2σ Guide

写真・動画・音楽の利用
企業法務の権利処理と実務

広告、広報、採用、SNS、動画配信、生成AIで素材を使う前に、権利・同意・契約・広告表示・証跡管理を利用行為ごとに確認するための実務ガイドです。

7層 権利と規制の検討軸
4主体 写真利用の確認対象
6段階 素材承認と公開後管理
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一般的な情報提供を目的としており医療上の助言や法律相談等を行うものではありません。
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写真・動画・音楽の利用 企業法務の権利処理と実務

利用行為ごとに権利・同意・契約・広告表示・証跡を分けて確認します。

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写真・動画・音楽の利用 企業法務の権利処理と実務
利用行為ごとに権利・同意・契約・広告表示・証跡を分けて確認します。
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  • 写真・動画・音楽の利用 企業法務の権利処理と実務
  • 利用行為ごとに権利・同意・契約・広告表示・証跡を分けて確認します。

POINT 1

  • 写真・動画・音楽の利用の全体像
  • 利用行為ごとに権利・同意・契約・広告表示・証跡を分けて確認します。
  • 著作権・人格権
  • 著作隣接権・原盤
  • 肖像・プライバシー

POINT 2

  • 写真・動画・音楽の利用で扱う範囲
  • 広告、広報、社内利用、生成AI、外部制作まで対象にします。
  • 利用場面を先に特定することが重要で、広告・広報・社内利用・生成AIなどの用途ごとに必要な確認が増える点を読み取ってください。
  • コーポレートサイト、EC、採用、SNS、広告、交通広告、展示会など、社外に出る媒体は範囲・期間・地域が重要です。
  • 社内報、イントラ、研修動画、会議録画でも、業務利用として著作権・個人情報・公開範囲を確認します。

POINT 3

  • 写真・動画・音楽の利用で押さえる基本用語
  • 著作物、人格権、隣接権、肖像、個人情報、ライセンスを分けます。
  • 3.1 著作物
  • 3.2 著作者と著作権者
  • 3.3 著作者人格権

POINT 4

  • 写真・動画・音楽の利用と著作権の基本
  • 公開されている素材
  • インターネット上で見られることや出典表示だけでは、企業利用の許諾があるとはいえません。
  • 納品物の所有
  • 動画ファイルや写真データを受け取っても、著作権の帰属や再編集権限は契約で確認します。

POINT 5

  • 写真・動画・音楽の利用で例外規定を検討する視点
  • 1. 利用目的を特定:批評、研究、報道、情報解析など、例外規定の趣旨に合う目的かを確認します。
  • 2. 利用態様を確認:写真全体の掲載、動画・音楽の再現、広告訴求など、鑑賞対象化していないかを確認します。
  • 3. 契約・規約を確認:素材サイト、NDA、顧客契約、AIツール規約で別途制限されていないかを確認します。
  • 4. 許諾取得を優先:広告・採用・商品化・海外展開・AI入力では、例外だけで進めず許諾と証跡を確認します。
  • 5. 範囲を限定:必要最小限の利用、出所表示、記録保存を行い、後で説明できる状態にします。

POINT 6

  • 写真利用の権利処理
  • 撮影者、被写体、提供者、利用者を分けて確認します。
  • 7.2 ストックフォト利用の注意点
  • 7.3 SNS写真・UGCの利用
  • 7.4 社員・顧客・取引先の写真

POINT 7

  • 音楽利用の権利処理
  • 楽曲の権利と音源の権利を分けて確認します。
  • 楽曲の権利
  • 音源の権利
  • 利用場面

POINT 8

  • 肖像・プライバシー・パブリシティの確認
  • 利用目的・媒体
  • 採用、広告、SNS、海外サイト、社内研修など、何に使うかを明示します。
  • 期間・地域・二次利用
  • 掲載期間、地域、多言語版、切り抜き、サムネイル、広告配信を確認します。

まとめ

  • 写真・動画・音楽の利用 企業法務の権利処理と実務
  • 写真・動画・音楽の利用の全体像:利用行為ごとに権利・同意・契約・広告表示・証跡を分けて確認します。
  • 写真・動画・音楽の利用で扱う範囲:広告、広報、社内利用、生成AI、外部制作まで対象にします。
  • 写真・動画・音楽の利用で押さえる基本用語:著作物、人格権、隣接権、肖像、個人情報、ライセンスを分けます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

写真・動画・音楽の利用の全体像

利用行為ごとに権利・同意・契約・広告表示・証跡を分けて確認します。

次の重要ポイント一覧は、写真・動画・音楽の利用で最初に分ける七つの検討層を示しています。素材ごとではなく利用行為ごとに見るために重要で、どの層が未確認かを読み取ることで審査漏れを早期に発見できます。

Layer 01

著作権・人格権

写真、動画、楽曲、台本、字幕、サムネイルなどの創作物と改変・氏名表示を確認します。

Layer 02

著作隣接権・原盤

歌唱、演奏、市販音源、配信音源など、楽曲とは別に音源側の許諾を確認します。

Layer 03

肖像・プライバシー

人物の顔、声、氏名、経歴、広告文脈、撤回対応を確認します。

Layer 04

個人情報

顔画像、動画、音声、顔認証データの利用目的と安全管理を確認します。

Layer 05

広告・商標

他社ロゴ、推薦表示、ステルスマーケティング、業法広告を確認します。

Layer 06

契約・取引

制作会社、モデル、フリーランスとの利用範囲、二次利用、再許諾を確認します。

Layer 07

証跡管理

素材台帳、公開期限、削除手順、承認履歴を残します。

次の強調表示は、このページ全体で最も重要な読み方をまとめたものです。権利処理を単発の許諾確認で終わらせないために重要で、同じ素材でも媒体・期間・目的が変われば確認範囲が変わる点を読み取ってください。

素材単位ではなく利用行為単位で確認します

同じ写真や音源でも、社内資料、公式サイト、広告、海外展開、生成AI入力では必要な許諾・契約・個人情報・広告表示の確認が変わります。

企業における「写真・動画・音楽の利用」は、単に「使ってよい素材か」を確認するだけでは足りません。実務上は、少なくとも次の七つの層を分けて検討する必要があります。

  1. 著作権・著作者人格権 ― 写真、動画、楽曲、歌詞、イラスト、映像編集、字幕、サムネイル、台本、ナレーション記事などが著作物に当たるか。
  2. 著作隣接権・原盤権 ― 市販CD、配信音源、レコード音源、実演、歌唱、演奏、朗読、ナレーションなどの権利処理が必要か。
  3. 肖像・プライバシー・パブリシティ ― 人物の顔、身体、声、氏名、芸名、経歴、影響力を広告・販売促進に用いていないか。
  4. 個人情報保護 ― 顔画像、動画、音声、行動履歴、イベント参加記録、顔認証データ、社内映像が個人情報または個人データとして管理されるべきか。
  5. 商標・不正競争・広告規制 ― 他社ロゴ、商品、店舗、キャラクター、パッケージ、レビュー、推薦表示、インフルエンサー投稿が誤認やステルスマーケティングにならないか。
  6. 契約・取引適正化 ― カメラマン、映像制作会社、作曲家、モデル、タレント、インフルエンサー、フリーランスとの契約で、利用範囲・二次利用・再許諾・権利帰属・報酬・補償を定義しているか。
  7. 社内統制・証跡管理 ― 誰が、どの素材を、どの根拠で、どの媒体に、いつまで使えるのかを後から説明できるか。

