2σ Guide

相続財産が不明なときの
調査方法と判断手順

相続財産がプラスかマイナスか分からないときに、3か月の熟慮期間を守りながら、プラス財産・マイナス財産・保証債務・税務期限を整理する実務的な進め方を解説します。

3か月 熟慮期間の基本
4層 調査の全体設計
3年 相続登記の期限
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相続財産が不明なときの 調査方法と判断手順

単純承認・ 相続放棄 ・限定承認の選択肢を残すため、最初に守るべき全体像を整理します。

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相続財産が不明なときの 調査方法と判断手順
単純承認・ 相続放棄 ・限定承認の選択肢を残すため、最初に守るべき全体像を整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 相続財産が不明なときの 調査方法と判断手順
  • 単純承認・ 相続放棄 ・限定承認の選択肢を残すため、最初に守るべき全体像を整理します。

POINT 1

  • 相続財産が不明なときは3か月と処分しない原則を最優先にする
  • 1. 相続開始を知った日を記録:3か月の起算点になり得る日を保守的に管理します。
  • 2. 財産を動かしていないか確認:売却、解約、私的利用、債務弁済の有無を整理します。
  • 3. 期間伸長を検討:調査状況と未判明事項を説明できるようにします。
  • 4. 選択肢を比較:単純承認、相続放棄、限定承認を資料で検討します。

POINT 2

  • 相続財産調査で最初に押さえる基本用語
  • プラス財産、マイナス財産、単純承認、相続放棄、限定承認、熟慮期間を整理します。
  • 相続財産が不明なときは、用語を曖昧にしたまま話を進めると判断を誤りやすくなります。
  • 制度ごとに分類が変わる可能性があるため、法律上の承継と税務上の扱いを分けて確認します。

POINT 3

  • 相続財産調査は選択権を失わないために行う
  • 処分行為
  • 預金を生活費に使う、不動産や車を売る、株式や暗号資産を売却する行為は慎重に扱います。
  • 期限徒過
  • 熟慮期間内に限定承認や相続放棄をしない場合、単純承認に関わる問題が生じ得ます。

POINT 4

  • 相続財産調査は4層で漏れを減らす
  • 1. 保全と戸籍収集を開始:死亡届、関係者連絡、自宅・郵便物・通帳・契約書の保全、財産処分をしない方針共有、初回相談予約を進めます。
  • 2. 候補の抽出と照会準備:法定相続情報一覧図、金融機関・保険会社・証券会社候補、名寄帳、登記情報、信用情報開示、生命保険契約照会を検討します。
  • 3. 資料取得と概算比較:残高証明、取引履歴、借入残高、所有不動産記録証明制度、証券保管振替機構への開示、財産目録初版を進めます。
  • 4. 仮方針と申立て準備:単純承認、相続放棄、限定承認の仮方針を決め、調査未了なら期間伸長申立てや債権者対応方針を確認します。
  • 5. 直前相談は危険:戸籍収集、申述書作成、管轄確認が必要です。

POINT 5

  • 相続財産調査の初動48時間で保全し、処分を避ける
  • 財産を動かすのではなく、写真・書類・記録を残す段階です。
  • 保全と記録
  • 持ち出し防止
  • 処分や債務承認

POINT 6

  • 相続財産のプラス財産は預貯金・不動産・証券・保険を分けて調べる
  • 残高だけでなく、取引履歴、評価、契約関係、税務上の扱いを確認します。
  • プラス財産は、種類ごとに手がかりと照会先が異なります。
  • 通帳、キャッシュカード、郵便物、年金振込通知、給与明細、家計簿、会計ソフト、抵当権者から金融機関を特定します。
  • 死亡日時点の残高証明、過去数年分の取引履歴、定期・外貨・貸金庫・借入・担保・保証の有無を確認します。

POINT 7

  • 相続財産のマイナス財産は借入・信用情報・保証・税金を別調査する
  • 信用情報だけでは見えない債務や保証債務を重点的に確認します。
  • マイナス財産は、郵便物や通帳だけでなく、信用情報機関、契約書、登記、会社資料、税務資料を組み合わせて確認します。
  • 保証債務の有無が不明で、被相続人が事業関係者である場合は、3か月以内に結論を出すのが難しいことがあります。
  • この場合、期間伸長や限定承認を含めて、弁護士等の専門家へ早めに相談する必要があります。

