相続で問題になる金銭や財産を、遺産分割で分けるもの、受取人固有のもの、税務上だけ扱いが変わるものに分けて整理します。
相続で問題になる金銭や財産を、遺産分割で分けるもの、受取人固有のもの、税務上だけ扱いが変わるものに分けて整理します。
最初に、相続で出てくる財産がすべて同じ扱いになるわけではないことを確認します。
遺産分割の対象になる財産とは、基本的には相続開始時に被相続人へ帰属し、共同相続人が具体的に分ける必要のあるプラスの財産です。土地建物、預貯金、現金、株式、動産などが典型例です。
一方で、受取人指定の死亡保険金、一定の死亡退職金、遺族年金、未支給年金、香典、祭祀財産、債務そのもの、相続開始後に発生した賃料などは、相続と関係していても遺産分割の対象とは限りません。
次の比較表は、相続で混同しやすい4つの分類を並べたものです。各分類は手続や税務の結論を左右するため重要で、どの列に当てはまるかを見ると、協議書に載せるべき財産か、別管理すべき財産かを読み取れます。
| 分類 | 意味 | 典型例 | 遺産分割との関係 |
|---|---|---|---|
| 民法上の相続財産・遺産 | 被相続人から相続人へ承継される権利義務 | 不動産、預貯金、現金、株式、貸金債権、動産、借金 | プラス財産は分割対象になり得ます。債務は承継されますが、通常は取得財産として分ける対象ではありません。 |
| 遺産分割の対象財産 | 共同相続人間で具体的に分ける対象 | 不動産、預貯金、株式、現金など | 相続開始時の帰属と分割時の存在を確認します。 |
| 相続税の課税対象財産 | 相続税計算上、課税価格に入る財産 | 本来の相続財産、生命保険金、死亡退職金などのみなし相続財産 | 税務上課税されても、民法上の分割対象とは限りません。 |
| 相続人・受取人の固有財産 | 受取人が自己の権利として取得する財産 | 受取人指定の死亡保険金、一定の死亡退職金、遺族年金、未支給年金、香典 | 原則として分割対象ではありません。例外的に公平調整が問題になることがあります。 |
相続財産、遺産分割対象財産、固有財産の違いを整理します。
相続では、被相続人の財産に属した一切の権利義務が相続人へ承継されます。ただし、被相続人の一身に専属した権利義務は承継されません。土地建物、預貯金、株式、投資信託、貸付金、売掛金、自動車、貴金属、家財、著作権などのプラス財産だけでなく、借入金、未払金、保証債務、未払税金などのマイナス財産も広い意味では問題になります。
遺産分割対象財産は、共同相続人が協議、調停、審判などで、誰がどの財産を取得するかを決める対象です。相続人が複数いる場合、遺産はいったん共有状態になり、遺産分割で最終的な帰属を決めます。
次の3つの確認項目は、対象財産かどうかを絞り込むための基本です。名義、時点、財産の性質がずれると結論が変わるため重要で、どこに疑問があるかを読み取ることで資料収集の優先順位を決められます。
形式名義が被相続人でも実質的に他人の財産であれば遺産ではありません。反対に、家族名義でも実質的に被相続人の財産であれば遺産に含まれることがあります。
死亡後に初めて発生した収益、給付、受取人固有の請求権は、原則として遺産そのものとは別に扱われます。
生命保険金、遺族年金、祭祀財産、債務、一定の死亡退職金などは、相続と関連していても分割対象から外れることがあります。
固有財産は、被相続人から承継したのではなく、相続人や受取人が自己の権利として取得する財産です。典型例は、受取人が指定された死亡保険金です。固有財産は原則として協議書に分ける財産として記載しませんが、相続人間で存在を共有する説明資料に記載することはあります。
財産ごとに、死亡時点・帰属・固有権・債務・税務・処分の有無を確認します。
対象性の判断は、結論だけを先に決めると誤りやすい領域です。次の判断の流れは、財産が遺産分割で分ける対象かを順に確認するものです。上から順に見ることで、どの段階で対象外または要調査になるかを読み取れます。
死亡時点で存在した財産か、死亡後に発生した収益・給付かを分けます。
名義だけでなく、資金の出所、管理、契約内容、家族間の合意を確認します。
資格、身分、生活保障と密接な権利は承継されないことがあります。
死亡保険金、年金、退職金、共済給付などは受取人の権利として発生する場合があります。
債務は承継されても、通常は誰が取得するかを決める財産ではありません。
