2σ Guide

クロスボーダー案件での
SPA交渉

国境を越えるM&Aで、売買対象・価格・表明保証・補償・規制承認・紛争解決をどう設計するかを、企業法務実務の視点で整理します。

6領域 価格・法務・税務・規制・人事・PMI
3方式 Completion Accounts・Locked Box・Earn-out
10項目 紛争解決条項の実務チェック
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クロスボーダー案件での SPA交渉

国境を越えるM&Aで、売買対象・価格・表明保証・補償・規制承認・紛争解決をどう設計するかを、企業法務 実務の視点で整理します。

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クロスボーダー案件での SPA交渉
国境を越えるM&Aで、売買対象・価格・表明保証・補償・規制承認・紛争解決をどう設計するかを、企業法務 実務の視点で整理します。
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  • クロスボーダー案件での SPA交渉
  • 国境を越えるM&Aで、売買対象・価格・表明保証・補償・規制承認・紛争解決をどう設計するかを、企業法務 実務の視点で整理します。

POINT 1

  • クロスボーダー案件でのSPA交渉の全体像
  • 契約文言だけでなく、価値・規制・税務・PMIまで一体で設計する視点を整理します。
  • SPAは取引リスクの統治文書です
  • 価格と価値
  • 発見リスクの処理

POINT 2

  • クロスボーダー案件でのSPA交渉でまず確認するSPAの構造
  • SPAの主要条項と、株式譲渡・資産譲渡・分離型クロージングの違いを整理します。
  • 会社ごと取得する設計
  • 移転対象を選ぶ設計
  • 承認期間を組み込む設計

POINT 3

  • クロスボーダー案件でのSPA交渉はリスク配分マップとDD反映が出発点です
  • 既知・未知・将来・手続・執行・PMIのリスクを、価格や補償へ落とし込みます。
  • クロスボーダー案件でのSPA交渉は、条文を順番に読む前に、リスクを分類するところから始めます。
  • リスク配分マップを作らないまま交渉すると、買主は広く求め、売主は狭く削るという抽象的な押し引きになりやすくなります。
  • なぜ重要かというと、誰がそのリスクを把握・管理・保険化・価格化しやすいかによって、合理的な負担者が変わるためです。

POINT 4

  • クロスボーダー案件でのSPA交渉における価格・表明保証・補償・CP
  • 1. 必要承認を洗い出す:競争法、外資規制、業法、第三者同意、社内承認を確認します。
  • 2. 条件の重要性を分ける:重要規制・重要同意と、代替措置で足りる事項を区別します。
  • 3. 解除・費用負担を確認:治癒期間、Long Stop Date、費用、責任を定めます。
  • 4. クロージングへ進む:bring-down、誓約履行、書類交付、支払を確認します。

POINT 5

  • クロスボーダー案件でのSPA交渉を左右する規制・税務・人事・知財
  • 競争法、外資規制、制裁、贈収賄、個人情報、税務、労務、知財を一体で確認します。
  • なぜ重要かというと、承認が取れない場合や是正義務が重すぎる場合、買収目的そのものが損なわれるためです。
  • 各項目では、どの論点を前提条件、表明保証、補償、クロージング後義務に置くかを読み取ってください。
  • 投資家属性、議決権比率、機微技術、重要インフラ、政府監視条件、データアクセス制限を確認します。

POINT 6

  • クロスボーダー案件でのSPA交渉はクロージングと交渉管理で成否が決まります
  • 1. Issue Listを作る
  • 2. 法的論点と商業論点を分ける:補償上限や価格は経営判断が必要な一方、条項の有効性や違約金の制限は法律判断として切り分けます。
  • 3. 中間期コベナンツで価値を保全する:重要資産処分、借入、配当、重要契約、知財譲渡、会計方針変更を制限しつつ、gun-jumpingを避けます。
  • 4. 書類と支払を同期させる:承認書、第三者同意、支払指図、税務書類、役員変更、知財譲渡、TSAを同じ実行計画で確認します。

POINT 7

  • クロスボーダー案件でのSPA交渉のFAQ
  • よくある疑問に、一般的な制度説明として回答します。具体的な方針は案件資料に基づく確認が必要です。
  • Q1. クロスボーダー案件でのSPA交渉では、まず何から始めますか。
  • Q2. 準拠法はどの国の法律にすべきですか。
  • Q3. 仲裁条項を入れれば安心ですか。

