2σ Guide

中国・東南アジアでの模倣品対策
企業法務・知財実務の包括整理

製造地、販売地、EC、SNS、物流、税関を横断し、模倣品対策を権利化から再発防止までの継続プログラムとして整理します。

4,670億米ドル 2021年の国際取引推計
33,019件 2024年の日本税関輸入差止件数
80.6% 中国の仕出件数比率
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中国・東南アジアでの模倣品対策 企業法務・知財実務の包括整理

製造地、販売地、EC、SNS、物流、税関を横断し、模倣品対策を権利化から再発防止までの継続プログラムとして整理します。

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中国・東南アジアでの模倣品対策 企業法務・知財実務の包括整理
製造地、販売地、EC、SNS、物流、税関を横断し、模倣品対策を権利化から再発防止までの継続プログラムとして整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 中国・東南アジアでの模倣品対策 企業法務・知財実務の包括整理
  • 製造地、販売地、EC、SNS、物流、税関を横断し、模倣品対策を権利化から再発防止までの継続プログラムとして整理します。

POINT 1

  • 中国・東南アジアでの模倣品対策の全体像
  • 一般情報として、権利化から再発防止までの実務設計を確認します。
  • 対象国で使える権利を持つ
  • 削除前に証拠を残す
  • 再発防止まで設計する

POINT 2

  • 中国・東南アジアでの模倣品対策が企業法務の中核課題になる理由
  • 統計、典型的な失敗、プログラム化の必要性を整理します。
  • 模倣品対策は国際取引と日本流入の両面で見る
  • 次の強調枠は、統計から見える模倣品対策の規模感を整理したものです。
  • 金額、件数、仕出国の比率を見ることで、中国・東南アジア対策を単発処理ではなく経営課題として扱う必要性を確認してください。

POINT 3

  • 中国・東南アジアの模倣品対策で使う基本用語
  • 模倣品
  • 真正品であるように誤認させる商品や、商標・意匠・著作物・製品形態などを無断利用する商品です。
  • 海賊版
  • 映画、音楽、ソフトウェア、ゲーム、漫画、設計データなどの著作権侵害品を中心に問題になります。

POINT 4

  • 中国・東南アジアで模倣品リスクが発生する場所
  • 製造、包装、EC、SNS、物流、積替地、日本流入後に分けて確認します。
  • 中国・東南アジアでの模倣品対策を考える際には、「どの国が危険か」ではなく、「どの機能がどこにあるか」を分解する必要がある。
  • この分解が重要なのは、製造地の摘発と販売ページ削除では、必要な権利、証拠、予算、相手方、時間軸がまったく異なるからである。

POINT 5

  • 中国・東南アジア模倣品対策の全体戦略
  • 権利化、監視、証拠化、執行、再発防止の5層で設計します。
  • 4.1 第1層 ― 権利化
  • 4.2 第2層 ― 監視
  • 4.3 第3層 ― 証拠化

POINT 6

  • 中国における模倣品対策
  • 中国の権利取得、税関、行政摘発、訴訟、EC対応を整理します。
  • 5.1 中国を一括りにしない
  • 5.2 中国での権利取得
  • 5.3 中国税関による水際対策

POINT 7

  • 東南アジアにおける模倣品対策の共通戦略
  • 国別運用と行政・刑事・EC対応の組合せを確認します。
  • 6.1 ASEANを一括りにしない
  • 6.2 東南アジアでは「行政・刑事・EC」の組合せが重要
  • 東南アジアは、法制度、当局運用、訴訟制度、税関実務、EC市場、商標実務、行政摘発の速度、刑事事件化の基準が国ごとに異なる。

POINT 8

  • 中国・東南アジア模倣品対策の国別実務ポイント
  • ベトナム、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール等を見ます。
  • ベトナム
  • インドネシア
  • フィリピン

まとめ

  • 中国・東南アジアでの模倣品対策 企業法務・知財実務の包括整理
  • 中国・東南アジアでの模倣品対策の全体像:一般情報として、権利化から再発防止までの実務設計を確認します。
  • 中国・東南アジアでの模倣品対策が企業法務の中核課題になる理由:統計、典型的な失敗、プログラム化の必要性を整理します。
  • 中国・東南アジアの模倣品対策で使う基本用語:模倣品、海賊版、冒認商標、平行輸入、B品を切り分けます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

中国・東南アジアでの模倣品対策の全体像

一般情報として、権利化から再発防止までの実務設計を確認します。

次の重要ポイントは、このページの実務設計を三つの視点に分けたものです。模倣品対策は知財だけで完結しないため、権利、証拠、社内統制のどこに弱点があるかを読み取ってください。

Focus 1

対象国で使える権利を持つ

商標、意匠、特許、著作権証拠、現地語名を国別に整備し、ECや税関で使える状態にします。

Focus 2

削除前に証拠を残す

出品ページ、動画、購入記録、配送ラベル、真正品比較を保存してから削除や摘発に進みます。

Focus 3

再発防止まで設計する

製造源、包装材、物流、代理店、販売者ネットワークを分析し、社内RACIとKPIに落とし込みます。

このページは、中国・東南アジアでの模倣品対策について、企業法務、知財法務、海外事業、コンプライアンス、危機管理、内部監査、税関対応、外部弁護士・弁理士・調査会社・現地代理人との連携を前提に、実務上の判断枠組みを整理する専門的な解説である。個別案件の結論は、対象国、権利の種類、証拠、販売経路、当局運用、契約関係、被害規模、相手方の属性により大きく異なる。したがって、このページは一般的情報であり、個別の法的助言ではない。実際の案件では、対象国の弁護士、弁理士、税関実務家、調査会社、ECプラットフォーム対応経験者と連携して判断する必要がある。

このページの想定読者は、企業法務に関連した問題に悩む人、海外でのブランド毀損や模倣品流通に直面している企業経営者、法務・知財・コンプライアンス担当者、海外販売部門、品質保証部門、内部監査部門、弁護士・弁理士・会計士・税理士・中小企業診断士・経営コンサルタント・研究者である。専門家向けの精度を保ちつつ、初学者にも理解できるよう、重要語の定義を併記する。

Section 01

中国・東南アジアでの模倣品対策が企業法務の中核課題になる理由

統計、典型的な失敗、プログラム化の必要性を整理します。

次の強調枠は、統計から見える模倣品対策の規模感を整理したものです。金額、件数、仕出国の比率を見ることで、中国・東南アジア対策を単発処理ではなく経営課題として扱う必要性を確認してください。

模倣品対策は国際取引と日本流入の両面で見る

OECDとEUIPOは2021年の模倣品・海賊版の国際取引額を約4,670億米ドルと推計し、日本税関の2024年輸入差止件数は33,019件、仕出国・地域別では中国が80.6%を占めたとされています。

中国・東南アジアでの模倣品対策は、単なる知的財産権侵害への対応ではない。企業にとっては、ブランド価値、品質保証、消費者安全、製造委託管理、輸出入管理、広告表示、個人情報、内部統制、危機管理、場合によっては刑事告訴や行政摘発までを含む横断的な企業法務課題である。

国際的にも、模倣品取引は依然として巨大な問題である。OECDとEUIPOの2025年報告は、2021年の模倣品・海賊版の国際取引額を約4,670億米ドル、世界輸入全体の約2.3%と推計している。また、差押報告の主要な発出源として中国および香港が大きな比重を占めるとされる。 日本の税関統計でも、2024年の知的財産侵害物品の輸入差止件数は33,019件で、1987年の公表開始以降最多とされ、仕出国・地域別では中国が件数ベースで80.6%、ベトナムが9.7%、マレーシアが3.0%を占めた。 これらの数字は、日本企業にとって中国・東南アジアが、製造地、市場、輸出拠点、積替地、EC販売拠点のいずれとしても重要であることを示している。

もっとも、実務上の失敗は「中国や東南アジアは危ない」という一般論から生じるのではない。典型的な失敗は、次のような設計不備から生じる。

  1. 商標・意匠・著作権・特許など、対象国で使える権利を取得していない。
  2. EC上の販売者を削除しても、背後の工場・卸・物流・決済ルートを追跡していない。
  3. 証拠保全が不十分で、行政摘発、税関差止、刑事告訴、民事訴訟のいずれにも使いにくい。
  4. 現地販売代理店、OEM・ODM工場、サブコントラクター、金型管理、余剰品処分、包装材管理の契約統制が弱い。
  5. 税関登録、プラットフォーム登録、現地当局との事前コミュニケーションをしていない。
  6. 法務・知財・営業・品質保証・広報・内部監査・海外子会社の役割分担が曖昧で、発見から執行までが遅い。

したがって、中国・東南アジアでの模倣品対策は、摘発だけでなく、権利化、契約統制、監視、証拠化、行政・刑事・民事・税関・EC対応、再発防止、経営報告までを一体化したプログラムとして設計する必要がある。

