2σ Guide

YouTube動画に使用する
音楽の権利処理

企業動画、広告、採用、IR、ウェビナーで音楽を使う前に、楽曲側と音源側の権利、広告利用、Content ID、契約・証跡管理を確認します。

2層 楽曲と音源を分ける
3回 90日以内の警告リスク
12項目 FAQで誤解を整理
本ページは株式会社Dプロフェッションズ(医師/医療機関/弁護士/弁護士法人ではありません)が運営しています。
一般的な情報提供を目的としており医療上の助言や法律相談等を行うものではありません。
広告(PR)を掲載しています。広告は編集内容や推奨を意味しません。
Video

YouTube動画に使用する 音楽の権利処理

企業動画、広告、採用、IR、ウェビナーで音楽を使う前に、楽曲側と音源側の権利、広告利用、Content ID、契約・証跡管理を確認します。

動画を読み込み中…
2σ GUIDE ・ VIDEO
YouTube動画に使用する 音楽の権利処理
企業動画、広告、採用、IR、ウェビナーで音楽を使う前に、楽曲側と音源側の権利、広告利用、Content ID、契約・証跡管理を確認します。
動画の文字起こし(全文テキスト)

2σ GUIDE ・ VIDEO

  • YouTube動画に使用する 音楽の権利処理
  • 企業動画、広告、採用、IR、ウェビナーで音楽を使う前に、楽曲側と音源側の権利、広告利用、Content ID、契約・証跡管理を確認します。

POINT 1

  • YouTube動画に使用する音楽の権利処理の全体像
  • 著作権、原盤権、広告利用、Content ID、社内統制を一体で確認します。
  • 投稿可否と許諾完了を分ける
  • 楽曲側と音源側を分ける
  • 証跡と契約で残す

POINT 2

  • YouTube動画に使用する音楽の権利処理が企業法務リスクになる理由
  • 公開停止と広告損失
  • 動画の非公開、地域ブロック、広告配信停止により、制作費や広告費が無駄になる可能性があります。
  • 契約違反と取引先対応
  • 制作会社、広告代理店、出演者、クライアントとの責任分担が曖昧だと、補償や再制作の負担が争点になります。

POINT 3

  • YouTube動画の音楽権利処理で分けるべき権利の層
  • 楽曲、音源、人格権を分けると、許諾漏れの所在が見えます。
  • 人格的利益
  • 2.1「楽曲」と「音源」は別である
  • 2.2 著作権 ― 歌詞・メロディ・編曲などに関する権利

POINT 4

  • YouTube動画に使用する音楽の権利処理を始める判断手順
  • 1. 音源の出所を特定:自社制作、素材サイト、オーディオライブラリ、市販音源、ゲーム内音源などを分類します。
  • 2. 楽曲側と音源側を分離:著作権管理状況と原盤・実演家の権利を別々に確認します。
  • 3. 動画目的を確認:企業チャンネル、商品紹介、採用、広告、IRなどの目的で許諾範囲が変わります。
  • 4. 利用媒体と地域を確認:YouTube以外への転載、外部サイト埋め込み、海外配信、展示会利用を確認します。
  • 5. 追加確認へ:権利者、管理団体、素材提供会社、制作会社に確認し、証跡を保存します。
  • 6. 契約と台帳へ:許諾範囲を契約、ライセンス証書、音楽利用台帳に落とし込みます。

POINT 5

  • YouTube動画の音楽権利処理を利用形態別に確認する
  • 素材の種類ごとに、許諾窓口と証跡の残し方を変える必要があります。
  • 5.1 自社オリジナル曲を使う場合
  • 5.2 YouTubeオーディオライブラリを使う場合
  • 5.3 ロイヤリティフリー音源・素材サイトを使う場合

POINT 6

  • YouTube広告・PR動画の音楽権利処理で特に注意すべき点
  • 広告目的と収益化は別
  • 動画自体が商品や企業を宣伝する場合、YouTubeの収益化とは別に広告目的の処理が問題になります。
  • 有名楽曲は審査対象
  • 著作権使用料を払えば必ず使えるわけではなく、ブランドイメージや商品カテゴリで拒否されることがあります。

POINT 7

  • YouTube動画のContent IDと著作権侵害警告への対応
  • 1. Content IDの申し立て:自動識別によりブロック、収益移転、トラッキング等が生じます。
  • 2. 著作権侵害の警告:削除通知によりコンテンツが削除されたことを意味し、90日以内に3回でチャンネル停止につながるとされています。
  • 3. 異議申し立て前の確認:許諾範囲、ライセンス証書、広告配信への影響、削除通知へ進むリスクを確認します。

POINT 8

  • YouTube動画の音楽権利処理を契約条項に落とし込む
  • 制作会社、広告代理店、クリエイター、音源提供会社との責任分担を文書化します。
  • 8.1 権利帰属・利用許諾範囲
  • 8.2 第三者素材の管理
  • 8.3 表明保証・補償

まとめ

  • YouTube動画に使用する 音楽の権利処理
  • YouTube動画に使用する音楽の権利処理の全体像:著作権、原盤権、広告利用、Content ID、社内統制を一体で確認します。
  • YouTube動画に使用する音楽の権利処理が企業法務リスクになる理由:権利者の多さと法人利用の広がりが、動画公開後のリスクを大きくします。
  • YouTube動画の音楽権利処理で分けるべき権利の層:楽曲、音源、人格権を分けると、許諾漏れの所在が見えます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

YouTube動画に使用する音楽の権利処理の全体像

著作権、原盤権、広告利用、Content ID、社内統制を一体で確認します。

次の要点一覧は、YouTube動画に使用する音楽の権利処理で最初に分けるべき観点を整理したものです。企業動画では、楽曲、音源、広告目的、証跡が別々に問題になるため、どの列に検討漏れがあるかを読み取ることが重要です。

POINT 1

投稿可否と許諾完了を分ける

YouTube上で公開できていても、原盤権、広告利用、海外配信、外部サイト利用まで処理済みとは限りません。

POINT 2

楽曲側と音源側を分ける

歌詞やメロディの著作権と、録音物や実演に関する著作隣接権は、窓口も許諾範囲も異なります。

POINT 3

証跡と契約で残す

動画公開時点の利用規約、ライセンス証書、契約条項、Content ID対応手順を保存して初めて説明可能性が高まります。

このページは、企業法務、知財法務、コンプライアンス、広告審査、動画制作、広報、マーケティング、内部統制、リスクマネジメントの実務担当者を主な読者として、「YouTube動画に使用する音楽の権利処理」を体系的に整理する専門記事です。内容は日本法を中心に、YouTubeの公式ヘルプ、JASRAC、NexTone、日本レコード協会、文化庁、著作権情報センター等の公開情報を参照している。ただし、個別案件の法的助言ではありません。実際の投稿、広告配信、海外配信、タイアップ、上場企業の開示・危機対応、紛争対応では、契約書、利用規約、楽曲ごとの権利者、配信地域、動画内容、広告目的性、権利者の運用方針を確認し、必要に応じて弁護士、弁理士、企業内弁護士、外部法律事務所、音楽出版社、レコード会社、著作権管理事業者へ照会する必要があります。

YouTube動画に音楽を入れる場合、実務上最も危険なのは「YouTubeに上げられるから権利処理は終わっている」と誤解することです。YouTube、JASRAC、NexToneとの包括的な利用許諾により、一定範囲では投稿者が個別申請なしにJASRACまたはNexTone管理楽曲を含む動画を投稿できる場合があります。しかし、その効力は主に「歌詞・メロディ等の著作権」側の処理に関するものであり、市販CD、配信音源、カラオケ音源、BGM素材、ゲーム内音源、ライブ収録音源などの「音源・原盤・実演」に関する著作隣接権、広告・宣伝目的利用、外国作品、法人・団体利用、外部サイト埋め込み、編曲・訳詞・替え歌、ブランドタイアップ、テレビCM・Web広告素材への展開まで当然に包括するものではありません。