POINT 8

  • 相続財産が不明なときは財産目録を意思決定資料にする
  • 金額だけでなく根拠資料、確度、未確定リスク、次の調査を並べます。
  • 資料で確認済み
  • 資料はあるが金額未確定
  • 存在可能性あり

まとめ

  • 相続財産が不明なときの 調査方法と判断手順
  • 相続財産が不明なときは3か月と処分しない原則を最優先にする:単純承認・ 相続放棄 ・限定承認の選択肢を残すため、最初に守るべき全体像を整理します。
  • 相続財産調査で最初に押さえる基本用語:プラス財産、マイナス財産、単純承認、相続放棄、限定承認、熟慮期間を整理します。
  • 相続財産調査は選択権を失わないために行う:法定単純承認を避け、3か月で足りない場合の期間伸長を視野に入れます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

相続財産が不明なときは3か月と処分しない原則を最優先にする

単純承認・相続放棄・限定承認の選択肢を残すため、最初に守るべき全体像を整理します。

相続財産がプラスかマイナスか不明な場合、もっとも危険なのは、十分な確認をしないまま財産を使ったり、遺産分割を進めたり、熟慮期間を過ぎてしまうことです。民法上、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかを選ぶ必要があります。

まずは相続財産を処分しないこと、期限を保守的に管理すること、プラス財産とマイナス財産を別々に洗い出すこと、不明点が残る場合は期間伸長を検討すること、そして財産目録で判断することが基本になります。相続財産調査は、単なる財産探しではなく、選択を誤らないためのリスク評価です。

最初の原則預金の私的利用、不動産や車の売却、貴金属の換金、遺産分割協議書への署名押印は、相続放棄や限定承認に影響する可能性があります。個別事情で結論は変わるため、判断前に資料を保全します。

次の判断の流れは、相続財産が不明な段階で最初に何を守るべきかを表します。期限と財産処分の有無が選択肢に直結するため重要で、読者は上から順に、どこで専門家相談や期間伸長を検討すべきかを読み取ってください。

相続財産が不明なときの初期判断

相続開始を知った日を記録

3か月の起算点になり得る日を保守的に管理します。

財産を動かしていないか確認

売却、解約、私的利用、債務弁済の有無を整理します。

不明点が多い
期間伸長を検討

調査状況と未判明事項を説明できるようにします。

資料がそろう
選択肢を比較

単純承認、相続放棄、限定承認を資料で検討します。

Section 01

相続財産調査で最初に押さえる基本用語

プラス財産、マイナス財産、単純承認、相続放棄、限定承認、熟慮期間を整理します。

相続財産が不明なときは、用語を曖昧にしたまま話を進めると判断を誤りやすくなります。次の比較一覧は、制度や財産分類の違いを表しており、何を承継し、何を家庭裁判所で手続し、何が期限管理に関わるかを読み取るために重要です。

用語意味確認ポイント
相続財産被相続人に属していた権利義務のうち、相続で承継されるものです。現金、不動産、株式だけでなく、借入金、保証債務、未納税金も含めて確認します。
プラス財産預貯金、不動産、株式、保険、車、貴金属、事業資産など経済的価値のある財産です。死亡保険金は民法上の扱いと相続税上の扱いが異なることがあります。
マイナス財産借入金、カード残債、連帯保証、未払金、税金、損害賠償債務などです。信用情報に出ない個人間借入、保証債務、訴訟リスクを別に調べます。
単純承認プラス財産もマイナス財産も包括的に承継する選択です。調査未了のまま状態が固まると、多額債務の発覚時に不利益が大きくなります。
相続放棄被相続人の権利義務を一切承継しない選択です。親族間で「いらない」と言うだけでは足りず、家庭裁判所への申述が必要です。
限定承認得た財産の限度で債務等を弁済することを留保して相続を承認する制度です。相続人全員の共同手続、財産目録、公告、債権者対応、税務論点が問題になります。
熟慮期間相続人が承認・放棄を検討するための期間です。自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内が基本です。

死亡保険金のように、民法上は受取人固有の権利として扱われる場面が多くても、相続税上はみなし相続財産として課税対象になることがあります。制度ごとに分類が変わる可能性があるため、法律上の承継と税務上の扱いを分けて確認します。

