2σ Guide

秘密情報に
該当しない
除外事由の書き分け

NDAの除外事由を、
公知情報・既保有情報・
第三者取得情報・独自開発情報・
法令開示に分け、条項設計と証拠管理の
両面から整理します。

5 類型
3 要件
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秘密情報に 該当しない 除外事由の書き分け

NDAの除外事由を、公知情報・既保有情報・ 第三者取得情報・独自開発情報・ 法令開示に分け、条項設計と証拠管理の 両面から整理します。

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秘密情報に 該当しない 除外事由の書き分け
NDAの除外事由を、公知情報・既保有情報・ 第三者取得情報・独自開発情報・ 法令開示に分け、条項設計と証拠管理の 両面から整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 秘密情報に 該当しない 除外事由の書き分け
  • NDAの除外事由を、公知情報・既保有情報・ 第三者取得情報・独自開発情報・ 法令開示に分け、条項設計と証拠管理の 両面から整理します。

POINT 1

  • 秘密情報に該当しない 除外事由の全体像
  • 公知情報等の例外は、NDAの定型句ではなく、守秘義務違反の成否と紛争時の立証を左右する設計項目です。
  • 開示時点の公知
  • 開示後の公知
  • 既保有情報

POINT 2

  • 秘密情報に該当しない除外事由を 読む前の定義
  • 契約上の秘密情報、営業秘密、公知情報、除外事由は似ていますが、法的機能が異なります。
  • 契約上の秘密情報とは、開示者が受領者に対して秘密として取り扱わせたい情報をいいます。
  • NDAで秘密情報と定めても、直ちに営業秘密になるわけではありません。
  • 逆に、契約上の秘密指定が弱くても、秘密管理性、有用性、非公知性を満たせば営業秘密性が問題になり得ます。

POINT 3

  • 秘密情報に該当しない除外事由を 書き分ける理由
  • 発生時点の違い
  • 開示前の公知や既保有と、開示後の公知化や独自開発では、証明すべき時点が異なります。
  • 情報源の違い
  • 公開資料、自社保有資料、第三者、独自開発、法令開示では、正当性の確認方法が変わります。

POINT 4

  • 秘密情報に該当しない除外事由の 基本構造
  • 1. 情報の出所と時点を特定する:開示前、開示後、第三者取得、独自開発、法令対応のどれかを確認します。
  • 2. 秘密性が失われた事情かを確認する:公知化や既保有のように、秘密情報から外す根拠になるかを見ます。
  • 3. 客観的資料で立証:取得時期、内容、経緯、非依拠を記録で示せる場合に限って除外します。
  • 4. 条件付き開示として設計:法令、専門家、監査、親会社、投資家への開示は必要最小限に限定します。

POINT 5

  • 秘密情報に該当しない除外事由の 類型別書き分け
  • 1. 既存情報を棚卸しする:重要な技術、データ、顧客情報、ソースコード、設計思想を別紙または社内記録で特定します。
  • 2. 開示資料と開示先を記録する:版数、日付、ファイル名、秘密表示、開示方法、参加者、サンプル番号、データハッシュ値を残します。
  • 3. 非依拠の開発過程を残す:関与者、使用資料、実験記録、検証記録、リポジトリ履歴、レビュー履歴を保存します。

POINT 6

  • 秘密情報に該当しない除外事由と 許容開示の線引き
  • 法令開示、専門家開示、リバースエンジニアリングは、除外事由とは別の条項で処理する場面が多くあります。
  • 法令等に基づく開示の条項
  • 専門家・アドバイザーへの開示
  • リバースエンジニアリング

POINT 7

  • 秘密情報に該当しない除外事由の 条項例
  • 標準型、開示者有利型、受領者有利型、技術・共同開発型、M&A型、雇用・業務委託型を使い分けます。
  • バランス型の標準条項
  • 開示者有利型
  • 受領者有利型

POINT 8

  • 秘密情報に該当しない除外事由で よくある誤り
  • 短すぎる文言、法令開示の誤分類、第三者取得や独自開発の広げすぎに注意します。
  • 実務で多い誤りは、除外事由を短くまとめすぎることです。
  • 悪い例の問題点を読むことで、どの要素を条項に足すべきかを確認できます。
  • 修正例では、開示時に既に公知であった情報と、開示後に受領者および再開示先の責めによらず公知となった情報を分けます。

まとめ

  • 秘密情報に 該当しない 除外事由の書き分け
  • 秘密情報に該当しない 除外事由の全体像:公知情報等の例外は、NDAの定型句ではなく、守秘義務違反の成否と紛争時の立証を左右する設計項目です。
  • 秘密情報に該当しない除外事由を 読む前の定義:契約上の秘密情報、営業秘密、公知情報、除外事由は似ていますが、法的機能が異なります。
  • 秘密情報に該当しない除外事由を 書き分ける理由:各除外事由は、発生時点、情報源、受領者の責任、必要な証拠、交渉上の意味が違います。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

秘密情報に該当しない
除外事由の全体像

公知情報等の例外は、NDAの定型句ではなく、守秘義務違反の成否と紛争時の立証を左右する設計項目です。

秘密保持契約、共同開発契約、業務委託契約、M&Aのデューデリジェンス契約、ライセンス契約、PoC契約、投資検討契約、顧問契約、雇用契約、退職時誓約書では、ほぼ必ず「秘密情報」の定義と「秘密情報に該当しない情報」が置かれます。代表例は、開示時に公知であった情報、受領後に受領者の責めによらず公知となった情報、受領者がすでに正当に保有していた情報、正当な第三者から守秘義務なく取得した情報、開示情報に依拠せず独自に開発した情報です。

