2σ Guide

日弁連に弁護士への苦情を
申し立てることはできるか

通常の苦情や最初の懲戒請求は、対象弁護士の所属弁護士会が入口です。日弁連が関与する異議申出、綱紀審査、専門相談との違いを整理します。

52会全国の弁護士会
3年懲戒手続の制限
4類型苦情制度の分類
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日弁連に弁護士への苦情を 申し立てることはできるか

通常の苦情や最初の懲戒請求は、対象弁護士の所属弁護士会が入口です。

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日弁連に弁護士への苦情を 申し立てることはできるか
通常の苦情や最初の懲戒請求は、対象弁護士の所属弁護士会が入口です。
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  • 日弁連に弁護士への苦情を 申し立てることはできるか
  • 通常の苦情や最初の懲戒請求は、対象弁護士の所属弁護士会が入口です。

POINT 1

  • 日弁連に弁護士への苦情を申し立てる前に結論を確認する
  • 通常の苦情、紛議、最初の 懲戒請求は所属弁護士会が入口になり、日弁連は後続手続や特別窓口で関与します。
  • 通常の入口は日弁連ではなく所属弁護士会です
  • 「日弁連に弁護士への苦情を申し立てることはできるか」という問いに対する実務上の結論は、次のように整理できます。
  • 一般的な苦情、弁護士とのトラブル、最初の 懲戒請求は、原則として、その弁護士が所属する弁護士会に申し立てます。

POINT 2

  • 日弁連と所属弁護士会の違いを苦情申立ての前提として押さえる
  • すべての弁護士が日弁連に登録されることと、日弁連が最初の苦情窓口であることは別問題です。
  • 2.1 日弁連とは何か
  • 2.2 弁護士会とは何か
  • 2.3 「日弁連に登録している」と「日弁連が最初の苦情窓口である」は別問題

POINT 3

  • 弁護士への苦情で使う制度を目的別に選ぶ
  • 市民窓口、紛議調停、懲戒請求、日弁連への異議申出・綱紀審査は、目的も効果も異なります。
  • 4.1 市民窓口とは
  • 4.2 市民窓口で扱われやすい相談
  • 4.3 市民窓口を使う前に準備すべき事項

POINT 4

  • 日弁連に申し立てられる場面は異議申出・綱紀審査・専門相談に限られやすい
  • 日弁連は後続審査で重要な役割を持ちますが、最初からすべての苦情を直接処理する制度ではありません。
  • 7.1 日弁連が関与する典型場面
  • 7.2 異議申出ができる人
  • 7.3 異議申出の対象となる場合

POINT 5

  • 弁護士への苦情は事実・証拠・時系列で整理する
  • 感情的な評価よりも、日時、やり取り、資料、制度上の目的を整えることが重要です。
  • 10.1 依頼した弁護士と連絡が取れない
  • 10.2 弁護士費用が高すぎる、説明と違う
  • 10.3 預り金や回収金を返してもらえない

POINT 6

  • 日弁連への苦情申立てでよくある質問
  • 個別事件の判断ではなく、制度の一般的な理解として確認してください。
  • 14.1 「日弁連は弁護士の全国組織だから、すべての苦情を直接処理してくれる」
  • 14.2 「弁護士に不満があるなら、すぐ懲戒請求すべきだ」
  • 14.3 「懲戒請求をすれば、返金や損害賠償を命じてもらえる」

まとめ

  • 日弁連に弁護士への苦情を 申し立てることはできるか
  • 日弁連に弁護士への苦情を申し立てる前に結論を確認する:通常の苦情、紛議、最初の 懲戒請求は所属弁護士会が入口になり、日弁連は後続手続や特別窓口で関与します。
  • 日弁連と所属弁護士会の違いを苦情申立ての前提として押さえる:すべての弁護士が日弁連に登録されることと、日弁連が最初の苦情窓口であることは別問題です。
  • 弁護士への苦情で使う制度を目的別に選ぶ:市民窓口、紛議調停、懲戒請求、日弁連への異議申出・綱紀審査は、目的も効果も異なります。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

日弁連に弁護士への苦情を申し立てる前に結論を確認する

通常の苦情、紛議、最初の懲戒請求は所属弁護士会が入口になり、日弁連は後続手続や特別窓口で関与します。

「日弁連に弁護士への苦情を申し立てることはできるか」という問いに対する実務上の結論は、次のように整理できます。

一般的な苦情、弁護士とのトラブル、最初の懲戒請求は、原則として、その弁護士が所属する弁護士会に申し立てます。 日弁連は全国組織であり、すべての弁護士が登録される重要な団体ですが、弁護士に対する苦情処理の最初の窓口が常に日弁連である、という制度設計にはなっていません。