Section 02

相続財産調査は選択権を失わないために行う

法定単純承認を避け、3か月で足りない場合の期間伸長を視野に入れます。

財産額の最大化だけを考えると、相続財産調査は危険です。相続放棄や限定承認の可能性を残すには、相続財産の私的利用、遺産分割協議書への安易な署名押印、債務を当然に相続するような回答、財産の売却や解約を避ける必要があります。

次の重要ポイントは、相続財産が不明な案件で特に判断を急がないほうがよい場面を示します。後から単純承認と評価される可能性を下げるために重要で、読者は自分がすでに行った行為と照らし合わせて確認してください。

処分行為

預金を生活費に使う、不動産や車を売る、株式や暗号資産を売却する行為は慎重に扱います。

期限徒過

熟慮期間内に限定承認や相続放棄をしない場合、単純承認に関わる問題が生じ得ます。

債務承認に見える対応

債権者に支払義務を当然に認める文書を出す前に、資料を整理して専門家に確認します。

3か月以内にすべてが確定しないことは珍しくありません。長年疎遠だった、自営業者や会社経営者だった、連帯保証の可能性がある、郵便物や通帳が散逸している、不動産や証券・保険・ネット銀行の利用が不明といった場合は、1か月半程度で進捗を確認し、2か月を過ぎても主要財産や主要債務が不明なら期間伸長を視野に入れます。

伸長準備期間伸長では、単に迷っているという説明では足りません。どの資料を調べ、何が未判明で、なぜ3か月では判断できないのかを説明できるようにしておくことが重要です。
Section 03

相続財産調査は4層で漏れを減らす

身分確認、生活痕跡、機関照会、評価判断を並行して進めます。

相続財産の調査範囲は広く、思いついた順に探すだけでは抜けが出やすくなります。次の比較表は、調査を4つの層に分けて何を確認するかを表すもので、各層の目的と主な資料を対応させて読み取ることが重要です。

調査層目的主な資料
第1層 ― 身分・権限確認誰が相続人か、誰が手続できるかを確定します。戸籍、除籍、改製原戸籍、住民票除票、法定相続情報一覧図
第2層 ― 生活痕跡調査財産・債務の手がかりを集めます。郵便物、通帳、スマホ、契約書、請求書、確定申告書、名刺、メール
第3層 ― 機関照会金融・保険・不動産・証券の情報を外部照会で補完します。銀行、信用情報機関、生命保険協会、法務局、証券保管振替機構
第4層 ― 評価・法的判断承認、放棄、限定承認、伸長を判断します。財産目録、負債一覧、評価資料、専門家意見

4層は順番に終えてから次へ進むものではなく、並行して動かします。戸籍収集を待つ間に郵便物を整理し、銀行名が分かったら残高証明や取引履歴を請求し、不動産の手がかりがあれば固定資産税通知書や登記情報を確認します。

次の時系列は、初動から3か月直前までにどの作業を置くかを表します。期限を過ぎてからでは家庭裁判所手続の準備が難しくなるため重要で、各時期の重点を上から順に確認してください。

0日から2週間

保全と戸籍収集を開始

死亡届、関係者連絡、自宅・郵便物・通帳・契約書の保全、財産処分をしない方針共有、初回相談予約を進めます。

2週間から1か月

候補の抽出と照会準備

法定相続情報一覧図、金融機関・保険会社・証券会社候補、名寄帳、登記情報、信用情報開示、生命保険契約照会を検討します。

1か月から2か月

資料取得と概算比較

残高証明、取引履歴、借入残高、所有不動産記録証明制度、証券保管振替機構への開示、財産目録初版を進めます。

2か月から2か月半

仮方針と申立て準備

単純承認、相続放棄、限定承認の仮方針を決め、調査未了なら期間伸長申立てや債権者対応方針を確認します。

3か月直前

直前相談は危険

戸籍収集、申述書作成、管轄確認が必要です。限定承認は相続人全員の共同申述と財産目録も必要になりやすく、直前対応には向きません。

Section 04

相続財産調査の初動48時間で保全し、処分を避ける

財産を動かすのではなく、写真・書類・記録を残す段階です。

初動で重要なのは、財産を動かすことではなく、保全して記録することです。自宅、金庫、机、書類棚、郵便物を写真で記録し、通帳、カード、請求書、督促状を一か所に集めます。スマートフォン、パソコン、メール、クラウド、家計簿アプリ、会計ソフトの存在も確認します。

