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自賠責保険で補償される損害と
補償されない損害の一覧

自賠責保険は交通事故の最低限の対人賠償を支える制度です。傷害・後遺障害・死亡で対象項目と限度額が変わり、物損や自己損害、症状固定後の治療費などは別制度で考える必要があります。

120万円 傷害の支払限度額
4,000万円 要介護1級の上限
3,000万円 死亡損害の上限
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自賠責保険で補償される損害と 補償されない損害の一覧

自賠責保険は交通事故の最低限の対人賠償を支える制度です。

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自賠責保険で補償される損害と 補償されない損害の一覧
自賠責保険は交通事故の最低限の対人賠償を支える制度です。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 自賠責保険で補償される損害と 補償されない損害の一覧
  • 自賠責保険は交通事故の最低限の対人賠償を支える制度です。

POINT 1

  • 自賠責保険で補償される損害と補償されない損害の全体像
  • まず、支払対象になる人身損害と、別制度で考えるべき損害を切り分けます。
  • 自賠責保険は、自動車の運行によって他人の生命または身体に生じた損害について、法定の支払基準と限度額の範囲で支払う制度です。
  • 最初にこの違いを押さえると、治療費・慰謝料・物損・後遺障害・死亡損害をどの制度で検討するかを誤りにくくなります。
  • 金額や基準は、2020年4月1日以後に発生した事故に適用される現行支払基準を前提にしています。

POINT 2

  • 自賠責保険の補償を決める三つの要件
  • 自動車の運行による事故
  • 被害者が「他人」に当たる
  • 法律上の対人賠償責任がある
  • 制度の入口は「運行」「他人」「法律上の損害賠償責任」です。

POINT 3

  • 自賠責保険の支払限度額と補償の天井
  • 対象項目でも、限度額を超える部分は自賠責だけでは埋まりません。
  • 自賠責の限度額は、最終賠償額の上限ではありません
  • 自賠責保険は、対象になるかどうかだけでなく、いくらまで出るかが重要です。
  • 被害者1名ごとの上限であり、重度後遺障害や死亡事故では民事上の損害額がこの範囲を超えることがある点を読み取ってください。

POINT 4

  • 自賠責保険で補償される損害の一覧
  • 傷害、後遺障害、死亡に分けて、支払項目と注意点を確認します。
  • 傷害による損害
  • 近親者付添いにも基準がある
  • 家事従事者と有給休暇も対象

POINT 5

  • 自賠責保険で補償されない損害の一覧
  • 物的損害
  • 車の修理費、評価損、代車費用、建物や積荷の損害は、自賠責の対人制度から外れます。
  • 加害車両側の自己損害
  • 契約者、運転者、保有者、借受人側の損害は、原則として自賠責の保護対象ではありません。

POINT 6

  • 自賠責保険の補償で迷いやすい境界事例
  • 一見すると対象外に見えるものでも、例外や条件があります。
  • 境界事例では、損害の名前だけでは判断できません。
  • 各項目では、対象外に見える理由と、対象になりうる根拠の両方を読み取ってください。
  • 免許を有する柔道整復師、はり師、きゅう師等の施術費は支払基準上の項目です。

POINT 7

  • 自賠責保険の補償が減額される場合
  • 事故態様
  • 信号、速度、進路、回避可能性、ドライブレコーダー映像などが過失割合の判断材料になります。
  • 医療記録
  • 初診時の主訴、診断名、画像所見、通院経過は、受傷との結びつきを確認するための中心資料です。

POINT 8

  • 自賠責保険の補償で誤解を避ける請求準備
  • 1. 医療機関受診と領収書・証明書の保存:事故直後から医療機関を受診し、診断名と受傷機転を記録してもらいます。
  • 2. 症状固定と医学的資料の確認:MRI、CT、神経学的所見、可動域検査、神経心理学的検査、就労制限、家事・日常生活支障を整理します。
  • 3. 葬儀費・死亡診断書・戸籍・収入資料の収集:葬儀費の領収書や明細、死亡診断書または死体検案書、戸籍資料、被扶養者の有無、収入資料、年金受給状況を確認します。

