2σ Guide

改正公益通報者保護法で
企業がすべきこと

2026年12月1日の施行に向け、内部通報制度を経営管理、法務、人事労務、内部監査、契約管理まで横断する統治インフラとして再設計するための実務対応を整理します。

2026/12/1 改正法の施行日
300人超 体制整備義務の軸
10項目 初動対応の優先順位
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改正公益通報者保護法で 企業がすべきこと

窓口設置だけでは足りず、通報者保護、調査、是正、記録、監査まで一体で整備する必要があります。

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改正公益通報者保護法で 企業がすべきこと
窓口設置だけでは足りず、通報者保護、調査、是正、記録、監査まで一体で整備する必要があります。
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  • 改正公益通報者保護法で 企業がすべきこと
  • 窓口設置だけでは足りず、通報者保護、調査、是正、記録、監査まで一体で整備する必要があります。

POINT 1

  • 改正公益通報者保護法で企業がすべきことの全体像
  • 窓口設置だけでは足りず、通報者保護、調査、是正、記録、監査まで一体で整備する必要があります。
  • 体制整備の実効性
  • 保護対象の拡大
  • 報復抑止の強化

POINT 2

  • 公益通報者保護法とは何か ― 改正対応の前提
  • 内部通報と公益通報を区別し、保護対象、通報対象事実、通報先、保護要件を分けて整理します。
  • 内部通報と公益通報は似ていますが、同じ概念ではありません。
  • 内部通報は、企業内部の相談・通報制度全般を指す実務用語として使われることが多いものです。
  • 公益通報は、法律上の保護要件を満たす通報を指します。

POINT 3

  • 令和7年改正公益通報者保護法で変わる企業リスク
  • 従事者指定、周知、フリーランス、通報妨害・探索、不利益取扱いの5点が実務上の中心です。
  • 従事者指定義務違反への執行強化
  • 公益通報対応体制の周知
  • フリーランスの保護対象化

POINT 4

  • 改正公益通報者保護法で企業がまず行うギャップ分析
  • 1. 現行制度を棚卸しします:規程、窓口、従事者、調査、記録、研修、契約ひな形を集めます。
  • 2. 通報者特定情報の流れを確認します:誰が、いつ、どの情報に触れるかを確認します。
  • 3. 改正後に不足する領域を判定します:フリーランス、探索防止、人事審査、周知、記録の不足を見ます。
  • 4. 是正計画を作ります:責任者、期限、承認者を明確にします。
  • 5. 監査と更新を続けます:施行前後の運用実績を見直します。

POINT 5

  • 改正公益通報者保護法対応で経営トップ・取締役会が決めること
  • 内部通報制度は窓口担当者だけの制度ではなく、企業価値を守る経営管理制度です。
  • 通報を重要情報として扱う方針
  • 通報者保護の基本姿勢
  • 経営陣関与案件の独立ルート

POINT 6

  • 改正公益通報者保護法に対応する従事者指定と受付窓口
  • 1. 業務の流れを図式化します:受付、初動評価、調査、是正、通知、報告の各段階を整理します。
  • 2. 通報者特定情報に触れる役職を洗い出します:氏名、所属、メール、状況から推測される情報も含めて確認します。
  • 3. 必要性がある者だけを候補にします:調査や是正に不要な共有は避けます。
  • 4. 指定書・規程・権限設定で明確化します:本人へ従事者であることを明示します。
  • 5. 研修とリスト更新を続けます:守秘義務、範囲外共有禁止、探索防止、異動・退職時の更新を徹底します。

POINT 7

  • 通報妨害・通報者探索を防ぐ改正公益通報者保護法対応
  • 1. 質問の目的を確認します:事実確認、証拠確認、再発防止に必要かを確認します。
  • 2. 通報者を特定する目的が含まれるかを見ます:誰が通報したかを知ること自体が目的なら危険です。
  • 3. 質問を見直します:質問内容、対象者、資料開示範囲を調整します。
  • 4. 必要最小限で実施します:担当者、質問、回答、共有範囲を記録します。

POINT 8

  • 改正公益通報者保護法で求められる不利益取扱い防止とフリーランス対応
  • 人事上の取扱い
  • 配置転換、降格、評価引下げ、プロジェクトからの排除、教育機会の剥奪が問題になります。
  • 経済待遇上の取扱い
  • 賞与減額、賃金・報酬の不利益な変更、取引量削減が問題になります。

まとめ

  • 改正公益通報者保護法で 企業がすべきこと
  • 改正公益通報者保護法で企業がすべきことの全体像:窓口設置だけでは足りず、通報者保護、調査、是正、記録、監査まで一体で整備する必要があります。
  • 公益通報者保護法とは何か ― 改正対応の前提:内部通報と公益通報を区別し、保護対象、通報対象事実、通報先、保護要件を分けて整理します。
  • 令和7年改正公益通報者保護法で変わる企業リスク:従事者指定、周知、フリーランス、通報妨害・探索、不利益取扱いの5点が実務上の中心です。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

