2σ Guide

株式譲渡契約書で
特にチェックすべき5つの条項

非上場会社のM&A事業承継、スタートアップ株式売買で問題になりやすい対象株式、承認、表明保証、補償、解除までを立体的に整理します。

5 重点条項
5%超 大量保有報告の目安
200億/50億 企業結合届出の売上高目安
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株式譲渡契約書で 特にチェックすべき5つの条項

非上場会社の M&A、事業承継、スタートアップ株式売買で問題になりやすい対象株式、承認、表明保証、補償、解除までを立体的に整理します。

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株式譲渡契約書で 特にチェックすべき5つの条項
非上場会社の M&A、事業承継、スタートアップ株式売買で問題になりやすい対象株式、承認、表明保証、補償、解除までを立体的に整理します。
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  • 株式譲渡契約書で 特にチェックすべき5つの条項
  • 非上場会社の M&A、事業承継、スタートアップ株式売買で問題になりやすい対象株式、承認、表明保証、補償、解除までを立体的に整理します。

POINT 1

  • 株式譲渡契約書で特にチェックすべき5つの条項の全体像
  • 対象株式・譲渡価額・支払・クロージング
  • 譲渡制限・承認・前提条件
  • 表明保証
  • 補償・損害賠償・責任制限
  • 誓約事項・解除・競業避止・秘密保持・紛争解決
  • 対象株式、承認、表明保証、補償、解除まで、契約レビューの骨格を先に整理します。

POINT 2

  • 株式譲渡契約書の法的前提と非上場会社での注意点
  • 会社法、金融商品取引法、独占禁止法、税務評価を、契約条項に落とし込む前提として確認します。
  • どの資料を確認するかによって、譲渡できる株式か、会社に対抗できるか、届出や税務検討が必要かを読み取れます。
  • 上場株式や大規模取得では、取得割合や売上高の基準が契約スケジュールに影響します。

POINT 3

  • 株式譲渡契約書の条項1 ― 対象株式・譲渡価額・支払・クロージング
  • 1. 対象株式・価格・条件を合意:対象株式、譲渡価額、支払方法、前提条件、引渡書類、責任制限を契約書にまとめます。
  • 2. 承認・同意・届出を処理:譲渡承認、先買権放棄、金融機関同意、許認可、独禁法届出、DD後の是正を確認します。
  • 3. 株式移転と代金支払を同時に実行:送金、株券交付、名義書換請求、議事録、役員変更、担保解除、保証解除を同時に進めます。
  • 4. 名義書換と証拠を保存:株主名簿、入金記録、引渡書類、議事録、保証解除通知などを保存し、事後紛争に備えます。

POINT 4

  • 株式譲渡契約書の条項2 ― 譲渡制限・承認・前提条件
  • 1. 定款・株主名簿・株券を確認:譲渡制限、承認機関、種類株式、株券発行の有無を先に確認します。
  • 2. 第三者同意や届出の有無を確認:株主間契約、融資契約、許認可、独禁法、金融商品取引法の条件を洗い出します。
  • 3. 未充足条件が残る場合:期限、費用負担、解除権、クロージング延期、代金留保を契約書に明記します。
  • 4. 条件充足を証拠化:承認議事録、同意書、放棄書、届出受理、名義書換完了を引渡書類として確認します。

POINT 5

  • 株式譲渡契約書の条項3 ― 表明保証で情報の非対称性を補正する
  • 契約締結権限と社内承認
  • 買主が適法に設立・存続し、契約締結権限と必要な社内承認を備えているかを確認します。
  • 代金支払能力
  • 譲渡代金を支払う資力または融資確約があり、分割払いの場合も担保や保証と整合するかを確認します。

POINT 6

  • 株式譲渡契約書の条項4 ― 補償・損害賠償・責任制限
  • 通知と期限
  • 第三者請求を受けた場合の通知期限、通知方法、遅れた場合の効果を定めます。
  • 防御への関与
  • 売主が防御に関与できるか、誰が 弁護士や税理士を選任するかを定めます。

POINT 7

  • 株式譲渡契約書の条項5 ― 誓約事項・解除・競業避止・秘密保持・紛争解決
  • 1. 重要資料と権限を引き渡す:会計帳簿、契約書、印鑑、通帳、ID、システム権限、許認可資料を引き渡します。
  • 2. 関係者への説明に協力する:取引先、従業員、金融機関、行政窓口への説明や名義変更に協力します。
  • 3. 税務・訴訟・行政対応を補助する:過年度資料の保存・提供、税務調査、訴訟、行政対応、保証解除の継続対応を行います。
  • 4. 協力義務の範囲を閉じる:期間、報酬、交通費、責任範囲、秘密保持の存続を確認します。

