2σ Guide

うつ病で休職した社員の
復職判定の進め方

主治医の診断書だけに依存せず、産業医意見、職務内容、合理的配慮、安全配慮義務、個人情報保護、休職満了処理をつないで判断します。

5段階 厚労省の職場復帰支援
12.8% 休業・退職者がいた事業所
3か月 復職後フォローの重点期間
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うつ病で休職した社員の 復職判定の進め方

主治医の診断書だけに依存せず、産業医意見、職務内容、合理的配慮、安全配慮義務、個人情報保護、休職満了処理をつないで判断します。

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うつ病で休職した社員の 復職判定の進め方
主治医の診断書だけに依存せず、産業医意見、職務内容、合理的配慮、安全配慮義務、個人情報保護、休職満了処理をつないで判断します。
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  • うつ病で休職した社員の 復職判定の進め方
  • 主治医の診断書だけに依存せず、産業医意見、職務内容、合理的配慮、安全配慮義務、個人情報保護、休職満了処理をつないで判断します。

POINT 1

  • うつ病で休職した社員の復職判定の全体像
  • 主治医診断書、産業医意見、職務内容、合理的配慮、記録化を一体で整理します。
  • 横棒が長いほど該当事業所の割合が高く、休職者対応が例外ではなく通常の労務管理課題であることを読み取れます。
  • 休職者対応は例外的な問題ではなく、多くの企業が通常の労務管理として制度化すべき課題です。

POINT 2

  • うつ病で休職した社員の復職判定で最初に整理する結論
  • 復職可否は二分法ではなく、資料、配慮、職場受入れ、記録化の総合判断です。
  • 左から判断項目、実務上の意味、見落とした場合の影響を読み、会社の判断過程に不足がないか確認してください。
  • 復職判定の実務上の結論は、次のように整理できます。
  • 復職判定は「本人に優しくするか、会社を守るか」の二択ではありません。

POINT 3

  • うつ病で休職した社員の復職判定で使う用語
  • 休職、復職判定、合理的配慮、安全配慮義務を同じ言葉として扱わないことが重要です。
  • 復職判定
  • 主治医と産業医
  • 安全配慮と健康情報

POINT 4

  • うつ病で休職した社員の復職判定を企業法務から見る基本構造
  • 会社は医学的診断ではなく、雇用上の就業可否を説明可能に判断します。
  • 3.1 会社は医学的診断をするのではなく、雇用上の就業可否を判断する
  • 3.2 復職判定は、就業規則、個別契約、実際の職務で結論が変わる
  • 3.3「復職可」の診断書だけでは足りない

POINT 5

  • うつ病で休職した社員の復職判定に関わる法令上の論点
  • 安全配慮義務
  • 復職直後の残業、業務量、上司対応、再発兆候の把握が問題になります。
  • 業務上疾病と解雇制限
  • 長時間労働やハラスメントが背景にある場合、私傷病として機械的に処理するのは危険です。

POINT 6

  • うつ病で休職した社員の復職判定に関する主要裁判例
  • 1. 他業務への配置可能性:職務限定の有無、会社規模、配置転換実績などから現実的な他業務を検討します。
  • 2. 精神的不調と欠勤:欠勤を直ちに懲戒や退職処分へ進めず、医学的確認や休職等を検討します。
  • 3. 申告が乏しい場合の配慮:会社が把握し得る兆候がある場合、プライバシーに配慮しながら健康確保措置を講じます。
  • 4. 過度な復職条件:健康時と完全に同じ状態を暗黙の復職条件にしないことが重要です。

POINT 7

  • うつ病で休職した社員の復職判定の全体手順
  • 1. 休職開始と説明:休職発令、連絡方法、給与、診断書、復職手続を説明します。
  • 2. 復職希望と診断書:本人の申出、主治医診断書、業務情報、配慮事項を整理します。
  • 3. 産業医面談と社内判断:本人面談、産業医意見、業務遂行能力、配慮可能性を確認します。
  • 4. プランと復職後確認:復職支援プラン、決定通知、定期面談、条件見直しを行います。
  • 5. 通常勤務へ移行:勤務状況と健康状態を確認し、段階的に制限解除を検討します。
  • 6. 再調整・再判定:業務負荷、面談、受診勧奨、休職継続や再判定を検討します。

POINT 8

  • うつ病で休職した社員の復職判定に備える規程と体制
  • 休職者が出る前に、規程、委員会、外部資源、書式を整備します。
  • 7.1 休職規程の必須項目
  • 7.2 復職判定委員会を置く場合の設計
  • 7.3 中小企業の体制

まとめ

  • うつ病で休職した社員の 復職判定の進め方
  • うつ病で休職した社員の復職判定の全体像:主治医診断書、産業医意見、職務内容、合理的配慮、記録化を一体で整理します。
  • うつ病で休職した社員の復職判定で最初に整理する結論:復職可否は二分法ではなく、資料、配慮、職場受入れ、記録化の総合判断です。
  • うつ病で休職した社員の復職判定で使う用語:休職、復職判定、合理的配慮、安全配慮義務を同じ言葉として扱わないことが重要です。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

うつ病で休職した社員の復職判定の全体像

主治医診断書、産業医意見、職務内容、合理的配慮、記録化を一体で整理します。

次の割合の横棒グラフは、令和6年労働安全衛生調査で示されたメンタルヘルス不調による休業・退職のある事業所割合を比較したものです。横棒が長いほど該当事業所の割合が高く、休職者対応が例外ではなく通常の労務管理課題であることを読み取れます。

休業・退職あり
12.8%
1か月以上休業あり
10.2%
厚生労働省の令和6年労働安全衛生調査に基づく割合です。

うつ病で休職した社員の復職判定の進め方で最も重要なのは、「主治医が復職可能と書いたから復職させる」「会社が不安だから復職を拒む」という単純な二分法を避けることです。企業は、主治医の医学的意見を尊重しつつ、産業医等の意見、本人の回復状況、実際の職務に必要な業務遂行能力、職場側の受入体制、合理的配慮の可否、安全配慮義務、個人情報保護、就業規則上の休職満了処理を総合的に検討しなければなりません。

厚生労働省は、心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援について、休業開始から休業中のケア、主治医による職場復帰可能の判断、職場復帰可否の判断と職場復帰支援プランの作成、最終的な職場復帰の決定、復帰後のフォローアップという5つの流れを示しています。 復職判定は、この5段階を「形式的な書類回収」ではなく、「会社が説明可能な判断をするための証拠化されたプロセス」として運用することが要点です。

令和6年労働安全衛生調査では、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者または退職した労働者がいた事業所割合は12.8%、連続1か月以上休業した労働者がいた事業所割合は10.2%とされています。 休職者対応は例外的な問題ではなく、多くの企業が通常の労務管理として制度化すべき課題です。

Section 01

うつ病で休職した社員の復職判定で最初に整理する結論

復職可否は二分法ではなく、資料、配慮、職場受入れ、記録化の総合判断です。

次の比較表は、復職判定で確認すべき項目と、対応が不十分な場合のリスクを整理したものです。左から判断項目、実務上の意味、見落とした場合の影響を読み、会社の判断過程に不足がないか確認してください。

復職判定の実務上の結論は、次のように整理できます。

以下の比較表は、判断項目、実務上の意味、不十分な対応のリスクの関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

判断項目実務上の意味不十分な対応のリスク
就業規則の確認休職事由、休職期間、延長、復職申出、診断書提出、会社指定医面談、休職満了退職の規定を確認する規程根拠のない資料要求、恣意的判断、不利益変更、無効な退職扱い
主治医診断書の取得治療上の回復状況と就業上の配慮事項を確認する「復職可」の一語だけで復職させ、再発や事故を招く
業務情報の整理実際の職務、労働時間、責任、対人負荷、危険業務、出張、残業などを具体化する主治医や産業医が職務を知らないまま抽象的意見を出す
産業医等の意見主治医意見と職場実態を接続し、就業上の措置を助言してもらう医学的判断と人事判断の混同、説明不能な復職拒否
合理的配慮の検討障害者雇用促進法上の義務や安全配慮義務との関係で、業務軽減、時短、配置、通院配慮等を検討する差別的取扱い、配慮義務違反、紛争化
復職支援プラン復職日、業務範囲、勤務時間、残業禁止期間、面談頻度、評価時点、情報共有範囲を定める現場任せ、負荷の急増、再休職、管理職の過剰介入
記録化面談記録、産業医意見、会社判断、本人説明、同意、通知を保存する後日紛争時に判断過程を立証できない

復職判定は「本人に優しくするか、会社を守るか」の二択ではありません。適切な復職判定は、本人の健康回復、職場の安全、業務運営、法的安定性を同時に守るための手続です。