改正公益通報者保護法で企業がすべきことの全体像

窓口設置だけでは足りず、通報者保護、調査、是正、記録、監査まで一体で整備する必要があります。

令和7年、つまり2025年の公益通報者保護法改正は、内部通報制度を単なる相談窓口から、経営管理・法務・人事労務・内部統制・危機管理を横断する仕組みへ押し上げる改正です。改正法は2025年6月4日に成立し、同月11日に令和7年法律第62号として公布され、2026年12月1日から施行されます。

企業にとって重要なのは、「窓口を置けば足りる」という発想が通用しにくくなる点です。公益通報対応業務従事者の指定義務違反に対する行政措置・立入検査・罰則、公益通報者の範囲拡大、通報妨害行為・通報者探索行為の禁止、通報後1年以内の解雇・懲戒に関する推定規定、公益通報を理由とする解雇・懲戒への直罰が導入されます。

前提このページは公表情報に基づく一般的な制度解説です。個別事案の法的判断や対応方針は、事実関係と証拠により変わるため、必要に応じて弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

次の一覧は、企業が最初に確認すべき対応を優先順位順に並べたものです。全体像を先に押さえることが重要なのは、従事者指定、窓口、契約、調査、人事、監査のどこか一つが欠けても制度全体の信頼性が下がるためです。各行では、何を整備し、実務上どの状態まで到達すればよいかを読み取ってください。

優先順位企業がすべきこと実務上の到達目標
1現行制度のギャップ分析窓口、規程、従事者指定、調査、記録、教育、委託先対応の不足を洗い出します。
2経営トップ・取締役会レベルの方針決定通報制度を不祥事予防・早期是正の経営管理制度として位置付けます。
3公益通報対応業務従事者の指定通報者特定情報に触れる者を明確化し、守秘義務・教育・記録管理を徹底します。
4内部公益通報受付窓口の設計従業員、派遣労働者、退職者、役員、フリーランス等が利用できる窓口にします。
5通報妨害・通報者探索の防止誓約書、退職合意、秘密保持契約、社内ヒアリング、管理職対応を点検します。
6不利益取扱い防止プロセスの整備通報後1年以内の解雇・懲戒・異動・評価・契約解除を法務・人事が事前審査します。
7フリーランス・業務委託先対応業務委託契約、購買手続、委託先向け周知、終了後1年以内の対応を組み込みます。
8調査・是正・再発防止の標準化受付、初動評価、証拠保全、調査、是正、本人通知、取締役会報告まで文書化します。
9記録保存・範囲外共有防止・個人情報管理誰が、いつ、何を知り、どの判断をしたかを検証可能にします。
10教育・周知・定期監査制度を「あるだけ」ではなく、安心して使える状態に保ちます。

次の3つの重点領域は、改正対応の読み方を整理するものです。制度改訂がなぜ重要かを理解するには、体制整備、保護対象の拡大、報復抑止の強化を分けて見る必要があります。3つの項目から、自社の対応がどの領域で遅れているかを確認してください。

System

体制整備の実効性

従事者指定、受付窓口、調査、是正、記録、周知が実際に機能するかを検証される段階へ移ります。

Scope

保護対象の拡大

労働者等に加え、業務委託関係にあるフリーランスと終了後1年以内のフリーランスも想定した設計が必要です。

Risk

報復抑止の強化

通報妨害・通報者探索の禁止、通報後1年以内の解雇・懲戒の推定、直罰により人事・契約判断の記録化が重要になります。

Section 01

公益通報者保護法とは何か ― 改正対応の前提

内部通報と公益通報を区別し、保護対象、通報対象事実、通報先、保護要件を分けて整理します。

公益通報者保護法は、勤務先等の法令違反を認識した労働者等が、一定の通報先に、一定の内容の通報をした場合に、その通報を理由とする解雇その他の不利益な取扱いから保護する法律です。制度の目的は、通報者の保護だけではなく、国民の生命、身体、財産その他の利益に関わる法令遵守を確保し、企業や行政機関の自浄作用を働かせることにもあります。

内部通報と公益通報は似ていますが、同じ概念ではありません。内部通報は、企業内部の相談・通報制度全般を指す実務用語として使われることが多いものです。公益通報は、法律上の保護要件を満たす通報を指します。そのため、社内窓口に届いた通報のすべてが公益通報とは限りませんが、受付段階で狭く決めつけることは危険です。

次の比較表は、公益通報を理解するための4要素を整理したものです。受付担当者が初動で迷いやすい点を分けて確認することが重要です。左から順に、誰の通報か、何についての通報か、どこへ通報するか、どの保護要件を見るかを読み取ってください。