POINT 8

  • 株式譲渡契約書の5つの条項を横断して確認する
  • 株式そのものを確認
  • 実行条件を確認
  • 支払と移転を接続
  • 過去リスクを配分
  • 将来義務を整理
  • 条項間の矛盾を見つけるため、株式、承認、支払、DD、補償、税務を横串で確認します。

まとめ

  • 株式譲渡契約書で 特にチェックすべき5つの条項
  • 株式譲渡契約書の法的前提と非上場会社での注意点:会社法、金融商品取引法、独占禁止法、税務評価を、契約条項に落とし込む前提として確認します。
  • 株式譲渡契約書の条項1 ― 対象株式・譲渡価額・支払・クロージング:何を、いくらで、いつ、どの書類と引き換えに移すかを一義的にします。
  • 株式譲渡契約書の条項2 ― 譲渡制限・承認・前提条件:契約しても実行できない事態を避けるため、会社法・定款・契約・規制の条件を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

株式譲渡契約書で特にチェックすべき5つの条項の全体像

対象株式、承認、表明保証、補償、解除まで、契約レビューの骨格を先に整理します。

株式譲渡契約書は、株式を売り、代金を支払う合意を書面にするだけの文書ではありません。非上場会社のM&A、事業承継、親族間や役員間の株式移転、スタートアップの株式売買、少数株主からの持分取得では、わずかな表現の違いが支払不能、株主名簿の名義書換未了、譲渡承認の欠落、表明保証違反、補償請求、経営者保証、税務評価の問題につながります。

次の一覧は、このページで扱う5つの条項が何を守るためのものかを示しています。株式譲渡契約書の確認では、各条項を別々に読むだけでなく、取引実行、リスク配分、クロージング後の関係まで一体で読むことが重要です。

条項1

対象株式・譲渡価額・支払・クロージング

何株を、いくらで、いつ、どの書類と引き換えに移転するかを固める条項です。

条項2

譲渡制限・承認・前提条件

会社法、定款、契約、許認可、金融機関、独禁法などの条件を確認する条項です。

条項3

表明保証

売主と買主がどの事実を真実かつ正確として保証するかを定める条項です。

条項4

補償・損害賠償・責任制限

違反時に誰がどの損害を、いつまで、いくらまで負担するかを決める条項です。

条項5

誓約事項・解除・競業避止・秘密保持・紛争解決

契約締結後からクロージング後までの行動、解除、情報管理、紛争処理を設計する条項です。

重要なのは、対象株式の存在、売主の権利、会社法上の譲渡手続、代金支払、クロージング条件、デュー・ディリジェンス、表明保証、補償、解除、税務、許認可、金融規制、独占禁止法上の届出可能性を、ひとつの取引構造として確認することです。

次の強調部分は、株式譲渡契約書のレビューで最初に押さえる結論を表しています。個別条項の細かな文言より先に、株式移転、支払、事後責任の3点がつながっているかを読み取ることが重要です。

条項単体ではなく取引全体で見る

良い株式譲渡契約書とは、長い契約書ではなく、対象会社と取引構造に応じてリスク配分が明確な契約書です。

注意このページは一般的な情報提供です。個別案件の法律意見、税務判断、会計判断、投資助言ではありません。実際の契約締結前には、弁護士、税理士、公認会計士、司法書士、金融・M&A実務家などの専門家に確認する必要があります。
Section 02

株式譲渡契約書の条項1 ― 対象株式・譲渡価額・支払・クロージング

何を、いくらで、いつ、どの書類と引き換えに移すかを一義的にします。

対象株式・譲渡価額・支払・クロージング条項は、株式譲渡契約書の中心です。対象株式、譲渡価額、支払方法、クロージング、引渡書類が曖昧な契約書は、取引の根幹が曖昧な契約書になります。

次の表は、対象株式の特定で確認する項目をまとめたものです。株主名簿、定款、株券、契約上の制限を並べて確認することで、売主が本当に譲渡できる株式かを読み取れます。

確認項目チェックポイント
発行会社商号、本店所在地、法人番号、設立準拠法を特定します。
株式の種類普通株式、種類株式、優先株式、新株予約権付株式の有無を確認します。
株式数譲渡株式数、発行済株式総数、自己株式、潜在株式との整合性を確認します。
議決権議決権割合、無議決権株式、拒否権付種類株式を確認します。
売主の権利真正な株主か、質権、担保、差押え、信託設定がないかを確認します。
株券株券発行会社か、株券番号、紛失、株券不所持制度を確認します。
株主名簿現在の名義、過去の譲渡履歴、名義株や借名株の疑いを確認します。
契約上の制限投資契約、株主間契約、先買権、共同売却権、譲渡禁止特約を確認します。