Section 02

うつ病で休職した社員の復職判定で使う用語

休職、復職判定、合理的配慮、安全配慮義務を同じ言葉として扱わないことが重要です。

次の用語一覧は、復職判定で混同しやすい概念を整理したものです。言葉の意味を分けて読むことで、医療判断、人事判断、法律上の義務、個人情報保護の境目を把握できます。

TERM 1

復職判定

休職事由の消滅や就業可能性を確認し、会社としての復職可否や条件を決める手続です。

TERM 2

主治医と産業医

主治医は治療経過、産業医は職場実態を踏まえた就業上の措置を主に見ます。

TERM 3

安全配慮と健康情報

再発や事故を防ぐ配慮と、要配慮個人情報の共有範囲を同時に管理します。

2.1 うつ病

うつ病は、持続的な抑うつ気分、興味や喜びの低下、疲労感、睡眠障害、食欲の変化、集中困難、自責感、希死念慮などがみられ得る気分障害です。国立精神・神経医療研究センターの情報サイトも、うつ病では休養、薬物療法、精神療法、軽い有酸素運動などが治療上検討されると説明しています。 ただし、企業は診断名そのものを評価する機関ではありません。企業が判断すべき中心は、診断名ではなく「安全に、安定して、契約上予定された職務に従事できる状態か」です。

2.2 休職

休職とは、労働契約を終了させずに、一定期間、労務提供義務を免除または停止する社内制度です。日本の労働法上、私傷病休職は法律で一律に義務付けられた制度ではなく、就業規則、雇用契約、労働協約、社内規程、過去の運用によって内容が定まります。したがって、復職判定の第一歩は、必ず当該会社の就業規則を読むことです。

2.3 復職判定

復職判定とは、休職者が休職事由の消滅または就業可能な状態に至ったかを確認し、会社として復職を認めるか、条件付きで認めるか、休職継続や休職期間満了処理を検討するかを決定する手続です。医学的評価、人事労務判断、法的判断が重なりますが、最終的な雇用上の判断主体は会社です。ただし、会社は医学的専門性を持たないため、主治医、産業医、必要に応じて専門医の意見を踏まえなければ、判断の合理性を説明しにくくなります。

2.4 主治医と産業医

主治医は、本人の治療を担当する医師です。本人の症状、治療経過、生活上の回復度を把握しています。一方、産業医は、職場環境、業務内容、労働時間、危険要因、会社の安全衛生体制を踏まえ、就業上の措置について意見を述べる役割を担います。厚生労働省の「こころの耳」も、主治医の判断は日常生活上の回復度に基づくことが多く、職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限らないため、産業医等が精査して事業者に意見を述べることが重要だと説明しています。

2.5 治癒、寛解、職場復帰可能

法務実務でいう「治癒」は、医学的に完全に病気が消えたことだけを意味しません。休職制度上は、休職事由が消滅し、少なくとも契約上予定された職務を通常程度遂行できる状態に回復したかが中心になります。うつ病では症状が波状に推移することがあり、完全な無症状でなければ復職不能とするのは過度に厳格となる場合があります。他方で、短時間の外出や日常生活ができるだけで、直ちに通常勤務が可能とまではいえません。

2.6 合理的配慮

雇用分野では、障害者雇用促進法により、事業主は過重な負担とならない範囲で障害者に合理的配慮を提供する義務を負います。厚生労働省は、事業主が障害者に対して合理的配慮を提供することが義務付けられていると説明しています。 うつ病の休職者が常に同法上の障害者に該当するわけではありませんが、症状や職業生活上の制限が長期にわたる場合、合理的配慮の観点を検討すべき場面があります。

2.7 安全配慮義務

労働契約法5条は、使用者が労働者の生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をするものと定めています。 メンタルヘルス不調者の復職では、再発リスク、過重労働、ハラスメント、孤立、睡眠リズムの悪化、危険業務による事故リスクを考慮することが、安全配慮義務の実務内容になります。

2.8 健康情報と要配慮個人情報

個人情報保護委員会のガイドラインでは、病歴、精神障害があることを特定させる情報、健康診断やストレスチェックの結果、医師等による指導、診療、調剤の情報などが要配慮個人情報に該当し得ると整理されています。 復職判定では、病名、診断書、服薬、通院、主治医意見、産業医意見を扱うため、収集目的、共有範囲、保存方法、アクセス権限を明確にする必要があります。

Section 04

うつ病で休職した社員の復職判定に関わる法令上の論点

労契法、労安衛法、労基法、障害者雇用促進法、個人情報保護を接続します。

次の要素一覧は、復職判定で特に問題になりやすい法令上の論点を整理したものです。安全配慮、業務上疾病、合理的配慮、健康情報のどこにリスクがあるかを読み取ってください。

安全配慮義務

復職直後の残業、業務量、上司対応、再発兆候の把握が問題になります。

業務上疾病と解雇制限

長時間労働やハラスメントが背景にある場合、私傷病として機械的に処理するのは危険です。

合理的配慮と個人情報

業務軽減や通院配慮を検討しつつ、病名や治療内容の共有は必要最小限にします。

4.1 労働契約法5条と安全配慮義務

復職後に本人の病状が再燃した場合、会社が直ちに責任を負うわけではありません。しかし、復職時点で不安定な状態が明らかであった、産業医が就業制限を勧めていた、上司が過重な残業を命じた、ハラスメントの再発防止をしなかった、といった事情があると、安全配慮義務違反が問題となります。

安全配慮義務の実務的内容は、次のように具体化されます。

以下の比較表は、場面、安全配慮義務上の確認事項の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

場面安全配慮義務上の確認事項
復職前主治医診断書、産業医意見、業務内容、勤務時間、職場要因を確認する
復職直後残業禁止、業務量軽減、面談、上司への必要最小限の情報共有を行う
配置発症要因となった部署、上司、顧客、夜勤、危険作業への復帰可否を検討する
管理職対応過剰な叱責、孤立、特別扱いの漏えいを防ぐ
悪化兆候欠勤、遅刻、ミス、表情変化、長時間労働、相談内容の変化を把握する
再休職早期受診勧奨、就業制限、休職命令、記録化を検討する

4.2 労働安全衛生法と産業保健

労働安全衛生法は、労働者の健康確保に関する事業者の義務を定めています。産業医、健康診断、長時間労働者や高ストレス者への面接指導、ストレスチェックなどは、メンタルヘルス不調の予防、早期発見、復職後フォローと密接に関係します。厚生労働省は、医師が長時間労働者または高ストレス者に面接指導を行い、事業者が就業上の措置を適切に講じられるよう意見を述べることを説明しています。

復職判定そのものについて、すべての企業に一律の「復職判定委員会設置義務」があるわけではありません。しかし、50人以上の事業場で産業医がいる場合は、産業医意見を得ないまま復職可否を決めることは、実務上の説明可能性を弱めます。50人未満の事業場でも、地域産業保健センターなどを利用して医師の助言を得ることが考えられます。労働者健康安全機構は、地域産業保健センターが労働者数50人未満の小規模事業場の事業者や労働者に対して産業保健サービスを原則無料で提供していると説明しています。

4.3 労働基準法19条と業務上疾病

うつ病が業務上の疾病、すなわち労災に該当する可能性がある場合は、私傷病休職として単純に休職期間満了退職や解雇を進めることは非常に危険です。労働基準法19条は、業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業する期間およびその後30日間について、原則として解雇を制限しています。

精神障害の労災認定基準は2023年9月に改正され、業務による心理的負荷評価表の見直し、精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲の見直しなどが公表されています。 復職判定の場面でも、過重労働、パワーハラスメント、カスタマーハラスメント、重大な業務上失敗、配置転換、過大な責任付与などが休職の背景にある場合、労災可能性を軽視してはいけません。

4.4 障害者雇用促進法と合理的配慮

うつ病による休職者が復職する際、症状が長期にわたり職業生活上の制限を生じさせている場合、障害者雇用促進法上の合理的配慮を検討すべきことがあります。合理的配慮とは、障害のある労働者が能力を発揮し、均等な待遇を確保するうえで支障となる事情を改善するため、過重な負担とならない範囲で講じる必要な措置です。

復職場面で考えられる配慮には、次のようなものがあります。

以下の比較表は、配慮の類型、具体例、注意点の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

配慮の類型具体例注意点
労働時間短時間勤務、時差出勤、残業禁止、深夜勤務免除期間、更新条件、賃金処理を明確にする
業務量担当件数削減、締切緩和、マルチタスク回避恒久的に主要業務を免除する場合は契約内容との関係を確認する
業務内容高ストレス顧客対応の一時免除、危険作業の制限配置可能性と安全性を同時に検討する
コミュニケーション指示を文書化、相談窓口固定、面談頻度設定本人の病名を周囲に共有しすぎない
通院通院時間確保、休暇利用、勤務調整不公平感が出ないよう制度化する
職場環境ハラスメント行為者との接触回避、席配置、在宅勤務本人希望だけでなく業務上の合理性を検討する