みなし相続財産や債務控除は、民法上の分割対象性とは別に整理します。
現物がない場合は、みなし処理、不当利得、損害賠償などを確認します。
現物、代償、換価、共有のどれが適切かを検討します。
死亡時点ですでに発生していた未収賃料、未収給与、未収売掛金、未収配当などは遺産に含まれ得ます。反対に、死亡後に発生した賃料、配当、利息、給付金などは、発生原因と権利の帰属を別に検討します。
借金や未払金については、相続人間で負担者を決めても、債権者の承諾がない限り他の相続人が当然に免責されるわけではありません。内部負担と対外的な責任を分ける必要があります。
代表的な財産ごとに、分割対象性と実務上の確認点を一覧で見ます。
次の一覧は、相続でよく出る財産を対象、対象外、要注意に分けるための比較表です。財産名だけで結論を固定せず、右列の確認点まで見ることが重要で、名義・規程・発生時期・税務との違いを読み取ってください。
| 財産・権利 | 遺産分割の対象性 | 実務上の説明 |
|---|---|---|
| 土地・建物 | 原則対象 | 登記名義、固定資産評価、利用状況、共有持分、抵当権、相続登記義務を確認します。 |
| 借地権・借家権 | 原則対象になり得る | 契約内容、譲渡制限、居住者、更新可能性、評価可能性を確認します。 |
| 農地・山林 | 原則対象 | 農地法、森林法、境界、利用実態、売却可能性、管理負担が問題になります。 |
| 預貯金 | 原則対象 | 共同相続された普通預金、通常貯金、定期貯金は当然分割されず、遺産分割の対象になるとされています。 |
| 現金 | 原則対象 | 死亡時に存在した現金は動産として対象です。保管者、金額、費消の有無が争点になります。 |
| 上場株式・投資信託 | 原則対象 | 証券口座、銘柄、数量、基準日、評価日を確認します。 |
| 非上場株式 | 原則対象 | 会社支配、議決権、譲渡制限、株価評価、事業承継が大きな争点になります。 |
| 貸付金・売掛金 | 対象になり得るが要検討 | 可分債権の扱い、回収可能性、証拠、債務者の資力を検討します。 |
| 自動車・船舶・貴金属・美術品 | 原則対象 | 名義、保管場所、評価、現物分割の可否、売却可能性を確認します。 |
| 知的財産権 | 財産権は対象になり得る | 財産権として移転可能な部分は対象になり得ます。一身専属的権利は承継されません。 |
| 暗号資産・電子マネー・ポイント | 財産性があれば対象になり得る | 規約、秘密鍵、残高証明、換価可能性、相続手続を確認します。 |
| 生命保険金 | 原則対象外 | 受取人指定があれば受取人固有の権利です。相続税上のみなし相続財産とは区別します。 |
| 死亡退職金 | 多くは対象外。ただし規程次第 | 退職金規程や共済規程で受給権者が定められているかを確認します。 |
| 遺族年金・未支給年金 | 原則対象外 | 一定の遺族が自己の名で請求する権利として扱われます。 |
| 香典・弔慰金 | 原則対象外 | 通常は喪主・遺族への贈与・互助的給付と考えられます。 |
| 葬儀費用 | 財産ではないため対象外 | 死亡後に発生する費用です。相続税では一定の葬式費用が控除対象になることがあります。 |
| 借入金・未払金 | 分割対象財産ではない | 相続債務として承継されますが、債権者を拘束して負担者を変更するには別の検討が必要です。 |
| 祭祀財産 | 原則対象外 | 墓地、墓石、仏壇、位牌、系譜は、遺産分割とは別の承継ルールに従います。 |
| 相続開始後の賃料 | 原則対象外 | 遺産とは別個の財産として、各相続人が相続分に応じて取得するとされています。 |
| 生前贈与された財産 | 原則対象外 | すでに受贈者の財産ですが、特別受益として相続分計算に影響することがあります。 |
| 名義預金 | 実質判断 | 資金拠出、管理、使用意思、贈与の成否から真の帰属を判断します。 |
| 使途不明金 | 時期と構成による | 生前引出し、死後引出し、無断売却などにより処理方法が変わります。 |
プラス財産でも、評価・管理・証拠によって分け方が変わります。
次の一覧は、対象になりやすい財産を分けるときの確認点をまとめたものです。同じ対象財産でも評価方法や換価可能性で結論が変わるため重要で、どの専門資料を集めるべきかを読み取れます。
