会社法136条から145条を中心に、承認請求、不承認時の買取り、供託、価格決定、相続・M&A・税務上の注意点まで、実務で確認すべき順序で整理します。
会社の承認、買取り、期限、価格決定を一連の手続として把握します。
会社の承認、買取り、期限、価格決定を一連の手続として把握します。
譲渡制限株式の譲渡承認手続きとは、譲渡による株式取得について会社の承認を要する旨の定款の定めがある株式について、株主または株式取得者が会社に承認を求め、会社が承認または不承認を決定し、不承認の場合には会社または指定買取人による買取りへ進む会社法上の手続です。
この強調部分は、制度全体の結論を表しています。読者にとって重要なのは、承認の有無だけでなく、不承認後の買取り、供託、価格決定、株主名簿書換まで連続している点を早い段階で読み取ることです。
譲渡制限株式では、契約、会社承認、名義書換、株券の有無、登記の要否、税務・会計処理を分けて確認する必要があります。
実務上の要点は、次の7点に整理できます。
次の一覧は、譲渡制限株式の譲渡承認手続きで混同されやすい3つの区別を示しています。読者にとって重要なのは、契約の効力、会社への対抗、登記の要否を同じものとして扱わないことです。
会社承認と株主名簿書換がない限り、原則として会社に株主としての地位を主張できません。
株主が変わるだけでは通常登記不要ですが、譲渡制限規定や種類株式の変更を伴う場合は登記を確認します。
株式譲渡自由の原則と、非公開会社・種類株式での制限設計を分けて確認します。
株式会社の株式は、本来、自由に譲渡できる財産権です。会社法127条は、株主がその有する株式を譲渡できる旨を定めています。もっとも、中小企業、同族会社、非上場会社、ベンチャー企業、合弁会社では、誰が株主になるかが経営に大きな影響を与えます。
会社法上の譲渡制限株式とは、会社法2条17号に定義される株式であり、会社法107条1項1号または108条1項4号により、譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めがある株式をいいます。制限されるのは譲渡行為そのものではなく、会社との関係で譲渡による取得を承認するかどうかです。
次の比較表は、譲渡制限が問題になりやすい会社類型と理由を整理したものです。読者にとって重要なのは、譲渡制限が単なる売買手続ではなく、会社支配、事業承継、資本政策、紛争予防を支える制度であると読み取ることです。
| 場面 | 譲渡制限が問題になる理由 |
|---|---|
| 同族会社・家族会社 | 親族外の第三者、相続人、離婚・債務整理に伴う取得者が株主になると経営支配が不安定になります。 |
| 中小企業の事業承継 | 後継者以外に株式が分散すると、議決権行使や役員選任に支障が出ます。 |
| ベンチャー企業 | 創業者、投資家、役職員株主の持分移動が資本政策に影響します。 |
| 合弁会社 | 競合企業や想定外の第三者が株主になると、事業上の信頼関係が壊れることがあります。 |
| M&A | 対象会社株式を取得するため、定款上の承認機関による承認がクロージング条件になります。 |
| 従業員持株・役員持株 | 退職者、解任役員、競業者への株式移転を防ぐ必要があります。 |
譲渡制限は、会社が発行する全部の株式に付される場合と、種類株式の内容として特定の種類株式だけに付される場合があります。会社法上の公開会社とは、全部または一部の株式について譲渡による取得に会社の承認を要する旨の定款の定めを置いていない株式会社をいいます。そのため、上場・非上場の区別と、公開会社・非公開会社の区別は同じではありません。
事前確認から承認、不承認、買取り、価格決定までを一続きの手順として把握します。
次の判断の流れは、会社法136条から145条を中心とする譲渡承認手続きの全体像を示しています。読者にとって重要なのは、承認した場合と承認しない場合で手続が分かれ、不承認時には買取請求の有無と期限管理が結果を左右する点を読み取ることです。
定款、登記事項証明書、株主名簿、株券発行の有無、種類株式、株主間契約を確認します。
株主からの請求または株式取得者からの請求として行います。
対象株式数、種類、譲受人または取得者、買取請求の有無を明示します。
原則は株主総会または取締役会ですが、定款で別段の定めがある場合があります。
譲渡契約の実行、株主名簿書換、株券交付、記録整備へ進みます。
買取請求があれば、会社買取りまたは指定買取人による買取手続へ進みます。
