相続税評価では死亡日を起点に、投資信託の区分、外貨建て評価額、TTB、遺産分割や売却後の税務を分けて整理することが重要です。
相続税評価では死亡日を起点に、投資信託の区分、外貨建て評価額、TTB、遺産分割や売却後の税務を分けて整理することが重要です。
死亡日、TTB、円建て投信との違い、ETF、売却後の論点を最初に分けて確認します。
外貨建て投資信託を相続した場合は、投資信託そのものの評価、外貨から日本円への換算、相続開始日と売却日の違い、証券会社資料の読み方、相続人間で分ける価値の考え方が重なります。
相続税評価では、原則として被相続人の死亡日、つまり相続開始日が評価の基準日になります。外貨建てで表示される財産は日本円に換算し、原則として納税義務者の取引金融機関が公表する課税時期の最終の対顧客直物電信買相場、いわゆるTTBを用います。課税時期にTTBがない場合は、課税時期前のTTBのうち課税時期に最も近い日の相場によります。
ただし、海外資産に投資している投資信託のすべてに追加の為替換算をするわけではありません。日本国内で購入した投資信託で基準価額が円で公表されているものは、基準価額自体がすでに円表示です。この場合にTTBをさらに掛けると二重換算になります。
次の比較表は、相続税評価で混同しやすい論点をまとめたものです。どの日付とどの価格を使うかを誤ると申告額が変わるため、まず原則と注意点の違いを読み取ることが重要です。
| 論点 | 原則 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 相続税評価の基準日 | 相続開始日、通常は被相続人の死亡日 | 遺産分割日、売却日、証券会社の移管日は原則として相続税評価の基準日ではありません。 |
| 一般的な非上場投資信託の評価 | 課税時期に解約請求または買取請求をしたとした場合に支払いを受けられる価額 | 課税時期の基準価額がない場合は、課税時期前の基準価額のうち最も近い日の基準価額を用います。 |
| 外貨建て財産の円換算 | 課税時期の最終TTB | 課税時期にTTBがない場合は、課税時期前の最も近い日のTTBを用います。TTMではありません。 |
| 円建て海外資産投信 | 基準価額が円表示なら原則として追加の為替換算は不要 | 外国株式ファンドでも円建て基準価額なら外貨建て評価ではありません。 |
| 上場投資信託、ETF | 上場株式の評価に準じる | 死亡日の終値だけでなく、死亡月、前月、前々月の月平均額との比較が必要になることがあります。 |
| 相続後に売却した場合 | 売却価格は相続税評価額を当然に置き換えない | 売却時には所得税、住民税、取得費、取得費加算の特例を別途検討します。 |
相続税法は、特別の定めがあるものを除き、相続、遺贈または贈与により取得した財産の価額を、その財産を取得した時の時価によるとしています。投資信託については、この時価を具体化するため、財産評価基本通達や国税庁の評価方法を確認します。
外貨建て、課税時期、基準価額、TTB、TTS、TTMを区別します。
このページでいう外貨建て投資信託とは、投資信託の評価単位または解約価額が日本円以外の通貨で表示される投資信託です。典型例は、米ドル建てMMF、米ドル建て外国投資信託、豪ドル建てファンド、外国籍の投資信託、外国市場上場ETFなどです。
これに対し、国内で一般的に販売される米国株式ファンド、全世界株式ファンド、外国債券ファンドなどは、投資対象が海外資産であっても、基準価額が円で表示されていれば相続税評価の出発点は円建ての基準価額です。為替変動はすでに基準価額に反映されています。
次の一覧は、商品名だけでは分かりにくい評価通貨の違いを整理したものです。読者にとって重要なのは、投資先が海外かどうかではなく、評価額が円で出ているのか外貨で出ているのかを読み取ることです。
基準価額が円で公表されていれば、為替変動は基準価額に含まれます。追加のTTB換算は原則として不要です。
評価額や解約価額が米ドルなどで表示される場合は、外貨建て評価額を日本円に換算します。
