交通事故で歯を失った場合に、インプラント治療費をどこまで損害として請求できるかを、因果関係、医学的必要性、代替治療、将来費用、後遺障害の観点から整理します。
全額請求は可能でも、全額回収には複数の要件と証拠が必要です。
全額請求は可能でも、全額回収には複数の要件と証拠が必要です。
交通事故で歯を破折、脱臼、喪失し、インプラント治療を受ける場合、弁護士を通じてインプラント治療費の全額を請求すること自体は可能です。ただし、相手方保険会社、加害者、裁判所が最終的に全額を認めるかは、「インプラントが高額だから」「事故で歯を失ったから」という理由だけでは決まりません。
実務上の中心論点は、事故と歯牙損傷との因果関係、インプラントの医学的必要性、義歯やブリッジ等との比較での相当性、見積額や骨造成、仮歯、上部構造、将来費用の範囲、過失割合や既往症、自賠責限度額、既払金の影響です。
次の比較表は、全額認定に近づく事情と、減額または否定されやすい事情を並べたものです。読者にとって重要なのは、どの論点で資料が足りないと争われやすいかを早めに把握できる点です。各行では、左の判断要素ごとに、中央の事情と右の事情のどちらに近いかを読み取ってください。
| 判断要素 | 全額認定に近づく事情 | 減額または否定されやすい事情 |
|---|---|---|
| 事故との因果関係 | 事故直後から歯牙破折、脱臼、歯槽骨骨折、顎骨損傷が診断されている | 事故後長期間歯科受診がない、事故前から重度の虫歯や歯周病がある |
| 治療の必要性 | 事故で歯を失い、咀嚼、発音、審美、咬合に機能障害がある | 審美目的のみで、機能回復との関連が弱い |
| 治療の相当性 | 義歯やブリッジでは不十分な理由が歯科医師の意見書で説明されている | 代替治療との比較がなく、本人の希望だけに見える |
| 金額の相当性 | 見積が項目別で、地域や医療機関の水準から著しく高くない | 高額な材料やオプションの必要性が説明されていない |
| 将来費用 | 交換時期、メインテナンス頻度、費用根拠が具体的 | 将来必要になるかもしれないという抽象的な主張にとどまる |
| 過失割合 | 被害者側の過失が小さい | 一定の過失があり、過失相殺が適用される |
| 弁護士関与 | 医療資料、意見書、後遺障害、賠償項目を一体で組み立てる | 保険会社の提示を前提に治療費だけを個別交渉する |
請求に含められる費用と、実際に支払われる範囲を分けて考えます。
このページでいう全額請求とは、歯科医院、大学病院、口腔外科等の見積書や診療計画書に記載されたインプラント関連費用を、損害賠償請求書、示談交渉、訴訟上の請求に含めることをいいます。既に支払った費用だけでなく、今後支出が見込まれる費用も、必要性と蓋然性を立証して請求対象に含めることがあります。
一方、全額回収とは、相手方または保険会社から実際に全額の支払を受けることです。全額請求は可能でも、全額回収には、因果関係、必要性、相当性、過失相殺、限度額、証拠の質という複数の関門があります。
次の一覧は、インプラント関連費用を判断するときに分けて考える概念を整理しています。これらを区別することは、保険会社の回答が「高額」「自由診療」という一言で終わらないよう、争点を具体化するために重要です。左から順に、請求対象、法的なつながり、治療選択の合理性を読み取ってください。
初診、画像検査、抜歯、埋入手術、アバットメント、上部構造、骨造成、仮歯、文書料、通院交通費、将来費用などを損害として検討します。
事故直後の診療録、画像、歯牙損傷、保存不能の理由をもとに、事故とインプラント費用の法律上のつながりを説明します。
医学的に必要か、義歯やブリッジと比べても合理的か、費用が過大でないかを歯科資料と見積で示します。
歯科補綴とは、失われた歯や歯質を人工物で補う治療領域です。クラウン、ブリッジ、義歯、インプラント上部構造などが含まれます。交通事故の後遺障害等級では、歯科補綴を加えた歯の本数が等級判断に影響します。
次の表は、交通事故賠償でインプラント費用に含まれ得る項目を整理したものです。費目を分けることは、どこまでが事故により必要となった費用かを検証しやすくするために重要です。各行では、初回治療、関連手術、管理費、将来費用のどれに当たるかを読み取ってください。
| 費用区分 | 含まれ得る内容 | 確認したい資料 |
