2σ Guide

相続人等に対する売渡請求の
定款規定

会社法174条から177条までの構造、定款例、株主総会決議、1年制限、20日ルール、価格算定、財源規制、事業承継リスクを企業法務の実務目線で整理します。

174〜177条制度の中心条文
1年以内会社が知った日からの請求期限
20日以内価格決定申立ての重要期限
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相続人等に対する売渡請求の 定款規定

譲渡制限株式を相続等で取得した者に対し、会社が株式を売り渡すよう請求できる制度の要点を整理します。

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相続人等に対する売渡請求の 定款規定
譲渡制限株式を相続等で取得した者に対し、会社が株式を売り渡すよう請求できる制度の要点を整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 相続人等に対する売渡請求の 定款規定
  • 譲渡制限株式を相続等で取得した者に対し、会社が株式を売り渡すよう請求できる制度の要点を整理します。

POINT 1

  • 相続人等に対する売渡請求の定款規定の全体像
  • 譲渡制限株式を相続等で取得した者に対し、会社が株式を売り渡すよう請求できる制度の要点を整理します。
  • 譲渡制限株式が対象
  • 定款上の根拠が必要
  • 都度の株主総会決議

POINT 2

  • 相続人等に対する売渡請求の定款規定が必要になる理由
  • 1. 株主に相続等が発生:死亡、合併その他の一般承継により、株式が相続人等へ移ります。
  • 2. 相続人等が譲渡制限株式を取得:この段階で、譲渡承認手続だけでは株主化を止めにくい点が問題になります。
  • 3. 会社が株主総会特別決議を行う:対象者と対象株式数を定め、請求するかどうかを会社として決めます。
  • 4. 売渡請求通知と価格協議:通知後、価格協議を進め、まとまらなければ20日以内の申立てを検討します。
  • 5. 自己株式処理と資本政策の見直し:会社が取得した株式は自己株式となり、消却、保有、後継者への処分などを検討します。

POINT 3

  • 相続人等に対する売渡請求の定款規定で押さえる重要用語
  • 定款、譲渡制限株式、一般承継、相続人等、自己株式、分配可能額を正確に区別します。
  • 譲渡制限株式
  • 一般承継
  • 相続人等

POINT 4

  • 会社法174条〜177条から見る売渡請求の構造
  • 定款規定、総会決議、1年制限、撤回、価格協議、価格決定申立てを条文ごとに確認します。
  • 1年期限と20日ルールは、相続発生後の初動を左右します
  • 次の重要ポイントは、1年期限と20日ルールが同時に実務を圧迫することを示しています。
  • 会社は死亡・相続の連絡を受けた日時、相手方、内容を記録し、相続人間の協議未了を理由に放置しないことが重要です。

POINT 5

  • 相続人等に対する売渡請求の定款例と設計上の注意点
  • 基本条項、任意性、価格算定式、譲渡制限規定、種類株式との関係を確認します。
  • 読者にとって重要なのは、短い条項を置くだけでなく、価格、譲渡制限、種類株式、株主間契約、投資契約との整合性まで読むことです。
  • 次の重要ポイントは、基本的な定款例の読み方を示すものです。
  • 譲渡制限規定も併せて整える必要があります。

POINT 6

  • 相続人等に対する売渡請求の手続と期限管理
  • 1. 相続等の発生を把握:死亡の事実、相続人の範囲、遺言、遺産分割、株式数を確認します。
  • 2. 定款と対象株式を確認:売渡請求規定の有無、譲渡制限株式か、種類株式かを確認します。
  • 3. 1年期限と財源を確認:会社が知った日、分配可能額、資金繰り、概算株価を管理します。
  • 4. 専門家へ確認:弁護士、司法書士、税理士、公認会計士等と手続・価格・財源を確認します。
  • 5. 株主総会決議へ進む:対象者、対象株式数、議決権制限、特別決議の成立を確認します。
  • 6. 通知・価格協議・20日期限:通知を証拠化し、価格協議が調わなければ申立て準備を進めます。