企業法務の観点では、「音楽の権利処理」は単なる著作権の確認ではなく、動画公開までのリスクアセスメント、権利証憑の保存、契約条項の整備、制作会社・広告代理店・インフルエンサーとの責任分担、Content ID対応、削除通知・著作権侵害警告への初動、広告審査、海外配信、内部統制まで含む一連のガバナンスです。したがって、このページは「どの権利を、誰から、どの範囲で、どの証拠を残して取得したか」を中心軸に、YouTube動画に使用する音楽の権利処理を解説する。

Section 01

YouTube動画に使用する音楽の権利処理が企業法務リスクになる理由

権利者の多さと法人利用の広がりが、動画公開後のリスクを大きくします。

以下のリスク一覧は、企業が音楽利用を軽く見たときに広がりやすい影響を整理したものです。権利者が多いほど単なる動画非公開では済まないため、どの影響が自社の施策に直結するかを確認してください。

公開停止と広告損失

動画の非公開、地域ブロック、広告配信停止により、制作費や広告費が無駄になる可能性があります。

契約違反と取引先対応

制作会社、広告代理店、出演者、クライアントとの責任分担が曖昧だと、補償や再制作の負担が争点になります。

ブランド毀損

有名楽曲やアーティストイメージと商品・サービスの組合せが不適切と見られると、炎上や信頼低下につながります。

YouTubeは企業広報、商品説明、採用活動、IR、セミナー配信、広告、ウェビナー、SNS連動施策に不可欠な媒体になった。そのため、企業が公開する動画に音楽を入れる場面も増えている。ところが、音楽は権利関係が非常に複層的であり、画像、文章、ナレーション素材よりも権利者が多いことが少なくない。

たとえば、ある有名楽曲を企業の新商品紹介動画にBGMとして使用する場合、少なくとも次のような関係者が存在し得る。

  • 作詞者
  • 作曲者
  • 編曲者
  • 音楽出版社
  • 著作権管理事業者
  • レコード会社
  • 実演家
  • アーティストマネジメント会社
  • 原盤権者
  • カラオケ音源制作者
  • ライブラリ音源提供会社
  • 広告代理店
  • 動画制作会社
  • インフルエンサーまたは出演者
  • YouTube上のContent ID運用者
  • 海外の著作権管理団体

このうち誰か一者の許諾だけで十分とは限らない。とりわけ、企業が「CDを買った」「音楽配信サービスでダウンロードした」「YouTubeに公式音源がある」「JASRAC管理楽曲だから大丈夫」「フリーBGMと書いてあった」と理解している場合でも、実際には動画への複製、配信、広告利用、商用利用、改変、クレジット表示、外部サイト埋め込み、海外配信に関して追加の許諾が必要になることがあります。

企業法務上のリスクは、単に動画が非公開になることにとどまらない。企業ブランドの毀損、広告キャンペーンの停止、制作費・広告費の損失、取引先との契約違反、インフルエンサー施策の炎上、損害賠償請求、差止請求、削除通知、アカウント停止、社内決裁違反、上場企業における内部統制上の問題へ発展することがあります。著作権侵害については、民事上、差止め、損害賠償、不当利得返還、信用回復措置等が問題となり得るほか、刑事手続が問題となる場合もある。

Section 02

YouTube動画の音楽権利処理で分けるべき権利の層

楽曲、音源、人格権を分けると、許諾漏れの所在が見えます。

次の3つの項目は、音楽利用で重なる権利の層を整理したものです。窓口や許諾対象が違うため、どの層の確認が残っているかを読み取ることが重要です。

LAYER 1

楽曲

歌詞、メロディ、編曲などの音楽著作物です。JASRACやNexToneの管理対象になることがあります。

LAYER 2

音源

歌唱・演奏を録音したマスター、CD音源、配信音源、BGMファイルなどです。原盤権者や実演家の権利が問題になります。

LAYER 3

人格的利益

替え歌、歌詞改変、広告文脈、センシティブな利用では、財産権とは別にイメージ毀損や不行使特約の限界を検討します。

2.1「楽曲」と「音源」は別である

音楽の権利処理で最初に区別すべきなのは、「楽曲」と「音源」です。

「楽曲」とは、歌詞、メロディ、楽曲構成など、作詞者・作曲者等が創作した音楽著作物の側面をいう。一般にJASRACやNexToneが管理するのは、この歌詞・メロディに関する著作権です。

これに対し、「音源」とは、歌唱・演奏を録音した具体的なレコード、マスター、配信音源、CD音源、カラオケ音源、BGMファイル等をいう。音源には、レコード製作者、実演家等の著作隣接権が重なる。JASRACも、インターネット上で市販CDやダウンロード音源を利用する場合には、著作権とは別に著作隣接権、すなわち音源製作者やアーティストの権利の許諾が必要であると案内している。 NexToneも、同様に、CD音源・配信音源等の第三者作成音源を使用する場合には、原盤権者であるレコード会社等の許諾が必要であると説明している。

この区別は決定的に重要です。自社社員がギターで演奏して歌う「カバー動画」と、市販CDの音源をそのままBGMにする動画とでは、必要な権利処理が異なります。前者では主に楽曲側の著作権が問題になり、後者では楽曲側に加えて音源側の著作隣接権が問題になります。

2.2 著作権 ― 歌詞・メロディ・編曲などに関する権利

日本の著作権法は、著作物、実演、レコード、放送、有線放送に関し、著作者の権利および著作隣接権を定める法律です。 YouTube動画で音楽を使う場面では、主に以下の権利が問題になります。

以下の比較表は、権利、YouTube動画での典型例の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

権利YouTube動画での典型例
複製権音楽を動画ファイルに組み込み、編集データや完成データとして保存・書き出す
公衆送信権・送信可能化権YouTubeにアップロードし、視聴者がアクセスできる状態にする
演奏権観客を入れたイベントやライブで楽曲を演奏する
翻案権・編曲権既存曲を編曲する、替え歌にする、歌詞を翻訳する
二次的著作物に関する権利編曲・翻訳等により生じた二次的著作物を利用する

実務で「シンクロ権」「同期権」「映像利用権」と呼ばれるものは、日本の著作権法上その名称の独立した支分権として定義されているわけではありません。しかし、音楽を映像に固定し、動画として公開する行為は、複製、公衆送信、場合によっては翻案、著作者人格権、広告目的複製、ビデオグラム録音等の問題を含む。そのため、契約実務では「映像作品への同期利用」「動画への組込み」「YouTube、SNS、Web広告、店頭サイネージ等での利用」といった具体的な利用態様を明記する必要があります。

2.3 著作隣接権 ― 実演家・レコード製作者などの権利

著作隣接権とは、著作物の創作者ではないが、著作物の伝達に重要な役割を果たす実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に認められる権利です。公益社団法人著作権情報センターも、著作隣接権を、著作物の伝達に重要な役割を果たす者に認められた権利として説明している。

YouTube動画で市販音源を利用する場合、レコード会社等の原盤権者の許諾が問題となります。日本レコード協会は、市販CD等の音源を利用する場合には、音源を製作した権利者、すなわちレコード会社等のレコード製作者等への連絡・許諾が必要である旨を案内している。 したがって、「JASRAC管理楽曲だから、市販音源もそのまま動画に使える」という理解は危険です。

2.4 著作者人格権・実演家人格権

企業動画では、権利の「財産権」だけでなく、人格的利益も問題になります。歌詞を改変する、替え歌にする、政治的・宗教的・医療的・金融的・性的・炎上リスクの高い文脈で楽曲を使う、楽曲の一部だけを切り取って印象を変える、といった利用では、財産権の許諾とは別に、著作者人格権や実演家人格権の観点からクレームが生じることがあります。

日本法上、著作者人格権は譲渡できない性質を持つため、契約実務では「著作者人格権を行使しない」旨の不行使特約を設けることが多い。ただし、不行使特約があればどのような利用でも安全というわけではありません。特に広告・PR動画では、権利者、アーティスト、所属事務所、音楽出版社がブランド毀損やイメージ毀損を理由に利用を認めないことがあります。