譲渡価額では、固定価格か変動価格か、価格調整を入れるか、分割払いにするかが紛争の火種になります。次の表では、価格に関する論点ごとに、計算方法や証拠化すべき事項を読み取れます。

論点実務上の確認事項
固定価格か変動価格か契約締結時に確定するのか、クロージング時に調整するのかを明確にします。
企業価値評価EBITDA、純資産、DCF、類似会社比較、税務評価との関係を整理します。
株価調整運転資本、純有利子負債、純資産、現預金、在庫、未払金の扱いを定めます。
アーンアウト売上、利益、契約継続、KPI達成による追加対価の条件を明確にします。
分割払い支払期日、期限の利益喪失、担保、保証、遅延損害金を確認します。
役員退職慰労金等譲渡対価との区別、税務処理、会社法上の決議を確認します。
関連者間取引低額譲渡、高額譲渡、みなし贈与、寄附金、役員給与の問題を検討します。

クロージングは、契約で定めた条件を満たしたうえで、株式移転、代金支払、名義書換、必要書類の交付、役員変更、担保解除、経営者保証の解除や移行を実行する取引完了日です。次の時系列は、売主と買主の同時履行をどう組み立てるかを示し、どの段階で支払と株式移転が対応するかを読み取るためのものです。

契約締結

対象株式・価格・条件を合意

対象株式、譲渡価額、支払方法、前提条件、引渡書類、責任制限を契約書にまとめます。

条件充足

承認・同意・届出を処理

譲渡承認、先買権放棄、金融機関同意、許認可、独禁法届出、DD後の是正を確認します。

クロージング日

株式移転と代金支払を同時に実行

送金、株券交付、名義書換請求、議事録、役員変更、担保解除、保証解除を同時に進めます。

完了確認

名義書換と証拠を保存

株主名簿、入金記録、引渡書類、議事録、保証解除通知などを保存し、事後紛争に備えます。

株価調整条項を置く場合は、基準日、会計基準、計算主体、異議手続、会計士の決定の扱い、調整額の上限を明記する必要があります。分割払いでは、担保、保証、期限の利益喪失、相殺、エスクローなどの回収手段まで確認します。

Section 03

株式譲渡契約書の条項2 ― 譲渡制限・承認・前提条件

契約しても実行できない事態を避けるため、会社法・定款・契約・規制の条件を確認します。

譲渡制限・承認・前提条件条項は、その株式譲渡を本当に実行できるかを確認するための条項です。契約書に売買の合意があっても、会社法上の承認、株主間契約上の同意、金融機関の承諾、許認可、独占禁止法上の届出、投資契約上の先買権処理などが未了であれば、予定どおりクロージングできないことがあります。

譲渡制限株式では、承認機関を思い込みで判断しないことが重要です。次の表は、前提条件を分類し、どの条件が未了だとクロージングに影響するかを読み取るためのものです。

分類前提条件の例
会社法上の条件譲渡承認決議、株主名簿名義書換、株券交付、役員変更決議
契約上の条件先買権放棄、共同売却権の処理、投資家同意、株主間契約の終了
金融上の条件金融機関同意、担保解除、経営者保証解除、借入金期限の利益維持
許認可上の条件事業許認可、行政届出、資格要件、業法上の株主変更届
独禁法上の条件公正取引委員会への届出、待機期間経過、排除措置命令なし
上場株式関連公開買付手続、大量保有報告、適時開示、インサイダー情報管理
デュー・ディリジェンス重大な問題が発見されていないこと、特定事項の是正
表明保証契約締結時およびクロージング時に表明保証が真実正確であること
事業状態重大な悪影響、いわゆるMACが発生していないこと

前提条件は買主保護だけではなく、売主にとっても条件未充足なら株式を渡さなくてよい、買主の資金調達未了で拘束され続けない、保証解除ができなければ解除できるという意味を持ちます。次の判断の流れは、契約締結後からクロージングまでの管理順序を示し、どこで停止や解除を検討するかを読み取るためのものです。

前提条件の確認順序

定款・株主名簿・株券を確認

譲渡制限、承認機関、種類株式、株券発行の有無を先に確認します。

第三者同意や届出の有無を確認

株主間契約、融資契約、許認可、独禁法、金融商品取引法の条件を洗い出します。

未充足条件が残る場合

期限、費用負担、解除権、クロージング延期、代金留保を契約書に明記します。

条件充足を証拠化

承認議事録、同意書、放棄書、届出受理、名義書換完了を引渡書類として確認します。

契約締結日とクロージング日が離れる場合は、通常の業務範囲を超える行為、配当、役員報酬増額、資産処分、借入、保証、設備投資、重要契約の変更、従業員の大量退職、主要取引先喪失などの通知義務や制限を置きます。