ただし、合理的配慮は「本人が希望した配慮をすべて実施する義務」ではありません。本人の申出、医学的必要性、業務上の必要性、会社の規模、代替要員、費用、他の労働者への影響、安全性を踏まえて、対話的に決めることが重要です。

4.5 個人情報保護と職場内共有

復職判定で扱う情報は、極めて機微性が高い情報です。人事労務、法務、産業医、産業保健スタッフ、直属上司、上位管理職が関与しますが、全員が病名や治療内容を知る必要はありません。

共有範囲は、次のように分けるべきです。

以下の比較表は、共有先、共有してよい情報の例、原則として共有を避ける情報の例の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

共有先共有してよい情報の例原則として共有を避ける情報の例
人事労務診断書、休職期間、復職条件、配慮事項、面談記録必要性の乏しい詳細な治療内容
産業医主治医意見、業務情報、勤務実績、復職希望、症状経過本人同意なく主治医から取得した詳細情報
直属上司勤務時間制限、業務量、面談予定、注意すべき業務上の配慮病名、服薬名、家庭事情、詳細な診療情報
同僚業務分担上必要な範囲の説明うつ病であること、休職理由、通院状況
法務、外部弁護士紛争予防や判断のため必要な資料不必要に広範な医療情報の複製

実務では、「上司が配慮するためには病名を知る必要がある」と考えがちです。しかし、多くの場合、上司に必要なのは診断名ではなく、残業禁止、業務量、声かけの方法、面談頻度、避けるべき業務負荷などの就業上の配慮事項です。

Section 05

うつ病で休職した社員の復職判定に関する主要裁判例

判例から、配置可能性、健康管理、過度な復職条件の避け方を読み取ります。

次の時系列は、復職判定で参照される主要裁判例の示唆を整理したものです。各事案の結論そのものより、会社がどの検討を尽くすべきかを読み取ることが重要です。

片山組事件

他業務への配置可能性

職務限定の有無、会社規模、配置転換実績などから現実的な他業務を検討します。

日本HP事件

精神的不調と欠勤

欠勤を直ちに懲戒や退職処分へ進めず、医学的確認や休職等を検討します。

東芝事件

申告が乏しい場合の配慮

会社が把握し得る兆候がある場合、プライバシーに配慮しながら健康確保措置を講じます。

アメリカン・エキスプレス事件

過度な復職条件

健康時と完全に同じ状態を暗黙の復職条件にしないことが重要です。

5.1 片山組事件 ― 他業務への配置可能性

片山組事件では、疾病により現に命じられた業務を十分にできない労働者について、職種や業務内容を特定せずに雇用契約を締結していた場合、能力、経験、地位、企業規模、業種、配置や異動の実情などに照らして、現実的に配置可能な他の業務で労務提供できるかを検討すべきとされました。

この考え方は、うつ病休職者の復職判定にも重要です。会社は、「休職直前の部署で100%働けないから復職不可」と機械的に判断するのではなく、労働契約上の職務限定の有無、会社規模、過去の配置転換実績、短期的配慮の可能性を確認する必要があります。

ただし、片山組事件は「会社は常に別職務を作らなければならない」という判例ではありません。現実的に配置可能な業務があるか、本人がその業務を提供できるか、契約上予定された職務範囲かを検討するという意味です。

5.2 日本HP事件 ― 精神的不調と欠勤を直ちに懲戒にしない

日本HP事件では、精神的な不調のために欠勤を続けた労働者に対し、会社が直ちに無断欠勤を理由として諭旨退職処分をしたことが問題となりました。最高裁は、精神科医による健康診断を実施するなどしたうえで、必要に応じて治療を勧め、休職等を検討し、その後の経過を見る対応をとるべきであったと判断しています。

復職判定の文脈では、次の示唆があります。

  1. メンタルヘルス不調が疑われる欠勤や不安定勤務を、直ちに怠慢や規律違反と断定しない
  2. 会社の就業規則に健康診断命令や休職命令の根拠がある場合は、手続を踏む
  3. 本人が不合理に見える言動をしても、健康管理上の対応を先行させる
  4. 懲戒や退職扱いに進む前に、医学的確認と休職制度の検討を尽くす

5.3 東芝事件 ― 本人が詳細なメンタルヘルス情報を申告しなくても会社の配慮義務は残る

東芝事件では、過重な業務によりうつ病を発症、悪化させた労働者について、労働者が神経科への通院や病名等を会社に申告しなかったことを重視して過失相殺できるかが争われました。最高裁は、労働者にとってメンタルヘルス情報はプライバシーに属し、人事考課等に影響し得るため積極的申告が期待しにくいことを前提に、会社は体調悪化が看取される場合には業務軽減などの配慮に努める必要があると判示しました。

復職判定での教訓は明確です。会社は「本人が詳細に言わなかったから知らなかった」と安易に主張できません。長時間労働、欠勤、遅刻、表情変化、業務軽減申出、健康診断の自覚症状、上司への相談など、会社が把握し得る兆候がある場合には、プライバシーに配慮しながら健康確保措置を講じる必要があります。

5.4 アメリカン・エキスプレス事件 ― 健康時と同様という過度な復職条件

アメリカン・エキスプレス事件では、業務外疾病による療養休職期間満了時の解雇が争われ、東京地裁は解雇無効としました。判例要旨では、従来規定されていない「健康時と同様」の業務遂行可能性を復職条件として追加することは、労働条件の不利益変更に当たると整理されています。

復職判定で避けるべきなのは、「健康時と完全に同じ」「一切配慮不要」「再発可能性ゼロ」という条件を暗黙の復職基準にすることです。復職直後は、業務遂行能力が完全に改善していないことも考慮し、職場の受入制度や体制と組み合わせながら総合判断する必要があります。厚生労働省の職場復帰支援資料も、復職可否は個々のケースに応じた総合判断であり、業務遂行能力が完全に改善していないことも考慮すると説明しています。

Section 06

うつ病で休職した社員の復職判定の全体手順

厚生労働省の5段階を、会社の証拠化された手続に置き換えます。

次の判断の流れは、休職開始から通常勤務への移行または再判定までの順番を示しています。上から順に資料収集、医学的意見、会社判断、復職後フォローへ進むため、どの段階の記録が欠けているかを確認できます。

復職判定の基本手順

休職開始と説明

休職発令、連絡方法、給与、診断書、復職手続を説明します。

復職希望と診断書

本人の申出、主治医診断書、業務情報、配慮事項を整理します。

産業医面談と社内判断

本人面談、産業医意見、業務遂行能力、配慮可能性を確認します。

プランと復職後確認

復職支援プラン、決定通知、定期面談、条件見直しを行います。

安定
通常勤務へ移行

勤務状況と健康状態を確認し、段階的に制限解除を検討します。

不安定
再調整・再判定

業務負荷、面談、受診勧奨、休職継続や再判定を検討します。

うつ病で休職した社員の復職判定の進め方は、次の順序で設計すると安定します。

厚生労働省の5ステップに忠実に対応させると、次のようになります。

以下の比較表は、厚労省の流れ、会社実務での具体化の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

厚労省の流れ会社実務での具体化
第1ステップ ― 病気休業開始及び休業中のケア診断書受領、休職発令、手続説明、連絡方法、給与、傷病手当金、復職手続の案内
第2ステップ ― 主治医による職場復帰可能の判断復職希望申出、主治医診断書、業務情報提供、就業配慮事項の確認
第3ステップ ― 職場復帰可否の判断及び職場復帰支援プランの作成本人面談、産業医面談、業務遂行能力評価、配慮可能性検討、プラン案作成
第4ステップ ― 最終的な職場復帰の決定会社決裁、復職日決定、条件通知、現場説明、書面化
第5ステップ ― 職場復帰後のフォローアップ定期面談、産業医フォロー、業務負荷調整、プラン見直し、再発兆候対応
Section 07

うつ病で休職した社員の復職判定に備える規程と体制

休職者が出る前に、規程、委員会、外部資源、書式を整備します。

7.1 休職規程の必須項目

復職判定は、社員が休職してから制度を作るのでは遅すぎます。就業規則または休職規程には、少なくとも次の事項を明記すべきです。

以下の比較表は、項目、規程で定めるべき内容の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

項目規程で定めるべき内容
休職事由私傷病により一定期間労務提供できない場合など
休職期間勤続年数別、同一傷病または関連傷病の通算、延長可否
休職開始手続診断書提出、会社の休職命令、本人への通知
休職中の義務療養専念、定期報告、連絡先変更通知、会社指定資料の提出
復職申出申出期限、診断書、主治医意見書、復職面談
会社指定医または産業医面談命令、資料提供、受診費用、拒否時の取扱い
復職判定判断者、判断資料、職場復帰支援プラン、条件付き復職
試し出勤制度の有無、賃金、労災、指揮命令、期間
休職期間満了復職不可時の退職または解雇の扱い、通知方法
再休職同一または関連傷病の通算、復職後一定期間内の再発時の扱い
健康情報利用目的、共有範囲、保管、廃棄、同意取得