上場株式の評価に準じる場面があります。日本市場か外国市場か、価格と為替の両方を確認します。
相続税評価でいう課税時期とは、相続により財産を取得した時点です。通常は被相続人の死亡日です。投資信託の基準価額とは、投資信託の純資産総額を保有口数で割った価額で、多くの国内投資信託では1万口当たりの金額として表示されます。
相続税評価では、残高証明書に記載された時価評価額をそのまま使えばよいとは限りません。一般的な証券投資信託では、課税時期に解約請求または買取請求をしたとした場合に支払いを受けることができる価額が評価の中心になります。信託財産留保額、解約手数料、源泉徴収されるべき税額相当額、未収分配金などの調整が必要になることがあります。
次の比較表は、相続税評価で使う為替レートの役割を整理したものです。外貨建て投資信託はプラスの資産なので、通常はTTBを読み取る点が重要です。
| 略称 | 日本語 | 意味 | 相続税評価での典型的な用途 |
|---|---|---|---|
| TTB | 対顧客直物電信買相場 | 金融機関が顧客から外貨を買い、円を支払う場合のレート | 外貨建て資産の邦貨換算 |
| TTS | 対顧客直物電信売相場 | 金融機関が顧客へ外貨を売り、円を受け取る場合のレート | 外貨建て債務の邦貨換算 |
| TTM | 対顧客電信相場仲値 | TTBとTTSの基準となる仲値 | 外貨建て資産の相続税評価では通常TTBそのものではありません。 |
TTMを用いると、TTBより評価額が高くなることが多く、過大評価につながる可能性があります。金融機関資料に複数の相場が載っている場合は、TTB、TTS、TTMを取り違えないように確認します。
相続税法第22条、証券投資信託の評価、外貨建て財産の邦貨換算、ETF評価をつなげて確認します。
相続税法第22条は、相続などで取得した財産の価額を、その財産の取得時における時価によると定めています。投資信託も相続財産である以上、出発点は相続開始時の時価です。
もっとも、投資信託には毎営業日に算出される基準価額、解約手数料、信託財産留保額、分配金、源泉税、外貨換算などの要素があります。そこで実務では、財産評価基本通達や国税庁の説明を用いて、評価方法を具体化します。
次の比較表は、証券投資信託の評価区分と評価の考え方を整理したものです。どの区分に当たるかで必要資料が変わるため、例と評価方法を対応させて読み取ることが重要です。
| 区分 | 例 | 評価の考え方 |
|---|---|---|
| 日々決算型の証券投資信託 | 中期国債ファンド、MMFなど | 基準価額、口数、未収分配金、源泉徴収税等、信託財産留保額、解約手数料を考慮します。 |
| 上記以外の証券投資信託 | 一般的な公募投資信託、外国債券ファンド、外国株式ファンドなど | 課税時期の基準価額と口数を基礎に、源泉徴収税等相当額、信託財産留保額、解約手数料を考慮します。 |
| 上場されている証券投資信託 | ETFなど | 解約請求等を前提とした評価は適切ではないため、上場株式の評価に準じます。 |
非上場の証券投資信託で課税時期の基準価額がない場合には、課税時期前の基準価額のうち、課税時期に最も近い日の基準価額を課税時期の基準価額として計算します。翌営業日の基準価額を機械的に使わない点が重要です。
外貨建て財産は、相続税申告では日本円に換算する必要があります。相続税や贈与税を計算する場合の外貨は、原則として納税義務者の取引金融機関が公表する課税時期の最終TTBまたはこれに準ずる相場により邦貨換算します。相続の場合の課税時期は被相続人の死亡日です。
課税時期に相場がない場合は、課税時期前の相場のうち、課税時期に最も近い日の相場によります。この課税時期前という点は、死亡日が土日祝日の場合に特に重要です。
ETFのように金融商品取引所に上場されている証券投資信託受益証券は、通常の解約価額評価ではなく、上場株式の評価の定めに準じて評価します。死亡日の終値だけでなく、死亡月、前月、前々月の月平均額も取得し、最も低い価額を検討する場面があります。
商品分類、基準価額、解約価額調整、TTB換算の順に処理します。