一見すると短い定型文ですが、実務上は一語の違いが、秘密保持義務違反、損害賠償、差止め、仮処分、営業秘密侵害、共同開発成果の帰属、技術コンタミネーション、従業員の転職リスク、M&A後の統合リスクに影響します。契約上の秘密情報は、不正競争防止法上の営業秘密と重なる部分がある一方、当事者間で保護範囲や除外範囲を設計できる点が異なります。

次の一覧は、NDAでまず分けて考えるべき主要な除外事由を示します。分類ごとに発生時点、情報源、責任原因、必要な証拠が異なるため、読者は「どの情報を外すのか」だけでなく「誰がどの資料で示すのか」を読み取ることが重要です。

TYPE 01

開示時点の公知

公開特許公報、官公庁資料、公開決算資料、一般販売商品の仕様など、開示前から一般に知られ、または容易に知り得る情報です。

TYPE 02

開示後の公知

開示後に公表された情報です。ただし、受領者や再開示先の行為または不作為による公知化は除外しない設計が基本です。

TYPE 03

既保有情報

開示前から受領者が正当に保有していた情報です。主観的な説明ではなく、作成時期や取得経緯を示す客観的資料が重要です。

TYPE 04

第三者取得情報

正当な権限を有する第三者から、守秘義務なく、適法に取得した情報です。第三者の義務違反を知っていた場合は外さない設計にします。

TYPE 05

独自開発情報

開示情報に依拠せず、受領者が独自に開発、創作、取得または生成した情報です。AI・データ案件や共同開発で特に争われます。

EXCEPTION

許容開示

法令、裁判所、行政機関、専門家、親会社、投資家への開示は、秘密情報からの除外ではなく、条件付きで開示できる場面として扱います。

重要法令開示、専門家開示、監査対応、特許出願、学会発表、プレスリリースは、多くの場合「秘密情報ではない」のではありません。情報は秘密情報のまま、必要最小限の範囲で開示できる例外として設計します。
Section 01

秘密情報に該当しない除外事由を
読む前の定義

契約上の秘密情報、営業秘密、公知情報、除外事由は似ていますが、法的機能が異なります。

契約上の秘密情報とは、開示者が受領者に対して秘密として取り扱わせたい情報をいいます。技術情報、営業情報、顧客情報、価格情報、仕様書、設計図、ソースコード、アルゴリズム、実験データ、事業計画、財務資料、M&A資料、取引条件、個人情報、未公表の知財情報、会議内容、交渉や契約の存在、サンプル、試作品、データセット、有体物に化体したノウハウなどが含まれます。

不正競争防止法上の営業秘密は、秘密として管理されていること、事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること、公然と知られていないことを含む法的概念です。NDAで秘密情報と定めても、直ちに営業秘密になるわけではありません。逆に、契約上の秘密指定が弱くても、秘密管理性、有用性、非公知性を満たせば営業秘密性が問題になり得ます。

次の比較表は、4つの概念の役割を整理したものです。定義を分けて理解することは、NDAのどこに除外事由を置くか、どの資料を残すか、営業秘密としての管理体制とどう接続するかを判断する土台になります。

概念実務上の意味注意点
秘密情報契約上、秘密として扱う情報です。営業秘密より広く設定されることがあります。秘密表示、開示記録、目的外使用禁止、返還廃棄、再開示制限と連動させます。
営業秘密不正競争防止法上、秘密管理性・有用性・非公知性が問題になる情報です。NDAだけで足りず、アクセス制限、教育、ログ管理などの運用が必要です。
公知情報一般に知られている、または合理的努力で容易に知ることができる情報です。断片が公開されていても、選択、組合せ、配列、分析に価値が残る場合があります。
除外事由形式的には開示された情報でも、契約上の秘密情報から外す事情です。守秘義務だけでなく、目的外使用禁止、複製制限、再開示制限の対象外になる可能性があります。

公知情報の判断では、インターネット上に似た情報があるだけで十分とは限りません。外国語の古い文献、アクセス困難なデータベース、高額なデータ、断片的情報の複雑な組合せなどは、容易に知り得るかが別途問題になります。特許実務上の公知や公用という語も、NDAの除外事由と同じ意味で使えるとは限らないため、契約上の意味を定義する必要があります。

Section 02

秘密情報に該当しない除外事由を
書き分ける理由

各除外事由は、発生時点、情報源、受領者の責任、必要な証拠、交渉上の意味が違います。

除外事由を「秘密情報に含まれないもの」と一括で書くと、開示時に公知であった情報と、開示後に公知となった情報が混ざります。後者では、受領者や再開示先の漏えいによって公知化した場合まで除外されないようにする必要があります。第三者から取得した情報についても、第三者が正当に開示できる権限を持っていたか、受領者が義務違反を知っていたか、守秘義務なく取得したかを分ける必要があります。

除外事由は立証設計でもあります。秘密情報ではないと主張する受領者が、開示前のメール、設計書、研究ノート、Gitコミット履歴、電子署名付き文書、タイムスタンプ、議事録、契約前の提案資料、社内稟議、特許出願書類、実験ログなどで根拠を示せるかが重要です。開示者側も、何をいつ誰に開示したかを記録していなければ、受領者の主張を崩しにくくなります。

次の一覧は、除外事由がなぜ争点になるのかを、開示者側と受領者側の視点で整理したものです。どちらの立場でも、単に文言を強くするのではなく、情報の流れと証拠化可能性を読み取ることが重要です。

