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公務員の逸失利益の計算で
注意すべきポイント

交通事故で公務員本人または遺族が逸失利益を考えるときに、給与制度、昇給、60歳以降、職務制限、公的給付との関係を整理します。

6点最初に見る論点
7割60歳以降の給与水準
690万例示計算の合計
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公務員の逸失利益の計算で 注意すべきポイント

交通事故で公務員本人または遺族が逸失利益を考えるときに、給与制度、昇給、60歳以降、職務制限、公的給付との関係を整理します。

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公務員の逸失利益の計算で 注意すべきポイント
交通事故で公務員本人または遺族が逸失利益を考えるときに、給与制度、昇給、60歳以降、職務制限、公的給付との関係を整理します。
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  • 公務員の逸失利益の計算で 注意すべきポイント
  • 交通事故で公務員本人または遺族が逸失利益を考えるときに、給与制度、昇給、60歳以降、職務制限、公的給付との関係を整理します。

POINT 1

  • 公務員の逸失利益の計算で注意すべきポイント
  • 制度、職務、給付調整を分けて数字の根拠を確認します。
  • 俸給だけで見ない
  • 若年者は補正を検討
  • 昇給・昇格を証拠化

POINT 2

  • 公務員の逸失利益とは何か
  • 列は左から種類、基本式、検討要素という順で、基礎収入、控除、喪失率、期間、中間利息控除がどこに入るかを読み取ります。
  • 公務員の逸失利益が難しい理由は、民間会社員と比べて、収入構造と将来賃金の見通しに制度要因が強く入り込むからである。
  • 人事院資料によれば、国家公務員の給与は、俸給とそれを補完する 諸手当 から成り、さらに 期末手当や 勤勉手当がある。
  • しかも俸給は、職務の級と号俸、人事評価、昇格、昇給といった制度によって動く。

POINT 3

  • 公務員の逸失利益が難しい理由
  • 3-1. 出発点は「事故前の現実収入」だが、俸給だけでは足りない
  • 3-2. すべての手当が同じように入るわけではない
  • 3-3. 警察官、消防職、医療職では時間外・特殊勤務の比重が大きい
  • 3-4. 実務で最低限集めるべき基礎収入資料

POINT 4

  • 公務員の逸失利益で基礎収入を俸給だけで見ない
  • 4-1. 賃金センサスは「公務員給与そのもの」ではない
  • 4-2. それでも賃金センサスが使われることがある
  • 4-3. 賃金センサスを使うべきでない典型
  • 左から分類、代表例、検討の着眼点という順で、すべてを一律に入れるのではなく、継続性と労務対価性を読み取ります。

POINT 5

  • 公務員の逸失利益で賃金センサスを使う場面と使わない場面
  • 5-1. 公務員の将来収入は制度的に上がるが、自動的ではない
  • 5-2. 事故時年齢で立証の重みが変わる
  • 5-3. 昇進予測に必要な証拠
  • このため、公務員では、将来収入の上昇を見込むこと自体は不自然ではない。

POINT 6

  • 公務員の逸失利益で昇給・昇格・昇任をどう見るか
  • 1. 将来昇給の幅を示す:俸給表の将来推移、先輩職員の給与モデル、標準昇進モデルが重要になります。
  • 2. 管理職や専門職としての蓋然性を示す:人事評価、異動歴、同期比較、昇任慣行が中心になります。
  • 3. 60歳以降の制度を反映する:給与7割水準、役職定年、再任用、短時間勤務制度を分けて確認します。

POINT 7

  • 公務員の逸失利益で60歳以降・定年引上げ・再任用を分ける
  • 1. 症状固定日から60歳まで:事故前収入や昇給見込みを基礎に、60歳までの期間を計算します。
  • 2. 60歳から定年年齢まで:給与7割水準、役職定年、手当の変化を反映します。
  • 3. 定年後の就労可能期間:再任用、短時間勤務、暫定再任用、民間就労の蓋然性を分けて検討します。

POINT 8

  • 公務員の逸失利益で労働能力喪失率を等級表だけで決めない
  • 高次脳機能障害
  • 注意障害、記憶障害、遂行機能障害は、文書作成、判断、対人調整、昇任評価に影響し得ます。
  • PTSDや不眠
  • 現場対応、夜勤、対人業務、緊急時判断への制限が問題になり得ます。