外貨建て投資信託の相続評価は、商品を分類してから価格を確認し、控除項目を反映して、必要な場合だけ円換算する順序で整理すると誤りを減らせます。
次の判断の流れは、評価作業の順番を表します。上から下へ確認し、円建て投信に追加換算をしないこと、外貨建て評価額だけTTBで円換算することを読み取るのが重要です。
円建て基準価額、外貨建て評価額、日々決算型、ETF、外国証券口座、NISAなどを確認します。
非上場投信は死亡日の基準価額、ETFは終値と月平均額を確認します。
口数、未収分配金、源泉徴収税等相当額、信託財産留保額、解約手数料を反映します。
円表示なら追加換算を避け、外貨表示なら最終TTBで円換算します。
最初に、基準価額が円建てで公表される国内公募投資信託か、米ドル、ユーロ、豪ドルなどの外貨で表示される投資信託か、MMFなどの日々決算型か、ETFなどの上場投資信託かを確認します。外国市場に上場するETF、外国籍投信、外国証券会社口座内の商品、NISA口座、特定口座、一般口座、外国証券口座の違いも確認します。
この分類を誤ると、評価式そのものが誤ります。円建ての米国株式ファンドにTTBを掛けると二重換算になり、米ドル建てMMFを円換算しないと過少申告につながる可能性があります。
非上場の一般的な投資信託では、被相続人の死亡日の基準価額を確認します。死亡日に基準価額がない場合は、死亡日前の基準価額のうち死亡日に最も近い日の基準価額を使います。ETFでは、死亡日の終値、死亡月の月平均額、前月の月平均額、前々月の月平均額を確認します。
次の比較表は、解約または買取相当額を考えるときに確認する項目をまとめたものです。資料の取得先と調整内容を対応させることで、基準価額だけでは足りない項目を読み取れます。
| 調整項目 | 内容 | 確認資料 |
|---|---|---|
| 口数 | 被相続人が死亡日時点で保有していた口数 | 残高証明書、取引報告書 |
| 基準価額 | 課税時期の基準価額 | 運用会社、販売会社、証券会社の評価資料 |
| 未収分配金 | 再投資されていない分配金や権利確定済み未受領分 | 分配金明細、残高証明書 |
| 源泉徴収税等相当額 | 解約請求等をした場合に源泉徴収されるべき所得税、住民税、復興特別所得税等に相当する額 | 証券会社の計算書、税理士の計算 |
| 信託財産留保額 | 解約時にファンド財産に留保される額 | 目論見書、運用会社資料 |
| 解約手数料 | 解約、買取時にかかる費用 | 販売会社資料 |
評価額が外貨で算定される場合は、日本円に換算します。原則として、死亡日における最終TTBを用います。死亡日にTTBがない場合は、死亡日前のTTBのうち死亡日に最も近い日のTTBを用います。
外貨建ての源泉徴収税、解約手数料、信託財産留保額がある場合は、同じ通貨単位で控除してから円換算する方法が実務上理解しやすいといえます。証券会社が円換算済みの相続税評価証明を発行している場合は、その計算過程、使用レート、基準日、控除項目を確認します。
売却日、遺産分割日、移管日、申告日と混同しないように整理します。
相続税評価で使う為替レートの基準日は、原則として死亡日です。相続人が実際に売却した日、相続人の口座に移管された日、遺産分割協議書を作成した日、相続税申告書を提出した日ではありません。
たとえば、被相続人が2026年2月10日に亡くなり、相続人が2026年6月1日に外貨建て投資信託を売却した場合でも、相続税評価に用いる為替レートは原則として2026年2月10日のTTBです。2026年6月1日の売却時レートは、相続後の譲渡所得や実際の分配額、相続人間の精算に関係することはありますが、相続税評価額そのものを当然に置き換えるものではありません。
死亡日が土曜日、日曜日、祝日、年末年始などで金融機関のTTBが公表されていない場合は、死亡日前のTTBのうち死亡日に最も近い日の相場を用います。外貨建て財産の邦貨換算では、死亡日の後の営業日ではなく、課税時期前の相場を確認する点が重要です。