結論からいえば、企業法務における最も安全な考え方は、素材単位ではなく、利用行為単位で許諾・例外・契約・個人情報・広告表示を確認することです。同じ写真でも、社内会議資料で一度だけ使う場合、公式サイトに掲載する場合、テレビCMに使う場合、海外広告に転用する場合、AI学習用データとして投入する場合では、必要な検討が大きく異なります。

Section 01

写真・動画・音楽の利用で扱う範囲

広告、広報、社内利用、生成AI、外部制作まで対象にします。

次の一覧は、企業活動のどこで写真・動画・音楽の利用が発生するかを整理したものです。利用場面を先に特定することが重要で、広告・広報・社内利用・生成AIなどの用途ごとに必要な確認が増える点を読み取ってください。

01

公開媒体

コーポレートサイト、EC、採用、SNS、広告、交通広告、展示会など、社外に出る媒体は範囲・期間・地域が重要です。

媒体
02

社内利用

社内報、イントラ、研修動画、会議録画でも、業務利用として著作権・個人情報・公開範囲を確認します。

社内
03

外部制作

制作会社、代理店、インフルエンサー、フリーランスが関与する場合は、契約と証跡を分けて管理します。

契約
04

生成AI

入力素材と生成物の利用を分け、秘密情報、個人情報、素材サイト規約、類似性を確認します。

AI

このページでいう「写真・動画・音楽の利用」とは、次のような企業活動を含みます。

  • コーポレートサイト、ECサイト、採用サイト、LP、ブログ、オウンドメディアへの掲載
  • SNS投稿、ショート動画、ライブ配信、キャンペーン投稿、UGC活用
  • 広告、テレビCM、ウェブ広告、交通広告、デジタルサイネージ、展示会映像
  • プレスリリース、営業資料、提案書、IR資料、セミナー資料、ホワイトペーパー
  • 店舗BGM、イベント演奏、ウェビナーBGM、動画BGM、ポッドキャスト音源
  • 社内報、イントラネット、研修動画、議事録用録画、社内イベント写真
  • 生成AIへの入力、AI生成画像・動画・音楽の利用、AIによる編集補助
  • 外部制作会社、広告代理店、インフルエンサー、フリーランスが関与する制作物

重要なのは、「写真」「動画」「音楽」は単体の素材ではなく、複数の権利と契約が重なった権利の集合体ですという点です。たとえば、30秒の広告動画には、脚本、絵コンテ、映像、出演者の肖像、衣装、背景に映る美術品、店舗ロゴ、BGM、歌詞、歌唱、ナレーション、フォント、編集データ、サムネイル、配信プラットフォーム規約などが重なります。

Section 02

写真・動画・音楽の利用で押さえる基本用語

著作物、人格権、隣接権、肖像、個人情報、ライセンスを分けます。

3.1 著作物

著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものをいいます。企業実務では、写真、動画、音楽、歌詞、台本、コピー、イラスト、図表、資料デザイン、編集映像、ナレーション記事などが問題になります。単なる事実、アイデア、一般的な作風、ありふれた構図、機械的なデータそのものは、常に著作物になるわけではありません。

3.2 著作者と著作権者

著作者は、著作物を創作した人または一定の要件を満たす法人です。著作権者は、著作権を持つ人または法人です。著作者と著作権者は同じとは限りません。写真家が撮影し、企業に著作権を譲渡した場合、著作者は写真家、著作権者は企業になり得ます。

3.3 著作者人格権

著作者人格権は、著作者の人格的利益を保護する権利です。公表権、氏名表示権、同一性保持権が中心です。著作権の譲渡を受けても、著作者人格権は譲渡されません。したがって、企業が外部クリエイターから著作権譲渡を受ける場合でも、改変、トリミング、翻案、クレジット表示、二次利用については、契約上「著作者人格権を行使しない」旨を定めることが実務上重要です。

3.4 著作隣接権・原盤権

音楽では、作詞・作曲の著作権だけでなく、歌唱・演奏などの実演、レコード製作者、放送事業者などに関する著作隣接権が問題になります。市販CDや配信音源を動画BGMに使う場合、楽曲の著作権だけでなく、音源そのもの、いわゆる原盤・レコード音源に関する許諾が必要になることがあります。

3.5 肖像権

肖像権とは、みだりに自己の容貌・姿態を撮影され、または公表されない人格的利益を指す概念です。法律上「肖像権」という名称の条文が一つ置かれているわけではありませんが、判例上、人格的利益として保護されます。企業が人物写真・動画を使う場合、著作権処理だけでなく、被写体本人の同意、利用目的、媒体、期間、加工の有無、第三者提供、広告利用の有無を確認する必要があります。

3.6 パブリシティ権

パブリシティ権とは、著名人の氏名、肖像等が持つ顧客吸引力を排他的に利用できる利益を指す概念です。タレント、アスリート、インフルエンサー、専門家、経営者などの写真・動画・氏名を広告や販売促進に使う場合、単なる肖像利用同意では足りず、広告出演契約、利用媒体、競合排除、期間、地域、二次利用、炎上時対応などを詳細に定めるべきです。

3.7 個人情報

個人情報とは、生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別できるものなどをいいます。企業が撮影・録音した顔画像、動画、音声、名札、社員番号、イベント受付情報、顔認証データなどは、個人情報保護法上の検討対象になります。顔画像や音声は、単なる「素材」ではなく、個人情報・プライバシー情報として管理すべき場合があります。

3.8 ライセンスと譲渡

ライセンスは、権利者が一定範囲で利用を許すことです。権利自体は移転しません。譲渡は、権利そのものを移転することです。企業が長期的・多媒体・海外展開・二次利用を予定する場合、単なる「使用許可」では不足し、譲渡または広範な独占的ライセンスが必要になることがあります。

Section 03

写真・動画・音楽の利用の法的リスク

一つの素材に複数の法律・契約・表示規制が重なります。

企業が写真・動画・音楽を使うときの典型的なリスクは、次のように分類できます。

次の比較表は、写真・動画・音楽の利用の法的リスクで確認する項目を横並びで整理したものです。判断漏れを防ぐために重要なので、左の項目と右の実務上の意味を対応させて読み取ってください。

領域典型リスク実務上の確認事項
著作権無断転載、無断改変、範囲外利用、二次利用違反著作権者、許諾範囲、媒体、期間、地域、加工、再許諾
著作者人格権無断トリミング、改変、クレジット削除著作者人格権不行使、氏名表示、改変同意
著作隣接権市販音源・歌唱・演奏の無断利用原盤権者、実演家、レコード会社、音源使用許諾
肖像・プライバシー顔写真・動画の無断掲載、文脈の誤用同意書、利用目的、広告利用、撤回対応、未成年者
パブリシティ著名人の顧客吸引力の無断利用タレント契約、推薦表示、競合、期間、地域
個人情報顔画像・動画・音声の目的外利用利用目的、通知・公表、安全管理、委託、第三者提供
広告表示ステルスマーケティング、誇大表示、優良誤認広告表示明示、根拠資料、投稿管理、景表法審査
商標・不競法他社ロゴ・商品表示の誤認惹起商標使用、比較広告、写り込み、スポンサー誤認
契約制作会社・モデルとの権利帰属不明成果物定義、権利譲渡、保証、補償、再委託、報酬
ガバナンス権利証跡の散逸素材台帳、承認フロー、公開期限、削除手順

実務では、一つの素材について一つの法律だけを見ればよいわけではありません。たとえば、社員が撮影したイベント写真を採用サイトに使う場合でも、撮影者の著作権、写っている参加者の肖像、名札や企業情報、会場の撮影ルール、未成年者の同意、ウェブ公開後の検索拡散、SNS転用、退職者からの削除要請などを検討する必要があります。