POINT 7

  • 相続人等に対する売渡請求の売買価格・財源規制・税務
  • 分配可能額
  • 定款規定があっても、分配可能額が不足すれば制度を使いにくくなります。
  • 分配可能額違反
  • 分配可能額を超える自己株式取得では、金銭等の交付を受けた者や業務執行者等の責任が問題になります。

POINT 8

  • 事業承継での相続人等に対する売渡請求の使い方と危険性
  • 株式移転
  • 後継者への生前贈与、遺言、民事信託、種類株式、持株会社化を検討します。
  • 契約設計
  • 株主間契約、投資契約、創業株主間契約、JV契約との整合性を確認します。

まとめ

  • 相続人等に対する売渡請求の 定款規定
  • 相続人等に対する売渡請求の定款規定の全体像:譲渡制限株式を相続等で取得した者に対し、会社が株式を売り渡すよう請求できる制度の要点を整理します。
  • 相続人等に対する売渡請求の定款規定が必要になる理由:非公開会社では、誰が株主になるかが経営の安定、支配権、事業承継に直結します。
  • 相続人等に対する売渡請求の定款規定で押さえる重要用語:定款、譲渡制限株式、一般承継、相続人等、自己株式、分配可能額を正確に区別します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

相続人等に対する売渡請求の定款規定の全体像

譲渡制限株式を相続等で取得した者に対し、会社が株式を売り渡すよう請求できる制度の要点を整理します。

相続人等に対する売渡請求の定款規定とは、株式会社が、相続、合併その他の一般承継によって譲渡制限株式を取得した者に対し、その株式を会社へ売り渡すよう請求できる旨を定款に置く規定です。制度の中心は会社法174条から177条までです。

この制度は、相続人等による株式取得そのものをなかったことにする仕組みではありません。相続などで株式がいったん承継された後、会社が定款規定、株主総会決議、売渡請求通知、価格協議または裁判所の価格決定を経て、自己株式として取得する制度です。

次の重要ポイントは、制度を理解するうえで外せない6つの要点を並べたものです。読者にとって重要なのは、定款規定だけで自動的に株式を取得できるわけではなく、総会決議、期限、価格、財源、支配権リスクを一体で読むことです。

POINT 01

譲渡制限株式が対象

相続などの一般承継で譲渡制限株式を取得した者が対象です。通常の売買や贈与とは制度の入口が異なります。

POINT 02

定款上の根拠が必要

会社が売渡請求をするには、会社法174条に接続する定款規定が必要です。平時からの定款整備が重要です。

POINT 03

都度の株主総会決議

実際に請求するたびに、対象者と対象株式数を定める株主総会特別決議が必要です。

POINT 04

1年期限

会社が一般承継を知った日から1年を経過した後は、その一般承継を理由とする売渡請求は難しくなります。

POINT 05

20日ルール

価格協議がまとまらない場合、請求日から20日以内に会社または相続人等が裁判所へ価格決定を申し立てる必要があります。

POINT 06

支配権への影響

支配株主の相続人にも制度が及び得るため、事業承継では諸刃の剣として慎重に設計します。

相続人等に対する売渡請求の定款規定は、単なる定款ひな形の一条項ではありません。会社法、相続、税務、会計、株価算定、財源規制、株主間紛争、M&A、ガバナンスを横断する企業法務テーマです。

Section 01

相続人等に対する売渡請求の定款規定が必要になる理由

非公開会社では、誰が株主になるかが経営の安定、支配権、事業承継に直結します。

中小企業、同族会社、共同経営会社、ベンチャー企業、合弁会社などでは、株主構成が経営の安定性に直結します。株主が死亡し、相続人が当然に株主となると、経営に関与する意思がない者、会社と対立関係にある者、競合先に近い者、相続争いの当事者などが株主になる可能性があります。

次の比較表は、譲渡制限規定と相続人等に対する売渡請求の定款規定の役割の違いを整理したものです。読者にとって重要なのは、譲渡制限だけでは相続による取得を止めにくく、売渡請求規定は取得後に会社へ戻す制度として機能する点を読み取ることです。

