2σ Guide

秘密保持契約の条項書き分け
開示側・受領側で有利な文言を整理

秘密情報を出す側と受ける側では、定義、目的、除外事由、共有先、責任制限、差止めの読み方が逆転します。NDA、共同開発、M&A、AI・データ案件で使える実務視点を体系的に確認します。

20主要条項を比較
5類型M&A・PoC等
8問FAQで補足
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秘密保持契約の条項書き分け 開示側・受領側で有利な文言を整理

秘密情報を出す側と受ける側では、定義、目的、除外事由、共有先、責任制限、差止めの読み方が逆転します。

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秘密保持契約の条項書き分け 開示側・受領側で有利な文言を整理
秘密情報を出す側と受ける側では、定義、目的、除外事由、共有先、責任制限、差止めの読み方が逆転します。
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  • 秘密保持契約の条項書き分け 開示側・受領側で有利な文言を整理
  • 秘密情報を出す側と受ける側では、定義、目的、除外事由、共有先、責任制限、差止めの読み方が逆転します。

POINT 1

  • 秘密保持契約の条項書き分けの全体像
  • 開示側と受領側で、同じ条項の意味がどう変わるかを最初に整理します。
  • 漏えい・目的外使用・模倣を防ぐ
  • 過剰拘束と責任肥大を防ぐ
  • 情報の価値と流れで調整する

POINT 2

  • 秘密保持契約で開示側と受領側の意味が変わる理由
  • 1. 情報の流れを確認:一方開示、双務、実質片務のどれかを把握します。
  • 2. 守るべき利益を特定:技術、顧客、価格、M&A、個人データ、AI・データなどを分解します。
  • 3. 入口・利用目的・救済を強化:秘密指定、再開示制限、返還・廃棄、差止めを点検します。
  • 4. 例外・共有先・責任範囲を明確化:通常業務、独自開発、法令対応を妨げないかを確認します。

POINT 3

  • 秘密保持契約の基本用語と一方開示型・双務型の違い
  • 開示側、受領側、実質片務型を区別して、交渉の出発点を決めます。
  • 1 開示側
  • 2 受領側
  • 3 一方開示型、双務型、実質片務型

POINT 4

  • 秘密保持契約と営業秘密管理・個人情報・AIデータの関係
  • NDAだけで足りる範囲と、法令・管理体制まで必要になります範囲を確認します。
  • 1 「秘密情報」と「営業秘密」は同じではありません
  • 2 NDA違反の責任根拠
  • 4 データ・AI・共同利用の契約では、秘密保持だけでは足りません

POINT 5

  • 秘密保持契約を開示側有利・受領側有利に設計する原則
  • 入口
  • 開示側は広く、受領側は秘密表示や事後確認で明確にします。
  • 目的
  • 開示側は案件単位に絞り、受領側は評価・承認・契約履行まで含めます。

POINT 6

  • 秘密保持契約の条項別書き分けと文例
  • 目的、定義、除外事由、共有先、責任制限などを条項ごとに比較します。
  • 1 目的条項
  • 2 秘密情報の定義
  • 3 除外事由

POINT 7

  • 秘密保持契約の実務類型別の書き分け
  • 1. 買主候補への開示を管理:対象会社資料、従業員接触、スタンドスティル、破談時の返還・廃棄を重視します。
  • 2. 成果物と独自開発を分ける:評価目的、発表制限、改良発明、学習データ、類似開発の自由を調整します。
  • 3. 顧客情報と委託先管理を強める:再委託、クラウド保存、個人データ、漏えい時通知、契約終了後の廃棄が中心です。

POINT 8

  • 秘密保持契約を開示側として見るチェックリスト
  • 秘密情報を出す側が、入口・目的・共有先・管理・救済を点検します。
  • 1 情報の入口
  • 2 利用目的
  • 3 共有先

まとめ

  • 秘密保持契約の条項書き分け 開示側・受領側で有利な文言を整理
  • 秘密保持契約の条項書き分けの全体像:開示側と受領側で、同じ条項の意味がどう変わるかを最初に整理します。
  • 秘密保持契約で開示側と受領側の意味が変わる理由:情報の流れ、守るべき利益、運用可能性から条項を読み替えます。
  • 秘密保持契約の基本用語と一方開示型・双務型の違い:開示側、受領側、実質片務型を区別して、交渉の出発点を決めます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

秘密保持契約の条項書き分けの全体像

開示側と受領側で、同じ条項の意味がどう変わるかを最初に整理します。

次の重要ポイントは、開示側と受領側がそれぞれ恐れるリスクを対比したものです。交渉では同じ条項でも立場により意味が逆転するため、左右の違いから自社がどちらのリスクを優先して抑えるべきかを読み取ってください。

開示側

漏えい・目的外使用・模倣を防ぐ

秘密情報の範囲を広くし、利用目的を狭くし、再開示・返還・廃棄・救済を強める方向で設計します。

受領側

過剰拘束と責任肥大を防ぐ

秘密情報の範囲、除外事由、共有先、責任制限、将来事業の自由を明確にする方向で設計します。

共通

情報の価値と流れで調整する

形式上の片務・双務ではなく、実質的に重要情報を出す側、管理可能な範囲、紛争時の立証構造を見ます。

「どちらが開示側かで有利になる条項の書き分け」は、秘密保持契約、業務委託契約、共同開発契約、M&Aの秘密保持条項、PoC契約、ライセンス契約、データ提供契約に共通する実務論点です。表面的には同じ「秘密情報を守る条項」であっても、開示側にとって有利な文言と、受領側にとって有利な文言は、ほぼ反対方向に働く。

開示側は、秘密情報の範囲を広くし、利用目的を狭くし、再開示を制限し、返還・廃棄・差止め・損害賠償を強くすることを望みます。受領側は、秘密情報の範囲を明確に限定し、例外を広くし、社内外の必要関係者への共有を許容し、責任を合理的範囲に限定し、通常業務・独自開発・既存知識・法令対応を妨げない設計を望みます。

このページの結論は、単純です。情報を出す側は「漏えい・目的外使用・模倣・立証困難」を恐れ、情報を受ける側は「過剰拘束・責任肥大・通常業務の萎縮・将来事業の制限」を恐れる。 したがって、条項の書き分けは、「どちらが悪いか」ではなく、情報の価値、情報の流れ、相手方の信用、事業上の必要性、法令上の義務、紛争時の立証構造をどう配分するかというリスク設計です。

このページは、企業法務に関わる読者が、契約交渉で「どの条項がどちらに有利か」を判断し、修正案を作れるように、定義、法的背景、条項別の比較、文例、交渉戦略、チェックリストを体系的に整理します。

重要このページは一般的な法務・契約実務の解説であり、個別案件についての法律意見ではありません。実際の契約締結・紛争対応では、対象情報、契約類型、準拠法、業界規制、個人情報・輸出管理・競争法等の要素を踏まえて、弁護士その他の専門家に確認する必要があります。
Section 01

秘密保持契約で開示側と受領側の意味が変わる理由

情報の流れ、守るべき利益、運用可能性から条項を読み替えます。

次の判断の流れは、秘密保持契約を読む順番を示すものです。最初に情報の流れを確認しないと、どの条項を強めるべきか、どの義務が過剰かを見誤ります。上から順に進め、最後に条項修正へ落とし込んでください。

立場を決めてから条項を見る順番

情報の流れを確認

一方開示、双務、実質片務のどれかを把握します。

守るべき利益を特定

技術、顧客、価格、M&A、個人データ、AI・データなどを分解します。

開示側
入口・利用目的・救済を強化

秘密指定、再開示制限、返還・廃棄、差止めを点検します。

受領側
例外・共有先・責任範囲を明確化

通常業務、独自開発、法令対応を妨げないかを確認します。

秘密保持条項は、しばしば「ひな形を入れておけば足りる」と誤解される。しかし、企業法務の実務では、秘密保持条項ほど立場差が強く出る条項は少ないです。なぜなら、秘密保持条項は、契約締結後の情報の流れ、事業機会、知的財産、競争優位、証拠化、損害回復の全てに関わるからです。

たとえば、次のような条項を考える。

文例受領者は、開示者の事前の書面承諾なく、本秘密情報を第三者に開示してはならず、本目的以外に使用してはなりません。

一見すると標準的です。しかし、開示側から見ると、この条項はまだ弱い。秘密情報の定義、社内共有、関係会社、専門家、再委託先、返還・廃棄、立入検査、差止め、損害賠償、残存期間が詰められていなければ、実際に漏えいしたときに十分な対応ができない可能性がある。

一方、受領側から見ると、この条項は強すぎる場合がある。事業検討、技術評価、法務・会計・税務・投資家説明、取締役会報告、クラウド環境での保存、弁護士への相談、法令・裁判所・行政機関対応まで制限されると、通常の業務ができなくなります。さらに、秘密情報の定義が広すぎると、自社がもともと持っていた技術、独自に開発した成果、一般知識まで相手方の秘密情報と主張される危険がある。