7.2 復職判定委員会を置く場合の設計

復職判定委員会は法定必置ではありませんが、中規模以上の企業では有効です。ただし、委員会名だけを作っても、判断責任と権限が曖昧だと逆効果です。

設計上のポイントは次のとおりです。

  1. 委員は、人事労務、産業医、産業保健スタッフ、本人所属部門、人事権者、法務またはコンプライアンス担当で構成する
  2. 本人の病名や詳細な治療情報を扱う委員を最小限にする
  3. 産業医は医学的意見を述べる役割であり、人事決裁者そのものではないことを明確にする
  4. 委員会の結論は「復職可否」と「復職条件」を分けて記録する
  5. 緊急案件や休職満了直前案件に備えて、臨時開催ルールを設ける
  6. 身体疾患と精神疾患で不合理に異なる手続を設けない

厚生労働省の職場復帰支援資料も、復職判定委員会が設置されている場合には、職場復帰支援の手続を組織的に行える利点がある一方で、責任の所在や迅速な開催などを検討すべきと説明しています。

7.3 中小企業の体制

産業医選任義務のない小規模事業場では、復職判定が人事担当者や経営者の経験に依存しがちです。しかし、医学的評価を会社単独で行うのは危険です。50人未満の事業場では、次の外部資源を組み合わせることが実務的です。

  1. 地域産業保健センター
  2. 産業保健総合支援センター
  3. 顧問社会保険労務士
  4. 労務に強い弁護士
  5. 本人同意に基づく主治医照会
  6. 外部産業医サービス
  7. 障害者職業センターやリワーク支援機関

小規模企業ほど、属人的判断を避けるために、書式とチェックリストを整備する必要があります。

Section 08

うつ病で休職した社員の復職判定は休職開始時から始まる

休職開始時の説明、連絡頻度、職場への共有範囲が復職時の土台になります。

8.1 休職開始時に会社がすべきこと

休職開始時は、復職判定の土台を作る段階です。ここで説明不足や記録不足があると、復職時に紛争化しやすくなります。

休職開始時には、次の事項を本人に説明します。

以下の比較表は、項目、説明内容の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

項目説明内容
休職発令の根拠就業規則の該当条項、休職開始日、休職満了予定日
休職中の給与無給、有給、傷病手当金、社会保険料、住民税の扱い
連絡方法担当窓口、頻度、電話またはメール、緊急連絡先
診断書提出時期、記載事項、費用負担、更新の要否
復職手続復職希望申出、主治医診断書、産業医面談、会社判断
個人情報健康情報の利用目的、共有範囲、保管方法
会社貸与物PC、スマートフォン、ID、機密情報の扱い
職場連絡上司や同僚への説明範囲、本人の希望確認
休職中の副業療養専念義務との関係、就業規則上の副業規定

8.2 本人への連絡は「放置」と「過干渉」の中間を取る

休職中の本人にまったく連絡しないと、復職手続や会社との信頼関係が失われます。他方で、頻繁な電話や業務に関する問い合わせは療養を妨げます。休職開始時に連絡頻度を定め、必要最小限の情報提供に絞ることが望ましいです。

推奨される連絡内容は次のとおりです。

  1. 体調の詳細を詮索しない
  2. 会社手続、給与、社会保険、診断書期限など事務事項を中心にする
  3. 復職を急かす表現を避ける
  4. 退職を示唆する表現を避ける
  5. 連絡記録を残す
  6. 連絡担当者を原則として固定する

8.3 職場への説明

本人の休職理由を同僚に説明する場合、原則として本人の同意と必要性が必要です。「体調不良により当面休職します」「業務分担は人事と部門で調整します」といった説明にとどめ、うつ病、精神科通院、服薬、家庭事情などを共有してはいけません。

直属上司には、勤務管理上必要な範囲で情報を共有します。たとえば、休職期間、業務引継ぎ、復職時の配慮予定、本人への直接連絡禁止などです。病名の共有は、必要性を慎重に判断します。

Section 09

うつ病で休職した社員の復職判定で主治医意見を扱う方法

復職可の一語ではなく、業務情報を踏まえた就業上の配慮を確認します。

9.1 復職希望の申出を受けたときの初動

本人から「復職したい」と連絡があったら、会社は次の順序で動きます。

  1. 復職希望日を確認する
  2. 主治医による診断書または意見書の提出を依頼する
  3. 診断書に就業上の配慮事項を具体的に記載してもらうよう案内する
  4. 産業医面談または会社指定医面談の日程を調整する
  5. 本人の同意を得て、必要に応じて主治医への情報提供依頼または照会を行う
  6. 休職満了日が近い場合は、期限管理を明確にする

この時点で「主治医がよいと言えば戻れます」と断言してはいけません。同時に、「産業医がだめと言えば絶対に戻れません」とも断言すべきではありません。正しくは、「主治医の診断書、産業医等の意見、業務内容、職場で可能な配慮を踏まえて会社が判断します」です。

9.2 主治医診断書に求めるべき記載事項

診断書は「復職可」だけでは不十分です。本人に依頼する際は、できれば会社の定型書式を渡し、次の事項を記載してもらいます。

以下の比較表は、項目、記載例の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

項目記載例
診断名うつ病、抑うつ状態など。ただし会社内共有は制限する
治療経過症状安定、通院継続、服薬状況の概要
就業可能性通常勤務可、段階的復帰が望ましい、短時間から開始など
勤務時間1日何時間程度から開始可能か、残業可否、深夜勤務可否
業務負荷対人折衝、出張、責任業務、締切業務、危険業務の可否
通院通院頻度、勤務調整の必要性
配慮期間1か月、3か月など見直し時点
再発兆候睡眠障害、欠勤増加、焦燥など一般的注意点
主治医照会会社または産業医からの照会可否

9.3 主治医に業務情報を伝える

主治医が職場の実態を知らなければ、診断書は抽象的になります。会社は、本人の同意を得たうえで、主治医に次の業務情報を提供することが望ましいです。

  1. 所定労働時間、休憩時間、残業の有無
  2. 通勤時間、通勤手段
  3. 主要業務、1日の業務の流れ
  4. 対人折衝、顧客対応、クレーム対応の頻度
  5. 締切、ノルマ、成果責任
  6. 管理職責任、部下管理
  7. 夜勤、出張、休日勤務
  8. 危険作業、運転、高所作業、機械操作
  9. 復職直後に会社が提供可能な配慮案

この情報提供は、本人に不利な情報を一方的に主治医へ伝えるためではありません。主治医が就業可否を現実的に判断できるようにするためです。

Section 10

うつ病で休職した社員の復職判定で産業医面談と情報収集を行う

医学情報、本人情報、業務情報、職場情報、法務情報を分けて集めます。

10.1 復職可否判断で収集すべき情報

復職判定に必要な情報は、医学情報、本人情報、業務情報、職場情報、法務情報に分けられます。

以下の比較表は、情報区分、具体例、収集主体の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

情報区分具体例収集主体
医学情報主治医診断書、主治医意見、産業医意見、通院状況人事、産業医
本人情報復職意思、生活リズム、通勤練習、体力、希望配慮人事、産業医
業務情報職務内容、繁忙期、残業、対人負荷、危険業務所属部門、人事
職場情報上司、同僚、ハラスメント有無、配置可能性所属部門、人事、法務
法務情報就業規則、休職満了日、過去運用、労災可能性、合理的配慮法務、弁護士、社労士

10.2 本人面談で確認する事項

本人面談では、病状の詳細を詮索するより、復職に必要な就業上の事項を確認します。

質問例は次のとおりです。

  1. 復職を希望する理由と時期
  2. 主治医から受けている就業上の指示
  3. 起床、就寝、食事、外出、通勤練習の状況
  4. 連続して集中できる時間
  5. 仕事上不安に感じる業務
  6. 避けたい業務ではなく、医学的または安全上必要な配慮
  7. 通院頻度と勤務調整の必要性
  8. 服薬による眠気等が業務に影響するか
  9. 復職後に相談する窓口の希望
  10. 上司や同僚に共有してよい情報の範囲
  11. 発症または悪化に職場要因が関係していたか
  12. ハラスメント、過重労働、顧客トラブル等の再発防止策

面談では、本人に「復職したいなら通常勤務できると言ってください」と誘導してはいけません。また、「軽減勤務を求めるなら復職できません」と圧力をかけることも避けるべきです。