制度主な対象実務上の意味
譲渡制限規定売買・贈与など譲渡による取得会社の承認がなければ株式譲渡を完了させにくくする制度です。
売渡請求の定款規定相続、合併その他の一般承継による取得相続人等が取得した後、会社が手続を経て株式を買い戻すための根拠になります。
株主間契約・事業承継設計後継者、親族株主、投資家、共同創業者誰に株式を残すか、誰から買い戻すか、資金をどう準備するかを補完します。

制度の本質は取得後に会社へ戻すことです

会社法174条以下の制度は、相続人等が株式を取得すること自体を無効にする制度ではありません。株主に相続その他の一般承継が発生し、相続人等が譲渡制限株式を取得し、その後に会社が定款規定を根拠として株主総会決議を経て売渡請求をします。

次の時系列は、相続が発生してから会社が株式を取得するまでの基本的な順番を示すものです。順番を読み取ることで、相続発生時点で資金、総会、価格、期限の準備ができていないと制度を使いにくくなる理由が分かります。

一般承継

株主に相続等が発生

死亡、合併その他の一般承継により、株式が相続人等へ移ります。

取得

相続人等が譲渡制限株式を取得

この段階で、譲渡承認手続だけでは株主化を止めにくい点が問題になります。

決議

会社が株主総会特別決議を行う

対象者と対象株式数を定め、請求するかどうかを会社として決めます。

請求

売渡請求通知と価格協議

通知後、価格協議を進め、まとまらなければ20日以内の申立てを検討します。

取得後

自己株式処理と資本政策の見直し

会社が取得した株式は自己株式となり、消却、保有、後継者への処分などを検討します。

Section 02

相続人等に対する売渡請求の定款規定で押さえる重要用語

定款、譲渡制限株式、一般承継、相続人等、自己株式、分配可能額を正確に区別します。

次の一覧は、制度理解に必要な主要用語をまとめたものです。読者にとって重要なのは、相続人等に対する売渡請求が、譲渡制限株式、一般承継、自己株式取得、分配可能額という複数の制度の接点で動くことを読み取ることです。

TERM 01

定款

会社の組織・運営に関する基本規則です。売渡請求をするには、定款に根拠規定が必要です。

TERM 02

譲渡制限株式

譲渡によって取得するには会社の承認が必要とされる株式です。制度の対象は譲渡制限が付された株式です。

TERM 03

一般承継

権利義務を包括的に承継することをいいます。典型例は相続で、法人では合併なども問題になります。

TERM 04

相続人等

相続、合併その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者を指します。

TERM 05

自己株式

会社が自社の株式を取得した場合の株式です。売渡請求による取得後の処理が問題になります。

TERM 06

分配可能額

剰余金配当や自己株式取得の対価交付に関する会社法上の財源上限です。

相続人等に対する売渡請求は自己株式取得を伴うため、会社法461条の財源規制との関係が問題になります。定款に規定があっても、資金繰りや分配可能額が不足していれば制度を使いにくくなります。

Section 03

会社法174条〜177条から見る売渡請求の構造

定款規定、総会決議、1年制限、撤回、価格協議、価格決定申立てを条文ごとに確認します。

次の比較表は、会社法174条から177条までの実務上の意味を整理したものです。読者にとって重要なのは、174条の定款根拠だけで制度が完結せず、175条の決議、176条の期限・対象株式数・撤回、177条の価格手続が連続している点を読み取ることです。

条文主な内容実務上の注意点
会社法174条定款で定めた場合に限り、相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者へ売渡請求ができます。株主死亡後に初めて制度に気づくと、相続発生後の定款変更の可否が難しい論点になります。
会社法175条請求の都度、対象株式数と対象者を定める株主総会決議が必要です。決議は特別決議であり、対象者は原則としてその議案について議決権を行使できません。
会社法176条会社が一般承継を知った日から1年を経過した後は請求できません。対象株式数の明示と撤回も問題になります。死亡連絡、名義書換請求、戸籍確認など、会社が知った日を記録する運用が重要です。
会社法177条売買価格は協議で定め、協議が調わない場合は20日以内に裁判所へ価格決定申立てができます。20日という期間は短いため、通知前から価格資料と申立て準備を進めます。