発生時点の違い

開示前の公知や既保有と、開示後の公知化や独自開発では、証明すべき時点が異なります。

情報源の違い

公開資料、自社保有資料、第三者、独自開発、法令開示では、正当性の確認方法が変わります。

責任原因の違い

受領者、役員、従業員、委託先、再開示先の行為で公知化した場合は、通常は除外しません。

交渉力の違い

開示者は除外を狭く、受領者は既存技術や通常業務を守るために除外を明確にしたい立場です。

相互NDAでは、両者の立場が入れ替わるためバランス型が使われます。ただし、形式は相互でも、実際には一方だけが重要情報を出す非対称案件もあります。契約書上の名称ではなく、どの情報が誰から誰へ流れるかを前提に調整します。

さらに、秘密保持義務と目的外使用禁止は別問題です。秘密を第三者に漏らさないだけでは、受領者内部での目的外利用を止められないことがあります。除外事由は、目的外使用禁止、複製制限、リバースエンジニアリング禁止、返還・廃棄、再開示制限と連動させて設計する必要があります。

Section 03

秘密情報に該当しない除外事由の
基本構造

条項は、前置き、5類型、部分除外、許容開示の切り分けで構成します。

標準的な条項では、受領者が客観的資料により根拠を立証できる場合に限り、開示時公知、後発的公知、既保有、正当な第三者取得、非依拠の独自開発を秘密情報から外します。この骨格だけでも多くの契約で使えますが、実務では「客観的資料」をどこまで含めるか、受領者の責めに誰を含めるか、第三者の正当権限をどこまで確認するか、依拠の意味をどう定義するかが問題になります。

次の判断の流れは、ある情報を除外事由として扱うか、秘密情報のまま許容開示として扱うかを見分けるためのものです。順番は、まず情報の秘密性が失われたかを確認し、次に取得経路や非依拠を確認し、最後に法令・専門家対応のような条件付き開示かを読む構成です。

除外事由と許容開示の判断の流れ

情報の出所と時点を特定する

開示前、開示後、第三者取得、独自開発、法令対応のどれかを確認します。

秘密性が失われた事情かを確認する

公知化や既保有のように、秘密情報から外す根拠になるかを見ます。

外す根拠あり
客観的資料で立証

取得時期、内容、経緯、非依拠を記録で示せる場合に限って除外します。

秘密性は維持
条件付き開示として設計

法令、専門家、監査、親会社、投資家への開示は必要最小限に限定します。

前置きの設計

除外事由条項の冒頭には、「受領者が、当該情報が各号のいずれかに該当することを、開示時点または取得時点を特定できる客観的資料により立証できる場合に限り、当該情報は秘密情報に含まれない」という趣旨を置きます。これにより、除外事由を主張する側、立証手段、時点を明確にできます。

秘密情報の対象外と秘密保持義務の例外

秘密情報の対象外とは、そもそも守秘義務、目的外使用禁止、返還・廃棄義務、複製制限、再開示制限の対象から外れる構成です。これに対し、秘密情報ではあるが一定条件のもとで開示できる例外は、情報の秘密性が失われたわけではありません。裁判所命令、行政機関への届出、取引所規則に基づく適時開示、専門家への相談、監査法人への資料提出、親会社への報告、投資家への説明は後者として扱うのが通常です。

次の比較表は、対象外と許容開示の違いをまとめたものです。読者は、開示後の義務が残るか、必要最小限性や通知義務が必要か、返還・廃棄や目的外使用禁止が空洞化しないかを確認してください。

区分通常の扱い条項上の読み方
開示時公知秘密情報から除外公開範囲、容易入手性、組合せの非公知性を確認します。
既保有情報受領者が立証できる範囲で除外開示前の客観的資料で内容と時期を示します。
独自開発非依拠を立証できる範囲で除外関与者、使用資料、開発履歴、検証記録を残します。
裁判所・行政機関への開示除外せず条件付きで許容必要最小限、事前通知、秘密性保護への協力を置きます。
専門家・監査人への開示除外せず条件付きで許容目的に必要な範囲、同等義務または法令上の守秘義務を条件にします。
設計軸除外範囲は、除外事由に該当する部分に限定します。文書の一部が公知でも、組合せ、文脈、分析、適用条件、派生情報まで当然に外れるわけではありません。
Section 04

秘密情報に該当しない除外事由の
類型別書き分け

公知情報、既保有情報、第三者取得情報、独自開発情報は、成立要件と但書を分けて書きます。

類型別の書き分けでは、受領者が自由に使える範囲を明確にしつつ、開示者の秘密価値が組合せや具体的条件に残る場面を落とさないことが重要です。次の比較表は、各類型で入れるべき要件と、読み落とすと危ない点を整理しています。

類型推奨される書き方の核注意点
開示時点の公知開示を受けた時点で既に公知であった情報。ただし、選択、組合せ、配列、分析、評価、適用条件、実施上のノウハウが公知でない場合は除外しません。公開資料の断片があるだけで、技術条件や顧客分析全体が公知になるわけではありません。
開示後の公知開示後、受領者、その役員、従業員、代理人、委託先、再開示先などの故意、過失、契約違反によらず公知となった情報です。「受領者の責め」だけでは、子会社、外注先、専門家、クラウドベンダーが含まれるか争われます。
既保有情報開示時点で、受領者が法令上または契約上の制限に違反せず、既に正当に保有していた情報です。保有時期、内容、取得経緯を、開示前資料、研究ノート、リポジトリ履歴などで示す必要があります。
第三者取得情報正当な権限を有する第三者から、守秘義務その他の制限を負わず、適法に取得した情報です。第三者の義務違反を知り、または重大な過失により知らなかった場合は除外しない設計にします。
独自開発情報開示者の秘密情報に依拠せず、受領者が独自に開発、創作、取得または生成した情報です。参考、入力、比較、検証、学習、評価に使った場合も依拠と評価され得ます。