日弁連の公式案内でも、弁護士の活動に納得できない場合には、まずその弁護士の所属弁護士会の市民窓口に相談すること、弁護士に対する懲戒請求は依頼者・相手方などの関係者に限らず誰でもできるものの、請求先はその弁護士の所属弁護士会であることが示されています。

ただし、日弁連がまったく関与しないわけではありません。日弁連に申し立てることができる代表的な場面は、主に次の三つです。

  1. 所属弁護士会に懲戒請求をした後、その弁護士会が懲戒しない決定をした、処分が不当に軽いと思う、または相当期間内に手続が終わらない場合の日弁連への異議申出
  2. 一定の異議申出について日弁連が却下・棄却した場合に、さらに申し出ることができる綱紀審査
  3. 弁護士によるセクシュアル・ハラスメントや性別による差別的取扱いについて、日弁連の専門相談員が相談を受ける制度。

したがって、この記事の中心的な答えは、次の一文に集約されます。

要点日弁連に弁護士への苦情を申し立てることは、一定の例外的・後続的な制度では可能だが、通常の苦情相談や最初の懲戒請求は、まず対象弁護士の所属弁護士会に行う。

この区別を誤ると、申立先を間違え、時間を失い、必要な手続に進めないおそれがあります。以下では、日弁連、弁護士会、市民窓口、紛議調停、懲戒請求、異議申出、綱紀審査を順番に定義し、どの場面でどこに何を申し立てるべきかを専門的に解説します。

次の重要ポイントは、制度の入口と例外を並べたものです。申立先を間違えると時間を失いやすいため、読者は「最初は所属弁護士会」「日弁連は異議申出・綱紀審査・一部の専門相談」と読むのが大切です。

通常の入口は日弁連ではなく所属弁護士会です

一般的な苦情、報酬や預り金の紛争、最初の懲戒請求は、原則としてその弁護士が所属する弁護士会に申し立てます。日弁連は全国組織ですが、すべての苦情を最初から直接処理する窓口ではありません。

Section 01

日弁連と所属弁護士会の違いを苦情申立ての前提として押さえる

すべての弁護士が日弁連に登録されることと、日弁連が最初の苦情窓口であることは別問題です。

2.1 日弁連とは何か

日弁連とは、正式には日本弁護士連合会といいます。日弁連は弁護士法に基づいて設立された法人であり、その会員には、全国52の弁護士会、個々の弁護士、弁護士法人などが含まれます。日弁連の公式説明によれば、日本全国すべての弁護士および弁護士法人は、各地の弁護士会に入会すると同時に、日弁連に登録しなければならないとされています。

日弁連の目的は、弁護士および弁護士法人の品位保持、事務の改善進歩、弁護士・弁護士法人・弁護士会の指導、連絡、監督に関する事務を行うことです。日弁連は、弁護士等の登録審査、懲戒処分、会則等の制定などを担います。

このため、一般の読者から見ると、「すべての弁護士が日弁連に登録しているなら、弁護士への苦情も日弁連に言えばよいのではないか」と考えやすいところです。しかし、弁護士への苦情・紛議・懲戒の入口は、多くの場合、全国組織である日弁連ではなく、対象弁護士の所属弁護士会です。

2.2 弁護士会とは何か

弁護士会とは、各地域に設置される弁護士の自治団体です。日弁連の会員ページによると、現在、弁護士会は全国に52会あります。 日弁連の全国弁護士会一覧には、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州の各地域にある弁護士会が掲載されています。

弁護士は、自分が登録している弁護士会に所属します。たとえば、東京には東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会の三会があり、同じ「東京都内の弁護士」であっても所属弁護士会が異なることがあります。したがって、苦情や懲戒請求の前提として、「その弁護士がどの弁護士会に所属しているか」を確認する必要があります。

日弁連の弁護士検索では、現在登録されているすべての弁護士の基本情報を確認できます。 まず弁護士名、事務所名、登録番号などで検索し、所属弁護士会を特定するのが実務上の第一歩です。