次の重要ポイントは、1年期限と20日ルールが同時に実務を圧迫することを示しています。どちらも過ぎてから補うことが難しいため、会社が知った日の記録、売渡請求通知日、価格協議の進行状況を一つの期限管理表で追う必要があります。

1年期限と20日ルールは、相続発生後の初動を左右します

会社が一般承継を知った日を記録し、売渡請求通知の前から財源、株価、総会、申立て資料を準備しておくことが、制度を実際に使えるかどうかを分けます。

会社が知った日については、死亡を知っただけで足りるのか、誰が株式を承継したかを知った時点なのか、会社のどの役職者の認識を会社の認識と見るかが争われ得ます。会社は死亡・相続の連絡を受けた日時、相手方、内容を記録し、相続人間の協議未了を理由に放置しないことが重要です。

Section 04

相続人等に対する売渡請求の定款例と設計上の注意点

基本条項、任意性、価格算定式、譲渡制限規定、種類株式との関係を確認します。

次の比較表は、定款規定を設計するときの主要論点をまとめたものです。読者にとって重要なのは、短い条項を置くだけでなく、価格、譲渡制限、種類株式、株主間契約、投資契約との整合性まで読むことです。

論点基本的な考え方注意点
基本条項相続、合併その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者に、会社法の規定に従って売渡請求できる旨を置きます。会社法174条以下へ接続する根拠を明確にします。
請求することができる相続発生時に必ず買い取るという意味ではなく、会社が判断できる趣旨です。後継者である相続人を排除したいとは限らないため、任意性が重要です。
価格算定式定款に相続税評価額や純資産価額などを書く相談があります。会社法177条の価格決定を当然に拘束するとは限らず、税務・公序良俗・相続人保護も検討します。
譲渡制限規定売渡請求制度は譲渡制限株式を前提にします。譲渡制限、株主名簿、株券不発行、株主間契約を一体で設計します。
種類株式どの種類株式に譲渡制限があり、どの種類が対象かを確認します。種類株主総会、投資家拒否権、みなし清算、ドラッグ・タグ条項との整合性が問題になります。

次の重要ポイントは、基本的な定款例の読み方を示すものです。条項文言のうち、相続・合併その他の一般承継、譲渡制限株式、会社法の規定に従う、請求することができる、という要素が制度の入口を形づくる点を読み取ってください。

定款例当会社は、相続、合併その他の一般承継により当会社の譲渡制限株式を取得した者に対し、会社法第174条以下の規定に従い、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。

譲渡制限規定も併せて整える必要があります。たとえば、当会社の株式を譲渡により取得するには株主総会または取締役会の承認を受けなければならない、という規定です。売渡請求規定だけを置いても、売買や贈与による株式移転は別のルートで発生し得ます。

Section 05

相続人等に対する売渡請求の手続と期限管理

相続発生の把握から総会決議、通知、20日ルール、自己株式処理までを順番に確認します。

次の判断の流れは、相続発生時に会社が確認すべき手続を順番に示しています。読者にとって重要なのは、期限、株主総会、価格協議、財源、証拠化が同時並行で進むため、通知後に初めて準備していては間に合いにくい点です。

売渡請求を検討する際の判断の流れ

相続等の発生を把握

死亡の事実、相続人の範囲、遺言、遺産分割、株式数を確認します。

定款と対象株式を確認

売渡請求規定の有無、譲渡制限株式か、種類株式かを確認します。

1年期限と財源を確認

会社が知った日、分配可能額、資金繰り、概算株価を管理します。

要件・財源に懸念
専門家へ確認

弁護士、司法書士、税理士、公認会計士等と手続・価格・財源を確認します。

実施可能性あり
株主総会決議へ進む

対象者、対象株式数、議決権制限、特別決議の成立を確認します。

通知・価格協議・20日期限

通知を証拠化し、価格協議が調わなければ申立て準備を進めます。

相続発生時の確認資料

次の比較表は、相続発生時に確認する資料と目的を整理したものです。どの資料が、相続人の範囲、株式数、対象者、期限、価格、総会手続のどこに関わるかを読み取ってください。