この手続で失敗が多いのは、承認機関の誤認、承認請求書の記載不備、不承認時の買取請求の有無の確認漏れ、供託・通知期限の徒過、株券発行会社であることの見落とし、価格決定申立ての20日期限の徒過です。
次の時系列は、譲渡承認手続きの主要な段階を、会社側と請求者側の観点を交えて整理したものです。読者にとって重要なのは、各段階で確認資料と証跡を残し、後日の紛争で到達日・決定日・通知日を説明できるようにすることです。
承認機関、対象株式、株主名簿上の名義、株券発行の有無、株主間契約を確認します。
対象株式、譲受人または取得者、買取請求の有無を記載し、到達日を記録します。
株主総会、取締役会、定款で定めた機関のいずれかを正確に特定し、通知を行います。
会社買取りまたは指定買取人指定、供託、株券供託、価格協議、価格決定申立てを管理します。
定款だけでなく、登記、株主名簿、株券、契約上の制限を重ねて確認します。
手続を始める前には、資料ごとに確認できる範囲と限界を分ける必要があります。次の表は、各資料が何を示し、なぜ重要か、どのような読み違いに注意すべきかを整理したものです。
| 確認資料 | 確認する内容 | 見落としやすい注意点 |
|---|---|---|
| 定款 | 譲渡制限の有無、承認機関、みなし承認事由、種類株式の内容、相続人等への売渡請求権、株券発行の有無を確認します。 | 会社法139条の原則と異なる承認機関を定めている場合があります。 |
| 登記事項証明書 | 登記上の譲渡制限規定、機関設計、種類株式の概要を確認します。 | 最新の定款全文、みなし承認条項、株主間契約の内容までは分からないことがあります。 |
| 株主名簿 | 現在の株主、株式数、種類、取得日、名義書換の要否を確認します。 | 実体上の株主、名義株主、相続人、契約上の売主が一致しない場合があります。 |
| 株券発行会社かどうか | 株券交付、供託、紛失対応、株券発行請求の要否を確認します。 | 非公開会社である株券発行会社は、請求がある時まで株券を発行しないことができます。 |
| 株主間契約・投資契約 | 先買権、共同売却権、譲渡禁止特約、退職時買戻条項、ドラッグ・アロング、タグ・アロングを確認します。 | 定款上の承認を得ても、契約上の承諾を欠くと契約責任が問題になり得ます。 |
次の注意点一覧は、資料確認の段階で実務上の事故になりやすい要素をまとめたものです。読者にとって重要なのは、定款・登記・株主名簿のどれか一つだけで判断せず、資料間の不一致を早期に見つけることです。
取締役会を廃止したのに定款が整っていない場合、承認決議の有効性が問題になります。
株券発行会社では、供託や譲渡効力との関係で株券の所在確認が不可欠です。
名義と実体が一致しないと、承認請求、名義書換、議決権行使、税務に波及します。
投資契約や持株会規約の承諾が別途必要な場合、会社法手続だけでは足りません。
誰が請求するか、何を書くか、どの機関が決めるかを切り分けます。
会社法136条は、譲渡制限株式を有する株主が、その譲渡制限株式を他人に譲渡する場合に、会社に対し、当該他人が取得することについて承認するかどうかの決定を請求できると定めています。譲渡前に売主株主から行う請求であり、M&Aや事業承継では、承認取得を株式譲渡契約の停止条件にする設計が多く用いられます。
会社法137条は、譲渡制限株式を取得した株式取得者からも承認請求ができると定めています。ただし、原則として株主名簿上の株主またはその一般承継人と共同して行う必要があります。確定判決や競売など、取得原因が客観的に明らかで利害関係人の利益を害するおそれがない場合には、会社法施行規則24条の例外が問題になります。
承認請求書の記載事項は、不承認後に買取手続へ進むかどうかを左右します。次の表は、株主から請求する場合に何を記載し、会社が何を確認するかを示しています。
| 記載事項 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 請求者である株主の氏名・住所または名称・本店所在地 | 誰が請求者かを明確にし、株主名簿と照合します。 |
| 譲渡しようとする株式の数 | 普通株式何株、A種優先株式何株など対象を特定します。 |
| 種類株式発行会社では株式の種類 | 種類ごとに権利内容と承認機関が異なる場合があります。 |
| 譲受予定者の氏名・住所または名称・本店所在地 | 会社が承認可否を判断するための中核情報です。 |