要素確認する内容実務上の注意点
通報者労働者、派遣労働者、退職者、役員等に加え、改正後はフリーランスも対象になります。終了後1年以内のフリーランスも想定し、購買・事業部門の管理情報と接続します。
通報対象事実国民の生命、身体、財産等の保護に関する対象法律の不正行為等が問題になります。自社業種に関係する対象法律を棚卸しし、受付時に狭く排除しない運用が必要です。
通報先事業者内部、権限を有する行政機関、報道機関その他外部への通報があります。内部への通報、行政機関への通報、外部への通報で保護要件が異なります。
保護要件内部通報では思料、外部通報では相当の理由や一定の書面提出等が問題になります。要件判断が難しい場合でも、通報者保護を前提に慎重に取り扱います。
注意社内窓口に届いた情報について、最初から「公益通報ではない」と扱うと、通報者保護や証拠保全を誤る可能性があります。まず広く受け付け、必要な検討を記録する姿勢が重要です。
Section 02

令和7年改正公益通報者保護法で変わる企業リスク

従事者指定、周知、フリーランス、通報妨害・探索、不利益取扱いの5点が実務上の中心です。

令和7年改正は、内部通報制度を整備する段階から、実効性を検証される段階へ移行させるものです。特に企業法務の観点では、義務違反への執行強化、周知義務の明確化、フリーランスの保護対象化、通報妨害・通報者探索の禁止、不利益取扱いの抑止強化を一体で捉える必要があります。

次の一覧は、改正の中心となる5項目を企業側の対応に引き直したものです。どの項目も社内規程の文言だけで完結せず、実際の担当者、契約、調査、人事判断に影響します。各項目から、どの部門の運用を変える必要があるかを読み取ってください。

01

従事者指定義務違反への執行強化

300人を超える事業者では、従事者指定と体制整備の実効性がより厳しく問われます。勧告に従わない場合の命令、命令違反時の刑事罰、立入検査等が問題になります。

02

公益通報対応体制の周知

受付窓口、利益相反排除、不利益取扱い防止、通報妨害・探索防止、調査協力等について、労働者等へ分かりやすく周知する必要があります。

03

フリーランスの保護対象化

業務委託関係にあるフリーランスと終了後1年以内のフリーランスが加わるため、購買、事業部門、法務が連携する必要があります。

04

通報妨害・通報者探索の禁止

正当な理由なく公益通報を妨げる行為や、通報者を特定する目的の行為が禁止されます。契約・誓約書・面談・調査質問の見直しが必要です。

05

推定規定と直罰

通報後1年以内の解雇・懲戒には推定規定が働き、公益通報を理由とする解雇・懲戒には直罰が導入されます。

次の比較表は、改正対応で特に見落とせない数値と罰則を整理したものです。数値を押さえることが重要なのは、プロジェクト期限、人事審査期間、対象会社の判定に直結するためです。各行では、数値がどの社内プロセスの見直しにつながるかを確認してください。

項目数値・内容実務への影響
施行日2026年12月1日規程改訂、周知、研修、システム権限、契約改訂を施行前に終える必要があります。
体制整備義務の軸常時使用する労働者300人超300人以下でも努力義務や労務・民事リスクがあるため、簡潔な制度整備が重要です。
保護対象の期間業務委託関係終了後1年以内のフリーランス契約終了時の案内、取引停止・解除の審査、台帳管理が必要になります。
推定規定通報後1年以内の解雇・懲戒処分理由、比較事例、量定、公益通報との無関係性を記録で説明する必要があります。
直罰6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、法人は3,000万円以下の罰金人事処分や懲戒決裁に法務・人事・外部専門家の事前確認を組み込む必要があります。
Section 03

改正公益通報者保護法で企業がまず行うギャップ分析

現在の制度・運用と、法令・指針・望ましい実務とのズレを具体的に確認します。

改正公益通報者保護法で企業がすべきことの第一歩は、現行制度のギャップ分析です。ギャップ分析は、法務部だけで完結させる作業ではありません。人事、総務、内部監査、情報システム、購買、経理、監査役、監査等委員、社外取締役、必要に応じて外部専門家が参加すると、制度と運用のズレを見つけやすくなります。

次の点検表は、社内制度を確認する際の主要論点をまとめたものです。網羅的に見ることが重要なのは、窓口だけが整っていても、守秘、利益相反、人事審査、記録、監査が弱いと通報者保護が機能しないためです。典型的な不備を自社の現状と照らし合わせて読んでください。

点検項目確認すべき事項典型的な不備
窓口社内・社外窓口、匿名通報、多言語対応、委託先対応窓口はあるものの周知されていません。
対象者従業員、派遣労働者、退職者、役員、フリーランス業務委託先が利用できません。
従事者指定誰を従事者に指定しているか、指定方法は明確かメールで曖昧に担当者扱いしています。
守秘通報者特定情報のアクセス制御、範囲外共有防止管理職や関係部署に不用意に共有しています。
利益相反被通報者が経営層・上司・法務部員の場合の処理調査責任者が利害関係者になっています。
通報妨害NDA、退職合意、誓約書、研修資料の表現「社外に一切漏らさない」とだけ書いています。
探索防止誰が通報したかを探す行為の禁止・例外管理管理職が部下に聞き込みをしています。
人事処分通報後1年以内の処分審査法務確認なしに懲戒・異動を決めています。
調査初動評価、証拠保全、ヒアリング、是正措置調査開始・終了の判断が記録されていません。
記録受付票、調査記録、是正記録、本人通知、取締役会報告属人的なメール管理になっています。
教育全社員研修、管理職研修、従事者研修、委託先周知年1回の形式研修だけになっています。
監査制度の定期点検、KPI、第三者評価運用実績が取締役会に報告されていません。