非上場の一般的な投資信託では、課税時期の基準価額がない場合、課税時期前の基準価額のうち課税時期に最も近い日の基準価額を用います。外貨換算のTTBも、課税時期に相場がない場合は課税時期前の最も近い日の相場です。
ただし、外国籍投信や外国市場上場ETFでは、基準価額の基準日が海外現地日付で表示されることがあります。日本時間の死亡日、海外市場の取引日、運用会社の基準価額算出日がずれる可能性があるため、販売会社または証券会社から相続税評価用の証明書を取得するのが実務上重要です。
次の重要ポイントは、日付の選び方で迷いやすい場面をまとめたものです。どの資料を優先して整合性を保つかを読み取ることで、同じ財産に複数の評価根拠が混在するリスクを下げられます。
売却日のレートや売却価額は、相続後の譲渡所得や相続人間の精算には関係しますが、相続税評価の基準日を当然に変えるものではありません。
死亡日にTTBがない場合は、死亡日前の最も近いTTBを確認します。基準価額がない場合も、非上場投信では死亡日前の最も近い基準価額を確認します。
外国籍投信や外国市場上場ETFでは、日本時間、現地取引日、基準価額算出日がずれることがあります。証券会社資料の基準日を確認します。
原則として、納税義務者の取引金融機関が公表するTTBを用います。外貨建て投資信託でも、証券会社、銀行、信託銀行などの販売会社や保管機関が評価資料と適用為替レートを発行する場合は、その資料を重視します。
相続人が複数いる場合に同一財産について相続人ごとに異なる為替レートを採用すると、評価資料の整合性や相続人間の説明が難しくなります。実務では、当該財産を保管していた金融機関の相続税評価証明、または相続人間で合意した合理的な金融機関のTTBを、資料付きで一貫して用いることが重要です。
先物外国為替契約を締結していることにより、その財産についての為替相場が確定している場合には、その契約により確定している為替相場によることがあります。一般個人の投資信託相続では多くありませんが、事業者や富裕層の外貨資産管理では、為替予約、ヘッジ契約、オプション付き為替予約が存在することがあります。
この場合、単純に死亡日のTTBを用いるのではなく、契約書、約定書、ヘッジ対象、未行使の選択権の有無を確認し、税理士等の専門家が評価方針を検討する必要があります。
円建てファンド、米ドル建てMMF、外国投信、日本市場ETF、外国市場ETFを分けます。
国内で販売される多くの投資信託は、外国株式や外国債券に投資していても、基準価額は円で公表されます。この場合、相続税評価では円建ての基準価額を使います。外貨建て投資信託ではありません。
たとえば、基準価額が1万口当たり14,000円、保有口数が2,000,000口で、控除すべき信託財産留保額等がない場合、評価額は14,000円 × 2,000,000口 ÷ 10,000口 = 2,800,000円です。ここにTTBを掛けてはいけません。
米ドル建てMMFなどは、外貨建ての価額で評価されることが多い商品です。日々決算型の証券投資信託に該当する場合は、基準価額、口数、未収分配金、未収分配金に係る源泉徴収税等、信託財産留保額、解約手数料を考慮し、その外貨建て評価額をTTBで円換算します。
次の比較表は、米ドル建てMMFの計算例で使う数値を示しています。口数、未収分配金、源泉徴収税等、TTBを同じ計算順で確認することが重要です。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 保有口数 | 100,000口 |
| 1口当たり基準価額 | 1.0000米ドル |
| 未収分配金 | 120米ドル |
| 未収分配金に係る源泉徴収税等 | 24米ドル |
| 信託財産留保額、解約手数料 | 0米ドル |
| 死亡日のTTB | 1米ドル150.20円 |
米ドル建て外国投資信託のように、基準価額が米ドルで表示される一般的な投資信託では、まず外貨建てで解約、買取相当額を計算し、その後TTBで円換算します。
