家事従事者の基礎収入を、最新公表統計の年額、日額換算、赤い本掲載値、自賠責基準との違いに分けて整理します。
家事従事者の基礎収入を、最新公表統計の年額、日額換算、赤い本掲載値、自賠責基準との違いに分けて整理します。
最新統計、赤い本、自賠責基準を同じ数字として扱わないことが出発点です。
主婦の逸失利益でいう「主婦」は、実務上は家事従事者を意味します。専業主婦だけでなく、一定の場合の兼業主婦や、家族のために家事を主に担う主夫も問題になります。
結論を整理すると、最新の公表統計ベースでは女性・学歴計・全年齢平均の年収換算額は4,370,700円です。これを365日で割ると約11,975円/日になります。ただし、赤い本2026年版の掲載値は令和6年ベースの4,194,400円が前面に出る場面があります。
下の重要ポイントは、どの数字がどの場面で使われやすいかを表しています。数字の違いは請求額や交渉の見方に直結するため、まず「最新公表統計」「赤い本掲載値」「自賠責の入口基準」を分けて読み取ることが重要です。
最新統計の年額は4,370,700円、日額換算は約11,975円、赤い本2026年版で話題になりやすい令和6年ベースは4,194,400円です。
休業損害との違い、家事従事者という用語、最高裁判例の考え方を整理します。
逸失利益とは、事故がなければ将来得られたはずの利益を、事故のために失った損害です。交通事故では、症状固定後も後遺障害が残って将来の労働能力や家事能力が下がる後遺障害逸失利益と、死亡しなければ将来得られたはずの収益を失う死亡逸失利益が問題になります。
一方、治療中に家事や仕事ができなかった損害は、通常は休業損害として別に整理されます。この違いを混同すると、主婦休損と主婦の逸失利益が同じものに見えてしまいます。
次の比較一覧は、交通事故で混同されやすい損害の違いを表しています。どの時期の損害か、何を評価するかが違うため、計算の入り口を読み違えないことが大切です。
症状固定後も後遺障害が残り、将来の労働能力や家事能力が低下したことによる損害です。
被害者が死亡しなければ将来得られたはずの収益を失った損害です。生活費控除なども問題になります。
治療中に仕事や家事ができなかったことによる損害です。逸失利益とは時期も計算の考え方も異なります。
最高裁は、家事に専念する妻の家事労働には財産的価値があり、金銭収入がないことだけを理由に損害を否定できないと判示しました。この考え方が、今日の交通事故実務における家事従事者の逸失利益算定の出発点です。
現在の公的基準では、家事従事者は性別や年齢にかかわらず、原則として家事を専業にする者と整理されています。検索語としては「主婦」が一般的でも、制度や実務では「家事従事者」と理解する方が正確です。
概況の月額と、実務で使う年収換算額は同じではありません。
実務で賃金センサスと呼ばれているものは、厚生労働省の賃金構造基本統計調査です。性別、年齢、学歴、職種、勤続年数などに応じた賃金構造を把握する調査です。
注意したいのは、厚生労働省の概況に出る「賃金」と、交通事故実務で年収換算表を作るときに使う数字が同じではない点です。令和7年概況では、一般労働者の賃金は女性で285.9千円とされていますが、これは調査年6月分の所定内給与額の平均です。
次の比較表は、概況の見出し数値と、逸失利益算定で問題になる年収換算の材料の違いを表しています。列ごとに「何の数値か」を分けて見ることで、単純に月額を12倍する誤解を避けられます。
| 見る場所 | 数値の性質 | 逸失利益での注意点 |
|---|---|---|
| 概況の賃金 | 調査年6月分の所定内給与額の平均 | 令和7年概況の女性285.9千円を12倍するだけでは、年収換算額にはなりません。 |
| 詳細表の現金給与額 | きまって支給する現金給与額 | 令和7年の女性・学歴計では304,700円を年額計算に使います。 |
| 詳細表の特別給与額 | 年間賞与その他特別給与額 | 令和7年の女性・学歴計では714,300円を加算します。 |