次の判断の流れは、ギャップ分析を着手順に並べたものです。順番を意識することが重要なのは、現状把握の前に規程だけを改訂すると、実際の担当者・権限・記録管理に合わない制度になりやすいためです。上から順に、自社で未完了の工程を確認してください。

ギャップ分析の進め方

現行制度を棚卸しします

規程、窓口、従事者、調査、記録、研修、契約ひな形を集めます。

通報者特定情報の流れを確認します

誰が、いつ、どの情報に触れるかを確認します。

改正後に不足する領域を判定します

フリーランス、探索防止、人事審査、周知、記録の不足を見ます。

不足あり
是正計画を作ります

責任者、期限、承認者を明確にします。

重大不足なし
監査と更新を続けます

施行前後の運用実績を見直します。

Section 04

改正公益通報者保護法対応で経営トップ・取締役会が決めること

内部通報制度は窓口担当者だけの制度ではなく、企業価値を守る経営管理制度です。

内部通報制度は、不正の早期発見、是正、再発防止、企業価値保全、レピュテーションリスク管理に関わります。通報を面倒な苦情や組織への裏切りと見る文化が残ると、制度の実効性は失われます。経営トップと取締役会は、通報者保護を経営上の優先事項として示す必要があります。

次の一覧は、経営トップ・取締役会が決めるべき事項を4つに整理したものです。経営レベルで決めることが重要なのは、重大案件や経営陣関与案件では通常の社内ラインだけでは利益相反が生じるためです。各項目から、社内規程に落とし込むべき決定事項を確認してください。

Policy

通報を重要情報として扱う方針

公益通報を自浄作用を働かせるための重要情報として扱い、不祥事予防・早期是正に接続します。

Protection

通報者保護の基本姿勢

公益通報者を探索しない、不利益に扱わない、秘密を守る、必要な調査を行う姿勢を明確に示します。

Independence

経営陣関与案件の独立ルート

社長、役員、事業部長、法務部長、人事部長が対象となる場合に、監査機関や外部専門家へ接続するルートを定めます。

Reporting

取締役会への定期報告

通報件数、類型、調査期間、是正状況、通報者保護上の問題、研修実施状況を、個人が特定されない形で報告します。

要点社外取締役、監査役、監査等委員は、通報制度が経営陣から独立して機能しているか、報復リスクが管理されているか、重大通報が適切に上がっているかを監督する役割を担います。
Section 05

改正公益通報者保護法に対応する従事者指定と受付窓口

通報者特定情報に触れる人を明確にし、安心して利用できる入口を設計します。

公益通報対応業務従事者とは、内部公益通報に関して受付・調査・是正等の業務を行い、その業務に関して公益通報者を特定させる情報を伝達される者です。窓口受付担当、調査等に従事する者、是正措置を実施する者等で、通報者氏名などを知らされる人は従事者指定の対象になります。従事者には通報者特定情報の守秘義務があり、違反した場合には30万円以下の罰金が科されます。

次の比較表は、従事者指定で起きやすい過小指定と過大指定を整理したものです。指定範囲の設計が重要なのは、狭すぎると指定漏れになり、広すぎると守秘義務教育やアクセス管理が曖昧になるためです。自社の実運用がどちらに寄っているかを確認してください。

状態具体例リスク対応
過小指定法務部の窓口担当者だけを指定し、実際には人事部、内部監査部、事業部長、システム管理者が通報者氏名を知っています。本来指定すべき人が守秘義務・教育・記録管理の対象から漏れます。情報の流れを洗い出し、必要な者だけを指定します。
過大指定通報者特定情報に触れる必要がない関係者まで広く指定しています。責任範囲とアクセス管理が曖昧になり、秘密漏えいリスクが高まります。業務上の必要性で絞り込み、指定書と権限設定を合わせます。

次の手順図は、従事者指定を実務に落とす順番を示しています。順番が重要なのは、先に人を指定してから業務の流れを確認すると、実際に情報へ触れる人を見落としやすいためです。受付から是正まで、どの段階で通報者特定情報に触れるかを上から確認してください。

従事者指定の進め方

業務の流れを図式化します

受付、初動評価、調査、是正、通知、報告の各段階を整理します。

通報者特定情報に触れる役職を洗い出します

氏名、所属、メール、状況から推測される情報も含めて確認します。

必要性がある者だけを候補にします

調査や是正に不要な共有は避けます。

指定書・規程・権限設定で明確化します

本人へ従事者であることを明示します。

研修とリスト更新を続けます

守秘義務、範囲外共有禁止、探索防止、異動・退職時の更新を徹底します。

次の一覧は、内部公益通報受付窓口の設計要素を整理したものです。入口設計が重要なのは、使いにくい、信頼されていない、守秘に不安がある窓口では、重大不正の初期情報が届かないためです。複数の方法、外部窓口、委託先、グループ会社の4点を読み取ってください。