したがって、「どちらが開示側かで有利になる条項の書き分け」の出発点は、以下の三つです。

  1. 情報の流れを正確に把握すること

一方だけが開示するのか、双方が開示するのか、形式上は双務型でも実質的には片方だけが重要情報を出すのかを確認します。

  1. 守るべき利益を特定すること

技術情報、顧客情報、価格情報、事業計画、M&A情報、個人データ、ソースコード、学習データ、試料、図面、ノウハウ、未公開製品情報など、何を守るのかを分解します。

  1. 相手方に負わせる義務を運用可能な範囲に落とすこと

守れない義務、監査できない義務、証拠化できない義務、通常業務を不当に妨げる義務は、交渉上も紛争時も不安定です。

Section 02

秘密保持契約の基本用語と一方開示型・双務型の違い

開示側、受領側、実質片務型を区別して、交渉の出発点を決めます。

1 開示側

「開示側」とは、秘密情報を相手方に提供する当事者です。契約書では「開示者」「Disclosing Party」と表記されることが多いです。開示側の最大の関心は、情報が相手方に渡った後も、秘密性、競争優位、知的財産上の価値、取引上の優位性を維持することです。

開示側が恐れる典型的リスクは、次のとおりです。

  • 相手方が情報を目的外に使用します。
  • 相手方が自社または第三者の競合サービスに情報を流用します。
  • 相手方の従業員、関係会社、再委託先、外部専門家から漏えいします。
  • 口頭説明、デモ、試料、図面、ソースコード、データセットなど、文書以外の情報が「秘密情報ではありません」と主張される。
  • 漏えい後に損害額を立証できない。
  • 返還・廃棄を求めても、バックアップ、メール、チャット、クラウド、AIツール、ログに残る。
  • 契約期間満了後に秘密保持義務が消滅したと主張される。

2 受領側

「受領側」とは、秘密情報を受け取る当事者です。契約書では「受領者」「Receiving Party」と表記されることが多いです。受領側の最大の関心は、必要な情報を安全に利用しつつ、過剰な責任や事業制限を負わないことです。

受領側が恐れる典型的リスクは、次のとおりです。

  • 秘密情報の定義が広すぎて、通常業務まで制限される。
  • 自社が以前から保有していた情報、第三者から適法に取得した情報、独自開発した情報まで拘束される。
  • グループ会社、役員、従業員、弁護士、公認会計士、税理士、投資家、金融機関、再委託先への共有ができない。
  • 目的外使用の範囲が曖昧で、事業検討、技術評価、法務確認、セキュリティ検証ができない。
  • 無期限の義務、無制限の損害賠償、監査権、違約金、差止め条項が過大です。
  • 相手方の情報に触れたために、将来の独自研究、製品開発、営業活動が制限される。
  • 法令、裁判所、行政機関、証券取引所、監査法人への開示が契約違反になり得ます。

3 一方開示型、双務型、実質片務型

秘密保持契約には、大きく三つの型がある。

一方開示型は、一方のみが情報を開示し、他方のみが秘密保持義務を負う構造です。典型例は、発注者が委託先に仕様、顧客情報、設計資料を渡す場合や、売主が買主候補にM&A対象会社の情報を開示する場合です。

双務型は、双方が情報を開示し、双方が秘密保持義務を負う構造です。共同開発、提携検討、PoC、ライセンス交渉では双務型が多いです。

実質片務型は、契約文言上は双務型であっても、実際には片方だけが重要情報を出す構造です。たとえば、大企業とスタートアップの協業で、スタートアップがコア技術や事業モデルを開示し、大企業側は一般的な検討情報しか出さない場合です。この場合、条項は双務型でも、交渉戦略は「実質的な開示側」を強く保護する方向で考える必要があります。

公正取引委員会は、スタートアップとの事業連携において、片務的なNDAや極端に短い契約期間が問題となり得ます事例を示しています。特に、連携事業者側だけが秘密保持義務を負わないNDA、または期間が短すぎて情報の性質に合わないNDAは、実務上のレッドフラッグです。

Section 04

秘密保持契約を開示側有利・受領側有利に設計する原則

保護を強める発想と、過剰拘束を避ける発想を対比します。

次の比較一覧は、開示側有利と受領側有利の基本思想を並べたものです。読者にとって重要なのは、どちらか一方を絶対視するのではなく、案件ごとに保護と運用可能性の均衡を取る点です。各項目から、自社の修正案がどちらへ傾いているかを読み取ってください。

入口

開示側は広く、受領側は秘密表示や事後確認で明確にします。

目的

開示側は案件単位に絞り、受領側は評価・承認・契約履行まで含めます。

人の流れ

再開示先、専門家、関係会社、委託先への共有条件を調整します。

出口

返還、廃棄、バックアップ、派生資料、AIツール入力の扱いを決めます。

1 開示側有利の基本思想

開示側有利に書く場合の基本思想は、次の五つです。

第一に、秘密情報の入口を広くする。文書、電子データ、口頭説明、視覚情報、試料、デモ、ソースコード、図面、仕様、顧客情報、契約交渉の存在、情報の組合せ、派生情報を含める。

第二に、利用目的を狭くする。受領者が情報を利用できる目的を、案件名、検討内容、契約締結前の評価、特定プロジェクトなどに限定します。

第三に、人の流れを制限する。役職員、関係会社、外部専門家、再委託先、投資家、金融機関等への開示について、必要性、同等義務、事前承諾、責任負担を定める。

第四に、情報の出口を管理する。返還、廃棄、消去、証明書、バックアップ、複製物、派生資料、記録媒体、クラウド、チャット、生成AIツールへの入力禁止を定める。

第五に、違反時の救済を強くする。差止め、原因調査、再発防止、損害賠償、違約金、弁護士費用、監査、通知、協力義務、残存期間を定める。

2 受領側有利の基本思想

受領側有利に書く場合の基本思想は、次の五つです。

第一に、秘密情報の入口を明確にする。秘密表示がある情報、開示時に秘密であると明示された情報、一定期間内に書面確認された口頭情報に限定します。

第二に、例外を広くする。既知情報、公知情報、第三者から適法に取得した情報、独自開発情報、法令・裁判所・行政機関・証券取引所・監査上必要な開示、残存記憶を明記します。

第三に、利用目的を実務上使える範囲にする。評価、検討、交渉、契約履行、社内承認、法務・会計・税務・監査、セキュリティ確認、取締役会報告などを含める。

第四に、責任を合理化する。故意・重過失に限定するか、少なくとも損害賠償の上限、間接損害・特別損害の除外、予見可能性、立証責任、違約金の排除を定める。

第五に、将来事業の自由を守る。独自開発、一般的知識・経験、類似技術の研究開発、既存顧客への営業、競合製品の開発を過度に制限しない。

3 双務型でも「完全対称」が正しいとは限らない

双務型NDAでは、同じ義務を双方に課すのが公平に見える。しかし、実務上は、完全対称が常に合理的とは限らない。たとえば、一方が営業秘密レベルの製造ノウハウを出し、他方が一般的な会社案内だけを出す場合、完全対称条項は形式的公平にすぎない。

この場合は、次のような設計が考えられる。

  • 基本条項は双務型にします。
  • 特に重要な情報について「特定秘密情報」「高度機密情報」「制限情報」などの上位カテゴリを設ける。
  • 上位カテゴリについては、アクセス者、保管方法、複製禁止、監査、返還・廃棄、残存期間を強化します。
  • 双方が同じカテゴリを使えるようにしつつ、実際には重要情報を出す側が強い保護を受ける。

これにより、見た目の片務性を避けながら、実質的なリスク配分を調整できます。

Section 05

秘密保持契約の条項別書き分けと文例

目的、定義、除外事由、共有先、責任制限などを条項ごとに比較します。

次の比較表は、条項ごとに開示側が強めたい点と受領側が限定したい点を整理したものです。条項数が多いほど優先順位を失いやすいため、まずこの表で交渉上の争点を俯瞰し、後続の文例で具体的な言い換えを確認してください。

条項開示側が重視する点受領側が重視する点
目的案件名・検討範囲に限定します。評価、交渉、承認、履行に必要な範囲を含めます。
秘密情報の定義口頭、試料、デモ、派生資料、交渉事実まで含めます。秘密表示や事後書面確認を要件にします。
除外事由客観証拠と受領側の立証責任を求めます。既知、公知、第三者取得、独自開発、法令開示を広く入れます。
共有先事前承諾、同等義務、責任負担を求めます。役職員、専門家、関係会社、委託先への必要共有を確保します。
救済・責任差止め、調査協力、損害賠償、違約金を明記します。上限、間接損害除外、故意・重過失限定を検討します。

以下では、主要条項ごとに、開示側有利、受領側有利、中間案の考え方を整理します。

1 目的条項

開示側有利

開示側は、利用目的を狭く、具体的に、案件単位で定めるべきです。目的が広いと、受領側が情報を別案件、別部署、別製品、別顧客向けに利用しても「目的内」と主張する余地が生じる。

文例

文例受領者は、本秘密情報を、開示者と受領者との間で検討される「〇〇プロジェクト」に関する技術的・商業的可能性の評価および当該プロジェクトに関する契約交渉の目的にのみ使用するものとし、その他いかなる目的にも使用してはなりません。