開示時点ですでに公知であった情報

公開特許公報、学術論文、官公庁の公表資料、一般に販売されている商品仕様、公開ウェブサイト、新聞記事、公開決算資料、業界標準規格、公開された価格表、公開API仕様などが典型です。ただし、製造条件、配合比率、温度・圧力・時間、歩留まり改善、検査手順、ソースコード構造、データ前処理、ハイパーパラメータ、顧客スコアリング、営業トーク、価格交渉方針は、個々の要素が公知でも組合せに価値が残ることがあります。

悪い例「公知情報は秘密情報に含まれない」だけでは、公知の判断時点、誰にとって公知か、容易に知り得る範囲、組合せ、受領者の立証、後発的公知との区別が不明です。

開示後に公知となった情報

開示者自身のプレスリリース、特許出願公開、学会発表、第三者の独自発表などにより公知化した場合は、受領者の責めによらない限り除外対象になり得ます。一方、受領者または再開示先の漏えいで公知化した場合にまで除外すると、秘密保持義務が無意味になります。特許出願公開後も、出願明細書に記載されていない実施ノウハウ、失敗データ、量産条件、品質管理情報、未出願改良、顧客適用事例、コスト構造、ロードマップは引き続き保護対象になり得ます。

既保有情報

受領者が以前から持っていた技術、顧客知識、営業ノウハウ、設計思想、ソースコード、データ、社内資料まで後から開示者の秘密情報と扱われると、受領者は過度に制約されます。一方で、既保有情報は技術コンタミネーションの典型的争点です。契約前のメール、設計書、研究ノート、GitやSubversionの履歴、文書管理システム、PLM、CAD、ELN、タイムスタンプ、電子署名、確定日付、特許出願書類、CRM記録などを残します。

第三者取得情報

情報源がサプライヤー、顧客、専門家、データベンダー、競合他社の元従業員、共同研究先、コンサルタント、業務委託先の場合、他社秘密の混入リスクがあります。契約書、発注書、ライセンス、利用規約、データ提供契約、権限証明、入手経路、取得日時、対価、利用制限を確認し、採用時誓約書、入社時研修、持込み禁止、データ受領プロトコル、情報隔離を整えます。

独自開発情報

独自開発では、開示された仕様書を参考に自社仕様を作る、顧客課題リストを基に営業資料を作る、実験失敗データを避けて開発する、ソースコード構造を見て別実装する、価格表を参考に価格設定する、データセットを学習・評価・検証に使う、ロードマップを参考に開発順序を変えるといった行為も依拠と評価され得ます。

次の時系列は、既保有や独自開発の立証でどの時点の記録が重要になるかを示します。時系列で整理する理由は、契約締結後に作られた資料だけでは、除外事由の根拠として弱くなることがあるためです。

契約前

既存情報を棚卸しする

重要な技術、データ、顧客情報、ソースコード、設計思想を別紙または社内記録で特定します。

開示時

開示資料と開示先を記録する

版数、日付、ファイル名、秘密表示、開示方法、参加者、サンプル番号、データハッシュ値を残します。

開発時

非依拠の開発過程を残す

関与者、使用資料、実験記録、検証記録、リポジトリ履歴、レビュー履歴を保存します。

AI・データ案件では、入力データ、学習済みモデル、重み、特徴量、前処理コード、プロンプト、評価データ、推論結果、ログ、派生データ、統計情報、匿名加工情報、仮名加工情報、合成データ、ファインチューニング済みモデルなど、情報の階層が多くなります。秘密情報を入力、学習、検証、評価、チューニング、特徴量設計、プロンプト設計、モデル選択、パラメータ調整に使った成果は、秘密情報に依拠したものと推定する条項を検討することがあります。

Section 05

秘密情報に該当しない除外事由と
許容開示の線引き

法令開示、専門家開示、リバースエンジニアリングは、除外事由とは別の条項で処理する場面が多くあります。

法令、裁判所命令、行政機関の要求、金融商品取引所規則、監査、税務調査、捜査、ディスカバリ、仲裁手続などにより秘密情報の開示が必要になることがあります。これを秘密情報から除外すると、必要最小限の開示義務、事前通知、保護命令申立て、秘密保持義務の承継、目的外使用禁止、返還・廃棄義務、存続条項が空洞化します。

次の比較表は、法令・専門家・公表・解析に関する場面を、除外事由にするか条件付き開示にするかで整理しています。表では、秘密性が失われるかどうか、開示範囲の限定が必要か、開示後も義務が残るかを読み取ってください。

場面通常の整理入れるべき要素
法令・裁判所・行政機関への開示除外ではなく許容開示必要最小限、事前通知、秘密扱い、保護命令、合理的協力
専門家・アドバイザーへの開示除外ではなく許容開示本目的に必要な範囲、同等以上の義務、違反時の責任
親会社・子会社・投資家への共有除外ではなく許容開示開示先、目的、範囲、再々開示禁止、ログ管理
プレスリリース・学会発表原則として別途承諾または事前確認公表可能事項、確認期間、公開猶予、特許出願との関係
リバースエンジニアリング契約で禁止または対象限定サンプル、試作品、ソフトウェア、モデル、データ、素材の範囲

法令等に基づく開示の条項

推奨文言の核は、法令、裁判所、行政機関、金融商品取引所、仲裁機関などの命令、要求または規則により開示を求められた場合、必要最小限の範囲で開示できるとすることです。そのうえで、法令上禁止される場合を除き、開示前に速やかに開示者へ通知し、開示範囲の限定、秘密扱い、保護命令その他の秘密性保護に合理的に協力する旨を置きます。本項による開示は、秘密情報性を失わせないと明記することも有効です。

