類、取引目的の説明、誓約書、排除条項付き契約の写しなどを求める必要が生じます。

調査協力条項がなければ、相手方が資料提出を拒否したときに、それ自体を契約違反として扱いにくい。そこで、一定の合理的疑いがある場合、または定期審査に必要な場合には、相手方が合理的範囲で資料提出・説明に協力する義務を負うと定めます。

6.5 再委託先・代理人・媒介者条項

反社会的勢力との関係は、直接の契約相手方ではなく、再委託先、紹介者、代理店、販売店、ブローカー、コンサルタント、物流業者、施工業者、下請業者、フランチャイズ加盟者を通じて生じることが多い。

東京都暴力団排除条例18条は、事業者が契約を締結する際、相手方やその代理人・媒介者が暴力団関係者であることが判明した場合に催告なく解除できる旨を定める努力義務を置き、関連契約についても同様の措置を求める趣旨の規定を置いています。この考え方は、一般企業の契約実務にも重要な示唆を与える。

Section 07

7. 解除判断の要件整理

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

次の判断の流れは、解除判断で五要素と証拠レベルをどう使うかを示しています。なぜ重要かというと、契約根拠と証拠が弱い段階で通知へ進むと紛争化しやすいためです。上から順に確認し、最後の分岐で解除検討か追加確認かを読み取ってください。

解除判断の流れ

契約根拠を確認

暴排条項、誓約書、約款、個別契約、解除対象範囲を特定します。

該当事実と証拠を評価

属性、行為、関係性、同一性、情報源の信頼性を確認します。

手続と影響を整理

社内決裁、外部相談、通知方法、債権債務、システム、役職員安全を確認します。

そろう
解除・取引停止を具体化

通知文案、到達方法、解除後処理、外部対応を詰めます。

不足
追加調査・保留

相手方説明要求、外部相談、継続監視、取引制限を検討します。

7.1 解除判断で確認すべき五つの要素

反社会的勢力排除条項による解除を行う前に、最低限、次の五つを確認します。

要素確認事項
契約根拠契約書・約款・申込書・誓約書に解除条項があるか
該当事実相手方が条項上の反社会的勢力または禁止行為に該当するか
証拠該当事実を裏付ける資料があるか
手続社内決裁、外部相談、通知方法、相手方対応方針が整理されているか
影響債権債務、顧客、システム、在庫、再委託先、役職員安全への影響を把握したか

この五要素がそろわないまま解除すると、解除無効、債務不履行、損害賠償、仮処分、信用毀損、業務妨害、個人情報保護法上の問題を招くおそれがあります。

7.2 証拠の強さに応じた判断

証拠の強さは、次のように分類して考える。

証拠レベル実務対応
警察・暴追センター等からの具体的助言、公的資料、判決、報道、本人の認める資料、登記・契約資料の整合解除を具体的に検討。通知文言と安全対策を精査
複数の信用できる外部情報、取引先証言、過去トラブル、脅迫的言動の録音、社内記録追加調査、弁護士相談、相手方説明要求、取引制限を検討
匿名通報、噂、単発のネット投稿、同姓同名情報、写真だけ直ちに解除せず、裏付け調査と記録化を行う

警視庁の解説が示すとおり、単なる風評、親族関係、写真、幼なじみといった事情のみで暴力団関係者と評価することは慎重でなければなりません。

7.3 「催告なく解除」の意味

反社条項では「何らの催告を要せず解除できる」と定めることが多い。これは、相手方に改善期間を与えなくても契約を終了できるという意味です。

もっとも、無催告解除が可能であることと、事実確認を省略してよいことは別です。相手方が本当に条項に該当するか、同姓同名ではないか、役員退任等により関係が切れていないか、条項上の対象者に含まれるか、解除以外の措置が必要かを確認する必要があります。証拠があいまいな場合には、相手方へ照会し、説明・資料提出を求めることもあります。

7.4 解除と取引停止の区別

「解除」と「取引停止」は同じではありません。解除は既存契約を終了させる法律行為です。取引停止は、今後の新規取引を行わない、発注を止める、与信を停止する、アカウントを停止する、出荷を止める、といった業務上の措置を含む。