令和7年の女性・学歴計・全年齢平均を年収換算すると、304,700円に12を掛け、年間賞与その他特別給与額714,300円を加えます。計算式は304,700円 × 12 + 714,300円 = 4,370,700円です。
年齢別平均や赤い本掲載値との差も、同じ表で確認します。
最新の公表統計で答えるなら、女性・学歴計・全年齢平均の年収換算額は4,370,700円です。日額の目安は、4,370,700円を365日で割った約11,975円/日です。
次の比較表は、最新公表統計、日額換算、赤い本2026年版で話題になりやすい令和6年ベース、自賠責の休業損害入口基準を並べています。数字は制度ごとに意味が異なるため、金額の大小だけでなく、どの場面の数字かを読み取ることが重要です。
| 問題になる場面 | 基礎となる見方 | 押さえる数字 |
|---|---|---|
| 最新公表統計で基礎収入を答える | 女性・学歴計・全年齢平均の年収換算 | 4,370,700円 |
| 上記を日額でみる | 年額 ÷ 365 | 約11,975円/日 |
| 赤い本2026年版ベースで議論する | 令和6年賃金センサス段階 | 4,194,400円 |
| 自賠責の傷害休業損害の入口基準 | 原則日額 | 6,100円/日 |
年齢別の年収換算額には差があります。次の横方向の割合表示は、全年齢平均4,370,700円を100%として、代表的な年齢階級の金額がどの程度近いかを表しています。高齢家事従事者で年齢別平均が問題になりやすい理由を、金額差として読み取ってください。
赤い本は毎年2月改訂ですが、赤い本2026年版は2026年2月6日発行、令和7年賃金構造基本統計調査の詳細表公開日は2026年3月24日です。そのため、赤い本2026年版には令和7年調査がまだ反映されていません。
統計額をそのまま当てはめられるかは、家事の実態と証拠で変わります。
家事従事者の基礎収入は原則として女性・学歴計・全年齢平均が出発点になります。ただし、高齢者、兼業主婦、一人暮らしなどでは、統計額をそのまま当てはめることに争いが生じやすくなります。
次の注意要素の一覧は、主婦の逸失利益で金額や認定が変わりやすい事情を表しています。どの要素も、家事労働の実態をどこまで説明できるかに関わるため、自分の事案で当てはまる点を確認することが重要です。
59歳以上で年齢別平均給与額が全年齢平均を下回る場合、年齢別平均が問題になります。身体状態や家事内容による低い評価も争点になります。
給与収入と家事労働分を単純に足しません。一般的には、就労収入と平均賃金の高い方を基礎にする整理が問題になります。
誰のための家事を担っていたのかが争われやすくなります。家族のための家事か、自分の身の回りの家事かで評価が変わる可能性があります。
炊事、洗濯、掃除、買物、送迎、介護、育児などの具体的内容と、事故前後の変化を説明できるかが重要です。
保険会社提示が低くなりやすいのは、高齢の家事従事者、パート就労がある兼業主婦、一人暮らし、家族の支援で代替負担が見えにくい事案、画像所見に乏しい痛み中心の症状、家事内容の具体的立証が弱い事案です。
同じ家事労働の損害でも、治療中か将来かで数字の意味が変わります。
自賠責の支払基準では、傷害による休業損害は1日につき原則6,100円とされ、家事従事者については休業による収入減少があったものとみなすと整理されています。立証資料によりこれを上回る実額が明らかな場合は、その実額が問題になります。
次の比較一覧は、自賠責の休業損害、裁判実務で議論される賃金センサス日額、後遺障害逸失利益、死亡逸失利益の違いを表しています。数字が同じ「主婦の損害」として語られても、列ごとに対象時期と計算目的が異なる点を読み取ってください。
| 分類 | 対象時期 | 主な数字・考え方 |
|---|---|---|
| 自賠責の休業損害 | 治療中 | 原則6,100円/日。家事従事者は休業による収入減少があったものとみなされます。 |
| 裁判実務での休業損害 | 治療中 | 女性全年齢平均賃金を365日で割った日額が議論されることがあります。令和7年ベースなら約11,975円/日です。 |
| 後遺障害逸失利益 | 症状固定後の将来 | 基礎収入に労働能力喪失率とライプニッツ係数を掛けます。 |