Section 03

YouTube動画の音楽権利処理で知るべきJASRAC・NexTone・Content ID

包括的な仕組みが扱う範囲と、投稿者側に残る確認事項を分けます。

3.1 JASRAC管理楽曲の一定範囲での投稿

JASRACは、YouTubeなどJASRACが利用許諾契約を締結している動画投稿サービスについて、投稿者が一定範囲内であればJASRAC管理楽曲を含む動画を手続きなくアップロードできると説明している。ただし、利用方法によっては個別手続きが必要になる。

この「一定範囲内」という点が重要です。企業が特定の商品・サービスを宣伝する動画、法人・団体が外国作品を含む動画をアップロードする場合、観客を招いたイベント・コンサート等を開催してその模様をアップロードする場合などには、JASRACへの手続きが必要となる場合があります。JASRACは、広告や宣伝目的の動画では「広告目的複製」、外国作品を法人・学校・団体等が利用する場合には「ビデオグラム録音」、自社主催コンサート等の模様をアップロードする場合には「演奏」に関する手続きが必要となり得ると案内している。

3.2 NexTone管理楽曲の一定範囲での投稿

NexToneも、NexToneと著作権について利用契約がある動画配信サービスでは、サービス運営者が利用楽曲の報告や使用料の支払いを行うため、動画投稿者からの個別手続きは不要であると案内している。 ただし、NexToneも、第三者が作成したCD音源・配信音源等については原盤権者の許諾が必要であると明記している。

また、外部サイトへの埋め込みや広告利用については、通常の投稿と別扱いになる場合があります。NexToneは、NexTone管理作品を利用したYouTube等の投稿型動画を外部サイトに埋め込む場合、法人が埋め込みを行うときなどには利用申請が必要となる場合がある旨を案内している。

3.3 YouTubeの包括的な仕組みは万能ではない

YouTubeは、権利者と連携し、Content ID等の著作権管理ツールを提供している。Content IDは、権利者から送信された音声・映像ファイルのデータベースを用いて、アップロード動画と著作権保護コンテンツの一致を識別する自動システムです。Content IDの一致が見つかると、権利者の設定に応じて、ブロック、収益化、トラッキング等が行われる。

しかし、YouTubeの仕組みは、投稿者に対して「すべての音楽利用を許可する制度」ではありません。YouTubeのヘルプも、他者のコンテンツを使用する権利をYouTubeが与えることはできず、許可を得る場合は利用者自身が調査・対応する必要があると説明している。

企業法務の実務では、YouTubeにアップロードできるかどうかと、権利処理が完了しているかどうかを分けて考える必要があります。YouTube上で動画が公開できていても、後日Content IDの申し立て、削除通知、広告収益の移転、地域ブロック、権利者からの直接請求、契約違反通知が届く可能性は残ります。

Section 04

YouTube動画に使用する音楽の権利処理を始める判断手順

最初の確認を定型化すると、広告利用や海外利用の見落としを減らせます。

次の判断の流れは、音楽利用前に確認する順番を示しています。上から順に進むことで、音源の出所、権利の層、動画目的、二次展開のどこで追加許諾が必要になりやすいかを読み取れます。

音楽利用前の初期判断

音源の出所を特定

自社制作、素材サイト、オーディオライブラリ、市販音源、ゲーム内音源などを分類します。

楽曲側と音源側を分離

著作権管理状況と原盤・実演家の権利を別々に確認します。

動画目的を確認

企業チャンネル、商品紹介、採用、広告、IRなどの目的で許諾範囲が変わります。

利用媒体と地域を確認

YouTube以外への転載、外部サイト埋め込み、海外配信、展示会利用を確認します。

不足あり
追加確認へ

権利者、管理団体、素材提供会社、制作会社に確認し、証跡を保存します。

整理済み
契約と台帳へ

許諾範囲を契約、ライセンス証書、音楽利用台帳に落とし込みます。

企業がYouTube動画に音楽を使う場合、以下の順序で確認するのが実務的です。

4.1 第1問 ― その音楽は誰が作ったのか

まず、音楽が自社制作、外部クリエイター制作、音楽素材サイト、YouTubeオーディオライブラリ、既存商業楽曲、市販CD、配信音源、カラオケ音源、ゲーム内音源、ライブ収録音源のどれに当たるかを確認します。

権利処理の難易度は、一般に次の順で上がる。

  1. 自社が作詞・作曲・演奏・録音まで完全に保有している音源
  2. 利用規約が明確な有料ロイヤリティフリー音源
  3. YouTubeオーディオライブラリの音源
  4. 利用規約が明確な無料BGM素材
  5. カバー演奏・歌ってみた
  6. 市販CD・配信音源の利用
  7. 有名楽曲の広告利用
  8. 外国楽曲、複数権利者、原盤権者不明の音源
  9. 映画・ゲーム・テレビ番組内音源の二次利用

4.2 第2問 ― 楽曲側と音源側の両方を確認したか

次に、歌詞・メロディ側の著作権と、録音物側の著作隣接権の両方を確認します。JASRACまたはNexToneの作品検索で楽曲管理状況を確認しても、市販音源の原盤利用の許諾が得られたことにはならない。反対に、レコード会社から音源利用許諾を得たとしても、楽曲側の著作権処理が不要になるわけではありません。

4.3 第3問 ― 動画の目的は何か

同じ楽曲でも、次の目的により必要な許諾範囲が異なります。

以下の比較表は、動画目的、リスク傾向の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

動画目的リスク傾向
個人の非商用投稿比較的低いが、音源・改変・Content IDは問題になる
企業チャンネルの情報発信法人利用として確認事項が増える
商品・サービス紹介広告・宣伝目的性が問題になりやすい
YouTube広告、TrueView、バンパー広告等広告目的複製、原盤、タレント・肖像、媒体範囲が問題
採用動画企業PRに該当する可能性が高い
IR・説明会動画権利処理の証跡と上場企業の統制が重要
インフルエンサー投稿誰が権利処理責任を負うか契約で明確化が必要
ウェビナー・セミナーアーカイブBGM、登壇資料内の動画・音声、配信地域が問題
ショート動画楽曲機能、Content ID、広告・商用利用範囲を確認

4.4 第4問 ― どこで利用するのか

YouTubeだけでなく、以下の二次展開が予定されていないか確認します。

  • 会社Webサイトへの埋め込み
  • LP、広告バナー、デジタルサイネージでの再生
  • Instagram、TikTok、X、Facebook、LinkedInへの転載
  • 展示会、店頭、イベント会場での上映
  • 営業資料・社内研修資料への組込み
  • 海外子会社・海外代理店での利用
  • テレビCM、OTT広告、交通広告への転用
  • 採用媒体、求人広告媒体への掲載
  • 動画素材の再編集・短尺化

YouTube投稿だけを想定した許諾では、これらの展開がカバーされていないことが多い。企業法務は、マーケティング部門から「とりあえずYouTube用」と聞いても、将来の広告転用、展示会利用、海外利用の予定を確認すべきです。

Section 05

YouTube動画の音楽権利処理を利用形態別に確認する

素材の種類ごとに、許諾窓口と証跡の残し方を変える必要があります。

次の利用形態一覧は、音源の出所ごとに確認すべき権利処理の重さを整理したものです。右側の補足を見ることで、同じYouTube動画でも、素材の種類によって契約・証跡・追加確認の重点が変わることを確認できます。

1

自社オリジナル曲

社内制作でも、社員の業務外創作、外部ミキサー、サンプル素材、生成AI素材の権利が残ることがあります。

比較的管理しやすい
2

YouTubeオーディオライブラリ

帰属表示、利用条件の変更、YouTube外利用、広告素材化、誤検知対応の証拠保存が重要です。

証跡保存
3

ロイヤリティフリー音源

商用利用、広告利用、クレジット、改変、Content ID、サブスクリプション解約後の扱いを確認します。

規約確認
4

市販CD・配信音源

楽曲側だけでなく、原盤権者、実演家、広告審査、海外利用まで確認が必要になりやすい形態です。

高リスク
5

カバー・演奏動画

市販音源の利用は避けられても、楽曲側の管理状況、編曲、訳詞、広告利用、伴奏音源の権利が残ります。

楽曲側確認
6

イベント収録・偶然入り込み・ゲーム画面

会場利用、動画固定、写り込み、ゲーム会社のガイドライン、別権利者の楽曲を分けて確認します。

複合確認

5.1 自社オリジナル曲を使う場合

最も管理しやすいのは、自社が作詞、作曲、編曲、演奏、録音、ミックス、マスタリングまで完全に権利を取得している音源を使う場合です。ただし「自社オリジナル」と思っていても、実際には以下の問題が残ります。