受領側有利

受領側は、目的を実務上必要な範囲に広げる。特に社内承認、法務確認、会計・税務検討、投資判断、セキュリティ評価、契約履行まで含める。

文例

文例受領者は、本秘密情報を、本取引の検討、評価、交渉、社内承認、法務・会計・税務・技術・セキュリティ上の確認、ならびに本取引に関連して合理的に必要な業務のために使用することができます。

中間案

文例受領者は、本秘密情報を、本取引の検討、評価、交渉、社内承認および本取引に関する契約の履行のために必要な範囲でのみ使用することができます。

2 秘密情報の定義

開示側有利

開示側は、秘密情報の定義を広くします。特に、口頭情報、視覚情報、試料、デモ、メタデータ、情報の組合せ、派生情報、契約交渉の存在を含める。

文例

文例「秘密情報」とは、開示者が受領者に対し、書面、電子媒体、口頭、映像、実演、試料、図面、ソースコード、データ、クラウド環境、その他方法のいかんを問わず開示する一切の技術上、営業上、財務上、組織上、法務上その他事業上の情報をいい、当該情報が秘密です旨の表示または指定の有無を問わない。また、当該情報を基礎として作成された分析、メモ、検討資料、複製物、翻訳物、加工物、派生資料および本契約または本取引の存在・内容も秘密情報に含む。

受領側有利

受領側は、秘密情報の範囲を明確に限定します。秘密表示、開示時の指定、口頭情報の事後書面確認を要件にします。

文例

文例「秘密情報」とは、開示者が受領者に対して開示する情報のうち、書面または電子データにより開示され、かつ秘密です旨が明示された情報をいう。口頭、実演その他無形の方法により開示された情報については、開示時に秘密です旨が明示され、かつ開示後30日以内に当該情報の概要および秘密情報です旨を記載した書面が受領者に交付された場合に限り、秘密情報に該当します。

中間案

文例「秘密情報」とは、開示者が秘密です旨を表示または開示時に明示して開示する情報をいう。ただし、情報の性質、開示の状況、当事者間の関係に照らし、合理的に秘密情報であると認識すべき情報は、秘密表示がない場合であっても秘密情報に含まれる。

3 除外事由

開示側有利

開示側は、除外事由を限定し、受領側に立証責任を負わせる。特に「独自開発」「第三者取得」「公知化」については、受領側の不正行為によるものを除外し、書面証拠を要求します。

文例

文例前条にかかわらず、受領者が書面その他客観的証拠により証明できます情報であって、次の各号のいずれかに該当するものは秘密情報に含まれない。ただし、受領者またはその関係者の本契約違反、不正行為または秘密保持義務違反に起因して公知となった情報はこの限りでない。

受領側有利

受領側は、例外を広く、明確に定める。特に、既知情報、独自開発情報、第三者からの適法取得、法令上必要な開示、専門家への開示、残存記憶を入れたい。

文例

文例次の各号に該当する情報は、秘密情報に含まれない。
文例1. 開示時点で受領者が既に保有していた情報
文例2. 開示時点で公知であった情報
文例3. 開示後、受領者の責めによらず公知となった情報
文例4. 受領者が秘密保持義務を負わない第三者から適法に取得した情報
文例5. 受領者が開示者の秘密情報を参照することなく独自に開発した情報
文例6. 法令、裁判所、行政機関、金融商品取引所、監査法人または専門家の要請により開示が必要となる情報
重要7. 受領者の役職員の記憶に自然に残存した一般的知識、技能、経験、アイデアまたはノウハウ

第7号のいわゆる「残存記憶」条項は、受領側に強く有利です。ただし、開示側から見ると、営業秘密の流用を正当化する危険があるため、強く争われやすい。

中間案

重要受領者の役職員の記憶に自然に残存した一般的知識、技能および経験の使用は妨げられない。ただし、受領者は、開示者の秘密情報を意図的に記憶、複製、記録、抽出または再構成してはならず、当該秘密情報を実質的に使用して競合製品または競合サービスを開発してはなりません。

4 再開示・共有先

開示側有利

開示側は、再開示を事前承諾制にし、共有先を必要最小限に限定します。さらに、受領者が共有先の違反について責任を負うと定める。

文例

文例受領者は、開示者の事前の書面承諾なく、本秘密情報を第三者に開示してはなりません。受領者が開示者の承諾を得て本秘密情報を第三者に開示する場合、受領者は、当該第三者に対し本契約と同等以上の秘密保持義務を負わせるものとし、当該第三者の行為または不作為について、自己の行為または不作為と同一に責任を負う。

受領側有利

受領側は、関係会社、役職員、弁護士、公認会計士、税理士、社労士、弁理士、金融機関、投資家、委託先、クラウドサービス提供者等への開示を、事前承諾なしで許容するよう求める。

文例

文例受領者は、本目的のために合理的に必要な範囲で、自己および自己の関係会社の役員、従業員、弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、コンサルタント、金融機関、投資家、委託先その他専門家または関係者に本秘密情報を開示することができます。ただし、受領者は、当該開示先に対し、法令上または契約上の秘密保持義務を負わせ、または秘密保持義務を負う専門家ですことを確認するものとします。

中間案

文例受領者は、本目的のために合理的に必要な範囲で、自己の役職員および法令上の守秘義務を負う専門家に本秘密情報を開示できます。関係会社、委託先、投資家または金融機関への開示については、開示者の事前承諾を要します。ただし、開示者は合理的理由なく当該承諾を拒否しない。

5 管理水準・安全管理措置

開示側有利

開示側は、単なる「善管注意義務」や「合理的注意」ではなく、具体的な管理措置を求める。アクセス権限、ログ、暗号化、持出禁止、教育、インシデント対応、委託先管理などを条項化します。

文例

文例受領者は、本秘密情報を、自己の同種の秘密情報を管理する場合と同等以上、かつ合理的に必要な水準以上の注意をもって管理しなければなりません。受領者は、アクセス権限の限定、アクセスログの取得、複製の制限、暗号化、パスワード管理、社外持出しの制限、役職員への教育、委託先管理その他本秘密情報の漏えい、滅失、毀損、目的外使用を防止するために必要かつ適切な措置を講じる。

受領側有利

受領側は、管理水準を抽象的・合理的な範囲に留める。あまり具体化すると、些細な運用不備が契約違反になり得ます。

文例

文例受領者は、本秘密情報を、自己の同種の秘密情報に適用する管理水準と同等の合理的注意をもって管理します。

中間案

文例受領者は、本秘密情報を、自己の同種の秘密情報に適用する管理水準と同等以上、かつ合理的な企業が同種の情報に対して通常講ずべき水準以上の注意をもって管理します。具体的な管理方法は、情報の性質、数量、利用目的、受領者の業務実態およびセキュリティポリシーを踏まえて合理的に定める。

6 目的外使用禁止・競合利用禁止

開示側有利

開示側は、目的外使用だけでなく、競合製品・競合サービスの開発、リバースエンジニアリング、ベンチマーク、AI学習、データ解析を禁止したい。

文例

文例受領者は、本秘密情報を本目的以外に使用してはならず、開示者の事前の書面承諾なく、本秘密情報を利用して、開示者または開示者の関係会社の商品、サービス、技術、事業と競合または類似する商品、サービス、技術、事業の企画、開発、製造、販売、提供、改良、解析、学習、評価または第三者への助言を行ってはなりません。

この文例は非常に強い。受領側から見ると、実質的な競業避止義務や開発制限に近い。

受領側有利

受領側は、目的外使用禁止を認めつつ、独自開発や一般的知識の利用を確保します。

文例

文例受領者は、本秘密情報を本目的のためにのみ使用します。ただし、本条は、受領者が本秘密情報を参照することなく独自に開発し、または第三者から適法に取得した技術、製品、サービスもしくは事業を利用、開発、提供することを制限するものではありません。

中間案

文例受領者は、本秘密情報を本目的のためにのみ使用します。受領者は、本秘密情報を実質的に利用して開示者の競合製品または競合サービスを開発してはなりません。ただし、本条は、受領者が本秘密情報を参照することなく独自に開発した技術、製品またはサービスの利用を妨げない。

7 リバースエンジニアリング・試料・デモ

開示側有利

試料、サンプル、ソフトウェア、API、デモ環境を開示する場合、開示側は分解、解析、測定、模倣、ベンチマーク、スクレイピングを禁止します。

文例

文例受領者は、開示者から提供された試料、サンプル、素材、ソフトウェア、API、デモ環境、機器その他有体物または無体物について、開示者の事前の書面承諾なく、分解、解析、測定、複製、改変、リバースエンジニアリング、ベンチマーク、スクレイピング、機械学習、第三者への提供またはこれらに類する行為を行ってはなりません。

受領側有利

受領側は、評価のための検証やテストを許容します。

文例

文例受領者は、本目的の範囲内で、開示者から提供された試料、サンプル、ソフトウェアまたはデモ環境について、性能、適合性、安全性、セキュリティ、互換性その他本取引の評価に合理的に必要な検証を行うことができます。ただし、開示者の秘密情報を第三者に開示してはなりません。