契約上、個別発注済みの商品・サービスを一方的に止められるか、継続的供給義務を停止できるか、既発生債権をどう扱うかは、契約文言と取引実態による。解除通知と同時に取引停止を行う場合は、どの契約、どの注文、どのアカウント、どのサービス、どの支払を対象とするのかを明確にする必要があります。

Section 08

8. 証拠・調査・外部機関連携

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

8.1 証拠保全の基本

反社該当性や不当要求の端緒を把握したら、まず証拠を保全します。保全すべき資料は次のとおりです。

  • 契約書、約款、申込書、発注書、請求書、覚書、誓約書
  • 商業登記、法人番号情報、株主情報、役員情報
  • 反社チェック結果、審査記録、承認記録
  • メール、チャット、SMS、SNS、通話記録、面談メモ
  • 録音、録画、防犯カメラ映像、来訪記録
  • 不当要求の内容、日時、場所、同席者、発言内容
  • 送金記録、資金使途、請求内容
  • 再委託先・紹介者・媒介者の情報
  • 外部機関相談の記録

証拠保全では、後から改ざんを疑われないように、取得日時、取得者、保管場所、アクセス権限を記録します。デジタル証拠については、スクリーンショットだけでなく、元データ、ヘッダー情報、ログ、バックアップも確認します。重大事案では、デジタルフォレンジック専門家の関与を検討します。

8.2 警察・暴追センター・弁護士との連携

反社会的勢力対応では、外部専門機関との連携が原則です。金融庁監督指針も、外部専門機関との連携を政府指針の基本原則として示しています。

実務上は、以下の役割分担が考えられます。

外部機関主な役割
警察暴力団関係情報、不当要求、脅迫、業務妨害、被害防止の相談
暴力追放運動推進センター民間暴排実務、相談、講習、助言
弁護士解除可否、通知文、証拠評価、仮処分・訴訟・刑事告訴の助言
業界団体モデル条項、業界慣行、共同対応方針
フォレンジック専門家電子証拠保全、ログ解析、不正調査

外部機関に相談する際は、相談内容を社内で限定共有し、不要な噂の拡散を避けます。相談した事実や警察からの助言内容を、相手方にそのまま開示してよいとは限らません。安全配慮、捜査・情報源保護、名誉毀損、個人情報保護の観点から、解除通知にどこまで書くかは弁護士と検討します。

8.3 社内体制

反社対応は、担当者個人に任せてはなりません。相手方からの威迫、執拗な電話、来訪、SNS拡散、取引先への接触、役員宅への接近など、人的安全に関わるリスクがあるからです。

実務上は、次の体制を整える。

  • 反社対応責任者を明確にする
  • 事業部門単独の交渉を禁止する
  • 面談は複数名で行い、場所・時間を管理する
  • 不当要求には応じず、即答しない
  • 裏取引、口止め料、迷惑料、紹介料、寄付、広告協賛金を支払わない
  • 来訪対応マニュアルを整備する
  • 警備・受付・総務・広報・IR・人事と連携する
  • 役員・従業員の安全確保を検討する
Section 09

9. 解除通知の作成と送付

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

次の注意要素一覧は、解除通知に書くか慎重に検討すべき事項を示します。なぜ重要かというと、通知文は後日、裁判所、警察、取引先、金融機関、報道機関、相手方関係者に見られる可能性があるためです。必要最小限で客観的な記載にとどめる読み方をしてください。

情報源の詳細

警察・暴追センターから得た情報や社内通報者の情報は、開示範囲を慎重に検討します。

未確認の風評

匿名情報や単発のネット投稿を断定的に書くと、名誉・信用に関する紛争を招きます。

侮辱的表現

感情的表現ではなく、契約条項に基づく判断として客観的に記載します。

第三者情報

解除根拠と無関係な個人情報や第三者情報は記載しません。

9.1 解除通知の基本構造

解除通知は、簡潔で、事実に基づき、契約根拠を明確にし、感情的表現を避けます。典型的な構造は次のとおりです。

  1. 契約の特定
  2. 解除条項の特定
  3. 解除事由の概要
  4. 解除の意思表示
  5. 解除日または効力発生日
  6. 解除後の処理
  7. 連絡窓口
  8. 不当要求等への対応方針