まとめ

  • 自賠責保険で補償される損害と 補償されない損害の一覧
  • 自賠責保険で補償される損害と補償されない損害の全体像:まず、支払対象になる人身損害と、別制度で考えるべき損害を切り分けます。
  • 自賠責保険の支払限度額と補償の天井:対象項目でも、限度額を超える部分は自賠責だけでは埋まりません。
  • 自賠責保険で補償される損害の一覧:傷害、後遺障害、死亡に分けて、支払項目と注意点を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

自賠責保険で補償される損害と補償されない損害の全体像

まず、支払対象になる人身損害と、別制度で考えるべき損害を切り分けます。

自賠責保険は、自動車の運行によって他人の生命または身体に生じた損害について、法定の支払基準と限度額の範囲で支払う制度です。したがって中心は人身損害であり、車両修理費や建物損害などの物的損害、加害車両側の自己損害、法定限度額を超える部分は原則として対象外です。

次の比較表は、代表的な損害や場面を支払対象かどうかで整理したものです。最初にこの違いを押さえると、治療費・慰謝料・物損・後遺障害・死亡損害をどの制度で検討するかを誤りにくくなります。右列では、実務で特に確認すべき限度額や例外を読み取ってください。

区分自賠責での扱い主な内容実務上の注意
傷害による損害原則支払対象治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料被害者1名につき120万円が上限
後遺障害による損害原則支払対象逸失利益、慰謝料等等級認定が必要で、1級から14級で差が大きい
死亡による損害原則支払対象葬儀費、逸失利益、本人慰謝料、遺族慰謝料被害者1名につき3,000万円が上限
死亡に至るまでの傷害支払対象死亡前の治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料事故当日または翌日死亡では積極損害のみ
車両修理費・評価損・代車費用対象外物的損害任意保険の対物賠償などで検討
建物・ガードレール・積荷等の損害対象外物的損害自賠責は対物を補償しない
加害車両の運転者自身の人身損害対象外自己損害人身傷害保険や搭乗者傷害などで検討
保有者・借受人側の人身損害対象外となることがある「他人」でない損害同乗者でも運行供用者なら対象外となりうる
自損事故対象外単独衝突など加害者に法律上の対人賠償責任がない
100%被害者側責任の事故対象外無責事故相手車両の自賠責は支払対象外
症状固定後の治療費原則対象外後遺障害認定後の治療継続分残った障害は後遺障害損害として評価
自賠責限度額を超える部分自賠責としては対象外高額損害の超過部分加害者本人または任意保険で検討
ひき逃げ・無保険車・盗難車事故その車両の自賠責では救済困難自賠責で処理できない人身事故政府の保障事業の対象になりうる

このページでは、単に「出る」「出ない」を並べるだけでなく、なぜその結論になるのか、どの損害項目がどの限度額に入るのか、どの資料で立証するのかまで整理します。金額や基準は、2020年4月1日以後に発生した事故に適用される現行支払基準を前提にしています。

Section 01

自賠責保険の補償を決める三つの要件

制度の入口は「運行」「他人」「法律上の損害賠償責任」です。

自賠責保険の正式名称は自動車損害賠償責任保険です。制度の目的は、自動車の運行によって人の生命または身体が害された場合の損害賠償を保障し、被害者保護を図ることにあります。日常語の「事故で困ったら広くお金が出る保険」ではなく、法律上の対人賠償責任を法定限度額の範囲で支える制度です。

次の三つの項目は、自賠責保険で支払対象になるかを判断する入口を表しています。ここを誤ると、同乗者の負傷、単独事故、停車中の作業事故などで結論を取り違えやすくなります。各項目では、どの事実を資料で確認する必要があるかを読み取ってください。