現在は普通預金、通常貯金、定期貯金も原則として分割対象です。残高証明、取引履歴、仮払い制度、葬儀費用や納税資金の精算を確認します。
残高証明仮払い死亡時に自宅、金庫、財布、貸金庫などに存在した現金は対象です。発見日時、場所、立会人、金額を記録し、単独で費消しない管理が重要です。
保管証拠証券口座、銘柄、数量、評価日、配当、為替、売却時期を確認します。相続税評価と遺産分割上の評価は目的が異なるため、基準時点を明確にします。
証券口座評価時点会社支配、後継者、議決権、譲渡制限、個人保証、会社への貸付金、納税猶予などを一体で見ます。税務評価だけでなく実質価値や換価可能性も問題になります。
事業承継専門評価契約書、借用書、請求書、メール、帳簿、弁済期、時効、債務者の資力を確認します。額面ではなく回収可能価値を考える必要があります。
債権回収可能性名義、所在、写真、鑑定、買取査定、購入履歴、保険証券を確認します。高価品は持ち去りや評価差が争点になりやすい財産です。
所在鑑定不動産がある相続では、2024年4月1日から始まった相続登記義務化にも注意が必要です。相続で不動産を取得したことを知った日から一定期間内の申請が求められ、制度開始前の相続にも経過措置を通じて影響します。
対象外財産も、税務や精算では重要になることがあります。
対象外になりやすい財産は、受取人固有の権利、生活保障給付、死亡後費用、祭祀財産、債務などです。次の一覧は対象外とされやすい理由を示すもので、協議書本文に書く財産と、説明資料や税務資料で管理する項目を分けて読むことが重要です。
受取人指定がある場合、保険金請求権は原則として受取人固有の権利です。ただし、遺産総額との比率や相続人間の公平を大きく害する事情がある場合は、特別受益に準じた調整が問題になることがあります。
退職金規程や共済規程で遺族の受給順位が定められている場合、受給者固有の権利とされやすい財産です。規程がなく未払退職金と評価される場合は遺産性を検討します。
法律上の要件を満たす遺族が自己の権利として受ける生活保障給付です。未支給年金も、一定遺族の固有権として扱われることがあります。
借入金や未払金は相続されますが、遺産分割で取得財産として分ける対象ではありません。相続人間の内部合意と債権者に対する責任は区別します。
葬儀費用は死亡後に発生する費用で、香典は通常、喪主・遺族への互助的給付です。相続税上の控除や相続人間の精算とは分けて整理します。
墓地、墓石、仏壇、位牌、系譜などは通常の分割対象とは別に、祭祀を主宰すべき者が承継する特別な規律に従います。
死亡後から遺産分割までに発生した賃料は、遺産とは別個の財産として各共同相続人が相続分に応じて取得するとされています。
すでに受贈者の財産であり、原則として分割対象ではありません。ただし、特別受益として具体的相続分の計算に影響することがあります。
名義預金、生前贈与、使途不明金、遺言、共有、信託は証拠と構成が重要です。
名義預金は、形式上は配偶者、子、孫などの名義でも、実質的には被相続人の資金で形成・管理されていた預金です。原資、通帳・印鑑・キャッシュカードの管理、名義人の認識、自由な引出しの可否、贈与契約書や贈与税申告の有無から判断します。
生前贈与された不動産、現金、学費、住宅取得資金、事業資金などは、原則として現在の分割対象財産ではありません。ただし、共同相続人間の公平を図るため、特別受益として具体的相続分の計算に影響することがあります。
寄与分は、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした相続人について、具体的相続分を調整する制度です。介護報酬という財産を当然に取得する制度ではなく、取得割合の調整として理解します。
使途不明金は、引出しや処分の時期によって検討すべき構成が変わります。次の比較表は時期別の典型例を示すもので、どの資料を集め、どの手続で扱うかを読み取るために重要です。
| 時期 | 典型例 | 主な法的構成 |
|---|---|---|
| 生前の引出し | 介護していた相続人が死亡前に多額の預金を引き出した | 被相続人の意思に基づく支出か、贈与か、不当利得・不法行為か、損害賠償請求権が相続されたかを検討します。 |
| 死亡後・分割前の引出し | 相続人の一人が死亡後にキャッシュカードで預金を引き出した | 遺産処分、民法906条の2によるみなし、他相続人への不当利得返還、金融機関手続違反などを検討します。 |