まとめ

  • 公務員の逸失利益の計算で 注意すべきポイント
  • 公務員の逸失利益の計算で注意すべきポイント:制度、職務、給付調整を分けて数字の根拠を確認します。
  • 公務員の逸失利益とは何か:列は左から種類、基本式、検討要素という順で、基礎収入、控除、喪失率、期間、中間利息控除がどこに入るかを読み取ります。
  • 公務員の逸失利益が難しい理由:3-1. 出発点は「事故前の現実収入」だが、俸給だけでは足りない
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

公務員の逸失利益の計算で注意すべきポイント

制度、職務、給付調整を分けて数字の根拠を確認します。

次の重要ポイントは、公務員の逸失利益計算で最初に確認したい6つの論点を並べたものです。読者にとって重要なのは、給与制度、職務能力、給付調整を別々に確認し、どれか一つの数字だけで結論を出さないことです。

POINT 01

俸給だけで見ない

俸給月額だけでなく、地域手当、特殊勤務手当、超過勤務手当、期末手当、勤勉手当などを分解します。

POINT 02

若年者は補正を検討

事故時収入が低い若年公務員では、将来昇給や賃金センサス補正が問題になり得ます。

POINT 03

昇給・昇格を証拠化

号俸上昇、職務の級の上昇、昇任見込みは、評価資料や同期比較で具体化します。

POINT 04

60歳以降を分ける

給与7割水準、定年引上げ、役職定年、再任用を期間分割して考えます。

POINT 05

喪失率を個別化

後遺障害等級だけでなく、職務内容と実際の能力低下をつなげます。

POINT 06

給付調整を慎重に

公務災害補償、共済、年金、退職手当は、制度趣旨ごとに控除の可否を検討します。

1-1. 逸失利益の基本概念

逸失利益とは、交通事故がなければ将来得られたはずの収入が、事故によって失われた損害をいう。典型例は、次の2種類である。

  • 死亡逸失利益

被害者が死亡しなければ将来得られたはずの収入

  • 後遺障害逸失利益

被害者が生存していても、後遺障害のために労働能力が低下し、将来の収入が減る損害

これに対し、休業損害は治療中に現実に働けなかった期間の減収であり、逸失利益とは区別される。

1-2. 計算式の骨格

実務上の骨格は概ね次のとおりである。

後遺障害逸失利益

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応する中間利息控除後の係数

死亡逸失利益

基礎収入 × (1 - 生活費控除率) × 就労可能期間に対応する中間利息控除後の係数

ここでいう「中間利息控除」とは、将来得るはずの収入を現在一括で受け取る以上、その運用益相当分を控除して現在価値に引き直す作業をいう。2020年の民法改正後は、法定利率が年3%を出発点とする変動制に改められており、交通事故の損害賠償や逸失利益計算でも、事故時点の適用利率と経過措置の確認が重要である。

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Section 01

公務員の逸失利益とは何か

次の比較表は、逸失利益の種類、計算式、確認すべき要素を整理しています。列は左から種類、基本式、検討要素という順で、基礎収入、控除、喪失率、期間、中間利息控除がどこに入るかを読み取ります。

種類基本式検討要素
後遺障害逸失利益基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応する係数基礎収入、喪失率、喪失期間、事故時点の法定利率を確認します。
死亡逸失利益基礎収入 × 生活費控除後の割合 × 就労可能期間に対応する係数基礎収入、生活費控除率、就労可能期間、中間利息控除を確認します。
休業損害治療中に現実に働けなかった期間の減収逸失利益とは対象期間が異なります。

公務員の逸失利益が難しい理由は、民間会社員と比べて、収入構造と将来賃金の見通しに制度要因が強く入り込むからである。人事院資料によれば、国家公務員の給与は、俸給とそれを補完する諸手当から成り、さらに期末手当勤勉手当がある。しかも俸給は、職務の級と号俸、人事評価、昇格、昇給といった制度によって動く。

このため、公務員事案では、次の論点が重なりやすい。

  • 俸給表、級、号俸、職種別俸給表の違い
  • 地域手当、扶養手当、住居手当、通勤手当、特殊勤務手当、超過勤務手当の取扱い
  • 期末手当、勤勉手当をどのように年収に織り込むか
  • 警察官、消防職、医療職、教員、研究職など職種ごとの昇進経路
  • 地方公務員では自治体ごとの給与条例、退職手当条例、勤務条件差
  • 60歳以降の給与水準、役職定年、定年引上げ、再任用・短時間勤務制度
  • 公務災害補償、共済給付、遺族年金、退職手当との損益相殺的調整