まとめ

  • クロスボーダー案件での SPA交渉
  • クロスボーダー案件でのSPA交渉の全体像:契約文言だけでなく、価値・規制・税務・PMIまで一体で設計する視点を整理します。
  • クロスボーダー案件でのSPA交渉でまず確認するSPAの構造:SPAの主要条項と、株式譲渡・資産譲渡・分離型クロージングの違いを整理します。
  • クロスボーダー案件でのSPA交渉はリスク配分マップとDD反映が出発点です:既知・未知・将来・手続・執行・PMIのリスクを、価格や補償へ落とし込みます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

クロスボーダー案件でのSPA交渉の全体像

契約文言だけでなく、価値・規制・税務・PMIまで一体で設計する視点を整理します。

クロスボーダー案件でのSPA交渉は、国境を越えるM&A、投資、事業取得、株式取得で、売買対象、価格、クロージング条件、リスク配分、表明保証、補償、準拠法、紛争解決、規制対応を最終契約に落とし込む作業です。

この交渉の中心は、契約書の細かな文言調整ではありません。取引価値、法的リスク、規制承認、税務、会計、コンプライアンス、執行可能性、買収後の統合を、ひとつの実行計画として設計することです。

次の重要ポイントは、SPA交渉で何を同時に見なければならないかを表します。読者にとって重要なのは、各論点が独立しておらず、DDで見つかった事実が価格、前提条件、表明保証、補償、PMIへ連動する点を読み取ることです。

SPAは取引リスクの統治文書です

買主にとっては想定外負担を防ぐ防波堤であり、売主にとっては適正価格で確実に売却し、取引後責任を合理的に限定する出口設計です。

次の3つの視点は、交渉を始める前にそろえるべき検討軸を示します。なぜ重要かというと、法務だけ、価格だけ、規制だけで交渉すると、クロージング後に契約が機能しないおそれがあるためです。各項目では、どの専門領域を早期に統合するかを確認してください。

Value

価格と価値

Enterprise Value、Equity Value、純有利子負債、運転資本、為替、アーンアウトを、会計・税務と合わせて条項化します。

Risk

発見リスクの処理

税務、訴訟、制裁、贈収賄、個人データ、知財、労務、環境を、価格減額、特別補償、前提条件、是正義務へ反映します。

Execution

実行可能性

競争法、外資規制、第三者同意、公証、送金、仲裁判断の執行、TSA、PMIまで見通してクロージングを設計します。

Section 01

クロスボーダー案件でのSPA交渉でまず確認するSPAの構造

SPAの主要条項と、株式譲渡・資産譲渡・分離型クロージングの違いを整理します。

SPAはShare Purchase Agreementとして株式譲渡契約を指すことが多く、文脈によってはSale and Purchase Agreementとして資産譲渡、事業譲渡、持分譲渡を含む売買契約を指します。クロスボーダー案件では、会社法、税法、外資規制、競争法、会計実務、登記制度が国ごとに異なるため、SPAは複数国にまたがるリスク配分文書として機能します。

次の比較表は、SPAの主要条項と交渉上の意味を対応させたものです。読者にとって重要なのは、左列の項目を単独で読むのではなく、右列で示す交渉上の役割まで合わせて確認することです。各行は、条項がどのリスクを処理するかを示しています。

項目内容交渉上の意味
売買対象株式、持分、資産、事業、子会社群取得するものと取得しないものを画定します。
価格・対価現金、株式、社債、アーンアウト、繰延払い企業価値とリスクを価格へ反映します。
価格調整Closing Accounts、Locked Box、Net Debt、Working Capitalサイニングからクロージングまでの価値変動を誰が負担するかを決めます。
前提条件規制承認、第三者同意、資金調達、表明保証の真実性クロージング義務が発生する条件を定めます。
表明保証会社の存在、株式、財務、税務、法令遵守、知財、労務DDで見えにくいリスクを契約上明らかにします。
補償表明保証違反、特別補償、税務補償リスクが現実化した場合の金銭的救済を定めます。
誓約事項クロージング前後の行為義務・禁止義務価値毀損、規制違反、情報遮断を防ぎます。
解除・紛争解決条件不成就、重大違反、Long Stop Date、裁判、仲裁、準拠法離脱できる場面と、紛争時に執行できる仕組みを設計します。