Section 05

写真・動画・音楽の利用で例外規定を検討する視点

引用・写り込み・私的使用・屋外美術・生成AIを過信しない設計です。

次の判断の流れは、引用・写り込み・生成AIなどの例外的な利用を検討する順番を示しています。例外規定を過信しないために重要で、利用目的、主従関係、著作権者の利益、契約制限の順に確認する点を読み取ってください。

権利制限規定を検討するときの順番

利用目的を特定

批評、研究、報道、情報解析など、例外規定の趣旨に合う目的かを確認します。

利用態様を確認

写真全体の掲載、動画・音楽の再現、広告訴求など、鑑賞対象化していないかを確認します。

契約・規約を確認

素材サイト、NDA、顧客契約、AIツール規約で別途制限されていないかを確認します。

高リスク
許諾取得を優先

広告・採用・商品化・海外展開・AI入力では、例外だけで進めず許諾と証跡を確認します。

低リスク
範囲を限定

必要最小限の利用、出所表示、記録保存を行い、後で説明できる状態にします。

著作権法には、一定の場合に著作権者の許諾なく著作物を利用できる権利制限規定があります。しかし、企業が広告・広報・営業・採用・商品化に使う場面では、例外規定の適用を過信すべきではありません。

6.1 引用

引用は、企業メディアや解説記事で頻繁に問題になります。一般に、引用が適法といえるためには、公表された著作物ですこと、引用する必然性があること、自社の記述と引用部分との主従関係が明確ですこと、引用部分が明瞭に区別されていること、必要な範囲にとどまること、出所表示を行うことなどが重要です。

画像・動画・音楽の引用は、文章引用より慎重な検討が必要です。写真一枚を丸ごと掲載する場合、その写真自体が強い鑑賞対象になることがあります。動画や楽曲の一部利用も、批評・研究・報道等の目的との関係、利用量、視聴体験への影響、代替性、出所表示を具体的に検討する必要があります。

6.2 写り込み

写真撮影、録音、録画、配信、スクリーンショット等の際、背景に他人の著作物が付随的に写り込むことがあります。文化庁は、著作権法30条の2について、一定の付随対象著作物を許諾なく利用できる旨を説明しており、同条は写真・録音・録画だけでなく利用全般を対象にする形で整理されています。

ただし、写り込みといえるかは、著作物が主たる被写体ではないか、分離困難か、利用が著作権者の利益を不当に害しないかなどを具体的に判断します。広告写真の背景に有名キャラクター、アート作品、ブランドロゴ、テレビ番組、ポスター、雑誌表紙が大きく映っている場合、単なる写り込みとは評価されにくいことがあります。

6.3 私的使用目的の複製

個人が家庭内など限られた範囲で利用する場合と、企業が業務で利用する場合は異なります。社内検討用、研修用、営業用、広告用、社内報用、イントラネット掲載用であっても、会社業務として組織的に利用する以上、安易に私的使用目的の複製として扱うべきではありません。

6.4 屋外美術・建築物の利用

屋外に恒常的に設置されている美術作品や建築物については、一定範囲で利用が認められる場合があります。他方で、販売目的の複製、専ら美術作品の複製物販売を目的とする場合、著作権者の利益を不当に害する場合など、例外が問題になります。

観光地、商業施設、駅、公共空間、イベント会場で撮影した素材を企業広告に使う場合、著作権だけでなく、施設管理者の撮影規約、商標、肖像、パブリシティ、ロケーション契約も確認すべきです。

6.5 生成AI・情報解析目的の利用

著作権法30条の4は、思想または感情の享受を目的としない一定の利用について、柔軟な権利制限を設けています。文化庁は、AIと著作権をめぐる考え方について、関係審議会で整理を進め、生成AI時代の著作権上の論点を公表しています。

ただし、企業が生成AIに写真・動画・音楽を投入する場合、著作権法だけでなく、秘密保持契約、個人情報、顧客データ、プラットフォーム規約、学習利用の可否、生成物の類似性、ブランド毀損、説明責任を検討する必要があります。特に、第三者からライセンスを受けた素材をAI学習や再生成に使うことは、素材サイトの規約や契約上禁止されている場合があります。

Section 06

写真利用の権利処理

撮影者、被写体、提供者、利用者を分けて確認します。

次の四つの視点は、写真利用で確認する主体を整理したものです。写真は一枚でも権利者・被写体・提供者・利用部署が分かれるため重要で、どの主体について同意や契約が必要かを読み取ってください。

Subject 01

撮影者

著作者または権利者が誰か、会社へどの範囲で許諾・譲渡されたかを確認します。

Subject 02

被写体

人物、商品、建物、美術品、ロゴ、背景表示の権利と文脈を確認します。

Subject 03

提供者

社内担当者、制作会社、投稿者、素材サイトが正当に提供できる立場かを確認します。

Subject 04

利用者

どの部署が、どの媒体で、何の目的で、いつまで利用するかを確認します。

7.1 写真で確認すべき四つの主体

企業が写真を使うときは、最低限、次の四つの主体を分けて確認します。

  1. 撮影者 ― 著作者または権利者は誰か。
  2. 被写体 ― 人物、商品、建物、美術品、ロゴ、車両、動物、背景に何が写っているか。
  3. 提供者 ― 写真を会社へ提供した人・部署・制作会社は、正当に権利を持っているか。
  4. 利用者 ― 会社のどの部署が、どの媒体で、何の目的で、どの期間使うのか。

写真素材は、権利関係が単純に見えても、実際には複雑です。たとえば、イベント写真では、撮影者の著作権、登壇者の肖像・パブリシティ、参加者のプライバシー、スポンサー企業のロゴ、会場規約、撮影禁止エリア、資料スライドの著作権が重なることがあります。

7.2 ストックフォト利用の注意点

ストックフォトは便利ですが、「購入したから何でも使える」わけではありません。確認すべき項目は以下です。

  • 商用利用の可否
  • 広告、商品パッケージ、テンプレート、再販売、グッズ化の可否
  • 利用可能な媒体、期間、地域、閲覧数、印刷部数
  • モデルリリース・プロパティリリースの有無
  • センシティブ用途、医療、金融、政治、宗教、成人向け、採用広告などへの利用制限
  • 加工、合成、AI利用、ロゴ化、商標登録の可否
  • クレジット表示義務
  • 第三者への再許諾、グループ会社利用、代理店利用の可否
  • 退会後・契約終了後の利用継続可否

特に、人物写真を「悩んでいる顧客」「病気の患者」「借金に困る人」「転職希望者」「不正をした従業員」のような文脈で使うと、モデル本人の人格的利益を害する可能性があります。素材サイトで許諾されていても、利用文脈が不適切であれば紛争化することがあります。

7.3 SNS写真・UGCの利用

ユーザーがSNSに投稿した写真や動画を、企業アカウントがリポスト、広告転用、LP掲載、店頭POP化、キャンペーン事例化する場合、プラットフォーム上の共有機能の範囲を超えた利用には注意が必要です。

実務上は、次のような同意取得が望まれますです。

  • 利用対象投稿のURLまたは画像を特定する
  • 利用目的を明示する
  • 利用媒体を明示する
  • 利用期間を明示する
  • 無償・有償を明示する
  • 投稿者以外の被写体がいる場合、投稿者が権利処理済みですことを確認する
  • 商品レビュー、推薦、広告表示に該当する場合は広告ですことを明示する
  • 削除要請・撤回要請への対応方針を定める