次の比較一覧は、初動で進めてよい行動と、相続放棄・限定承認の可能性を残すため慎重に扱う行動を分けたものです。左右の違いが選択肢の維持に関わるため重要で、読者は「記録・保全」は進め、「換金・分配・承認に見える行為」は止めると読み取ってください。

進める

保全と記録

通帳、契約書、請求書、督促状、車、不動産、貴金属、美術品を写真や一覧で残し、保管場所を記録します。

共有する

持ち出し防止

相続人間で、財産を勝手に持ち出さないこと、書類を捨てないこと、処分前に確認することを共有します。

避ける

処分や債務承認

預金引出し、不動産売却、高価な形見分け、株式売却、債務を当然に引き受ける回答、遺産分割協議書への署名押印は慎重に扱います。

葬儀費用、医療費、公共料金、税金の支払いは避けられない場面もありますが、相続財産から支払うことの法的評価は個別事情によって問題になり得ます。相続放棄の可能性がある場合は、支払原資、領収書、支払理由を明確にし、専門家に確認します。

Section 05

相続財産のプラス財産は預貯金・不動産・証券・保険を分けて調べる

残高だけでなく、取引履歴、評価、契約関係、税務上の扱いを確認します。

プラス財産は、種類ごとに手がかりと照会先が異なります。次の一覧は、預貯金、不動産、証券、保険、動産、事業資産の調査方法をまとめたもので、各財産の「入口資料」と「次に確認する事項」を読み取るために重要です。

預貯金

通帳、キャッシュカード、郵便物、年金振込通知、給与明細、家計簿、会計ソフト、抵当権者から金融機関を特定します。死亡日時点の残高証明、過去数年分の取引履歴、定期・外貨・貸金庫・借入・担保・保証の有無を確認します。

残高履歴も確認

不動産

固定資産税納税通知書、評価証明、名寄帳、登記事項証明書、権利証、売買・賃貸借契約、管理費請求、住宅ローン資料を確認します。所有不動産記録証明制度は全国の登記情報から名義人単位で探す補完手段です。

登記処分費

株式・投資信託

証券会社の郵便物、配当金通知、株主総会招集通知、NISA・特定口座年間取引報告書、通帳、メール、確定申告書を確認します。証券保管振替機構の開示では口座管理機関を把握し、残高や履歴は各社へ照会します。

口座

生命保険・損害保険

保険証券、保険会社の郵便物、通帳やカードの保険料支払、控除証明書、共済・互助会資料を見ます。契約者、被保険者、保険料負担者、受取人、死亡保険金額、解約返戻金、質権、契約者貸付を確認します。

受取人税務

自動車・貴金属・美術品

車検証、自動車税通知、保険、ローン、駐車場契約、写真、鑑定書、領収書を保存します。残価設定ローン、リース、所有権留保がある場合は債務や返還義務も確認します。

評価

事業資産・会社関係

確定申告書、青色申告決算書、会計ソフト、売掛金、買掛金、借入金、会社株式、役員貸付金・借入金、個人保証、税務調査や労務紛争を確認します。会社財産と個人財産は混同しません。

事業保証

預貯金は残高だけを確認しても不十分です。直前の多額引出しから、生前贈与、使途不明金、債務弁済、詐取、介護費用が問題になることがあります。不動産も評価額だけでなく、売却可能性、固定資産税、管理費、解体費、境界、共有、担保を確認します。

Section 06

相続財産のマイナス財産は借入・信用情報・保証・税金を別調査する

信用情報だけでは見えない債務や保証債務を重点的に確認します。

マイナス財産は、郵便物や通帳だけでなく、信用情報機関、契約書、登記、会社資料、税務資料を組み合わせて確認します。次の比較表は、見つけやすい債務と見落としやすい債務の違いを表しており、信用情報に出ない項目を別途調べる必要性を読み取るために重要です。

調査対象主な確認資料注意点
借入金・カード債務金銭消費貸借契約書、ローンカード、返済予定表、督促状、通帳引落し、抵当権登記残高、遅延損害金、保証人、担保を確認します。
信用情報機関CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターへの死亡開示や相続人開示登録対象や保有期間に限界があり、すべての債務が出るわけではありません。
信用情報に出にくい債務個人間借入、事業買掛金、税金、医療費、訴訟、管理費、リース、会費郵便物、契約書、請求書、通帳、関係者聞き取りが重要です。
保証債務保証契約書、根保証契約書、会社決算書、借入契約書、抵当権・根抵当権、公正証書主債務者が返済中だと表面化せず、会社経営者や不動産賃貸業者では特に注意します。
税金・社会保険料準確定申告資料、相続税資料、固定資産税、住民税、国民健康保険料資料熟慮期間3か月、準確定申告4か月、相続税申告10か月、相続登記3年を混同しません。