  • 社員が業務外で作曲した場合、著作権が会社に当然帰属するとは限らない。
  • 業務委託先の作曲家・演奏家・ナレーター・ミキサーの権利が残っていることがあります。
  • 素材音源、サンプルパック、ループ素材の利用規約に制限があることがあります。
  • 生成AI音楽サービスの利用規約で商用利用、Content ID登録、独占利用、広告利用が制限されることがあります。
  • 著作者人格権不行使、実演家人格権不行使、原盤権譲渡または利用許諾が明記されていないことがあります。

企業が外部クリエイターに音楽を発注する場合は、「成果物の著作権譲渡」だけでは不十分です。少なくとも、作詞・作曲・編曲、実演、録音物、ミックス、マスタリング、サンプル素材、第三者素材、著作者人格権不行使、実演家人格権不行使、YouTubeおよびその他媒体での無期限・全世界・商用利用、広告利用、編集・短縮・ループ・音量調整、Content ID登録の可否、第三者からの申し立て時の協力義務まで定めるべきです。

5.2 YouTubeオーディオライブラリを使う場合

YouTube Studioのオーディオライブラリには、動画で使用できる著作権使用料無料のプロダクションミュージックと効果音が用意されている。YouTubeヘルプは、オーディオライブラリの音楽と効果音を著作権上安全に使用できると説明している。

もっとも、企業利用では次の点を確認します。

  • オーディオライブラリの利用条件が動画公開時点で変更されていないか。
  • 帰属表示が必要なトラックでは、指定されたクレジットを動画説明欄に記載したか。
  • YouTube外での利用が予定されていないか。
  • 動画を広告素材として配信する場合に、社内広告審査上の問題がないか。
  • 同じ音源を多数の動画で使うことによるブランド独自性の低下を許容するか。
  • Content IDの誤検知があった場合に、利用証拠を提示できるか。

YouTubeヘルプは、クリエイティブ・コモンズライセンスが適用される音楽では、動画説明欄に帰属情報を入力する必要があると説明している。 したがって、オーディオライブラリの音源であっても、ダウンロード日時、曲名、アーティスト名、ライセンス種別、帰属表示テキストのスクリーンショットまたはPDF保存を推奨する。

5.3 ロイヤリティフリー音源・素材サイトを使う場合

「ロイヤリティフリー」とは、一般に、一定のライセンス料を支払えば、利用のたびに追加使用料が発生しないという意味で使われる。しかし、「著作権がない」「どこでも自由に使える」「企業広告にも無制限に使える」という意味ではありません。

確認すべき典型項目は以下です。

  • 商用利用の可否
  • YouTube利用の可否
  • YouTube広告・SNS広告の可否
  • クライアントワークでの利用可否
  • 複数チャンネル・複数ブランドでの利用可否
  • テレビCM・ラジオCM・劇場広告での利用可否
  • 店舗BGM・イベント上映での利用可否
  • 改変、ループ、短縮、フェードアウトの可否
  • クレジット表示義務
  • Content ID登録の有無
  • Content ID申し立てが来た場合の解除方法
  • サブスクリプション解約後の既存動画の扱い
  • 素材提供会社が権利保証・補償をする範囲
  • 禁止カテゴリ、政治・医療・金融・成人向け・ギャンブル等の制限
  • 世界配信の可否
  • ライセンス証書の発行有無

無料素材サイトは便利だが、法人利用では「利用規約が変わった」「作者が権利を有していなかった」「第三者がContent ID登録していた」「広告利用が禁止だった」「クレジット記載漏れがあった」というリスクがある。企業は、音源のダウンロードページ、利用規約、ライセンス証書、支払い記録、クレジット条件を保存しておくべきです。

5.4 既存の市販CD・配信音源を使う場合

既存の市販CDや音楽配信サービスの音源を企業動画に使う場合は、原則としてリスクが高い。Spotify、Apple Music、Amazon Music等で聴けること、CDを購入したこと、ダウンロード購入したことは、企業が動画に組み込んで公開する許諾を意味しない。

必要となり得る処理は次のとおりです。

以下の比較表は、対象、主な窓口の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

対象主な窓口
歌詞・メロディの著作権JASRAC、NexTone、音楽出版社、著作権者
音源・原盤の著作隣接権レコード会社、原盤権者、アーティスト事務所等
実演家の権利実演家、所属事務所、契約上の窓口
広告利用・タイアップ利用音楽出版社、レコード会社、事務所、権利者の広告審査
海外利用海外管理団体、現地権利者、国別ライセンス

JASRACやNexToneの包括的なYouTube契約は、楽曲側の著作権処理を一定範囲で扱うにすぎない。市販音源の利用については、原盤権者の許諾が必要になる。日本レコード協会は、音源利用許諾窓口一覧を提供しており、会員社の音源利用に関する許諾窓口を案内している。

5.5 カバー・歌ってみた・演奏してみた動画

自社または出演者が既存曲を自ら演奏・歌唱して録音した場合、市販音源の原盤利用は避けられる。しかし、楽曲側の著作権は残ります。

YouTubeがJASRACまたはNexToneと利用許諾契約を締結している範囲では、一定のカバー動画について投稿者の個別手続きが不要となる場合があります。NexToneは、自身が演奏・歌唱した動画をYouTubeにアップロードする場合、YouTubeと利用許諾契約を締結しているため投稿者による手続きは不要であると案内している。

ただし、次のケースでは追加確認が必要です。

  • 楽曲がJASRACまたはNexTone管理でない。
  • 外国作品を法人・団体が利用する。
  • 動画が企業広告・商品宣伝に該当する。
  • 編曲、訳詞、替え歌、歌詞改変を行います。
  • カラオケ音源、伴奏音源、打ち込みデータを第三者から利用する。
  • 動画をYouTube以外へ転載する。
  • YouTube外の広告素材に転用する。
  • 収益分配やContent ID申し立ての扱いを事前に把握していない。

JASRACは、既存楽曲を編曲したり、歌詞を翻訳または替え歌にしたりする場合には、作詞者・作曲者の意向確認が必要であり、音楽出版社を通じて事前確認するよう案内している。

5.6 ライブ、イベント、セミナー、展示会の収録動画

イベント会場でBGMを流し、その様子を撮影してYouTubeにアップロードする場合、権利処理は複雑になる。会場での演奏・再生、動画への録音・録画、YouTubeでの公開、広告・PR目的の有無がそれぞれ問題になるためです。

たとえば、自社主催の表彰式で市販楽曲をBGMとして流し、その様子を採用動画に編集してYouTube公開する場合、以下を検討する。

  • 会場で音楽を流す演奏・再生利用の処理
  • 収録動画への音楽の固定
  • YouTubeでの公衆送信
  • 採用PR・企業広告としての利用
  • 市販音源の原盤権処理
  • 出演者・来場者の肖像・同意
  • 会場、演出、スクリーン表示物の権利

JASRACは、観客を招いて開催するコンサート等の模様をアップロードする場合、あらかじめ「演奏」に関する手続きが必要となる場合があると説明している。

5.7 偶然入り込んだ音楽

街頭インタビュー、店舗撮影、展示会撮影、オフィス紹介動画等では、背景で流れていた音楽が偶然録り込まれることがあります。この場合、いわゆる「写り込み」規定が問題になり得る。

文化庁は、街角の風景をビデオ収録したところ、街中で流れていた音楽がたまたま録り込まれ、その映像を放送やインターネット送信する場合を、付随対象著作物利用の例として挙げている。他方で、意図的に視聴者に見せる、聴かせる、利用する場合は、原則として許諾が必要となる場合があります。