次の比較表は、外貨建て一般投資信託の計算例です。基準価額、保有口数、手数料を外貨単位で整理してから、TTBを掛ける順番を読み取ります。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 課税時期前の最も近い基準価額 | 1口1.2345米ドル |
| 保有口数 | 100,000口 |
| 解約手数料 | 50米ドル |
| 源泉徴収税等相当額 | 0米ドル |
| TTB | 1米ドル150.00円 |
日本市場に上場するETFは、通常、円建ての市場価格で評価されます。金融商品取引所に上場されている証券投資信託については、解約請求等を前提とした評価方法ではなく、上場株式の評価の定めに準じます。
次の一覧は、ETFで比較する価格の範囲を示します。死亡日の終値だけを見るのではなく、月平均額と比べて低い評価額が使われる可能性を読み取ることが重要です。
死亡日の市場終値を確認します。最終価格がない場合の扱いも確認します。
死亡日の属する月の毎日の最終価格の月平均額を確認します。
死亡月の前月、前々月の月平均額を確認し、最も低い価額との比較を行います。
米国市場などに上場するETFを外国証券口座で保有していた場合は、上場証券としての価格評価と外貨換算の双方を検討します。外国市場の終値、月平均額、権利落ち、現地休日、日本時間とのずれ、保管証券会社の評価資料を確認する必要があります。
この類型では、証券会社の相続税評価額証明書、残高証明書、外国証券評価明細、為替レート明細が特に重要です。外国市場の価格だけを取得し、日本の相続税評価上の月平均比較や邦貨換算を失念すると、申告誤りにつながります。
売却日レート、TTM、二重換算、翌営業日、分配金、NISAの誤解に注意します。
外貨建て投資信託の相続では、計算式が複雑というより、日付、通貨、資料の読み方を取り違えることが主な誤りです。
次の一覧は、申告実務で起こりやすい誤りと確認ポイントをまとめたものです。どの誤りが過大評価または過少評価につながるかを読み取ることで、資料確認の優先順位を決めやすくなります。
相続税評価の基準日は死亡日であり、売却日ではありません。売却日レートは所得税計算や相続人間の精算で別途検討します。
外貨建て資産の相続税評価では原則TTBです。TTMだけが表示される資料では、TTBの確認が必要です。
円建ての外国株式ファンドや全世界株式ファンドは、基準価額の中に為替変動が含まれています。
非上場の証券投資信託で死亡日の基準価額がない場合は、死亡日前の最も近い基準価額を用います。
死亡日時点で分配金の権利が発生しているが未受領である場合、未収分配金や配当期待権が問題になることがあります。
NISAは所得税等の非課税制度であり、NISA口座内の金融商品が相続税の課税財産から外れる制度ではありません。
NISA口座の開設者が亡くなった場合、相続人は金融機関へ非課税口座開設者死亡届出書を提出する必要があります。死亡日以後に非課税口座で支払われるべき配当等は、非課税措置の対象にならないとされています。
相続税評価額と所得税の取得費は同じとは限りません。
相続税評価額が18,510,000円であったからといって、相続人が後日売却したときの所得税計算上の取得費が当然に18,510,000円になるわけではありません。
相続、遺贈または贈与により取得した株式等については、原則として被相続人、遺贈者または贈与者の取得費を引き継ぐとされています。NISA口座などから相続等により払い出された上場株式等については、原則として相続開始日の終値に相当する金額で相続人が取得したものとみなされる取扱いがあります。
相続税申告後に売却する予定がある場合は、被相続人の取得価額、個別元本、購入時為替レート、特定口座情報、NISA口座情報を早めに確認する必要があります。
相続または遺贈により取得した財産を一定期間内に譲渡した場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できる特例があります。外貨建て投資信託や上場ETFを相続後に売却する場合、取得費加算の特例の適用可能性を検討します。