|---|---|---|
| 検査と診断 | 初診、再診、パノラマX線、デンタルX線、CT、画像診断 | 画像、診療録、診断書 |
| 外科処置 | 抜歯、歯槽骨整復、感染管理、インプラント体埋入手術 | 手術説明書、同意書、領収書 |
| 補綴 | アバットメント、上部構造、人工歯、セラミック等の補綴費 | 見積内訳、材質説明、治療計画 |
| 関連手術 | 骨造成、GBR、サイナスリフト、ソケットプリザベーション | 骨量不足の説明、CT、意見書 |
| 調整と管理 | 仮歯、暫間補綴、咬合調整、投薬、術後管理、メインテナンス | 計画書、頻度、単価、通院記録 |
| 将来費用 | 上部構造交換、再治療、修理、将来メインテナンス | 耐用年数、交換時期、将来見積 |
民法上の損害賠償、自賠責保険、過失相殺をまとめて確認します。
交通事故で他人の身体に損害を与えた場合、基本的には民法上の不法行為責任が問題になります。歯は身体の一部であり、歯牙損傷、顎骨損傷、咀嚼機能障害、審美障害は身体侵害として扱われ得ます。
自賠責保険は、人身損害に対する基本補償制度です。傷害による損害には治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料が含まれ、傷害部分の限度額は被害者1人につき120万円です。インプラント治療費だけで120万円を超えることもあるため、任意保険、加害者本人、人身傷害補償保険、労災保険、訴訟を含めた検討が必要になることがあります。
次の比較表は、自賠責保険と任意保険、訴訟で見るポイントを整理したものです。制度ごとの限界を知ることは、治療費だけでなく後遺障害や将来費用を取りこぼさないために重要です。各列では、どの制度で何が問題になるかを読み取ってください。
| 場面 | 主な位置づけ | インプラント費用での注意点 |
|---|---|---|
| 自賠責保険 | 人身損害の基本補償 | 傷害部分は120万円の限度額があり、高額治療では不足しやすい |
| 任意保険 | 自賠責を超える損害を含めて交渉する相手になる | 自由診療、代替治療、見積内訳、将来費用が争点になりやすい |
| 訴訟 | 必要性、相当性、過失割合、将来費用を証拠に基づき判断する | 最も安い治療だけでなく、機能回復、隣接歯への影響、長期安定性も検討され得る |
| 人身傷害補償保険 | 自分の保険から先に支払を受ける可能性がある | 契約内容、支払基準、相手方への求償との関係を確認する |
| 労災保険 | 業務中または通勤中の事故で関係する | 自賠責、任意保険との調整が複雑になることがある |
被害者側にも過失がある場合、損害賠償額が過失割合に応じて減額されることがあります。たとえば、インプラント関連損害が200万円、その他損害が100万円、合計300万円で、被害者側過失が20パーセントと判断されると、単純計算では240万円が基準になります。
機能回復、CT診査、全身状態、メインテナンスが重要です。
インプラント治療は高額であるため、保険会社から美容目的ではないか、ブリッジで足りるのではないかと指摘されることがあります。しかし歯科医学的には、咀嚼、咬合、隣接歯保護、発音、生活の質に関わる機能回復治療として説明できる場合があります。
次の一覧は、インプラントを機能回復治療として説明する際に重要な医学的観点です。これらを整理することは、単なる希望や審美目的と見られることを避けるために重要です。各項目では、歯科医師の診療計画や意見書で何を説明してもらうかを読み取ってください。
臼歯部の欠損では、噛む力、咬合支持、隣接歯移動、顎関節への影響が問題になります。
前歯部では、発音、対人場面、審美、心理的負担が生活や仕事に影響することがあります。
ブリッジでは健全歯を削る必要がある場合があり、インプラントが隣接歯保存の観点で合理的なことがあります。
骨量、骨質、欠損部位、歯槽骨骨折、顎骨損傷を三次元的に確認する資料が重要です。
糖尿病、喫煙、骨粗鬆症、服薬、感染リスクなど、インプラント適応に関わる要素を評価します。
プラーク、咬合力、周囲骨、補綴装置を長期に確認するため、メインテナンス計画が必要です。