| 死亡逸失利益 | 死亡しなければ得られた将来収益 | 基礎収入から生活費控除を行い、就労可能年数のライプニッツ係数を掛けます。 |
また、自賠責の全年齢平均給与額表は、最新の賃金センサスそのものではなく、平成30年賃金構造基本統計調査を基礎に、その後の賃金動向を1.003倍で調整した支払実務用の表です。名称が似ていても、裁判所実務で議論する最新年収額とは一致しません。
基礎収入だけでなく、喪失率、期間、生活費控除が最終額を左右します。
後遺障害逸失利益と死亡逸失利益では、基礎収入に掛け合わせる要素が異なります。主婦の逸失利益で賃金センサス額がいくらかを確認しても、最終額は計算式全体で決まります。
次の判断の流れは、主婦の逸失利益の計算で最初に分けるべき順番を表しています。上から順に、後遺障害か死亡かを分け、必要な計算要素を確認する読み方です。
誰のために、どの程度の家事を担っていたかを整理します。
事故後の損害類型により、使う計算式が変わります。
症状固定後の労働能力や家事能力の低下を評価します。
被扶養者の有無や就労可能年数が最終額に影響します。
後遺障害逸失利益は、一般に基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数で整理されます。ここでいう基礎収入が、家事従事者では賃金センサス額になります。
死亡逸失利益は、一般に(基礎収入 - 生活費控除) × 就労可能年数に対応するライプニッツ係数で整理されます。生活費の立証が難しい場合、被扶養者がいるときは35%、いないときは50%を控除する運用も示されています。
統計額を使えるかは、家事の実態と医学的資料の質で変わります。
実務では、単に「主婦です」と言うだけでは足りません。誰のための家事を担っていたか、炊事、洗濯、掃除、買物、送迎、介護、育児などの具体的内容、事故前後の変化、家族が代替せざるを得なくなった内容、家事代行や外食増加などの代替コストが重要になります。
次の資料整理の一覧は、主婦の逸失利益を説明するために見落としやすい証拠の種類を表しています。医学的資料と生活実態の資料を分けて集めることで、家事能力の低下を外部に説明しやすくなります。
事故前後の炊事、洗濯、掃除、買物、送迎、介護、育児の変化を具体化します。
生活実態家族が代わりに担った作業、家事代行、ヘルパー、外食増加などを記録します。
代替コスト家事労働は外から見えにくいため、医学的制限と家事遂行困難を結びつけて説明できるかが重要です。特に高齢者や兼業者では、家事負担の中身を具体的に示せるかで評価が変わる可能性があります。
個別事案の結論ではなく、制度の見方として整理します。
一般的には、家事労働には財産的価値があると整理されています。ただし、家事従事者性や後遺障害・死亡との因果関係、資料の内容によって評価は変わる可能性があります。具体的な見通しは、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、女性・学歴計・全年齢平均が出発点とされる場面が多いです。ただし、高齢事案、兼業事案、家事内容が限定的な事案などでは、年齢別平均や減額評価が問題になる可能性があります。
一般的には、就労収入と平均賃金の高い方を採る整理が問題になり、両者を単純に合算する考え方は慎重に扱われます。具体的には、就労実態、家事負担、収入資料によって判断が変わります。
一般的には、6,100円は傷害による休業損害の入口基準として説明される数字です。後遺障害逸失利益や死亡逸失利益で使う基礎収入とは別の場面の数字です。
数字を丸暗記するより、どの場面で使う数字かを確認することが重要です。
2026年4月時点の整理では、最新の公表統計ベースの主婦の逸失利益の基礎収入は4,370,700円、1日換算では約11,975円です。ただし、赤い本2026年版の掲載値は令和6年ベースの4,194,400円が話題になる場面があります。
原則は女性・学歴計・全年齢平均ですが、高齢者、兼業主婦、家事内容が限定的な事案では修正される可能性があります。自賠責の休業損害日額6,100円や、自賠責用の給与額表とも混同しないことが大切です。