10.3 産業医面談の位置づけ

産業医面談の目的は、本人を選別することではなく、本人の健康と職場の安全を両立するために、就業上の措置を検討することです。

産業医には、次の資料を事前提供します。

  1. 主治医診断書
  2. 本人の復職希望書
  3. 業務内容説明書
  4. 休職前の勤務状況、残業、欠勤状況
  5. 復職後に想定する業務と配慮案
  6. 会社の休職規程、復職判定基準
  7. 職場要因に関する情報

産業医意見書には、次の区分を設けると実務上使いやすくなります。

以下の比較表は、就業区分、意味の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

就業区分意味
通常勤務可特段の制限なく復職可能
条件付き勤務可時短、残業禁止、業務軽減、通院配慮などを条件に復職可能
復職時期尚早現時点では就業不可。再判定時期を設定
要追加情報主治医照会、業務情報追加、リワーク評価等が必要
要休業継続勤務を休む必要がある

10.4 主治医と産業医の意見が食い違う場合

主治医は「復職可」、産業医は「時期尚早」とすることがあります。逆に、主治医は慎重でも、産業医が限定的復職を可能と見る場合もあります。

意見が食い違った場合の対応は次の順序です。

  1. どの前提情報が違うのかを確認する
  2. 主治医に業務情報が提供されていたか確認する
  3. 本人同意を得て、産業医から主治医へ照会する
  4. 復職支援プラン案を示して再意見を求める
  5. 期限を区切って再判定する
  6. 休職満了が迫る場合は、法務と相談して判断期限を明確化する

会社は、都合のよい医師意見だけを採用してはいけません。採用しなかった意見がある場合は、なぜ採用しなかったのかを記録します。

10.5 業務遂行能力の評価項目

うつ病休職者の復職判定では、次の項目を評価します。ただし、これらは医療診断ではなく、就業上の評価項目です。

以下の比較表は、評価項目、確認内容の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

評価項目確認内容
生活リズム所定始業時刻に間に合う起床、就寝、食事が安定しているか
通勤耐性実際の通勤経路で通勤できるか、混雑や長距離が負荷にならないか
勤務耐性連続勤務時間、週5日勤務、休憩後の回復、疲労の翌日持ち越し
集中力文章読解、PC作業、会議参加、ミスの頻度
判断力緊急対応、顧客判断、金銭や安全に関する判断の可否
対人対応上司、同僚、顧客との通常コミュニケーション
ストレス対処不調時の相談、休憩、受診、業務調整依頼ができるか
再発兆候の認識睡眠障害、欠勤、焦燥、食欲低下などに本人が気づけるか
安全性運転、危険作業、機械操作、高所作業、夜勤の可否
配慮の必要性どの配慮がどの期間必要か、医学的根拠があるか

ここでの要点は、「健康時と完全に同じか」ではなく、「就業上の措置を組み合わせれば安全に通常程度の職務遂行へ戻せるか」です。

Section 11

うつ病で休職した社員の職場復帰支援プランの作り方

条件、期限、見直し時点を明確にし、永久の軽減勤務にしない設計が重要です。

次の時系列は、復職支援プランを段階的に見直す考え方を示しています。1か月、3か月、6か月の区切りを見ることで、軽減勤務を固定化せず、通常勤務への移行や合理的配慮への接続を判断できます。

復職日

条件を明確化

所属、勤務時間、残業、業務内容、面談頻度、情報共有範囲を書面化します。

1か月後

初期負荷を確認

疲労、欠勤、通勤、業務ミス、相談状況を確認し、条件継続や微修正を検討します。

3か月後

段階的な移行を検討

産業医意見と勤務実績を踏まえ、通常勤務への移行、延長、再調整を判断します。

6か月後

制度終了または継続配慮

安定性を確認し、一時的支援の終了または合理的配慮への接続を検討します。

11.1 プランに入れるべき項目

職場復帰支援プランは、曖昧な配慮を具体的な運用に変える文書です。次の項目を入れます。

以下の比較表は、項目、記載例の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

項目記載例
復職日2026年7月1日
復職先原部署、別部署、同一職種の別チームなど
勤務時間1か月目は9時30分から16時30分、2か月目以降は再評価
残業復職後3か月は原則禁止
業務内容定型業務、既存顧客対応、緊急案件除外など
責任範囲管理職業務を一時的に外す、決裁権限を制限するなど
通院配慮月2回の通院に年休または時間単位休暇を利用
面談週1回上司、月1回人事、月1回産業医
情報共有上司には勤務制限と配慮事項のみ共有
評価時点1か月後、3か月後、6か月後に見直し
悪化時対応遅刻欠勤増加、睡眠悪化、本人申出時に産業医面談
期限原則3か月、必要に応じて延長判断

11.2 プランは「永久の軽減勤務」ではない

復職支援プランは、通常勤務への橋渡しです。期間、評価時点、解除条件を定めないまま軽減勤務を続けると、職場の負担、賃金処理、評価、他社員との公平性、本人のキャリア形成に問題が生じます。

一方で、一定期間の配慮が必要なのに、最初から通常勤務を求めると再休職リスクが高まります。実務上は、1か月、3か月、6か月などの区切りを設定し、産業医意見と勤務実績を踏まえて段階的に見直す方法が安定します。

11.3 原職復帰が原則だが例外もある

厚生労働省の職場復帰支援資料は、職場復帰は元の慣れた職場へ復帰させることが原則としつつ、異動等が発症誘因となった場合、職場要因と個人要因の不適合がある場合、危険業務がある場合などには、配置転換や異動の必要性を検討すべきと説明しています。

したがって、復職先は次の観点で検討します。

以下の比較表は、復職先、適する場合、注意点の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

復職先適する場合注意点
原職復帰原職が本人に慣れており、発症要因でない場合原職の負荷を一時的に調整する
原部署内の軽減業務上司や職場環境は維持しつつ業務量を調整できる場合周囲への負荷と本人の評価を調整する
別部署復帰原部署が発症要因、ハラスメント、対人不適合の場合配転命令権、本人同意、職務適性を確認する
別職種現職務に危険性や高負荷がある場合契約上の職務限定、賃金、教育コストを確認する
在宅勤務通勤負荷が大きく、業務上可能な場合孤立、勤怠把握、情報セキュリティに注意する
Section 12

うつ病で休職した社員の復職判定で最終決定を説明する方法

通常復職、条件付き復職、延期、追加情報待ち、復職不可、満了処理を分けます。

12.1 決定パターン

復職判定の結論は、一般に次のいずれかになります。

以下の比較表は、結論、内容、書面化すべき事項の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

結論内容書面化すべき事項
通常復職制限なしで復職復職日、所属、通常勤務開始
条件付き復職就業制限や配慮を付けて復職条件、期間、見直し時点、面談頻度
復職延期休職期間内で療養継続理由、必要資料、再判定日
追加情報待ち主治医照会、再診断、産業医再面談期限、必要資料、本人同意
復職不可休職事由が消滅していない判断理由、規程、今後の手続
休職満了処理就業規則に基づき退職または解雇を検討満了日、根拠条項、異議申出対応

12.2 本人への説明

復職可否は本人の生活に大きな影響を与えるため、説明は丁寧に行う必要があります。特に復職延期や復職不可の場合、次の点を説明します。

  1. 会社が確認した資料
  2. 産業医等の意見の概要
  3. どの業務を前提に判断したか
  4. 会社が検討した配慮案
  5. なぜ現時点で復職困難と判断したか
  6. 再判定の条件や期限
  7. 休職満了日が近い場合の手続
  8. 質問や異議がある場合の窓口

説明文書では、「あなたは働けない」「治っていない」といった断定的表現を避けます。「現時点で、会社が予定する業務内容と産業医意見を踏まえると、復職は時期尚早と判断しました」のように、判断の対象と根拠を明確にします。

12.3 復職通知書の記載例

以下は、条件付き復職の場合の要素例です。実際には会社規程と個別事情に合わせて修正します。

記載例復職決定通知書
当社は、提出された主治医診断書、本人面談、産業医意見、所属部門からの業務情報を踏まえ、下記条件により復職を認めます。
1. 復職日 ― 2026年7月1日
2. 所属 ― 営業企画部 営業支援チーム
3. 勤務時間 ― 復職後1か月は9時30分から16時30分までとし、以後は産業医意見および勤務状況を踏まえて見直す
4. 時間外労働 ― 復職後3か月間は原則禁止
5. 業務内容 ― 定型資料作成、社内調整業務を中心とし、新規顧客対応および緊急クレーム対応は当面除外する
6. 面談 ― 復職後1か月は週1回上司面談、月1回人事面談、必要に応じて産業医面談を実施する
7. 見直し ― 復職後1か月および3か月時点で勤務状況と健康状態を確認し、勤務条件の変更を検討する
8. その他 ― 不調が生じた場合は速やかに上司または人事担当に相談すること
Section 13