インプラントには外科的侵襲や適応の問題もあります。したがって、すべての症例で当然に選ばれる治療ではありません。治療計画では、パノラマX線、デンタルX線、CT、事故前後の歯科記録、保存不能となった理由、骨量、咬合状態、代替治療との比較、費用、リスク説明が重要になります。
次の表は、歯科医師や口腔外科医の意見書で説明されると有用な事項をまとめたものです。意見書の内容を具体化することは、保険会社や裁判所が治療の必要性を検証できる状態にするために重要です。左列の項目ごとに、右列でどのような説明が必要かを読み取ってください。
| 説明事項 | 確認したい内容 |
|---|---|
| 歯牙損傷の内容 | 歯冠破折、歯根破折、脱臼、歯槽骨骨折、顎骨損傷の具体的診断 |
| 保存不能の理由 | なぜ抜歯や補綴が必要になったのか、事故前の状態と区別して説明する |
| 代替治療との比較 | 義歯やブリッジでは不十分な理由、隣接歯への影響、管理困難性 |
| 骨造成や矯正 | インプラント埋入の前提として必要な理由、事故との関連、範囲と費用 |
| 将来管理 | メインテナンス内容、頻度、交換可能性、将来費用の根拠 |
| 治療しない場合 | 咬合崩壊、顎関節、隣接歯移動、発音、咀嚼への影響 |
インプラントは一度入れれば永続的に無管理で済む治療ではありません。問題がない場合には4か月から6か月間隔が一つの目安とされ、患者の状態によっては1か月から3か月ごとに調整されることがあります。将来メインテナンス費を請求するには、頻度、期間、単価、必要性を具体化する必要があります。
安い治療法があるだけで否定されるわけではなく、原状回復として十分かを検討します。
相手方保険会社は、インプラントは自由診療で高額である、ブリッジまたは義歯で機能回復は可能である、審美目的の要素が強い、事故前から虫歯や歯周病があった、骨造成や矯正治療は事故と関係がない、といった反論をすることがあります。
次の比較表は、義歯、ブリッジ、インプラントの特徴を、交通事故賠償で問題になる観点から整理したものです。代替治療との比較は、インプラントが高額でも相当な選択といえるかを説明するために重要です。各列では、費用の安さではなく、機能回復、隣接歯への負担、管理のしやすさを読み取ってください。
| 治療選択 | 利点 | 争点になりやすい点 | インプラント相当性との関係 |
|---|---|---|---|
| 義歯 | 比較的低額で、外科手術を伴わない | 異物感、咀嚼力、発音、清掃性、装着管理、誤嚥リスク、審美性 | 若年者、前歯欠損、発音や対人業務、管理困難がある場合に比較理由が重要 |
| ブリッジ | 固定式で、機能回復面では義歯より有利なことがある | 両隣の歯を削る必要、二次う蝕、支台歯負担、将来再治療 | 隣接歯が健全なら、削合を避けるためにインプラントが合理的なことがある |
| インプラント | 隣接歯を削らず、咀嚼、咬合、審美、長期安定で有利な場合がある | 高額、外科的侵襲、骨量、全身状態、メインテナンス、将来交換 | 医学的適応、費用内訳、代替治療との比較が具体的なら主張しやすい |
法律実務上紹介される裁判例では、義歯の異物感や咀嚼力、ブリッジで隣接歯を大きく削る必要性、大学病院等の判断、咬合能力や審美性、長期安定性などが考慮された例があります。もっとも、裁判例は個別事情に左右されるため、過去に認められた例があることだけで当然に全額認定されるわけではありません。
次の一覧は、インプラントの比較優位を説明しやすい場面をまとめたものです。これらの事情を整理することは、代替治療で十分という反論に対し、なぜインプラントが合理的なのかを示すために重要です。各項目では、事故による欠損部位、生活や仕事への影響、専門医療機関の判断を読み取ってください。
事故直後の診断、画像、保存不能の理由が明確であれば、事故との因果関係を説明しやすくなります。
審美、発音、対人業務、心理的負担が大きい場合、義歯やブリッジとの比較が重要になります。
噛む力、咬合支持、食事内容、顎関節、隣接歯移動への影響を説明します。
ブリッジのために健全歯を削ることを避ける観点から、インプラントが合理的な場合があります。
異物感、安定性、誤嚥、清掃、手指機能、職業上の発音などを具体化します。
大学病院、口腔外科、補綴専門医等の治療計画や意見書があると説明が強まります。