中間案

文例受領者は、本目的の範囲内で必要な通常の評価を行うことができます。ただし、分解、ソースコード抽出、構造解析、競合製品開発を目的とする解析、第三者への解析委託、公開ベンチマークは、開示者の事前の書面承諾を要します。

8 知的財産権・成果物・改良発明

開示側有利

開示側は、秘密情報に関する権利留保、黙示ライセンスの排除、派生成果の帰属または利用制限を定める。

文例

文例本秘密情報に関する所有権、知的財産権その他一切の権利は開示者に留保される。本契約は、明示的に定める場合を除き、受領者に対して、本秘密情報または開示者の知的財産権に関するライセンス、譲渡、使用許諾その他いかなる権利も付与するものではありません。受領者が本秘密情報に基づき発明、考案、創作、改良、ノウハウ、データ、成果物その他成果を得た場合、その取扱いは別途書面で定めるものとし、受領者は開示者の事前承諾なく当該成果を第三者に開示または利用してはなりません。

受領側有利

受領側は、秘密情報に関する権利は開示側に残ることを認めつつ、受領側の既存技術、独自開発、汎用的知見、改良成果の帰属を確保します。

文例

文例本契約は、開示者の秘密情報に関する権利を受領者に移転するものではありません。ただし、受領者が本秘密情報を参照することなく独自に開発した技術、製品、サービス、発明、著作物、ノウハウ、データ、成果物その他一切の成果に関する権利は、受領者に帰属します。また、本契約は、受領者が従前から保有し、または第三者から適法に取得した技術、知識、経験もしくはノウハウを利用することを制限しない。

中間案

文例本秘密情報自体に関する権利は開示者に留保される。受領者が本秘密情報に依拠して成果を創出した場合の権利帰属および利用条件は、別途協議のうえ書面で定める。ただし、受領者の既存技術および本秘密情報を参照せず独自に開発した成果に関する権利は、受領者に帰属します。

9 返還・廃棄・消去

開示側有利

開示側は、返還・廃棄を迅速かつ包括的に求める。複製物、派生資料、電子データ、バックアップ、クラウド、チャット、AIツール入力履歴まで意識します。

文例

文例受領者は、開示者から請求を受けた場合、または本目的が終了した場合、直ちに本秘密情報およびその複製物、派生資料、メモ、分析資料、電子データ、記録媒体を、開示者の指示に従い返還、廃棄または消去しなければなりません。受領者は、当該返還、廃棄または消去の完了後、開示者の請求に応じて、権限ある者が署名した証明書を提出するものとします。

受領側有利

受領側は、法令・内部統制・監査・紛争対応・自動バックアップのための保存を許容します。

文例

文例受領者は、開示者から合理的な請求を受けた場合、本秘密情報を返還または廃棄します。ただし、法令、裁判所・行政機関の要請、社内規程、監査、コンプライアンス、紛争対応、証拠保全または自動バックアップにより保存が必要な写しについては、必要な範囲で保有することができます。この場合、当該写しには本契約上の秘密保持義務が引き続き適用される。

中間案

文例受領者は、開示者の請求または本目的の終了後、合理的期間内に本秘密情報を返還、廃棄または消去します。ただし、法令、監査、コンプライアンス、紛争対応、自動バックアップのために保存が必要な写しについては、アクセスを制限したうえで保有できます。保存された写しには、本契約の秘密保持義務が引き続き適用される。

10 契約期間・残存期間

開示側有利

開示側は、残存期間を長くし、営業秘密については秘密性が失われるまで存続させたい。

文例

文例本契約に基づく秘密保持義務は、本契約終了後も存続します。営業秘密、個人データ、ソースコード、技術ノウハウ、顧客情報、未公開事業計画その他その性質上秘密として保護されるべき情報については、当該情報が受領者の責めによらず公知となるまで存続します。

受領側有利

受領側は、残存期間を2年から5年程度など有限にすることが多いです。ただし、営業秘密や個人情報は別扱いにせざるを得ない場合がある。

文例

文例受領者の秘密保持義務は、各秘密情報の開示日から3年間存続します。ただし、法令上より長い保護が要求される個人情報については、当該法令に従う。

中間案

文例受領者の秘密保持義務は、本契約終了後5年間存続します。ただし、不正競争防止法上の営業秘密に該当する情報については、当該情報が営業秘密としての性質を失うまで存続します。

11 法令・裁判所・行政機関による開示

開示側有利

開示側は、法令開示の場合でも事前通知、範囲限定、保護命令申立てへの協力を求める。

文例

文例受領者が法令、裁判所、行政機関、金融商品取引所その他公的機関により本秘密情報の開示を求められた場合、受領者は、法令上許される限り、開示に先立ち速やかに開示者に通知し、開示者が保護命令、非公開手続その他秘密性を保護する措置を講じることに合理的に協力するものとします。受領者は、必要最小限の範囲でのみ開示します。

受領側有利

受領側は、事前通知が困難な場合や法令で禁止される場合を明記します。

文例

文例受領者は、法令、裁判所、行政機関、金融商品取引所、監査法人または専門家倫理上の義務に基づき必要な範囲で本秘密情報を開示することができます。この場合、受領者は、法令上許され、かつ実務上合理的に可能な範囲で、開示者に事前または事後に通知します。

中間案

文例受領者は、法令等により必要な範囲で本秘密情報を開示できます。ただし、法令上禁止される場合または緊急やむを得ない場合を除き、事前に開示者に通知し、秘密性保護のため合理的に協力します。

12 漏えい時通知・調査協力

開示側有利

開示側は、迅速な通知、原因調査、影響範囲、再発防止、第三者対応、費用負担を求める。

文例

文例受領者は、本秘密情報の漏えい、滅失、毀損、目的外使用、第三者開示またはそのおそれを認識した場合、直ちに開示者に通知し、原因、影響範囲、対象情報、関係者、実施済み措置および再発防止策を報告しなければなりません。受領者は、開示者の指示に従い、被害拡大防止、証拠保全、第三者対応、行政機関対応その他必要な措置に協力します。

受領側有利

受領側は、「直ちに」ではなく「合理的期間内」「不当に遅滞なく」とし、未確定情報の報告義務を限定します。

文例

文例受領者は、本秘密情報の漏えい等が発生したことを合理的に確認した場合、不当に遅滞なく開示者に通知し、合理的に把握している範囲で必要な情報を提供します。

中間案

文例受領者は、本秘密情報の漏えい等またはその具体的なおそれを認識した場合、不当に遅滞なく開示者に通知し、合理的に把握している範囲で原因、影響範囲、対応状況を報告します。受領者は、被害拡大防止および再発防止のため合理的に協力します。

13 監査・立入検査

開示側有利

開示側は、受領者の管理状況を確認する監査権を求めることがある。特に、個人データ、金融情報、医療情報、ソースコード、重要技術、委託先管理では重要です。

文例

文例開示者は、受領者による本秘密情報の管理状況を確認するため、合理的な事前通知により、受領者の事業所、システム、記録、アクセスログ、管理台帳その他関連資料を監査することができます。受領者は、当該監査に合理的に協力し、指摘事項がある場合には速やかに是正します。

受領側有利

受領側は、監査権を限定します。無制限の立入検査は、受領側の他社秘密、個人情報、セキュリティ、営業秘密を危険にさらす。

文例

文例開示者は、受領者の通常業務、セキュリティ、他の顧客または第三者の秘密情報を不当に害しない範囲で、年1回を上限として、合理的な事前通知により、書面確認または第三者監査報告書の閲覧を求めることができます。開示者による受領者施設への立入りは、受領者が書面で承諾した場合に限る。

中間案

文例開示者は、本秘密情報の重大な漏えい等が合理的に疑われる場合、または法令・契約上必要な場合、受領者の通常業務およびセキュリティを不当に害しない範囲で、管理状況の確認を求めることができます。確認方法は、書面回答、第三者監査報告書、オンライン説明、または当事者が合意する方法による。

14 損害賠償・責任制限

開示側有利

開示側は、秘密保持義務違反を責任制限の対象外にし、間接損害・逸失利益・調査費用・弁護士費用等の回復を求める。

文例

文例受領者が本契約に違反した場合、受領者は、開示者に生じた一切の損害、損失、費用、支出、逸失利益、調査費用、弁護士費用その他合理的費用を賠償するものとします。本契約上の秘密保持義務、目的外使用禁止義務、返還・廃棄義務、個人情報保護義務の違反については、責任制限、損害賠償上限、間接損害除外その他責任を限定する規定は適用されない。

この文例は開示側に強いが、受領側は通常強く抵抗します。特に「一切の損害」「逸失利益」「弁護士費用」「責任制限不適用」は交渉上の争点になりやすい。

受領側有利

受領側は、責任上限、間接損害除外、特別損害除外、逸失利益除外、故意・重過失例外を設定します。

文例

文例受領者が本契約に違反した場合の損害賠償責任は、現実かつ直接に生じた通常損害に限られ、特別損害、間接損害、付随的損害、結果損害、逸失利益、データ喪失、信用毀損に係る損害を含まない。また、受領者の損害賠償責任の総額は、金〇〇円を上限とします。ただし、受領者の故意または重過失による違反についてはこの限りでない。