専門家・アドバイザーへの開示

弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、弁理士、社会保険労務士、監査法人、FA、M&Aアドバイザー、コンサルタント、金融機関、保険会社、格付機関、投資家候補などへの開示は、秘密情報のまま一定条件で再開示を認める設計にします。専門家に法令上の守秘義務がある場合でも、開示先の範囲、必要性、同等義務、責任、再々開示禁止、返還廃棄、ログ管理を確認します。

リバースエンジニアリング

市販品を合法的に入手して分解・解析する行為は、営業秘密保護との関係で重要です。一方、契約では、開示者から提供されたサンプル、試作品、ソフトウェア、データ、モデル、API、素材、機器について、分解、解析、成分分析、構造分析、再識別、モデル抽出、重み推定などを禁止できます。受領者側では、公開市場で合法的に取得した製品まで禁止されないよう、対象を本契約に基づき提供されたものに限定する交渉が考えられます。

注意リバースエンジニアリングで得た情報を独自取得情報として除外するかは、契約で明確にします。契約違反の解析により取得または生成した情報は、除外事由に該当せず秘密情報として扱うと定めることがあります。
Section 06

秘密情報に該当しない除外事由の
条項例

標準型、開示者有利型、受領者有利型、技術・共同開発型、M&A型、雇用・業務委託型を使い分けます。

条項例は、案件類型と情報の流れに合わせて変えます。次の一覧は、どの型をどの場面で使うかを整理したものです。読者は、自社が主に開示者なのか受領者なのか、共同開発やM&Aのように情報の性質が複雑なのかを読み取ってください。

01

バランス型の標準条項

受領者が内容、取得時期、取得経緯、根拠を客観的資料で立証できる場合に限り、5類型を秘密情報から除外します。

相互NDA標準
02

開示者有利型

開示前または取得時点を明確に示す改変困難な記録を求め、秘密情報に接触していない者による開発を重視します。

技術開示厳格
03

受領者有利型

公知、既保有、第三者取得、独自開発を簡潔に除外します。ただし、適法性と記録化を残さないと紛争時に曖昧になります。

評価者簡潔
04

技術・共同開発型

技術情報、ノウハウ、データ、サンプル、ソフトウェア、設計情報、製造条件、評価結果の取得経路と履歴を重視します。

共同研究証拠重視
05

M&A・デューデリジェンス型

対象取引の検討目的に必要な範囲でのみ使用し、役職員、専門家、金融機関、投資家候補への開示条件を置きます。

M&A許容開示
06

雇用・業務委託・退職時誓約型

会社情報に接する前から正当に保有していた情報、独自創作情報、公知化した情報を分け、他社秘密の持込み禁止も置きます。

人事労務持込み防止

バランス型の標準条項

「受領者が、当該情報の内容、取得時期、取得経緯および根拠を客観的資料により立証できる場合に限り、開示時公知、後発的公知、既保有、正当な第三者取得、非依拠の独自開発を秘密情報に含めない」とするのが基本です。さらに、具体的な選択、組合せ、配列、分析、評価、適用条件、実施条件、ノウハウが公知でない場合は秘密情報として扱い、除外範囲は該当部分に限ると定めます。

開示者有利型

研究開発型スタートアップ、ライセンサー、製造ノウハウ提供者、データ提供者、M&A売主、技術評価を受ける側では、除外事由を狭くします。たとえば、開示時点で一般に知られ、かつ合理的努力により容易に入手可能であった情報、開示後に受領者または受領者から直接または間接に開示を受けた者の行為・不作為によらず一般に知られるに至った情報、秘密情報に接触していない者により開発された情報、といった形です。

受領者有利型

受領者側では、自社の既存技術、通常業務、並行開発、他社案件を守るため、除外事由を明確に確保したい場面があります。ただし、「第三者から取得した情報」や「独自に開発した情報」とだけ書くと、適法性、無守秘義務、非依拠、記録化が曖昧になります。受領者有利にする場合でも、後日の説明可能性は残すべきです。

技術・共同開発型

共同研究開発では、バックグラウンド知財、フォアグラウンド知財、改良発明、共同発明、データ、サンプル、成果物、学会発表、特許出願、研究者の異動が絡みます。除外事由だけで処理せず、共同研究の目的、バックグラウンド情報のリスト、成果情報の帰属、発明届出、出願手続、研究データ管理、サンプル返還廃棄、研究者のアクセス制限、終了後の利用範囲、改良発明と独自開発の境界を別途定めます。

M&A・デューデリジェンス型

M&Aでは、競合買主候補に顧客リスト、価格、原価、従業員情報、製品ロードマップ、入札情報、未公表財務情報が開示されることがあります。除外事由よりも、目的外使用禁止、クリーンチーム、閲覧制限、競合部門遮断、ガンジャンピング防止、独禁法、インサイダー取引、個人情報保護、従業員情報管理が重要です。

雇用・業務委託・退職時誓約型

雇用・退職時誓約では、会社側の秘密保持だけでなく、前職、兼業先、副業先、取引先その他第三者の秘密情報を会社に持ち込ませない設計が重要です。これは転職者本人を守るだけでなく、採用企業が他社秘密のコンタミネーションを避けるためにも必要です。

Section 07

秘密情報に該当しない除外事由で
よくある誤り

短すぎる文言、法令開示の誤分類、第三者取得や独自開発の広げすぎに注意します。

実務で多い誤りは、除外事由を短くまとめすぎることです。次の表は、典型的な悪い書き方と修正方向を対比しています。悪い例の問題点を読むことで、どの要素を条項に足すべきかを確認できます。