反対に、事故直後の診療録に歯の外傷がない、歯科受診が長期間後である、事故前から歯周病や虫歯が重い、保存可能性を検討せずに抜歯した、見積が一式表示で内訳がない、高額な審美材料の必要性が説明されていない場合は、否定または減額されやすくなります。
初回治療、骨造成、矯正、メインテナンス、将来交換を分けて整理します。
初回治療費としては、初診、再診、診断料、X線、CT、抜歯、消毒、創傷処置、インプラント体埋入手術、アバットメント、上部構造、仮歯、咬合調整、術後管理、投薬、文書料などが問題になります。骨造成や矯正治療費は、事故前から必要だった治療なのか、事故による歯牙欠損を回復するために不可欠な前処置なのかで評価が変わります。
次の表は、見積書を一式表示ではなく項目別に分けるときの確認事項です。内訳を分けることは、保険会社や裁判所が費用の必要性と相当性を検証できるようにするために重要です。各行では、費目ごとに本数、単価、材料、必要性、時期を読み取れるかを確認してください。
| 費目 | 必要な記載 |
|---|---|
| CT、画像診断 | 撮影内容、回数、単価、骨量や損傷部位を確認する目的 |
| インプラント体 | 本数、メーカー、単価、埋入部位 |
| 手術費 | 埋入、二次手術、麻酔、消毒、術後管理 |
| アバットメント | 本数、材質、単価、上部構造との関係 |
| 上部構造 | 材質、審美要件、咬合上の必要性、単価 |
| 骨造成 | 術式、材料、範囲、骨量不足の理由、事故との関連 |
| 仮歯 | 使用期間、部位、咀嚼や審美への必要性、単価 |
| メインテナンス | 頻度、内容、単価、リスクに応じた期間 |
| 将来交換 | 交換対象、時期、単価、耐用年数、現在価値計算の要否 |
次の計算例は、前歯1本喪失と臼歯3本欠損の費用構成を示すものです。具体例を見ることは、どの費目が大きな割合を占め、過失割合や自賠責限度額が最終回収額にどう影響するかを把握するために重要です。金額は説明用の例であり、実際の費用は治療計画、医療機関、材料、骨造成の有無で変わります。
| 例 | 主な費用構成 | 合計例 | 読み取り方 |
|---|---|---|---|
| 前歯1本喪失、過失なし | 初診検査5万円、抜歯等5万円、埋入30万円、アバットメント10万円、上部構造18万円、仮歯5万円、初年度管理3万円、文書料2万円 | 78万円 | 隣接歯が健全で、ブリッジでは削合が必要な場合は、全額請求の合理性を説明しやすい |
| 臼歯3本欠損、骨造成あり、過失20パーセント | 検査8万円、インプラント体90万円、骨造成40万円、アバットメント30万円、上部構造60万円、仮歯等15万円、管理6万円、文書料3万円 | 252万円 | 過失20パーセントなら単純計算で201万6000円が基準になり、既払金や限度額との調整が必要 |
将来メインテナンス費を請求する場合は、1回あたりの費用、年間回数、必要な年数、メインテナンス内容、患者のリスクに応じた頻度、現在価値への中間利息控除の要否、後遺障害慰謝料との二重評価を検討します。将来交換費用では、上部構造の耐用年数、交換時期、交換費用、患者年齢、平均余命、医学的見通しが争点になります。
歯科補綴本数、咀嚼や発音、後遺障害慰謝料と治療費を分けて確認します。
交通事故で歯を失い、歯科補綴を加えた場合、後遺障害等級の対象となる可能性があります。ただし、インプラント治療費が認められるかと、歯科補綴による後遺障害等級が認定されるかは関連するものの同一ではありません。
次の表は、歯科補綴を加えた歯の本数による後遺障害等級の目安を整理したものです。本数の基準を知ることは、治療費だけでなく後遺障害慰謝料や逸失利益の検討漏れを避けるために重要です。左列の等級と右列の本数を対応させて読み取ってください。
| 等級 | 基準 |
|---|---|
| 第10級4号 | 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
| 第11級4号 | 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
| 第12級3号 | 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
| 第13級5号 | 五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