2.3 「日弁連に登録している」と「日弁連が最初の苦情窓口である」は別問題

すべての弁護士が日弁連に登録していることと、すべての苦情を日弁連に直接申し立てることができることは、同じ意味ではありません。

弁護士制度は、日弁連と各弁護士会が役割を分担する構造を採っています。懲戒制度についても、日弁連の説明では、懲戒は基本的にその弁護士等の所属弁護士会が懲戒委員会の議決に基づいて行うと説明されています。 日弁連は、所属弁護士会の処理に対する異議申出など、上位・後続の段階で重要な役割を果たします。

Section 02

弁護士への苦情で使う制度を目的別に選ぶ

市民窓口、紛議調停、懲戒請求、日弁連への異議申出・綱紀審査は、目的も効果も異なります。

日常語で「弁護士への苦情」と言う場合、少なくとも次の四つの制度・場面が混在しています。

区分何を扱うか主な申立先目的
市民窓口弁護士の活動、態度、説明、報酬、連絡不足などへの不満・疑問所属弁護士会事情を聞き、制度案内や説明を行う
紛議調停報酬、預り金、辞任・解任、事務処理など弁護士との紛争所属弁護士会弁護士会が間に入り、話し合いによる解決を探る
懲戒請求弁護士法違反、会則違反、品位を失うべき非行など所属弁護士会弁護士に懲戒処分を求める
日弁連への異議申出・綱紀審査所属弁護士会の懲戒判断等に対する不服日弁連所属弁護士会の処理を後続的に審査する

この分類を理解しないまま「日弁連に苦情を出したい」と考えると、制度選択を誤ります。自分の不満が「相談・苦情」なのか、「金銭・契約上の紛争」なのか、「懲戒を求める非行の主張」なのか、「所属弁護士会の処理への不服」なのかを分けて考える必要があります。

4.1 市民窓口とは

市民窓口とは、各弁護士会が設けている、弁護士の活動に関する苦情・疑問・不満を受け付ける窓口です。日弁連は、全国の弁護士会には弁護士の活動に関する苦情などを受け付ける「市民窓口」が設けられており、弁護士の活動で納得できない場合には、まずその弁護士の所属弁護士会の市民窓口に相談するよう案内しています。

市民窓口は、「裁判所」でも「消費生活センター」でも「弁護士の上司」でもありません。弁護士会が、弁護士の業務に関する疑問や苦情を聴き、制度説明や適切な手続の案内をする窓口です。

4.2 市民窓口で扱われやすい相談

市民窓口で扱われやすい典型例は、次のようなものです。

  • 依頼した弁護士から長期間連絡がない。
  • 事件の進捗説明が不十分である。
  • 報酬や実費の説明がわかりにくい。
  • 委任契約書や精算書の扱いに疑問がある。
  • 弁護士の言葉遣い、態度、応対に強い不満がある。
  • 事件を放置しているのではないかと疑われる。
  • 預り金や回収金の返還・精算に疑問がある。
  • 相手方代理人の言動が不適切だと感じる。

ただし、市民窓口は、事件そのものの勝ち負けを判断する窓口ではありません。東京弁護士会の市民窓口の説明では、同窓口は事件そのものの法律相談やセカンドオピニオンに応じる窓口ではなく、苦情内容や具体的事件における弁護士の主張・立証内容の是非を判断する窓口でもないとされています。

つまり、市民窓口は「この裁判の戦略は正しいか」「この判決はおかしいか」「弁護士の法律判断は間違いか」といった実体的判断をする場所ではありません。弁護士の業務対応に関する苦情を聴き、必要に応じて紛議調停や懲戒請求などの制度を案内する窓口です。

4.3 市民窓口を使う前に準備すべき事項

市民窓口に連絡する前に、少なくとも次の事項を整理しておくべきです。

  1. 苦情対象の弁護士名。
  2. 所属弁護士会。
  3. 法律事務所名、住所、電話番号。
  4. 自分と弁護士の関係。依頼者、元依頼者、相手方、第三者など。
  5. 苦情の対象となる事件名・事件番号・分野。
  6. いつ、何が起きたかという時系列。
  7. どのような対応を求めるのか。
  8. 既に弁護士本人へ連絡・要望をしたか。
  9. メール、LINE、手紙、委任契約書、領収書、裁判書類などの証拠。

感情的に「ひどい弁護士です」と伝えるだけでは、窓口側も制度案内をしにくくなります。「2026年2月1日に書面で進捗報告を求めたが、同年3月15日まで返信がない」「2025年12月10日に預り金精算を求めたが、明細が交付されていない」など、日時と事実を特定して話すことが重要です。