つまり、公務員の逸失利益は、単なる賃金計算ではなく、公法的な身分制度と私法上の損害賠償法理が交差する論点なのである。

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Section 02

公務員の逸失利益が難しい理由

3-1. 出発点は「事故前の現実収入」だが、俸給だけでは足りない

公務員の逸失利益計算で最初にやるべきことは、事故前の年間総収入の把握である。ここで俸給月額だけをつかんで終えるのは危険である。人事院資料上も、国家公務員の給与は俸給と諸手当から成り、期末手当・勤勉手当が別に支給される構造である。

したがって、基礎収入の候補としては、少なくとも次を分解して検討する必要がある。

  • 俸給
  • 地域手当
  • 扶養手当
  • 住居手当
  • 通勤手当
  • 単身赴任手当
  • 広域異動手当
  • 特殊勤務手当
  • 超過勤務手当
  • 期末手当
  • 勤勉手当
  • その職種に固有の手当

3-2. すべての手当が同じように入るわけではない

ここで重要なのは、手当を一律に「入る」「入らない」で処理しないことである。実務では、概ね次の観点で仕分ける。

A. 継続性が高く、労務対価性が強いもの

俸給、地域手当、期末手当、勤勉手当、恒常的な特殊勤務手当、恒常的な超過勤務手当などは、基礎収入に組み込みやすい。

B. 生活補助的だが相当程度継続するもの

扶養手当、住居手当は、家族構成や住居事情に変更がなければ継続可能性がある。ただし、将来も当然に固定するとまでは言い難く、年齢や家族状況、転居可能性を見て証拠化が必要になる。

C. 実費弁償的性格が強いもの

通勤手当は、純粋な実費補填という側面が強い。事故がなければ支出も必要だったのであり、損害賠償上の逸失利益にどこまで組み込むかは慎重な整理が必要である。

D. 一時的、偶発的なもの

災害派遣、特定プロジェクト、臨時の繁忙、短期の宿日直増加などによる手当は、将来にわたり持続するかを別途立証しない限り、そのまま将来収入に投影するのは危険である。

3-3. 警察官、消防職、医療職では時間外・特殊勤務の比重が大きい

警察官、救急隊員、消防職、公立病院の医師・看護師では、夜勤、宿日直、呼出し、現場対応に伴う手当が年収の相当部分を占めることがある。こうした職種では、源泉徴収票だけでは足りず、給与明細1年分、勤務実績表、宿日直表、時間外命令簿、手当支給実績表まで取り寄せるべきである。

とりわけ、事故前の収入が高い理由が、通常の昇給ではなく、特定時期の長時間労働や人員不足にある場合、将来も同水準の手当収入が継続したかどうかは別問題である。逆に、慢性的に宿日直や特殊勤務が続いていたなら、それは将来収入の現実的な基礎となり得る。

3-4. 実務で最低限集めるべき基礎収入資料

  • 事故前3年分の源泉徴収票
  • 事故前2年から3年分の給与明細
  • 俸給表、辞令、級号俸資料
  • 期末手当・勤勉手当の支給実績
  • 人事評価資料
  • 勤務実績表、超過勤務命令簿
  • 特殊勤務手当の根拠規程
  • 地方公務員なら給与条例、規則、運用通知

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Section 03

公務員の逸失利益で基礎収入を俸給だけで見ない

次の比較表は、基礎収入に入れるかを検討する手当を、性質ごとに整理したものです。左から分類、代表例、検討の着眼点という順で、すべてを一律に入れるのではなく、継続性と労務対価性を読み取ります。

分類代表例検討の着眼点
継続性が高いもの俸給、地域手当、期末手当、勤勉手当、恒常的な特殊勤務手当基礎収入に組み込みやすいが、支給実績と将来継続性を確認します。
生活補助的なもの扶養手当、住居手当家族構成や住居事情の変化を確認します。
実費弁償的なもの通勤手当逸失利益に入れるか慎重に整理します。
一時的なもの災害派遣、短期繁忙、臨時プロジェクト将来も続く蓋然性を別途立証します。

4-1. 賃金センサスは「公務員給与そのもの」ではない

交通事故実務でいう「賃金センサス」は、通常、厚生労働省の賃金構造基本統計調査を指す。もっとも、少なくとも厚生労働省が公表する令和6年結果の概況は、10人以上の常用労働者を雇用する民営事業所を集計対象としている。したがって、その数値をそのまま「公務員給与統計」と同視するのは正確ではない。

この点は、公務員事案で非常に重要である。裁判所が賃金センサスを使うことがあるからといって、賃金センサスが当然に公務員の現実賃金を表すわけではない。

4-2. それでも賃金センサスが使われることがある

もっとも、若年公務員では、事故時点の現実収入が低くても、将来の昇給・昇格による収入上昇が相当程度見込まれる。そうした場合、裁判所が賃金センサスを補正的に用いることがある。