Section 02

中国・東南アジアの模倣品対策で使う基本用語

模倣品、海賊版、冒認商標、平行輸入、B品を切り分けます。

次の比較一覧は、似ているようで対応方針が異なる用語を整理したものです。どの分類に当たるかで、使う権利、契約上の論点、証拠化の焦点が変わる点を読み取ってください。

模倣品

真正品であるように誤認させる商品や、商標・意匠・著作物・製品形態などを無断利用する商品です。

海賊版

映画、音楽、ソフトウェア、ゲーム、漫画、設計データなどの著作権侵害品を中心に問題になります。

冒認商標

他人のブランドを第三者が先に商標出願・登録し、販売差止やライセンス料請求に使う問題です。

平行輸入・B品

真正品でも流通経路や品質保証、契約違反、横流し、余剰生産が別途問題になる場合があります。

2.1 模倣品

このページでいう「模倣品」とは、広義には、真正品であるかのように消費者・取引先に誤認させる商品、または他人の商標、意匠、著作物、特許技術、商品表示、パッケージ、製品形態などを無断で利用する商品をいう。狭義には、他人の登録商標と同一または類似の標章を無断で商品・包装・広告に付した商品を指すことが多い。

模倣品は、偽物のバッグや衣料品だけではない。自動車部品、医療機器、医薬品、化粧品、電子部品、ベアリング、電池、玩具、食品、日用品、産業機械の消耗品、建設資材、ソフトウェア、キャラクター商品、保証書・認証ラベル・QRコードまで対象になる。特に安全性に関わる部品や医療・電気・食品分野では、知財侵害であると同時に、製造物責任、消費者安全、行政規制、刑事リスクを伴う。

2.2 海賊版

「海賊版」は、著作権侵害品を指すことが多い。映画、音楽、ソフトウェア、ゲーム、漫画、教材、設計データ、3Dデータ、写真、デザインデータなどが対象になる。物理媒体だけでなく、オンライン配信、クラウドストレージ、SNS、ライブ配信、ショート動画、EC出品画像の無断利用も問題になる。

2.3 冒認商標

「冒認商標」とは、他人のブランドや商品名を、正当な権限なく第三者が先に商標出願・登録する問題をいう。中国や東南アジアでは、現地代理店、販売候補先、元従業員、模倣業者、商標ブローカーが、日本企業より先に商標を取得し、販売差止、税関差止、ライセンス料請求、ドメイン・SNSアカウント取得に利用することがある。

2.4 平行輸入

「平行輸入」とは、真正品が正規流通ルートとは別の経路で輸入されることをいう。平行輸入は、国・権利・商品状態・流通過程・品質保証・商標機能の毀損の有無によって、適法にも違法にもなり得る。模倣品とは異なる概念であり、真正品であるにもかかわらず販売経路が契約違反である場合もある。この場合、知財侵害として処理できるとは限らず、販売代理店契約、秘密保持契約、競業避止、品質保証、流通管理、独占禁止法・競争法の観点から検討する。

2.5 B品・横流し品・過剰生産品

OEM・ODM工場で製造された不良品、検査落ち品、余剰生産品、廃棄予定品、包装材の流出品、金型を使った無断生産品が市場に流れることがある。これらは、単純な第三者模倣品よりも発見が難しい。外観や部材が真正品に近く、ロット番号やシリアルが本物に見える場合があるからである。この領域では、契約・監査・在庫管理・廃棄証明・金型管理・サブコントラクター統制が重要になる。

Section 03

中国・東南アジアで模倣品リスクが発生する場所

製造、包装、EC、SNS、物流、積替地、日本流入後に分けて確認します。

次の比較表は、模倣品リスクが発生する場所を、典型例と法務・知財上の論点に分けたものです。左列で場所を特定し、右列から必要な証拠と対応手段を読み取ってください。

中国・東南アジアでの模倣品対策を考える際には、「どの国が危険か」ではなく、「どの機能がどこにあるか」を分解する必要がある。

次の比較表は、この章の項目を列ごとに整理したものです。要件や担当、時期の違いが実務判断に直結するため、左から順に項目名、根拠、実務上の意味を確認してください。

リスク発生場所典型例法務・知財上の論点
製造工場中国、ベトナム、タイ、インドネシア等のOEM・ODM工場、下請工場商標・意匠・特許侵害、契約違反、営業秘密、金型・図面管理
包装材・ラベル業者箱、保証書、タグ、認証ラベル、QRコード、説明書商標権、著作権、景品表示、認証制度、消費者誤認
卸売市場実店舗、市場、部品街、観光地、ローカルモール行政摘発、刑事摘発、証拠保全、現地調査
ECモールAlibaba、Taobao、Tmall、Shopee、Lazada、TikTok Shop等プラットフォーム削除、販売者再出品、越境販売、証拠化
SNS・ライブコマースFacebook、Instagram、TikTok、LINE系チャネル、ライブ配信出品者特定、動画証拠、購入証拠、広告表示、個人情報
物流・倉庫フルフィルメント倉庫、小口配送、越境EC物流税関差止、荷送人特定、輸出入記録、配送会社対応
積替地香港、シンガポール、マレーシア等を含む中継地原産地偽装、書類偽装、税関連携
日本国内流入後EC、フリマアプリ、並行流通、二次流通日本税関、プラットフォーム削除、販売者責任、消費者対応

この分解が重要なのは、製造地の摘発と販売ページ削除では、必要な権利、証拠、予算、相手方、時間軸がまったく異なるからである。たとえば、EC上の1店舗を削除するだけなら商標権登録証と出品URLで足りる場合があるが、工場摘発では、現地登録権利、真正品との比較、在庫量、製造設備、帳簿、包装材、販売先記録、調査報告書、当局との調整が必要になる。

Section 04

中国・東南アジア模倣品対策の全体戦略

権利化、監視、証拠化、執行、再発防止の5層で設計します。

次の実務一覧は、模倣品対策を5層で設計する考え方を示しています。上から順に整えるほど、削除や摘発だけで終わらず再発防止までつなげやすくなります。

IP

権利化

対象国で商標・意匠・特許・著作権証拠を整備し、現地語表記や周辺区分も検討します。

基盤
MO

監視

EC、SNS、ライブ配信、市場、展示会、物流、冒認商標を継続的に確認します。

発見
EV

証拠化

URL、販売者ID、購入記録、配送ラベル、真正品比較、権利証明を一式化します。

証拠
EN

執行

EC削除、警告、行政摘発、刑事対応、民事訴訟、税関差止を案件ごとに選びます。

対応
RE

再発防止

製造源、包装材、販売者ネットワーク、契約、監査、KPIを見直します。

改善

中国・東南アジアでの模倣品対策は、次の5層で設計する。

4.1 第1層 ― 権利化

模倣品対策の前提は、対象国で使える権利を取得することである。多くの国では、商標・意匠・特許は登録がなければ強い執行が難しい。著作権は無方式で発生する国が多いが、登録、著作物の創作証拠、原データ、契約上の権利帰属、譲渡証明、創作者の証言などが実務上重要になる。

権利化で特に重要なのは、以下である。

  • 現地語表記、英語表記、日本語表記、ロゴ、略称、シリーズ名を商標出願する。
  • 主要商品だけでなく、交換部品、消耗品、包装、サービス、EC販売関連区分も検討する。
  • 意匠登録により、ロゴを消して形だけ似せる「ルックアライク品」に備える。
  • 製品外観、UI、パッケージ、カタログ、写真、説明書について著作権証拠を整える。
  • 製造委託先との契約で、金型、図面、設計データ、包装材、検査落ち品、余剰品、廃棄品の帰属と処分を明確にする。
  • 冒認商標の監視を行い、異議申立て、不使用取消、無効審判、交渉、買戻し、税関・EC上の防御を準備する。

4.2 第2層 ― 監視

模倣品は、発見が遅れるほど流通経路が複雑化し、証拠が消え、販売者が逃げ、消費者被害が広がる。したがって、監視は一回限りの調査ではなく、継続的なプログラムとして設計する。

監視対象は、ECモール、SNS、検索エンジン、画像検索、ショート動画、ライブ配信、ローカル市場、展示会、卸売業者、修理業者、フリマアプリ、業界掲示板、輸入業者、広告、ドメイン、アプリストアなどである。EC上では、商品名だけでなく、ロゴを画像内に隠す、ブランド名を伏せ字にする、型番を変える、真正品画像だけを使う、ライブ配信でのみ販売する、購入後に外部チャットへ誘導するなどの手口がある。

4.3 第3層 ― 証拠化

証拠化は、法務部が最も重視すべき工程である。模倣品を見つけても、証拠が不十分であれば、削除申請、行政摘発、刑事告訴、民事訴訟、税関差止、社内報告のいずれにも耐えない。