解除通知では、「貴社は反社会的勢力である」と断定的に書くか、「当社は、貴社が本契約第○条第○項に定める事由に該当すると判断した」と書くかで、名誉毀損・信用毀損・証拠開示リスクが異なります。相手方への説明義務、契約文言、将来の訴訟での主張立証を踏まえて表現を選ぶ。

9.2 通知方法

解除通知は、契約で定められた通知方法に従う。一般的には、内容証明郵便、配達証明、電子契約システム、登録済みメール、契約管理システム上の通知、手交などが用いられる。

内容証明郵便は、送付内容と日付を証明しやすいです。一方で、相手方が受領拒否する、住所不明、代表者不在、実質的な連絡先が異なる、といった問題もあります。重要な解除では、内容証明郵便に加え、契約上の通知先メール、担当者メール、電子契約システム、FAX、宅配便など複数手段を併用することがあります。ただし、過度な通知や第三者への通知は、名誉毀損・信用毀損リスクを伴う。

9.3 解除通知に書かない方がよい事項

解除通知には、必要以上に詳細な情報を書かない方がよい場合があります。

  • 警察・暴追センターから得た情報の詳細
  • 情報提供者の氏名
  • 社内通報者の情報
  • 未確認の風評
  • 侮辱的表現
  • 相手方の犯罪歴等に関する不正確な記載
  • 第三者の個人情報
  • 解除根拠と無関係な批判

解除通知は、後日、裁判所、警察、取引先、金融機関、報道機関、相手方の関係者に見られる可能性があります。したがって、客観的で必要最小限の記載にとどめることが実務上望ましい。

Section 10

10. 解除後の処理

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

10.1 債権債務の整理

解除後には、債権債務の処理が問題となります。

  • 既に納品された商品・役務の代金を支払うか
  • 未納品部分をキャンセルするか
  • 前払金を返還するか
  • 保証金・敷金を返還するか
  • 違約金・損害賠償を請求するか
  • 相殺できるか
  • 期限の利益を喪失させるか
  • 既発生債権の回収をどう行うか

反社会的勢力との関係遮断を徹底する必要がある一方、法的根拠なく金銭を不払いにすると、相手方から請求を受けるリスクがあります。既発生債権債務については、契約条項、民法、業法、税務、会計処理、資金決済、マネロン対策の観点から整理します。

10.2 物品・情報・アカウントの回収

解除に伴い、貸与物、秘密情報、個人情報、アカウント、ID、入館証、端末、制服、サンプル、図面、ソースコード、顧客データ、営業資料、商標使用権などを回収・停止します。

特に、システムアクセス権限は迅速に停止します。反社会的勢力対応では、解除通知後に相手方がデータを削除する、顧客に連絡する、SNSで攻撃する、機密情報を持ち出す、といったリスクがあります。解除前にIT部門と連携し、停止手順、バックアップ、ログ保存、問い合わせ窓口を整備します。

10.3 社内外への説明

解除後、社内外への説明が必要となることがあります。たとえば、営業担当、顧客、再委託先、金融機関、監査役、取締役会、内部監査、監査法人、親会社、上場会社の適時開示担当、行政機関への説明です。

説明は、必要最小限・事実ベース・権限者限定が原則です。「反社だったから切った」と社内で広く共有することは、名誉毀損、個人情報保護、情報管理、報復リスクを高める。共有文案は法務・コンプライアンスが作成し、必要に応じて弁護士レビューを受ける。

Section 11

11. 既存契約・約款・グループ会社・再委託先への対応

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

11.1 既存契約に反社条項がない場合

既存契約に反社条項がない場合でも、何もできないわけではありません。ただし、反社条項がある場合よりも慎重な検討が必要です。

考えられる対応は次のとおりです。

  1. 契約更新時に反社条項を追加する
  2. 覚書・誓約書で表明保証を追加する
  3. 通常の中途解約条項を利用する
  4. 契約違反・債務不履行があれば民法上の解除を検討する
  5. 不当要求・脅迫・業務妨害があれば民事・刑事対応を検討する
  6. 契約目的自体が違法・公序良俗に反する場合には無効等を検討する
  7. 相手方と合意解約する