Point 01

自動車の運行による事故

走行だけでなく事故態様全体を見て、自動車の運行と死傷との関係が問題になります。停車中、積卸し中、車外作業中などでは、運行該当性が争点になることがあります。

Point 02

被害者が「他人」に当たる

ここでの他人は、単なる自分以外の人ではなく、運行供用者や運転者ではない者を指します。同乗者でも保有者・借受人などであれば対象外となることがあります。

Point 03

法律上の対人賠償責任がある

相手方に責任がない事故、自損事故、100%被害者側責任の事故などでは、自賠責の支払対象にならない場面があります。

次の判断の流れは、上の三要件を実務で確認する順番を示しています。この順番で見ることが重要なのは、治療費や慰謝料の項目に進む前に、自賠責制度の入口を満たすかを切り分ける必要があるためです。分岐では、どこで対象外の可能性が出るかを確認してください。

自賠責の入口を確認する順番

事故が自動車の運行によるものか確認

運行と死傷との関係を確認します。

負傷者が運転者・運行供用者ではないか確認

同乗者でも保有・借受の実態を見ます。

責任なし
自賠責対象外の可能性

自損事故や無責事故では別制度を検討します。

責任あり
支払項目と限度額へ進む

傷害・後遺障害・死亡の各基準を確認します。

自賠責には、加害者が先に賠償してから保険会社へ請求する加害者請求だけでなく、被害者が加害車両の自賠責保険会社へ直接請求する被害者請求があります。任意保険会社が自賠責分も含めてまとめて支払う一括払制度が使われると、自賠責基準で支払われた部分が見えにくくなるため、支払根拠を分けて理解することが大切です。

Section 02

自賠責保険の支払限度額と補償の天井

対象項目でも、限度額を超える部分は自賠責だけでは埋まりません。

自賠責保険は、対象になるかどうかだけでなく、いくらまで出るかが重要です。次の表は、傷害・死亡・後遺障害の上限を並べたものです。被害者1名ごとの上限であり、重度後遺障害や死亡事故では民事上の損害額がこの範囲を超えることがある点を読み取ってください。

損害区分支払限度額読み方
傷害による損害120万円治療関係費、休業損害、慰謝料などの合計上限
死亡による損害3,000万円葬儀費、逸失利益、本人慰謝料、遺族慰謝料の合計上限
後遺障害による損害(要介護1級)4,000万円後遺障害の中で最も高い限度額
後遺障害による損害(要介護2級)3,000万円介護を要する第2級の上限
後遺障害による損害(上記以外)75万円から3,000万円1級から14級の等級に応じて変動

次の強調表示は、限度額の意味を一文で整理したものです。読者にとって重要なのは、限度額が「被害者の全損害額」ではなく「自賠責として支払う上限」だと理解することです。高額案件では、超過部分を任意保険や加害者本人への請求で検討する必要がある点を確認してください。

自賠責の限度額は、最終賠償額の上限ではありません

重度後遺障害、若年者の死亡、高収入者の死亡、長期介護を要する事故では、自賠責限度額を超える損害が生じることがあります。自賠責で支払われる部分と、任意保険・加害者賠償で検討する部分を分けて把握する必要があります。

Section 03

自賠責保険で補償される損害の一覧

傷害、後遺障害、死亡に分けて、支払項目と注意点を確認します。

傷害による損害

傷害による損害は、治療関係費などの積極損害、休業損害、慰謝料に分けて整理されます。次の表は、支払基準上の代表項目と実務上の要点を一覧化したものです。どの費用が「必要かつ妥当な実費」なのか、どの項目に定額や上限があるのかを読み取ってください。