中間案

文例受領者の損害賠償責任は、相当因果関係のある損害に限る。ただし、受領者の故意または重過失による秘密保持義務違反、目的外使用、個人データの漏えい、不正な第三者開示については、契約上の責任上限を適用しない。

15 違約金・損害賠償額の予定

開示側有利

開示側は、漏えい時の損害立証が難しいため、違約金や損害賠償額の予定を入れたい場合がある。民法上、当事者は債務不履行について損害賠償額を予定することができます。

文例

文例受領者が本秘密情報を本契約に違反して第三者に開示し、または目的外に使用した場合、受領者は、開示者に対し、違約金として金〇〇円を支払うものとします。ただし、開示者に当該金額を超える損害が生じた場合、開示者は超過損害の賠償を請求できます。

この文例は、違約金に加えて超過損害も請求できます構造ですため、開示側有利です。ただし、金額の相当性、消費者契約ではありませんか、独占禁止法下請法・優越的地位の濫用、交渉過程の公正性など、案件ごとの検討が必要です。

受領側有利

受領側は、違約金を排除するか、損害賠償額の予定を唯一の救済にします。

文例

文例本契約に違反した場合の損害賠償は、開示者が現実に被った直接かつ通常の損害に限られ、違約金、懲罰的損害、推定損害または損害額の予定は適用されない。

または、

文例受領者が本契約に違反した場合の損害賠償額は、金〇〇円を上限とし、開示者は当該金額を超える損害賠償を請求できない。

16 差止め・仮処分・救済条項

開示側有利

開示側は、損害賠償だけでは回復できないため、差止めや仮処分を明記したい。

文例

文例受領者が本契約に違反し、または違反するおそれがある場合、開示者は、損害賠償その他の救済に加え、当該違反行為の差止め、予防、秘密情報の返還・廃棄、使用停止、複製物の削除その他必要な救済を求めることができます。受領者は、本秘密情報の無断開示または目的外使用が開示者に回復困難な損害を生じさせ得ることを確認します。

受領側有利

受領側は、差止め条項を削るか、裁判所の判断に委ねる文言にします。

文例

文例本契約のいかなる規定も、各当事者が法令上認められる救済を求める権利を制限するものではありません。ただし、差止めその他の保全的救済の可否は、適用法令および管轄裁判所の判断に従う。

中間案

文例当事者は、本秘密情報の無断開示または目的外使用が相手方に重大な損害を生じさせ得ることを確認し、違反または違反のおそれがある場合、相手方が法令上認められる差止め、仮処分その他の救済を求めることを妨げない。

17 表明保証・情報の正確性

開示側有利

開示側は、情報の正確性や完全性について責任を負いたくない。特にM&A、投資検討、技術評価では、NDA段階で開示した情報を根拠に責任追及されることを避けたい。

文例

文例開示者は、本秘密情報の正確性、完全性、有用性、特定目的適合性、第三者権利非侵害性について、明示または黙示を問わずいかなる保証も行わない。受領者は、本秘密情報に依拠して行う判断について自己の責任で検討するものとします。

受領側有利

受領側は、情報の正確性が重要な取引では、少なくとも故意の虚偽、重大な誤り、第三者権利侵害について責任を求める。

文例

文例開示者は、開示時点において自己が知る限り、本秘密情報に重大な虚偽または誤解を生じさせる記載が含まれていないことを表明します。ただし、開示者は、本契約に明示する場合を除き、本秘密情報の完全性または特定目的適合性を保証しない。

中間案

文例開示者は、本秘密情報の正確性または完全性を保証しない。ただし、開示者が故意に虚偽の情報を提供した場合、または重要な事実を意図的に隠した場合の責任は免れない。

18 契約交渉の存在・公表禁止

M&A、出資、提携、共同開発では、交渉の存在自体が秘密です。

開示側有利

文例

文例受領者は、開示者の事前の書面承諾なく、本契約、本取引の検討、交渉の存在、当事者名、交渉内容、契約条件その他本取引に関する一切の事実を第三者に公表または開示してはなりません。

受領側有利

文例

文例受領者は、本取引に関し、法令、金融商品取引所規則、監査、社内承認、資金調達、投資家説明または専門家助言のため合理的に必要な範囲で、交渉の存在および概要を開示できます。

19 非勧誘・非接触・スタンドスティル

秘密保持条項に紛れて、非勧誘、非接触、顧客接触禁止、役職員引抜禁止、競業避止、株式取得禁止、スタンドスティルが入ることがある。これは、秘密保持の問題を超えて、営業活動や資本取引を制限する条項です。

開示側有利

開示側は、顧客リスト、仕入先、従業員、M&A対象会社の経営陣への直接接触を防ぎたい。

文例

文例受領者は、本取引の検討に関連して知得した開示者の顧客、仕入先、取引先、役職員その他関係者に対し、開示者の事前承諾なく、本取引と競合しまたは本取引を迂回する目的で直接接触してはなりません。

受領側有利

受領側は、通常営業や既存関係先への接触を制限されないようにします。

文例

文例前項は、受領者が本秘密情報によらず従前から取引関係を有する者、公開情報に基づき接触する者、相手方から自発的に接触を受けた者、または通常の営業活動により接触する者との取引または交渉を制限しない。

20 準拠法・管轄・言語

開示側有利

開示側は、自社所在地の裁判所、慣れた準拠法、迅速な保全手続が可能な管轄を選びたい。

文例

文例本契約は日本法に準拠し、本契約に関する一切の紛争については、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とします。

受領側有利

受領側は、自社所在地、非専属管轄、仲裁、英語版優先などを検討します。

文例

文例本契約に関する紛争については、被告の本店所在地を管轄する裁判所を第一審の管轄裁判所とします。

中間案

文例本契約は日本法に準拠し、本契約に関する紛争については、東京地方裁判所または被告の本店所在地を管轄する裁判所を第一審の合意管轄裁判所とします。ただし、差止めまたは保全処分については、法令上認められる裁判所に申し立てることを妨げない。
Section 06

秘密保持契約の実務類型別の書き分け

M&A、共同開発、業務委託、ライセンス、AI・データ提供で調整点を変えます。

次の時系列は、案件類型ごとに秘密保持契約で重点が移る場面を整理したものです。情報の価値は契約締結前後やPoC終了後にも変化するため、順番を追うことで、どの時点で返還・廃棄、成果物、再利用を確認すべきかが分かります。

M&A・出資検討

買主候補への開示を管理

対象会社資料、従業員接触、スタンドスティル、破談時の返還・廃棄を重視します。

共同開発・PoC

成果物と独自開発を分ける

評価目的、発表制限、改良発明、学習データ、類似開発の自由を調整します。

業務委託・再委託

顧客情報と委託先管理を強める

再委託、クラウド保存、個人データ、漏えい時通知、契約終了後の廃棄が中心です。

1 M&A・出資検討

M&Aでは、売主・対象会社が開示側、買主候補・投資家が受領側になることが多いです。開示情報には、財務、税務、労務、契約、訴訟、知財、個人データ、営業秘密、顧客情報が含まれる。

開示側は、次の条項を強くします。

  • 交渉の存在自体を秘密情報に含める。
  • 競合先への情報流出を防ぐ。
  • 対象会社の従業員・顧客・仕入先への直接接触を制限します。
  • データルームアクセス者を限定します。
  • 複製、ダウンロード、スクリーンショット、印刷を制限します。
  • 検討終了時の返還・廃棄を徹底します。
  • 個人データの第三者提供・委託・共同利用・越境移転を整理します。

受領側は、次の条項を確保します。

  • 役員、従業員、グループ会社、弁護士、公認会計士、税理士、金融機関、投資家への共有。
  • 社内承認、投資委員会、融資審査、表明保証保険、監査対応への利用。
  • 情報の正確性・完全性について過度に依拠しない一方、故意の虚偽は免責しない。
  • 既存事業・競合事業の継続を妨げない。
  • 法令開示・適時開示・監査対応を確保します。

2 共同開発・PoC

共同開発では、双方が情報を出すため双務型が多いです。しかし、技術の核を持つ当事者、顧客接点を持つ当事者、データを持つ当事者が実質的な開示側になります。

開示側は、次を強くします。

  • 秘密情報の定義に試料、デモ、ソースコード、API、学習データ、評価データを含める。
  • リバースエンジニアリング、模倣、競合開発を禁止します。
  • 成果物・改良発明・派生データの扱いを別途明確化します。
  • 技術者間の情報交換を記録します。
  • 外部発表・論文・特許出願前の確認権を定める。

受領側は、次を確保します。

  • 独自開発・既存技術・一般的知見の利用自由。
  • 評価・検証・セキュリティテストの許容。
  • 共同成果と単独成果の区別。
  • 目的達成に必要な社内外専門家への共有。
  • 競業避止に近い過剰な開発制限の排除。

特許庁・経済産業省のオープンイノベーション促進のためのモデル契約書は、秘密保持契約、PoC契約、共同研究開発契約、ライセンス契約について、仮想事例と逐条解説を通じて交渉の勘所を示しています。 公的モデルをそのまま使うのではなく、案件の情報流れに合わせて条項を調整することが重要です。