最高裁平成28年判決が示すように、反社会的勢力でないことが当然に契約内容になっているとは限らません。したがって、条項がない場合に「反社だから当然解除できる」と単純に考えるのは危険です。契約目的、業種、公共性、法令・条例、相手方の行為、既存の解除条項を精査する必要があります。

11.2 約款型取引・利用規約

SaaS、EC、プラットフォーム、金融サービス、会員制サービス、フランチャイズ、ポイントサービスなどでは、利用規約や約款に反社条項を置きます。既存会員に対して条項を追加・改定する場合には、定型約款の変更に関する民法548条の4を含め、変更の合理性、周知方法、効力発生日、変更履歴を確認する必要があります。

実務上は、利用規約に次の事項を明記します。

  • 反社会的勢力の定義
  • 会員登録時・利用期間中の表明保証
  • 禁止行為
  • 反社該当時のアカウント停止・解除・利用制限
  • 未払い金・残高・ポイント・データの扱い
  • 反社調査への協力
  • 再登録禁止
  • 損害賠償・費用負担

ただし、生活インフラに近いサービスや消費者契約では、利用停止の影響、消費者契約法、電気通信事業法、資金決済法、個人情報保護法なども検討する必要があります。

11.3 グループ会社・海外子会社

グループ会社を含む取引では、一社だけが解除しても、別会社が取引を継続していれば関係遮断が不十分となります。グループ共通の反社管理規程、審査基準、取引停止リスト、相談窓口、情報共有ルールを整備する必要があります。

ただし、反社情報は個人情報・機微情報・信用情報を含む可能性があります。グループ内共有であっても、利用目的、共有範囲、アクセス権限、保存期間、記録管理を明確にします。海外子会社が関与する場合には、現地法、制裁法、AML/CFT、贈収賄規制、プライバシー法制も確認します。

11.4 再委託先・下請・代理店

反社排除の実効性は、サプライチェーン管理に左右される。元請が健全でも、下請、再下請、代理店、販売店、施工業者、物流業者、イベント運営会社、警備会社、人材派遣会社が反社会的勢力と関係を有していれば、企業のリスクは残る。

契約上は、再委託先にも同等の反社条項を課す、再委託先リストを提出させる、合理的疑いがある場合に再委託先の交替を求める、相手方が交替に応じない場合には解除できる、といった条項を置きます。

Section 12

12. 典型場面別の実務ポイント

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

12.1 売買・業務委託・継続的取引

一般的な売買・業務委託では、解除対象を「基本契約」だけにするのか、「個別契約」も含めるのかが重要です。基本契約を解除しても、既に成立した個別契約の履行義務が残る可能性があります。条項では、反社該当時に基本契約および未履行の個別契約を解除できる旨を明記します。

また、仕掛品、前払金、納品済み成果物、知的財産権、検収、秘密保持、競業避止、瑕疵・契約不適合責任、損害賠償、データ返還などの残存条項を整理します。

12.2 不動産取引

不動産取引では、暴力団事務所としての使用、転貸、名義貸し、実質利用者、売買代金の資金源が問題となります。東京都暴力団排除条例は、不動産の譲渡・賃貸について、暴力団事務所として使用されることを知って契約してはならないこと、暴力団事務所として使用されることが判明した場合に催告なく解除または買戻しができる特約を定める努力義務を置いています。

大阪府警の公表する条項例にも、不動産売買、賃貸、媒介契約における解除、返還、違約金、違約罰のモデルが示されています。不動産では、解除後の明渡し、占有移転禁止、仮処分、賃料不払い、保証会社、管理会社、近隣対応、警察連携まで視野に入れる。

12.3 金融取引・保証取引

金融機関は、反社会的勢力との関係遮断について高い水準の管理が求められます。警察庁資料でも、金融業界、証券業界、銀行業界、保険業界における暴力団排除条項やデータベース整備等の取組が紹介されています。

金融取引では、口座開設、融資、保証、リース、保険、証券取引、資金移動、暗号資産取引において、本人確認、実質的支配者確認、取引モニタリング、疑わしい取引の届出、期限の利益喪失、債権回収、保証履行、担保処分が問題となります。

最高裁平成28年判決群が示すように、保証取引では、主債務者の反社該当性、金融機関の調査義務、保証協会の免責、契約条項の文言が重要な争点となります。金融機関・保証機関・リース会社は、表明保証と調査義務を契約・規程・審査流れに明確に組み込むべきです。