裁判所ウェブサイト掲載の警察官自殺事案では、被害者は24歳の警察官で、実収入は給与と賞与を合計して467万8695円であったが、裁判所は「若年の公務員で今後賃金増加が見込まれる」ことを踏まえ、基礎収入として551万7400円を採用した。

この事例から分かるのは、次のことである。

  • 公務員でも実収入が常に唯一の基礎収入とは限らない
  • とくに若年者では、将来昇給を見込んで統計値を用いる余地がある
  • ただし、その場合でも、公務員の昇給制度、年齢、職歴、職種、在籍状況を丁寧に検討する必要がある

4-3. 賃金センサスを使うべきでない典型

次のような場合、賃金センサスへの安易な置換えは危険である。

  • すでに相当年数勤務し、事故前年収が安定している中堅公務員
  • 特定の俸給表や役職、専門職手当によって現実収入が明確な者
  • 地方公務員で自治体条例上の給与体系が把握できる者
  • 定年間近で、将来賃金がむしろ下がる局面にある者

要するに、賃金センサスは補充的道具であって、万能の出発点ではない

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Section 04

公務員の逸失利益で賃金センサスを使う場面と使わない場面

5-1. 公務員の将来収入は制度的に上がるが、自動的ではない

人事院資料によれば、国家公務員の俸給は、職務の級と号俸によって決まり、人事評価に応じて昇格や昇給が行われ、毎年1月1日に標準4号俸の昇給がされる仕組みが示されている。

このため、公務員では、将来収入の上昇を見込むこと自体は不自然ではない。しかし、次の点に注意すべきである。

  • 号俸上昇職務の級の上昇は別である
  • 昇任は人事評価、ポスト、採用区分、年齢、組織事情に左右される
  • 警察、消防、教員、医療職、研究職では昇進経路が異なる
  • 管理職登用の蓋然性は、抽象論ではなく個別証拠で固める必要がある

5-2. 事故時年齢で立証の重みが変わる

若年層

若年公務員では、事故当時の収入が低くても、将来の昇給幅が比較的大きい。そのため、賃金センサス、俸給表の将来推移、先輩職員の給与モデル、採用後の標準昇進モデルが重要になる。

中堅層

40代前後では、事故前の実収入が将来予測の中心になる。ここで重要なのは、現に管理職候補であったか、専門職として高位級へ進む蓋然性があったか、あるいは既に昇進頭打ちに近かったかである。

高年齢層

50代後半以降では、定年前後の制度変更を無視すると誤差が大きい。ここでは、後述する60歳以降の給与水準、役職定年、再任用・短時間勤務制まで見ないと、将来収入の推計を誤る。

5-3. 昇進予測に必要な証拠

  • 採用区分、職種、俸給表の種類
  • 級号俸の推移表
  • 人事評価資料
  • 過去の辞令、異動歴
  • 同期、同職種、同年齢層の給与モデル
  • 所属組織の昇任慣行資料
  • 地方自治体なら給与条例、職員の給与に関する規則、運用基準

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Section 05

公務員の逸失利益で昇給・昇格・昇任をどう見るか

次の時系列は、事故時年齢によって将来収入の立証テーマが変わることを示しています。若年層は昇給余地、中堅層は昇任可能性、高年齢層は定年制度と再任用という順で、重視すべき資料が変わると読み取ってください。

若年層

将来昇給の幅を示す

俸給表の将来推移、先輩職員の給与モデル、標準昇進モデルが重要になります。

中堅層

管理職や専門職としての蓋然性を示す

人事評価、異動歴、同期比較、昇任慣行が中心になります。

高年齢層

60歳以降の制度を反映する

給与7割水準、役職定年、再任用、短時間勤務制度を分けて確認します。

6-1. 2023年以降、定年制度は大きく変わった

人事院の公表資料によれば、国家公務員では2023年4月から2年に1歳ずつ定年を引き上げ、2031年4月に65歳へ到達する制度が導入された。また、60歳超職員の給与水準は当分の間60歳時点の7割水準とされ、60歳以降定年前に退職する場合の退職手当の扱いや、定年前再任用短時間勤務制等も制度化されている。

この変更は、公務員の逸失利益計算に極めて大きい。

6-2. 60歳を境に「同じ年収が続く」と仮定してはいけない

公務員事案で典型的に誤るのは、事故時の年収をそのまま65歳、あるいは67歳まで一直線に延ばしてしまうことである。現在の制度下では、少なくとも国家公務員について、60歳以降は給与水準が7割となる制度があり、役職定年や短時間勤務制度も絡む。