基本証拠は次のとおりである。

  • 出品ページのURL、販売者ID、店舗名、所在地表示、連絡先、商品説明、価格、在庫数、レビュー、販売数、ライブ配信記録。
  • スクリーンショットだけでなく、取得日時、端末、ブラウザ、ページ遷移、動画キャプチャ、HTML保存、ハッシュ値。
  • テスト購入品、注文履歴、決済記録、配送ラベル、梱包、送り状、追跡番号、荷送人情報。
  • 真正品との比較表。ロゴ、縫製、成分、材質、重量、回路、包装、説明書、認証表示、シリアル、保証書、品質試験結果。
  • 権利証明。登録証、更新証、権利者名義、ライセンス関係、使用許諾、譲渡証明、著作権帰属資料。
  • 被害資料。売上減少、顧客苦情、返品、事故、保証対応、ブランド毀損、販売代理店からの報告。
  • 調査報告書。現地調査会社・弁護士・公証人・公的機関が関与した場合の報告書。

中国では、公証手続や証拠保全の利用が実務上有効な場面がある。東南アジアでも、証拠としての信用性を高めるため、現地弁護士、調査会社、公証人、当局手続に合わせた形式で証拠化する必要がある。

4.4 第4層 ― 執行

執行手段は、主に次の8種類である。

次の比較表は、この章の項目を列ごとに整理したものです。要件や担当、時期の違いが実務判断に直結するため、左から順に項目名、根拠、実務上の意味を確認してください。

手段適した場面長所限界
EC削除申請個別出品、販売者、画像盗用迅速、低コスト再出品、背後業者に届きにくい
警告書小規模販売者、代理店、取引先交渉余地、費用抑制証拠隠滅・逃亡のリスク
行政摘発市場、倉庫、工場、店舗比較的迅速、在庫押収に有効損害賠償回収は限定的な場合がある
刑事対応大規模・悪質・反復・安全リスク抑止力が高い立件基準・当局裁量・証拠水準が高い
民事訴訟損害賠償、差止、恒久的解決判決・和解で権利確認可能時間・費用・執行回収リスク
税関差止輸出入経路が判明、越境流通水際阻止、物流情報把握登録・識別情報・迅速対応が必要
ADR・和解代理店、製造委託先、取引先関係維持、再発防止条項悪質業者には不十分
契約・監査OEM、ODM、販売代理店予防効果、再発防止第三者模倣業者には直接効かない

4.5 第5層 ― 再発防止

模倣品対策は「削除件数」や「摘発件数」だけでは評価できない。再発防止では、製造源、包装材供給者、販売者ネットワーク、決済、物流、広告アカウント、ドメイン、SNSアカウントを断つ必要がある。内部統制としては、誰が監視し、誰が判断し、誰が当局対応し、誰が経営報告し、誰が予算を管理するかを明確にする。

Section 05

中国における模倣品対策

中国の権利取得、税関、行政摘発、訴訟、EC対応を整理します。

5.1 中国を一括りにしない

中国は、模倣品の製造地、市場、輸出拠点、EC販売拠点、部品供給地、包装材供給地、物流拠点として多層的な意味を持つ。したがって、中国対策は「中国国内販売を止める」だけでは足りない。日本、欧州、米国、東南アジアへ輸出される模倣品を中国側で止めることも重要である。

中国では、商標、特許、意匠、著作権、不正競争、製品品質、広告、消費者保護、刑事法、税関法制などが交錯する。中国国家知識産権局(CNIPA)は、知的財産戦略、商標・特許等の保護制度、商標・特許の行政法執行指導、地方の権利保護支援、紛争処理・調停の指導などに関わる機関である。

5.2 中国での権利取得

中国での模倣品対策の第一歩は、中国での商標・意匠・特許・著作権関連証拠の整備である。特に商標については、英語名、日本語名、漢字名、中国語の音訳・意訳、ロゴ、略称、シリーズ名、サブブランド、キャラクター名、主要型番を検討する必要がある。

日本企業が見落としやすいのは、中国語ブランド名である。中国の消費者、販売店、EC上の検索では、中国語表記が使われることが多い。日本企業が公式中国語名を決めていない場合、代理店や消費者が自然発生的に呼称を作り、それを第三者が商標登録することがある。したがって、中国展開前に、公式中国語名の選定、商標調査、出願、ドメイン・SNSアカウント取得を行うべきである。

5.3 中国税関による水際対策

中国では、知的財産権の税関保護制度が存在する。WIPO Lexに掲載されている中国の「知的財産権税関保護条例」は、商標、著作権、特許、意匠等を対象とする税関保護の枠組みを示している。

実務上は、税関登録を行い、真正品と模倣品の識別資料を提供し、税関職員向けトレーニングを実施し、疑義貨物の通知に迅速に回答できる体制を作ることが重要である。中国から日本や第三国へ輸出される模倣品を止めたい場合、中国側の輸出差止は有効な選択肢となり得る。

税関対応で重要な資料は、次のとおりである。

  • 登録商標・意匠・特許・著作権資料。
  • 真正品と模倣品の比較写真。
  • 正規輸出業者、正規製造工場、正規販売代理店のリスト。
  • 模倣品の典型的特徴、包装、ラベル、型番、価格帯。
  • 侵害が疑われる荷送人、荷受人、物流業者、港、ルート。
  • 権利者側の連絡担当者、現地代理人、回答期限対応判断の流れ。

5.4 行政摘発

中国では、地方の市場監督管理部門等を通じた行政摘発が、商標模倣品対策で重要な選択肢になる。行政摘発は、工場、倉庫、店舗、卸売市場など、物理的在庫が存在する場合に有効である。迅速性と押収効果が期待できる一方、損害賠償の回収や背後組織の全容解明には限界がある。

行政摘発を検討する際は、次の点を確認する。

  • 現地で有効な権利があるか。
  • 対象商品が侵害品と明確に説明できるか。
  • 在庫所在地、販売者、製造者、倉庫、包装材の場所を把握しているか。
  • 現地当局が動きやすい証拠形式になっているか。
  • 摘発後のプレス対応、再出品監視、再発防止を準備しているか。

5.5 民事訴訟・刑事対応

大規模・悪質・反復的な侵害では、民事訴訟や刑事対応を検討する。民事訴訟では、差止、損害賠償、謝罪広告、証拠保全、行為保全などが問題になる。刑事対応では、被害規模、販売額、在庫量、反復性、組織性、健康・安全リスク、証拠の明確性が重要になる。

中国では、オンライン販売者、製造者、物流業者、店舗、倉庫が異なる地域に分散していることが多い。したがって、単一の出品ページだけで刑事・民事に進むより、一定期間の調査で販売網と製造源を把握し、行政・刑事・民事・EC削除を組み合わせる方が効果的な場合がある。

5.6 中国ECプラットフォーム対応

Alibaba Groupの知的財産保護プラットフォームは、権利者または代理人が知財侵害の削除申請を行う仕組みを提供しており、商標、著作権、特許、誤認惹起的な表示等が対象になり得る。また、中国国内プラットフォームでは中国で登録・保護される権利、国際プラットフォームでは対象国で保護される権利が問題になると説明されている。

中国EC対応で注意すべき点は、削除成功が最終目的ではないことである。削除後に同一販売者が店名を変える、画像を変える、型番だけ残す、ライブ配信へ移る、別アカウントで再出品することがある。そのため、削除申請と同時に、販売者ID、支払い口座、配送元、商品画像、在庫、価格、レビュー、関連店舗、同一電話番号、同一住所、同一物流伝票を分析し、ソース業者へ遡る必要がある。

Section 06

東南アジアにおける模倣品対策の共通戦略

国別運用と行政・刑事・EC対応の組合せを確認します。

6.1 ASEANを一括りにしない

東南アジアは、法制度、当局運用、訴訟制度、税関実務、EC市場、商標実務、行政摘発の速度、刑事事件化の基準が国ごとに異なる。ASEAN全体では知財制度強化の動きがあるが、企業の実務では、国別の制度と運用に合わせた設計が不可欠である。ASEANは2026年から2030年の知的財産権アクションプランを採択しており、国別知財制度の強化、地域的な調和・プラットフォーム、IP資産の創出・管理・商業化、知財尊重と実効的なエンフォースメント等を重点領域としている。

東南アジアで特に重要なのは、次の視点である。

  • 現地商標登録の有無。
  • 現地語・英語・略称・ロゴの権利化。
  • 現地代理店や輸入販売業者の契約管理。
  • ECモールの支配的プラットフォームの把握。
  • 税関登録・水際差止の実務可能性。
  • 行政摘発・刑事摘発に強い現地法律事務所・調査会社の確保。
  • 日本本社と現地子会社の意思決定権限。
  • 贈収賄・不正競争・個人情報・労務・安全規制への配慮。

6.2 東南アジアでは「行政・刑事・EC」の組合せが重要

東南アジアでは、民事訴訟だけで迅速に模倣品流通を止めるのが難しい場合がある。一方で、当局との連携、行政摘発、刑事摘発、ECプラットフォーム削除、税関差止を組み合わせると、実効性が高まることがある。

ただし、当局対応には証拠、現地語資料、真正品サンプル、権利者の委任状、現地代理人、侵害品の所在情報、事前打合せが必要である。また、摘発情報が漏れると在庫移動や証拠隠滅が起こるため、警告書を先に送るか、抜き打ち摘発を優先するかは慎重に判断する。