12.4 M&A・投資・資本提携

M&Aでは、対象会社、売主、役員、主要株主、実質支配者、重要取引先、外注先、許認可、金融機関、反社チェックが重要なデューデリジェンス項目となります。

株式譲渡契約や投資契約では、次の条項を検討します。

  • 売主・対象会社・役員・主要株主の反社非該当表明保証
  • 過去および現在の反社会的勢力との関係不存在
  • 資金提供・便宜供与・名義貸し不存在
  • 不当要求・紛争・行政相談・警察相談の開示
  • クロージング条件
  • 表明保証違反時の補償
  • 重大違反時の解除
  • 反社該当判明時のプット・コールオプション

買収後に反社関係が判明すると、契約解除だけでなく、許認可、金融取引、上場審査、内部統制、レピュテーションに重大な影響を及ぼします。DD段階での記録化が不可欠です。

12.5 雇用・役員選任

従業員や役員の反社該当性は、一般の取引契約とは異なります。雇用関係では、労働契約法、解雇権濫用法理、就業規則、採用時誓約書、個人情報保護、差別的取扱いの問題があります。単なる親族関係や風評だけで採用拒否・解雇を行うことは慎重でなければなりません。

他方で、役員・重要従業員・営業担当者・経理担当者・警備担当者・金融業務担当者が反社会的勢力と密接な関係を有している場合、会社の内部統制・顧客保護・許認可・取引継続に重大な影響を及ぼします。就業規則、役員規程、誓約書、懲戒規程、調査手続を整備する必要があります。

Section 13

13. 紛争化した場合の主張立証

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

13.1 相手方が争う典型論点

反社会的勢力排除条項による解除が争われる場合、相手方は次のような主張をすることが多い。

  • 自分は反社会的勢力ではない
  • 役員・関係者の過去の関係にすぎない
  • 条項上の対象者に含まれない
  • 解除事由に該当しない
  • 解除権の濫用である
  • 証拠が風評にすぎない
  • 説明・弁明の機会がなかった
  • 解除により損害を受けた
  • 未払い代金を支払え
  • 取引先に説明したことで信用を毀損した

企業側は、契約条項、該当事実、証拠、調査過程、社内決裁、外部専門機関相談、解除後の処理の相当性を主張立証する必要があります。

13.2 企業側の立証構造

企業側の主張立証は、次の構造で組み立てる。

  1. 契約には反社会的勢力排除条項が存在する
  2. 同条項は、当事者の表明保証・誓約・無催告解除を定める
  3. 相手方または対象関係者は、条項所定の事由に該当する
  4. その該当性は客観資料により裏付けられる
  5. 企業は合理的な調査を行った
  6. 社内規程・決裁に従って解除した
  7. 解除通知は適切に到達した
  8. 解除後の措置は必要かつ相当である
  9. 相手方の損害は契約上補償対象外、または相当因果関係がない
  10. 企業には安全配慮・コンプライアンス上の必要性があった

13.3 仮処分・訴訟・刑事対応

解除後、相手方が取引継続を求める仮処分、代金請求、損害賠償請求、地位確認、名誉毀損訴訟を提起する可能性があります。逆に、企業側が明渡し、債務不存在確認、損害賠償、差止め、仮処分、刑事告訴を行う場合もあります。

不当要求、脅迫、威力業務妨害、恐喝、詐欺、背任、横領、名誉毀損、信用毀損、偽計業務妨害などの疑いがある場合は、民事だけでなく刑事対応も検討します。ただし、刑事告訴や被害届は事実関係・証拠・安全対策を整えたうえで行います。

Section 14

14. 実務チェックリスト

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

14.1 契約締結前チェックリスト

  • □ 取引先の商号・所在地・代表者・役員を確認した
  • □ 法人登記・法人番号・実質的支配者を確認した
  • □ 代理人・媒介者・紹介者を確認した
  • □ 再委託先・下請の使用予定を確認した
  • □ 反社チェックサービス・新聞記事・社内DBを照会した
  • □ 高リスク取引として追加審査の要否を判断した
  • □ 契約書に反社条項を入れた
  • □ 表明保証・誓約・調査協力・再委託先条項を入れた
  • □ 無催告解除、損害賠償、期限の利益喪失を定めた
  • □ 審査結果と承認を記録した