7.4 社員・顧客・取引先の写真

社内イベント、採用サイト、導入事例、顧客インタビュー、展示会写真では、社員・顧客・取引先の写真を使うことが多くあります。企業は、撮影前に利用目的を伝え、必要に応じて同意書を取得し、退職・異動・契約終了・取引終了後の掲載継続をどう扱うかを決めておくべきです。

社員については、雇用関係があるからといって、本人の顔写真やインタビュー動画を無制限に広告利用できるわけではありません。採用広報、顧客向け広告、社外セミナー、SNS広告、海外サイト掲載など、本人への影響が大きい利用は、明確な同意と撤回時の運用が重要です。

Section 07

動画利用の権利処理

完成動画だけでなく、映像・出演・音・配信後利用を分解します。

次の一覧は、動画を構成する要素を素材の種類ごとに整理したものです。動画は単一ファイルではなく権利の集合体なので重要で、映像・出演者・音楽・ロケ地・サムネイルまで分けて確認する点を読み取ってください。

A

映像・編集

企画、台本、絵コンテ、撮影映像、CG、字幕、テロップ、フォントを確認します。

映像
B

出演・背景

出演者、社員、顧客、通行人、店舗、看板、ロゴ、商品、施設規約を確認します。

肖像
C

音・配信

BGM、効果音、歌詞、ナレーション、配信、切り抜き、アーカイブを確認します。

音源

8.1 動画は「映像ファイル」ではなく、権利の束です

動画には、次のような要素が含まれます。

  • 企画、台本、構成案、絵コンテ
  • 撮影映像、編集映像、CG、アニメーション
  • 出演者、社員、顧客、エキストラ、通行人
  • ナレーション、字幕、テロップ、フォント
  • BGM、効果音、ジングル、歌詞、演奏、歌唱
  • 建物、店舗、看板、ロゴ、商品、パッケージ
  • 背景に映るポスター、絵画、映像、画面表示
  • ロケ地、施設、道路、公園、学校、病院、工場
  • ドローン撮影、車両撮影、録音、照明、特殊機材
  • サムネイル、切り抜き、ショート動画、静止画キャプチャ

したがって、動画制作契約では「完成動画の納品」だけでは足りません。企業が将来、短尺化、字幕追加、海外版制作、再編集、広告配信、展示会上映、営業資料組込み、採用サイト転用、SNS切り抜き、静止画化を行う可能性があるなら、それらを契約に明記する必要があります。

8.2 動画制作契約で定めるべき事項

動画制作会社との契約では、少なくとも次の事項を定めます。

次の比較表は、動画利用の権利処理で確認する項目を横並びで整理したものです。判断漏れを防ぐために重要なので、左の項目と右の実務上の意味を対応させて読み取ってください。

項目実務上の意味
成果物の範囲完成動画、短尺版、字幕版、サムネイル、静止画、編集データ、音声データ
権利帰属著作権譲渡か利用許諾か。譲渡対象権利を明確にする
利用範囲媒体、期間、地域、言語、広告利用、SNS利用、社内利用、海外利用
二次利用再編集、切り抜き、静止画化、他資料への組込み、再配信
第三者素材ストック素材、音源、フォント、テンプレート、AI素材の使用可否
出演者処理肖像同意、タレント契約、エキストラ、社員、未成年者
音楽処理作曲、既存曲、原盤、演奏、歌唱、効果音、JASRAC・NexTone等
著作者人格権改変、編集、クレジット、トリミングへの不行使合意
保証・補償第三者権利侵害がないこと、紛争時の対応、費用負担
検収・修正修正回数、検収基準、公開後修正、炎上時削除
データ管理元データ、編集プロジェクト、素材台帳、保存期間
守秘義務未公開商品、顧客情報、撮影現場情報、社内資料

8.3 ライブ配信・ウェビナーの注意点

ライブ配信やウェビナーでは、リアルタイム性のため事前審査が甘くなりがちです。しかし、配信画面に映るスライド、背景ポスター、参加者名、チャット、画面共有、BGM、登壇者の発言、第三者資料、事例紹介は、すべて法的リスクになり得ます。

特に、配信後にアーカイブ化する場合、当初の「一回限りの配信」から「継続公開」へ利用形態が変わります。登壇者契約、資料利用許諾、音源許諾、参加者への告知、個人情報の取扱い、削除依頼窓口を準備すべきです。

8.4 動画の切り抜き・ショート化

長尺動画から短尺動画を作る場合、発言の文脈が変わり、出演者の意図と異なります印象を与えることがあります。権利処理としては、元動画の利用許諾に切り抜き・編集・広告配信・SNS投稿が含まれているかを確認します。コンプライアンス上は、誤認表示、誇大表示、比較広告、医薬・金融・教育・美容など業法広告規制への抵触も検討します。

Section 08

音楽利用の権利処理

楽曲の権利と音源の権利を分けて確認します。

次の二層整理は、音楽利用で最も誤解されやすい権利関係を示しています。楽曲の手続だけでは市販音源の利用まで完了しないため重要で、作詞・作曲側と録音物側を分けて読み取ってください。

Music 01

楽曲の権利

作詞、作曲、編曲、歌詞表示、替え歌、翻訳など、作品そのものの権利を確認します。

Music 02

音源の権利

歌唱、演奏、レコード製作者、配信音源、市販CDなど、録音物側の許諾を確認します。

Music 03

利用場面

店舗BGM、イベント演奏、動画BGM、SNS、ウェビナー、採用動画で確認先が変わります。

9.1 音楽利用で最も多い誤解

企業実務で最も多い誤解は、「JASRAC等に手続すれば、市販音源を自由に動画BGMに使える」というものです。音楽には、少なくとも次の二層があります。

  1. 楽曲の権利 ― 作詞、作曲、編曲などに関する著作権。
  2. 音源の権利 ― 歌手・演奏家の実演、レコード製作者、録音物・配信音源に関する権利。

JASRACは、インターネット上で音楽を利用する場合について、商用CDやダウンロード音源を使うには、著作権のほか、レコード製作者やアーティスト等の著作隣接権者の許諾が必要ですと説明しています。また、編曲、訳詞、替歌等については、著作者人格権等の観点から権利者の意向確認が必要になる場合があります。

日本レコード協会も、商用レコード等を利用する場合、音源の権利者・レコード製作者と、楽曲の著作権を管理する団体等の双方への確認が必要になることを案内しています。

9.2 店舗BGM・イベント演奏・動画BGM

音楽利用の場面ごとに確認先が異なります。

次の比較表は、音楽利用の権利処理で確認する項目を横並びで整理したものです。判断漏れを防ぐために重要なので、左の項目と右の実務上の意味を対応させて読み取ってください。

利用場面主な確認事項
店舗BGM管理楽曲の演奏利用、BGMサービスの契約範囲、店舗数、面積、期間
イベント演奏入場料、営利性、演奏者報酬、曲目、主催者、配信・録画の有無
動画BGM楽曲著作権、原盤権、同期利用、広告利用、配信媒体、地域、期間
SNS投稿プラットフォームの楽曲ライブラリ利用条件、企業アカウント利用可否、広告転用可否
ウェビナー配信時利用とアーカイブ利用の両方、BGM・待機音・効果音
ポッドキャスト楽曲の複製・送信、音源権利、番組アーカイブ、海外配信
採用動画社員・候補者向け広告文脈、長期掲載、海外サイト転用

JASRACは、店舗BGM、イベント演奏、インターネット配信など、利用場面に応じた手続案内を提供しています。

9.3 フリー音源・ロイヤリティフリー音源

「フリー音源」「ロイヤリティフリー」は、「権利が存在しない」という意味ではありません。多くの場合、一定の条件下で追加使用料なしに利用できるという意味です。以下を確認します。