誤り何が危ないか修正方向
公知情報を一括で書く公知の時点、原因、範囲、容易性、組合せが不明になります。開示時公知と後発的公知を分け、組合せや分析を但書で守ります。
法令開示を除外事由に入れる開示を求められただけで秘密情報性が消えるように読めます。必要最小限の許容開示、事前通知、秘密性保護への協力として書きます。
第三者から取得で止める第三者が契約違反や不正取得で持ち出した情報まで除外される危険があります。正当権限、適法取得、無守秘義務、無悪意・無重過失を要件にします。
独自開発を広く書きすぎる秘密情報を見たうえで似た成果を作った場合も含まれるおそれがあります。参照、利用、入力、検証、評価、比較、基礎としない非依拠を明記します。
除外範囲を情報全体に広げる文書の一部が公知でも、文書全体や分析まで外れるように読めます。除外は該当部分に限り、他の部分、組合せ、文脈、派生情報に影響しないと書きます。
修正の要点「公知情報その他秘密でない情報は秘密情報に含まれない」「法令により開示を求められた情報は秘密情報に含まれない」「第三者から取得した情報は秘密情報に含まれない」「受領者が独自に開発した情報は秘密情報に含まれない」といった短文は、紛争時の読み幅が大きくなります。

修正例では、開示時に既に公知であった情報と、開示後に受領者および再開示先の責めによらず公知となった情報を分けます。法令開示は、必要最小限の範囲で開示できるとし、法令上禁止される場合を除いて事前通知と秘密性保護への協力を求めます。第三者取得では、正当権限、無守秘義務、適法取得、第三者の義務違反に関する無認識・無重過失を入れます。独自開発では、秘密情報を参照、利用、入力、検証、評価、比較または基礎としないことを明記します。

Section 08

秘密情報に該当しない除外事由の
立証と証拠管理

除外事由は、契約文言だけでなく、開示者と受領者の記録管理で機能します。

開示者は、秘密情報を守るために、NDA締結日、発効日、目的、当事者、対象プロジェクト、開示資料一覧、ファイル名、版数、作成日、秘密表示、開示日時、開示方法、開示者、受領者、参加者、会議議事録、説明範囲、質疑応答、サンプル、試作品、データセット、APIキー、アクセスログ、受領確認、ダウンロード履歴、データルームログ、秘密管理規程、従業員教育記録、返還・廃棄確認書、再開示承諾、再開示先一覧、同等義務の証跡を管理します。

受領者は、除外事由を主張するために、NDA締結前の既存資料、研究ノート、設計書、ソースコード履歴、契約前から保有する技術・データ・顧客情報の棚卸し、第三者からの取得契約、ライセンス、利用規約、権限証明、独自開発チームのメンバー、資料、開発手順、秘密情報アクセス者と非アクセス者の区別、公開情報調査の検索日時、保存PDF、スクリーンショット、公知化の原因、日時、公表主体、開示者への既保有通知、除外合意、別紙一覧を管理します。

次の比較表は、開示者側と受領者側が残すべき証拠を対比したものです。証拠の種類を分けて見る理由は、開示者は「何を開示したか」を、受領者は「以前から持っていた、または独自に作ったこと」を示す必要があるためです。

立場主な証拠目的
開示者開示資料一覧、版数、秘密表示、開示先、議事録、受領確認、アクセスログ秘密情報の範囲、開示時点、受領者のアクセスを示します。
開示者秘密管理規程、アクセス権限、教育記録、返還・廃棄確認書営業秘密の秘密管理性や契約上の管理運用を補強します。
受領者契約前の研究ノート、設計書、メール、稟議、リポジトリ履歴既保有情報の内容、時期、取得経緯を示します。
受領者第三者取得契約、ライセンス、利用規約、権限証明、取得日時正当な第三者取得であることを示します。
受領者独自開発メンバー、使用資料、開発手順、検証記録、レビュー履歴非依拠の独自開発であることを示します。

書面か客観的資料か

紙の契約時代には「書面によって立証」と書かれることが多くありました。現在は、電子メール、チャット、リポジトリ、クラウド文書、アクセスログ、電子署名、電子帳票、ELN、PLM、CRM、ERP、チケット管理、監査ログも重要です。実務的には「書面、電子記録、ログ、タイムスタンプその他の客観的資料」とする方が合う場面が多くあります。

証拠化開示者側が厳格にしたい場合は、「開示前に作成された客観的資料」「改変困難な記録」「合理的に信用できる資料」と書き、口頭説明や後日作成資料だけに依存しない設計にします。
Section 09

秘密情報に該当しない除外事由の
交渉場面別設計

スタートアップ、大企業、共同研究、M&A、業務委託では、同じ除外事由でも重視点が変わります。

交渉場面別の設計では、誰が重要情報を出し、誰が将来の業務制約を受けるかを見ます。次の一覧は、場面ごとに除外事由で重視する点を整理したものです。場面を分ける理由は、同じNDAでも、技術開示、投資検討、共同研究、業務委託、人材流動でリスクが大きく変わるためです。

スタートアップが大企業に技術を開示

除外事由を狭くし、独自開発と既保有の立証を厳格にします。目的限定、Need to know原則、競合部門への共有禁止、サンプル管理、特許出願前情報の扱いを重視します。