複数の受付方法

ウェブフォーム、メール、電話、郵送、面談、外部窓口を組み合わせます。匿名通報を認める場合は、追加質問と証拠提出の方法を設計します。

入口

社外窓口の実効性

外部窓口が単なる転送先にならないよう、本人同意、社内共有範囲、緊急時対応、利益相反時のルートを明確にします。

守秘

フリーランス・業務委託先

委託先向けポータル、発注書、契約締結時案内、業務開始時案内、契約終了通知に通報窓口を組み込みます。

委託先

グループ会社・海外拠点

どの法人が受け、どの範囲で通報者特定情報を共有し、親会社がどこまで調査できるかを整理します。

権限
Section 06

通報妨害・通報者探索を防ぐ改正公益通報者保護法対応

秘密保持や調査協力を維持しながら、公益通報を萎縮させない契約・調査設計にします。

令和7年改正で見落とされやすいのが、通報妨害の防止です。明示的な通報禁止だけでなく、退職合意書、秘密保持契約、和解契約、誓約書、懲戒処分通知、管理職からの口頭注意、社内調査時の質問票、委託契約の守秘条項が、結果として公益通報を萎縮させることがあります。

次の表は、見直し対象となる文書と確認ポイントを整理したものです。文書横断で点検することが重要なのは、内部通報規程だけを直しても、NDAや退職合意が通報を封じるように読めると制度の整合性が崩れるためです。各文書について、公益通報、行政機関への相談、専門家への相談を妨げない表現になっているかを確認してください。

文書類型見直すべきポイント
秘密保持契約公益通報、行政機関への相談、弁護士等専門家への相談を妨げない旨を明記します。
雇用契約・誓約書会社の情報を外部に一切開示しないという絶対表現を修正します。
退職合意書・和解契約退職後の通報・相談まで封じる表現を避けます。
業務委託契約フリーランスによる公益通報を妨げない条項を入れます。
就業規則正当な公益通報を懲戒対象にしないことを明確化します。
内部通報規程通報妨害禁止、探索禁止、不利益取扱い禁止を明記します。
調査協力依頼書調査協力と通報者探索禁止の境界を明確にします。
研修資料外部通報を会社への裏切りと受け取られる表現を排除します。
文言例秘密保持義務は、公益通報者保護法その他の法令に基づく通報、行政機関への相談・申告、弁護士その他専門家への相談、法令上認められる手続における開示を禁止または制限するものではない、という方向で整理します。

次の注意点一覧は、通報者探索につながりやすい行為をまとめたものです。調査担当者や管理職が境界を理解することが重要なのは、事実確認の質問が通報者探しに変わると、改正法上の禁止行為になり得るためです。何を聞いてよいかではなく、何の目的で、どの範囲に共有するかを確認してください。

誰が通報したのかと聞く

被通報部署や管理職が、通報者を特定する目的で聞き込みを行うことは危険です。

推測させる情報を広げる

小規模部署では、所属、時期、担当業務だけで通報者が推測されることがあります。

被通報者に氏名を伝える

調査上必要な範囲を超えて通報者氏名を共有すると、範囲外共有や報復の温床になります。

調査協力者への説明が弱い

調査協力者にも、通報者探しや報復をしないことを明確に伝える必要があります。

次の判断の流れは、正当な調査と通報者探索を区別する考え方を示しています。分岐が重要なのは、通報者保護のために必要な限定管理と、通報者を特定する目的の聞き込みは異なるためです。目的、必要性、共有範囲、記録の4点を順に確認してください。

調査質問の確認手順

質問の目的を確認します

事実確認、証拠確認、再発防止に必要かを確認します。

通報者を特定する目的が含まれるかを見ます

誰が通報したかを知ること自体が目的なら危険です。

含まれる
質問を見直します

質問内容、対象者、資料開示範囲を調整します。

含まれない
必要最小限で実施します

担当者、質問、回答、共有範囲を記録します。

Section 07

改正公益通報者保護法で求められる不利益取扱い防止とフリーランス対応

通報後1年以内の人事・契約判断を、法務と人事が説明可能な形で審査します。

公益通報を理由とする不利益取扱いは禁止されます。令和7年改正後は、特に解雇・懲戒について推定規定と直罰が導入されるため、人事労務実務への影響が大きくなります。通報者に対する処分が一切できないという意味ではありませんが、処分理由が公益通報とは無関係であり、必要性・相当性・均衡があることを記録で説明できる必要があります。

次の表は、通報後1年以内の解雇・懲戒を検討する際に記録すべき事項を整理しています。記録が重要なのは、後日の民事訴訟、労働審判、行政対応、刑事リスク判断で、企業側の説明資料になるためです。各項目について、処分前に誰が確認し、どこへ保存するかを決めてください。