うつ病で休職した社員の復職後フォローアップ

復職後3か月を重点期間として、面談、上司教育、業務負荷調整を行います。

13.1 復職後3か月が重要

復職判定は復職日で終わりません。むしろ、復職後のフォローが不十分だと、せっかくの復職判定が機能しません。復職後は、業務負荷が徐々に上がり、本人も「迷惑をかけたくない」と無理をしやすい時期です。

復職後3か月間は、次の観点で観察します。

  1. 遅刻、早退、欠勤の増加
  2. 睡眠不足を示す言動
  3. 業務ミスや判断遅延
  4. 会議や対人対応の疲労
  5. 残業の発生
  6. 休憩が取れているか
  7. 上司への相談ができているか
  8. 通院継続が妨げられていないか
  9. 同僚に過度の負担がかかっていないか
  10. ハラスメントや孤立がないか

13.2 面談の運用

面談は、本人を監視する場ではなく、早期調整の場です。復職直後は、短時間でよいので定期的に行います。

以下の比較表は、時期、面談者、目的の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

時期面談者目的
復職初日人事、上司勤務条件、相談窓口、初日の業務確認
復職1週目上司疲労、業務量、通勤、職場適応
復職2週目から1か月上司、人事業務負荷、休憩、ミス、本人不安
1か月後産業医、人事就業制限継続、変更、解除の検討
3か月後産業医、人事、所属長通常勤務への移行、プラン延長、再調整
6か月後必要に応じて安定性確認、制度終了または合理的配慮への移行

13.3 上司への教育

復職後の成否は、直属上司の対応に大きく左右されます。上司には次の点を教育します。

  1. 病名や治療内容を詮索しない
  2. 配慮事項を守る
  3. 急に業務量を戻さない
  4. 特別扱いを職場で強調しない
  5. 本人を孤立させない
  6. 不調兆候を人事や産業医へ早めに相談する
  7. 叱責や人格否定を避け、業務上の事実に基づいて指導する
  8. 本人から相談された内容を必要範囲を超えて共有しない
  9. 配慮により周囲に負担が出る場合は、部門として業務再配分を行う
  10. 自分だけで抱え込まない
Section 14

うつ病で休職した社員の試し出勤・リワーク・通勤訓練

正式復職前の制度は、目的、賃金、労災、指揮命令、情報共有を規程化します。

14.1 試し出勤の種類

復職前に、試し出勤やリワークを使うことがあります。厚生労働省の職場復帰支援資料も、正式な職場復帰決定前に試し出勤制度を設けると、早い段階で職場復帰の試みを開始でき、休業者の不安を和らげる効果がある一方、処遇、災害時対応、人事労務管理上の位置づけを労使間で十分検討しておく必要があると説明しています。

以下の比較表は、種類、内容、労務管理上の注意点の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

種類内容労務管理上の注意点
通勤訓練職場近くまで通勤するが勤務しない労働時間ではない設計が通常。事故時対応を説明する
模擬出勤会社施設に来るが業務を行わない指揮命令を避け、目的と時間を明確にする
試し勤務軽い業務を実際に行う労働時間、賃金、労災、指揮命令が問題になる
外部リワーク医療機関や支援機関の復職支援プログラム目的、評価資料、会社との情報共有範囲を確認する

14.2 試し出勤制度の規程化

試し出勤を行う場合は、少なくとも次を規程化します。

  1. 対象者
  2. 実施目的
  3. 実施期間
  4. 参加条件
  5. 主治医または産業医意見
  6. 賃金の有無
  7. 労災、通勤災害、傷害保険
  8. 指揮命令の有無
  9. 実施場所
  10. 実施中止事由
  11. 復職判定への利用方法
  12. 個人情報の取扱い

試し出勤で実質的に業務を命じる場合、「リハビリだから無給」とすることは危険です。業務性がある場合は労働時間性、賃金、労災保険の問題が生じます。

Section 15

うつ病で休職した社員の休職期間満了時の判断

満了処理は自動的に安全ではなく、合理的な復職判定手続が必要です。

次の時系列は、休職満了前に動く目安を整理したものです。満了日に近づくほど選択肢が狭くなるため、3か月前から資料、面談、判定、通知を順に進めることを読み取ってください。

満了3か月前

手続を通知

満了日、復職手続、必要書類を本人へ通知します。

満了2か月前

診断書と面談調整

主治医診断書、復職意思、産業医面談日程を確認します。

満了1か月前

配慮案を整理

産業医意見、業務情報、配置可能性、合理的配慮を整理します。

満了2週間前

判定と説明

判定会議、本人説明、追加資料期限を設定します。

満了日まで

結論を通知

復職、休職延長、満了処理のいずれかを通知します。

15.1 休職満了は自動的に安全な処理ではない

就業規則に「休職期間満了時に復職できない場合は自然退職とする」と定めていても、それだけで常に有効になるわけではありません。休職期間満了時点で休職事由が消滅していたか、会社が合理的な復職判定手続を尽くしたか、配置可能な業務や配慮を検討したか、業務上疾病の可能性がないか、差別や合理的配慮違反がないかが問題になります。

15.2 休職満了前の実務スケジュール

休職満了日の直前に初めて復職可否を確認すると、手続が間に合わず紛争化します。目安として、満了3か月前から動くべきです。

以下の比較表は、時期、対応の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

時期対応
満了3か月前本人へ満了日、復職手続、必要書類を通知
満了2か月前主治医診断書、復職意思、産業医面談日程を確認
満了1か月前産業医意見、業務情報、配慮案を整理
満了2週間前復職判定会議、本人説明、追加資料があれば期限設定
満了日まで復職、休職延長、休職満了処理のいずれかを通知

15.3 休職延長を検討すべき場合

就業規則上延長が可能な場合、次のようなケースでは延長を検討することがあります。

  1. 回復傾向が明確で、短期間で復職可能性が高い
  2. 主治医と産業医が、一定期間後の再判定を勧めている
  3. 会社側の主治医照会や産業医面談が遅れた
  4. 業務上疾病やハラスメント調査が未了
  5. 合理的配慮の検討に時間を要する
  6. 過去に同様の延長運用がある

一方で、規程にない延長を場当たり的に認めると、後続事案との公平性が問題になります。延長は、根拠、期間、再判定日、例外性を明記します。

Section 16

うつ病で休職した社員の復職不可・休職満了処理の注意点

復職拒否、退職勧奨、満了処理の境界を慎重に分けます。

次の注意要素一覧は、復職不可や満了処理で紛争化しやすい判断を整理したものです。抽象的な不安ではなく、資料、業務、配慮可能性、規程根拠で説明できるかを確認してください。

一般論による拒否

精神疾患だから危ないという一般論ではなく、具体的業務と安全性を検討する必要があります。

資料確認不足

主治医診断書や産業医面談を省くと、判断過程を説明しにくくなります。

配慮検討不足

短時間勤務、業務軽減、別部署、原因調査などを検討しないまま拒否するとリスクが高まります。

16.1 復職不可判断の根拠

復職不可と判断する場合、次のような根拠が必要です。

  1. 主治医または産業医が就業不可または時期尚早としている
  2. 本人が復職に必要な資料を提出しない
  3. 本人が産業医面談を合理的理由なく拒否する
  4. 生活リズムや通勤、勤務耐性が著しく不安定である
  5. 就業上の措置を講じても安全に勤務できない
  6. 配置可能な業務が現実的に存在しない
  7. 危険業務や対人業務に必要な判断力、安全性が確認できない
  8. 休職期間満了までに休職事由が消滅していない

16.2 やってはいけない復職拒否

次のような復職拒否は、紛争リスクが高いです。

  1. 「精神疾患だから危ない」と一般論で拒否する
  2. 主治医診断書を読まずに拒否する
  3. 産業医面談を実施せずに拒否する
  4. 休職前の部署で完全勤務できないことだけを理由に拒否する
  5. 短時間勤務や業務軽減の可否を検討しない
  6. ハラスメントや過重労働の原因を調査しない
  7. 同種事案と異なる扱いをする
  8. 本人に退職届を書かせるよう圧力をかける
  9. 病名を職場に広める
  10. 休職満了日を誤って処理する

16.3 退職勧奨との境界

復職不可の説明が、実質的に退職強要にならないよう注意します。退職勧奨を行う場合も、本人の自由意思を尊重し、長時間の面談、威圧的発言、繰り返しの説得、家族への無断連絡、退職届の即時作成要求は避けます。

Section 17

うつ病で休職した社員に業務起因性・ハラスメント・労災可能性がある場合

私傷病休職として機械的に扱う前に、原因と再発防止策を確認します。

17.1 私傷病休職として扱う前に原因を確認する

うつ病休職の背景に、長時間労働、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、カスタマーハラスメント、過大なノルマ、配置転換、上司の叱責、重大事故対応などがある場合、会社は私傷病として機械的に処理すべきではありません。