項目内容支払基準の要点
応急手当費応急処置に直接要した費用必要かつ妥当な実費
診察料初診料、再診料、往診料必要かつ妥当な実費
入院料普通病室を原則とする入院費傷害態様上必要なら上位病室も対象となりうる
投薬料・手術料・処置料等医療行為全般必要かつ妥当な実費
通院費・転院費・入退院費通院、転院、入退院の交通費必要かつ妥当な実費
看護料入院看護、自宅看護、通院看護要件充足で定額または実額
諸雑費入院・療養に直接必要な雑費入院は原則1日1,100円
柔道整復等の費用柔道整復師、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師による施術免許保有者による必要かつ妥当な実費
義肢等の費用義肢、歯科補てつ、義眼、眼鏡、補聴器、松葉杖等必要かつ妥当な実費。眼鏡は5万円限度
診断書等の費用診断書、診療報酬明細書等必要かつ妥当な実費
文書料交通事故証明書、印鑑証明書、住民票等必要かつ妥当な実費
その他の費用事故現場から医療機関までの搬送費等必要かつ妥当な実費
休業損害事故による収入減少、有給休暇使用、家事従事者の休業相当損害原則1日6,100円、立証で19,000円限度の実額
慰謝料精神的・肉体的苦痛1日4,300円。対象日数は治療期間内で判断

次の一覧は、傷害損害の中でも見落とされやすい項目をまとめたものです。重要なのは、領収書の有無だけでなく、医師の必要性判断、事故との因果関係、通院や施術の相当性が支払可否に影響する点です。各項目では、何が例外になり、どの数字を押さえるべきかを確認してください。

看護料

近親者付添いにも基準がある

入院中の看護料は、原則として12歳以下の子どもに近親者等が付き添った場合に1日4,200円です。自宅看護・通院看護は、医師が必要性を認めた場合に近親者等の付添い1日2,100円が原則です。

家事・有休

家事従事者と有給休暇も対象

家事従事者は休業による収入減少があったものとみなされます。有給休暇を使用した場合も、休業損害の対象として整理されます。

施術費

整骨院等は必要性と相当性が鍵

免許を有する柔道整復師、はり師、きゅう師等の施術費は対象になりえます。ただし、医療機関の診療経過と施術経過が大きくずれると争点化しやすくなります。

身体補完物

眼鏡・補聴器・義歯は例外

物損一般は対象外ですが、身体機能を補う義肢、義眼、眼鏡、補聴器、松葉杖等は例外的に対象となります。眼鏡は5万円限度です。

妊婦

流産・死産では追加慰謝料

妊婦が胎児を死産または流産した場合、通常の慰謝料とは別に慰謝料が認められるとされています。

後遺障害による損害

後遺障害は、症状固定時に事故と相当因果関係を有し、医学的に認められる障害が残っている状態です。次の表は、後遺障害で支払われる基本項目を整理しています。ここでは、等級認定を受けること、医学的資料をそろえること、逸失利益と慰謝料等を分けて考えることが重要だと読み取ってください。

項目内容実務上のポイント
逸失利益労働能力低下による将来の収入減収入、労働能力喪失率、喪失期間等で算定
慰謝料等精神的・肉体的苦痛に対する補償等級ごとに定額。要介護等級では初期費用加算あり
被扶養者加算第1級から第3級で被扶養者がいる場合の増額自動的ではなく要件確認が必要

次の表は、後遺障害慰謝料等の金額を等級別に並べたものです。等級が一つ違うだけで金額が大きく変わるため、後遺障害診断書、画像所見、神経学的所見、可動域検査、神経心理学的検査などの資料が実務上大きな意味を持つことを読み取ってください。

区分等級慰謝料等補足
介護を要する後遺障害第1級1,650万円初期費用500万円を加算
介護を要する後遺障害第2級1,203万円初期費用205万円を加算
上記以外第1級1,150万円第1級から第3級は被扶養者加算の確認が必要
上記以外第2級998万円等級ごとに定額
上記以外第3級861万円等級ごとに定額
上記以外第4級737万円等級ごとに定額
上記以外第5級618万円等級ごとに定額
上記以外第6級512万円等級ごとに定額
上記以外第7級419万円等級ごとに定額
上記以外第8級331万円等級ごとに定額
上記以外第9級249万円等級ごとに定額
上記以外第10級190万円等級ごとに定額
上記以外第11級136万円等級ごとに定額
上記以外第12級94万円等級ごとに定額
上記以外第13級57万円等級ごとに定額
上記以外第14級32万円等級ごとに定額