| 第14級2号 | 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
歯の本数が少ない場合でも、咀嚼機能障害、顎関節症状、神経症状、顔面醜状など別の後遺障害が問題になることがあります。歯の損傷は見落とされやすく、後遺障害診断書や歯科用診断書の記載が不十分だと適切に評価されにくくなります。
次の一覧は、インプラント治療費と後遺障害の関係を整理したものです。両者を分けることは、治療費、慰謝料、将来費用を二重評価せず、しかし取りこぼさないために重要です。各項目では、費用の問題と等級の問題がどこで交わるかを読み取ってください。
症状固定前後を問わず、インプラントや関連治療の必要性、相当性、事故との因果関係が問題になります。
治療しても残った機能障害、歯科補綴本数、咀嚼や言語機能への影響が問題になります。
将来の不便が後遺障害慰謝料に含まれると評価される場合があり、将来治療費との二重評価に注意します。
後遺障害申請では、交通事故証明書、事故直後の救急記録、診断書、歯科診断書、後遺障害診断書、歯式、事故前の歯科記録、パノラマX線、CT、デンタルX線、歯科補綴を加えた歯の本数、既存補綴や既存欠損、虫歯や歯周病の有無、咀嚼、発音、疼痛、知覚異常、審美障害の記載、治療経過表、口腔内写真が重要です。
事故直後、治療計画前、後遺障害申請前、示談前で確認事項が変わります。
歯科外傷は、むち打ちや骨折に比べて初動で見落とされることがあります。顔面外傷、口唇裂傷、顎の痛み、歯のぐらつき、噛みにくさ、歯の欠け、出血、知覚異常があれば、救急医、口腔外科、歯科に症状を伝え、早期に資料を残すことが重要です。
次の時系列は、事故直後から示談前までの確認事項を整理したものです。順番を押さえることは、後から因果関係や将来費用を争われたときに資料不足を防ぐために重要です。各段階では、何を保存し、どの資料を保険会社や後遺障害申請で使うかを読み取ってください。
交通事故証明書、救急記録、口腔内写真、破折歯や脱落歯の写真、診断書、初診画像を残します。
義歯、ブリッジ、インプラントの比較、CT、骨造成、全身状態、項目別見積を確認します。
口頭回答だけで進めず、治療計画書、見積書、意見書を提出し、拒否理由を具体化します。
事故前の歯科記録、歯式、画像、補綴本数、咀嚼や発音の支障を確認します。
メインテナンス、交換費用、後遺障害慰謝料、逸失利益、過失割合、既払金を照合します。
次の判断の流れは、保険会社からインプラント費用を拒否または減額された場合に、どの順番で資料を確認するかを示します。順番を決めることは、自由診療かどうかという抽象論に流されず、事故、医学、費用、将来損害を証拠でつなげるために重要です。分岐では、資料が足りない場合と、費用算定へ進める場合を読み取ってください。
救急記録、歯科初診、画像、口腔内写真を確認します
抜歯理由、義歯やブリッジとの比較、専門医療機関の判断を整理します
一式表示ではなく、項目別の単価、頻度、交換時期を確認します
歯科意見書、CT、事故前記録、治療計画、将来見積を補います
治療費、将来費用、後遺障害、過失割合、既払金を照合します
一括対応中は、インプラント手術前に治療計画書と見積書を保険会社に提出し、担当者の口頭回答だけで進めず、文書で回答を求めることが重要です。自費で先行する場合は、後日請求に備え、領収書、明細、説明書、同意書、写真、画像を保存します。
次の一覧は、弁護士が賠償上の説明を組み立てるときの主な役割を整理したものです。弁護士は治療の選択を決める立場ではありませんが、医療資料を法的な損害項目に翻訳する役割があります。各項目では、医療判断と賠償請求の接点を読み取ってください。
事故態様、救急記録、歯科初診、画像、事故前の歯科状態を照合します。
事故資料保存不能、代替治療、骨造成、メインテナンス、将来交換を説明できる形に整えます。
医療資料治療費、慰謝料、後遺障害、逸失利益、将来費用、過失相殺を一体で検討します。
損害算定未確定治療費、将来費用、後遺障害、清算条項、既払金を確認します。
示談前事故直後、治療計画前、後遺障害申請前、示談前に分けて確認します。
インプラント治療費は、治療が進んだ後や示談直前に初めて争点化すると、資料の追加が難しくなることがあります。事故直後から段階ごとに確認しておくことが、因果関係、必要性、相当性、将来費用を説明する土台になります。