5.1 紛議調停とは

紛議調停とは、弁護士との間の報酬、預り金、辞任・解任、事件処理上のトラブルなどについて、弁護士会が間に入り、話し合いによる解決を探る制度です。日弁連は、最初の約束より高い報酬を請求された、弁護士の辞任・解任の際にトラブルが生じて話し合いがつかないといった場合には、弁護士会が間に入る紛議調停制度があると説明しています。

紛議調停は、懲戒処分を目的とする制度ではありません。主眼は、弁護士と依頼者などの間に生じた具体的な紛争を、調停により解決することです。

5.2 紛議調停が適する典型例

紛議調停が向いているのは、次のようなケースです。

  • 着手金・報酬金の金額について争いがある。
  • 委任契約書の説明と実際の請求が違うと感じる。
  • 弁護士を解任した後の返金額で争っている。
  • 預り金や実費の精算明細に納得できない。
  • 弁護士が辞任した後、書類返還や事件引継ぎで揉めている。
  • 弁護士の事務処理により損害が出たと考えるが、まず話し合いで整理したい。

神奈川県弁護士会の説明でも、弁護士との間に預け金品の精算、報酬の額、事務処理上の問題その他職務に関する紛議が生じたときは、その弁護士が所属する弁護士会に対して調停の申立てができるとされています。

5.3 紛議調停で注意すべき点

紛議調停は、合意による解決を目指す制度です。当事者双方の言い分を聴いたうえで、条理にかなった公正な解決を探りますが、合意が成立しなければ不調で終了します。

したがって、紛議調停は「必ず返金させる制度」でも「弁護士を処分する制度」でもありません。報酬や預り金など、金銭・契約関係の争いについて、話し合いによる整理を期待する制度です。

6.1 懲戒請求とは

懲戒請求とは、弁護士または弁護士法人について懲戒の事由があると考える場合に、その所属弁護士会に対し、懲戒を求める制度です。

日弁連の説明では、弁護士および弁護士法人は、弁護士法や所属弁護士会・日弁連の会則に違反したり、所属弁護士会の秩序・信用を害したり、その他職務の内外を問わず「品位を失うべき非行」があったときに懲戒を受けるとされています。

弁護士法上の懲戒処分の種類は、弁護士については次の四つです。

  1. 戒告 ― 弁護士に反省を求め、戒める処分。
  2. 2年以内の業務停止 ― 弁護士業務を行うことを禁止する処分。
  3. 退会命令 ― 弁護士としての身分を失わせる処分。ただし、弁護士となる資格までは失わせない。
  4. 除名 ― 弁護士としての身分を失わせ、3年間は弁護士となる資格も失わせる処分。

6.2 誰が懲戒請求できるか

懲戒請求は、事件の依頼者や相手方などの関係者に限らず、誰でもできます。日弁連の公式ページでも、弁護士等に対する懲戒請求は関係者に限らず誰でもでき、その弁護士等の所属弁護士会に請求すると説明されています。

ただし、「誰でもできる」ということは、「根拠がなくてもよい」という意味ではありません。懲戒請求は、弁護士会の懲戒権の発動を求める重い制度です。事実上または法律上の根拠を欠く申立ては、相手方との紛争を深刻化させ、場合によっては民事責任の議論を招くことがあります。最高裁判例に関する判例解説でも、弁護士法58条1項に基づく懲戒請求が不法行為を構成する場合が論じられています。

6.3 最初から日弁連に懲戒請求できるか

ここが、この記事の最重要ポイントです。

最初から日弁連に懲戒請求をすることはできません。 日弁連の懲戒制度の説明には、「最初から日弁連に懲戒の請求をすることはできません。まず、その弁護士等の所属弁護士会に請求してください」と明記されています。

したがって、「日弁連に弁護士への苦情を申し立てることはできるか」という質問が、「弁護士の非行について最初から日弁連に懲戒請求できるか」という意味であれば、答えはできないです。まず所属弁護士会です。

6.4 懲戒請求の期限 ― 3年の制限

日弁連は、懲戒の事由があったときから3年を経過したときは、懲戒の手続を開始することができないと案内しています。 弁護士への不満がある場合、長期間放置すると、懲戒手続に進めない可能性があります。

もっとも、いつを「懲戒の事由があったとき」と見るかは、事案の性質によって難しい場合があります。たとえば、継続的な不作為、預り金の返還問題、事件放置などでは、単純に一つの日付だけで判断しにくいことがあります。期限が問題になりそうな場合には、所属弁護士会の窓口で早めに確認することが重要です。