| 分割後の不履行 | 取得者が代償金を払わない、売却代金を分配しない | 協議書、調停調書、審判に基づく履行請求や強制執行を検討します。 |
遺言で特定財産の承継者が定められていれば、その財産は原則として協議で改めて分ける対象にはなりません。遺言の方式、検認の要否、遺言執行者、未処分財産、遺留分、登記、税務との関係を確認します。
共有不動産では、被相続人が有していた共有持分だけが分割対象です。家族信託では、信託財産そのものではなく、受益権、残余財産受益権、帰属権利などが相続で問題になることがあります。
調停・審判では、相続人、遺言、遺産の範囲、評価、分割方法を順に整理します。
相続人間の協議がまとまらない場合、家庭裁判所の遺産分割調停を利用できます。次の時系列は、調停・審判で整理される主要項目の順番を示します。順序を把握すると、対象財産の争いがどの段階で問題になるかを読み取れます。
戸籍により、誰が相続人かを確定します。
遺言で処分済みの財産があるか、遺言が有効かを確認します。
どの財産が遺産分割対象かを確定します。
不動産、株式、動産、債権などの価額を評価します。
具体的相続分を調整します。
現物、代償、換価、共有の方法を検討します。
遺産の範囲の争いでは、名義預金、不動産の真の所有者、死亡保険金の扱い、生前引出し分をどのように扱うかなどが問題になります。所有権そのものに重大な争いがある場合や第三者が関係する場合は、民事訴訟で確認・返還・損害賠償を求める必要が生じることがあります。
次の表は、遺産の範囲を確定するために集める主な資料を分野別に示しています。資料不足は協議や調停の停滞につながるため重要で、どの財産にどの証拠が必要かを読み取れます。
| 分野 | 主な資料 |
|---|---|
| 相続人 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍、住民票、法定相続情報一覧図 |
| 不動産 | 登記事項証明書、固定資産評価証明書、名寄帳、課税明細書、公図、測量図、賃貸借契約書 |
| 預貯金 | 残高証明書、取引履歴、定期預金証書、貸金庫契約、金融機関の相続手続書類 |
| 証券 | 残高証明書、取引報告書、配当通知、特定口座資料、株主名簿 |
| 保険 | 保険証券、契約内容照会、受取人、保険料負担者、支払通知書 |
| 退職金 | 就業規則、退職金規程、支給決定通知、役員退職慰労金議事録 |
| 年金 | 年金証書、未支給年金請求書、遺族年金関係書類 |
| 債務 | 金銭消費貸借契約、ローン残高証明、請求書、税金通知、保証契約 |
| 葬儀 | 葬儀社請求書、領収書、香典帳、香典返し明細 |
| 使途不明金 | 通帳履歴、ATM出金場所、領収書、医療・介護費明細、介護記録、判断能力資料 |
みなし相続財産、債務控除、評価時点を分けて考えます。
相続税法は、民法上の相続財産だけでなく、一定の生命保険金や死亡退職金を課税対象に含めることがあります。次の比較表は、民法上の分割対象性と相続税上の扱いの違いを示します。税務資料を協議書へそのまま転記しないために重要で、左右の結論が一致しない財産を読み取れます。
| 財産 | 民法上の遺産分割 | 相続税上の扱い |
|---|---|---|
| 受取人指定の死亡保険金 | 原則対象外 | 被相続人が保険料負担者なら、みなし相続財産として課税対象になり得ます。非課税枠もあります。 |
| 死亡退職金 | 規程により対象外となることが多い | 死亡後一定期間内に支給が確定した退職手当金等は、みなし相続財産として課税対象になり得ます。 |
| 未支給年金 | 原則対象外 | 一定遺族の固有権であり、相続税対象ではなく、受給者の一時所得と整理されることがあります。 |
| 葬儀費用 | 財産ではない | 一定の葬式費用は相続税の計算で控除対象になることがあります。 |
| 債務 | 分割対象財産ではない | 死亡時に存在し確実な債務は、相続税計算上控除できる場合があります。 |
相続税申告書には、生命保険金、死亡退職金、相続時精算課税適用財産、一定期間内の贈与財産、債務、葬式費用など、分割対象財産とは異なる項目が載ることがあります。相続税申告書は課税価格の資料であり、遺産分割協議書は民法上の権利帰属を確定する資料です。
争点に応じて、法律・登記・税務・不動産・年金・金融の担当領域を分けます。