Section 07

中国・東南アジア模倣品対策の国別実務ポイント

ベトナム、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール等を見ます。

次の一覧は、国別に見た実務上の着眼点を整理したものです。国名だけで一括判断せず、製造地、市場、物流、EC、当局運用のどこが問題かを読み取ってください。

Vietnam

ベトナム

DMS等の行政当局、ECプラットフォーム、現地販売者・倉庫調査、商標登録の整備が焦点になります。

Thailand

タイ

観光市場、部品流通、EC、警察・税関・知財当局との連携、卸元への遡及調査が重要です。

Indonesia

インドネシア

市場規模が大きく、現地法人や代理店の有無が税関・行政対応に影響し得ます。

Philippines

フィリピン

IPOPHLやNCIPR、ECプラットフォームとの連携枠組みを組み合わせます。

Malaysia

マレーシア

経由地としての利用、荷送人、倉庫、再輸出の有無を確認します。

Singapore

シンガポール

地域統括、物流、仲裁、契約、証拠・金融拠点として活用する視点が重要です。

7.1 ベトナム

ベトナムは、製造拠点、市場、越境EC販売拠点として重要性が高い。近年、オンライン模倣品対策で日本企業・当局・プラットフォームの連携が進んでいる。2024年には国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)とベトナム市場管理総局(DMS)が模倣品対策協力のMOUを締結し、2026年にはIIPPF、DMS、TikTok Shop、Shopee、Lazada、Tikiがオンライン模倣品対策に関する三者MOUを締結したと報じられている。

ベトナムでの実務上の焦点は、DMS等の行政当局を通じた対応、ECプラットフォーム削除、現地販売者・倉庫の調査、税関対応、商標登録の整備である。オンライン上の出品を削除するだけでなく、出品者の配送元、倉庫、ライブコマース、販売チャット、レビュー、決済経路を分析し、行政摘発につなげることが望ましい。

ベトナム対策の初動チェックリストは次のとおりである。

  • ベトナム商標登録の有無、区分、指定商品、権利者名義。
  • ベトナム語の商品名・ブランド名・略称の使用状況。
  • ECプラットフォーム上の出品URL、販売者ID、販売量、ライブ配信履歴。
  • テスト購入品と配送ラベル。
  • DMS等の当局対応に必要な委任状・権利証明・比較資料。
  • 現地子会社・代理店・弁護士の役割分担。

7.2 タイ

タイは、消費市場、観光市場、部品流通、EC販売、近隣国への流通拠点として重要である。知財専門裁判所として知られる制度、警察・税関・知財当局との連携、ECプラットフォーム対応が実務上の論点になる。JETROはタイの模倣品対策マニュアルや流通実態調査等を公表しており、国別の実務調査資料を確認することが重要である。

タイでの典型的な対応は、商標・著作権を基礎とする行政・刑事的措置、税関登録・水際対応、EC削除、現地市場の調査である。販売現場が観光客向け市場や小規模店舗の場合、単発摘発で終わらせず、卸元・倉庫・包装材業者に遡る調査が必要である。

7.3 インドネシア

インドネシアは、市場規模が大きく、EC販売、ローカル市場、部品・消耗品の模倣品が問題になりやすい。英国政府の知財エンフォースメントガイドは、インドネシアでの商標模倣・著作権侵害対策として、刑事、行政・税関、民事の各制度を説明し、商標模倣・著作権侵害が大きな懸念であると述べている。また、同ガイドは、税関制度が2018年に開始された一方、外国権利者が現地子会社を持たない場合には利用上の制約がある旨を説明している。

インドネシアでは、現地法人、販売代理店、輸入業者との関係が水際・行政対応に影響し得る。日本本社が権利者であっても、現地で誰が申立て、誰がサンプルを提出し、誰が当局と面談し、誰が費用を負担するかを事前に決める必要がある。

7.4 フィリピン

フィリピンでは、IPOPHLのIntellectual Property Rights Enforcement Office(IEO)が、知財侵害に関する報告・申立て、評価、権利者・政府機関との調整、警告、訪問命令、行政申立て、法執行機関への照会などに関与する枠組みを持つ。 また、National Committee on Intellectual Property Rights(NCIPR)は、司法省、税関、FDA、国家捜査局、警察等を含む関係機関の連携組織として、知財エンフォースメントの実施計画、啓発、執行強化、司法との連携、政策提案等に関与する。

フィリピンでは、オンライン・オフライン双方の模倣品について、IPOPHLの報告・申立てルート、ECプラットフォームの削除申請、行政・刑事当局との連携を組み合わせる。Lazada、Shopee等のプラットフォームに関しては、権利者・プラットフォーム・当局の連携枠組みが整備されてきた経緯がある。

7.5 マレーシア

マレーシアでは、消費市場、物流、越境EC、地域統括拠点、ハラール関連表示、電子部品・消耗品流通などが問題になることがある。実務では、商標登録、税関・国内取締当局との連携、EC削除、現地販売店・倉庫調査、代理店契約の統制を組み合わせる。

マレーシアを経由地として使う模倣品もあるため、販売地だけでなく、輸送書類、荷送人、荷受人、倉庫、再輸出の有無を確認することが重要である。日本税関の2024年統計でも、輸入差止件数の仕出国・地域としてマレーシアが上位に入っている。

7.6 シンガポール

シンガポールは、消費市場としてだけでなく、地域統括、物流、仲裁・紛争解決、証拠・契約・金融・決済の拠点として重要である。IPOSは、著作権侵害に対する法的措置、交渉、調停、差止、損害賠償、法定損害賠償、引渡し・処分、利益返還等の救済について説明している。

シンガポールで大規模な模倣品製造が行われるとは限らないが、地域統括会社、代理店契約、保管・再輸出、オンライン販売、証拠開示、仲裁条項、準拠法・管轄条項の設計上、重要な役割を持つ。東南アジア全体の模倣品対策本部を置く場合、シンガポール法務・コンプライアンス機能との連携は有益である。

7.7 カンボジア、ラオス、ミャンマー、ブルネイ

これらの国では、市場規模、制度整備、当局運用、政治・治安・物流事情、権利登録実務が国ごとに異なる。大規模訴訟よりも、商標登録、現地代理人、行政当局・税関との関係、販売店・市場調査、近隣国からの流入経路の把握が重要になる場合が多い。JETROは、カンボジア、ラオス、ASEAN各国の模倣品対策や知財関連情報を継続的に公表しており、案件ごとに最新資料を確認すべきである。

Section 08

日本側から見た中国・東南アジア模倣品の水際対策

日本税関と現地税関登録を連動させる考え方を整理します。

8.1 日本税関の重要性

中国・東南アジアで発生した模倣品は、日本に流入して初めて発見されることが多い。日本税関の知的財産侵害物品差止制度は、日本市場への流入を止めるうえで重要である。2024年の日本税関における知的財産侵害物品の輸入差止件数は33,019件で、仕出国・地域別では中国、ベトナム、マレーシア等が上位を占めた。権利別では商標権侵害物品の差止件数が大きな割合を占めている。

日本側で水際対策を強化することは、海外対策にも役立つ。なぜなら、差止通知や輸入関連情報から、荷送人、輸出地、販売者、商品特徴、流通ルートを推測できる場合があるからである。日本税関で得られた模倣品サンプルや識別情報は、中国・東南アジアでの調査、EC削除、行政摘発、税関登録資料の改善に活用できる。

8.2 税関差止の実務ポイント

水際対策では、単に権利を登録するだけでは不十分である。税関職員が短時間で真正品と模倣品を識別できる資料が必要である。

有効な識別資料には、次のようなものがある。

  • 真正品と模倣品を横並びにした写真。
  • ロゴ、縫製、印刷、ホログラム、QRコード、シリアル、部材、重量、包装の相違点。
  • 正規輸入者・正規代理店・正規工場・正規物流ルートの一覧。
  • 模倣品でよく見られる価格帯、商品説明、発送元、包装方法。
  • 侵害判断に迷いやすい類似品、旧モデル、並行輸入品、B品の整理。
  • 休日・夜間も含む権利者連絡体制。

8.3 中国・東南アジア側の税関登録との連動

日本への輸入を止めるだけでなく、中国からの輸出、東南アジア各国からの輸出、第三国経由の積替えを止めるため、現地税関登録も検討する。世界税関機構(WCO)は、模倣品が健康・安全に関わるリスクをもたらすこと、税関が模倣品対策で重要な役割を担うことを説明し、権利者・当局との協力、能力構築、エンフォースメントツールを重視している。

税関対応は、国ごとに制度・運用・申立資格・登録対象権利・担保・保管費用・回答期限が異なる。したがって、日本本社が一括で判断するのではなく、現地弁護士、弁理士、通関業者、物流部門と連携して、対象国ごとの税関登録ロードマップを作成する。

Section 09

EC・SNS・ライブコマースでの模倣品対策

削除申請を情報収集と販売網分析につなげます。

次の判断の流れは、EC・SNS上で模倣品を見つけた後の順番を示しています。削除を急ぐ前に証拠と販売者情報を残し、必要に応じて製造源や倉庫へ遡る読み方をしてください。