次の一覧は、取引スキームごとにSPA交渉の力点がどこへ移るかを表します。なぜ重要かというと、同じM&Aでも株式譲渡と資産譲渡では承継されるリスクと実行手続が変わるためです。各項目では、どの論点を前提条件や別契約に逃がすかを読み取ってください。

株式譲渡型

会社ごと取得する設計

法人格、契約、許認可、従業員、資産・負債は原則として対象会社内に残ります。買主は過去リスクを会社ごと承継しやすいため、表明保証と補償が厚くなります。

資産・事業譲渡型

移転対象を選ぶ設計

不要な負債を切り離しやすい一方で、契約同意、従業員移籍、許認可、税務、知財移転登録、ローカル譲渡書類が複雑になります。

分離型クロージング

承認期間を組み込む設計

競争法、外資規制、金融規制、第三者同意、従業員協議がある場合、サイニングとクロージングを分け、中間期コベナンツで価値を保全します。

Section 02

クロスボーダー案件でのSPA交渉はリスク配分マップとDD反映が出発点です

既知・未知・将来・手続・執行・PMIのリスクを、価格や補償へ落とし込みます。

クロスボーダー案件でのSPA交渉は、条文を順番に読む前に、リスクを分類するところから始めます。リスク配分マップを作らないまま交渉すると、買主は広く求め、売主は狭く削るという抽象的な押し引きになりやすくなります。

次の比較表は、リスクの種類、典型例、主な処理方法を対応させています。なぜ重要かというと、誰がそのリスクを把握・管理・保険化・価格化しやすいかによって、合理的な負担者が変わるためです。各行では、リスクを条項のどこで受け止めるかを確認してください。

リスク類型典型例主な処理方法
既知リスクDDで判明した税務否認、訴訟、制裁懸念、許認可不備価格減額、特別補償、前提条件、クロージング前是正
未知リスク未発見の税務・環境・労務・贈収賄・財務虚偽表明保証、一般補償、保険、エスクロー
将来リスク市場悪化、為替、業績未達、規制変更アーンアウト、MACまたはMAE、価格調整、前提条件
手続リスク規制承認遅延、第三者同意不取得、登記未了CP、努力義務、Long Stop Date、解除権
執行リスク売主が外国所在、資産なし、仲裁判断執行困難エスクロー、保証、親会社保証、仲裁地設計
PMIリスクIT分離、従業員離職、顧客喪失、ライセンス切替TSA、キーマン条項、移行計画、クロージング後義務

次の比較表は、DDで判明した事項をSPA上の処理へ変換する対応関係を表します。読者にとって重要なのは、DDレポートに問題を書くだけでは足りず、価格、前提条件、表明保証、補償、PMI義務のいずれかへ接続する必要がある点です。左列の事実が右列の条項へ移っているかを確認してください。

DDで判明した事項SPAでの処理
未払税金・税務調査リスク税務表明保証、税務補償、価格減額、エスクロー
重要契約のチェンジ・オブ・コントロール条項第三者同意のCP、同意取得義務、解除権
訴訟・クレーム特別補償、開示例外、価格調整、訴訟管理条項
許認可の不備クロージング前是正、CP、表明保証、解除権
贈収賄・制裁リスク反贈収賄・制裁表明保証、特別補償、当局対応、PMI義務
個人データの越境移転データ保護表明保証、SCC、本人同意、移転制限、クリーンチーム
IP権利帰属不備譲渡書取得、発明者同意、表明保証、クロージング前是正
従業員・組合問題労務表明保証、従業員協議のCP、退職金・年金補償
環境・サプライチェーンリスク環境表明保証、ESG DD、是正計画、クロージング後義務
Section 03

クロスボーダー案件でのSPA交渉における価格・表明保証・補償・CP

企業価値を契約に落とし込み、情報非対称と回収可能性を条項で調整します。

価格条項では、Enterprise ValueとEquity Valueを区別し、純有利子負債、現金、運転資本、取引費用、為替、源泉税、送金規制を定義します。Completion Accounts、Locked Box、アーンアウトのいずれを選ぶかで、サイニングからクロージングまでの価値変動を誰が負担するかが変わります。

次の一覧は、価格条項で使われる代表的な方式を比較しています。なぜ重要かというと、方式ごとに価格確定性、クロージング後の紛争、売主・買主のリスク配分が変わるためです。各項目では、どの方式がどの不確実性を処理するかを読み取ってください。