6.5 懲戒請求は何を解決しないのか

懲戒請求は、弁護士とあなたとの個人的紛争を直接解決する制度ではありません。神奈川県弁護士会は、懲戒請求について、弁護士会が職権で調査し所属弁護士を懲戒するかどうかを審査する手続であり、あなたと弁護士との間の争いを解決したり、謝罪や金銭の支払い等を弁護士に命じることを目的とするものではないと説明しています。

つまり、懲戒請求で期待できないことは、次のとおりです。

  • 裁判結果を覆すこと。
  • 相手方代理人の訴訟活動を直ちに止めること。
  • 弁護士に損害賠償を命じること。
  • 弁護士に謝罪文を出させること。
  • 報酬を必ず返金させること。
  • 依頼中の事件について別の法的判断を示してもらうこと。

これらを目的とする場合には、紛議調停、民事訴訟、別の弁護士への相談、裁判上の主張・反論など、別の手段を検討する必要があります。

Section 03

日弁連に申し立てられる場面は異議申出・綱紀審査・専門相談に限られやすい

日弁連は後続審査で重要な役割を持ちますが、最初からすべての苦情を直接処理する制度ではありません。

7.1 日弁連が関与する典型場面

日弁連は、最初の懲戒請求窓口ではありません。しかし、所属弁護士会に懲戒請求をした後、一定の場合には日弁連に異議を申し出ることができます。

日弁連は、懲戒請求をした方が、弁護士会が懲戒しない旨の決定をしたとき、相当の期間内に懲戒の手続を終えないとき、または懲戒の処分が不当に軽いと思うときは、日弁連に異議を申し出ることができると説明しています。

この意味では、「日弁連に弁護士への苦情を申し立てることはできるか」という問いに対し、所属弁護士会での懲戒手続を経た後の不服申立てとしてなら可能な場合があると答えることができます。

7.2 異議申出ができる人

日弁連の異議申出の案内によれば、異議申出ができるのは、懲戒請求をした方だけです。

つまり、単に「ある弁護士の処分が軽いとニュースで見た」「知人の事件で納得できない」といった理由で、懲戒請求者ではない第三者が日弁連に異議申出をすることはできません。まず所属弁護士会に懲戒請求をした者であることが前提になります。

7.3 異議申出の対象となる場合

日弁連への異議申出が問題になる主な場面は、次の三つです。

  1. 所属弁護士会が、弁護士を懲戒しない旨の決定をした。
  2. 所属弁護士会の懲戒処分が不当に軽いと思われる。
  3. 所属弁護士会が相当の期間内に懲戒手続を終えない。

日弁連の異議申出ページでは、弁護士会が懲戒しない旨の決定をした場合、または処分が不当に軽いと思う場合に日弁連に異議申出ができること、異議申出書は郵便・信書便・持参で提出し、ファクシミリや電子メールによる申出は認められないことが示されています。

7.4 異議申出書の作成で重要なこと

異議申出では、単に「納得できない」と書くだけでは足りません。次の点を整理する必要があります。

  • どの弁護士会に、いつ懲戒請求をしたか。
  • どの弁護士・弁護士法人について請求したか。
  • 弁護士会からどのような通知を受けたか。
  • その通知をいつ受け取ったか。
  • なぜその判断が不当だと考えるか。
  • どの証拠がどの事実を裏付けるか。
  • 手続が遅れている場合、いつからどの程度経過しているか。

異議申出は、感情の再提出ではなく、所属弁護士会の判断に対する具体的な不服理由の提示です。弁護士会の決定理由を読み、どの認定・評価に問題があると考えるのかを明確にする必要があります。

8.1 綱紀審査とは

綱紀審査とは、一定の場合に、日弁連の綱紀審査会による審査を求める制度です。日弁連の説明によれば、綱紀審査は、弁護士、裁判官、検察官およびそれらの経験者を除く学識経験者である委員のみで構成される綱紀審査会で行われます。制度の趣旨は、懲戒手続に国民の意見が反映されることにより、懲戒手続の適正さをより確保することにあります。

8.2 いつ綱紀審査を申し出られるか

綱紀審査を申し出られるのは、日弁連が一定の異議申出を却下または棄却する決定をした場合です。日弁連の公式案内では、綱紀審査を申し出ることができるのは、対象となる異議申出をした方に限られるとされています。

したがって、綱紀審査は、最初の苦情窓口ではありません。所属弁護士会への懲戒請求、所属弁護士会の判断、日弁連への異議申出、日弁連の却下・棄却決定という段階を踏んだ後に、一定条件下で問題になる制度です。