費用面では、届出、専門家、担保解除、登録免許税、司法書士費用などを誰が負担するかも確認が必要です。期限面では、いつまでに条件を満たすか、未充足の場合に誰が解除できるかを定めます。

Section 04

株式譲渡契約書の条項3 ― 表明保証で情報の非対称性を補正する

売主と買主が保証できる事実の範囲、例外、期間、責任上限を確認します。

表明保証とは、契約当事者が一定の事実が真実かつ正確であることを相手方に表明し、保証する条項です。英語ではRepresentations and Warrantiesと呼ばれます。対象会社の情報は通常、売主側が多く持っているため、買主はDDで把握できないリスクを表明保証で補います。

売主の表明保証は、売主自身に関する事項と対象会社に関する事項に分かれます。次の表は、どの表明保証が株式の権利、会社状態、未開示リスクに関係するかを読み取るためのものです。

分類主な表明保証事項
売主の権限契約締結権限、必要な社内承認、法令・契約違反なし
株式の権利適法な所有、担保権、質権、譲渡予約、信託、差押えなし
株式数発行済株式、自己株式、種類株式、新株予約権、潜在株式の正確性
対象会社の存続適法な設立・存続、破産・民事再生等なし
財務諸表会計基準に従った作成、重要な虚偽記載なし
簿外債務未計上債務、保証債務、偶発債務、未払税金なし
税務申告納付、税務調査、移転価格、源泉徴収、消費税処理
契約重要契約の有効性、解除事由なし、チェンジ・オブ・コントロール条項
資産所有権、担保、リース、知的財産、ITシステム、在庫
労務未払残業代、社会保険、ハラスメント、労働紛争
許認可事業許認可の有効性、更新、株主変更届の要否
訴訟・紛争係争中・潜在的紛争、行政調査、不祥事
コンプライアンス贈収賄、反社、個人情報、下請法、独禁法、輸出管理
環境・保険土壌汚染、廃棄物、アスベスト、主要保険の付保状況

買主の表明保証も軽視できません。次の一覧は、売主が買主側に確認したい事項を整理しており、代金支払、法令遵守、経営者保証解除、情報利用の安全性を読み取るために重要です。

契約締結権限と社内承認

買主が適法に設立・存続し、契約締結権限と必要な社内承認を備えているかを確認します。

代金支払能力

譲渡代金を支払う資力または融資確約があり、分割払いの場合も担保や保証と整合するかを確認します。

法令・規制対応

反社会的勢力排除、独占禁止法、金融商品取引法、業法上の手続を履行できるかを確認します。

経営者保証と情報利用

経営者保証の解除・借換え能力、重要情報の不正利用防止、従業員・取引先への対応方針を確認します。

表明保証条項では、範囲を広げるか狭めるかだけでなく、限定方法をどう設計するかが重要です。次の表は、限定表現ごとの意味と、曖昧なまま残すと争点になりやすい箇所を読み取るためのものです。

限定方法意味チェックポイント
重要性限定重大な事項に限る重大の基準が曖昧すぎないかを確認します。
知識限定売主が知る限り誰の知識か、合理的調査義務を含むかを確認します。
期間限定特定期間の事項に限る税務、労務、環境は長期リスクが残る場合があります。
金額限定一定額以上に限る少額多数の損害をどう扱うかを確認します。
開示例外開示資料に記載された事項を除外開示資料の範囲と特定方法を明確にします。
DD認識除外買主が知っていた事項を除外いわゆるサンドバギングの可否を明確にします。
調整点小規模な親族間譲渡と第三者M&Aでは、必要な表明保証の範囲が異なります。DD結果、取引価格、売主の関与度、対象会社のリスク、補償上限との整合性を確認することが重要です。
Section 05

株式譲渡契約書の条項4 ― 補償・損害賠償・責任制限

違反が起きた場合の請求範囲、期間、上限、第三者請求への対応を定めます。

補償条項は、契約違反や表明保証違反があった場合に、どの範囲の損害を、誰が、どの期間、いくらまで負担するかを定める条項です。英語ではIndemnityと呼ばれます。民法の一般規定だけに委ねると、損害範囲、因果関係、予見可能性、過失、請求期間、第三者請求対応、税務損害、専門家費用、逸失利益、補償上限などが不明確になります。

補償条項では、まず何が起きたら補償の対象になるかを定めます。次の表は、発動事由と典型例を並べ、DDで把握された特定リスクを個別補償にする必要があるかを読み取るためのものです。