したがって、実務では、次のように期間分割して計算する発想が必要である。

  1. 症状固定日から60歳まで
  2. 60歳から定年年齢まで
  3. 定年後になお就労蓋然性があれば、その後の就労可能期間

地方公務員でも、定年引上げは全国的な制度改正の影響を受けているが、具体的な給与水準、手当、再任用条件、条例運用には自治体差がある。したがって、地方公務員では必ず当該自治体の最新の給与条例、退職手当条例、任用制度資料を確認する必要がある

6-3. 再任用、短時間勤務、役職定年の違い

公務員の60歳以降の制度では、次の違いを混同してはならない。

  • 定年引上げによる継続勤務
  • 役職定年後の勤務
  • 定年前再任用短時間勤務
  • 暫定再任用

これらは、勤務時間、俸給水準、ボーナス、各種手当、退職手当の扱いが同じではない。人事院資料でも、暫定再任用制度では支給される手当と支給されない手当が整理され、退職手当はその地位にある間は支給されないことが示されている。

6-4. 具体例

たとえば、59歳の市役所職員が重い後遺障害を負い、労働能力を20%失ったとする。事故前の年間収入が700万円、60歳以降は制度上490万円相当とみるべき事案で、喪失期間を7年、事故時適用利率を年3%と仮定するなら、単純に

700万円 × 20% × 7年

とは計算しない。

この場合は、

  • 60歳までの2年分: 700万円 × 20% × 2年分の現在価値係数
  • 60歳以降5年分: 490万円 × 20% × 2年後から始まる5年分の現在価値係数

に分けて考えるべきである。年3%で現在価値化する例示計算では、

  • 前半: 140万円 × 1.9134696955
  • 後半: 98万円 × 4.3168132597

となり、合計は約690万9335円となる。

このように、60歳以降の制度を落とすと、計算結果は大きくずれうる。

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Section 06

公務員の逸失利益で60歳以降・定年引上げ・再任用を分ける

次の判断の流れは、60歳をまたぐ公務員の逸失利益を期間分割する考え方を示しています。上から順に、症状固定日から60歳、60歳から定年、定年後の就労蓋然性という期間に分けて読むことが重要です。

60歳以降を含む逸失利益の期間分割

症状固定日から60歳まで

事故前収入や昇給見込みを基礎に、60歳までの期間を計算します。

60歳から定年年齢まで

給与7割水準、役職定年、手当の変化を反映します。

定年後の就労可能期間

再任用、短時間勤務、暫定再任用、民間就労の蓋然性を分けて検討します。

7-1. 後遺障害等級は出発点にすぎない

交通事故実務では、自賠責の後遺障害等級に対応する喪失率表が広く参照される。しかし、公務員、とくに警察官、消防職、救急救命士、医師、看護師、リハビリ職など、身体機能や認知機能、判断速度、対人応対能力が職務遂行に直結する職種では、等級表の数字だけで喪失率を終わらせるのは危険である。

たとえば、同じ上肢障害でも、次のように職種で影響が異なる。

  • 警察官: 逮捕術、装備操作、長時間立位、迅速な制圧行動
  • 救急救命士: 搬送、挿管補助、胸骨圧迫、狭所活動
  • 外科医、整形外科医: 手術操作、細かい手指機能
  • 看護師: 移乗、点滴、夜勤、緊急時対応
  • 教員: 板書よりも、学級管理、保護者対応、長時間立位、行事対応

つまり、喪失率は障害の医学的評価職務内容の具体的評価を接続して認定しなければならない。

7-2. 高次脳機能障害、PTSD、慢性疼痛はとくに注意

公務員事案では、身体障害だけでなく、頭部外傷後の高次脳機能障害、外傷後ストレス障害、慢性疼痛、めまい、注意障害、不眠などが、勤務継続や昇任可能性に重大な影響を与える。これらは画像一枚で完結しないことが多く、以下の資料が重要になる。

  • 神経心理学検査
  • 主治医意見書
  • リハビリ評価表
  • 職場復帰判定資料
  • 産業医意見書
  • 人事上の配置制限資料
  • 事故前後の人事評価比較

7-3. 喪失期間も個別化する

喪失率と同様、喪失期間も一律ではない。症状固定から定年年齢まで常に同率で喪失するとは限らないし、逆に、事故後しばらくは就労できても、昇任競争や専門職能の喪失により中長期で不利益が拡大することもある。