3 業務委託・再委託

業務委託では、発注者が開示側、受託者が受領側になることが多いです。個人データ、顧客情報、仕様書、システム情報、アカウント、ログが含まれる場合、秘密保持と委託先管理を統合して考える必要があります。

発注者側は、次を強くします。

  • 受託者の役職員・再委託先へのアクセス制限。
  • 再委託の事前承諾制。
  • セキュリティ基準、アクセスログ、監査権。
  • 漏えい時の即時通知、原因調査、行政機関対応。
  • 契約終了時の返還・廃棄・消去証明。
  • 個人データ処理に関する安全管理措置。

受託者側は、次を確保します。

  • 業務遂行に必要な社内外共有。
  • 汎用的ノウハウ、テンプレート、ツール、ライブラリの利用自由。
  • クラウド、SaaS、再委託、海外拠点利用の許容。
  • 責任上限、間接損害除外。
  • 発注者が提供する情報の正確性、権利非侵害、適法取得に関する責任分担。

4 ライセンス・技術開示

ライセンス交渉では、ライセンサーが開示側、ライセンシー候補が受領側になることが多いです。開示側は、ノウハウ、設計資料、技術仕様、実験データ、未公開特許情報を守る必要があります。

開示側は、秘密情報の定義を広くし、評価目的を限定し、リバースエンジニアリングと競合利用を禁止し、特許出願前の開示や発表を制限します。受領側は、評価・検証の範囲、独自技術の利用、第三者技術との比較、社内承認、将来研究の自由を確保します。

5 データ提供・AI開発

データ提供では、データ提供者が開示側、AIベンダーや分析会社が受領側になることが多いです。ただし、AIベンダー側がモデル、コード、ノウハウ、セキュリティ情報を開示する場合は、双方が開示側になります。

開示側は、次を強くします。

  • 提供データの利用目的限定。
  • 学習利用の可否。
  • モデルへの混入・記憶・再出力の禁止。
  • 匿名化・仮名化・統計化後の利用可否。
  • プロンプト、ログ、出力結果の扱い。
  • 第三者AIサービスへの入力禁止。
  • 越境移転、保管場所、再委託、削除証明。

受領側は、次を確保します。

  • サービス提供・改善・保守・セキュリティ監視に必要な利用。
  • 統計情報、匿名化情報、汎用的ノウハウの利用。
  • 既存モデル、基盤モデル、汎用アルゴリズムの権利帰属。
  • 学習済みモデルに不可逆的に反映された一般的特徴量の扱い。
  • 責任上限とデータ品質に関する開示側の責任。
Section 07

秘密保持契約を開示側として見るチェックリスト

秘密情報を出す側が、入口・目的・共有先・管理・救済を点検します。

開示側として契約をレビューする場合、次の順に確認します。

1 情報の入口

  • 秘密情報の定義は十分に広いか。
  • 口頭情報、実演、デモ、試料、ソースコード、API、データ、メタデータを含むか。
  • 契約交渉の存在や取引内容自体を含むか。
  • 秘密表示がない情報も保護されるか。
  • 重要情報を「高度機密情報」として区分しているか。

2 利用目的

  • 目的は案件単位で限定されているか。
  • 「関連する一切の目的」など広すぎる表現がないか。
  • 競合開発、AI学習、リバースエンジニアリング、ベンチマークを禁止しているか。
  • 受領側の関係会社・別部署での横展開が禁止されているか。

3 共有先

  • 再開示は事前承諾制か。
  • 共有先に同等以上の義務を負わせているか。
  • 受領側が共有先の違反について責任を負うか。
  • 外部専門家、委託先、クラウド利用をどう管理するか。
  • 海外拠点・関係会社への移転を制御できますか。

4 管理運用

  • アクセス制限、ログ、暗号化、複製制限があるか。
  • 漏えい時通知・原因調査・再発防止義務があるか。
  • 返還・廃棄・消去証明があるか。
  • バックアップ、メール、チャット、クラウド、生成AIツールへの対応があるか。
  • 監査権または管理状況確認権があるか。

5 救済

  • 差止め、仮処分、使用停止、廃棄、削除の条項があるか。
  • 損害賠償の範囲は十分か。
  • 責任制限から秘密保持違反が除外されているか。
  • 違約金や損害賠償額の予定を検討したか。
  • 残存期間は情報の性質に見合うか。
Section 08

秘密保持契約を受領側として見るチェックリスト

情報を受ける側が、過剰拘束、例外、将来事業、責任範囲を点検します。

受領側として契約をレビューする場合、次の順に確認します。

1 秘密情報の範囲

  • 秘密情報の定義が広すぎないか。
  • 秘密表示または開示時明示が要件になっているか。
  • 口頭情報は一定期間内の書面確認が必要か。
  • 契約交渉の存在まで秘密とされる場合、社内承認に支障はないか。
  • 派生資料・分析資料まで相手方の秘密情報とされていないか。

2 除外事由

  • 既知情報、公知情報、第三者取得情報、独自開発情報が除外されているか。
  • 法令、裁判所、行政機関、監査法人、金融商品取引所への開示が可能か。
  • 専門家への開示が可能か。
  • 残存記憶または一般的知識・経験の利用が確保されているか。
  • 除外事由の立証方法が過度に厳しくないか。

3 利用目的・共有先

  • 社内承認、法務、会計、税務、監査、セキュリティ、投資判断に使えるか。
  • 関係会社、役員、従業員、弁護士、会計士、税理士、弁理士、金融機関、投資家、委託先に共有できるか。
  • クラウド、SaaS、海外拠点、外部ツールの利用が禁止されていないか。
  • AIツールへの入力禁止が業務実態と整合するか。

4 将来事業への影響

  • 競業避止義務、開発禁止、顧客接触禁止、非勧誘が紛れ込んでいないか。
  • 既存事業や研究開発が制限されないか。
  • 類似製品・類似サービスの開発が過度に制限されないか。
  • 相手方の秘密情報に触れた従業員を将来プロジェクトから隔離する必要がありますか。

5 責任

  • 損害賠償の上限があるか。
  • 間接損害、特別損害、逸失利益、信用毀損が除外されているか。
  • 違約金が過大でないか。
  • 監査権が無制限でないか。
  • 返還・廃棄義務がバックアップや法令保存と矛盾しないか。
  • 残存期間が無期限になっていないか。
Section 09

秘密保持契約のレッドフラッグ条項

開示側・受領側それぞれにとって、優先的に修正すべき文言を整理します。

次の注意点一覧は、開示側と受領側がそれぞれ早めに修正候補へ入れるべき条項を整理したものです。すべてを同じ強度で交渉すると合意が遅れるため、重大事故につながる項目から優先して確認してください。

秘密情報が狭すぎる

開示側では、口頭説明、試料、派生資料、契約交渉の存在が抜けていないかを確認します。

例外がない

受領側では、既知情報、独自開発、法令対応、専門家共有が確保されているかを確認します。

責任が無制限

損害賠償、違約金、差止め、監査権が過度に広くないかを見ます。

終了後処理が曖昧

バックアップ、メール、クラウド、AI入力、派生資料の返還・廃棄方法を確認します。

1 開示側から見たレッドフラッグ

開示側にとって危険な条項は、次のようなものだ。

文例「秘密情報」とは、秘密と明記された書面に限る。

口頭説明、デモ、試料、技術ディスカッション、未整理データが保護されない可能性がある。

文例受領者は、秘密情報を本取引に関連する目的で使用できます。

「関連する目的」は広すぎる。別部署、別案件、類似事業への利用を許す余地がある。

文例受領者は、関係会社およびアドバイザーに自由に開示できます。

共有先が広すぎる。関係会社の範囲、国外移転、専門家以外のコンサル、再委託先、投資家への拡散が起こる。

文例秘密保持義務は契約締結日から1年間とします。

重要な技術情報、営業秘密、顧客情報、M&A情報には短すぎる可能性がある。

文例受領者の責任は、いかなる場合も10万円を上限とします。

重大漏えいでも回復が限定される。開示側は、秘密保持義務違反を責任上限から除外するか、上限を引き上げるべきです。

2 受領側から見たレッドフラッグ

受領側にとって危険な条項は、次のようなものだ。

文例開示者が開示する一切の情報は、秘密表示の有無を問わず秘密情報とします。

受領側は何が秘密か判断できず、通常業務が萎縮します。

文例受領者は、秘密情報と同一または類似する事業を行ってはなりません。

秘密保持を超えた競業避止です。原則として削除または大幅限定を求めるべきです。

文例受領者は、開示者の請求により、全システム、全記録、全事業所の監査を受ける。

過度に広い監査権は、受領側自身の秘密情報、第三者情報、個人情報、セキュリティを危険にさらす。

文例受領者は、違反の有無を問わず、開示者の請求により違約金1億円を支払う。

違反要件、対象行為、金額相当性、超過損害、責任上限との関係を精査する必要があります。

文例秘密保持義務は永久に存続します。

営業秘密については合理性がある場合もあるが、全情報について無期限とするのは受領側に過重です。情報類型ごとに分けるべきです。

Section 10

秘密保持契約の交渉でどの条項から直すべきか

交渉コストを意識し、重大リスクから順に修正します。

次の判断の流れは、秘密保持契約の修正順序を決めるためのものです。交渉では全条項を同時に直すより、事故時の影響が大きい条項から扱う方が実務的です。上から順に確認し、妥協できます点と譲れない点を分けてください。