Completion Accounts

クロージング時点で調整

クロージング日時点の貸借対照表等に基づき、純負債、現金、運転資本を算定します。会計基準、レビュー期間、異議手続、独立会計士の選任が交渉論点です。

Locked Box

基準日価格を固定

基準日貸借対照表に基づいて価格を固定し、基準日以降の価値流出を禁止または補償対象にします。漏出禁止、許容漏出、利息相当額が重要です。

Earn-out

将来業績で追加対価

クロージング後の業績に応じて追加対価を支払います。指標、計算期間、除外項目、運営義務、監査権、税務処理を明確にします。

次の比較表は、表明保証の分類と買主が重視する理由を整理しています。読者にとって重要なのは、表明保証が単なる宣言ではなく、情報非対称を補い、補償や解除の前提になる点です。分類ごとに、どのリスクが価格やPMIへ影響するかを確認してください。

分類内容買主が重視する理由
Fundamental Warranties売主の権限、株式所有、対象株式の有効性、担保不存在取引の根本に関わります。
Corporate Warranties設立、有効存続、定款、子会社、資本構成対象会社の法的基盤を確認します。
Financial Statements財務諸表、会計基準、未開示債務価格算定の前提を保護します。
Tax税務申告、納税、源泉税、移転価格、税務調査クロージング後に過去税務リスクが現実化しやすい領域です。
Compliance法令遵守、許認可、贈収賄、制裁、AML当局制裁、刑事責任、評判リスクを防ぎます。
IP/IT・Data Privacy知財、サイバー、個人情報、越境移転、漏えい技術・ブランド価値と規制罰リスクを保護します。
Employment・Environmental雇用、年金、労務紛争、汚染、環境許可人件費、長期負担、PMIへの影響を把握します。

次の比較表は、補償条項でよく交渉される制限を整理しています。なぜ重要かというと、表明保証が広くても、期間・上限・basket・除外損害で実際の救済範囲が大きく変わるためです。各行では、買主がどの例外や除外を確保するかを確認してください。

制限内容買主側の交渉ポイント
Survival Period請求可能期間税務・基本表明保証は長めの期間を求めます。
Cap補償上限Fundamental、fraud、特別補償を除外するか検討します。
Basket一定額を超えた場合のみ請求可能deductibleかfirst dollarかを確認します。
De minimis少額請求除外個別請求単位の分割回避を規定します。
Sole Remedy契約上の補償を唯一の救済とする考え方詐欺・故意・衡平法上救済を除外するか検討します。

次の判断の流れは、前提条件をどの順番で検討するかを表します。読者にとって重要なのは、規制承認や第三者同意が単なる形式条件ではなく、解除、費用負担、Long Stop Date、努力義務へつながる点です。上から下へ、クロージング義務が発生するまでの確認順を追ってください。

前提条件を設計する順番

必要承認を洗い出す

競争法、外資規制、業法、第三者同意、社内承認を確認します。

条件の重要性を分ける

重要規制・重要同意と、代替措置で足りる事項を区別します。

未充足
解除・費用負担を確認

治癒期間、Long Stop Date、費用、責任を定めます。

充足
クロージングへ進む

bring-down、誓約履行、書類交付、支払を確認します。

Section 04

クロスボーダー案件でのSPA交渉を左右する規制・税務・人事・知財

競争法、外資規制、制裁、贈収賄、個人情報、税務、労務、知財を一体で確認します。

クロスボーダー案件では、競争法上の企業結合審査、外資規制、安全保障審査、制裁、輸出管理、贈収賄、個人情報、税務、労務、知財が、前提条件、努力義務、解除権、特別補償、PMI義務に直結します。

次の一覧は、外部規制・コンプライアンス論点がSPAへどう影響するかを表します。なぜ重要かというと、承認が取れない場合や是正義務が重すぎる場合、買収目的そのものが損なわれるためです。各項目では、どの論点を前提条件、表明保証、補償、クロージング後義務に置くかを読み取ってください。