保証債務の有無が不明で、被相続人が事業関係者である場合は、3か月以内に結論を出すのが難しいことがあります。この場合、期間伸長や限定承認を含めて、弁護士等の専門家へ早めに相談する必要があります。

次の割合の比較は、4つの期限の長短を視覚的に整理したものです。期限の長さが違うため同時に管理する必要があり、短いものほど早く準備が必要だと読み取ってください。

熟慮期間
3か月
準確定申告
4か月
相続税申告
10か月
相続登記
3年
3年を100%として相対的な長さを示しています。法的性質はそれぞれ異なるため、短い期限から優先して管理します。
Section 07

相続財産が不明なときは財産目録を意思決定資料にする

金額だけでなく根拠資料、確度、未確定リスク、次の調査を並べます。

財産目録は、財産を並べるだけの一覧ではありません。相続放棄、限定承認、単純承認、期間伸長を判断する資料です。次の表は、金額だけでなく根拠資料、確度、未確定リスク、次の調査を一緒に見る設計を表しており、どの項目が未確認かを読み取るために重要です。

区分内容金額根拠資料確度未確定リスク次の調査
プラスA銀行普通預金1,200,000円残高証明取引履歴未確認過去3年履歴請求
プラス自宅土地建物20,000,000円固定資産評価証明売却可能性不明査定・登記確認
マイナスBカード残債500,000円利用明細遅延損害金会社照会
マイナス会社借入保証不明決算書に記載多額化可能性金融機関照会

評価額は、相続税評価、固定資産税評価、時価、売却可能価格、清算価値が一致しません。不動産は固定資産評価額があっても、その金額ですぐ売れるとは限らず、山林、農地、共有持分、老朽家屋、借地、境界未確定地、再建築不可物件では維持費や処分費も問題になります。

次の一覧は、財産目録の確度ランクを表します。資料の強さで優先順位を付けることが、期間伸長申立てや専門家相談で未調査事項を説明するために重要です。

A

資料で確認済み

残高証明、登記事項証明書、契約書、請求書で確認できている項目です。

B

資料はあるが金額未確定

契約書はあるが残高が未確認、評価が未了など、次の確認で判断精度が上がる項目です。

C

存在可能性あり

通帳引落し、郵便物、聞き取りから存在が示唆される項目です。

D

噂・推測のみ

親族の話や過去の記憶だけで、裏付け資料がない項目です。

Section 08

相続財産がプラスかマイナスか不明なときの判断モデル

明らかにマイナス、明らかにプラス、限定承認、期間伸長の分岐を整理します。

最終判断は、印象ではなく財産目録と未確定リスクで行います。次の判断の流れは、相続財産の状況に応じて相続放棄、単純承認、限定承認、期間伸長を検討する順番を表しており、どの選択肢にも条件と限界があることを読み取るために重要です。

プラスかマイナスか不明なときの意思決定

財産目録で概算比較

プラス、マイナス、未確定リスクを分けます。

明らかにマイナス
相続放棄を検討

次順位相続人への影響も確認します。

明らかにプラス
単純承認を検討

事業保証や訴訟リスクが残る場合は慎重に見ます。

不明だが財産が残る可能性

限定承認は制度上の候補ですが、共同手続、財産目録、公告、債権者対応、税務論点があります。

調査不足で判断できない

信用情報、残高証明、不動産評価、保証債務、戸籍、遺言、債権者請求を確認中なら期間伸長を検討します。

一人暮らしの親の生活状況が不明な場合は、郵便物、通帳、スマホ、年金振込口座、公共料金、保険料引落しから金融機関と保険会社を特定し、3週間以内に主要口座が分からなければ期間伸長も視野に入れます。会社経営者では、会社借入、役員貸付金、役員借入金、個人保証、担保提供を確認します。不動産は評価額だけでなく処分コストを含めて見ます。