発動事由
表明保証違反財務諸表が不正確、簿外債務が存在、税務滞納が発覚
誓約違反クロージング前に重要資産を処分、従業員を不当に解雇
個別補償事項特定訴訟、税務調査、未払残業代、環境汚染、顧客クレーム
クロージング未履行株券交付、名義書換、代金支払、保証解除が未了
法令違反許認可違反、個人情報漏えい、反社取引、贈収賄

補償対象損害には、直接損害、通常損害、特別損害、逸失利益、専門家費用、税金、延滞税、加算税、行政罰、課徴金、制裁金、第三者からの請求額、企業価値の減少、レピュテーション損害などがあり得ます。どこまで含めるかは売主と買主の重要な交渉事項です。

責任制限は、補償条項の中でも特に交渉が激しくなります。次の表は、上限、下限、期間、免責、重大違反例外を並べ、売主の過大責任と買主の回収不足のどちらが問題になるかを読み取るためのものです。

責任制限内容
存続期間表明保証違反をいつまで請求できるかを定めます。
上限額補償総額の上限を、譲渡対価の何%か、全額かで定めます。
下限額一定額未満の少額請求を排除するかを定めます。
バスケット損害累計が一定額を超えた場合に補償するかを定めます。
デ・ミニミス個別損害が一定額未満なら算入しないかを定めます。
免責事項買主の認識済み事項、開示事項、会計引当済み事項を除外するかを定めます。
控除保険金、税効果、第三者回収額を控除するかを定めます。
重大違反例外詐欺、故意、基本的表明保証違反を上限対象外とするかを定めます。

第三者請求への対応は、補償請求の実務で見落とされやすい部分です。次の一覧は、税務署、従業員、取引先、顧客、行政機関などから請求や調査が来たときの手続を示し、二次紛争を防ぐために何を決めておくべきかを読み取るためのものです。

通知と期限

第三者請求を受けた場合の通知期限、通知方法、遅れた場合の効果を定めます。

防御への関与

売主が防御に関与できるか、誰が弁護士や税理士を選任するかを定めます。

和解の同意

和解に売主の同意が必要か、同意しない場合の手続を定めます。

費用と減額

防御費用の負担、買主が対応を怠った場合の補償額減額を定めます。

表明保証保険を利用する場合もありますが、免責、除外事項、保険金額、保険料、DDレポート提出、引受審査があり万能ではありません。小規模案件では費用対効果を慎重に見ます。

Section 06

株式譲渡契約書の条項5 ― 誓約事項・解除・競業避止・秘密保持・紛争解決

契約締結後からクロージング後までの行動と、離脱・紛争処理の条件を定めます。

5つ目の条項群は、契約締結後からクロージングまで、そしてクロージング後の関係を管理する条項です。株式と代金の交換だけでなく、売主、買主、対象会社がその後どのように行動するかを定める必要があります。

クロージング前の誓約事項は、対象会社の価値を毀損させないために重要です。次の表は、どの行為を制限するかを整理し、通常の事業運営と買主保護のバランスを読み取るためのものです。

項目典型的な内容
資産処分重要資産の売却、担保設定、無償譲渡の禁止
財務新規借入、保証、配当、役員報酬増額、貸付けの制限
契約重要契約の変更・解除、新規大型契約の締結制限
人事重要役職員の解雇、採用、報酬変更、退職金支給の制限
株式新株発行、自己株式取得、新株予約権発行の禁止
税務通常と異なる税務処理、申告方針変更の制限
情報重大事象発生時の通知義務

クロージング後も、引継ぎ、資料提供、税務調査、訴訟、行政対応、経営者保証解除の継続対応などが残ります。次の時系列は、株式譲渡後の協力義務をどの順序で整理するかを示し、期間、報酬、責任範囲をどこで明確にするかを読み取るためのものです。

直後

重要資料と権限を引き渡す

会計帳簿、契約書、印鑑、通帳、ID、システム権限、許認可資料を引き渡します。

初期

関係者への説明に協力する

取引先、従業員、金融機関、行政窓口への説明や名義変更に協力します。

一定期間

税務・訴訟・行政対応を補助する

過年度資料の保存・提供、税務調査、訴訟、行政対応、保証解除の継続対応を行います。

終了時

協力義務の範囲を閉じる

期間、報酬、交通費、責任範囲、秘密保持の存続を確認します。

競業避止義務や勧誘禁止義務は、買主が取得した事業価値を守るために置かれます。ただし、職業選択の自由や営業の自由を制約するため、次の表にある期間、地域、事業範囲、対象者、例外を合理的に限定することが重要です。