次の重要ポイントは、相続後売却で確認すべき税務論点を表します。相続税評価、譲渡所得の取得費、取得費加算を分けて読み取ることが重要です。
死亡日時点の相続税評価額、被相続人から引き継ぐ取得費、NISAから払い出された上場株式等の取扱い、取得費加算の特例は、それぞれ確認資料と計算目的が異なります。
税務評価と相続人間で分ける価値は、目的が異なるため分けて整理します。
相続税評価額は、税務申告のための評価額です。一方、相続人間で遺産を分けるときの価値は、合意によって実際の売却代金、分割時点の時価、相続開始日時点の時価などを用いることがあります。
外貨建て投資信託は価格変動と為替変動が大きいため、死亡日から遺産分割日までに価値が大きく変わることがあります。相続税評価では18,510,000円であっても、遺産分割時には21,000,000円になっていることも、16,000,000円になっていることもあります。
次の比較表は、遺産分割で問題になりやすい場面と実務上の整理方法を示します。相続税評価額と分割上の時価を区別して説明することが、相続人間の納得に直結します。
| 問題 | 実務上の対処 |
|---|---|
| 一人の相続人が投資信託を取得し、他の相続人に代償金を払う | 代償金算定の基準日と評価資料を遺産分割協議書に明記します。 |
| 売却して現金で分ける | 売却価格、為替手数料、税金、送金費用、証券会社手数料の負担を決めます。 |
| 相続税評価額と実際売却額が大きく異なる | 税務評価と分割上の時価を区別して説明します。 |
| 相続人の一部が為替リスクを負担したくない | 早期売却、ヘッジ、代償分割、換価分割を検討します。 |
紛争がある場合は弁護士が中心になります。相続税申告の評価は税理士が担当しますが、相続人間の公平、遺留分、特別受益、使い込み疑い、分割協議の有効性は法律問題です。証券会社の資料だけでなく、誰がいつ売却を指示したか、売却益や為替差損益を誰に帰属させるか、分配金を誰が受け取ったかも確認します。
次の比較表は、外貨建て投資信託を相続したときに集める資料、取得先、確認目的を整理したものです。どの資料が評価、移管、分割、税務のどこに使われるかを読み取ることが重要です。
| 資料 | 取得先 | 目的 |
|---|---|---|
| 死亡日時点の残高証明書 | 証券会社、銀行、信託銀行 | 銘柄、口数、通貨、口座区分の確認 |
| 相続税評価額証明書 | 証券会社、販売会社 | 基準価額、評価日、外貨建て評価額、円換算額の確認 |
| 基準価額明細 | 運用会社、販売会社 | 課税時期の基準価額、基準価額がない場合の直前価額の確認 |
| 為替レート表 | 取引金融機関 | 死亡日の最終TTB、死亡日に相場がない場合は直前TTBの確認 |
| 目論見書、商品説明書 | 証券会社、運用会社 | 信託財産留保額、解約手数料、換金制限の確認 |
| 取引履歴 | 証券会社 | 取得費、個別元本、将来売却時の所得税計算 |
| 分配金明細 | 証券会社、銀行 | 未収分配金、死亡後分配金、源泉税の確認 |
| NISA関連届出書 | 金融機関 | 非課税口座開設者死亡届出書、払い出し後の口座区分の確認 |
| 遺言書、遺産分割協議書 | 相続人、家庭裁判所、公証役場 | 誰が投資信託を取得するかの確認 |
| 戸籍、法定相続情報一覧図 | 市区町村、法務局 | 相続人確定、金融機関手続 |
証券会社に依頼するときは、単に残高証明書を求めるだけでなく、相続税申告に用いる死亡日時点の評価額、基準価額、外貨建て評価額、円換算額、使用した為替レート、信託財産留保額、解約手数料、未収分配金、源泉税相当額が分かる資料を依頼すると実務が進みやすくなります。
税理士、弁護士、司法書士、金融機関の役割と申告期限までの進め方を整理します。
外貨建て投資信託の相続では、複数の専門職が関与します。すべての専門職が必要とは限りませんが、相談先を誤らないために役割分担を理解しておくことが重要です。
次の比較表は、専門職や機関ごとの主な役割を整理したものです。税務申告、紛争、登記、資料発行、資産全体の整理を分けて読み取ると、依頼先を選びやすくなります。