| 不承認時の買取請求の有無 | 会社または指定買取人による買取手続へ進むかを決定づけます。 |
| 希望譲渡価格、契約条件、予定譲渡日 | 法定必須事項でない場合もありますが、判断材料になります。 |
| 添付資料 | 譲渡契約案、本人確認資料、登記事項証明書、委任状などを整理します。 |
会社側の承認機関は、会社類型と定款の定めで変わります。次の表は、原則と例外を並べたものです。読者にとって重要なのは、取締役会設置会社かどうかだけで機械的に判断せず、定款の別段の定めを必ず確認することです。
| 会社の類型 | 原則的な承認機関 | 注意点 |
|---|---|---|
| 取締役会設置会社 | 取締役会 | 譲受人が取締役、親族、主要取引先、競合会社などの場合、利益相反・特別利害関係・コンプライアンスを検討します。 |
| 取締役会非設置会社 | 株主総会 | 招集手続、議決権数、定足数、決議要件、議事録作成を整えます。 |
| 定款で別段の定めがある会社 | 定款で定めた機関・方法 | 代表取締役、取締役の過半数、株主総会普通決議などの定めがあり得ます。 |
会社は、承認または不承認の決定内容を譲渡等承認請求者へ通知しなければなりません。期限計算と証拠化のため、内容証明郵便、配達証明、特定記録、電子契約・電子通知の有効性、社内承認手順、議事録との整合性を検討します。
不承認通知だけで終わる場合と、会社または指定買取人による買取りへ進む場合を分けます。
会社が譲渡を承認しない場合、その後の対応は承認請求書に会社または指定買取人による買取りを請求する旨があるかどうかで大きく分かれます。次の比較表は、買取請求の有無による違いを示しています。読者にとって重要なのは、不承認の効果が請求書の一文で大きく変わる点です。
| 区分 | 会社側の対応 | 請求者側の注意点 |
|---|---|---|
| 買取請求がない場合 | 不承認通知により、基本的には当該請求に係る手続は終了します。 | 別の譲受人を探す、会社や既存株主と任意交渉する、株主間紛争として対応する余地があります。 |
| 買取請求がある場合 | 会社は自ら買い取るか、指定買取人を指定する必要があります。 | 想定外の相手に株式を売却する可能性や、価格決定申立ての必要性を検討します。 |
会社が自ら対象株式を買い取る場合、会社法140条2項に基づく決定が必要です。取締役会設置会社であっても、会社自身が買い取る場合には取締役会だけで完結せず、株主総会の特別決議を要する場面として扱われます。譲渡承認請求者である株主は、当該株主総会で議決権を行使できないとされています。
会社資金で株式を取得するため、分配可能額、会計処理、みなし配当課税、源泉徴収、法人税・所得税・相続税評価との関係も確認します。特に同族会社では、時価から著しく離れた価格により取引すると、寄附金、受贈益、みなし配当、役員給与、相続税評価への影響が問題になり得ます。
指定買取人とは、会社が譲渡を承認しない場合に、会社の代わりに対象株式を買い取る者として指定される第三者です。既存株主、役員、親族、事業承継者、持株会社、投資会社などが指定されることがあります。原則として、取締役会設置会社では取締役会、取締役会非設置会社では株主総会で決定しますが、定款に別段の定めがある場合は定款に従います。
次の判断の流れは、不承認後に買取請求がある場合の分岐を示しています。読者にとって重要なのは、会社買取りと指定買取人のどちらでも供託と通知が必要になり、指定買取人の資力確認を後回しにすると承認みなしのリスクが生じる点です。
請求者に不承認の決定を通知します。
請求書に買取請求があるかを確認します。
決定機関、資金、供託、通知期限を管理します。
別の譲受人や任意交渉は別途検討します。
会社または指定買取人が買い取る旨を通知する場合、一株当たり純資産額に対象株式数を乗じた額を本店所在地の供託所に供託し、その供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付する必要があります。株券発行会社では、請求者が供託を証する書面の交付を受けた日から1週間以内に対象株式に係る株券を供託し、会社へ通知する必要があります。
2週間、40日、10日、20日、1週間を、誰のどの行為に関する期限かで整理します。
期限管理は、譲渡承認手続きの成否を左右します。次の時系列は、各期限が何を表し、なぜ重要か、誰がどの効果を意識すべきかを示しています。読者は、通知日や書面交付日を起算点として、承認みなしや価格確定のリスクを読み取る必要があります。