死亡による損害

死亡損害では、死亡そのものの損害と、死亡に至るまでの傷害損害を分けて確認する必要があります。次の表は、死亡損害として明示される項目を整理したものです。遺族慰謝料の人数別金額、被扶養者がいる場合の加算、葬儀費の定額を読み取ってください。

項目内容支払基準
葬儀費通夜、祭壇、火葬、埋葬、墓石など100万円
逸失利益死亡しなければ将来得られた収入から生活費を控除したもの収入、就労可能期間、被扶養者の有無等で算定
死亡本人の慰謝料被害者本人の慰謝料400万円
遺族の慰謝料配偶者・子・父母の慰謝料請求権者1名550万円、2名650万円、3名以上750万円。被扶養者ありでさらに200万円加算

死亡前に治療が行われた場合は、治療関係費、死体検案書料、死亡後の処置料等が死亡に至るまでの傷害損害として問題になります。ただし、事故当日または翌日死亡の場合は積極損害のみとされ、休業損害や慰謝料は認められません。

Section 04

自賠責保険で補償されない損害の一覧

対象外とは、被害が存在しないという意味ではなく、自賠責の支払対象ではないという意味です。

自賠責で補償されない損害は、任意保険、加害者本人への損害賠償請求、政府の保障事業、労災、健康保険など別制度で処理されることがあります。次の表は、対象外になりやすい場面と代替的に検討される処理先を整理したものです。どの理由で自賠責から外れるのかを確認すると、次に見るべき制度を選びやすくなります。

補償されない損害・場面自賠責で出ない理由代替的な処理先の例
車両修理費、全損時価額、評価損、代車費用物的損害であり自賠責の対象外任意保険の対物賠償、加害者本人
建物、塀、ガードレール、積荷、商品、衣類、スマートフォン等の損害物的損害であり自賠責の対象外任意保険の対物賠償、加害者本人
加害車両の運転者自身のケガ被害者が「他人」に当たらない人身傷害保険、搭乗者傷害、労災等
保有者・借受人側のケガ「他人性」を欠くことがある人身傷害保険等
自損事故法律上の対人賠償責任がない自損事故保険、人身傷害保険等
100%被害者側責任の事故相手方に自賠法上の責任が生じない自身の人身傷害保険等
自動車の運行によって生じた死傷でない場合自賠責の対象事故ではない事案に応じ民法・労災等
保険契約者・保有者・運転者の悪意による損害明文で対象外別制度でも救済が難しいことがある
症状固定後の治療費後遺障害として処理され、治療費は原則打切り任意保険、自己負担、公的医療保険等
自賠責限度額を超える全ての損害自賠責の法定限度超過加害者本人、任意保険
ひき逃げ・無保険車・盗難車事故の被害その車両の自賠責で救済できない政府の保障事業

次の一覧は、特に誤解されやすい対象外理由をまとめたものです。読者にとって重要なのは、物的損害や自己損害を「請求できない」と短絡せず、自賠責では対象外でも別制度で検討できる可能性を切り分けることです。各項目では、何が対象外の根拠になるのかを読み取ってください。

物的損害

車の修理費、評価損、代車費用、建物や積荷の損害は、自賠責の対人制度から外れます。義肢・眼鏡等の身体機能補完物は例外的に検討されます。

加害車両側の自己損害

契約者、運転者、保有者、借受人側の損害は、原則として自賠責の保護対象ではありません。同乗者でも他人性の確認が必要です。

自損事故・無責事故

単独事故や100%被害者側責任の事故では、相手方に法律上の対人賠償責任がないため、自賠責支払の入口を満たしません。

症状固定後の治療費

症状固定後は、治療費ではなく残った障害を後遺障害損害として評価する段階に移ります。長期化する傷病ほど線引きが争点になります。

限度額を超える損害

項目自体が対象でも、総額が限度額を超えれば超過部分は自賠責からは支払われません。任意保険や加害者本人への請求を検討します。

ひき逃げ・無保険車

その車両の自賠責で救済できない場合でも、政府の保障事業の対象になる可能性があります。自賠責対象外と救済不能は同じではありません。

Section 05

自賠責保険の補償で迷いやすい境界事例

一見すると対象外に見えるものでも、例外や条件があります。

境界事例では、損害の名前だけでは判断できません。次の一覧は、整骨院等の施術費、身体機能を補う物、同乗者、死亡事故の治療関係費を、確認すべき条件ごとに整理したものです。各項目では、対象外に見える理由と、対象になりうる根拠の両方を読み取ってください。