公務員では、配置転換、軽減業務、短時間勤務、休職制度があるため、表面的には在職継続できても、将来の昇進・昇給が阻害されるタイプの損害が生じやすい。この点は、単純な欠勤日数だけでは評価できない。

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Section 07

公務員の逸失利益で労働能力喪失率を等級表だけで決めない

次の比較表は、同じ障害でも職種ごとに影響する業務が異なることを示しています。左から職種、影響しやすい業務、確認したい資料という順で、医学的障害と実際の職務制限をつなげる必要性を読み取ります。

職種影響しやすい業務確認したい資料
警察官逮捕術、装備操作、長時間立位、迅速な制圧行動配置制限、車両運用制限、当直や特殊勤務の実績
消防職・救急救命士搬送、胸骨圧迫、狭所活動、夜勤、緊急判断現場復帰判定、救急出動実績、医証
公立病院の医師・看護師手術操作、移乗、点滴、夜勤、緊急時対応宿日直表、夜勤表、上肢機能や認知負荷の評価
教員学級管理、保護者対応、長時間立位、学校行事対応人事評価、配置変更、就労影響資料

次の注意点一覧は、喪失率や喪失期間を個別化するときに見落としやすい障害や資料をまとめたものです。読者にとって重要なのは、在職継続していても昇任や配置、手当が失われる損害があり得ることです。

高次脳機能障害

注意障害、記憶障害、遂行機能障害は、文書作成、判断、対人調整、昇任評価に影響し得ます。

PTSDや不眠

現場対応、夜勤、対人業務、緊急時判断への制限が問題になり得ます。

配置転換や軽減業務

表面的に在職できても、手当減少、昇任停止、職務範囲縮小が生じることがあります。

8-1. もっとも危険な論点の一つは「二重取り」と「過剰控除」

公務員の交通事故では、公務災害補償、地方公務員災害補償基金給付、共済給付、障害年金、遺族年金、退職手当など、複数の制度が重なりやすい。そのため、保険会社や相手方が「既に給付を受けているのだから損害は減る」と主張することがある。

しかし、ここで重要なのは、給付の性質ごとに損益相殺の可否が違うことである。

8-2. 警察官事案では、基本給付は控除され、福祉的な特別給付は控除されなかった

前記の警察官自殺事案では、裁判所は、地方公務員災害補償法に基づく遺族補償一時金葬祭補償については損益相殺の対象とした一方、遺族特別支給金、遺族特別援護金、遺族特別給付金については、被災職員・遺族の福祉増進を目的とする制度であり、損益相殺の対象としなかった。

この点は、実務上きわめて重要である。つまり、

  • 同じ「公務災害から出るお金」でも
  • すべてが同じように控除されるわけではなく
  • 制度趣旨と給付の法的性質で結論が変わる

のである。

8-3. 年金や退職手当は単純処理してはいけない

退職年金、遺族年金、共済年金相当給付、退職手当については、最高裁判例でも、損益相殺的調整の範囲や、そもそも逸失利益としてどう捉えるかが争点化している。裁判所ウェブサイト掲載の最高裁判決PDFでも、退職年金と遺族年金の関係、既払分と将来分の控除の考え方、不確実な将来給付まで一律控除してよいかといった問題が詳しく論じられている。

したがって、次のような処理は危険である。

  • 年金を受けるから逸失利益はゼロという処理
  • 退職手当見込額を機械的に全額控除する処理
  • 共済給付を名称だけで全部控除する処理

これらは、判例理論、制度根拠、支給確実性、既払分か将来分か、福祉的給付か所得補填的給付かを精査して初めて判断できる。

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Section 08

公務員の逸失利益と公務災害補償・年金・退職手当

次の比較表は、給付調整で見るべき性質を整理したものです。左から給付や制度、確認する性質、注意点という順で、同じ公務災害関連給付でも一律に控除されるわけではないことを読み取ります。

給付・制度確認する性質注意点
遺族補償一時金・葬祭補償損害を填補する性質があるか裁判例では損益相殺の対象とされたものがあります。
遺族特別支給金など福祉増進目的か所得補填目的か福祉的な特別給付は控除されないとされた例があります。
退職年金・遺族年金既払分か将来分か、支給確実性があるか将来給付まで一律控除してよいか慎重に検討します。
退職手当逸失利益としてどう捉えるか、控除対象か見込額を機械的に全額控除する処理は危険です。

9-1. 警察官

警察官では、若年採用が多く、将来昇給の伸びが大きい。他方、夜勤、当直、特殊勤務、危険業務、宿舎、地域手当など収入構造が複雑である。身体機能障害だけでなく、PTSD、高次脳機能障害、反応速度低下は職務適性に直結する。