会社は、承認請求を受けた後、原則として2週間以内に承認または不承認の通知をします。通知しない場合、承認したものとみなされる可能性があります。
会社自身が買い取る場合、不承認通知から原則40日以内に買取通知と供託を行う必要があります。
指定買取人による通知は、原則として不承認通知から10日以内です。不承認後に候補者を探すのでは間に合わないことがあります。
協議がまとまらない場合、通知があった日から20日以内に裁判所へ売買価格決定の申立てをすることができます。
請求者は、供託を証する書面の交付を受けた日から1週間以内に株券を供託します。
承認みなし制度は、会社が手続を遅延させることで譲渡希望株主の投下資本回収を妨げることを防ぐ制度です。会社が承認請求から2週間以内に通知しない場合、不承認通知後に会社による買取通知を40日以内にしない場合、指定買取人による通知が10日以内に行われない場合、必要な供託証明書の交付等が期限内に行われない場合などが問題になります。
この比較表は、期限徒過が会社側と請求者側に与える影響を整理しています。読者にとって重要なのは、同じ期限徒過でも、会社側では承認みなし、請求者側では価格決定申立てや株券供託の機会喪失という異なるリスクが生じる点です。
| 期限 | 主な対象者 | 見落とした場合の主なリスク |
|---|---|---|
| 2週間 | 会社 | 承認したものとみなされる可能性があります。 |
| 40日 | 会社 | 会社買取りを有効に進められず、承認みなしが問題になります。 |
| 10日 | 指定買取人 | 指定買取人による買取通知が遅れ、承認みなしが問題になります。 |
| 20日 | 会社・指定買取人・請求者 | 価格決定申立ての機会を失い、供託額を基礎とする価格が問題になります。 |
| 1週間 | 株券発行会社の請求者 | 株券供託ができず、買取手続に重大な支障が出ます。 |
協議、裁判所申立て、20日期限、令和5年最高裁決定の実務上の意味を確認します。
会社または指定買取人が対象株式を買い取る場合、売買価格はまず当事者間の協議で定めます。非上場株式では市場価格が存在しないため、税務上の相続税評価額、簿価純資産価額、時価純資産価額、DCF法による評価額、配当還元価額が一致しないことがあります。
次の一覧は、価格協議で使われる評価資料と、それぞれが何を示すかを整理しています。読者にとって重要なのは、単一の資料だけで価格を決めるのではなく、会社の資産状態、収益力、将来性、支配権、市場性を複合的に読み取ることです。
貸借対照表、損益計算書、勘定科目内訳明細書から、資産・負債・収益力の基礎を確認します。
将来収益、投資計画、資金繰り、成長性をDCF法などで検討します。
主要資産の時価、不動産鑑定、借入金、保証債務、偶発債務を反映します。
類似会社の株価、取引事例、議決権割合、少数株主性、市場性の欠如を確認します。
協議がまとまらない場合、会社、指定買取人または譲渡等承認請求者は、通知があった日から20日以内に、裁判所に対して売買価格決定の申立てをすることができます。裁判所は、譲渡等承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮して売買価格を決定します。
20日以内に価格決定申立てがなく、協議も調っていない場合には、供託額を基礎とする金額が売買価格となる構造です。供託額は一株当たり純資産額を基礎に算定されますが、経済的に納得できる時価と一致するとは限りません。
最高裁令和5年5月24日決定は、会社法144条2項に基づく譲渡制限株式の売買価格決定手続について、譲渡を希望する株主に当該譲渡に代わる投下資本回収の手段を保障する制度であると位置づけました。そのうえで、譲渡制限株式に市場性がないことを理由とする減価が相当と認められる場合には、評価方法としてDCF法が用いられたとしても、非流動性ディスカウントを行うことができると示しました。
もっとも、評価額の算定過程ですでに市場性の欠如が十分に考慮されている場合には、さらに非流動性ディスカウントを行うことは二重の減価となり相当ではないとも述べています。評価実務では、市場性の欠如をどこで、どの程度、どの根拠で反映したかを説明できる資料整備が重要です。
次の表は、株式価値評価と価格争いで関与する専門家の役割を整理しています。読者にとって重要なのは、会社法上の価格、税務上の時価、会計上の評価を混同せず、必要な専門家を分担して関与させることです。