| 専門職、機関 | 主な役割 |
|---|---|
| 税理士 | 相続税申告、投資信託評価、外貨換算、税務代理、税務調査対応、取得費加算の検討 |
| 弁護士 | 相続人間の紛争、遺産分割交渉、調停、審判、遺留分、使い込み疑い、代償金の争い |
| 司法書士 | 相続登記、戸籍収集、法定相続情報、裁判所提出書類作成の一部、不動産がある場合の名義変更 |
| 行政書士 | 紛争、税務、登記申請を除く範囲での遺産分割協議書、相続関係説明図などの書類作成 |
| 金融機関、証券会社 | 残高証明書、評価証明書、相続移管、NISA口座死亡届、売却手続 |
| 信託銀行 | 遺言執行、遺言信託、相続手続の事務支援 |
| FP | 資産全体の把握、納税資金、売却方針、相続後の運用方針の整理 |
| 家庭裁判所 | 遺産分割調停、審判、特別代理人選任など |
相続財産に不動産もある場合、2024年4月1日から相続登記が義務化されています。不動産を相続により取得した相続人は、相続開始を知り、かつその不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をする義務があります。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になることがあります。
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。海外証券口座、外国籍投信、複数通貨、相続人間の紛争がある場合、資料取得だけで数か月かかることがあります。
次の時系列は、外貨建て投資信託がある相続での作業の目安を示します。期限に近いほど資料不足の修正が難しくなるため、前半で金融機関資料を集めることを読み取るのが重要です。
死亡連絡、口座凍結、残高証明書の請求準備を進めます。
戸籍収集、相続人確定、証券会社への相続税評価資料依頼を行います。
基準価額、TTB、分配金、NISA、取得費資料を確認します。
遺産分割協議、納税資金の確保、売却要否を検討します。
申告書の最終確認、添付資料整理、相続税申告と納税を行います。
外貨建て投資信託は価格変動が大きいため、納税資金をどの通貨で確保するかも重要です。相続税は日本円で納付します。外貨建て資産を保有し続ける場合でも、納税資金として円預金、保険金、売却代金を確保する必要があります。
為替レート、TTB、円建て投信、証券会社資料、NISA、取得費を一般情報として整理します。
一般的には、相続税評価で使う為替レートの基準日は被相続人の死亡日とされています。死亡日にTTBが公表されていない場合は、死亡日前のTTBのうち死亡日に最も近い日の相場を用いる扱いが基本です。ただし、商品区分や証券会社資料の内容によって確認すべき資料が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、相続税評価では売却日のレートを基準にしないとされています。売却日のレートや売却価額は、相続後の譲渡所得や相続人間の精算に関係する可能性があります。ただし、分割方法や売却時期、税務上の取得費によって整理は変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで税理士や弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、外貨建て資産の邦貨換算ではTTBを用いるとされています。TTMを使うと評価額が高くなることが多く、相続税評価として適切でない可能性があります。ただし、金融機関資料や契約内容によって確認事項が変わる可能性があります。具体的な対応は、使用レートの根拠資料を整理したうえで税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、商品名だけでは判断できません。基準価額が円で表示される国内投資信託なら、通常は円建て評価と整理されます。米国株式に投資していても、基準価額が円建てなら追加のTTB換算は不要となる可能性があります。ただし、米ドル建てクラス、外国籍投信、外国証券口座内の商品では外貨換算が必要になることがあります。具体的には、目論見書や証券会社資料を確認する必要があります。