14.2 解除前チェックリスト

  • □ 契約書・約款・覚書・誓約書を確認した
  • □ 解除条項の文言を確認した
  • □ 該当する解除事由を特定した
  • □ 証拠を保全した
  • □ 同姓同名・誤情報の可能性を検討した
  • □ 相手方説明要求の要否を検討した
  • □ 警察・暴追センター・弁護士への相談を検討した
  • □ 社内決裁を取得した
  • □ 解除後の債権債務処理を整理した
  • □ システム・情報・貸与物の停止回収手順を決めた
  • □ 役職員の安全対策を確認した
  • □ 通知文を弁護士または法務が確認した

14.3 解除後チェックリスト

  • □ 解除通知の到達を確認した
  • □ 新規発注・出荷・サービス提供を停止した
  • □ アカウント・入館証・IDを停止した
  • □ 貸与物・秘密情報・個人情報の返還を求めた
  • □ 未払金・前払金・保証金・損害賠償を整理した
  • □ 社内共有範囲を限定した
  • □ 取引先・顧客説明文案を作成した
  • □ 不当要求への対応窓口を一本化した
  • □ 追加の警察相談・弁護士対応を行った
  • □ 事後レビューを実施し、規程・条項・審査流れを改善した
Section 15

15. 条項例・通知例

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

以下は一般的な参考例であり、そのまま全取引に流用するのではなく、取引類型、業種、相手方、リスク、既存の契約体系に合わせて修正する必要があります。

15.1 反社会的勢力排除条項例

第○条(反社会的勢力の排除)

1. 甲および乙は、自己ならびに自己の役員、実質的支配者、
主要株主、代理人、媒介者、再委託先その他本契約の履行に関与する者が、
現在、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から一定期間を経過しない者、
暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ、
政治活動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等その他これらに準ずる者
(以下「反社会的勢力」という。)に該当しないことを表明し、保証する。

2. 甲および乙は、自己ならびに前項に定める者が、
反社会的勢力に自己の名義を利用させ、反社会的勢力に資金提供または便宜供与を行い、
反社会的勢力を利用し、または反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を
有しないことを表明し、保証する。

3. 甲および乙は、自らまたは第三者を利用して、相手方に対し、
暴力的要求行為、法的責任を超えた不当要求行為、脅迫的言動、暴力、
風説の流布、偽計または威力を用いた信用毀損または業務妨害
その他これらに準ずる行為を行わないものとする。

4. 甲および乙は、相手方から合理的な理由に基づき
反社会的勢力への該当性または本条違反の有無に関する説明または資料提出を
求められた場合、合理的範囲でこれに協力するものとする。

5. 甲または乙は、相手方が本条各項のいずれかに違反したと判断した場合、
何らの催告を要せず、直ちに本契約および関連する個別契約の
全部または一部を解除することができる。

6. 前項に基づき解除した当事者は、当該解除により相手方に損害が生じたとしても、
自己に故意または重大な過失がある場合を除き、これを賠償する責任を負わない。

7. 本条違反により相手方に損害、費用または損失が生じた場合、
違反当事者はこれを賠償または補償するものとする。

15.2 調査協力条項例

第○条(調査協力)

甲または乙は、相手方が法令、条例、監督指針、社内規程または
合理的なリスク管理上の必要に基づき、反社会的勢力への該当性、
反社会的勢力との関係の有無、実質的支配者、役員、代理人、媒介者、
再委託先その他本契約の履行に関与する者に関する情報の提出を求めた場合、
合理的範囲で速やかにこれに協力するものとする。当該協力を拒否し、
または虚偽の説明をした場合、相手方は本契約を催告なく解除することができる。

15.3 再委託先条項例

第○条(再委託先等の反社会的勢力排除)

乙は、本契約の履行を第三者に再委託する場合、当該第三者について、
本契約に定める反社会的勢力排除条項と同等の義務を課すものとする。
甲が、乙の再委託先、代理人、媒介者その他本契約の履行に関与する者について
反社会的勢力への該当性またはその疑いを合理的に認めた場合、
乙は、甲の求めに応じ、当該者の関与を停止し、代替者を選任するものとする。
乙がこれに応じない場合、甲は本契約を催告なく解除することができる。