EC発見後の対応順序

出品を証拠化

URL、販売者ID、価格、在庫、画像、レビュー、動画、ライブ配信を保存します。

同一ネットワークを分析

同一画像、配送元、電話番号、住所、決済、関連店舗を確認します。

テスト購入を判断

到着品、送り状、開封動画、真正品比較により侵害性と流通経路を確認します。

削除後も監視

別アカウント、別画像、ライブ配信、外部チャットへの移動を継続確認します。

9.1 EC対応の基本思想

EC上の模倣品対策は、削除申請業務であると同時に、情報収集業務である。出品ページは、販売者、在庫、価格、画像、配送、顧客レビュー、関連商品、過去販売履歴、外部SNS誘導、ライブ配信アカウントを示す証拠源である。削除を急ぎすぎると、背後の販売網を調べる前に証拠が消える場合がある。

したがって、EC対応では、次の順番が望ましい。

  1. 発見した出品を直ちに証拠化する。
  2. 出品者、関連アカウント、同一画像、同一商品説明、同一配送元を分析する。
  3. テスト購入の要否を判断する。
  4. 権利証明と比較資料を整える。
  5. 削除申請を行う。
  6. 再出品、関連店舗、同一販売者を継続監視する。
  7. 大規模販売者については、行政摘発・刑事対応・民事訴訟・税関対応へ接続する。

9.2 TikTok Shop等のショート動画・ライブコマース

TikTok ShopのIntellectual Property Protection Center(IPPC)は、IP権利者が知財資産を登録し、商品、動画、ライブ配信を検索し、苦情申立てを提出・追跡できる仕組みを説明している。また、保護を求める国で有効なIP資産であることが求められる旨も示されている。

9.3 Shopee、Lazada等の地域プラットフォーム

東南アジアでは、Shopee、Lazada、TikTok Shop等のプラットフォームが国ごとに大きな存在感を持つ。フィリピンでは、IPOPHLがLazada、Shopee、権利者等との協力枠組みについて公表しており、効率的な通知・削除、権利者とプラットフォームの連携が重要視されている。

プラットフォームごとに、必要書類、登録権利、委任状、対象国、異議申立て、再申立て、リピート侵害者対応、デザイン侵害の扱いが異なる。企業は、主要プラットフォームごとの申立てテンプレート、必要権利、社内承認判断の流れをあらかじめ整備すべきである。

Section 10

中国・東南アジア模倣品対策の証拠保全

同一性、真正性、関連性を満たす証拠化を確認します。

次の重要ポイントは、証拠保全で満たすべき三つの原則を整理したものです。どの資料も後から対象、取得方法、侵害との関係を説明できるかを読み取ってください。

同一性

問題の商品、ページ、販売者、注文、配送物が後から特定できる状態にします。

真正性

いつ、誰が、どのように取得したかを記録し、改ざん可能性に配慮します。

関連性

権利侵害、販売、輸入、製造、保管、損害、悪質性との結びつきを示します。

10.1 証拠の三原則

模倣品対策の証拠は、次の三原則を満たす必要がある。

  1. 同一性 ― 問題の商品・ページ・販売者が、後から見ても特定できること。
  2. 真正性 ― 証拠が改ざんされておらず、いつ、誰が、どのように取得したか説明できること。
  3. 関連性 ― 権利侵害、販売、輸入、製造、保管、損害、悪質性に結びつくこと。

10.2 スクリーンショットだけでは足りない

多くの企業では、営業担当者や顧客から送られてきたスクリーンショットだけで削除申請を始める。しかし、スクリーンショットだけでは、URL、取得日時、販売者ID、ページ全体、購入導線、レビュー、配送元、在庫、価格変動が不足することが多い。

望ましい証拠化は、次のとおりである。

  • ブラウザのアドレス棒を含む画面保存。
  • ページ全体のPDF化またはHTML保存。
  • 動画・ライブ配信の画面録画。
  • 商品ページから購入完了までの操作記録。
  • 注文確認メール、決済記録、配送追跡画面。
  • 到着品の開封動画、梱包、送り状、商品本体、付属品、説明書、保証書の写真。
  • 真正品との比較表。
  • 証拠取得者、取得日時、取得方法を記録したメモ。

10.3 テスト購入

テスト購入は、模倣品であること、販売者が実際に販売していること、配送元、荷送人、物流ルート、包装、商品品質を確認するために有効である。ただし、国によっては、調査方法、代理購入、録音録画、個人情報取得、潜入調査、証拠能力に制約がある。違法・不適切な調査は、後の訴訟や当局対応で不利になり得る。

テスト購入では、以下を守る。

  • 調査目的、対象URL、購入者、支払方法、配送先を記録する。
  • 購入画面、注文番号、販売者情報を保存する。
  • 到着時の外箱、ラベル、送り状、梱包状態を開封前に撮影する。
  • 開封動画を撮影する。
  • 商品本体、付属品、説明書、保証書、シリアルを保存する。
  • 真正品と比較し、技術部門・品質部門の確認を受ける。
  • 証拠品の保管場所、保管者、移動履歴を記録する。

10.4 公証・現地弁護士関与

中国や一部の東南アジア案件では、公証、現地弁護士の立会い、調査会社報告書、当局指定形式の証拠化が実務上重要になる。特に、将来の訴訟、行政摘発、刑事事件、税関差止を想定する場合、初期段階から現地専門家に証拠形式を確認すべきである。

Section 11

契約・サプライチェーンによる模倣品予防策

OEM・ODM、代理店、包装材・金型管理の条項を確認します。

11.1 OEM・ODM契約で定めるべき事項

中国・東南アジアでの模倣品対策は、外部の模倣業者だけでなく、委託先・下請・包装材業者・物流業者の管理から始まる。OEM・ODM契約では、少なくとも次の条項を検討する。

  • 知的財産権の帰属。
  • 金型、治具、設計図、CADデータ、試作品、仕様書の所有権・使用制限。
  • 商標、ロゴ、包装、説明書、認証表示の使用範囲。
  • 余剰生産、無断生産、横流し、B品販売、検査落ち品販売の禁止。
  • サブコントラクター利用の事前承認制。
  • 包装材・ラベル・保証書・QRコードの発注、保管、廃棄管理。
  • 在庫・廃棄証明・破砕写真・立会い確認。
  • 監査権、抜き打ち監査、帳簿閲覧、製造記録確認。
  • 違反時の差止、損害賠償、違約金、契約解除、在庫引渡し、金型返還。
  • 秘密保持、営業秘密管理、従業員・退職者管理。
  • 準拠法、紛争解決、仲裁、管轄、保全手続。
  • 贈収賄防止、制裁・輸出管理、人権・労務・環境条項。

11.2 販売代理店契約

販売代理店が模倣品対策に協力する場合もあれば、代理店自身が横流しや冒認商標の原因になる場合もある。販売代理店契約では、次の点を定める。

  • 商標使用の範囲と終了後の使用停止。
  • 現地商標出願禁止、ドメイン・SNS取得禁止。
  • 模倣品発見時の報告義務。
  • 証拠提供、テスト購入、当局対応への協力義務。
  • 正規品の販売チャネル、価格表示、品質保証、返品対応。
  • 並行流通・転売・第三国販売の制限。
  • 顧客情報・販売情報の提供。
  • 契約終了時の在庫処分、販促物廃棄、アカウント移管。

11.3 包装材と金型の管理

模倣品の品質が低くても、包装が本物に近いと消費者は騙される。包装材、タグ、保証書、ホログラム、QRコード、認証ラベルは、模倣品対策の急所である。

包装材管理では、次の統制が重要である。

  • 包装材の発注数量と完成品数量の照合。
  • 不良包装材の廃棄証明。
  • 包装材業者への無断再発注禁止。
  • QRコード・シリアルの一意性管理。
  • 使用済み金型・版下・印刷データの返還または廃棄。
  • 印刷会社・ラベル会社への監査。
Section 12

中国・東南アジア模倣品対策の社内体制

横断チーム、RACI、エスカレーション基準を整理します。

次の比較表は、模倣品対策の横断チームで想定される役割と責任を整理したものです。誰が実行し、誰が最終判断し、誰に相談・報告するかを事前に決める重要性を読み取ってください。

12.1 模倣品対策委員会

一定規模以上の企業では、模倣品対策を法務部だけに閉じるべきではない。次の部門を含む横断チームが望ましい。

次の比較表は、この章の項目を列ごとに整理したものです。要件や担当、時期の違いが実務判断に直結するため、左から順に項目名、根拠、実務上の意味を確認してください。

役割主な責任
法務・企業内弁護士法的リスク判断、外部弁護士管理、契約、訴訟、当局対応
知財法務・弁理士権利取得、権利範囲判断、侵害判定、税関・EC資料
海外事業部現地販売情報、代理店管理、当局・市場情報
品質保証真正品判定、危険性評価、事故・苦情分析
コンプライアンス贈収賄防止、調査手法、内部通報、規程整備
リスクマネジメント重大案件の経営報告、危機対応、BCP
広報消費者注意喚起、メディア対応、ブランド毀損対応
内部監査サプライチェーン監査、契約遵守、統制評価
財務・経理被害額算定、予算、損害賠償、費用対効果
IT・データ監視ツール、証拠保管、アクセス権限、ログ管理
外部弁護士・現地代理人国別法制度、当局対応、訴訟・摘発
調査会社市場調査、テスト購入、販売網分析