対象財産の判断は、法律だけでなく登記、税務、評価、保険、年金、金融手続とつながります。次の表は専門職ごとの主な確認領域を示すものです。争点に合う相談先を見極めるために重要で、どの論点を誰に確認するかを読み取れます。
| 担当領域 | 主な確認ポイント |
|---|---|
| 弁護士 | 遺産の範囲、使途不明金、遺留分、特別受益、寄与分、遺言無効、調停、審判、訴訟を確認します。 |
| 司法書士 | 相続登記、不動産名義変更、戸籍収集、法定相続情報一覧図、登記に耐える協議書表記を確認します。 |
| 税理士 | 相続税申告、相続税評価、みなし相続財産、債務控除、葬式費用控除、小規模宅地等の特例を確認します。 |
| 行政書士 | 紛争性がなく、税務・登記申請代理を伴わない範囲で、協議書や金融機関手続書類の整理に関与します。 |
| 公証人・遺言執行者・信託銀行 | 公正証書遺言、遺言内容の実現、預貯金払戻し、不動産登記、株式移管、遺言信託を確認します。 |
| 不動産鑑定士・土地家屋調査士・宅地建物取引士 | 不動産評価、境界、分筆、未登記建物、売却、媒介契約、譲渡所得税資料を確認します。 |
| 公認会計士・中小企業診断士・弁理士 | 非上場株式評価、会社財務、事業承継、M&A、特許・商標等の移転登録を確認します。 |
| 社会保険労務士・FP・金融機関・保険会社 | 遺族年金、未支給年金、生活設計、残高証明、名義変更、保険金請求、必要書類案内を確認します。 |
財産目録、対象外財産の説明資料、協議書の記載を分けて作ります。
財産調査では、財産目録が単なる金額表になっていると、対象外財産や要調査財産が抜けます。次の表は財産目録に置きたい列を示すもので、後で協議書・税務・登記へつなげるために重要です。列ごとに、何を証拠で裏付けるかを読み取れます。
| 列 | 記載内容 |
|---|---|
| 番号 | 財産番号 |
| 種類 | 不動産、預金、証券、保険、退職金、債務など |
| 名義・契約者 | 被相続人、相続人、会社、受取人など |
| 所在・金融機関 | 支店、口座番号、所在地、証券会社など |
| 死亡時残高・数量 | 相続開始時点の残高・数量 |
| 現在価値 | 分割時または評価時の金額 |
| 遺産分割対象性 | 対象、対象外、要調査 |
| 根拠 | 登記、残高証明、契約、判例、規程など |
| 税務上の扱い | 相続税対象、非課税、みなし相続財産、債務控除など |
| 備考 | 争点、保管者、費消、評価方法 |
対象外財産も、相続人の納得や税務上の整理に関係します。次の例は、協議書本文に分ける財産として載せない項目も別紙で見える化する考え方を示します。金額、受取人、対象性、税務・精算上の備考を分けて読むことが重要です。
| 項目 | 金額 | 受取人・負担者 | 対象性 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 死亡保険金 | 3,000万円 | 長男 | 原則対象外 | 相続税のみなし相続財産。特別受益的調整の主張があり得ます。 |
| 葬儀費用 | 250万円 | 配偶者が支払 | 財産ではない | 一定範囲で債務控除。香典充当後の残額を協議します。 |
| 未支給年金 | 20万円 | 配偶者 | 対象外 | 受給者の一時所得として扱われることがあります。 |
| 死亡後賃料 | 月30万円 | 相続人代表が受領 | 遺産そのものではない | 各相続人の相続分に応じて別途精算します。 |
初動、財産分類、争いがある場合の対応を確認します。
次の表は、財産分類で迷ったときに確認する問いを並べたものです。各行は前の問いを通過した後に見る順序になっているため重要で、対象、対象外、要調査のどれに寄るかを読み取れます。
| 質問 | はいの場合 | いいえの場合 |
|---|---|---|
| 死亡時に存在した財産か | 次へ | 原則として遺産本体ではありません。死亡後収益・固有権を検討します。 |
| 被相続人に実質帰属していたか | 次へ | 他人の固有財産の可能性があります。 |
| 一身専属権ではないか | 次へ | 相続されず、分割対象外です。 |
| 受取人固有の権利ではないか | 次へ | 保険金・年金・退職金等として対象外の可能性があります。 |