次の表は、各段階で確認したい事項をまとめたものです。段階ごとに確認することは、事故直後の記録不足、治療計画の説明不足、後遺障害の記載漏れ、示談後の追加請求困難を避けるために重要です。左列の時期と右列の確認事項を対応させて読み取ってください。
| 時期 | 確認事項 |
|---|---|
| 事故直後 | 警察への届出、人身事故扱い、救急医への口腔内や顎の症状申告、顔面や口腔内写真、早期の歯科または口腔外科受診、初診画像の保存 |
| 治療計画前 | インプラント以外の選択肢、義歯やブリッジが不十分な理由、CT、骨造成、全身疾患や服薬、項目別見積、保険会社への提出資料 |
| 後遺障害申請前 | 歯科補綴本数、既存補綴や既存欠損、咀嚼、発音、疼痛、知覚異常、審美障害、画像、歯科医師意見書、診断書の記載漏れ |
| 示談前 | 未払治療費、将来メインテナンス、将来交換、後遺障害慰謝料、逸失利益、過失割合、弁護士費用特約、清算条項 |
個別の判断ではなく、一般的な制度説明として整理します。
一般的には、自由診療であることだけを理由に当然に賠償対象外となるわけではありません。問題は、事故により必要となった治療であり、治療方法と費用が相当かどうかです。ただし、見積の内訳、事故前の歯の状態、代替治療との比較によって結論は変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、治療後でも必要性と相当性を説明できれば請求が検討されることがあります。ただし、治療前に治療計画書、見積書、歯科医師意見書を提出していない場合、後から争われやすくなります。治療前後の写真、画像、説明書、同意書、領収書の有無で判断が変わります。
一般的には、安い治療法が存在するだけで、インプラント費用が当然に否定されるわけではありません。ブリッジで健全歯を削る必要がある、義歯では咀嚼力や安定性が不十分といった事情があれば、相当性を説明できる可能性があります。ただし、欠損部位、隣接歯、年齢、職業、歯科医師の説明によって評価は変わります。
一般的には、将来メインテナンス費を請求対象として検討することはあります。ただし、必要性、頻度、単価、期間を具体化する必要があります。患者のリスク、通院予定、医療機関の見積、後遺障害慰謝料との関係によって結論は変わります。
一般的には、将来交換費用が問題になる場合があります。ただし、不確実性が高いため、上部構造の耐用年数、患者年齢、交換時期、費用、現在価値計算、医学的見通しを示す必要があります。単なる可能性だけでは認められにくい傾向があります。
一般的には、事故直後の診療録に歯の症状がない場合、事故との因果関係を争われやすくなります。ただし、顔面外傷があり、救急対応で歯科受診が遅れた理由を説明でき、後日の画像で外傷性所見が確認できる場合には、なお検討の余地があります。具体的には医療記録と事故態様を確認する必要があります。
一般的には、事故前の状態が評価に影響します。事故前から保存不能に近い歯であれば、事故による損害といえる範囲は限定される可能性があります。一方、事故前は治療済みで安定しており、事故で破折や脱臼が生じた場合には、事故による損害として検討される余地があります。
一般的には、成長期では顎骨成長との関係から直ちにインプラントが適応とならない場合があります。暫間義歯、矯正、成長終了後の治療計画が問題になることがあります。将来治療費を請求するには、成長後の治療の蓋然性と費用を専門医に説明してもらう必要があります。
一般的には、清算条項を含む示談が成立している場合、追加請求は難しくなることがあります。ただし、示談内容、後から判明した事情、治療の予見可能性によって評価は変わります。示談前に将来メインテナンス費、交換費、後遺障害、未確定治療費を確認する必要があります。
一般的には、インプラント手術前、保険会社が自由診療を拒否した時点、症状固定前、後遺障害申請前、示談案に署名する前が相談時期として問題になります。ただし、事故態様、治療状況、期限、保険契約によって必要な対応は変わります。資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。
公的資料、歯科医療情報、交通事故損害賠償の実務資料をもとに整理しています。