15.4 解除通知例

通知書

当社は、貴社との間で締結した○年○月○日付「○○契約」
(以下「本契約」といいます。)について、以下のとおり通知します。

当社は、貴社に関し、本契約第○条(反社会的勢力の排除)第○項に定める事由に
該当するものと判断しました。

したがって、当社は、本契約第○条第○項に基づき、本書面をもって、
本契約および本契約に基づく未履行の個別契約を解除します。

解除後の未精算債権債務、貸与物、秘密情報、個人情報、アカウントその他の処理については、
当社指定の窓口を通じて協議または通知します。なお、本件に関する連絡は、
下記窓口に限るものとし、当社役職員への直接の来訪、架電、面談要求
その他これに類する行為はご遠慮ください。

記
窓口 ― ○○株式会社 法務部 ○○
住所 ― ○○
メール ― ○○
以上

通知例では、具体的事実をどこまで書くかが最も重要です。証拠が十分で、訴訟を見据える場合には、該当事由をある程度具体化することがあります。一方で、情報源保護や安全対策の観点から、通知段階では契約条項と判断結果に留めることもあります。

Section 16

反社会的勢力排除条項による解除のまとめ

反社会的勢力排除条項による解除の実務を、契約根拠・証拠・手続・解除後処理に分けて確認します。

次の強調表示は、反社会的勢力排除条項による解除の最終的な要点をまとめています。なぜ重要かというと、解除時に初めて考えるのでは遅く、平時の条項・審査・教育・通報制度が解除の有効性と安全性を左右するためです。平時の設計が最良の有事対応であることを読み取ってください。

平時の設計が最良の解除対応

反社会的勢力排除条項による解除の最良の対応は、解除時に初めて考えることではありません。平時から、取引審査、契約条項、社内規程、データベース、教育研修、通報制度、危機対応手順を整備し、安全かつ適法に関係遮断できる体制を構築しておくことです。

反社会的勢力排除条項による解除の実務は、契約書の一条項を発動するだけの作業ではありません。反社会的勢力の定義、契約条項の設計、事前審査、証拠保全、外部専門機関との連携、社内決裁、解除通知、解除後の債権債務処理、紛争対応を一体として管理する総合的な企業危機管理です。

最高裁判例は、反社会的勢力との関係遮断の重要性を前提にしつつも、契約上その点が当然に内容化されるわけではないことを示しています。したがって、企業は、反社非該当の表明保証、将来の誓約、再委託先排除、調査協力、無催告解除、損害賠償、期限の利益喪失を明確に契約へ組み込むべきです。

また、解除に踏み切る場面では、風評や感情ではなく、客観証拠と合理的調査に基づく判断が必要です。相手方が反社会的勢力である可能性がある場合ほど、担当者個人で抱え込まず、組織として対応し、警察、暴力追放運動推進センター、弁護士等と連携し、裏取引や資金提供を避け、民事・刑事の法的手段を適切に選択することが求められます。

反社会的勢力排除条項による解除の実務における最良の対応は、解除時に初めて考えることではありません。平時から、取引審査、契約条項、社内規程、データベース、教育研修、通報制度、危機対応手順を整備し、いざという時に安全かつ適法に関係遮断できる体制を構築しておくことです。

Reference

参考資料

  • 金融庁「主要行等向けの総合的な監督指針 新旧対照表 別紙2」
  • 金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」
  • 警察庁「令和4年における組織犯罪の情勢」
  • 東京都「東京都暴力団排除条例」
  • 警視庁「暴力団排除条例 Q&A」
  • Japanese Law Translation「Civil Code」Article 541
  • Japanese Law Translation「Civil Code」Article 542
  • Japanese Law Translation「Civil Code」Article 548-4
  • 最高裁判所第三小法廷平成28年1月12日判決・平成25年(受)第1195号
  • 最高裁判所第三小法廷平成28年1月12日判決・平成26年(受)第1351号
  • 最高裁判所第一小法廷平成27年3月27日判決・平成25年(オ)第1655号
  • 大阪府警察「暴力団排除条項の条項例」