| 専門家 | 主な役割 |
|---|---|
| 弁護士 | 会社法手続、申立代理、主張立証、議事録・通知・契約書の設計を担当します。 |
| 公認会計士 | 財務分析、DCF、純資産、会計上の論点、鑑定対応を担当します。 |
| 税理士 | 税務上の時価、みなし配当、譲渡所得、相続税・贈与税、同族会社評価を確認します。 |
| 不動産鑑定士 | 会社保有不動産の時価評価を担当します。 |
| 司法書士 | 定款、登記、株主名簿、商業登記関連手続を確認します。 |
| 企業内法務 | 社内決裁、取締役会・株主総会運営、証跡管理、外部専門家連携を担います。 |
会社法上の譲渡承認手続きと、一般承継・契約上の制限・税務評価を分けて考えます。
譲渡制限株式を会社の承認なく譲渡した場合、売主と買主の間では株式譲渡契約が有効に成立し得ます。しかし、会社に対する関係では、原則としてその譲渡の効力を主張できません。会社は、原則として株主名簿上の株主を株主として扱います。
ただし、一人会社で唯一の株主が株式を譲渡した場合や、全株主が譲渡に同意している場合など、承認制度で保護すべき他の株主利益が問題にならない特殊な場面では、別途の判断がされ得ます。
譲渡承認手続きは、基本的に譲渡による株式取得を対象とします。相続、合併、会社分割などの一般承継は、売買や贈与のような譲渡とは異なるため、通常の譲渡承認手続きが当然に必要となるわけではありません。
もっとも、定款に定めがある場合、会社法174条は、相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対し、会社がその株式を会社に売り渡すことを請求できる制度を認めています。相続人に対する売渡請求は、会社が相続等を知った日から1年以内に行う必要があります。
次の一覧は、事業承継で譲渡制限規定と組み合わせる制度を整理しています。読者にとって重要なのは、譲渡制限だけでは相続による株式分散を防げないため、複数の制度を役割ごとに読み分けることです。
株主構成の安定、一般承継への対応、議決権設計を担います。
後継者への株式集中や相続発生時の紛争予防を担います。
買取資金や納税猶予・免除の可能性を検討します。
先買権、買戻条項、共同売却、退職時処理などを補完します。
種類株式発行会社では、普通株式、A種優先株式、B種優先株式、新株予約権付種類株式など、株式の種類ごとに譲渡制限の有無や承認機関が異なることがあります。承認請求書では、株式の種類と数を正確に特定する必要があります。
ベンチャー企業では、定款上の譲渡制限に加えて、投資契約や株主間契約により、先買権、共同売却権、譲渡禁止、競業避止、上場前譲渡制限、ドラッグ・アロング、タグ・アロング、投資家承諾権が定められることがあります。定款上の承認と契約上の承諾は別です。
非上場会社の株式譲渡型M&Aでは、譲渡承認の取得がクロージング条件として重要です。買主側は、定款上の承認機関、決議の有効性、議事録、株主名簿、株券発行の有無、質権・譲渡担保・差押えの有無、株主間契約、反対株主・少数株主、相続未了株式・名義株を確認します。
個人株主が株式を譲渡する場合は、譲渡所得課税、取得費、譲渡費用、申告分離課税、同族会社株式の評価が問題になります。法人株主の場合は、法人税上の譲渡損益、時価移転、寄附金、受贈益、グループ法人税制、組織再編税制との関係を検討します。
会社が自ら買い取る場合は、自己株式取得として、会社法、会計、税務の三面から確認します。みなし配当、源泉徴収義務、資本金等の額、利益積立金額、会計処理、株主側の課税関係を確認する必要があります。
会社側と株主・譲受人側の双方で、期限・資料・価格・税務を点検します。
次の一覧は、実務上よくある失敗を分類したものです。読者にとって重要なのは、契約書、承認機関、買取請求、期限、株券、名義書換、税務評価、株主間契約のどこで事故が起きやすいかを事前に読み取ることです。
会社承認と株主名簿書換がなければ、会社に対して株主として扱われるとは限りません。
取締役会、株主総会、代表取締役など、定款上の承認機関を誤ると有効性が問題になります。
不承認時に会社または指定買取人が買い取るかどうかは、請求書の記載で変わります。
2週間、40日、10日、20日、1週間の期限を落とすと重大な効果が生じます。
株券が手元にないだけでは、株券発行会社ではないとは判断できません。
配当、議決権行使、株主総会通知、M&A、相続で問題が顕在化します。