  • 商用利用の可否
  • 動画広告、テレビCM、店頭放映、アプリ組込み、ゲーム利用の可否
  • クレジット表示義務
  • 加工、ループ、短縮、ピッチ変更の可否
  • YouTube Content ID登録の有無
  • 独占利用の可否
  • サブライセンス、再配布、テンプレート組込みの可否
  • 生成AI学習・音声合成・楽曲生成への利用可否
  • 契約終了後の掲載継続可否

「無料」と書かれた素材でも、広告利用や法人利用が除外されていることがあります。利用規約の保存、取得日時の記録、ライセンス証明書の保管が重要です。

9.4 カバー演奏・自社演奏・替え歌

既存曲を社員や外部演奏者が演奏して録音する場合、原盤権の問題は軽くなることがありますが、楽曲の著作権処理は残ります。歌詞表示、替え歌、編曲、翻訳、広告利用、商品名への結合は、通常の演奏利用より慎重な処理が必要です。

特に広告で有名曲の替え歌を使う場合、単なる著作権使用料の問題にとどまらず、著作者人格権、著作者の名誉・声望、ブランドイメージ、タレント・アーティスト側の意向、炎上リスクを検討します。

Section 09

肖像・プライバシー・パブリシティの確認

人物の撮影・公表・広告利用は同意範囲と文脈が重要です。

次の同意項目一覧は、撮影同意だけでは不足しやすい要素を整理したものです。後日の退職・契約終了・広告転用で紛争を避けるために重要で、利用目的から撤回対応まで一体で読み取ってください。

利用目的・媒体

採用、広告、SNS、海外サイト、社内研修など、何に使うかを明示します。

期間・地域・二次利用

掲載期間、地域、多言語版、切り抜き、サムネイル、広告配信を確認します。

提供先・再許諾

グループ会社、代理店、制作会社、販売店への提供可否を確認します。

撤回・削除

退職、契約終了、炎上、本人要請への対応基準を事前に定めます。

10.1 肖像の撮影・公表は総合判断

最高裁判例は、個人にはみだりに容貌等を撮影され、公表されない人格的利益があることを前提に、撮影・公表の違法性を、被撮影者の社会的地位、活動内容、撮影場所、撮影目的、撮影態様、必要性などを総合考慮して判断する枠組みを示しています。

企業の実務では、以下の場面で特に注意が必要です。

  • 顧客・来店者・通行人が写る店舗写真
  • 展示会・セミナー・採用イベントでの参加者写真
  • 社員インタビュー・職場紹介動画
  • 医療・美容・金融・教育・転職などセンシティブな文脈の人物写真
  • 防犯カメラ映像の社内共有・外部提供
  • 事故・クレーム・不祥事対応での映像利用
  • SNS投稿のスクリーンショット利用

10.2 同意書は「撮影同意」だけでは足りない

実務でよくある不十分な同意書は、「撮影に同意します」とだけ記載されたものです。企業利用では、少なくとも次を明記する必要があります。

  • 撮影者・利用主体
  • 利用目的
  • 利用媒体
  • 利用期間
  • 利用地域
  • 広告利用の有無
  • 加工・編集・トリミングの有無
  • SNS・広告配信・二次利用の有無
  • グループ会社・代理店・制作会社への提供
  • 報酬の有無
  • 撤回・削除要請への対応
  • 未成年者の場合の親権者同意

特に、社員や顧客のインタビュー動画は、会社との関係が変わった後も掲載が続くことがあります。退職・契約終了・担当変更・合併・サービス終了・炎上時の削除方針をあらかじめ定めるべきです。

10.3 パブリシティ権と広告利用

最高裁は、著名人の氏名・肖像等が持つ顧客吸引力を排他的に利用する権利に関し、肖像等を商品の鑑賞対象として用いる場合、商品等の差別化に用いる場合、広告として用いる場合など、専ら顧客吸引力を利用する態様ではパブリシティ権侵害となり得る枠組みを示しています。

企業が著名人、専門家、医師、大学教授、インフルエンサー、アスリート、経営者、キャラクターの写真や氏名を使う場合、次の点を契約で定める必要があります。

  • 肖像・氏名・声・署名・経歴・肩書の利用範囲
  • 推薦・監修・出演・協賛・アンバサダーの表示方法
  • 競合排除、業種排除、炎上時解除
  • 広告媒体、期間、地域、配信量
  • 静止画、動画、切り抜き、サムネイル、バナーへの転用
  • 加工、AI合成、声の複製、字幕翻訳
  • 投稿内容の事前承認、修正権限
  • 法令・広告規制違反時の責任分担
Section 10

顔画像・動画・音声と個人情報保護

素材としての価値と個人情報としての管理を同時に扱います。

11.1 顔画像・動画・音声は個人情報になり得る

個人情報保護委員会のガイドラインは、防犯カメラに記録された本人を判別できる映像情報や、本人を判別できる音声録音情報などが個人情報に該当し得ることを示しています。また、顔認証等に用いられる顔の特徴データは個人識別符号として扱われ得ます。

企業が写真・動画・音声を扱う場合、以下を確認します。

  • 個人を識別できるか
  • 個人データとして検索・管理されるか
  • 取得時に利用目的を通知・公表しているか
  • 当初目的を超える利用がないか
  • 第三者提供または委託に該当するか
  • 海外ツール・クラウド・AIサービスに保存されるか
  • 保存期間と削除手順が定められているか
  • 本人から開示・訂正・利用停止・削除要請が来た場合に対応できるか

11.2 利用目的の特定・通知・公表

個人情報を取り扱う場合、利用目的はできる限り特定する必要があり、取得時には原則として速やかに通知・公表する、または書面等で直接取得する場合にはあらかじめ明示する必要があります。

撮影現場では、次のような運用が考えられます。

  • イベント申込フォームに撮影・掲載目的を記載する
  • 会場入口に撮影エリア・公開予定媒体を掲示する
  • 撮影拒否者用の席・目印・導線を用意する
  • 登壇者・顧客インタビューは個別同意書を取得する
  • 社員向けには社内規程と個別同意を併用する
  • アーカイブ配信や二次利用の予定を明示する

11.3 安全管理措置

企業は、取り扱う個人データの漏えい、滅失、毀損を防止するため、必要かつ適切な安全管理措置を講じる必要があります。写真・動画・音声は、見た人が直感的に本人を識別できる場合があり、漏えい時の影響が大きい素材です。

実務上は、素材保管先、アクセス権限、共有リンク、クラウドストレージ、制作会社への委託、納品後の削除、退職者アクセス、生成AIツールへのアップロード禁止、公開期限、ログ管理を整備します。

Section 11

ロゴ・商品・施設規約の確認

写り込みでも商標、不正競争、スポンサー誤認、施設規約を確認します。

12.1 ロゴ・商品・店舗の写り込み

写真・動画に他社ロゴ、商品、店舗、パッケージ、看板、制服、キャラクターが映る場合、著作権だけでなく、商標法、不正競争防止法、広告表示上の誤認、スポンサーシップ誤認を検討します。商標は、標章と商品・役務との結びつきで保護される制度であり、広告や取引書類等での使用が問題になり得ます。

単なる背景として小さく映る場合と、自社商品・サービスを訴求する文脈で他社ブランドを目立たせる場合では評価が異なります。比較広告、導入事例、互換性表示、レビュー記事、店舗内撮影、プラットフォーム画面のスクリーンショットでは、表示の正確性と許諾の要否を確認すべきです。