| 債務ではなくプラス財産か | 次へ | 債務承継・債務控除・内部負担の問題です。 |
| 分割時にも存在するか | 原則対象 | 処分・費消・みなし処理・損害賠償を検討します。 |
| 評価できるか | 分割方法を検討 | 鑑定・査定・資料収集が必要です。 |
回答は一般的な制度説明であり、個別事情によって結論は変わります。
一般的には、受取人指定のある死亡保険金は受取人固有の権利であり、遺産分割対象ではないとされています。ただし、保険金額、遺産総額との比率、相続人間の関係、生活実態などによって、特別受益に準じた調整が問題になる可能性があります。具体的な対応は、契約資料や遺産全体を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、現在の最高裁判例では、共同相続された普通預金、通常貯金、定期貯金は当然に法定相続分で分割されるものではなく、遺産分割の対象になるとされています。ただし、預金の種類、払戻し状況、相続人間の合意、仮払い制度の利用状況によって処理は変わる可能性があります。
一般的には、死亡時までに発生していた未収賃料は遺産に含まれ得ます。一方、死亡後から遺産分割までに発生した賃料は、遺産とは別個の財産であり、各相続人が相続分に応じて取得するとされています。ただし、調停で一括精算するか、別途精算するかは事案により変わります。
一般的には、葬儀費用は遺産分割対象財産ではなく、被相続人の死亡後に発生する費用とされています。喪主負担、相続人間の合意、香典充当、遺産からの実質的精算など、家族関係や支出経緯によって処理が変わる可能性があります。具体的には領収書や香典帳を整理して専門家へ確認する必要があります。
一般的には、相続人間の内部合意として特定の相続人が負担する取り決めをすることはあります。ただし、債権者の同意がない限り、他の相続人が債権者に対して当然に免責されるわけではありません。住宅ローンや事業債務では、金融機関との手続や団体信用生命保険の有無を確認する必要があります。
一般的には、名義預金は形式名義だけでなく、資金の出所、通帳・印鑑の管理、名義人の認識、贈与の有無、自由な使用可能性から実質帰属を判断するとされています。ただし、事実認定が難しいため、通帳履歴、贈与資料、管理状況を整理して専門家へ相談する必要があります。
一般的には、退職金規程や支給根拠により結論が変わります。遺族の受給順位が規程で定められ生活保障的性格が強い場合は、受給者固有の権利として対象外となりやすいとされています。一方、被相続人本人に発生した未払退職金と評価される場合は、遺産に含まれる可能性があります。
一般的には、遺族年金は法律上の要件を満たす遺族が自己の権利として受ける生活保障給付であり、遺産分割対象ではないとされています。未支給年金も一定遺族の固有権として扱われることがあります。ただし、受給要件や手続は年金制度ごとに異なるため、年金事務所や専門家への確認が必要です。
一般的には、引出しの日時、金額、方法、使途、領収書、死亡前後の状況を確認するとされています。死亡後の引出しでは、遺産処分、不当利得、損害賠償、みなし処理などが問題になる可能性があります。事実関係で結論が大きく変わるため、証拠を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、相続税申告書と遺産分割協議書は目的が異なります。申告書にはみなし相続財産、債務、葬式費用、生前贈与などが含まれることがありますが、協議書には民法上、共同相続人が分けるべき財産を記載します。税務資料と協議書は連携させる必要がありますが、同一ではありません。
協議、税務、登記、調停・審判のすべてに影響します。
この区別は、相続実務の入口でありながら専門性の高い論点です。土地建物、預貯金、株式、現金のような典型的な分割対象財産がある一方で、生命保険金、死亡退職金、遺族年金、未支給年金、香典、葬儀費用、債務、祭祀財産、相続開始後賃料のように、相続と関係していても分割対象とは限らない財産があります。
次の重要ポイントは、財産ごとの確認順序をまとめたものです。協議書作成や調停準備の前に確認することで、何を分け、何を別管理し、何を専門職へ確認すべきかを読み取れます。
対象財産を誤ると、協議書が不完全になり、相続税申告、相続登記、金融機関手続、保険金請求、調停・審判、訴訟に影響します。
公的資料、法令、裁判例、税務資料を中心に整理しています。