項目検討例
期間クロージング後2年、3年、5年など。長すぎる場合は慎重に検討します。
地域対象会社の営業地域、既存顧客所在地、国内全域などを検討します。
事業範囲対象会社が現に営む事業または準備中の事業に限定します。
対象者売主本人、売主の支配会社、親族会社、役員等を明確にします。
例外少数株式投資、既存事業、買主承諾、公開株式保有などを検討します。

秘密保持条項では、秘密情報の定義、除外情報、利用目的、開示可能な関係者、専門家・金融機関・保険会社への開示、法令開示、契約終了後の存続期間、返還・廃棄義務、漏えい時の通知や差止めを確認します。

解除条項では、重大な契約違反、表明保証の重大違反、前提条件未充足、長期間のクロージング未実行、倒産手続、差押え、租税滞納処分、許認可取消し、反社会的勢力との関係判明、規制手続不成立、重大な悪影響の発生などを検討します。解除後の返還、違約金、秘密保持、補償請求、解除前の違反責任も明確にします。

紛争解決条項では、準拠法、管轄裁判所、仲裁、調停、協議義務を定めます。国内の非上場会社株式譲渡では日本法と日本の地方裁判所を定めることが多い一方、国際取引では仲裁機関、仲裁地、言語、仲裁人の人数も検討します。

Section 07

株式譲渡契約書の5つの条項を横断して確認する

条項間の矛盾を見つけるため、株式、承認、支払、DD、補償、税務を横串で確認します。

株式譲渡契約書は、各条項を縦割りで見るだけでは不十分です。次の横断チェックは、対象株式、譲渡承認、代金支払、DD結果、表明保証、補償、経営者保証、価格調整、税務、秘密保持のつながりを示し、条項間の矛盾を読み取るために重要です。

横断論点確認すべき内容
対象株式と表明保証売主が表明保証している株式数と、株主名簿、定款、登記、株券が一致しているか。
譲渡承認とクロージング譲渡承認がクロージング前提条件になっているか。承認議事録を引渡書類に含めているか。
代金支払と名義書換代金支払、株券交付、名義書換、承認通知が同時履行になっているか。
DD結果と表明保証DDで判明した事項が開示例外、価格調整、特別補償に反映されているか。
表明保証と補償表明保証違反が補償事由になっているか。補償期間・上限と整合しているか。
前提条件と解除前提条件未充足時に誰が解除できるか。解除期限は明確か。
経営者保証と補償保証解除ができない場合の解除、補償、代金留保があるか。
価格調整と会計調整計算の会計基準、基準日、専門家決定、異議手続が明確か。
税務と補償過年度税務、源泉徴収、消費税、株式評価、関連者間取引が整理されているか。
秘密保持と相談弁護士、税理士、公認会計士、金融機関、保険会社への開示が許されているか。

次の判断の流れは、レビュー時に迷いやすい順番を整理したものです。株式の存在、実行条件、支払、過去リスク、将来義務という順に確認することで、契約書の漏れを発見しやすくなります。

レビューで確認する順番

株式そのものを確認

売主の権利、株式数、種類株式、株券、名義株、担保を確認します。

実行条件を確認

譲渡承認、同意、届出、金融機関対応、許認可、DD後是正を確認します。

支払と移転を接続

代金支払、株券交付、名義書換、承認通知を同時履行にします。

過去リスクを配分

表明保証、補償、責任制限、特別補償、税務リスクを調整します。

将来義務を整理

引継ぎ、競業避止、秘密保持、解除、紛争解決を確認します。

見落としやすい点契約書で補償請求できることと、実際に回収できることは別です。エスクロー、代金留保、保証、保険、分割払いとの相殺など、回収可能性まで設計する必要があります。
Section 08

株式譲渡契約書で売主側・買主側が重点的に見る点

売主は売却後責任の適正化、買主は取得と回収可能性を中心に確認します。

売主側と買主側では、同じ条項を見ても重視する点が異なります。次の比較一覧は、売主が代金回収と事後責任を、買主が株式取得と隠れたリスクの回収をどのように見るかを示し、交渉上の着眼点を読み取るためのものです。

売主側

代金回収と責任の範囲

分割払いの担保、表明保証の限定、補償期間・上限、経営者保証解除、競業避止義務、引継ぎ義務の期間と報酬を確認します。

買主側

株式取得と隠れたリスク

真正な株主か、担保や差押えがないか、譲渡承認や株主名簿が整うか、DDで見えないリスクを補償で回収できるかを確認します。

双方共通

契約後に争わないための明確化

価格調整、アーンアウト、補償請求、第三者請求、秘密保持、解除、紛争解決について、第三者が読んでも一義的に分かる文言にします。

売主が個人である場合、補償責任は生活や相続計画に直接影響します。譲渡対価を使った後に高額な補償請求を受けると、資金繰りに深刻な影響が出るため、補償上限、存続期間、既知事項の除外、表明保証保険、エスクロー金額を慎重に検討します。