12.2 不正競争防止法上のリスク

他人の商品等表示として需要者に広く認識されている表示を使い、混同を生じさせる行為などは、不正競争防止法上問題になり得ます。

たとえば、競合他社の有名店舗・商品・広告表現に類似したビジュアルを使い、自社の広告として配信する場合、著作権侵害が成立しなくても、混同、信用毀損、フリーライド、ブランド毀損の観点から紛争化する可能性があります。

12.3 施設・ロケ地の撮影規約

商業施設、駅、空港、学校、病院、自治体施設、文化財、テーマパーク、美術館、ライブハウス、スポーツ会場では、施設管理者の撮影規約やロケーション契約が重要です。著作権法上撮影できる場合でも、私有地・施設内の契約上の制限に違反すれば、掲載中止、損害賠償、出入り禁止、信用低下につながります。

Section 12

広告・ステルスマーケティング規制

写真・動画・音楽は広告表示そのものとして機能します。

13.1 写真・動画・音楽は広告表示そのものになる

写真・動画・音楽は、単なる装飾ではありません。広告においては、商品性能、安全性、効果、価格、人気、専門家推薦、利用者体験、ブランドイメージを伝える表示そのものになります。したがって、景品表示法、業法広告規制、消費者契約法、薬機法、医療広告、金融商品取引法、宅建業法、職業安定法など、業界ごとの規制を確認します。

13.2 ステルスマーケティング規制

消費者庁は、2023年10月1日からステルスマーケティングを景品表示法違反として規制しています。広告ですにもかかわらず、広告ですことを隠す表示は、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害し得ると整理されています。

企業がインフルエンサーに写真・動画・音楽付き投稿を依頼する場合、以下を管理します。

  • 広告主と投稿者の関係
  • 投稿内容への指示・依頼・対価提供の有無
  • 広告表示の明確性
  • ハッシュタグの位置・視認性
  • 体験談・効果効能表示の根拠
  • 音源・画像・撮影場所の権利処理
  • 投稿前審査と投稿後監視
  • 二次利用・広告配信転用の許諾

13.3 専門家・顧客の写真やコメント

弁護士、医師、大学教授、研究者、公認会計士、税理士、中小企業診断士、経営コンサルタントなどの専門家の写真・動画・コメントを使う場合、広告上の信頼性が高まる反面、表示責任も重くなります。肩書、所属、監修範囲、推薦の根拠、報酬の有無、利益相反、専門分野との関係を明確にすべきです。

Section 13

契約実務で完成させる写真・動画・音楽の権利処理

権利帰属、利用範囲、二次利用、再許諾、補償を条項化します。

14.1 権利処理条項の基本設計

写真・動画・音楽の利用に関する契約では、次の条項を整備します。

  1. 目的条項 ― 何のための制作・利用か。
  2. 成果物定義 ― 写真、動画、音源、編集データ、短尺版、字幕版、サムネイル等を含むか。
  3. 権利帰属 ― 著作権譲渡か利用許諾か。
  4. 利用範囲 ― 媒体、期間、地域、言語、回数、部数、配信量、広告利用。
  5. 二次利用 ― 加工、改変、翻案、切り抜き、SNS転用、海外版制作。
  6. 再許諾 ― 代理店、グループ会社、販売店、加盟店、プラットフォームへの利用許可。
  7. 著作者人格権 ― 不行使合意、クレジット、改変可否。
  8. 第三者素材 ― 使用可否、許諾証跡、利用規約、追加費用負担。
  9. 肖像・出演者 ― 同意取得、タレント契約、未成年者、撤回時対応。
  10. 音楽・音源 ― 楽曲、原盤、実演、歌詞、編曲、広告利用。
  11. 保証・補償 ― 権利侵害がないこと、紛争時の協力、費用負担。
  12. 検収・公開停止 ― 不適合、法令違反、炎上、権利主張時の停止権限。
  13. データ管理 ― 保存、削除、アクセス権、秘密保持、個人情報。
  14. 報酬・追加費用 ― 二次利用料、延長料、媒体追加、出演者追加報酬。

14.2 「買取り」「無期限」「全媒体」は具体化する

契約書で「買取り」「無期限」「全媒体利用可」と書いても、後で争いになることがあります。実務上は、次のように具体化します。

  • 日本国内および海外で利用できるか
  • ウェブ、SNS、テレビ、新聞、雑誌、交通広告、店頭、展示会、営業資料、社内資料に使えるか
  • 広告配信、リターゲティング、アフィリエイト、動画広告に使えるか
  • 加工、合成、トリミング、翻訳、字幕、音声差替えができるか
  • グループ会社、販売代理店、フランチャイズ加盟店に使わせられるか
  • 会社売却、事業譲渡、ブランド譲渡後も使えるか
  • 契約終了後、公開済みコンテンツを残せるか
  • 生成AI、機械学習、データセット化に使えるか

14.3 フリーランス・中小受託者との取引

写真家、動画制作者、作曲家、ナレーター、編集者、インフルエンサーなどは、フリーランスまたは小規模事業者ですことが多くあります。企業側は、発注書、業務内容、報酬、支払期日、成果物、検収、知的財産権、修正範囲、追加費用、キャンセル料を明確にし、不当な買いたたき、支払遅延、一方的なやり直し要求、成果物の範囲外利用を避ける必要があります。

公正取引委員会は、下請法から中小受託取引適正化法への改正・施行予定を公表しており、2026年1月1日施行予定の改正では、用語変更や規制内容の見直し等が予定されています。 また、フリーランスとの取引では、フリーランス保護新法の対象となる場合もあり、発注内容・報酬・支払期日等の明示、ハラスメント対応、解除・不更新時の対応などを確認すべきです。

Section 14

生成AI時代の写真・動画・音楽の利用

入力段階と出力段階を分け、秘密情報・個人情報・類似性を確認します。

15.1 AIへの入力とAI生成物の利用は分けて考える

生成AIを使う場合、次の二つを分けます。

  • 入力段階 ― 既存の写真、動画、音楽、音声、社内資料、顧客情報、未公開素材をAIに投入してよいか。
  • 出力段階 ― 生成された画像、動画、音楽、声、文章を広告・商品・資料に使ってよいか。

入力段階では、著作権、契約、秘密保持、個人情報、営業秘密、素材サイト規約、委託契約が問題になります。出力段階では、既存著作物との類似、人物・著名人・声の模倣、商標・キャラクター類似、差別・名誉毀損、虚偽表示、AI生成ですことの表示、品質保証が問題になります。

15.2 AI生成画像・動画・音楽の実務ルール

企業がAI生成素材を使う場合、次のような社内ルールが必要です。

  • 入力禁止情報の定義 ― 個人情報、秘密情報、顧客資料、未公開商品、契約で制限された素材
  • 利用可能ツールの選定 ― 企業向け契約、学習利用設定、ログ保存、所在地、委託先管理
  • 生成物審査 ― 既存作品・商標・人物・差別表現・不正確表示のチェック
  • 表示方針 ― AI生成ですことを表示するか、どの場面で表示するか
  • 権利保証 ― ツール提供者の規約、補償範囲、利用制限
  • 台帳管理 ― プロンプト、入力素材、出力日、担当者、用途、公開期限
  • 広告審査 ― 実在しない人物・実績・効果・体験談を誤認させない

15.3 AI音声・AI楽曲・声の複製

AI音声やAI楽曲は、音楽・音声の利用実務を大きく変えます。声は個人の人格的利益、パブリシティ、契約上の利用制限、場合によっては個人情報・生体情報の問題を含みます。著名人やナレーターの声に似せた音声、既存アーティスト風の楽曲、既存曲に近いメロディは、法的リスクに加えてレピュテーションリスクが高い領域です。