01

整骨院・鍼灸院の費用

免許を有する柔道整復師、はり師、きゅう師等の施術費は支払基準上の項目です。ただし、事故との因果関係、施術の必要性、期間・頻度の相当性が問われます。

必要性医療記録
02

眼鏡・補聴器・義歯の破損

通常の持ち物は物的損害として対象外ですが、身体機能を補う物は例外です。眼鏡の費用については5万円限度という数値基準もあります。

例外項目5万円限度
03

同乗者の負傷

同乗者は一般に被害者として扱われやすい一方、車両の所有者・借受人などで運行供用者に当たる場合は「他人性」を欠くことがあります。

他人性運行供用者
04

死亡事故の治療費・検案費

死亡前の治療費、死体検案書料、死亡後の処置料等は、死亡に至るまでの傷害損害として整理されます。請求漏れが生じやすい項目です。

死亡前後請求漏れ注意

境界事例で共通するのは、名称だけで結論を決めず、事故との因果関係、身体損害との結びつき、他人性、医療記録との整合性を確認することです。物損一般は対象外でも、身体機能補完物のように人身損害と密接に結びつく例外があります。

Section 06

自賠責保険の補償が減額される場合

対象項目でも、重大な過失や因果関係の不明確さで減額されることがあります。

自賠責は被害者保護の制度ですが、常に満額が支払われるわけではありません。次の表は、代表的な減額事由と確認すべきポイントを整理したものです。過失割合の70%という境目、死亡・後遺障害で因果関係が難しい場合の5割減額、傷害の最低保障に関する扱いを読み取ってください。

減額事由基準の要点実務上の読み方
被害者に重大な過失がある場合被害者の過失割合が70%以上でなければ減額しないと説明されています70%以上では支払基準の減額表に従って減額される可能性があります
傷害で20万円未満となる場合死亡・後遺障害を除く傷害について最低保障に関する特則があります自賠責は被害者保護の観点から、裁判実務の過失相殺とは異なる構造を採ります
受傷と死亡または後遺障害との因果関係が困難な場合死亡損害・後遺障害損害について5割減額既往症、死因不明、自殺と事故の関係などで医学的因果関係が問題になります

次の注意点一覧は、減額が問題になるときにどの資料が重視されやすいかをまとめたものです。読者にとって重要なのは、減額の可能性を感覚で判断せず、事故態様、医療記録、既往症、死亡または後遺障害との因果関係を資料で確認することです。各項目では、どの争点に資料が必要かを読み取ってください。

事故態様

信号、速度、進路、回避可能性、ドライブレコーダー映像などが過失割合の判断材料になります。

医療記録

初診時の主訴、診断名、画像所見、通院経過は、受傷との結びつきを確認するための中心資料です。

既往症・死因

既往症や死因が問題になる場合、事故と死亡・後遺障害との関係が不明確として減額される可能性があります。

Section 07

自賠責保険の補償で誤解を避ける請求準備

請求漏れと立証不足を防ぐには、事故類型ごとに資料を整理することが重要です。

実務で多い誤解は、自賠責が何でも出る保険だと考えること、同乗者なら必ず対象だと考えること、物損事故扱いなら人身損害の請求ができないと考えること、後遺障害認定後も治療費が当然続くと考えることです。いずれも、支払対象、他人性、届出区分、症状固定の理解を分ければ整理できます。