記録項目確認する内容
処分対象行為具体的事実、発生日、発覚日、調査経過を記録します。
公益通報との関係時間的関係、処分決定者が公益通報の存在を知っていたかを確認します。
比較事例同種事案における過去の処分例と量定理由を確認します。
通報内容への対応通報内容の調査状況、是正状況、本人通知の状況を確認します。
代替措置処分以外の代替措置を検討したかを記録します。
専門確認法務部、外部専門家、人事責任者の確認結果を残します。

次の一覧は、解雇・懲戒以外にも注意すべき不利益取扱いを整理しています。範囲を広く見ることが重要なのは、推定規定や直罰の中心が解雇・懲戒でも、その他の不利益取扱いは禁止されるためです。人事、報酬、契約、業務機会のどこに影響が出るかを確認してください。

人事上の取扱い

配置転換、降格、評価引下げ、プロジェクトからの排除、教育機会の剥奪が問題になります。

経済待遇上の取扱い

賞与減額、賃金・報酬の不利益な変更、取引量削減が問題になります。

契約上の取扱い

契約更新拒否、業務委託契約の解除、発注停止、単価引下げが問題になります。

精神上・生活上の取扱い

嫌がらせ、孤立化、周囲への不用意な共有により職場環境が悪化することがあります。

次の一覧は、フリーランス・業務委託先対応を実務に落とす項目です。従来の社内制度から漏れやすい領域であるため、法務だけでなく購買部門・事業部門・制作部門・情報システム部門と連携することが重要です。台帳、契約、周知、解除審査の4点を確認してください。

委託先台帳の整備

どの部署が、どのフリーランスに、どの業務を委託しているかを把握します。契約書がない取引や現場判断の継続発注も確認します。

把握

契約書・発注書の改訂

秘密保持、情報管理、契約解除、損害賠償の条項が公益通報を理由とする不利益取扱いに使われないようにします。

契約

委託先向け周知

契約締結時、業務開始時、更新時、終了時に、窓口、秘密保持、通報妨害禁止、探索禁止、不利益取扱い禁止を案内します。

周知

発注停止・契約解除の審査

通報後の発注停止、契約解除、単価引下げ、業務範囲縮小は、購買・事業部門だけで判断せず法務が事前に確認します。

審査
Section 08

改正公益通報者保護法で求められる調査・是正・記録の標準プロセス

受付から取締役会報告まで、事実認定と通報者保護を両立する手順を文書化します。

公益通報制度の実効性は、通報を受け付けた後の対応で決まります。形式的に受付だけして、調査しない、放置する、通報者に何も知らせない、被通報部署に丸投げする、是正措置を記録しないという運用では、法的リスクもレピュテーションリスクも高まります。

次の時系列は、標準プロセスを受付から記録保存まで並べたものです。順番を明確にすることが重要なのは、緊急性、証拠保全、利益相反、本人通知、取締役会報告の判断が遅れると、後から検証できない対応になりやすいためです。各段階で何を記録するかを読み取ってください。

Step 1

受付

通報日時、通報経路、通報者属性、匿名・顕名の別、通報内容、関係者、証拠資料、緊急性、保護上の懸念を記録します。

Step 2

初動評価

通報対象事実該当性、公益通報該当性、緊急性、人命・身体・財産への危険、証拠散逸リスク、経営層関与、行政報告や開示の要否を検討します。

Step 3

証拠保全

メール、チャット、業務システムログ、会計データ、契約書、稟議書、勤怠記録、PC・スマートフォン等を適切に保全します。

Step 4

調査計画

調査範囲、対象者、ヒアリング順序、担当者、利益相反、通報者特定情報の共有範囲、外部専門家の利用、スケジュールを定めます。

Step 5

ヒアリング

質問内容を事前に整理し、通報者探索にならないよう注意します。調査協力義務、秘密保持、探索禁止、報復禁止を説明します。

Step 6

事実認定と法的評価

調査結果をもとに事実認定を行い、法的評価と区別します。専門分野ごとに外部専門家の活用も検討します。

Step 7

是正措置

違反行為の停止、被害回復、行政機関への報告、顧客・取引先対応、再発防止策、処分、内部統制改善を進めます。

Step 8

通報者への通知

法令、秘密保持、プライバシーに配慮しながら、調査開始、調査結果、是正措置の概要を通知します。

Step 9

記録保存

受付、初動評価、調査計画、証拠保全、ヒアリング、法的評価、是正措置、本人通知、取締役会報告、再発防止を記録します。

次の強調項目は、調査で特に迷いやすいバランスを示しています。通報者保護だけでなく、被通報者の名誉・プライバシーや公正な調査も重要です。片方に寄せすぎず、独立性・中立性・公正性をどう確保するかを確認してください。

通報者保護と公正な調査の両立

通報があっただけで被通報者を犯人扱いすることは避けます。一方で、通報者保護を理由に必要な調査を怠ることもできません。情報共有を必要最小限にし、担当者・手順・記録を明確にします。

Section 09

改正公益通報者保護法と監査・個人情報管理

内部監査、監査役、社外取締役、情報管理担当が制度の実効性を確認します。

内部通報制度は、法務部・コンプライアンス部が運用する制度であり、同時に監査機能が監督すべき制度です。内部監査部門は、制度設計だけでなく、通報受付から初動評価までの日数、調査未了案件の滞留、通報類型別の傾向、通報者への通知状況、通報後人事処分の審査状況、再発防止策の完了状況を検証します。