8.3 綱紀審査の位置づけ

綱紀審査は、懲戒制度の透明性・適正性を高めるための重要な制度ですが、利用できる場面は限られます。一般的な苦情を「日弁連に聞いてほしい」という段階で使う制度ではありません。

9.1 日弁連が直接相談を受ける特別な窓口

弁護士によるセクシュアル・ハラスメントや性別による差別的取扱いについては、日弁連に専門の相談制度があります。日弁連は、「性別による差別的取扱い等の防止に関する規則」を定め、弁護士からのセクハラや性別による差別的取扱いが発生した際、プライバシーを保護しながら、専門の相談員が相談を聴くと説明しています。

この点は、通常の苦情処理と異なります。すべての弁護士苦情を日弁連が直接受け付けるわけではありませんが、セクハラ・性別差別に関しては、日弁連の専門窓口が用意されています。

9.2 相談対象となる人・行為

日弁連の説明では、相談できる方として、弁護士会・弁護士会連合会・法律事務所の職員、依頼者・相談者、会員、司法修習生、法律事務所で研修中の方などが示されています。また、対象となる行為は、弁護士の事務所における活動、弁護士会等における活動、会員の職務におけるセクハラおよび性別による差別的取扱いとされています。

一方で、交渉や訴訟の相手方の代理人弁護士の行為は対象外とされています。 そのため、相手方代理人の法廷外・法廷内の発言が不快だったというだけで、直ちに日弁連のこの窓口に該当するとは限りません。

Section 04

弁護士への苦情は事実・証拠・時系列で整理する

感情的な評価よりも、日時、やり取り、資料、制度上の目的を整えることが重要です。

10.1 依頼した弁護士と連絡が取れない

まず、メール、書面、電話記録などで連絡を試みた事実を残します。期限のある裁判・調停・行政手続が進行中なら、手続上の不利益を避けるため、早急に別の弁護士や法律相談機関に相談することも検討すべきです。

所属弁護士会の市民窓口に相談し、連絡不能の状況、事件の進行状況、期限の有無を伝えます。事件放置、重大な説明義務違反、預り金問題などが疑われる場合には、懲戒請求や紛議調停も検討対象になります。

10.2 弁護士費用が高すぎる、説明と違う

費用問題は、まず委任契約書、見積書、報酬説明書、請求書、領収書を確認します。報酬額の妥当性や契約解釈が争点であれば、紛議調停が向いている場合があります。

費用が高いと感じるだけでは、直ちに懲戒事由になるとは限りません。しかし、虚偽説明、説明拒否、預り金の不適切管理、無断受領などがある場合には、懲戒請求の問題にもなり得ます。

10.3 預り金や回収金を返してもらえない

預り金や回収金の未返還は、弁護士の信頼に関わる重大な問題になり得ます。振込明細、預り証、和解金入金資料、精算書、メールのやり取りなどを保存し、所属弁護士会の市民窓口または紛議調停を検討します。

単なる精算時期の行き違いなのか、説明拒否や流用が疑われるのかによって、制度選択は変わります。重大な非行が疑われる場合には、懲戒請求も検討されます。

10.4 裁判に負けたので弁護士を処分してほしい

裁判に負けたという結果だけで、弁護士への懲戒請求が認められるわけではありません。裁判には証拠、法解釈、裁判官の判断、相手方の主張立証など、多数の要素が関係します。

問題にすべきなのは、結果ではなく、弁護士の行為です。たとえば、期限を徒過した、依頼者に無断で重要な手続をした、明らかに虚偽の説明をした、事件を放置した、利益相反を隠した、といった具体的事実が必要です。

10.5 相手方弁護士の態度や主張が不当だと感じる

相手方弁護士の主張が厳しい、攻撃的、納得できないというだけでは、直ちに苦情や懲戒の対象になるとは限りません。弁護士は依頼者の代理人として、相手方に不利な主張をすることがあります。

ただし、脅迫的言動、明らかな虚偽、差別的発言、守秘義務違反、手続妨害などが具体的にある場合には、所属弁護士会への相談対象になり得ます。自分にも代理人弁護士がいる場合には、まず代理人に相談し、訴訟上の対応、抗議書面、証拠化の方法を検討するのが安全です。

10.6 弁護士からセクハラ・性別差別を受けた

この場合、所属弁護士会の窓口だけでなく、日弁連のセクハラ・性別差別相談窓口の利用も検討できます。日弁連の制度は、相談者のプライバシー保護を前提に、相談員による相談、必要に応じた調査委員会の設置、助言・勧告等の措置を含むものとして案内されています。