買主が注意すべきなのは、契約書で補償請求できることと実際に回収できることが異なる点です。売主の支払能力、資産移転の可能性、補償上限、代金留保、保証、保険、分割払いとの相殺を含めて検討します。

次の表は、売主側と買主側の重点確認事項を並べたものです。どちらの立場でも、自分に有利な条項だけでなく、相手方がなぜその条項を求めるのかを読み取ることで、交渉の焦点を整理しやすくなります。

立場重点確認事項
売主譲渡代金を確実に回収できるか。分割払いなら担保、保証、期限の利益喪失があるか。
売主表明保証が広すぎないか。知る限り、重要性、期間、金額、開示例外が入っているか。
売主税務、労務、環境など長期リスクをどこまで負うか。経営者保証が解除または移行されるか。
売主競業避止義務が過大でないか。クロージング後の協力義務に報酬、期間、範囲があるか。
買主売主が真正な株主か。対象株式に担保、質権、譲渡予約、信託、差押えがないか。
買主譲渡承認、株主名簿、株券、種類株式が確認済みか。DDで見えない事項を表明保証で補っているか。
買主重要リスクに特別補償を設けているか。補償上限が低すぎないか。売主に補償支払能力があるか。
買主クロージング前の価値流出を防ぐ誓約、競業避止、勧誘禁止、引継ぎ義務が十分か。
Section 09

株式譲渡契約書で専門家確認が特に重要になりやすい場面

会社支配、過去債務、税務、規制、保証が絡むときは、早い段階の確認が重要です。

株式譲渡契約書は、金額が小さく見えても会社支配や過去債務を移転させる重大な契約です。次の表は、専門家確認が特に重要になりやすい場面を整理し、どの論点が契約書だけでは判断しにくいかを読み取るためのものです。

ケース確認が重要になりやすい理由
対象会社が非上場会社譲渡制限、株主名簿、株券、名義株、相続未整理が問題になりやすいため。
売主が複数いる全員の同意、株式数、代理権、相続人、共有株式の整理が必要になるため。
株主間契約がある先買権、共同売却権、ドラッグ・アロング、タグ・アロングの確認が必要になるため。
対象会社に借入・保証がある経営者保証、担保解除、金融機関同意、期限の利益喪失条項を確認する必要があるため。
DDで問題が出た表明保証、特別補償、価格調整、解除条件への反映が必要になるため。
分割払い・アーンアウトがある不払い、計算方法、経営関与、会計操作のリスクが高いため。
上場株式・大量取得公開買付規制、大量保有報告、インサイダー規制が問題になり得るため。
大規模取得・競合取得独占禁止法の企業結合届出や競争法リスクを確認する必要があるため。
親族間・同族会社内取引税務評価、みなし贈与、相続、遺留分、支配権争いが絡むため。
海外当事者がいる準拠法、仲裁、外為法、税務、送金、制裁規制を確認する必要があるため。

相談時に資料が不足していると、株式の帰属、承認の要否、価格調整、保証解除、補償範囲の検討精度が下がります。次の一覧は、契約書案と併せて準備すると検討しやすい資料を示し、何を先に集めるべきかを読み取るためのものです。

1

会社・株式の資料

定款、登記事項証明書、株主名簿、株券、種類株式、新株予約権、過去の株式譲渡契約書を準備します。

株式確認
2

契約・投資関係の資料

株主間契約、投資契約、主要契約、先買権や共同売却権に関する資料を準備します。

契約制限
3

財務・税務・DD資料

財務諸表、税務申告、借入契約、保証契約、許認可資料、DD資料を準備します。

リスク確認
4

クロージング関連資料

承認議事録案、同意書、放棄書、名義書換請求書、金融機関対応資料を準備します。

実行準備
一般情報個別の見通しや対応方針は、取引規模、当事者、対象会社の資料、規制、税務、交渉経緯によって変わります。具体的には資料を整理したうえで、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
Section 10

株式譲渡契約書でよくある誤解と一般的な考え方

ひな形、代金支払、表明保証、補償、税務について、誤解しやすい点を整理します。

ひな形を使えば十分ですか

一般的には、ひな形は出発点にはなりますが、対象会社の定款、株主構成、株券発行の有無、DD結果、税務、金融機関対応、許認可、価格調整、補償上限を反映しないまま使うと、実務上のリスクが残るとされています。ただし、取引規模や当事者関係によって必要な修正範囲は変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

代金を支払えば株主として扱われますか

一般的には、代金支払だけでは会社法上の対抗要件や譲渡制限手続を満たしていない場合があります。株主名簿の名義書換、譲渡承認、株券交付、株主間契約上の同意などが問題になる可能性があります。ただし、会社の定款、株券発行の有無、取引経緯で結論は変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