次の一覧は、監査と情報管理の役割を整理したものです。役割分担が重要なのは、重大案件では法務、人事、監査、情報セキュリティ、経理、購買、品質保証などが同時に関与するためです。どの機能が何を見張るかを確認してください。

Audit

内部監査部門

制度実効性、処理期間、滞留案件、通知状況、通報後の人事処分審査、再発防止策の完了状況を検証します。

Board

監査役・社外取締役

経営陣関与案件、重大な会計・開示・品質問題、法務・人事が利益相反にある案件で独立性を確保します。

Privacy

個人情報保護担当

通報者情報、調査資料、越境移転、漏えい対応、保存期間、アクセス権限を管理します。

Security

情報セキュリティ担当

メール、チャット、ログ、端末、フォルダ権限、閲覧履歴を管理し、調査資料を散在させない仕組みを作ります。

次の表は、個人情報・プライバシー・情報セキュリティの基本原則を整理したものです。調査資料にはセンシティブな情報が含まれることがあるため、アクセスと保存を管理することが重要です。各行では、どの情報を誰に共有し、いつまで保存するかを確認してください。

原則実務対応
利用目的の限定公益通報対応、調査、是正、再発防止に限定します。
アクセス最小化通報者特定情報へのアクセスを必要最小限にします。
共有範囲の制限被通報者・関係部署へ共有する情報を必要最小限にします。
資料の集中管理調査資料を個人PCや通常メールで散在させないようにします。
ログと保存期間アクセスログ、閲覧権限、保存期間を管理します。
越境移転海外拠点・海外ベンダーへ情報移転する場合は、越境移転規制を確認します。
廃棄訴訟・行政対応・再発防止に必要な期間は保存し、不必要になれば適切に廃棄します。
Section 10

中小企業・上場企業・M&A・業種別に見る改正公益通報者保護法対応

企業規模、取引構造、業種リスクに合わせて、制度の厚みを調整します。

常時使用する労働者が300人以下の事業者については、従事者指定や体制整備は努力義務とされています。ただし、中小企業こそ、通報者が特定されやすく、人事権限が一部に集中し、法務・コンプライアンス専任者がいないため、初動対応を誤りやすいことがあります。

次の表は、中小企業が最低限整備する項目をまとめたものです。簡潔な制度から始めることが重要なのは、努力義務であっても不利益取扱い、秘密漏えい、通報妨害、探索、労働法上の紛争、レピュテーションリスクは残るためです。自社の身の丈に合う最初の整備項目を確認してください。

項目最低限の対応
窓口経営者直通だけでなく、外部専門家等の外部窓口を検討します。
規程簡潔な内部通報規程を作成し、通報者保護・守秘・報復禁止を明記します。
周知全従業員・業務委託先に、通報先と保護内容を定期的に知らせます。
調査経営者が被通報者の場合の外部ルートを定めます。
人事通報後の解雇・懲戒・契約解除は専門家に相談できる体制にします。
記録受付・調査・是正・通知の記録を残します。
教育管理職に通報者を探さないこと、不利益に扱わないことを徹底します。

次の一覧は、上場企業・大企業が追加で整備すべき高度対応を示しています。大企業では通報類型が多様で、重大案件を通常相談として処理してしまうリスクがあります。取締役会報告、独立調査、専門部門連携、海外対応、データ分析の観点を読み取ってください。

取締役会・監査機関への定期報告

通報件数、類型、処理期間、是正状況、通報者保護上の課題を個人が特定されない形で報告します。

統治

経営陣関与案件の独立調査

監査役、監査等委員、社外取締役、外部専門家による独立性確保を検討します。

独立

専門部門の連携手順

法務、コンプライアンス、人事、内部監査、情報セキュリティ、経理、購買、品質保証、海外法務の連携を定めます。

連携

多言語・海外拠点対応

グループ共通ポリシーと各社ローカル規程の整合を確認します。

海外

通報データ分析

通報データを分析し、不正予兆管理、通報者保護モニタリング、制度実効性評価に活用します。

分析

M&Aや組織再編では、対象会社の内部通報制度が法務デューデリジェンスの重要項目になります。確認が重要なのは、通報制度の未整備や重大通報の放置が、買収価格、表明保証、補償、クロージング条件、PMIに影響し得るためです。次の項目から、買主側と売主側が何を確認するかを読み取ってください。

確認項目見るべき内容
制度の有無内部通報規程と従事者指定の有無を確認します。
過去実績過去3年から5年の通報件数・類型・調査結果を確認します。
重大案件未解決案件、重大案件、行政対応案件、経営陣関与案件を確認します。
不利益取扱い通報後に解雇・懲戒・退職・契約解除があった案件を確認します。
委託先対応フリーランス・委託先からの通報受付体制を確認します。
通報妨害リスク退職合意・NDA等に通報妨害リスクのある条項がないかを確認します。
データ移行通報者特定情報の保護方法を確認します。