次の時系列は、傷害事故、後遺障害事故、死亡事故で準備すべき資料を段階別にまとめたものです。この順番で整理することが重要なのは、自賠責の支払が証拠資料に基づいて行われるためです。各段階で、保存すべき資料と確認すべき事実を読み取ってください。

傷害事故

医療機関受診と領収書・証明書の保存

事故直後から医療機関を受診し、診断名と受傷機転を記録してもらいます。通院交通費、診断書料、文書料、付添看護の有無、休業日数、収入資料も整理します。

後遺障害事故

症状固定と医学的資料の確認

MRI、CT、神経学的所見、可動域検査、神経心理学的検査、就労制限、家事・日常生活支障を整理します。後遺障害診断書の記載漏れにも注意が必要です。

死亡事故

葬儀費・死亡診断書・戸籍・収入資料の収集

葬儀費の領収書や明細、死亡診断書または死体検案書、戸籍資料、被扶養者の有無、収入資料、年金受給状況を確認します。死亡までの治療関係費や検案費の請求漏れにも注意します。

次の比較表は、よくある誤解と正しい整理を対応させたものです。誤解をそのままにすると、資料収集の遅れや請求先の取り違えにつながるため、右列の整理を手元の事故状況に当てはめて確認してください。

よくある誤解正しい整理
病院代が出るなら何でも自賠責治療関係費は対象ですが、物損一般や症状固定後治療費、加害車両側の自己損害は別です。
同乗者なら必ず被害者同乗者でも運行供用者に当たる場合は、他人性を欠くことがあります。
警察が物損事故扱いなら自賠責は使えない届出区分と実際の人身損害の有無は別問題です。治療を受けた事実や診断内容が重要です。
後遺障害認定後も治療費は当然続く症状固定後は、原則として治療費ではなく後遺障害損害の問題へ移ります。
自賠責で足りない分も自動的に保険会社が補う任意保険の有無、免責、争いの有無によって処理が変わります。限度額超過部分は別に検討します。
Section 08

自賠責保険で補償される損害と補償されない損害の結論

対象か対象外かだけでなく、制度・資料・限度額をセットで確認します。

次の要約は、このページの結論を最も短く整理したものです。重要なのは、自賠責が「交通事故被害者救済の出発点」であって、全損害を無制限に埋める終着点ではないという点です。ここから、どの損害項目をどの制度で、どの資料により、いくらまで認めてもらうのかを確認してください。

自賠責が補償するのは、他人の人身損害のうち支払基準に定められた範囲です

傷害、後遺障害、死亡の各損害は自賠責の中心ですが、物損、加害車両側の自己損害、症状固定後治療費、法定限度額超過部分、無責事故、自損事故などは原則として自賠責の支払対象ではありません。

  • 眼鏡や義歯のように、物の破損でも身体機能を補うものは例外的に対象となりえます。
  • 同乗者は常に対象とは限らず、運行供用者・運転者ではないかを確認します。
  • 整骨院費や付添費は、必要性、相当性、医療記録との整合性が重要です。
  • 症状固定後は、治療費ではなく後遺障害損害として評価されるのが原則です。
  • 既往症や因果関係が問題になる場合、死亡損害・後遺障害損害が減額される可能性があります。
  • 限度額を超える部分は、任意保険、加害者本人への請求、政府の保障事業など別制度の検討が必要です。

一般的には、個別の事故態様、負傷程度、証拠関係、保険契約、症状固定時期によって結論が変わる可能性があります。具体的な請求方針や見通しは、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Reference

参考資料

制度の根拠を確認するための一次資料・公的資料です。

一次資料・公的資料

  • e-Gov法令検索『自動車損害賠償保障法』
  • 国土交通省『限度額と補償内容』
  • 国土交通省『損害賠償を受けるときは?』
  • 国土交通省『よくあるご質問』
  • 金融庁・国土交通省告示『自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準』
  • 損害保険料率算出機構『自賠責保険(共済)損害調査のしくみ2025』
  • 損害保険料率算出機構『自動車事故にかかわるお支払金等についてのお問い合わせ』