確認すべき事項は次のとおりです。

  1. 発症前6か月程度の労働時間
  2. 休日労働、深夜労働、連続勤務
  3. 業務内容や責任の急増
  4. ハラスメント申告の有無
  5. 顧客トラブルやクレーム対応
  6. 配置転換、昇進、降格、評価の変化
  7. 上司や同僚からの相談記録
  8. 健康診断、ストレスチェック、面接指導の記録
  9. 産業医への相談歴
  10. 労災申請の有無

17.2 業務起因性が疑われる場合の復職対応

業務起因性が疑われる場合、復職判定では次の点に留意します。

  1. 発症要因となった業務や上司へ戻さない選択肢を検討する
  2. ハラスメント調査と再発防止策を先行または並行する
  3. 長時間労働の是正を行う
  4. 労災申請がある場合、解雇制限や労災給付との関係を確認する
  5. 本人に不利な扱いをしない
  6. 会社の安全配慮義務違反が疑われる場合は早期に弁護士へ相談する
Section 18

うつ病で休職した社員の復職判定でよくある難問

診断書、産業医面談、原職復帰、短時間勤務、再欠勤を一般情報として整理します。

18.1 本人が主治医診断書を出さない場合

一般的には、就業規則で診断書提出義務が定められている場合は、提出期限、必要理由、提出されない場合の判断方法を文書で通知します。提出されないことだけで直ちに退職扱いにするのではなく、提出不能の理由を確認し、代替資料や再期限を検討します。もっとも、復職可否判断に必要な資料が提出されなければ、会社は既存資料に基づいて判断せざるを得ません。 ただし、就業規則、診断書、産業医意見、職務内容、休職満了日、配慮可能性によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士、社会保険労務士、産業医等へ相談する必要があります。

18.2 産業医面談を拒否された場合

一般的には、まず、面談の目的が本人の不利益処分ではなく、安全な復職支援であること、健康情報の共有範囲が限定されることを説明します。就業規則に面談義務や会社指定医受診義務がある場合は、その根拠を示します。それでも合理的理由なく拒否される場合は、復職判定に必要な情報が得られない事情として記録し、主治医資料や勤務情報を踏まえて判断します。 ただし、就業規則、診断書、産業医意見、職務内容、休職満了日、配慮可能性によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士、社会保険労務士、産業医等へ相談する必要があります。

18.3 主治医が「残業なしなら復職可」と書いた場合

一般的には、まず、残業なしの配慮が可能かを検討します。可能であれば、期間を区切って条件付き復職を検討します。不可能な場合は、なぜ不可能かを具体的に記録します。「忙しいから無理」では不十分です。業務の本質、代替要員、顧客対応、シフト、他社員への負担、期間限定の可否を整理します。 ただし、就業規則、診断書、産業医意見、職務内容、休職満了日、配慮可能性によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士、社会保険労務士、産業医等へ相談する必要があります。

18.4 本人が原職復帰を強く希望するが、原職が発症要因だった場合

一般的には、本人の希望は重要ですが、安全配慮義務上、会社は原職復帰のリスクを検討しなければなりません。主治医、産業医、本人と協議し、原職で配慮可能か、上司変更や業務変更で足りるか、別部署が望ましいかを検討します。本人希望だけで危険な原職復帰を認めると、再発時に会社の責任が問われ得ます。 ただし、就業規則、診断書、産業医意見、職務内容、休職満了日、配慮可能性によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士、社会保険労務士、産業医等へ相談する必要があります。

18.5 本人は短時間勤務を希望するが、会社に制度がない場合

一般的には、制度がないことだけで直ちに拒否するのは危険です。短時間勤務が一時的な復職支援として可能か、年休、時差出勤、欠勤控除、職務変更、在宅勤務などで対応できるかを検討します。制度化されていない対応を行う場合は、期間、賃金、評価、延長条件を個別合意または通知で明確にします。 ただし、就業規則、診断書、産業医意見、職務内容、休職満了日、配慮可能性によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士、社会保険労務士、産業医等へ相談する必要があります。

18.6 復職後すぐに欠勤が増えた場合

一般的には、懲戒や退職処理に進む前に、健康状態の再確認をします。本人面談、産業医面談、主治医受診勧奨、業務負荷確認、上司対応確認を行います。休職規程に再休職や通算規定がある場合は、それに従います。欠勤が精神的不調による可能性がある場合、日本HP事件の考え方を踏まえ、直ちに無断欠勤として処分することは避けるべきです。 ただし、就業規則、診断書、産業医意見、職務内容、休職満了日、配慮可能性によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士、社会保険労務士、産業医等へ相談する必要があります。

Section 19

うつ病で休職した社員の職種別復職判定ポイント

職務の負荷と安全性によって、配慮内容と復職先の検討範囲が変わります。

次の職種別一覧は、復職判定で確認する負荷の種類を整理したものです。職種ごとに対人負荷、判断責任、安全性、勤務時間のどこが重いかを読み取ることで、同じ診断書でも必要な配慮が変わることを確認できます。

営業職

顧客対応と移動

新規開拓、クレーム、長距離出張を一時的に外し、既存顧客や社内支援から始める選択肢があります。

管理職

部下対応と長時間労働

管理職責任をすべて戻すか、補佐業務から始めるかを検討します。

危険作業

安全判断

運転、機械操作、高所作業では、服薬影響や突発対応能力を慎重に確認します。

IT・研究

集中と納期

障害対応、深夜対応、高負荷プロジェクトを避け、限定的業務から始めることがあります。

接客・苦情対応

対人ストレス

復職直後のクレーム対応を慎重にし、段階的復帰を検討します。

19.1 営業職

営業職では、顧客対応、移動、売上目標、クレーム、単独行動が負荷になります。復職直後は、新規開拓、厳しいクレーム対応、長距離出張を一時的に外し、既存顧客や社内支援業務から始めることが考えられます。

19.2 管理職

管理職では、部下対応、評価、トラブル処理、経営報告、長時間労働が問題になります。復職直後に管理職責任をすべて戻すか、一定期間はプレイヤー業務や補佐業務にするかを検討します。管理監督者性がある場合でも、健康確保の観点から労働時間実態の把握は重要です。

19.3 運転、機械操作、危険作業

運転、機械操作、高所作業、医療介護での安全判断などは、本人と第三者の生命身体に関わります。眠気、集中力低下、服薬の影響、突発対応能力を慎重に確認し、産業医または専門医の意見を得るべきです。

19.4 IT、研究、専門職

ITや研究職では、表面上は在宅や単独作業がしやすく見えますが、長時間の集中、納期、障害対応、深夜対応、プロジェクト責任が負荷になります。復職直後は、緊急障害対応や高負荷プロジェクトを避け、レビュー、資料作成、限定的開発から始めることが考えられます。

19.5 コールセンター、接客、苦情対応

対人ストレスが大きい職種では、復職直後のクレーム対応は慎重にします。一定期間はバックオフィス、研修、モニタリング、短時間シフトにするなど、段階的復帰を検討します。

Section 20

うつ病で休職した社員の復職判定で整える書式と記録

判断理由、資料、配慮、部門意見、医学的意見、期限を記録します。

20.1 最低限整備すべき書式

以下の比較表は、書式名、目的の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

書式名目的
休職開始通知書休職期間、手続、満了日を明確化
休職中連絡記録連絡頻度、内容、本人反応を記録
復職希望申出書本人の復職意思と希望日を確認
業務内容説明書主治医、産業医に職務実態を伝える
主治医意見書就業配慮事項を具体化
情報提供同意書主治医、産業医、会社間の情報連携根拠
本人面談記録生活リズム、通勤、希望配慮を記録
産業医意見書就業区分、配慮、再判定時期を記録
復職判定会議記録判断過程と結論を証拠化
職場復帰支援プラン復職後の勤務条件と配慮を明文化
復職決定通知書復職日、所属、条件を通知
復職不可通知書理由、根拠、再判定または満了処理を通知

20.2 記録の書き方

記録は、後日裁判所や労働局が見ても理解できるように書きます。

良い記録例 ―

記載例本人は7月1日復職を希望。主治医診断書では「短時間勤務からの段階的復帰が望ましい」と記載。産業医は、現職の新規顧客対応と残業は3か月制限し、社内資料作成と既存案件補助から開始する条件で復職可と意見。営業部長は、当該配慮は3か月間であれば人員配置上対応可能と回答。以上を踏まえ、会社は7月1日から条件付き復職を認め、1か月後に再評価する。