確認資料確認する目的
死亡診断書、戸籍関係資料、住民票、印鑑証明書死亡の事実、相続人の範囲、本人確認を整理します。
遺言書、遺産分割協議書株式の承継者、共有状態、相続人間の協議状況を確認します。
株主名簿、株券、過去の譲渡承認記録対象株式数、名義、株券発行会社かどうかを確認します。
定款、株主間契約、投資契約売渡請求規定、譲渡制限、種類株式、拒否権、事前承諾条項を確認します。
決算書、試算表、事業計画、資産資料分配可能額、価格協議、価格決定申立て、資金手当の基礎にします。

株主総会決議と通知

売渡請求をするには、株主総会で対象株式数と対象者を定めます。決議は特別決議です。議事録には、定款の根拠条項、一般承継の発生事実、会社が知った日、対象者、対象株式の種類と数、対象者の議決権行使制限、特別決議の成立状況、通知を行う権限者を明確に残します。

次の重要ポイントは、通知書で明らかにすべき事項を整理したものです。通知の到達と内容が後の価格協議・20日期限に関係するため、証拠化の観点で読み取ることが重要です。

通知事項会社が定款および会社法に基づき売渡請求をすること、対象者、対象株式の種類と数、請求日、価格協議の申入れ、20日以内に価格決定申立てが可能であること、担当窓口を明確にします。内容証明郵便、配達証明、直接交付時の受領書などで通知を証拠化します。
Section 06

相続人等に対する売渡請求の売買価格・財源規制・税務

会社法177条の価格協議、裁判所の価格決定、非上場株式評価、分配可能額、会計・税務を整理します。

会社法177条は、裁判所が価格を定める場合、請求時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮するとしています。帳簿純資産だけで価格が決まるわけではなく、収益力、将来性、資産価値、負債、事業リスク、流動性、支配権、配当状況、同族会社性、取引事例などが問題になり得ます。

次の比較表は、非上場株式の評価で検討されやすい方法と注意点を整理したものです。読者にとって重要なのは、税務評価と会社法上の売買価格は目的が異なり、評価方法の選択理由を説明できる形にしておく必要がある点です。

評価方法使われやすい場面注意点
純資産価額方式不動産や金融資産を多く保有する会社、資産管理会社帳簿価額と時価の差、簿外債務、偶発債務の調整が必要です。
DCF法成長企業、スタートアップ、継続的収益力を持つ会社事業計画、割引率、残余価値、役員報酬の正常化、オーナー依存性で結果が変わります。
類似会社比較法・取引事例法一定規模以上で比較対象が見つかる会社中小企業では適切な比較対象が見つかりにくいことがあります。
配当還元・収益還元系配当実績や収益力を見る場面税務上の配当還元方式を機械的に使えば足りるわけではありません。

相続税評価額と会社法上の価格は同じとは限りません

相続税評価額は相続税・贈与税の課税目的で用いられる評価体系です。会社法177条の価格決定は会社法上の売買価格を定める手続であり、目的が異なります。相続税評価額を参考資料とすることはあり得ますが、それが当然に会社法上の価格になるわけではありません。

非流動性ディスカウントは前提を整理します

非上場株式は市場で容易に売却できないため、評価で非流動性をどう扱うかが問題になります。最高裁は、譲渡制限株式の売買価格決定に関する別制度の事案で、DCF法を用いる場合でも評価手法の性質や前提によっては非流動性ディスカウントを考慮し得る旨を示したことがあります。ただし、相続人等に対する売渡請求の価格決定で同じ結論が常に妥当するわけではありません。

次の一覧は、財源規制・会計・税務で特に注意すべき項目を整理したものです。制度を使えるかどうかは、価格だけでなく、会社に支払原資があるか、自己株式取得として適法に処理できるか、税務上の整合性を説明できるかで決まる点を読み取ってください。