大企業が多数の相手方から情報を受領

既保有情報、第三者取得情報、独自開発情報を明確に確保します。プロジェクト単位の情報隔離、アクセスログ、受領窓口、NDA管理システムが重要です。

共同研究開発

バックグラウンド情報、成果情報、発明届出、学会発表、研究データ、サンプル、研究者のアクセス制限、終了後利用を除外事由とは別に定めます。

M&A・資本提携

買主側の既存市場情報や独自分析を守る一方、売主側の顧客、価格、原価、人事情報が拡散しないよう許容開示先を厳格にします。

業務委託・システム開発

委託者情報、受託者の既存ノウハウ、汎用ライブラリ、開発ツール、成果物が混在します。一般的知識・経験・技能の扱いも検討します。

共同研究では、除外事由だけで処理しようとすると破綻します。共同研究の目的、バックグラウンド情報のリスト、成果情報の帰属、発明届出・出願手続、学会発表・論文投稿の事前確認期間、研究データの管理、サンプル・試作品の返還廃棄、研究者のアクセス制限、共同研究終了後の利用範囲、改良発明と独自開発の境界を別途定めます。

M&Aでは、競合買主候補の場合、競争法・独禁法上の情報交換リスクもあります。データルーム管理、クリーンチーム、閲覧権限、価格情報・顧客情報・将来戦略の制限、外部アドバイザー経由閲覧、ガンジャンピング防止が必要です。

業務委託では、受託者がすべてを委託者の秘密情報や成果物とされると事業ができません。一方、委託者は、業務で開示した顧客情報、業務手順、データ、システム構成が流用されると困ります。残存知識条項を入れる場合は、秘密情報の具体的内容の記録、複製、データ化、意図的記憶を除外するなど慎重に限定します。

Section 10

秘密情報に該当しない除外事由と
残存知識・期間設計

残存知識条項と秘密保持期間は、除外事由と合わせて義務の残り方を決めます。

残存知識条項とは、受領者の役員・従業員が秘密情報に接した後、記録媒体を参照せず記憶に残った一般的知識・経験・技能を将来の業務で使用できるとする条項です。開示者側にとっては、製造ノウハウ、顧客戦略、価格、アルゴリズム、未公開ロードマップ、実験失敗情報、ソースコード構造が「一般的技能」と称して利用される危険があります。受領者側にとっては、一度秘密情報に接しただけで従業員の一般的経験・技能まで封じられると、転職、研究開発、営業、コンサルティング、システム開発、M&A検討が困難になります。

次の強調表示は、残存知識条項を入れる場合の限定の考え方をまとめたものです。重要なのは、一般的な技能や経験を認める場合でも、具体的な秘密情報、数値、設計、ソースコード、データ、顧客情報、価格情報、事業計画、組合せ、分析結果を許容しないことです。

残存知識は「一般的技能」に限定する

記録、複製、保存、意図的記憶、抽出、体系化を伴わない通常の業務経験に限り、秘密情報の具体的内容や開示者を識別し得る情報の使用・開示は許容しない設計にします。

限定文例の核は、「受領者の役員または従業員が秘密情報を記録、複製、保存、意図的に記憶、抽出または体系化することなく、通常の業務経験として保持する一般的な技能、経験および知識の利用を妨げない。ただし、秘密情報の具体的内容、技術条件、数値、設計、ソースコード、データ、顧客情報、価格情報、事業計画、組合せ、分析結果その他開示者を識別し得る情報の使用または開示を許容しない」というものです。

秘密保持期間と公知化

秘密保持契約では、秘密保持期間を3年、5年、10年、無期限などと定めます。秘密保持期間満了後も、営業秘密、個人情報、未公表技術情報、ソースコード、顧客情報などは、秘密である限り義務を存続させる条項を置くことがあります。たとえば、「本契約に基づく秘密保持義務は終了後5年間存続する。ただし、不正競争防止法上の営業秘密、個人情報、ソースコード、製造ノウハウ、未公表技術情報その他性質上秘密として保護されるべき情報については、当該情報が公知となるまで存続する」という設計です。

次の比較表は、期間設定と情報類型の対応を整理したものです。期間を読むときは、契約の有効期間、秘密保持義務の存続期間、営業秘密としての保護期間が別々に問題になる点を確認してください。

情報類型期間設計の考え方注意点
一般的な取引情報3年または5年などの有期義務が検討されます。取引終了後も必要な範囲を明確にします。
営業秘密・未公表技術公知となるまで存続させる設計が検討されます。秘密管理性、有用性、非公知性の運用が前提です。
個人情報・ソースコード・顧客情報性質上秘密として保護される限り存続させることがあります。返還廃棄、法定保存、バックアップとの整合性を確認します。
受領者側で広すぎる無期限義務営業秘密性のある情報に限定する交渉が考えられます。通常業務、並行開発、将来取引への影響を確認します。
Section 11

秘密情報に該当しない除外事由の
国際契約・業界別論点

英語条項の機能対応と、医薬、金融、IT・AI、製造、建設不動産の追加論点を押さえます。

国際契約では、governing law、jurisdiction、injunctive relief、equitable remedies、discovery、protective order、export control、sanctions、data protection、attorney-client privilege、work product、residuals、affiliates、representatives などの概念が絡みます。英語条項では、Recipient can demonstrate by contemporaneous written records、through no fault of the Recipient or its Representatives、rightfully received、without restriction、without breach of any duty、without use of or reference to the Confidential Information などの表現が重要です。日本語契約に訳す際は、単語対応ではなく法的機能を対応させます。

次の一覧は、業界ごとに追加で注意すべき秘密情報の種類と条項設計を整理したものです。業界別に見る理由は、公知化、法令開示、派生情報、リバースエンジニアリングの重みが事業領域によって大きく違うためです。