01

競争法・企業結合規制

届出法域、届出主体、費用負担、情報提出、問題解消措置、Hell-or-high-water、gun-jumping防止を設計します。

CPLong Stop Date
02

外資規制・安全保障審査

投資家属性、議決権比率、機微技術、重要インフラ、政府監視条件、データアクセス制限を確認します。

外資審査remedy
03

贈収賄・制裁・輸出管理

代理店、公務員、制裁対象、米国原産品、デュアルユース技術、当局調査、PMI後統合義務を条項化します。

表明保証特別補償
04

個人情報・データ保護

データルーム、従業員・顧客情報、SCC、本人同意、クリーンチーム、漏えい、データ主体請求を確認します。

DPA越境移転

次の比較表は、税務・人事・知財・ITで契約化すべき事項を整理しています。読者にとって重要なのは、これらが法務の周辺論点ではなく、価格、補償、許認可、PMIの実行可能性へ直結する点です。各列では、確認領域とSPA上の受け皿を対応させてください。

領域主な確認事項SPAでの受け皿
税務・会計過去税務、移転価格、源泉税、VAT/GST、租税条約、税務還付、gross-up、価格調整の税務処理税務補償、申告権限、調査対応、支払控除、価格調整条項
労務・年金・人事従業員協議、組合、退職金、年金、未払賃金、ハラスメント、就労ビザ、キーマン維持労務表明保証、従業員協議CP、リテンション、PMI義務
知財・IT特許、商標、著作権、営業秘密、オープンソース、AIモデル、職務発明、クラウド、サイバー知財表明保証、譲渡書、ライセンス継続、ソースコード、サイバー補償
第三者同意顧客、銀行、ライセンサー、JV相手方、許認可、補助金、共同研究契約CP、同意取得義務、代替措置、解除権
Section 05

クロスボーダー案件でのSPA交渉はクロージングと交渉管理で成否が決まります

書類、送金、承認、Redline管理、買主・売主の重点論点を実行手順へ落とします。

クロージングは、契約上の義務が現実に履行される局面です。署名権限、委任状、公証、アポスティーユ、登記、株主名簿、現地譲渡証書、銀行送金、源泉税証明、役員辞任・選任、電子署名、翻訳、政府承認書類を、事前に一覧で管理します。

次の時系列は、SPA交渉からクロージングまでに確認すべき順番を表します。なぜ重要かというと、承認や書類の準備が遅れると、価格・送金・権利移転のタイミングがずれるためです。上から順に、どの段階で誰が何を確定させるかを読み取ってください。

初期設計

Issue Listを作る

価格、CP、規制、表明保証、補償、税務、紛争解決、TSAを分類し、買主案、売主案、妥協案、担当者、次アクションを管理します。

交渉中

法的論点と商業論点を分ける

補償上限や価格は経営判断が必要な一方、条項の有効性や違約金の制限は法律判断として切り分けます。

サイニング後

中間期コベナンツで価値を保全する

重要資産処分、借入、配当、重要契約、知財譲渡、会計方針変更を制限しつつ、gun-jumpingを避けます。

クロージング

書類と支払を同期させる

承認書、第三者同意、支払指図、税務書類、役員変更、知財譲渡、TSAを同じ実行計画で確認します。

次の比較表は、クロージング前に管理すべき書類・作業を示します。読者にとって重要なのは、期限だけでなく依存関係を確認することです。右列を見ると、どの作業が公証、届出、KYC、源泉税、登録手続に依存するか分かります。

書類・作業担当期限依存関係
株式譲渡証書売主側・現地専門家クロージング日公証・署名権限
取締役会・株主承認売主・買主サイニング前またはクロージング前各国会社法
規制承認書当局対応チームCP充足日届出・審査
第三者同意対象会社CP充足日顧客・銀行・ライセンサー
支払指図書買主財務クロージング日KYC・銀行カットオフ
税務書類税務・会計担当支払前源泉税・租税条約
役員辞任・選任会社事務局クロージング日登記
知財譲渡書・TSA知財、IT、事業部、法務クロージング日登録手続・分離計画

次の比較表は、買主側と売主側が重点的に見る交渉事項を並べたものです。なぜ重要かというと、相手方の優先順位を理解すると、どの論点で譲歩し、どの論点を守るべきかが明確になるためです。左右の違いから、妥協案を作る余地を確認してください。