企業動画では、偶然録り込まれた音楽であっても、編集段階で残すか、差し替えるか、ミュートするかを判断するべきです。BGMとして機能しているほど明瞭である場合、ブランド動画・広告動画である場合、楽曲名が特定できる場合、視聴上重要な演出になっている場合は、安全側に処理する。

5.8 ゲーム実況・アプリ紹介・画面収録

ゲーム実況やアプリ紹介動画では、ゲーム自体の著作権、キャラクター、映像、効果音、BGM、声優実演、利用規約、ゲーム会社の配信ガイドラインが重なる。NexToneも、ゲームにはゲーム自体の著作権のほか、ゲーム内で使われている音楽の著作権が含まれ、それぞれ権利者が異なる場合があると説明している。

ゲーム会社の配信ガイドラインが「配信可」としていても、そこに含まれる楽曲が別権利者管理の場合、Content ID申し立てや収益化制限が起こることがあります。企業案件、広告案件、アプリ紹介、eスポーツ大会配信では、ゲーム会社の許諾範囲、音楽権利の扱い、スポンサー表示、アーカイブ化、切り抜き動画利用まで確認する必要があります。

Section 06

YouTube広告・PR動画の音楽権利処理で特に注意すべき点

広告目的性、権利者審査、外部サイト利用を通常投稿と分けて考えます。

次の注意要素一覧は、広告・PR・タイアップ動画で権利者審査や追加手続が問題になりやすいポイントを整理したものです。商品カテゴリ、出演者、期間、地域、二次利用のどこが審査対象になりやすいかを読み取ってください。

広告目的と収益化は別

動画自体が商品や企業を宣伝する場合、YouTubeの収益化とは別に広告目的の処理が問題になります。

有名楽曲は審査対象

著作権使用料を払えば必ず使えるわけではなく、ブランドイメージや商品カテゴリで拒否されることがあります。

外部サイト埋め込みも確認

YouTube投稿が可能でも、法人サイトや商品LPへの埋め込みは別途確認が必要になる場合があります。

6.1「収益化」と「広告目的」は別概念

YouTubeパートナープログラムで動画に広告が表示されることと、動画自体が特定の商品・サービス・企業を宣伝する広告動画であることは同じではありません。

JASRACは、動画の内容が特定の企業・団体や商品、サービスを宣伝するものに該当する場合、あらかじめ「広告目的複製」の手続きが必要となると案内している。 NexToneも、動画内に特定企業や商品を宣伝する内容が含まれる場合、「広告目的複製」の利用申請を行うよう案内している。

したがって、企業のYouTubeチャンネルで公開する以下の動画は、通常の投稿より厳格に検討する。

  • 商品紹介動画
  • サービス説明動画
  • 採用ブランディング動画
  • 企業ブランドムービー
  • キャンペーン告知
  • インフルエンサーによるPR投稿
  • 広告出稿用の短尺動画
  • 店頭・展示会・イベントでの上映を兼ねる動画
  • スポンサー名・商品名が映るイベント動画
  • 社会課題、政治、医療、金融、投資、教育、宗教等のセンシティブ領域を含む動画

6.2 有名楽曲の広告利用は「権利処理」だけでなく「審査」である

有名楽曲を広告に使う場合、著作権使用料を払えば必ず使えるとは限らない。権利者側は、商品カテゴリ、ブランドイメージ、出演者、動画内容、配信地域、利用期間、競合排他、クレジット、編集方法を審査することがあります。特に、医薬品、金融商品、政治的主張、宗教、ギャンブル、酒類、成人向け、炎上可能性のある表現では利用が認められない場合があります。

広告利用では、以下を利用申請書に具体的に記載する。

  • 企業名、ブランド名、商品・サービス名
  • 企画意図
  • 動画内容、絵コンテ、台本
  • 使用箇所、使用秒数、使用方法
  • ボーカルあり・なし
  • 歌詞表示の有無
  • 編曲・替え歌・リミックスの有無
  • 掲載媒体
  • 利用期間
  • 配信地域
  • 広告予算・想定インプレッション
  • 二次利用予定
  • 出演者、インフルエンサー、タレント
  • 競合排他の要否

6.3 外部サイト埋め込みは別途確認する

企業はYouTube動画を自社サイトに埋め込むことが多い。しかし、YouTubeに投稿できることと、自社サイトで法人が埋め込み利用できることは同じではありません。

JASRACは、YouTube等への投稿の場合と、YouTube等で配信されている動画を外部サイトで利用する場合を分けて判断の流れを示している。 NexToneは、法人が埋め込みを行う場合には利用申請が必要となる場合があると案内している。

企業のWeb担当者は、YouTubeの埋め込みコードが技術的に取得できることだけで判断してはならない。特に、埋め込み先が商品LP、採用サイト、広告キャンペーンページ、会員向けサイト、ECサイトである場合は、広告・PR目的性も含めて確認すべきです。

Section 07

YouTube動画のContent IDと著作権侵害警告への対応

通知の種類を分類し、根拠のある対応だけを選びます。

次の時系列は、Content IDの申し立てから著作権侵害警告までの重さの違いを整理したものです。後段ほど事業影響が大きくなるため、通知の種類と必要な初動を読み違えないことが重要です。

検知

Content IDの申し立て

自動識別によりブロック、収益移転、トラッキング等が生じます。常に違法主張とは限りません。

重大化

著作権侵害の警告

削除通知によりコンテンツが削除されたことを意味し、90日以内に3回でチャンネル停止につながるとされています。

判断

異議申し立て前の確認

許諾範囲、ライセンス証書、広告配信への影響、削除通知へ進むリスクを確認します。

7.1 Content IDの申し立て

Content IDは、YouTubeの自動コンテンツ識別システムです。権利者の設定によって、動画がブロックされる、広告が掲載され権利者に収益が移る、視聴統計がトラッキングされる、といった結果が生じる。

Content IDの申し立ては、常に「違法」「侵害」「削除すべき」という意味ではありません。JASRACは、YouTubeに投稿された動画にJASRAC管理楽曲が含まれていることをYouTubeのシステムが検知した場合に、JASRACが「著作権の申し立て」を行った旨のお知らせが届くことがあり、これは著作権侵害を主張するものではないと説明している。 NexToneも、NexTone Inc. (Publishing)からの通知について、著作権侵害を主張するものではなく、NexToneへの連絡や動画削除・非公開設定は必要ない場合があると案内している。

ただし、企業動画では、Content ID申し立てが「想定通り」か「誤検知」かを判定する必要があります。特に広告案件では、申し立てによって広告配信が制限される、動画が一部地域でブロックされる、収益が移転する、クライアントに権利処理不備と見られる、キャンペーン開始に間に合わない、といった実害が出ることがあります。

7.2 著作権侵害の警告

著作権侵害の警告は、Content IDの申し立てとは異なります。YouTubeヘルプは、著作権侵害の警告はコミュニティガイドライン違反警告やContent IDの申し立てとは異なり、法的な著作権侵害による削除通知によりコンテンツが削除されたことを意味すると説明している。 また、90日以内に著作権侵害の警告を3回受けると、チャンネルが停止されると説明している。

企業チャンネルで著作権侵害警告を受けた場合、広報、法務、マーケティング、制作会社、広告代理店、経営層への迅速な共有が必要です。動画を削除すれば警告が消えるとは限らないため、YouTubeからの通知、申立人、対象箇所、ライセンス証憑、公開範囲、広告出稿状況を確認します。

7.3 異議申し立ては慎重に行う

Content IDの申し立てが誤りである場合、YouTube上で異議申し立てが可能です。しかし、権利処理が不十分なまま「自社が使ってよいはず」と主張すると、相手方が削除通知に進むことがあります。企業としては、異議申し立て前に以下を確認します。

  • 対象楽曲・対象音源が本当に自社許諾範囲に含まれるか
  • ライセンス証書にYouTube、広告、商用、地域、期間が含まれるか
  • Content ID解除申請の手順が素材提供会社から示されているか
  • 申立人が正規の管理団体・代理人である可能性がないか
  • 異議申し立てにより削除通知へ進むリスクを許容できるか
  • 広告配信・キャンペーン開始日との関係で代替音源へ差し替える方が合理的か