分配可能額

定款規定があっても、分配可能額が不足すれば制度を使いにくくなります。赤字、債務超過、不動産含み益はあるが現預金が少ない会社では特に注意が必要です。

分配可能額違反

分配可能額を超える自己株式取得では、金銭等の交付を受けた者や業務執行者等の責任が問題になります。

会計処理

取得した株式は自己株式として処理されます。消却、保有、後継者への処分により会計処理や純資産への影響が変わります。

税務

譲渡所得またはみなし配当、法人株主の法人税処理、低額・高額譲渡、相続税の納税資金、生命保険を用いる設計などが問題になり得ます。

Section 07

事業承継での相続人等に対する売渡請求の使い方と危険性

株主構成維持に役立つ一方で、支配株主の相続人を排除する手段にもなり得ます。

相続人等に対する売渡請求の定款規定は、経営に関与しない相続人を株主から外したい場合、共同経営者以外の相続人が入ることを防ぎたい場合、合弁会社で株主構成を固定したい場合に有効に機能することがあります。しかし、創業者や支配株主の相続人にも制度が及び得るため、後継者を守る設計とセットで考える必要があります。

次の比較表は、株主構成ごとの主なリスクを整理したものです。読者にとって重要なのは、対象相続人等が売渡請求決議で議決権を行使できないことが、会社にとって制度の実効性であると同時に支配権リスクにもなる点を読み取ることです。

株主構成主なリスク確認事項
100%株主が死亡相続人等以外に議決権を行使できる株主がいない場合の決議運営が問題になります。会社法175条の例外、取得後の支配者、後継者計画を確認します。
支配株主70%・少数株主30%支配株主の相続人が議決権を行使できず、残り30%の株主側だけで決議が進む可能性があります。定足数、議決要件、株式数、議案設計、濫用リスクを確認します。
親族株主が多数経営に関与しない親族を整理する手段になる一方、親族間の支配権争いを激化させることがあります。遺留分、役員解任、帳簿閲覧、株主代表訴訟、M&Aとの連動を確認します。
スタートアップ・VC投資創業者死亡時の安定性確保に役立つ一方、投資契約上の拒否権や買戻し条項と衝突し得ます。創業者ロックアップ、キーマン条項、コールオプション、優先株式の内容を確認します。
合弁会社・JV合併や会社分割で株主が変わると、JVの前提が崩れることがあります。JV契約上の通知義務、事前承諾、プット・コールオプション、デッドロック条項を確認します。

後継者未定・親族対立がある会社では慎重に扱います

長男が事業を継ぐ予定だったが遺言がない、株式は配偶者と子に法定相続分で共有されている、他の親族株主が会社を掌握したい、といった場面では、売渡請求規定が相続紛争を激化させる可能性があります。

次の一覧は、事業承継対策として組み合わせて検討すべき手段を整理したものです。売渡請求規定だけで完結させず、誰に株式を残し、誰から買い戻し、資金と税務をどう整えるかを読み取ってください。

株式移転

後継者への生前贈与、遺言、民事信託、種類株式、持株会社化を検討します。

契約設計

株主間契約、投資契約、創業株主間契約、JV契約との整合性を確認します。

資金準備

生命保険、内部留保、金融機関借入など、買戻し資金の準備が必要です。

税務・遺留分

相続税納税資金、事業承継税制、遺留分対策、低額・高額譲渡リスクを検討します。

Section 08

相続人等に対する売渡請求の定款導入・専門家連携・実務チェック

定款変更、登記要否、M&A・投資契約との関係、役割分担、確認項目を実務に落とし込みます。

定款変更による導入

定款を変更するには、株主総会決議が必要です。会社法466条は定款変更について定め、会社法309条2項により通常は特別決議が必要です。相続発生後に定款変更して既に株式を取得した相続人等へ売渡請求できるかは、会社法174条の解釈、相続人の権利保護、1年制限、定款変更決議の適法性、濫用の有無が問題になります。

次の比較表は、専門家ごとの主な役割を整理したものです。読者にとって重要なのは、売渡請求が法務だけでなく、登記、税務、会計、株価算定、経営判断を横断するため、早めに役割分担を決める必要がある点です。