注意点

  • 若年者では賃金センサス補正が争点化しやすい
  • 当直、特殊勤務、時間外実績の資料化が必要
  • 役職定年、昇任停止、拳銃・車両・現場対応制限の評価が必要

9-2. 消防職・救急隊員・救急救命士

体力、持久力、重量物搬送能力、夜勤適応、緊急判断能力が重要である。脊椎損傷、肩関節障害、慢性疼痛、心的外傷は、形式的な等級以上に就労制限を生みやすい。

注意点

  • 夜勤、救急出動、特殊勤務手当の継続性
  • 呼吸器、循環器、整形外科的負荷に関する医証
  • 現場復帰不可でも内勤転換できる場合の減収構造

9-3. 公立病院の医師、看護師、リハビリ職

公立病院勤務者は地方公務員ないし地方独立行政法人職員であることがあり、法的身分の確認が必要である。医療職は、宿日直、夜勤、オンコール、手術、救急当番など、手当の比重が大きい。

注意点

  • 実際の法的雇用身分を確認すること
  • 俸給表だけでなく医療系手当、夜勤手当、当直料を調べること
  • 上肢巧緻運動障害、立位耐久性、認知負荷耐性の影響評価

9-4. 教員

教員は、一般に給与が比較的制度的に安定しているように見えるが、学級担任、部活動、校務分掌、管理職登用、特別支援教育、長時間の対人調整など、見えにくい負荷が多い。

注意点

  • 管理職候補であったか
  • 精神障害や音声障害が教育現場でどの程度の制限を生むか
  • 長時間立位、板書、保護者対応、学校行事対応の制限

9-5. 一般行政職、技術職、研究職

一般行政職では、身体機能よりも認知機能、持続集中、対人調整、文書作成能力、管理能力の障害が昇任・評価に響きやすい。土木、建築、道路、交通、鑑識、研究職では、現場対応や専門技術遂行能力の低下が、等級表以上の減収要因になることがある。

注意点

  • 現職維持ができても昇任が阻害されるタイプの損害に注意
  • 研究職では論文、外部評価、研究代表経験なども昇進資料になる
  • 技術職では現場立会い、測量、車両運転、夜間対応能力の影響をみる

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Section 09

職種別にみる公務員の逸失利益の注意点

10-1. 例1: 59歳の市役所職員の後遺障害逸失利益

前提

  • 事故時 59歳
  • 事故前の年間収入 700万円
  • 60歳以降の制度上の年間収入見込み 490万円
  • 労働能力喪失率 20%
  • 喪失期間 7年
  • 事故時適用利率 年3%

計算の考え方

  1. 60歳までの2年分を、700万円を基礎に計算
  2. その後5年分を、490万円を基礎に計算
  3. 後半は2年後から始まるので、現在価値への割引を二重に考慮

例示計算

  • 前半: 7,000,000 × 0.2 × 1.9134696955 = 2,678,857円
  • 後半: 4,900,000 × 0.2 × 4.3168132597 = 4,230,477円
  • 合計: 6,909,334円

これはあくまで説明用の数値例だが、ポイントは、60歳をまたぐときは分けて計算するという点にある。

10-2. 例2: 若年警察官の死亡逸失利益

前記警察官事案では、裁判所は、24歳の警察官について、実収入467万8695円ではなく、賃金センサス551万7400円を基礎収入に採用した上で、43年間、生活費控除率50%、中間利息控除後の係数17.5459を用い、死亡逸失利益を算定している。

この事例からの教訓は明快である。

  • 若年公務員は、事故時実収入だけで固定しない
  • ただし、公務員だから自動的に高い統計値になるわけでもない
  • 事故時、年齢、職種、将来昇給制度、適用利率を個別に詰める必要がある

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Section 10

公務員の逸失利益の具体的な計算例

次の比較表は、59歳の市役所職員の例示計算を整理したものです。左から期間、基礎年収、喪失率、係数、金額という順で、60歳前後で年収を分け、後半は2年後から始まる現在価値への割引を反映している点を読み取ります。

期間基礎年収喪失率係数例示金額
60歳までの2年分700万円20%1.91346969552,678,857円
60歳以降の5年分490万円20%4.31681325974,230,477円
合計期間ごとに分割20%年3%の例示6,909,334円