NexToneは、利用していない楽曲について申し立てがされた場合には、所定項目を入力して異議申し立てを送信するよう案内している。 ただし、誤検知ではなく、管理楽曲の利用が検出された正規の申し立てである場合もある。

Section 08

YouTube動画の音楽権利処理を契約条項に落とし込む

制作会社、広告代理店、クリエイター、音源提供会社との責任分担を文書化します。

企業が動画制作会社、広告代理店、作曲家、演奏家、インフルエンサー、音源提供会社と契約する場合、音楽権利処理について次の条項を設計する。

8.1 権利帰属・利用許諾範囲

  • 作詞、作曲、編曲、演奏、録音、ミックス、マスタリングの権利帰属
  • 成果物に含まれる全音源の権利者表示
  • 著作権譲渡か、利用許諾か
  • 譲渡の場合、著作権法第27条・第28条の権利を含むか
  • 利用許諾の場合、媒体、地域、期間、回数、目的、改変可否
  • YouTube、YouTube広告、SNS広告、Webサイト、展示会、店頭、営業資料への利用可否
  • 海外配信の可否
  • 再編集、短尺化、字幕追加、音量調整、ループ、フェードイン・アウトの可否
  • グループ会社、代理店、販売店、フランチャイズでの利用可否

8.2 第三者素材の管理

  • 第三者音源を使用する場合の事前承認義務
  • 素材サイト名、曲名、作者名、ライセンスURLの報告義務
  • ライセンス証書、利用規約、領収書、スクリーンショットの提出義務
  • 商用利用・広告利用・YouTube利用・SNS利用の保証
  • Content ID登録・申し立ての有無
  • サブスクリプション解約後も既存動画が利用可能か
  • 利用禁止カテゴリの確認
  • 素材の再配布禁止に抵触しない編集方法

8.3 表明保証・補償

制作会社や音源提供者には、少なくとも以下の表明保証を求める。

  • 納品物が第三者の著作権、著作隣接権、著作者人格権、実演家人格権を侵害しないこと
  • 必要な権利処理を完了していること
  • 企業が予定する利用範囲を適法に実施できること
  • 第三者から申し立てがあった場合、調査、証拠提出、解除手続、代替素材提供に協力すること
  • 権利侵害が発生した場合、損害、弁護士費用、広告停止損、再制作費等について補償すること

ただし、制作会社に無制限の補償を求めるだけでは実効性がない。中小制作会社では賠償資力が限られるため、事前承認、証跡提出、ハイリスク音源の利用禁止、保険加入、上限額設定、代替納品義務を組み合わせる。

8.4 著作者人格権・実演家人格権

日本法上、人格権は譲渡できないため、不行使条項を設ける。

例として、以下の利用に対して不行使を明記する。

  • 動画尺に合わせた短縮・編集
  • 音量調整
  • ループ
  • フェードイン・フェードアウト
  • 字幕・ナレーションとの重ね合わせ
  • サムネイル、タイトル、説明欄との組合せ
  • 企業名、商品名、ロゴ、キャンペーン表現との組合せ
  • 多媒体展開
  • 翻訳字幕を伴う海外配信

ただし、替え歌、歌詞改変、大幅な編曲、政治的・社会的主張との結合、センシティブな広告利用は、一般的な不行使条項だけで処理せず、個別承諾を得るべきです。

8.5 Content ID条項

近年は、契約書にContent ID関連条項を入れることが重要です。

  • 納品音源が第三者Content IDに登録されていないこと
  • 登録されている場合、解除・ホワイトリスト登録の手順
  • 申立て発生時の対応期限
  • 申し立てにより広告配信が停止・制限された場合の責任
  • 自社が独自にContent ID登録してよいか
  • クリエイターが同一音源を他社にも提供する場合の競合・混同対策
  • ロイヤリティフリー音源のContent ID登録禁止条項
Section 09

YouTube動画の音楽権利処理を社内統制と証跡管理につなげる

台帳、承認制、教育で、属人的な音楽選定を防ぎます。

次の強調項目は、音楽利用台帳と証跡保存の実務上の意味をまとめたものです。適法に利用していても証拠がなければ説明できないため、公開時点の条件を残すことを読み取ってください。

証跡は公開時点を残す

利用規約やライセンス条件は変わることがあります。動画ID、利用範囲、契約書、スクリーンショット、Content ID対応を台帳化し、後日の申し立てや監査に備えます。

9.1 音楽利用台帳を作る

企業が継続的にYouTube動画を公開する場合、動画単位で音楽利用台帳を作成する。最低限の項目は以下です。

以下の比較表は、項目、内容の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

項目内容
動画IDYouTube URL、管理番号
動画目的広報、広告、採用、IR、教育、セミナー等
使用楽曲曲名、作詞者、作曲者、編曲者、アーティスト
使用音源自社制作、素材サイト、市販音源、カバー等
権利者著作権者、原盤権者、管理団体
許諾範囲媒体、地域、期間、商用、広告、改変
証跡契約書、利用規約、スクリーンショット、ライセンス証書
クレジット要否、記載内容、記載場所
Content ID登録有無、申し立て有無、解除状況
公開日初回公開日、更新日、削除日
二次利用SNS、広告、LP、展示会、海外利用
承認者事業部、法務、広報、広告審査

9.2 証跡は「公開時点」を残す

素材サイトやYouTubeヘルプ、ライセンス条件は変更されることがあります。そのため、証跡は「現在のURL」だけでなく、利用時点の条件を保存します。

保存すべきものは次のとおりです。

  • 音源ダウンロードページのスクリーンショット
  • 利用規約のPDF
  • ライセンス証書
  • 購入履歴・領収書
  • クレジット表示条件
  • Content ID解除方法
  • 権利者とのメール
  • 制作会社からの権利処理報告書
  • 契約書・発注書・検収書
  • 動画公開時の説明欄スクリーンショット
  • 申立て発生時のYouTube Studio画面

9.3 事前承認制にする

企業のYouTube運用では、音楽選定を動画編集者だけに任せない。以下のようなルールを定める。

  • 市販音源の無断利用は禁止。
  • フリーBGMは、法務または指定担当者が確認したサイトのみ利用可。
  • 広告・PR動画では、音楽利用前に法務または広告審査の承認を得る。
  • インフルエンサー投稿でも、楽曲選定ルールを契約で指定する。
  • ライセンス証跡がない音源は公開不可。
  • Content ID申し立てが未解決の動画は広告出稿不可。
  • YouTube外への転載は別途承認。
  • 海外配信や翻訳版制作は別途承認。

9.4 社内教育

マーケティング部門や制作部門には、最低限以下を教育する。

  • 「CDを買った」は動画利用許諾ではありません。
  • 「JASRAC管理曲」は市販音源の原盤許諾を意味しない。
  • 「フリーBGM」は無条件自由ではありません。
  • 「著作権者を明記すればよい」わけではありません。
  • 「非営利」「宣伝目的ではない」と書けば安全になるわけではありません。
  • 「YouTubeにアップできた」は権利処理完了を意味しない。
  • 「Content ID申し立て」は必ずしも違法主張ではないが、放置できない場合があります。
  • 「動画を削除すれば警告が消える」とは限らない。
  • 「他社も使っている」は根拠にならない。

YouTubeヘルプも、著作権者を明記するだけでフェアユースが認められるわけではなく、「著作権侵害を意図していない」等の免責文言でも著作権侵害申し立てから自動的に保護されるわけではないと説明している。

Section 10

YouTube動画の音楽権利処理で紛争・削除・申し立てが起きた場合

通知の保存、証拠照合、事業影響の評価を先に行います。

次の判断の流れは、申し立てや削除通知を受けたときの初動を示しています。通知保存、権利範囲、事業影響、対応案の順番を読むことで、感情的な異議申し立てを避けられます。