関与者主な役割
弁護士制度設計、定款・株主間契約のレビュー、総会手続、相続人との交渉、価格決定申立て、紛争対応を担います。
企業内弁護士・法務担当定款管理、株主名簿管理、株主総会事務局、期限管理、外部専門家との連携を担います。
司法書士定款変更に伴う登記要否、譲渡制限規定の登記、議事録の登記適合性を確認します。
税理士相続税評価、みなし配当、譲渡所得、低額・高額譲渡、納税資金を検討します。
公認会計士・株価算定専門家株式価値算定、DCF法、純資産価額方式、事業計画、財源規制を確認します。
経営者・取締役会社の利益、株主共同の利益、債権者保護、後継者計画、資金繰りを踏まえて制度利用を判断します。

次の一覧は、定款導入前、相続発生時、価格協議の各段階で確認する項目をまとめたものです。段階ごとに見ることで、平時に整えるべきものと相続発生後に急ぐべきものを分けて読み取れます。

CHECK 01

定款導入前

  • 譲渡制限の有無、株主構成、名義株、相続未了株式を確認します。
  • 支配株主の相続時に逆用されるリスクを検討します。
  • 後継者、遺言、生前贈与、株主間契約、投資契約、買取資金、税務を確認します。
  • 種類株式発行会社では種類株主総会の要否を確認します。
CHECK 02

相続発生時

  • 株主死亡日と会社が一般承継を知った日を記録します。
  • 相続人、遺言、遺産分割、株主名簿、対象株式、定款規定を確認します。
  • 分配可能額、概算株価、株主総会、議決権制限、通知、20日期限を管理します。
CHECK 03

価格協議

  • 決算書、月次試算表、事業計画、不動産・有価証券の時価資料を準備します。
  • 税務評価額との違い、算定方法の選択理由、支配株式か少数株式かを整理します。
  • 価格が上振れした場合の資金手当を検討します。

M&A・投資契約・スタートアップ実務との関係

M&Aでは、対象会社の定款に売渡請求規定があるか、譲渡制限規定があるか、過去の株主死亡や売渡請求手続に瑕疵がないか、株主名簿と実質株主が一致するか、相続未了株式や名義株がないかを確認します。スタートアップでは、創業者株式の承継、買戻し、譲渡制限、キーマン条項、投資契約、株主間契約との関係を確認します。

FAQ

相続人等に対する売渡請求の定款規定でよくある質問

個別の結論は定款、株主構成、相続関係、財務状態、証拠関係によって変わるため、一般的な制度説明として整理します。

Q1. 定款規定を置けば、相続人は株主になれないのですか。

一般的には、相続人等はいったん相続その他の一般承継により株式を取得するとされています。この制度は、会社が定款と会社法上の手続に基づき、取得後の相続人等に売渡しを請求する制度です。具体的な株主地位や手続は、定款、株主名簿、相続関係、決議状況で判断が変わる可能性があります。

Q2. 譲渡制限株式なら、相続にも会社の承認が必要ではありませんか。

一般的には、譲渡制限は譲渡による取得を対象とし、相続は一般承継として通常の売買・贈与とは異なると整理されています。そのため、譲渡制限規定だけで相続による取得を止めることは難しいとされています。具体的な対応は、定款と株式の内容を確認したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q3. 定款に規定がない会社でも、相続後に株式を買い取れますか。

一般的には、相続人が任意に売却へ応じる場合、会社が自己株式取得手続により買い取る余地はあります。ただし、会社法174条以下の相続人等に対する売渡請求制度を使うには定款規定が必要です。財源規制や税務も関係するため、個別事情の確認が必要です。

Q4. 相続発生後に定款変更しても使えますか。

一般的には、慎重な検討を要する論点とされています。相続発生後の定款変更により既に株式を取得した相続人等へ売渡請求できるかは、会社法174条の解釈、相続人の権利保護、1年制限、決議の適法性、濫用の有無によって判断が変わる可能性があります。具体的な対応は弁護士等の専門家に相談する必要があります。

Q5. 売買価格は会社が自由に決められますか。

一般的には、価格は会社と相続人等の協議で定めるものとされています。協議が調わない場合、請求日から20日以内に会社または相続人等が裁判所へ価格決定を申し立てることができます。会社の資産状態その他一切の事情が問題となり、税務評価額と同じとは限りません。