相続税評価額や簿価純資産価額は、会社法144条の売買価格決定の唯一の基準ではありません。
定款上の承認を得ても、投資契約や持株会規約に違反する場合があります。
会社側の確認リストは、請求書を受け取った直後に期限と担当者を決めるためのものです。読者は、到達日、対象株式、承認機関、不承認時の買取り、供託、税務・会計、名義書換の順に漏れがないかを読み取ります。
| 段階 | 会社側の確認事項 |
|---|---|
| 受領直後 | 請求書の到達日、請求者の地位、対象株式の種類・数、株主名簿との照合を記録します。 |
| 資料確認 | 定款、承認機関、取締役会設置会社かどうか、種類株式、株券発行会社かどうかを確認します。 |
| 契約確認 | 株主間契約・投資契約、譲受人の属性、反社チェック、競合関係を確認します。 |
| 決議準備 | 招集手続、議案、議事録、2週間以内の通知期限を管理します。 |
| 不承認時 | 買取請求の有無、会社買取りの特別決議、指定買取人候補、供託額、通知方法を確認します。 |
| 価格・税務 | 20日期限、税務・会計処理、最終的な株主名簿更新を確認します。 |
株主・譲受人側の確認リストは、承認請求前後の準備を整理するためのものです。読者は、定款・登記・株主名簿の確認から、買取請求を入れるか、20日期限や株券供託へ備えるかを読み取ります。
| 段階 | 株主・譲受人側の確認事項 |
|---|---|
| 事前確認 | 定款、登記事項証明書、株主名簿、対象株式の種類・数、株券の所在を確認します。 |
| 契約確認 | 株主間契約、投資契約、持株会規約、譲渡価格と税務上の時価を確認します。 |
| 請求設計 | 譲渡前に株主から請求するか、取得後に請求するか、買取請求を入れるかを検討します。 |
| 送付・記録 | 必要事項を記載し、到達を証明できる方法で送付し、会社からの通知を記録します。 |
| 不承認時 | 会社・指定買取人による通知期限、20日以内の価格決定申立て、1週間以内の株券供託に備えます。 |
| 承認後 | 株主名簿書換請求、代金決済、契約書、領収書、税務申告資料を保存します。 |
承認請求書、取締役会議事録、承認通知、不承認通知の骨子を確認します。
次の比較表は、書式ごとに必ず入れたい要素と注意点を整理しています。読者にとって重要なのは、定款、株式の種類、株主名簿、契約条件、不承認時の買取請求の有無に応じて書式を調整する必要がある点です。
| 書式 | 主な記載事項 | 注意点 |
|---|---|---|
| 株式譲渡承認請求書 | 日付、会社名、代表者、請求者、対象株式、譲受予定者、譲渡予定日、譲渡予定価格、買取請求の有無を記載します。 | 買取請求条項は、会社または指定買取人に買い取ってもらいたいのか、特定の買主への譲渡だけが目的なのかを検討して入れます。 |
| 取締役会議事録 | 開催日時、場所、出席取締役、議題、議案内容、審議、決議、通知権限を記録します。 | 不承認の場合は、不承認理由、買取請求の有無、会社買取りまたは指定買取人指定の方針、供託準備も整理します。 |
| 譲渡承認通知書 | 対象株式、譲渡人、譲受人、承認決定日、決議機関を記載します。 | 通知の到達日を証拠化し、名義書換や契約実行との順序を整えます。 |
| 不承認通知書 | 対象株式、譲渡人、譲受予定者、不承認決定日、買取請求への対応を記載します。 | 不承認通知と同時または近接して、会社買取り・指定買取人の通知や供託の時期を検討します。 |
承認請求書の実務上の骨子は、請求者と対象株式を特定し、譲受予定者、譲渡予定日、価格、不承認時の買取請求を明確にすることです。たとえば、会社法第136条および定款に基づき、下記譲受人が当該株式を譲渡により取得することについて承認するか否かの決定を請求する、という形で構成します。
取締役会議事録の骨子は、株主からの承認請求があった事実、対象株式、譲受予定者、事業上の影響、定款規定、株主間契約の有無を審議し、承認または不承認を決議したことを記録することです。承認する場合は代表取締役に通知を一任する記載が使われます。
承認通知書では、会社が開催した承認機関において、譲受人が当該株式を譲渡により取得することを承認する旨を決議したことを通知します。不承認通知書では、承認しない旨に加え、請求書に買取請求がある場合は会社法140条以下に基づく会社買取りまたは指定買取人指定について法定期限内に別途通知する旨を整理します。
よくある疑問を、一般的な制度説明として整理します。