Section 15

素材台帳と承認手順

後から説明できる証跡と公開後管理を整備します。

次の時系列は、素材を使う前後の承認と管理の順番を示しています。権利処理を属人的にしないために重要で、企画から再利用時審査まで証跡を残す流れを読み取ってください。

企画段階

目的・媒体・期間を確認

広告性、個人情報、海外利用、生成AI利用の有無を早めに確認します。

素材取得

契約・同意・規約を保存

取得元、ライセンス証、同意書、利用規約、スクリーンショットを台帳化します。

制作段階

第三者素材を点検

音源、出演者、背景、ロゴ、AI素材、フォントの混入を確認します。

掲載前審査

複数部門で確認

法務、知財、広告審査、個人情報、ブランド管理が用途に応じて確認します。

公開後管理

期限と削除を管理

掲載先、広告配信先、公開期限、撤回・削除要請を管理します。

再利用時

目的変更を再確認

別媒体、別国、別目的で使う前に、許諾範囲と同意を再確認します。

16.1 素材台帳の項目

写真・動画・音楽の利用では、後から「この素材はなぜ使えるのか」を説明できることが重要です。素材台帳には、以下を記録します。

次の比較表は、素材台帳と承認手順で確認する項目を横並びで整理したものです。判断漏れを防ぐために重要なので、左の項目と右の実務上の意味を対応させて読み取ってください。

項目内容
素材ID一意の管理番号
素材種別写真、動画、音源、効果音、楽曲、ナレーション等
取得元自社撮影、制作会社、素材サイト、SNS投稿、顧客提供等
権利者著作権者、原盤権者、出演者、撮影者、作曲者等
契約書契約番号、締結日、更新日、担当部署
利用範囲媒体、期間、地域、目的、二次利用、再許諾
人物情報肖像同意、未成年者同意、撤回条件
個人情報利用目的、保存期間、委託先、第三者提供
広告審査景表法、業法、ステマ、表示根拠
公開期限掲載開始日、終了日、延長可否
削除手順掲載先一覧、キャッシュ、SNS、広告管理画面
証跡ライセンス証、同意書、メール、規約保存、スクリーンショット

16.2 承認フロー

推奨される承認手順は次のとおりです。

  1. 企画段階 ― 利用目的、媒体、期間、地域、広告性、個人情報の有無を確認します。
  2. 素材取得段階 ― 取得元、契約、ライセンス、同意書、規約を保存します。
  3. 制作段階 ― 第三者素材、音源、出演者、背景、ロゴ、AI利用をチェックする。
  4. 掲載前審査 ― 法務、知財、広告審査、個人情報保護、ブランド管理が確認します。
  5. 公開後管理 ― 掲載先、広告配信先、投稿先、公開期限、削除要請を管理します。
  6. 再利用時審査 ― 過去素材を別媒体・別国・別目的で使う前に再確認します。

16.3 リスク分類

全素材を同じ重さで審査すると、実務が止まります。リスク分類を設けると効率的です。

次の比較表は、素材台帳と承認手順で確認する項目を横並びで整理したものです。判断漏れを防ぐために重要なので、左の項目と右の実務上の意味を対応させて読み取ってください。

リスク審査水準
自社撮影の物撮り、人物なし、権利処理済み素材部門確認+台帳登録
社員写真、素材サイト人物写真、BGM付き社内動画法務・個人情報確認
広告動画、著名人、顧客事例、音楽利用、SNS二次利用法務・知財・広告・個人情報の複合審査
特高テレビCM、全国キャンペーン、医療・金融・美容、AI生成著名人風素材外部専門家確認を推奨
Section 16

写真・動画・音楽の利用でトラブルが起きた時の対応

素材特定、証跡確認、停止判断、窓口一本化を早期に行います。

次の時系列は、権利者・被写体・行政・プラットフォームから指摘を受けたときの初動を示しています。初期対応の誤りが被害拡大につながるため重要で、証拠保全、素材特定、窓口一本化を順番に読み取ってください。

Step 01

指摘内容を保存

通知、メール、投稿、請求内容、日時、相手方を保存します。

Step 02

問題素材を特定

掲載先、公開日時、配信量、広告費、閲覧数、素材IDを確認します。

Step 03

証跡を確認

契約書、同意書、ライセンス証、取得経緯、規約保存を照合します。

Step 04

一時停止を判断

必要に応じて掲載停止、差替え、音源差替え、広告停止を検討します。

Step 05

回答窓口を一本化

権利者、本人、行政、プラットフォームへの回答を整理します。

写真・動画・音楽の利用をめぐって、権利者、被写体、顧客、消費者、行政、プラットフォームから指摘を受けた場合、初動が重要です。

17.1 初動対応

  1. 指摘内容を保存します。
  2. 問題素材、掲載先、公開日時、配信量、広告費、閲覧数を特定する。
  3. 契約書、同意書、ライセンス証、素材取得経緯を確認します。
  4. 一時停止が必要か判断します。
  5. 事実確認前に安易な法的見解を外部発信しない。
  6. 権利者・本人・行政・プラットフォームへの回答窓口を一本化する。
  7. 証拠を削除せず、必要な保全を行う。
  8. 再発防止策を設計します。

17.2 典型的な解決策

  • 掲載停止・削除
  • 差替え・ぼかし・音源差替え
  • 遡及許諾・使用料支払い
  • クレジット追加
  • 謝罪・訂正・再発防止公表
  • 契約改訂
  • 制作会社・代理店への求償
  • 個人情報漏えい等に該当する場合の本人通知・委員会報告検討
  • 広告表示問題の場合の表示修正・措置命令リスク対応

17.3 制作会社や代理店に任せきりにしない

企業が広告主・掲載主体です場合、制作会社や広告代理店が素材を選んだとしても、対外的な責任を完全に免れるとは限りません。契約上の保証・補償条項は重要ですが、最終的には、自社が公開する素材について説明責任を負うという前提で、台帳・審査・証跡管理を整備すべきです。

Section 17

写真・動画・音楽の利用チェックリスト

利用前、同意書、音楽利用の確認項目を実務で使える形に整理します。

18.1 写真・動画・音楽を使う前の基本チェック

  • その素材は誰が作成したか。
  • 著作権者は誰か。
  • 撮影者・作曲者・編集者・制作会社との契約はあるか。
  • 許諾範囲に、今回の媒体・期間・地域・目的が含まれるか。
  • 加工、トリミング、翻訳、字幕、切り抜き、広告配信が許されるか。
  • 第三者素材、ストック素材、テンプレート、フォント、AI素材が含まれていないか。
  • 人物が写っているか。
  • 肖像同意はあるか。
  • 未成年者が含まれるか。
  • 著名人・専門家・インフルエンサーの顧客吸引力を利用していないか。
  • 顔画像、音声、名札、社員番号など個人情報が含まれるか。
  • 利用目的を通知・公表しているか。
  • 他社ロゴ、商品、店舗、キャラクター、ポスターが写っていないか。
  • 音楽について、楽曲権利と音源権利を分けて確認したか。
  • 市販音源、配信音源、カラオケ音源を使っていないか。
  • SNS投稿やUGCを、プラットフォーム機能を超えて利用していないか。
  • 広告表示、ステマ、業法広告規制を確認したか。
  • 素材サイトの利用規約を保存したか。
  • ライセンス証、同意書、契約書を台帳化したか。
  • 公開期限と削除手順を決めたか。
  • 海外利用・グループ会社利用・販売代理店利用が予定されていないか。
  • 生成AIへの入力またはAI生成物の利用が含まれるか。
  • 問題発生時の連絡先と停止権限が決まっているか。