申し立て・削除通知への初動

通知を保存

YouTube Studio、メール、対象箇所、申立人、日時を保存します。

許諾証拠を照合

契約書、ライセンス証書、利用規約、台帳と対象音源を照合します。

事業影響を確認

広告配信、キャンペーン、地域ブロック、取引先説明への影響を確認します。

根拠あり
異議申し立て等を検討

法務承認のうえで、異議申し立てや撤回要請を検討します。

根拠不足
差し替え等を検討

非公開化、ミュート、再編集、代替音源への差し替えを検討します。

10.1 Content ID申し立てが来た場合

初動では、次の順序で対応する。

  1. YouTube Studioで対象動画、申立人、対象箇所、ポリシーを確認します。
  2. 対象音源が自社の利用楽曲と一致するか確認します。
  3. ライセンス台帳・証跡を確認します。
  4. 正規の申し立てか、誤検知か、権利範囲外かを分類する。
  5. 広告配信、公開地域、キャンペーン日程への影響を確認します。
  6. 必要に応じて素材提供会社、制作会社、JASRAC、NexTone、レコード会社へ確認します。
  7. 根拠がある場合のみ異議申し立てを行います。
  8. 根拠が弱い場合は、音源差し替え、該当箇所ミュート、動画再編集、非公開化を検討する。

企業では、担当者が感情的に異議申し立てを行うことを避ける。異議申し立ては法務または指定責任者の承認制にする。

10.2 削除通知・著作権侵害警告が来た場合

削除通知または著作権侵害警告は、Content IDより重大です。初動で行うべきことは以下です。

  • 通知メールのヘッダー、送信元、日時を保存します。
  • YouTube Studio上の警告内容を保存します。
  • 対象動画を特定し、公開範囲、広告出稿、二次利用を停止または凍結する。
  • 申立人、対象著作物、申立理由を確認します。
  • 許諾証拠を確認します。
  • 制作会社・代理店・音源提供者に通知し、契約上の協力義務を発動する。
  • 撤回要請、異議申し立て通知、和解、差し替え、再編集の選択肢を検討する。
  • 経営、広報、CS、広告運用担当に必要範囲で共有する。
  • SNS炎上や取引先説明が必要な場合、広報文案を準備する。

YouTubeヘルプによれば、著作権侵害警告を解除する方法には、コピーライトスクール修了後に90日待つ、削除通知提出者に撤回を求める、有効な異議申し立て通知を提出する、といった方法がある。 ただし、異議申し立て通知には法的効果があるため、根拠なく提出すべきではありません。

10.3 クレームを受けたときの法務判断

法務担当は、以下の観点から判断する。

  • 侵害可能性 ― 権利処理が欠けているか。
  • 抗弁可能性 ― 引用、写り込み、許諾、権利制限、権利消滅等が主張できるか。
  • 証拠状況 ― 契約書、ライセンス、メール、利用規約が残っているか。
  • 事業影響 ― 広告停止、売上、採用、IR、顧客対応に影響するか。
  • 交渉余地 ― 許諾取得、追加使用料、期間限定公開、地域制限で解決できるか。
  • レピュテーション ― 権利者、アーティスト、ファン、メディアからどう見えるか。
  • 再発防止 ― 台帳、承認の流れ、制作会社契約の修正が必要か。
Section 11

YouTube動画の音楽権利処理に関するFAQ

よくある誤解を、一般情報として安全側に整理します。

Q1. JASRAC管理曲なら、YouTubeで自由に使えますか。

一般的には、一定範囲では、投稿者が個別申請なくJASRAC管理楽曲を含む動画をアップロードできる場合があります。しかし、広告・宣伝目的、法人・団体による外国作品利用、イベント・コンサート収録、外部サイト利用、市販音源の原盤利用、編曲・訳詞・替え歌等では別途確認が必要です。JASRAC自身も、利用方法によっては個別手続きが必要になると案内している。 ただし、動画目的、広告性、原盤利用、配信地域、契約証跡によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. NexToneから「著作権の申し立て」が来ました。削除すべきですか。

一般的には、NexToneは、NexTone Inc. (Publishing)からの通知について、著作権侵害を主張するものではなく、NexToneへの連絡や動画の削除・非公開設定が必要ない場合があると説明している。 ただし、企業動画では、申し立て内容、動画目的、広告配信への影響、原盤利用の有無を確認する必要があります。 ただし、動画目的、広告性、原盤利用、配信地域、契約証跡によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q3. 市販CDを購入したのでBGMに使えますか。

一般的には、使えるとは限らない。CD購入は、通常、個人的に聴くための媒体購入であり、企業動画への複製・配信・広告利用の許諾ではありません。市販音源にはレコード製作者や実演家等の著作隣接権が関係し、原盤権者等の許諾が必要になる。JASRAC、NexTone、日本レコード協会はいずれも、市販音源等の利用では音源側の許諾が必要となる旨を案内している。 ただし、動画目的、広告性、原盤利用、配信地域、契約証跡によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q4.「著作権フリー」と書いてあるBGMなら企業広告に使えますか。

一般的には、「著作権フリー」という表示は曖昧です。商用利用、広告利用、YouTube広告、SNS広告、クレジット表示、改変、利用期間、利用地域、クライアントワーク、Content IDの扱いを利用規約で確認する必要があります。企業広告では、利用規約の保存とライセンス証書の取得が必須です。 ただし、動画目的、広告性、原盤利用、配信地域、契約証跡によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q5. 作曲家に発注したオリジナル曲なら安全ですか。

一般的には、安全とは限らない。作曲家がサンプル素材、ループ素材、第三者演奏、AI生成素材、外部ミキサー、仮歌、効果音を使っている場合があります。契約書で第三者素材の不使用または適法利用、権利譲渡・利用許諾、著作者人格権不行使、実演家・原盤権処理、Content ID対応を定める必要があります。 ただし、動画目的、広告性、原盤利用、配信地域、契約証跡によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q6. クレジットを書けば使えますか。

一般的には、クレジット表示は重要だが、許諾の代わりにはならない。YouTubeヘルプも、著作権者を明記するだけでフェアユースになるわけではなく、許可を得たことにもならないと説明している。 ただし、動画目的、広告性、原盤利用、配信地域、契約証跡によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q7. 10秒だけなら使えますか。

一般的には、日本法上、「何秒以内なら常に自由」といった一般ルールはない。短時間でも、楽曲の重要部分、認識可能な部分、広告上重要な演出として使う場合には問題となり得る。引用や写り込みなどの権利制限に該当する場合は別だが、BGMとして使うことは通常、引用ではありません。 ただし、動画目的、広告性、原盤利用、配信地域、契約証跡によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q8. 引用として音楽を使えますか。

一般的には、批評、研究、報道等の目的で、必要最小限の範囲で、主従関係・明瞭区分・出所明示等を満たす場合には、引用が成立する可能性があります。著作権情報センターは、公表された著作物について、公正な慣行に合致し、引用目的上正当な範囲内で行う場合には、許可なく引用利用できると説明している。 しかし、動画の雰囲気づくりのBGMとして音楽を使うことは、通常、引用ではありません。 ただし、動画目的、広告性、原盤利用、配信地域、契約証跡によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q9. 街中で流れていた音楽が少し入った場合も削除が必要ですか。

一般的には、偶然・付随的に入り込んだ場合には、付随対象著作物利用として許容される可能性があります。文化庁は、街角の風景をビデオ収録した際に街中で流れていた音楽がたまたま録り込まれた映像をインターネット送信する場合を例示している。 ただし、明瞭にBGM化している、意図的に残している、広告演出として使っている場合には安全とはいえない。 ただし、動画目的、広告性、原盤利用、配信地域、契約証跡によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q10. 生成AIで作った音楽なら権利処理不要ですか。

一般的には、不要とは限らない。生成AI音楽サービスの利用規約、商用利用可否、学習素材・出力物に関する権利、Content ID登録可否、第三者権利侵害時の補償、類似性リスクを確認する必要があります。企業では、AI生成音源の利用を通常の音源素材と同様に台帳管理し、利用規約と生成日時を保存するべきです。 ただし、動画目的、広告性、原盤利用、配信地域、契約証跡によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q11. 海外向け動画でも日本の処理だけで足りますか。