一般的には、そのまま使える場合もありますが、計算基準の確認が必要とされています。確認すべき点は、評価日が死亡日か、基準価額が相続税評価上のものか、使用レートがTTBか、信託財産留保額や解約手数料が反映されているか、未収分配金が含まれているかです。具体的な対応は、証明書の内訳を整理したうえで税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、相続税評価額と遺産分割で用いる価値は同じとは限らないとされています。相続税評価額は税務申告のための評価額であり、遺産分割では相続人の合意により、売却代金、分割時点の時価、死亡日時点の時価などを用いることがあります。ただし、紛争の有無や合意内容によって整理が変わります。具体的な対応は、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、NISAは所得税等の非課税制度であり、相続税の非課税制度ではないとされています。NISA口座の開設者が死亡した場合、相続人は金融機関に非課税口座開設者死亡届出書を提出する必要があります。死亡日以後に非課税口座で支払われるべき配当等は非課税措置の対象にならないとされています。ただし、口座区分や商品内容によって必要手続は変わる可能性があります。
一般的には、相続により取得した株式等の取得費は被相続人の取得費を引き継ぐとされています。ただし、NISA口座から相続等により払い出された上場株式等については、原則として相続開始日の終値相当額で取得したものとみなされる取扱いがあります。具体的な取得費や取得費加算の検討は、取引履歴や口座資料を整理したうえで税理士等の専門家へ相談する必要があります。
最後に、評価通貨、商品区分、課税時期、価格、TTB、申告後論点を一つの順序にまとめます。
外貨建て投資信託の評価では、いきなり為替レートを探すのではなく、評価通貨と商品区分から確認します。円建て基準価額なら追加換算を避け、外貨建てならTTBを確認します。
次の判断の流れは、実務で確認する順番をまとめたものです。上から順に確認し、相続税申告、遺産分割、相続後売却の論点を最後に分けることを読み取るのが重要です。
円建て基準価額なら円建て投資信託として評価し、追加のTTB換算は原則不要です。
日々決算型、一般の非上場投信、上場ETFのどれに当たるかを確認します。
原則として被相続人の死亡日を基準にします。
死亡日に価格がない場合、非上場投信では死亡日前の最も近い基準価額を確認します。
死亡日のTTBがあれば死亡日の最終TTB、なければ死亡日前の最も近いTTBを確認します。
相続税申告、遺産分割、相続後売却の所得税を別の問題として整理します。
外貨建て投資信託を相続した場合の評価と為替レートの基準日は、5点に集約されます。第一に、相続税評価の基準日は原則として死亡日です。第二に、非上場の一般的な投資信託は、課税時期に解約請求または買取請求をしたとした場合に支払いを受けられる価額を基礎に評価します。第三に、外貨建て評価額は原則として死亡日の最終TTBで円換算し、死亡日に相場がない場合は死亡日前の最も近いTTBを用います。
第四に、円建ての海外資産投資信託にTTBを掛けると二重換算になるため、商品名ではなく基準価額の表示通貨を確認します。第五に、相続税評価、遺産分割上の価値、相続後売却時の所得税計算は別の問題として整理します。
実務では、証券会社の相続税評価証明書、基準価額資料、TTB資料、分配金明細、取得費資料を早期に取得し、税理士が申告評価を行い、相続人間に争いがあれば弁護士が分割交渉を整理する体制が望ましいといえます。外貨建て投資信託は、数日の価格変動や為替変動で金額が大きく動くため、根拠資料を残し、税務評価と分割上の公平を分けて考えることが、後日の税務調査と相続紛争の双方を予防します。
相続税評価、外貨換算、申告期限、NISA、相続登記に関する公的資料を整理しています。