悪い記録例 ―

記載例まだ不安なので復職不可。

判断理由、資料、検討した配慮、部門意見、医学的意見、期限がない記録は、紛争時に会社の判断を支えません。

Section 21

うつ病で休職した社員の復職判定に関わる専門家の役割分担

人事、法務、上司、産業医、外部専門家の担当範囲を分けます。

21.1 社内メンバー

以下の比較表は、役割、担当事項の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

役割担当事項
人事労務手続管理、本人連絡、規程運用、面談、プラン作成
法務就業規則、労契法、解雇制限、合理的配慮、個人情報、紛争リスク確認
直属上司業務情報、復職後の配慮実施、日常観察
部門長配置、業務再配分、部門負荷の調整
産業医就業上の医学的意見、配慮事項、再判定時期
保健師、産業保健スタッフ本人支援、面談、主治医連携、フォローアップ
コンプライアンス担当ハラスメントや不利益取扱いの監視
個人情報保護担当健康情報の取扱い、アクセス制限、保存管理

21.2 外部専門家

以下の比較表は、専門家、関与場面の関係を整理したものです。列ごとの違いを読むことで、確認すべき事項と見落とした場合の影響を結び付けて把握できます。

専門家関与場面
外部弁護士復職拒否、休職満了退職、解雇、労災疑い、ハラスメント、紛争化案件
社会保険労務士休職規程、傷病手当金、就業規則、実務運用
外部産業医産業医不在企業、専門的助言、面談
精神科専門医複雑事案、主治医意見との調整、専門的評価
障害者職業センター等リワーク、職業リハビリテーション、定着支援
労働基準監督署、労働局労災、紛争調整、行政相談がある場合
Section 22

うつ病で休職した社員の復職判定チェックリスト

復職申出時、判定会議、復職後の3段階で確認漏れを防ぎます。

22.1 復職申出時チェックリスト

  • 休職満了日を確認した
  • 就業規則の休職、復職、満了処理を確認した
  • 本人の復職希望日を確認した
  • 主治医診断書を取得した
  • 主治医診断書に就業上の配慮が記載されている
  • 業務内容説明書を作成した
  • 本人同意のうえで主治医照会の要否を検討した
  • 産業医面談を設定した
  • 所属部門から業務負荷情報を取得した
  • ハラスメントや過重労働など職場要因を確認した
  • 合理的配慮の要否を検討した
  • 健康情報の共有範囲を限定した

22.2 復職判定会議チェックリスト

  • 判断資料が一覧化されている
  • 主治医意見と産業医意見の内容を確認した
  • 業務遂行能力を具体的業務に照らして評価した
  • 原職復帰の可否を検討した
  • 別業務、別部署、時短、残業制限を検討した
  • 会社にとって過重な負担かを検討した
  • 復職支援プラン案を作成した
  • 復職不可の場合、再判定日または満了処理を整理した
  • 決定権者が明確である
  • 記録を作成した

22.3 復職後チェックリスト

  • 復職初日に勤務条件を再説明した
  • 上司に配慮事項を必要範囲で伝えた
  • 同僚への説明内容を限定した
  • 面談予定を設定した
  • 残業実績を確認している
  • 業務量が段階的に調整されている
  • 本人が相談窓口を理解している
  • 通院が妨げられていない
  • 1か月後、3か月後の見直しを実施した
  • プラン終了または延長の理由を記録した
Section 23

うつ病で休職した社員の復職判定基準モデル

基準は機械的に使わず、職務内容、医学的意見、配慮可能性を総合します。

次の3分類は、復職可能、時期尚早、条件付き復職の判断材料を整理したものです。分類ごとの事情を読むことで、基準を機械的に使わず、資料と職務内容に照らして総合判断する視点を確認できます。

復職可能

安定性と受入体制

本人の意思、主治医・産業医意見、生活リズム、必要な配慮の実施可能性がそろう場合です。

時期尚早

安全性や資料不足

就業不可意見、通勤不安定、強い不眠、危険業務への支障、必要資料不足などがある場合です。

条件付き復職

段階的な移行

残業制限、定型業務、通院配慮、対人業務軽減などにより勤務可能性がある場合です。

復職判定基準は、過度に機械的であってはいけません。しかし、基準がまったくないと恣意的運用になります。次のようなモデルが考えられます。

23.1 復職可能と判断しやすい事情

  1. 本人が明確に復職を希望している
  2. 主治医が職場復帰可能と判断している
  3. 主治医の意見が業務内容を踏まえている
  4. 産業医が通常勤務または条件付き勤務可と判断している
  5. 起床、通勤、日中活動、睡眠が安定している
  6. 所定時間または段階的勤務に耐えられる見込みがある
  7. 必要な配慮が具体的で、会社が実施可能である
  8. 本人が不調時に相談できる
  9. 発症要因となった職場問題への対応が済んでいる
  10. 復職支援プランに本人と職場が合意している

23.2 復職時期尚早と判断しやすい事情

  1. 主治医が就業不可または療養継続と判断している
  2. 産業医が要休業と判断している
  3. 日中活動や通勤が安定していない
  4. 短時間でも著しい疲労や症状悪化がある
  5. 希死念慮、自傷他害リスク、著しい不眠が継続している
  6. 服薬副作用により危険業務に支障がある
  7. 本人が復職を希望していない、または復職意思が不明確
  8. 必要な診断書や面談が得られない
  9. 復職後の業務負荷を大幅に下げても安全性が確認できない
  10. 発症要因となったハラスメントや過重労働が未対応である

23.3 条件付き復職が適する事情

  1. 医学的には就業可能だが、通常勤務は負荷が高い
  2. 残業や夜勤を制限すれば勤務可能
  3. 定型業務から始めれば安定勤務が見込める
  4. 通院時間の確保が必要
  5. 一定期間の対人業務軽減で再発予防が見込める
  6. 1か月から3か月程度で見直し可能
  7. 職場が具体的な受入体制を用意できる
Section 24

うつ病で休職した社員の復職判定のまとめ

企業法務と産業保健を接続し、説明可能な判断過程を残します。

次の重要ポイントは、復職判定の最終整理です。休職開始時からの説明、診断書、業務情報、産業医意見、配慮検討、フォロー、記録化を一連の手続として読むことが重要です。

会社に求められるのは病気を裁くことではない

本人が安全に働ける可能性を具体的に検討し、難しい場合にも、どの資料に基づき、どの配慮を検討し、なぜ復職困難と判断したかを説明できる状態にすることが核心です。

うつ病で休職した社員の復職判定の進め方は、主治医診断書を受け取って終わる単純な事務手続ではありません。会社は、本人の回復状況、職務内容、産業医意見、合理的配慮、安全配慮義務、個人情報保護、休職規程、過去の運用、判例法理を踏まえ、説明可能な判断を行う必要があります。

実務上の最適解は、次の7つです。

  1. 休職開始時から復職手続を説明する
  2. 主治医診断書には就業上の配慮を具体的に書いてもらう
  3. 主治医に業務情報を伝える
  4. 産業医等が業務遂行能力と配慮事項を評価する
  5. 原職復帰だけでなく、現実的な配置や合理的配慮を検討する
  6. 復職支援プランを作り、復職後に定期フォローする
  7. すべての判断過程を記録する

会社に求められるのは、本人の病気を裁くことではありません。本人が安全に働ける可能性を具体的に検討し、それでも難しい場合には、どの資料に基づき、どの配慮を検討し、なぜ復職困難と判断したのかを説明できる状態にすることです。これが、企業法務と産業保健を接続した、実務的な復職判定の核心です。

Reference

うつ病で休職した社員の復職判定の参考資料

公的機関・判例資料・専門情報源

  • 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
  • 厚生労働省「こころの耳 ― eラーニングで学ぶ15分でわかる職場復帰支援」
  • 厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)の概況」
  • 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト ― うつ病」
  • 厚生労働省「こころの耳 ― 第2ステップ 主治医による職場復帰可能の判断」
  • 厚生労働省「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」
  • e-Gov法令検索「労働契約法」
  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン 通則編」
  • 厚生労働省「面接指導を実施する医師の方」
  • 独立行政法人労働者健康安全機構「地域窓口 地域産業保健センター」
  • e-Gov法令検索「労働基準法」
  • 厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」
  • 全国労働基準関係団体連合会「片山組事件」
  • 全国労働基準関係団体連合会「日本HP事件」
  • 全国労働基準関係団体連合会「東芝事件、東芝 うつ病・解雇事件」
  • 全国労働基準関係団体連合会「アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド事件」
  • 厚生労働省「こころの耳 ― 職場復帰可否の判断基準の例」
  • 厚生労働省「こころの耳 ― 復職判定委員会の設置」
  • 厚生労働省「こころの耳 ― 職場復帰後における就業上の配慮の例」
  • 厚生労働省「こころの耳 ― 試し出勤制度の例」