ただし、日弁連の対象範囲には限定があります。弁護士以外から受けたセクハラ等は対象外であり、相手方代理人弁護士の行為についても対象外とされる場面があります。

弁護士への苦情では、「自分はひどい対応を受けた」と感じていても、それを制度上扱える形に整える必要があります。重要なのは、感情ではなく、事実、証拠、時系列です。

11.1 時系列表を作る

時系列表には、次のような項目を入れます。

日付出来事証拠問題点
2025年10月1日委任契約を締結委任契約書報酬説明の有無
2025年11月15日進捗報告を依頼メール返信なし
2025年12月20日裁判期日裁判所書類報告がない
2026年1月10日預り金精算を依頼メール・振込明細明細未交付

このように整理すると、市民窓口でも、紛議調停でも、懲戒請求でも、事案を伝えやすくなります。

11.2 保存すべき資料

保存すべき資料は、少なくとも次のとおりです。

  • 委任契約書。
  • 重要事項説明書、報酬説明書、見積書。
  • 領収書、振込明細、請求書。
  • メール、LINE、SMS、チャット履歴。
  • 弁護士からの報告書、書面、メモ。
  • 裁判所、検察庁、法務局、行政庁などからの通知。
  • 和解書、判決書、調停調書、審判書。
  • 預り金明細、精算書、預り証。
  • 電話の日時・内容を記録したメモ。

録音については、事案によって適法性や利用の相当性が問題になる可能性があります。録音データを提出する場合には、いつ、誰が、どの場面で録音したものかを説明できるようにしておくべきです。

11.3 避けるべき表現

苦情や懲戒請求で避けるべきなのは、根拠のない断定です。

  • 「詐欺師です」
  • 「犯罪者です」
  • 「絶対に横領しています」
  • 「裁判官と癒着しています」
  • 「相手方と裏で結託しています」

このような表現は、証拠がない限り、申立ての信用性を下げるだけでなく、名誉毀損や不法行為の問題を招きかねません。代わりに、「〇年〇月〇日に預り金の精算を求めたが、〇年〇月〇日現在、明細の交付がない」「〇円を振り込んだが、契約書上の費目説明がない」など、事実に即して書くべきです。

以下の質問に答えると、自分がどの制度を使うべきか整理しやすくなります。

  1. 対象弁護士の氏名と所属弁護士会を特定できているか。
  2. 自分は依頼者、元依頼者、相手方、第三者のどれか。
  3. 不満の中心は、態度・説明・連絡不足か。
  4. 不満の中心は、報酬・預り金・返金・契約関係か。
  5. 弁護士に懲戒処分を求めるほどの非行を主張したいのか。
  6. 所属弁護士会に既に懲戒請求をしたのか。
  7. 所属弁護士会から懲戒しない決定や処分通知を受け取ったのか。
  8. 日弁連への異議申出期限内か。
  9. セクハラ・性別差別の相談なのか。
  10. 裁判結果への不満と、弁護士の非行を混同していないか。
  11. 証拠となる書面や記録があるか。
  12. 3年の制限にかかる可能性はないか。

答えが曖昧な場合は、まず所属弁護士会の市民窓口に相談するのが一般的です。

13.1 市民窓口向けの整理例

要点私は、〇〇弁護士に〇〇事件を依頼した者です。〇年〇月〇日に委任契約を締結し、着手金〇円を支払いました。ところが、〇年〇月〇日以降、進捗報告がなく、〇年〇月〇日、〇年〇月〇日にメールで問い合わせましたが、返信がありません。裁判所からは〇年〇月〇日に期日通知が届いています。事件の進行状況と、今後どの手続を利用すべきかについて、所属弁護士会の市民窓口に相談したいです。

13.2 紛議調停向けの整理例

要点〇〇弁護士との委任契約では、着手金〇円、報酬金は経済的利益の〇%と説明されました。しかし、事件終了後、弁護士から〇円の報酬を請求され、その計算根拠が契約書と異なると考えています。〇年〇月〇日に明細の説明を求めましたが、納得できる回答がありません。報酬額および預り金精算について、紛議調停を申し立てたいです。