12.2 RACIモデル

RACIとは、業務ごとに、Responsible(実行責任者)、Accountable(最終責任者)、Consulted(相談先)、Informed(報告先)を決める管理手法である。模倣品対策では、発見から執行までの時間が重要なため、RACIを事前に決めておく。

次の比較表は、この章の項目を列ごとに整理したものです。要件や担当、時期の違いが実務判断に直結するため、左から順に項目名、根拠、実務上の意味を確認してください。

業務RACI
EC監視知財法務、外部監視会社法務責任者海外事業、品質保証経営、営業
初期証拠化知財法務、調査会社法務責任者現地弁護士品質保証
侵害判定弁理士、知財法務知財責任者技術、品質保証法務
削除申請知財法務法務責任者外部代理人海外事業
行政摘発判断法務、現地弁護士経営またはGC品質保証、海外事業広報、監査
刑事対応外部弁護士経営またはGCコンプライアンス監査役、必要に応じ取締役会
消費者公表広報、法務経営品質保証、コンプライアンス営業、顧客対応
再発防止法務、購買、品質保証事業責任者内部監査経営

12.3 エスカレーション基準

すべての模倣品を同じ強度で処理すると、予算が枯渇する。一方で、重大案件を見逃すと、事故・炎上・訴訟・行政処分につながる。社内規程で、次の基準を定める。

  • 人体・生命・安全に関わる商品か。
  • 医薬品、医療機器、食品、電池、電気用品、自動車部品等の規制商品か。
  • 販売量・レビュー数・在庫数が大きいか。
  • 正規代理店・委託工場・元従業員が関与している疑いがあるか。
  • 複数国にまたがるか。
  • 日本への流入が確認されたか。
  • 消費者苦情・事故・SNS炎上があるか。
  • 当局・メディア・取引先から照会があるか。
  • 冒認商標や税関差止など、攻撃的に利用されるリスクがあるか。
Section 13

模倣品対策の執行手段を選ぶ判断軸

警告書、EC削除、行政摘発、刑事・民事、税関の選択を整理します。

次の判断の流れは、執行手段を選ぶ前に確認すべき順番を示しています。対象国の権利、侵害品の場所、相手方、目的、証拠の有無によって、警告、削除、摘発、訴訟、税関対応の選択が変わります。

執行手段を選ぶ順序

有効な権利を確認

対象国で商標、意匠、著作権証拠、契約上の根拠が使えるかを確認します。

侵害品の場所を特定

EC、実店舗、倉庫、工場、税関、輸送中、日本国内のどこかを分けます。

目的を決める

迅速削除、在庫押収、製造源遮断、損害賠償、刑事処罰、消費者安全の優先順位を決めます。

証拠隠滅リスクを確認

警告書を送る前に、摘発やテスト購入が必要かを検討します。

13.1 まず確認すべき5問

  1. 対象国で有効な権利があるか。 ない場合、出願、冒認対応、著作権・不正競争・契約・製品規制で代替できるかを検討する。
  2. 侵害品はどこにあるか。 EC上、実店舗、倉庫、工場、税関、輸送中、日本国内のどこか。
  3. 相手は誰か。 一般販売者、卸、工場、代理店、元委託先、組織的犯罪者、消費者に近い小売か。
  4. 目的は何か。 迅速削除、在庫押収、製造源遮断、損害賠償、刑事処罰、消費者安全、再発防止か。
  5. 証拠は足りるか。 権利証明、購入証拠、侵害比較、所在地、販売量、悪質性、被害額があるか。

13.2 警告書を送るか、送らないか

警告書は低コストである一方、相手に証拠隠滅の機会を与える。小規模販売者、代理店、誤解による出品、交渉可能な相手には有効である。しかし、倉庫・工場摘発を予定している場合、大量在庫がある場合、相手が反復侵害者である場合、警告書は逆効果になり得る。

判断基準は次のとおりである。

次の比較表は、この章の項目を列ごとに整理したものです。要件や担当、時期の違いが実務判断に直結するため、左から順に項目名、根拠、実務上の意味を確認してください。

警告書が向く場合警告書を避けるべき場合
小規模・初回・誤認の可能性大規模・悪質・反復
代理店・取引先との関係維持が必要在庫移動・証拠隠滅の恐れ
証拠がまだ限定的行政・刑事摘発を計画中
迅速な任意削除が目的製造源を押さえたい
損害が軽微消費者安全上の重大リスク

13.3 EC削除だけでよい場合、足りない場合

EC削除だけで足りるのは、単発・小規模で、販売者が不明または国外にあり、製造源追跡の費用対効果が低い場合である。一方、次の場合はEC削除だけでは不十分である。

  • 同じ販売者が複数店舗で反復出品している。
  • 販売数・レビュー数が多い。
  • 日本や主要市場への流入がある。
  • 事故・品質問題・健康被害の恐れがある。
  • 委託工場、代理店、元従業員の関与が疑われる。
  • 冒認商標、偽認証、偽保証書、偽QRコードがある。
  • 複数プラットフォームに同時展開している。

この場合、削除申請と並行して、テスト購入、販売者ネットワーク分析、税関登録、行政摘発、刑事対応、民事訴訟を検討する。

Section 14

中国・東南アジア模倣品対策の費用対効果とKPI

予算配分、成果指標、重大度分類を確認します。

次の比較表は、案件の重大度を例と推奨対応で整理したものです。レベルが上がるほど、削除だけでなく経営報告、当局対応、刑事・民事・税関を組み合わせる必要がある点を読み取ってください。

14.1 予算配分

模倣品対策の予算は、次の4つに分けると管理しやすい。

  1. 予防費用 ― 商標・意匠出願、契約整備、税関登録、社内規程、監査。
  2. 監視費用 ― EC監視、SNS監視、市場調査、展示会調査、冒認商標監視。
  3. 執行費用 ― 削除申請、警告書、行政摘発、刑事告訴、民事訴訟、税関対応。
  4. 再発防止費用 ― サプライチェーン監査、包装材管理、消費者啓発、正規品認証システム。

中小企業の場合、すべてを自社費用で行うのが難しい。JETROは、中小企業等を対象に、海外での模倣品調査や一部の権利行使費用を支援する制度を案内しており、補助率・上限額等の条件を公表している。 また、特許庁の政府模倣品・海賊版対策総合窓口は、海外での模倣品・海賊版被害相談や、権利侵害時の救済手続の相談を受け付けている。

14.2 KPIの設計

模倣品対策のKPIは、「削除件数」だけでは不十分である。削除件数が増えても、模倣品流通が増えているだけかもしれない。より実効的なKPIは次のとおりである。

  • 高リスクSKUの権利登録率。
  • 主要国での商標・意匠・税関登録カ棒率。
  • 模倣品発見から証拠化までの時間。
  • 発見から削除・摘発までの平均日数。
  • 再出品率。
  • 同一販売者・同一ネットワークの遮断件数。
  • 税関差止件数と真正品判定精度。
  • 行政摘発での押収数量、倉庫・工場特定件数。
  • 消費者苦情・事故件数の減少。
  • 代理店・工場監査での不備改善率。
  • 経営報告対象の重大案件数。

14.3 重大度分類

案件を重大度で分類すると、対応が速くなる。

次の比較表は、この章の項目を列ごとに整理したものです。要件や担当、時期の違いが実務判断に直結するため、左から順に項目名、根拠、実務上の意味を確認してください。

重大度推奨対応
Level 1単発の小規模EC出品証拠化、削除申請、再出品監視
Level 2複数店舗・複数SKU・一定販売数テスト購入、販売者分析、削除、警告書検討
Level 3卸・倉庫・工場が疑われる現地調査、行政摘発、税関登録、外部弁護士関与
Level 4安全リスク、事故、規制商品経営報告、当局対応、広報、刑事対応、消費者注意喚起
Level 5組織的・複数国・重大被害グローバル対策本部、民事・刑事・税関・EC一体対応
Section 15

業種別に見る中国・東南アジア模倣品対策の留意点

医療、電池、食品、コンテンツ、BtoB製品で異なるリスクを整理します。

次の一覧は、業種ごとに異なるリスクの焦点を整理したものです。模倣品の外観だけでなく、安全、規制、品質保証、事故対応の観点から読み取ってください。

医薬品・医療機器・化粧品

健康被害、薬事規制、表示規制、リコール、当局報告、刑事責任が問題になります。

自動車部品・電池・電子部品

火災、故障、事故につながる可能性があり、材料や安全試験の違いが重要です。

食品・飲料・日用品

成分、賞味期限、原産地、衛生、認証、容器包装、消費者苦情が問題になります。

コンテンツ・ゲーム

著作権、商標、意匠、契約上のライセンス範囲、オンライン販売が交錯します。

BtoB製品・産業機械

保守部品や消耗品が設備事故、操業停止、保証紛争につながることがあります。

15.1 医薬品・医療機器・化粧品

医薬品、医療機器、化粧品の模倣品は、知財侵害に加え、健康被害、薬事規制、表示規制、リコール、当局報告、刑事責任、ブランド毀損が問題になる。真正品と同じ成分表示があっても、中身が異なる、保管条件が守られていない、使用期限が偽装されている、偽認証が付されていることがある。