18.2 同意書テンプレートで不足しがちな項目

  • 広告利用の明示
  • SNS広告・リターゲティング広告への利用
  • 動画から静止画を切り出す利用
  • 短尺化・切り抜き・サムネイル化
  • 海外サイト・多言語版への掲載
  • グループ会社・代理店・販売店への再許諾
  • AI加工・背景合成・字幕翻訳
  • 契約終了・退職後の掲載継続
  • 削除要請への対応基準
  • 報酬に二次利用料が含まれるか

18.3 音楽利用の確認フロー

  1. 既存曲か、オリジナル曲かを確認します。
  2. 既存曲なら、作詞・作曲の管理状況を確認します。
  3. 市販音源・配信音源なら、原盤権者・実演家の許諾を確認します。
  4. 動画利用なら、同期利用・広告利用の可否を確認します。
  5. 編曲、替え歌、歌詞表示、翻訳があるか確認します。
  6. 配信媒体、期間、地域、公開期限を確認します。
  7. YouTube、TikTok、Instagram等のプラットフォーム楽曲機能を企業広告で使えるか確認します。
  8. ライセンス証跡を保存します。
Section 18

写真・動画・音楽の利用に関わる部門別役割

法務だけでなく、知財、個人情報、広告、IT、経営層が連携します。

写真・動画・音楽の利用は、法務部だけで完結しません。次のような役割分担が望まれます。

次の比較表は、写真・動画・音楽の利用に関わる部門別役割で確認する項目を横並びで整理したものです。判断漏れを防ぐために重要なので、左の項目と右の実務上の意味を対応させて読み取ってください。

部門・職種役割
法務担当・企業内弁護士契約、権利処理、紛争対応、利用可否判断
外部弁護士高リスク案件、訴訟、パブリシティ、広告規制、海外案件
知財法務・弁理士著作権、商標、キャラクター、ブランド表示、ライセンス
個人情報保護担当顔画像、動画、音声、利用目的、安全管理、委託先管理
コンプライアンス担当社内規程、研修、ステマ防止、通報・事故対応
広告審査担当景表法、業法広告、インフルエンサー投稿、表示根拠
マーケティング利用目的、媒体、クリエイティブ要件、公開期限管理
広報・IRプレス、投資家向け資料、社会的影響、危機広報
人事・採用社員写真、採用動画、退職者対応、候補者情報
情報システム・セキュリティ素材保管、アクセス権、AIツール、クラウド管理
内部監査台帳運用、規程遵守、証跡確認、再発防止監査
経営層高リスク広告、著名人起用、炎上・訴訟時の意思決定
Section 19

写真・動画・音楽の利用で整備すべき規程・書式

規程、同意書、契約書、チェックシート、対応手順を準備します。

写真・動画・音楽の利用を継続的に行う企業は、次の文書を整備すると実務が安定します。

  • 写真・動画・音楽利用規程
  • クリエイティブ制作発注規程
  • 素材台帳運用ルール
  • 肖像利用同意書
  • イベント撮影告知文
  • 社員インタビュー同意書
  • 顧客事例掲載同意書
  • タレント・インフルエンサー契約書
  • 動画制作委託契約書
  • 写真撮影委託契約書
  • 音楽制作委託契約書
  • ストック素材利用チェックシート
  • SNS・UGC利用同意取得フロー
  • 生成AI利用規程
  • 広告審査チェックリスト
  • 削除要請対応手順
  • 権利侵害申立て対応マニュアル
Section 20

写真・動画・音楽の利用のまとめ

権利を分解し、利用行為を見て、証跡を残すことが中核です。

「写真・動画・音楽の利用」は、企業にとって日常的です一方、著作権、著作者人格権、著作隣接権、肖像、パブリシティ、個人情報、商標、不正競争、広告規制、契約、取引適正化、生成AI、社内統制が交差する高度な企業法務テーマです。

実務上の核心は、次の三点に集約されます。

  1. 素材ではなく利用行為を見ること。 どこから入手したかだけでなく、どの媒体で、何の目的で、いつまで、誰に向けて、どの文脈で使うかを確認します。
  2. 権利を分解すること。 写真なら撮影者・被写体・背景・施設、動画なら映像・出演者・音楽・ロゴ・編集、音楽なら楽曲・音源・実演を分ける。
  3. 証跡を残すこと。 契約書、同意書、ライセンス証、規約、承認履歴、公開期限、削除記録を台帳化し、後から説明できるようにする。

企業がこれらを実装すれば、写真・動画・音楽を萎縮して使わないのではなく、適法かつ戦略的に活用できます。権利処理は創作の敵ではなく、企業のブランド、取引先、顧客、クリエイター、出演者を守るためのインフラです。

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Guide

写真・動画・音楽の利用で次に確認したいこと

目的に近い詳しい解説へ進めるよう、関連するテーマを整理しました。

知りたい内容を選ぶと、手続、費用、地域、具体的な論点などの詳しい解説に進めます。

このテーマから次に確認されやすい詳しい解説を9件表示しています。

Reference

写真・動画・音楽の利用で参照した資料

公的機関・団体・判例など、本文の根拠となる資料名を整理します。

参考資料

  • 公益社団法人著作権情報センター(CRIC)「著作物を正しく利用するには?」。他人の著作物を利用する場合の許諾、著作権譲渡、管理団体、裁定制度等を説明
  • 公益社団法人著作権情報センター(CRIC)「著作権は永遠に保護されるの?」。著作者死後70年、無名・変名・団体名義、公表後70年、映画の著作物の保護期間等を説明
  • 公益社団法人著作権情報センター(CRIC)「会社で作成した著作物はだれのもの?」。法人著作の要件を説明
  • 文化庁「いわゆる『写り込み』等に係る規定の整備について」。著作権法30条の2に関する説明
  • 公益社団法人著作権情報センター(CRIC)「屋外の美術の著作物等の利用」。屋外美術・建築物の利用と例外に関する説明
  • 文化庁「AIと著作権」。生成AIと著作権に関する文化審議会著作権分科会法制度小委員会の整理等を掲載
  • 一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)「インターネット上での音楽利用」。商用CD・ダウンロード音源利用時の著作隣接権者許諾、編曲・訳詞・替歌等の注意点を説明
  • 一般社団法人日本レコード協会「市販レコードを利用する場合の手続き」。商用レコード等の音源利用と楽曲著作権の確認先を説明
  • 一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)「BGM」。店舗等でのBGM利用手続に関する案内
  • 一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)「イベントでの演奏」。イベント等での演奏利用手続に関する案内
  • 最高裁判所第一小法廷平成17年11月10日判決。肖像撮影・公表と人格的利益に関する判断枠組み
  • 最高裁判所第一小法廷平成24年2月2日判決。いわゆる「ピンク・レディー事件」。パブリシティ権に関する判断枠組み
  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」。顔画像、音声、個人識別符号等に関する説明
  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」。利用目的の特定、通知・公表、直接書面取得時の明示等に関する説明
  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」。安全管理措置に関する説明
  • 特許庁「商標制度の概要」。商標制度、商品・役務との関係に関する説明
  • e-Gov法令検索「不正競争防止法」。商品等表示、混同惹起行為等に関する条文
  • 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となりました。」ステルスマーケティング規制の概要
  • 公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)」。下請法から取適法への改正、施行予定、主な変更点等の案内
  • 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」。フリーランスとの取引に関する制度案内