Section 09

相続財産調査で弁護士等へ相談すべき場面

督促、保証債務、期限切迫、相続人間紛争、不動産問題では早めに相談します。

相続財産調査には、司法書士、税理士、行政書士、金融機関、保険会社、不動産会社など複数の専門家が関与します。次の一覧は、専門家ごとの役割を表しており、どの問題を誰に相談するかを読み取るために重要です。

弁護士

債務、相続放棄、限定承認、期間伸長、債権者対応、相続人間紛争、訴訟、使い込み、遺産分割調停に強みがあります。

高リスク

司法書士

相続登記、法定相続情報一覧図、不動産登記、相続放棄申述書類の作成支援などで関与します。

登記

税理士

準確定申告、相続税申告、財産評価、死亡保険金、事業承継、みなし譲渡、債務控除を確認します。

税務

不動産鑑定士・宅建業者

不動産の時価、売却可能性、処分コスト、賃貸状況の評価に関与します。

評価

公認会計士・企業法務専門家

会社経営者の会社財務、保証債務、役員貸付金、役員借入金、株式評価、事業継続リスクを分析します。

事業

債権者から督促や訴状が届いている、法定単純承認が不安、相続人間で使い込みや隠匿が疑われる、連帯保証や事業債務がある、限定承認を検討している、3か月が迫っている、他の相続人が協力しない、不動産の共有や境界が問題になる場合は、早めの相談が重要です。

相談時は、死亡日と相続人であることを知った日のメモ、戸籍、住民票除票、相続関係図、財産目録の暫定版、通帳、残高証明、取引履歴、借入契約書、督促状、請求書、不動産資料、保険証券、証券資料、確定申告書、相続人間のやり取り、すでに行った支払や名義変更の一覧を用意します。

Section 10

相続財産調査のチェックリストとよくある誤解

基本資料、プラス財産、マイナス財産、期限を確認し、誤解を避けます。

調査漏れを防ぐには、基本資料、プラス財産、マイナス財産、期限を分けて確認します。次の一覧は、チェック項目を分類したもので、どの分野に未確認が残っているかを読み取るために重要です。

基本資料

相続人と権限

死亡記載のある戸籍、出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍、住民票除票または戸籍附票、法定相続情報一覧図、遺言書、相続人関係図を確認します。

プラス財産

財産の入口

現金、貸金庫、預金、不動産、株式、投資信託、生命保険、自動車、貴金属、事業資産、会員権、知的財産権、暗号資産を確認します。

マイナス財産

負債と潜在リスク

住宅ローン、銀行借入、カード残債、消費者金融、リース、保証、医療費、施設費、未払家賃、税金、訴訟、事業上の未払金を確認します。

期限

複数期限の管理

熟慮期間3か月、期間伸長、相続放棄、限定承認、準確定申告4か月、相続税申告10か月、相続登記3年を管理します。

「財産をもらわない」と親族に言えば相続放棄になる、信用情報を見れば借金が全部分かる、不動産があれば必ずプラス、3か月を過ぎても借金を知らなければ必ず放棄できる、限定承認なら簡単に安全になる、という理解はいずれも注意が必要です。個別事情によって結論が変わるため、資料に基づいて判断します。

網羅性と期限管理が核心です

3か月の熟慮期間を最優先で管理し、相続財産を処分せず、プラス財産とマイナス財産を同時並行で調べ、信用情報・不動産・保険・証券・税務・事業債務を機関照会で補完します。判断できない場合は、期限伸長や専門家相談を早期に検討します。

Reference

この記事の参考情報源

法令・裁判所資料

  • e-Gov法令検索「民法」
  • 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」
  • 裁判所「相続の放棄の申述」
  • 裁判所「相続の限定承認の申述」

不動産・税務資料

  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • 法務省「所有不動産記録証明制度について」
  • 法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」
  • 国税庁「納税者が死亡したときの確定申告」
  • 国税庁「相続税の申告と納税」
  • 国税庁「相続税の課税対象になる死亡保険金」

金融・保険・証券資料

  • CIC「法定相続人開示に関する資料」
  • 日本信用情報機構「法定相続人等による開示」
  • 全国銀行協会「全国銀行個人信用情報センターに関する案内」
  • 生命保険協会「生命保険契約照会制度のご案内」
  • 証券保管振替機構「登録済加入者情報の開示請求」
  • 全国銀行協会「預金相続の手続の流れ」