公務員の逸失利益は、証拠の質で勝敗が大きく分かれる。最低限、次の資料を集めたい。

11-1. 収入資料

  • 源泉徴収票
  • 給与明細
  • 賞与支給明細
  • 俸給表、辞令、級号俸履歴
  • 手当支給内訳
  • 超過勤務、宿日直、特殊勤務の実績

11-2. 将来収入資料

  • 人事評価
  • 昇任・昇格履歴
  • 同期比較資料
  • 所属庁の給与制度説明資料
  • 地方公務員なら給与条例、規則、任用制度資料
  • 定年引上げ、再任用、短時間勤務制度資料

11-3. 医学・就労資料

  • 診断書
  • 後遺障害診断書
  • 画像所見
  • 神経心理学検査
  • リハビリ記録
  • 産業医意見書
  • 復職判定書
  • 配置転換命令、就業制限資料

11-4. 公的給付資料

  • 公務災害認定書
  • 給付決定通知書
  • 共済給付資料
  • 年金決定通知書
  • 退職手当関係資料

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Section 11

公務員の逸失利益で集めるべき証拠

12-1. 俸給月額だけで年収を作る

ボーナス、地域手当、恒常的手当を落とすと、基礎収入が過小になる。

12-2. 逆に、すべての手当を将来永続すると決めつける

一時的な繁忙手当や臨時業務手当まで固定すると、過大算定の危険がある。

12-3. 賃金センサスを万能に扱う

賃金センサスは便利だが、公務員の現実給与構造をそのまま示すものではない。補充的に使うのであって、出発点の事実認定を代替するものではない。

12-4. 60歳以降を見ない

現行制度下では、60歳以降の給与水準、役職定年、再任用、短時間勤務を落とすと、将来収入の予測を誤る。

12-5. 後遺障害等級だけで喪失率を決める

公務員は職務適性との関係が強いため、医学的障害と職務内容を接続した評価が必要である。

12-6. 公務災害給付や年金を全部控除する

給付の性質ごとに結論は異なる。基本補償と福祉的給付を混同してはならない。

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Section 12

公務員の逸失利益でよくある誤り

次の注意点一覧は、公務員の逸失利益でよくある誤りをまとめたものです。読者にとって重要なのは、過小算定になりやすい誤りと過大算定になりやすい誤りの両方を避けることです。

俸給月額だけで年収を作る

ボーナス、地域手当、恒常的手当を落とすと、基礎収入が過小になります。

すべての手当を将来永続と見る

一時的な繁忙手当や臨時業務手当まで固定すると、過大算定の危険があります。

賃金センサスを万能に扱う

公務員の現実給与構造をそのまま表すものではなく、補充的に使う必要があります。

60歳以降を見ない

給与水準、役職定年、再任用、短時間勤務を落とすと、将来収入の予測を誤ります。

等級だけで喪失率を決める

職務適性との関係を見ないと、実際の能力低下を反映できません。

公務災害給付を全部控除する

給付の性質ごとに結論が異なり、基本補償と福祉的給付の混同は危険です。

公務員の逸失利益の計算で注意すべきポイントを一言でまとめれば、次のとおりである。

公務員の逸失利益は、「事故前年収 × 喪失率 × 年数」という単純式ではなく、給与制度、昇給制度、定年制度、再任用制度、公務災害補償制度、職務適性評価を立体的に組み合わせてはじめて正確に算定できる。

特に重要なのは、

  • 基礎収入を俸給だけで見ないこと
  • 若年者では賃金センサス補正の可能性を検討すること
  • 60歳以降の給与7割水準と定年引上げを落とさないこと
  • 後遺障害等級ではなく実際の職務能力低下を立証すること
  • 公務災害補償、共済、年金、退職手当との関係を慎重に処理すること

である。

交通事故で公務員本人または遺族が争う場合、論点は民間会社員より明らかに複雑である。警察官、救急隊員、医師、看護師、教員、一般行政職、技術職など、職種ごとに収入構造と就労制限の出方が違うため、給与資料、人事資料、医証、公的給付資料を横断して組み立てることが不可欠である。

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Reference

この記事の参考情報源

給与制度・定年制度

  • 人事院「国家公務員の給与制度の概要」
  • 人事院「給与制度の基本的な枠組み」
  • 人事院「定年の段階的引上げに係る経緯」
  • 人事院「暫定再任用制度」

統計・法令資料

  • 厚生労働省「賃金構造基本統計調査 結果の概況」
  • e-Gov法令検索「民法」
  • 法務省「法定利率に関する資料」
  • 法務省「民法改正に関する説明資料」

裁判所資料

  • 裁判所ウェブサイト掲載判決PDF(地方公共団体所属の警察官自殺事案)
  • 裁判所ウェブサイト掲載最高裁判決PDF(退職年金、遺族年金、損益相殺的調整を巡る判決)