一般的には、足りない場合があります。YouTubeは国際的なプラットフォームであり、楽曲の管理地域、海外管理団体、原盤権者、現地法、広告審査が関係する。NexToneは、動画の再生地域によって管理団体が異なるため、NexTone管理地域以外の管理団体が並列で申し立てを行う場合があると説明している。 海外配信が重要な企業動画では、全世界利用許諾または対象国別の確認が必要です。 ただし、動画目的、広告性、原盤利用、配信地域、契約証跡によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q12. YouTubeのクリエイティブ・コモンズ動画や音楽なら自由に使えますか。

一般的には、YouTubeでは、アップロードした動画にクリエイティブ・コモンズ表示ライセンスを設定できるのは、すべてのコンテンツがCC BYライセンスに基づいて使用許可できる場合等に限られる。また、Content IDの申し立て対象となった動画にはCC表示ライセンスを設定できないと説明されている。 CC BYであっても、作者、作品名、出典、ライセンス情報等の表示が必要であり、第三者権利が残っている場合もある。Creative Commonsの公式リーガルコードも、CCライセンスはライセンサーが許諾する権限を持つ権利についてのみライセンスを付与すると説明している。 ただし、動画目的、広告性、原盤利用、配信地域、契約証跡によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Section 12

YouTube動画の音楽権利処理チェックリスト

公開までの確認、広告動画、トラブル対応を分けて点検します。

12.1 公開までのチェックリスト

  • 動画の目的を分類したか。
  • 広告・PR・採用・商品紹介に該当するか確認したか。
  • 使用楽曲名、作詞者、作曲者、編曲者を把握したか。
  • 使用音源の出所を確認したか。
  • 楽曲側の著作権管理状況を確認したか。
  • 音源側の原盤権・実演家権を確認したか。
  • 市販CD・配信音源を無断で使っていないか。
  • カラオケ音源・伴奏音源の利用規約を確認したか。
  • 編曲、替え歌、訳詞、歌詞表示がないか確認したか。
  • YouTube外への転載・埋め込み予定を確認したか。
  • 海外配信の予定を確認したか。
  • クレジット表示義務を確認したか。
  • Content ID申し立ての可能性を確認したか。
  • ライセンス証書・契約書・利用規約を保存したか。
  • 制作会社から権利処理報告書を受領したか。
  • 法務・広告審査・広報の承認を取得したか。

12.2 広告動画チェックリスト

  • 動画内容が特定の企業・商品・サービスの宣伝に該当するか。
  • 広告目的複製等の手続きが必要か。
  • 楽曲・音源の広告利用許諾を取得したか。
  • 使用期間、地域、媒体、広告予算、配信方法を明記したか。
  • 出稿媒体がYouTube広告、SNS広告、DSP、店頭、展示会に広がらないか。
  • 権利者の事前審査が必要か。
  • 競合排他や同業他社利用の問題を確認したか。
  • タレント、インフルエンサー、肖像、パブリシティ権も確認したか。
  • 炎上リスク・ブランド毀損リスクを評価したか。

12.3 トラブル発生時チェックリスト

  • 通知メール、YouTube Studio画面を保存したか。
  • 申立人、対象楽曲、対象箇所を確認したか。
  • Content IDか、削除通知か、著作権侵害警告か分類したか。
  • ライセンス証拠を確認したか。
  • 制作会社、広告代理店、音源提供会社へ通知したか。
  • 広告出稿・キャンペーンへの影響を確認したか。
  • 異議申し立ての根拠を法務が確認したか。
  • 必要なら非公開、差し替え、ミュート、地域制限を検討したか。
  • 取引先・社内・広報向け説明を準備したか。
  • 再発防止策を記録したか。
Section 13

YouTube動画の音楽権利処理の結論

投稿できるかではなく、誰からどの範囲の権利を取得したかを確認します。

次の重要ポイントは、このページ全体の結論を3つの軸に圧縮したものです。権利の層、広告目的、証跡管理を分けることで、YouTube動画に使用する音楽の権利処理を実務に落とし込みやすくなります。

AXIS 1

楽曲と音源を分ける

JASRACやNexToneの包括的な仕組みと、市販音源の原盤利用を混同しないことが出発点です。

AXIS 2

広告・PRを別扱いにする

企業動画、採用動画、商品紹介、インフルエンサーPRでは、通常投稿より厳格な処理が必要です。

AXIS 3

証跡と契約を残す

台帳、ライセンス証書、契約書、承認履歴を残し、制作会社等との協力義務を明記します。

YouTube動画に使用する音楽の権利処理は、「YouTubeに投稿できるか」ではなく、「その音楽を、その動画で、その目的で、その地域に、その期間、その媒体で、その会社が使う権利を、誰から、どの証拠とともに取得したか」という問題です。

企業法務の実務で最も重要なのは、次の三点です。

第一に、楽曲側の著作権と音源側の著作隣接権を分けることです。JASRACやNexToneの包括的なYouTube契約は重要な制度だが、市販音源の原盤利用、広告利用、編曲・訳詞、外国作品、外部サイト利用まで当然に包括するものではありません。

第二に、広告・PR利用を通常投稿と分けることです。企業動画、採用動画、商品紹介、インフルエンサーPR、YouTube広告では、通常のカバー投稿や個人投稿より厳格な処理が必要になる。音楽はブランド価値と結びつくため、権利者審査、人格権、アーティストイメージ、炎上リスクも含めて検討する。

第三に、証跡と社内統制を整備することです。適法に利用していても、証拠がなければContent ID申し立てや取引先監査に対応できない。音楽利用台帳、ライセンス証書、契約書、利用規約、スクリーンショット、承認履歴を残し、制作会社・広告代理店・インフルエンサーとの契約に権利処理義務と協力義務を明記する必要があります。

「YouTube動画に使用する音楽の権利処理」は、著作権の知識だけで完結しない。企業法務、知財、広告審査、契約、内部統制、リスクマネジメント、制作実務を横断する総合的な業務です。最終的には、権利者への敬意、クリエイターへの正当な対価、企業ブランドの保護、視聴者への信頼を同時に満たすための実務設計が求められます。

---

Reference

YouTube動画の音楽権利処理の参考情報源

公的機関・管理団体・公式ヘルプ等

  • e-Gov法令検索「著作権法」
  • JASRAC「YouTubeなどの動画投稿(共有)サービスでの音楽利用」
  • JASRAC「YouTubeなどの動画投稿(共有)サービスでの音楽利用」内「JASRACへの手続きが必要になるケース」
  • JASRAC「YouTubeなどの動画投稿(共有)サービスでの音楽利用」内「編曲をしたり、訳詞をつける場合」
  • JASRAC「YouTubeなどの動画投稿(共有)サービスでの音楽利用」内「YouTube動画の『著作権の申し立て』について」
  • NexTone「YouTube等の動画配信サービスで音楽を利用する際の注意事項」
  • NexTone「FAQ|YouTubeなどの投稿型の動画配信サービスにNexTone管理作品を利用した動画を投稿する場合の利用申請方法や使用料は?」
  • NexTone「FAQ」
  • NexTone「FAQ」内「YouTubeでの楽曲利用について」
  • NexTone「FAQ」内「広告・宣伝目的の動画を投稿する場合、手続きは必要ですか?」
  • NexTone「NexTone Inc. (Publishing)から『著作権の申し立て』の通知が届いている場合」
  • NexTone「NexTone Inc. (Publishing)から『著作権の申し立て』の通知が届いている場合」内「ゲーム実況について」
  • 一般社団法人日本レコード協会「音源利用のご案内」
  • 一般社団法人日本レコード協会「音源利用許諾窓口一覧」
  • 公益社団法人著作権情報センター「著作隣接権とは?」
  • 公益社団法人著作権情報センター「著作権が制限されるのはどんな場合?」
  • 文化庁「いわゆる『写り込み』等に係る規定の整備について」
  • 特許庁「著作権侵害への救済手続」
  • YouTubeヘルプ「Content ID の仕組み」
  • YouTubeヘルプ「著作権侵害の警告について」
  • YouTubeヘルプ「オーディオ ライブラリの音楽と効果音を使用する」
  • YouTubeヘルプ「YouTube のライセンスの種類」
  • YouTubeヘルプ「YouTube でのフェアユース」
  • Creative Commons「リーガル・コード - 表示 4.0 国際」