Q6. 20日以内に何もしないとどうなりますか。

一般的には、売渡請求の日から20日以内に価格協議がまとまらず、価格決定申立てもされない場合、売渡請求は効力を失うとされています。通知前から価格算定資料、分配可能額、申立て準備を整えることが重要です。具体的な期限管理は資料を確認して専門家へ相談する必要があります。

Q7. 相続人等は売渡請求決議で議決権を行使できますか。

一般的には、対象となる相続人等は、その売渡請求決議について議決権を行使できないとされています。ただし、相続人等以外の株主全員も議決権を行使できない場合には例外が問題になります。具体的な決議運営は株主構成と定款によって変わります。

Q8. 会社に資金がなくても売渡請求できますか。

一般的には、会社が株式を取得するには対価支払が必要であり、財源規制も問題になります。分配可能額や資金繰りが不足している場合、制度を使いにくく、違法な自己株式取得となるリスクもあります。実施前に会計・税務・法務の確認が必要です。

Q9. 後継者である相続人にも売渡請求される可能性がありますか。

一般的には、定款規定は相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者を対象にするため、後継者であることだけで当然に除外されるとは限りません。後継者を保護するには、遺言、生前贈与、株主間契約、種類株式、事業承継計画との組み合わせが必要になります。

Q10. 税務上の相続税評価額で買い取ればよいですか。

一般的には、相続税評価額は課税目的の評価であり、会社法177条の売買価格とは目的が異なるとされています。価格協議や裁判所の価格決定では、会社の資産状態、収益力、将来性、支配権、流動性などが問題になり得ます。税務と会社法の両面から確認する必要があります。

Section 09

相続人等に対する売渡請求の定款規定の実務上のまとめ

定款ひな形ではなく、会社支配と事業承継を左右する中核的な企業法務テーマとして扱います。

相続人等に対する売渡請求の定款規定は、非公開会社の株主構成を維持するための強力な制度です。譲渡制限株式であっても、相続などの一般承継による株式取得を譲渡承認手続だけで止めることは難しいため、会社法174条以下の制度が重要になります。

次の一覧は、導入・運用時に外せない実務原則をまとめたものです。読者にとって重要なのは、定款、総会、期限、価格、財源、事業承継、専門家連携を分けずに、同じ制度設計の中で読むことです。

PRINCIPLE 01

平時に定款を整える

相続発生後に慌てて導入するのではなく、譲渡制限、株主名簿、株主間契約と合わせて整備します。

PRINCIPLE 02

期限を記録する

会社が一般承継を知った日、売渡請求日、20日期限を証跡として管理します。

PRINCIPLE 03

価格と財源を先に見る

価格協議、裁判所申立て、分配可能額、資金繰り、税務を請求前から検討します。

PRINCIPLE 04

逆用リスクを検討する

支配株主の相続人や後継者が排除される可能性を踏まえ、遺言や株主間契約で補完します。

PRINCIPLE 05

専門家を分担させる

弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、株価算定専門家、経営者が役割を分けて確認します。

この規定を導入する際は、相続人を入れたくないから定款に入れる、という単純な発想では足りません。会社法、相続法、税務、会計、株価算定、事業承継、M&A、ガバナンスを統合した設計が必要です。

一般情報このページは企業法務に関する一般的な情報提供です。実際の案件では、定款、株主名簿、株式の種類、相続関係、財務状態、税務、株主間契約、過去の総会運営などにより結論が変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
Reference

参考資料・出典

会社法、定款記載例、学術資料、裁判例、価格決定に関する公的資料を整理しています。

法令・公的資料

  • e-Gov法令検索「会社法」
  • 日本公証人連合会「株式の相続人に対する売渡請求権に関する解説」
  • 日本公証人連合会「小規模会社の定款記載例」
  • 最高裁判所令和5年5月24日第三小法廷決定・令和4年(許)第8号

実務・研究資料

  • 中村信男「譲渡制限株式の売渡請求制度と判例に見る問題点等の検討」早稲田商学
  • Westlaw Japan「会社法174条以下の相続人等に対する売渡しの請求に基づく株主としての地位の移転の時期」