修正優先順位の決め方

情報の重要度を確認

営業秘密、個人データ、M&A情報、ソースコードなどの有無を見ます。

事故時の損害を想定

漏えい、目的外使用、競合開発、行政対応、顧客対応を想定します。

優先条項から修正

定義、目的、共有先、返還・廃棄、責任制限、差止めを順に点検します。

交渉では、すべてを理想形に直そうとするとまとまらない。優先順位を付けるべきです。

1 開示側の優先順位

開示側が最優先で直すべき条項は、次の順です。

  1. 秘密情報の定義
  2. 利用目的の限定
  3. 再開示先の制限
  4. 返還・廃棄
  5. 残存期間
  6. 漏えい時通知
  7. 責任制限の例外
  8. 差止め・仮処分
  9. 監査権
  10. 違約金

なぜこの順か。秘密情報の定義と目的限定が曖昧だと、そもそも違反を主張しにくい。再開示先が広いと、情報流出の経路を管理できない。返還・廃棄と残存期間が弱いと、契約終了後にリスクが残る。損害賠償や差止めは重要だが、先に義務内容を明確にしておかなければ、救済条項だけ強くしても実効性が低いです。

2 受領側の優先順位

受領側が最優先で直すべき条項は、次の順です。

  1. 秘密情報の定義の限定
  2. 除外事由
  3. 利用目的の実務範囲
  4. 共有先の許容
  5. 独自開発・既存情報の保護
  6. 残存期間
  7. 責任制限
  8. 返還・廃棄の例外
  9. 監査権の限定
  10. 違約金の削除または限定

受領側にとって最も危険なのは、「何が秘密か分からないのに、違反したら無制限責任」という構造です。したがって、責任制限だけでなく、秘密情報の範囲、除外事由、利用目的、共有先を先に整える必要があります。

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秘密保持契約のサンプル条項セット

開示側寄り、受領側寄り、バランス型の文例を比較して使い分けます。

以下は、実務での検討を容易にするためのモデルです。実際には、取引類型、当事者、準拠法、個人情報、業法規制、輸出管理、知財、競争法、税務・会計、M&A実務に応じて修正する必要があります。

1 開示側寄りの秘密保持条項セット

文例第1条(秘密情報)
文例本契約において「秘密情報」とは、開示者が受領者に対し、書面、電子データ、口頭、映像、実演、試料、ソフトウェア、データ、図面、仕様書、その他方法のいかんを問わず開示する一切の技術上、営業上、財務上、法務上、組織上その他事業上の情報をいい、秘密です旨の表示または指定の有無を問わない。本取引の存在、内容、交渉経過および本秘密情報に基づき作成された分析、メモ、複製物、派生資料も秘密情報に含む。
文例
文例第2条(目的外使用禁止)
文例受領者は、本秘密情報を、開示者と受領者との間で検討される〇〇プロジェクトの評価および交渉の目的にのみ使用し、その他いかなる目的にも使用してはなりません。
文例
文例第3条(第三者開示の禁止)
文例受領者は、開示者の事前の書面承諾なく、本秘密情報を第三者に開示してはなりません。承諾を得て第三者に開示する場合、受領者は当該第三者に本契約と同等以上の義務を負わせ、当該第三者の行為について自己の行為と同一に責任を負う。
文例
文例第4条(管理)
文例受領者は、本秘密情報を自己の同種の秘密情報と同等以上、かつ合理的に必要な水準以上の注意をもって管理し、アクセス制限、複製制限、ログ管理、暗号化、教育、委託先管理その他必要かつ適切な措置を講じる。
文例
文例第5条(返還・廃棄)
文例受領者は、開示者の請求または本目的終了後、直ちに本秘密情報、その複製物および派生資料を返還、廃棄または消去し、開示者の請求に応じて証明書を提出します。
文例
文例第6条(残存義務)
文例本契約終了後も、受領者の秘密保持義務は存続します。不正競争防止法上の営業秘密、個人データ、ソースコード、技術ノウハウ、顧客情報その他その性質上秘密として保護されるべき情報については、当該情報が受領者の責めによらず公知となるまで存続します。
文例
文例第7条(救済)
文例受領者が本契約に違反し、または違反するおそれがある場合、開示者は、損害賠償に加え、差止め、使用停止、返還、廃棄、削除、その他法令上認められる救済を求めることができます。受領者の秘密保持義務違反については、本契約または別契約に定める責任制限は適用されない。

2 受領側寄りの秘密保持条項セット

文例第1条(秘密情報)
文例本契約において「秘密情報」とは、開示者が受領者に対し、秘密です旨を明示して書面または電子データにより開示した情報をいう。口頭、実演その他無形の方法により開示された情報は、開示時に秘密です旨が明示され、かつ開示後30日以内に当該情報の概要を記載した書面が受領者に交付された場合に限り、秘密情報に該当します。
文例
文例第2条(除外事由)
文例次の情報は秘密情報に含まれない。
文例1. 開示時点で受領者が既に保有していた情報
文例2. 公知情報
文例3. 受領者の責めによらず公知となった情報
文例4. 第三者から適法に取得した情報
文例5. 開示者の秘密情報を参照せず独自に開発した情報
文例6. 法令、裁判所、行政機関、金融商品取引所、監査法人または専門家倫理上の義務により開示が必要な情報
文例
文例第3条(使用目的)
文例受領者は、本秘密情報を、本取引の検討、評価、交渉、社内承認、法務・会計・税務・技術・セキュリティ上の確認、契約履行その他本取引に関連して合理的に必要な業務のために使用できます。
文例
文例第4条(共有先)
文例受領者は、本目的のため合理的に必要な範囲で、自己および関係会社の役職員、弁護士、公認会計士、税理士、弁理士、金融機関、投資家、委託先その他専門家または関係者に本秘密情報を開示できます。
文例
文例第5条(独自開発)
文例本契約は、受領者が本秘密情報を参照することなく独自に開発し、または第三者から適法に取得した技術、製品、サービス、ノウハウ、データその他成果を利用することを制限しない。
文例
文例第6条(返還・廃棄)
文例受領者は、開示者から合理的な請求を受けた場合、本秘密情報を返還または廃棄します。ただし、法令、監査、コンプライアンス、紛争対応、証拠保全、自動バックアップまたは社内規程により保存が必要な写しは、必要な範囲で保存できます。
文例
文例第7条(責任制限)
文例受領者の損害賠償責任は、現実かつ直接に生じた通常損害に限られ、特別損害、間接損害、付随的損害、結果損害、逸失利益、信用毀損に係る損害を含まない。受領者の損害賠償責任の総額は金〇〇円を上限とします。ただし、受領者の故意または重過失による違反についてはこの限りでない。
文例
文例第8条(期間)
文例受領者の秘密保持義務は、各秘密情報の開示日から3年間存続します。ただし、法令上より長い保護が求められる個人情報については、当該法令に従う。

3 バランス型の秘密保持条項セット

文例第1条(秘密情報)
文例「秘密情報」とは、開示者が秘密です旨を表示または開示時に明示して受領者に開示する情報をいう。ただし、情報の性質、開示の状況、当事者間の関係に照らし、合理的に秘密情報であると認識すべき情報は、秘密表示がない場合であっても秘密情報に含まれる。
文例
文例第2条(除外事由)
文例受領者が客観的資料により証明できます情報であって、開示時点で既知であった情報、公知情報、受領者の責めによらず公知となった情報、第三者から適法に取得した情報、または開示者の秘密情報を参照せず独自に開発した情報は、秘密情報に含まれない。
文例
文例第3条(使用目的)
文例受領者は、本秘密情報を、本取引の検討、評価、交渉、社内承認および契約履行のために必要な範囲でのみ使用します。
文例
文例第4条(共有先)
文例受領者は、本目的のため合理的に必要な範囲で、自己の役職員および法令上の守秘義務を負う専門家に本秘密情報を開示できます。その他の第三者への開示は、開示者の事前承諾を要します。ただし、開示者は合理的理由なく承諾を拒否しない。
文例
文例第5条(管理)
文例受領者は、本秘密情報を、自己の同種の秘密情報と同等以上、かつ合理的な企業が通常講ずべき水準以上の注意をもって管理します。
文例
文例第6条(返還・廃棄)
文例受領者は、開示者の請求または本目的終了後、合理的期間内に本秘密情報を返還、廃棄または消去します。ただし、法令、監査、コンプライアンス、紛争対応、自動バックアップのために保存が必要な写しは、アクセスを制限したうえで保存できます。
文例
文例第7条(期間)
文例秘密保持義務は、本契約終了後5年間存続します。ただし、不正競争防止法上の営業秘密に該当する情報については、当該情報が営業秘密としての性質を失うまで存続します。
文例
文例第8条(救済・責任)
文例当事者は、秘密情報の無断開示または目的外使用が相手方に重大な損害を生じさせ得ることを確認します。違反があった場合、相手方は法令上認められる救済を求めることができます。損害賠償の範囲および上限は、別途当事者間で合意します。
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秘密保持契約を専門職別に見る視点