表明保証は売主が全部保証する条項ですか

一般的には、表明保証は売主に無制限責任を負わせるためだけの条項ではなく、DD結果、価格、売主の関与、リスクの性質に応じて、範囲、期間、上限、例外を調整するリスク配分条項とされています。ただし、基本的表明保証や詐欺的説明などは別扱いになる可能性があります。具体的な対応は、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

補償条項があれば安心ですか

一般的には、補償条項があっても、売主に支払能力がなければ実際の回収が難しくなる可能性があります。また、通知期限、損害範囲、責任上限、開示例外によって請求可否が変わることがあります。具体的な回収可能性や設計は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

税金は契約書とは別問題ですか

一般的には、税務は契約書と密接に関係するとされています。譲渡価額、役員退職慰労金、分割払い、アーンアウト、低額譲渡、関連者間取引、過年度税務、源泉徴収、消費税、印紙税などは、契約書の表現や証拠関係に影響する可能性があります。具体的な税務判断は、税理士や公認会計士等の専門家へ相談する必要があります。

次の注意点一覧は、誤解が残ったまま契約を進めた場合に起こりやすい問題を示し、どの誤解が実行不能、回収不能、税務リスクにつながるかを読み取るためのものです。

ひな形依存

案件固有の株主構成、譲渡制限、価格調整、補償上限が抜ける可能性があります。

名義書換の軽視

代金支払後も会社や第三者に株主であることを主張できない可能性があります。

表明保証の過不足

広すぎると売主が過大責任を負い、狭すぎると買主が隠れたリスクを回収できない可能性があります。

補償の回収不能

請求できる文言があっても、売主資力や上限、期限によって回収できない可能性があります。

税務の後回し

価格、退職慰労金、低額譲渡、関連者間取引の整理不足が課税関係の争点になる可能性があります。

Section 11

株式譲渡契約書でまず確認する3つの視点

株式そのもの、取引実行、トラブル時の処理を深く確認すると、重大な落とし穴を見つけやすくなります。

株式譲渡契約書で特にチェックすべき5つの条項は、対象株式・譲渡価額・支払・クロージング、譲渡制限・承認・前提条件、表明保証、補償・損害賠償・責任制限、誓約事項・解除・競業避止・秘密保持・紛争解決です。

次のまとめ表は、5つの条項ごとの最重要チェックポイントを整理したものです。取引前、クロージング時、クロージング後のどこにリスクがあるかを読み取ることで、契約書レビューの優先順位を付けやすくなります。

条項最重要チェックポイント
対象株式・譲渡価額・支払・クロージング条項何株を、いくらで、いつ、どのように移転し、代金をどう確実に支払うか。
譲渡制限・承認・前提条件条項会社法、定款、契約、許認可、独禁法、金融規制上、取引を実行できるか。
表明保証条項売主・買主がどの事実を、どの範囲で、いつまで保証するか。
補償・損害賠償・責任制限条項違反時に誰が、どの損害を、いくらまで、いつまで負担するか。
誓約事項・解除・競業避止・秘密保持・紛争解決条項契約締結後・クロージング後の行動、解除、情報管理、紛争処理をどう設計するか。

一般の方がまず確認するなら、株式そのものの確認、取引実行の確認、トラブル時の確認の3点です。次の一覧は、最初に深掘りすべき3つの視点を示し、どの資料や条項につながるかを読み取るためのものです。

視点1

株式そのものの確認

売主は本当に株主か、株式数は正しいか、譲渡制限や株券はないかを確認します。

視点2

取引実行の確認

承認、名義書換、代金支払、金融機関、許認可、届出を完了できるかを確認します。

視点3

トラブル時の確認

表明保証違反、補償、解除、紛争解決、税務リスクが明確に処理されているかを確認します。

実際の案件では、会社法、民法、税法、金融商品取引法、独占禁止法、労働法、知的財産法、個人情報保護法、業法、会計、M&A実務が交錯します。契約締結前には、案件規模にかかわらず、専門家によるレビューを受けることが安全です。

Reference

この記事の参考情報源

法令・公的資料

  • e-Gov法令検索「会社法」
  • e-Gov法令検索「民法」
  • 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」
  • 経済産業省・中小企業庁「中小M&Aガイドライン改訂に関する公表資料」
  • 金融庁「大量保有報告制度の概要について」
  • 金融庁「公開買付制度・大量保有報告制度の見直しに関する公表資料」
  • 公正取引委員会「株式取得の届出制度」
  • 国税庁「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
  • 国税庁「取引相場のない株式の評価」