買主側の重点売主側の重点妥協の作り方
対象株式の有効保有、担保不存在、重要契約・許認可・IPの維持買主の資金調達確実性とクロージング確実性重要同意に絞ったCP、代替措置、明確な期限を置きます。
未開示負債、税務、訴訟、環境、労務、贈収賄、制裁、データ違反の補償補償上限、basket、de minimis、survival periodで責任を限定Fundamental・特別補償を別扱いにし、一般補償は上限を置きます。
補償回収のためのエスクロー、保証、保険W&I保険を活用したクリーン・エグジット既知リスクと保険除外を特別補償または価格へ反映します。
TSA、移行支援、情報提供、従業員協力競業避止、勧誘禁止、秘密保持、広報発表を合理的範囲に制限期間・範囲・地域・対象者を限定し、PMIに必要な協力を確保します。
Section 06

クロスボーダー案件でのSPA交渉のFAQ

よくある疑問に、一般的な制度説明として回答します。具体的な方針は案件資料に基づく確認が必要です。

Q1. クロスボーダー案件でのSPA交渉では、まず何から始めますか。

一般的には、取引スキーム、対象国、対象業種、買主・売主属性、規制承認、価格算定、DD範囲、タイムライン、社内決裁を整理した論点マップから始めるとされています。ただし、案件規模、対象業種、規制法域、既存契約によって優先順位は変わります。具体的な進め方は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 準拠法はどの国の法律にすべきですか。

一般的には、対象会社所在地、売主・買主所在地、金融機関、仲裁地、契約実務の成熟度、執行可能性、強行規定との関係を踏まえて選ぶものとされています。ただし、一律の正解はありません。具体的な選択は、対象国と契約群の構成を確認したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q3. 仲裁条項を入れれば安心ですか。

一般的には、仲裁は非公開性、専門性、国際執行可能性の面で有用とされています。ただし、仲裁機関、仲裁地、仲裁人の数、言語、秘密保持、緊急保全、複数契約、執行地を設計しないと機能しない可能性があります。具体的な紛争解決条項は、取引相手と資産所在地を踏まえて弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q4. 表明保証と補償は何が違いますか。

一般的には、表明保証は一定の事実が真実であることを表明・保証する条項で、補償は違反や特定リスクが発生した場合に損害を金銭的に補填する条項とされています。ただし、請求期間、上限、basket、除外損害、開示例外によって実際の救済範囲は変わります。具体的な設計は、DD結果を踏まえて弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q5. DDで判明した問題は、表明保証だけで足りますか。

一般的には、既知リスクは表明保証だけでは足りないことが多いとされています。価格減額、特別補償、前提条件、クロージング前是正、エスクローなどで個別処理する必要が生じる場合があります。具体的な対応は、リスクの内容と証拠関係によって変わるため、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q6. W&I保険を使えば売主補償は不要ですか。

一般的には、W&I保険は回収可能性や売主の責任限定に役立つとされています。ただし、既知リスク、特定税務、制裁、贈収賄、環境、価格調整紛争などが除外される可能性があります。具体的な補償設計は、保険条件とDD結果を確認したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q7. 日本企業が海外企業を買収する場合、どの専門家が必要ですか。

一般的には、外部弁護士、現地弁護士、企業内法務、会計士、税理士、財務アドバイザー、コンプライアンス、輸出管理、プライバシー、知財、労務、IT・サイバー、翻訳・通訳の関与が想定されます。ただし、案件規模や対象業種によって必要な体制は変わります。具体的には、取引初期に専門家の範囲を確認する必要があります。

Reference

この記事の参考情報源

国際取引・仲裁・売買契約

  • UNCITRAL「United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods」
  • UNCITRAL「Convention on the Recognition and Enforcement of Foreign Arbitral Awards」
  • International Chamber of Commerce「Arbitration Clause」

競争法・外資規制・制裁・輸出管理

  • 公正取引委員会「株式取得の届出制度」
  • 公正取引委員会「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」
  • European Commission「Merger Procedures」
  • Federal Trade Commission「Premerger Notification Program」
  • U.S. Department of the Treasury「CFIUS Overview」
  • U.S. Department of the Treasury「Sanctions Programs and Country Information」
  • 経済産業省「安全保障貿易管理」

コンプライアンス・個人情報・責任ある企業行動

  • U.S. Department of Justice「FCPA Resource Guide」
  • GOV.UK Ministry of Justice「Bribery Act 2010 guidance」
  • 個人情報保護委員会「外国にある第三者への提供編」
  • European Commission「Standard Contractual Clauses」
  • OECD「Due Diligence Guidance for Responsible Business Conduct」
  • Japanese Law Translation「Companies Act」