この分野では、品質保証部門と法務部門が初動から連携し、試験検査、危険性評価、消費者への注意喚起、当局報告の要否を判断する。

15.2 自動車部品・電池・電子部品

自動車部品、電池、電子部品の模倣品は、火災、故障、事故につながる可能性がある。真正品と外観が似ていても、材料、耐久性、安全試験、品質管理が異なる。OEM・ODM工場、部品サプライヤー、修理業者、越境EC、卸売市場を横断して調査する必要がある。

15.3 食品・飲料・日用品

食品・飲料・日用品では、商標だけでなく、成分、賞味期限、原産地、表示、衛生、認証、容器包装、消費者苦情が問題になる。模倣品が安価に流通すると、正規代理店の信頼も毀損する。現地の食品規制、表示規制、輸入規制も確認する。

15.4 キャラクター・コンテンツ・ゲーム

キャラクター商品、ゲーム、アニメ、漫画、VTuber、デジタルコンテンツでは、著作権、商標、意匠、不正競争、パブリシティ、契約上のライセンス範囲が交錯する。オンライン画像、ファンアートと商業的模倣品の境界、NFTやデジタルグッズ、ライブ配信での販売など、新しい論点も多い。

15.5 BtoB製品・産業機械

BtoB製品では、消費者向けECよりも、保守部品、交換部品、消耗品、展示会、代理店、修理業者、海外工場への直接営業が問題になる。模倣品が工場設備に組み込まれると、事故・操業停止・保証紛争につながる。顧客教育、正規品認証、シリアル管理、保守契約での純正部品使用義務が重要である。

Section 16

冒認商標への対応

先取り商標を発見した場合の確認事項と予防策を整理します。

16.1 冒認を発見したら

冒認商標を発見した場合、まず次を確認する。

  • 出願中か登録済みか。
  • 異議申立て期限内か。
  • 不使用取消が可能か。
  • 悪意の証拠があるか。
  • 出願人が代理店、元取引先、模倣業者、商標ブローカーか。
  • 自社の先使用、著名性、販売実績、展示会出展、広告、現地報道があるか。
  • その商標が税関、EC、代理店交渉で攻撃的に使われているか。

16.2 交渉と争訟の選択

冒認商標では、無効・異議・取消・交渉・買戻し・共存契約・ブランド変更の選択肢がある。悪質な冒認者に安易に買戻しをすると、他国でも同様の行動を誘発する場合がある。一方で、事業開始が迫っている場合、時間を買うための交渉が必要なこともある。

判断基準は、事業上の緊急性、勝訴可能性、費用、商標の重要度、他国への波及、相手の悪質性、税関・ECでの実害の有無である。

16.3 予防策

  • 進出予定国だけでなく、製造委託国、輸出先、EC販売国で早期出願する。
  • 現地語ブランド名を決める。
  • 代理店候補に商標情報を開示する前に出願する。
  • 展示会出展前に出願する。
  • ドメイン、SNS、EC公式アカウントを取得する。
  • 商標ウォッチングを行う。
Section 17

データ・個人情報・調査倫理の注意点

調査に伴う個人情報、贈収賄、プラットフォーム規約への配慮を確認します。

模倣品調査では、販売者情報、住所、電話番号、SNSアカウント、配送ラベル、顧客レビュー、チャット履歴、画像、動画、決済情報を扱うことがある。これらは個人情報・プライバシー・通信秘密・プラットフォーム規約・労務法・調査業法制に関わる場合がある。

企業は、次のルールを設けるべきである。

  • 調査目的と必要性を明確にする。
  • 違法なアクセス、なりすまし、不正取得、過度な録音録画を避ける。
  • 個人情報は必要最小限に限定する。
  • 証拠保管場所、アクセス権限、保存期間を決める。
  • 外部調査会社との契約で、適法調査、秘密保持、個人情報、贈収賄防止を定める。
  • 当局・プラットフォーム・外部弁護士への共有範囲を管理する。

模倣品対策は正当な権利行使であるが、調査手法が不適切であれば、企業側が reputational risk を負う。特に海外では、現地法、文化、当局慣行を理解した専門家の関与が不可欠である。

Section 18

消費者被害・事故・SNS炎上への危機対応

模倣品による安全問題や炎上時の連携を確認します。

模倣品が原因で事故や健康被害が発生した場合、企業は「当社品ではない」と述べるだけでは足りない。消費者は外観上ブランドを信頼して購入しており、企業の対応がブランド価値を左右する。

危機対応では、次を検討する。

  • 事故品が真正品か模倣品かの技術判定。
  • 消費者への安全情報提供。
  • 正規品確認方法の案内。
  • 当局報告・相談の要否。
  • EC・SNS上の注意喚起。
  • 模倣品販売者への緊急削除・摘発。
  • メディア対応、FAQ、コールセンター対応。
  • 取引先・代理店への連絡。
  • 取締役会・監査役・内部監査への報告。

特に医薬品、医療機器、食品、電池、自動車部品、乳幼児用品では、知財部門だけでなく、品質保証、薬事・規制、広報、経営が関与する必要がある。

Section 19

中国・東南アジア模倣品対策の90日アクションプラン

現状把握から制度化までの優先順位を日程で整理します。

次の時系列は、90日で模倣品対策を立ち上げる実務順序を示しています。前半で現状と優先順位を固め、中盤で証拠化と初回対応、後半で制度化へ進む流れを読み取ってください。

Day 1-15

現状把握

主要ブランド、権利、EC・SNS、市場、税関差止実績、顧客苦情を棚卸しします。

Day 16-30

優先順位決定

高リスク国・商品・販売経路、追加出願、税関登録、外部専門家を決めます。

Day 31-60

証拠化と初回執行

主要出品の証拠化、テスト購入、真正品比較、小規模削除、重大案件の現地調査を行います。

Day 61-90

制度化

RACI、エスカレーション、KPI、契約見直し、税関資料、再出品監視を正式運用に移します。

Day 1–15 ― 現状把握

  • 主要ブランド、商品、ロゴ、現地語名、型番を棚卸しする。
  • 中国・東南アジア各国の商標・意匠・特許・著作権証拠を確認する。
  • 冒認商標を調査する。
  • 主要EC、SNS、現地市場の初期スクリーニングを行う。
  • 日本税関差止実績、顧客苦情、代理店報告を整理する。
  • 重大度分類基準を仮設定する。

Day 16–30 ― 優先順位決定

  • 高リスク国、高リスクSKU、高リスク販売経路を決める。
  • 追加出願が必要な商標・意匠を決める。
  • 税関登録の対象国を選ぶ。
  • 外部弁護士、弁理士、調査会社、翻訳者を選定する。
  • ECプラットフォームの権利者アカウントを整備する。

Day 31–60 ― 証拠化と初回執行

  • 主要出品の証拠化とテスト購入を行う。
  • 真正品比較表を作成する。
  • 小規模案件は削除申請を実施する。
  • 重大案件は現地調査を行い、倉庫・工場・卸を特定する。
  • 税関向け識別資料を作成する。
  • 経営報告用の被害・対応状況レポートを作成する。

Day 61–90 ― 制度化

  • 行政摘発・刑事対応・民事訴訟の対象案件を決める。
  • 税関登録・税関トレーニングを実施する。
  • OEM・ODM契約、代理店契約、包装材管理契約を見直す。
  • 社内RACIとエスカレーション基準を正式化する。
  • KPIを設定し、月次・四半期報告を開始する。
  • 再出品監視と販売者ネットワーク分析を継続する。
Section 20

中国・東南アジア模倣品対策の実務チェックリスト

権利化、証拠化、執行判断、サプライチェーンを点検します。

20.1 権利化チェックリスト

  • □ 中国で主要商標を登録している。
  • □ ベトナム、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポールで主要商標を登録している。
  • □ 現地語名、英語名、日本語名、ロゴ、略称をカ棒している。
  • □ 主要商品の意匠登録を検討している。
  • □ パッケージ、写真、説明書、デザインデータの著作権証拠を保管している。
  • □ 冒認商標監視を行っている。
  • □ ECプラットフォームの権利者登録に必要な資料を整えている。

20.2 証拠化チェックリスト

  • □ URL、販売者ID、店舗名、商品名、価格、在庫、レビューを保存した。
  • □ スクリーンショットに取得日時とアドレス棒が含まれている。
  • □ 動画・ライブ配信を録画した。
  • □ テスト購入を行い、注文・決済・配送情報を保存した。
  • □ 開封動画を撮影した。
  • □ 商品、包装、送り状、付属品を保管した。
  • □ 真正品との比較表を作成した。
  • □ 権利証明を添付した。
  • □ 証拠保管者と保管場所を記録した。