13.3 懲戒請求向けの整理例

要点〇〇弁護士は、〇年〇月〇日、依頼者である私に無断で〇〇の手続を行い、その後、〇年〇月〇日まで事実を説明しませんでした。また、〇年〇月〇日に預けた〇円について、複数回の請求にもかかわらず、精算書を交付していません。これらの行為は、弁護士としての職務上の義務に反し、品位を失うべき非行に当たると考えます。証拠として、委任契約書、振込明細、メール履歴、裁判所書類を添付します。

このように、申立てでは「評価」よりも「事実」を先に書きます。制度機関が判断するのは、あなたの感情の強さではなく、事実と証拠に基づく問題性です。

Section 05

日弁連への苦情申立てでよくある質問

個別事件の判断ではなく、制度の一般的な理解として確認してください。

14.1 「日弁連は弁護士の全国組織だから、すべての苦情を直接処理してくれる」

誤解です。日弁連は全国組織ですが、一般的な苦情や最初の懲戒請求は、対象弁護士の所属弁護士会に申し立てます。日弁連は、異議申出などの後続手続で重要な役割を持ちます。

14.2 「弁護士に不満があるなら、すぐ懲戒請求すべきだ」

必ずしもそうではありません。連絡不足や説明不足の相談は市民窓口、報酬や預り金の争いは紛議調停が適する場合があります。懲戒請求は、弁護士の非行について処分を求める重い手続です。

14.3 「懲戒請求をすれば、返金や損害賠償を命じてもらえる」

誤解です。懲戒請求は、あなたと弁護士との紛争を解決したり、謝罪や金銭支払を命じる制度ではありません。金銭的解決を求めるなら、紛議調停や民事上の手続を検討する必要があります。

14.4 「裁判で負けたこと自体が懲戒理由になる」

通常はなりません。弁護士の非行と裁判結果は区別されます。問題にすべきなのは、期限徒過、虚偽説明、事件放置、利益相反、預り金問題などの具体的行為です。

14.5 「相手方弁護士が嫌な主張をしたので懲戒できる」

相手方代理人は、相手方の利益のために主張立証をします。不快・不利な主張であることだけでは懲戒理由にはなりません。問題となるには、虚偽、脅迫、差別、守秘義務違反、手続妨害など、具体的な非行性が必要です。

最後に、「日弁連に弁護士への苦情を申し立てることはできるか」を、読者が迷わない形で整理します。

あなたの状況まず行くべき窓口日弁連に直接申し立てるか
弁護士の態度・説明・連絡不足に不満がある所属弁護士会の市民窓口原則として直接ではない
報酬・預り金・返金で揉めている所属弁護士会の紛議調停原則として直接ではない
弁護士の非行について処分を求めたい所属弁護士会への懲戒請求最初から日弁連にはできない
懲戒請求後、所属弁護士会が懲戒しない決定をした日弁連への異議申出可能な場合がある
懲戒処分が軽すぎると考える日弁連への異議申出可能な場合がある
所属弁護士会の懲戒手続が相当期間終わらない日弁連への異議申出可能な場合がある
日弁連が一定の異議申出を却下・棄却した綱紀審査申出可能な場合がある
弁護士によるセクハラ・性別差別を受けた日弁連または対象制度の窓口日弁連窓口がある

結論として、日弁連は弁護士苦情制度の重要な機関であるが、通常の苦情・紛議・最初の懲戒請求の入口は、対象弁護士の所属弁護士会であると理解するのが正確です。

「日弁連に弁護士への苦情を申し立てることはできるか」と検索している人にとって最も重要なのは、「日弁連か、弁護士会か」という名称の違いではなく、自分の不満がどの制度に該当し、どの順番で申し立てるべきかです。弁護士とのトラブルでは、感情的な抗議よりも、所属弁護士会の特定、制度選択、証拠整理、期限管理が結果を左右します。

Reference

参考資料

制度案内・法令

  • 日本弁護士連合会「弁護士とトラブルになったら」
  • 日本弁護士連合会「懲戒制度」
  • 日本弁護士連合会「綱紀審査申出の方法について」
  • 日本弁護士連合会「懲戒請求事案に関する異議の申出の方法について」
  • 日本弁護士連合会「悩まずご相談ください ― 弁護士からのセクハラ、性別による差別的取扱い」
  • 日本弁護士連合会「日弁連(日本弁護士連合会)とは」
  • 日本弁護士連合会「全国の弁護士会・弁護士会連合会」
  • 日本弁護士連合会「弁護士検索」
  • 各弁護士会の市民窓口・紛議調停・懲戒制度に関する案内
  • 法律実務解説(懲戒請求と不法行為に関する判例解説)