法務、知財、個人情報、M&A、内部監査、経営の観点を分けます。

1 弁護士・企業内弁護士・外部弁護士

弁護士は、秘密保持条項を単独で見るのではなく、契約全体の責任制限、解除、損害賠償、知的財産、個人情報、準拠法、管轄、競争法、労務、税務、M&A実務とつなげて検討します。企業内弁護士は、社内の実運用と経営判断に近い立場から、条項が現場で守れるかを確認します。外部弁護士は、交渉力の差、裁判・仮処分・証拠保全の見通し、業界水準、紛争時の主張立証を踏まえて助言します。

2 知財法務・弁理士

知財法務・弁理士は、秘密情報が特許出願前の発明、ノウハウ、試験データ、設計情報、ソースコード、技術サンプルです場合に重要です。開示前に特許出願すべきか、ノウハウとして秘匿すべきか、共同開発成果の帰属をどうするか、発表・論文・展示会・営業資料で秘密性を失わないかを検討します。

3 個人情報保護・プライバシー担当

個人情報が含まれる場合、NDAではなく個人データ処理契約としての設計が必要になります。委託、第三者提供、共同利用、外国提供、漏えい等報告、本人通知、再委託、越境移転、保存期間、削除、監査、セキュリティ基準を確認します。

4 M&A法務・公認会計士・税理士

M&Aでは、法務DD、財務DD、税務DD、ビジネスDDのために多くの秘密情報が開示される。専門家は、情報の正確性、責任の範囲、データルーム管理、インサイダー情報、適時開示、競争法上の情報交換規制、個人情報、税務情報の管理を横断的に確認します。

5 コンプライアンス・内部監査・内部統制担当

秘密保持条項は、締結して終わりではありません。アクセス権限、承認フロー、教育、ログ、監査証跡、再委託管理、インシデント対応、証拠保全まで運用に落ちて初めて機能します。内部監査・内部統制担当は、契約上の義務が社内規程、ワークフロー、IT権限、委託先管理に反映されているかを確認します。

6 経営者・取締役・社外取締役

経営者・取締役は、秘密情報の開示が事業機会を作る一方で、競争優位を失うリスクを理解する必要があります。特にスタートアップ、大企業との協業、M&A、資本業務提携では、NDAの片務性や短すぎる残存期間が将来の企業価値に直結します。社外取締役は、重要な情報開示の意思決定において、リスクとリターンのバランス、利益相反、説明責任を確認します。

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秘密保持契約の典型的な交渉コメント例

修正依頼時に何を理由として伝えるかを、立場別に整理します。

1 開示側から受領側へ

文例当社が開示する情報には、未公開の技術情報および顧客情報が含まれるため、秘密情報の定義を秘密表示のある書面に限定することはできません。口頭説明、デモ、試料、電子データも含める必要があります。
文例本件では、情報の利用目的を〇〇プロジェクトの評価に限定する必要があります。「関連する目的」という文言では、別案件または別部署での利用を排除できないため、目的を具体化してください。
文例関係会社および外部委託先への開示を無条件に認めることはできません。少なくとも、必要範囲、同等義務、受領者の責任負担を明記してください。
文例当社の営業秘密に該当する情報について、秘密保持義務を一律3年で終了させることは受け入れられません。営業秘密については、営業秘密性を失うまで義務が存続する形にしてください。

2 受領側から開示側へ

文例秘密情報の定義が「一切の情報」とされており、当社が何を秘密として管理すべきか判断できません。秘密表示または開示時の明示を要件とし、口頭情報は一定期間内に書面確認されるものに限定してください。
文例当社は、本件検討のために、法務、会計、税務、技術、セキュリティ、取締役会、外部専門家に情報を共有する必要があります。これらの共有先を許容する文言を追加してください。
文例本条項は、当社の類似技術の開発を広く禁止する効果を持ちます。秘密情報の目的外使用は禁止しますが、当社の既存技術、独自開発、第三者から適法に取得した情報の利用は制限されないことを明記してください。
文例返還・廃棄義務について、法令、監査、コンプライアンス、紛争対応、自動バックアップのために保存が必要な写しは例外として認めてください。
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秘密保持契約の条項書き分けに関するFAQ

双務型、秘密表示、期間、残存記憶、差止め、AI入力などを一般情報として補足します。

双務型NDAなら公平なので、そのままでよいですか。

一般的には、双務型であっても実際に重要情報を出す側が偏ることがあります。ただし、情報の内容、開示量、相手方の利用目的、交渉力によって結論は変わります。具体的な修正方針は、開示資料と契約全体を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

秘密情報は秘密と表示されたものに限るべきですか。

一般的には、受領側は秘密表示を要件にすると管理しやすく、開示側は口頭説明やデモ情報まで含めたい場面があります。ただし、情報の性質や開示方法で適切な範囲は変わります。具体的には、運用可能性と保護必要性を踏まえて専門家に確認する必要があります。

秘密保持義務は無期限にすべきですか。

一般的には、営業秘密性が続く情報では長期保護が検討され、通常情報では一定期間に限定されることがあります。ただし、業界慣行、情報の陳腐化、法令上の義務で判断が変わります。個別の期間設定は専門家へ相談する必要があります。

受領側は残存記憶条項を入れるべきですか。

一般的には、通常の知識・経験を過度に制限しないために残存記憶条項が検討されます。ただし、営業秘密や高度機密情報では開示側の保護と衝突する可能性があります。具体的な採否は、情報の重要性と将来事業への影響を整理して専門家に確認する必要があります。

NDAに違反したら必ず差止めできるか。

一般的には、差止め条項を置くことで情報の重要性や救済意図を示す材料になります。ただし、裁判所の判断は必要性、相当性、立証状況によって変わります。具体的な見通しは、証拠関係を整理したうえで弁護士等へ相談する必要があります。

個人情報が秘密情報に含まれる場合、NDAだけで足りますか。

一般的には、個人データが含まれる場合、秘密保持条項だけでなく個人情報保護法上の委託、第三者提供、安全管理、漏えい時対応を確認する必要があります。ただし、当事者の立場や提供方法で結論は変わります。具体的な設計は専門家へ相談する必要があります。

生成AIツールへの入力は禁止すべきですか。

一般的には、高度機密情報や個人データを外部AIツールへ入力することは慎重に扱われます。ただし、契約形態、学習利用の有無、保管場所、アクセス制御でリスクは変わります。具体的なルールは情報管理体制とサービス条件を確認して専門家に相談する必要があります。

責任制限条項は秘密保持違反にも適用されますか。

一般的には、契約の書き方によって秘密保持違反が責任制限の対象になる場合と除外される場合があります。ただし、損害の種類、故意・重過失、違約金、差止め条項との関係で判断が変わります。具体的には契約全体を確認して専門家へ相談する必要があります。

Section 15

秘密保持契約の条項書き分けで最後に確認すること

ひな形ではなく、情報の性質と当事者の立場に合わせて点検します。

「どちらが開示側かで有利になる条項の書き分け」は、秘密保持契約の細かい文言技術に見えるが、実際には、企業の競争優位、知的財産、個人情報、データ戦略、M&A、共同開発、委託先管理、紛争対応を横断する中核的な企業法務技術です。

開示側は、秘密情報の入口を広くし、利用目的を狭くし、共有先を制限し、返還・廃棄と残存期間を強くし、違反時の救済を確保します。受領側は、秘密情報の入口を明確にし、除外事由を広くし、利用目的と共有先を実務上必要な範囲に広げ、独自開発と既存知識を守り、責任を合理的に限定します。

最も重要なのは、ひな形を機械的に使わないことです。NDAは、情報の性質、開示量、事業上の力関係、相手方の信用、法令上の義務、将来の紛争可能性によって設計を変えるべき契約です。条項の一語一句は、情報漏えい時、競合開発時、M&A破談時、PoC終了後、個人情報漏えい時、データ利用紛争時に、企業価値を守る盾にもなり、通常業務を縛る足かせにもなります。

したがって、契約レビューでは常に次の問いを置くべきです。

文例この条項は、いま自社が開示側ですことを前提に読むと十分か。受領側ですことを前提に読むと過剰ではありませんか。双方が開示する場合、実質的に重要情報を出すのはどちらか。

この問いを起点に、秘密情報の定義、目的、除外事由、共有先、管理水準、返還・廃棄、期間、損害賠償、差止め、個人情報、データ利用、知的財産を一つずつ点検することが、「どちらが開示側かで有利になる条項の書き分け」の本質です。

Reference

この記事の参考情報源

  • e-Gov法令検索「不正競争防止法」
  • e-Gov法令検索「民法」
  • 経済産業省「営業秘密を守り活用する」
  • 公正取引委員会「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」
  • 特許庁「オープンイノベーションポータルサイト・OIモデル契約書」
  • 経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」
  • 個人情報保護委員会「第三者提供時の確認・記録義務編ガイドライン」
  • 個人情報保護委員会「通則編ガイドライン」