20.3 執行判断チェックリスト

  • □ 警告書を送ると証拠隠滅のリスクがないか確認した。
  • □ EC削除だけで足りるか、背後業者を追うべきか判断した。
  • □ 行政摘発に必要な現地証拠がある。
  • □ 刑事対応に必要な悪質性・規模・反復性の証拠がある。
  • □ 税関登録・水際差止の可能性を検討した。
  • □ 広報・消費者対応が必要か確認した。
  • □ 現地弁護士・弁理士の意見を取得した。

20.4 サプライチェーンチェックリスト

  • □ OEM・ODM契約に無断生産・横流し禁止がある。
  • □ サブコントラクター利用が事前承認制である。
  • □ 金型・図面・包装材の所有権と返還義務が明確である。
  • □ B品・不良品・余剰品の廃棄証明がある。
  • □ 包装材業者を管理している。
  • □ 代理店契約に模倣品報告義務がある。
  • □ 契約終了後の商標使用停止、在庫処分、アカウント移管を定めている。
Section 21

中国・東南アジア模倣品対策でよくある質問

商標、EC削除、平行輸入、調査会社などの一般的な考え方を整理します。

Q1. まず中国で商標を取れば十分ですか。

一般的には、十分ではないとされています。中国での商標登録は重要だが、製造地、販売地、輸出先、EC販売国、現地語名、ロゴ、意匠、包装、代理店契約まで含めて設計する必要がある。東南アジアで販売されるなら、対象国ごとの商標登録も検討すべきである。

Q2. ECプラットフォームに削除申請すれば解決しますか。

単発の小規模案件では有効である。しかし、大規模・反復的な販売者は、別アカウント、別画像、別プラットフォームで再出品する。削除申請は、販売者ネットワーク分析、テスト購入、行政摘発、税関対応と組み合わせるべきである。

Q3. 模倣品か平行輸入品か分からない場合はどうすればよいですか。

まず真正品判定を行う。真正品である場合、知財侵害ではなく、販売代理店契約違反、品質保証、表示、流通管理の問題になる可能性がある。模倣品である場合は、商標・意匠・著作権・不正競争・製品規制の観点から対応する。

Q4. 現地の小規模店舗を摘発する意味はありますか。

小規模店舗だけを摘発しても再発防止効果は限定的である。ただし、卸元、倉庫、包装材、製造源に遡る入口として意味がある。摘発前に、販売網をどこまで把握できるかが重要である。

Q5. 中小企業でも対策できますか。

一般的には、可能とされています。最初から全世界で訴訟をする必要はない。高リスク国・高リスク商品を絞り、商標出願、EC監視、証拠化、削除申請、税関相談、JETROや特許庁の支援制度の利用から始めるのが現実的である。

Q6. どの国から始めるべきですか。

次の順で優先順位をつける。第一に、製造委託先や模倣品製造源がある国。第二に、売上・ブランド価値が大きい国。第三に、日本への流入経路になっている国。第四に、EC上で販売量が多い国。第五に、事故・規制リスクが高い商品が流通している国である。

Q7. 現地調査会社に任せればよいですか。

一般的には、任せきりにはリスクがあるとされています。調査会社は有用だが、調査手法、証拠形式、個人情報、贈収賄防止、当局対応、訴訟での利用可能性を法務・現地弁護士が管理する必要がある。

Section 22

専門家連携の実務モデル

法務、知財、品質、税関、調査会社、経営の役割を整理します。

中国・東南アジアでの模倣品対策では、次の専門家が役割を分担する。

  • 弁護士・企業内弁護士 ― 全体戦略、法的リスク判断、証拠保全、訴訟・刑事・行政対応、契約統制、経営報告。
  • 外部弁護士・外国法事務弁護士・現地弁護士 ― 国別法制度、当局対応、訴訟、刑事告訴、行政摘発、税関対応、和解交渉。
  • 弁理士・知財法務担当 ― 商標・意匠・特許出願、侵害判定、権利範囲分析、EC・税関資料、冒認商標対応。
  • コンプライアンス担当 ― 調査倫理、贈収賄防止、内部規程、通報対応、当局接触ルール。
  • リスクマネジメント・危機管理担当 ― 重大案件の経営エスカレーション、消費者安全、広報連携。
  • 内部監査・内部統制担当 ― サプライチェーン、包装材、金型、契約遵守、証跡管理の監査。
  • 品質保証・技術部門 ― 真正品判定、危険性評価、検査、事故分析。
  • 税関・通関実務家 ― 輸出入ルート、税関登録、識別資料、差止対応。
  • 調査会社・デジタルフォレンジック専門家 ― 市場調査、EC監視、証拠保全、販売者ネットワーク分析。
  • 公認会計士・税理士・財務担当 ― 損害額算定、費用対効果、棚卸・在庫不正、会計上の損失認識。
  • 経営者・取締役・監査役 ― 重大リスクの監督、予算承認、ブランド保護方針、内部統制の整備。

このように、模倣品対策は知財部門だけの業務ではない。企業法務の実務では、知財、契約、コンプライアンス、品質、物流、広報、監査、経営が一体となって初めて機能する。

Section 23

中国・東南アジア模倣品対策を継続プログラムへ

単発の摘発から、権利化・監視・証拠化・再発防止の仕組みに転換します。

中国・東南アジアでの模倣品対策は、単発の摘発や削除申請では終わらない。重要なのは、事業戦略と連動した継続的な模倣品対策プログラムを構築することである。

実務上の要点は、次の7つに集約できる。

  1. 権利を先に取る。 中国・東南アジアの主要国で、商標、意匠、必要に応じ特許、著作権証拠を整える。
  2. 現地語とECを軽視しない。 中国語、ベトナム語、タイ語、インドネシア語等の表記、略称、画像検索、ライブコマースを監視する。
  3. 証拠化を標準化する。 URL、動画、テスト購入、配送ラベル、真正品比較、権利証明を一式で管理する。
  4. 手段を組み合わせる。 EC削除、行政摘発、刑事対応、民事訴訟、税関差止、契約監査を案件ごとに組み合わせる。
  5. 製造源に遡る。 出品者削除だけでなく、工場、倉庫、包装材、物流、決済、代理店を分析する。
  6. 社内体制を作る。 法務・知財・品質・海外事業・広報・監査・経営のRACIを定める。
  7. 再発防止を測る。 削除件数ではなく、再出品率、製造源遮断、税関差止、事故減少、権利カ棒率で評価する。

中国・東南アジアでの模倣品対策は、専門性の高い領域である。しかし、基本構造は明確である。すなわち、権利を取り、監視し、証拠化し、最適な手段を選び、サプライチェーンと社内統制を改善することである。企業がこのサイクルを継続できれば、模倣品被害を単なる不運ではなく、管理可能な企業リスクとして扱うことができる。

Reference

この記事の参考資料

公的機関・国際機関・中立的資料を中心に整理しています。

次の一覧は、このページで制度説明や統計、実務上の留意点を整理する際に参照した公的機関・国際機関等の資料名です。個別案件の結論ではなく、制度や統計の前提を確認するための資料として読み取ってください。

  • 財務省「令和6年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」
  • OECD, “Global Trade in Fakes worth nearly half a trillion dollars a year,” and OECD/EUIPO, *Mapping Global Trade in Fakes 2025*. /
  • 特許庁「政府模倣品・海賊版対策総合窓口」
  • JETRO「中小企業等海外侵害対策支援事業」
  • JETRO「国・地域別の模倣品対策マニュアル、知的財産権侵害判例・事例集」
  • JETRO「ASEAN 知的財産に関する情報」
  • WIPO Lex, “Regulations of the People’s Republic of China on Customs Protection of Intellectual Property Rights.”
  • China National Intellectual Property Administration, “Main Functions.”
  • Alibaba Group, “Intellectual Property Protection Platform – Policy.”
  • TikTok Shop Seller Academy, “Intellectual Property Protection Center.”
  • ASEAN IP Portal, “ASEAN Adopts the ASEAN Intellectual Property Rights Action Plan 2026–2030.”
  • World Customs Organization, “IPR, Health and Safety Programme.”
  • UK Government, “IP enforcement in Indonesia.”
  • Intellectual Property Office of the Philippines, “Intellectual Property Rights Enforcement Office.”
  • Intellectual Property Office of the Philippines, “National Committee on Intellectual Property Rights.”
  • Intellectual Property Office of the Philippines, “IPOPHL, e-commerce platforms, brand owners solidify alliance vs. online counterfeiting, piracy.”
  • Intellectual Property Office of Singapore, “Copyright infringement and enforcement.”
  • 特許庁「国際知的財産保護フォーラムとベトナム市場管理総局が模倣品対策に関する覚書を締結しました」
  • JETRO「日本企業の模倣品対策、ベトナム当局および大手ECプラットフォームとMOU締結」