一般的には、取締役会設置会社では取締役会、取締役会を置かない会社では株主総会が原則とされています。ただし、定款で別段の定めを置くことができ、機関設計や定款変更の履歴によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、定款や議事録を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、定款に基づく承認機関で不承認を決定できるとされています。ただし、承認請求者が不承認時の買取りを請求している場合、会社は自ら買い取るか指定買取人を指定する手続が問題になります。会社の状況、請求書の記載、期限管理によって結論が変わるため、具体的には専門家へ相談する必要があります。
一般的には、会社が法定期間内に承認・不承認の通知をしない場合、承認したものとみなされる可能性があります。ただし、定款の期間、請求書の到達日、通知方法、合意の有無で判断が変わります。具体的な見通しは、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、承認請求者が会社または指定買取人による買取りを求めている場合に、会社買取りまたは指定買取人指定の手続が問題になります。承認請求書にその請求がない場合、当然に同じ手続へ進むとは限りません。具体的な対応は、請求書と定款を確認して専門家へ相談する必要があります。
一般的には、会社または指定買取人による買取通知があった日から20日以内に、裁判所へ売買価格決定の申立てをすることができます。ただし、通知日、協議状況、供託額、評価資料によって対応が変わります。具体的な方針は、評価資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。
一般的には、相続は通常の売買・贈与のような譲渡ではないため、通常の譲渡承認手続きが当然に必要になるわけではないとされています。ただし、定款に相続人等に対する売渡請求権の定めがある場合、別の手続が問題になります。具体的には定款と相続関係資料を確認して専門家へ相談する必要があります。
一般的には、株主が変わっただけでは商業登記は必要ないとされています。ただし、譲渡制限規定の新設・変更・廃止、種類株式の内容変更、役員変更、組織再編などを伴う場合には登記が必要になることがあります。具体的な登記の要否は、司法書士等の専門家へ確認する必要があります。
一般的には、株主間契約上の承諾と、定款に基づく会社法上の譲渡承認は別の手続とされています。両方が必要となる場合があり、契約違反と会社法上の効力は分けて検討する必要があります。具体的には契約書と定款を照合して専門家へ相談する必要があります。
一般的には、定款上、代表取締役が承認機関とされているなどの事情がない限り、口頭承認だけでは承認機関・決議・通知・議事録の点で問題が生じる可能性があります。具体的な有効性は、定款、議事録、通知内容、当事者の行動によって変わるため、専門家へ相談する必要があります。
一般的には、会社または指定買取人に買い取ってもらう可能性を残したい場合には買取請求の記載が検討されます。他方、特定の買主への譲渡だけが目的で、会社や指定買取人への売却を望まない場合には慎重な検討が必要です。具体的には目的、価格、期限、税務、紛争状況を整理して専門家へ相談する必要があります。
法務・登記・税務・会計を統合して、手続不備と紛争リスクを抑えます。
譲渡承認手続きでは、単に条文どおり進めるだけでは足りません。事前設計、証拠化、期限管理、価格紛争を見越した資料整備、税務・会計の早期確認を組み合わせる必要があります。
次の一覧は、関係者ごとの関与ポイントを示しています。読者にとって重要なのは、誰が何を担当するかを早期に分け、会社法手続、登記、税務、会計、M&A実務を横断して確認することです。
譲渡承認請求、承認・不承認決定、価格決定申立て、株主間紛争、M&A、相続紛争、利益相反、訴訟対応に関与します。
定款、株主名簿、議事録、決裁手順、通知期限、外部専門家連携を管理します。
定款、登記事項、機関設計、議事録、株主名簿、商業登記の要否を確認します。
譲渡所得、みなし配当、源泉徴収、同族会社株式評価、相続税・贈与税、法人税上の時価を確認します。
承認・不承認の判断における公正性、利益相反、少数株主保護、善管注意義務を確認します。
まとめとして、譲渡制限株式の譲渡承認手続きで特に重要なのは次の5点です。
制度理解の基礎となる中立的な資料名を整理します。