HEALTHCARE

医薬・ヘルスケア

臨床試験データ、薬事申請資料、GxP文書、未公表安全性情報、医師・患者情報では、規制当局への提出後も秘密性が維持される範囲を明確にします。

FINANCE

金融・証券

未公表決算情報、M&A情報、顧客情報、取引戦略、リスク管理モデルでは、インサイダー取引規制、適時開示、監査法人対応が絡みます。

IT DATA

IT・AI・データ

ソースコード、API、ログ、データセット、モデル、プロンプト、特徴量、評価指標、匿名加工情報、仮名加工情報では、派生情報の定義が重要です。

MANUFACTURING

製造・素材・化学

配合、温度、圧力、時間、触媒、工程順序、歩留まり、検査条件、失敗データ、サンプルは、公知情報の組合せでも秘密価値が残ることがあります。

REAL ESTATE

建設・不動産

入札情報、見積単価、施工方法、設計図、地権者情報、テナント情報、開発計画、鑑定評価資料では、許容開示先を実務に合わせて定義します。

国際契約では、discovery や protective order により、訴訟手続で秘密情報が出ることがあります。輸出管理、制裁、データ保護、法務特権、work product の扱いも、単純なNDAの除外事由だけでは整理できません。特に representatives を日本語で「関係者」とだけ訳すと範囲が広すぎたり狭すぎたりするため、役員、従業員、代理人、委託先、専門家、金融機関、投資家候補などを案件に合わせて定義します。

Section 12

秘密情報に該当しない除外事由の
チェックリスト

開示者側と受領者側で、条項と運用を別々に確認します。

チェックリストは、レビュー時に抜けやすい論点を確認するためのものです。次の表では、開示者側と受領者側の確認項目を分けています。自社の立場だけでなく、相手方がどの項目を気にするかも読み取ると、交渉の落としどころを作りやすくなります。

立場確認項目
開示者側秘密情報の定義が情報の性質に合っているか、秘密指定を運用できるか、口頭開示・会議発言・サンプル・データ・有体物を含めているか、除外事由を受領者の立証条件にしているかを確認します。
開示者側公知情報の組合せ、選択、配列、分析を守れているか、後発的公知から受領者・再開示先の漏えいを除いているか、第三者取得に正当権限・適法取得・無守秘義務・無悪意重過失を入れているかを確認します。
開示者側独自開発に非依拠と証拠記録を入れているか、法令開示を除外ではなく許容開示としているか、専門家・親会社・投資家への開示範囲、目的外使用禁止、Need to know原則、リバースエンジニアリング禁止、返還・廃棄、複製制限、ログ管理、存続期間が適切かを確認します。
受領者側秘密情報の範囲が広すぎないか、契約締結前から保有する情報を別紙化する必要があるか、自社の既存技術・既存データ・既存顧客情報が守られているかを確認します。
受領者側第三者取得情報を使える余地、独自開発情報の除外、立証要件の実務可能性、グループ会社・アドバイザー・監査人・金融機関への開示、法令・裁判所・行政機関・取引所対応が可能かを確認します。
受領者側残存知識条項の必要性、目的外使用禁止が通常業務を阻害しないか、競合案件・並行開発への影響、情報隔離、返還・廃棄義務とバックアップ・法定保存との整合性、契約終了後の義務が無期限・無限定でないかを確認します。
Section 13

秘密情報に該当しない除外事由の
まとめ

良い除外事由条項は、短い雛形ではなく、情報流通と証拠化を反映した条項です。

秘密情報に該当しない除外事由は、NDAの定型処理ではありません。公知情報、後発的公知、既保有情報、第三者取得情報、独自開発情報は、それぞれ成立要件、立証方法、リスク、交渉上の意味が異なります。

次の重要ポイントは、ページ全体の結論を整理したものです。5つの項目を読むことで、条項レビュー時にどこを優先して確認すべきかを把握できます。

公知は時点で分ける

開示時点の公知と開示後の公知を分け、後発的公知には受領者・再開示先の責めによらないことを条件にします。

既保有と独自開発は記録が要る

客観的資料による立証を条件にし、契約前の棚卸しと開発過程の記録化で技術コンタミネーションを避けます。

第三者取得は要件を分解する

正当権限、適法取得、無守秘義務、第三者の義務違反に関する無認識・無重過失を分けて書きます。

許容開示は除外にしない

法令開示、専門家開示、親会社・投資家・金融機関への開示、プレスリリース、学会発表、特許出願は条件付き開示として設計します。

営業秘密と契約上の秘密情報を連動させる

不正競争防止法上の営業秘密として守るには、秘密管理性、有用性、非公知性を意識し、契約、表示、アクセス制限、証拠管理、教育、ログ管理を一体で運用します。

最終的に、良い除外事由条項とは、事業の情報流通、開示者・受領者の立場、技術・データの性質、証拠化可能性、紛争時の立証、法令対応、知財戦略を反映した条項です。NDAを入口の契約として軽く扱うのではなく、秘密情報の管理設計そのものとして扱うことが重要です。

Reference

参考資料・出典

公的機関・国際機関・モデル契約書等を中心に整理しています。

国内の法令・公的資料

  • e-Gov法令検索「不正競争防止法」
  • 経済産業省「営業秘密~営業秘密を守り活用する~」
  • 経済産業省「営業秘密管理指針」2025年3月改訂版
  • 特許庁「秘密保持契約書(新素材)逐条あり」オープンイノベーション促進のためのモデル契約書
  • NEDO「秘密保持に関する誓約書」

国際機関の資料

  • WTO Analytical Index, TRIPS Agreement Article 39
  • WIPO “Frequently Asked Questions: Trade Secrets”
  • WIPO “Guide to Trade Secrets and Innovation – Part IV: Trade secret management”