次の業種別一覧は、公益通報者保護法対応を自社の規制環境に合わせて見るためのものです。業種ごとに通報対象事実や専門家が異なるため、通報受付後のトリアージに反映することが重要です。重点リスクと関与すべき専門家を横に見比べてください。

業種・領域重点リスク関与すべき専門家
金融・証券・保険不公正取引、マネロン、顧客保護、開示金融法務、内部監査、公認会計士
製造・品質品質不正、検査データ改ざん、製品安全品質保証、技術専門家、弁護士
医薬・ヘルスケア薬機法、臨床研究、広告規制、GxP医薬法務、医療専門家、外部弁護士
IT・AI・データ個人情報、情報漏えい、著作権、AI利用プライバシー担当、情報セキュリティ、IT法務
建設・不動産建設業法、下請、偽装請負、安全衛生建設法務、社労士、技術専門家
食品・小売食品表示、景表法、品質管理、消費者安全表示法務、品質保証、行政対応専門家
グローバル企業贈収賄、競争法、輸出管理、制裁国際法務、外国法事務弁護士、輸出管理担当
研究開発・知財研究不正、営業秘密、共同開発契約弁理士、知財法務、フォレンジック専門家
Section 11

改正公益通報者保護法の失敗例と施行前ロードマップ

ありがちな落とし穴を避け、2026年12月1日から逆算して準備します。

改正対応では、規程だけを直して運用が変わらない、従事者指定が曖昧、通報者情報を必要以上に共有する、通報後の人事処分を通常どおり処理する、フリーランス対応を忘れる、秘密保持条項で通報まで封じるといった失敗が起こりがちです。

次の注意点一覧は、改正対応で避けたい失敗例を整理したものです。失敗例を先に見ることが重要なのは、形式的な規程改訂ではなく、現場管理職、契約、調査、人事判断の行動を変える必要があるためです。自社の対応計画に同じ落とし穴がないかを確認してください。

規程だけ改訂して運用が変わらない

現場管理職が理解していないと、制度の実効性は運用面で失われます。

従事者指定が曖昧

個別指定書がない、異動後も更新されていない、外部窓口との関係が不明な状態は危険です。

通報者情報を必要以上に共有する

被通報部署や上司への不用意な共有は、範囲外共有、探索、報復の温床になります。

通報後の人事処分を通常どおり処理する

通報後1年以内の解雇・懲戒では、推定規定への対応を前提に審査する必要があります。

フリーランス対応を忘れる

購買部門や現場部門が管理する契約・発注が周知対象から漏れることがあります。

秘密保持条項で通報まで封じる

外部に一切開示しないという表現は、公益通報や行政相談を妨げる趣旨に読める場合があります。

次の時系列は、施行前までの準備を段階別に並べたものです。期限を区切ることが重要なのは、規程改訂、周知、研修、システム権限、契約見直し、訓練を一度に終えることは難しいためです。直ちに着手するもの、3か月以内、6か月以内、施行前の順に確認してください。

直ちに

現状把握とチーム設置

改正法・指針・指針解説の確認、ギャップ分析、部門横断チーム設置、従事者指定状況の確認、通報後人事処分案件の棚卸し、NDA・退職合意・業務委託契約・誓約書のレビュー、委託先台帳の整備を進めます。

3か月以内

規程・様式・審査設計

内部通報規程の改訂案、従事者指定書、受付票、調査記録様式、管理職向け資料、人事処分事前審査、外部窓口契約、グループ会社・海外拠点との役割分担を整えます。

6か月以内

承認・研修・権限改善

規程改訂の承認、従事者研修、全社員向け周知、フリーランス・委託先向け周知、管理職研修、通報受付システムの権限設定・ログ管理、模擬通報訓練を行います。

施行前

運用開始と最終確認

改正後制度を運用開始し、取締役会・監査機関への報告、内部監査による確認、未了案件の棚卸し、通報後1年以内の人事・契約判断の審査状況確認、制度改善計画を進めます。

Section 12

改正公益通報者保護法対応の役割と実務チェックリスト

法務だけで抱えず、専門職・実務担当者ごとの役割と確認項目を明確にします。

改正対応は、単一部門では完結しません。法務、コンプライアンス、人事、内部監査、情報セキュリティ、購買、監査役、社外取締役、経営トップがそれぞれの役割を持ちます。役割が曖昧なまま通報を受けると、初動評価、証拠保全、通報者保護、人事審査、取締役会報告が遅れます。

次の表は、企業内外の専門職・担当者の主な役割を整理したものです。役割を明確にすることが重要なのは、重大案件ほど複数部門が同時に動き、誰が判断し誰が記録するかを後から検証されるためです。自社で未設定の役割がないかを確認してください。

担当者・専門職主な役割
法務担当・企業内弁護士改正法解釈、規程改訂、契約レビュー、調査法務、訴訟リスク管理を担います。
外部弁護士独立窓口、重大案件調査、役員関与案件、行政対応、訴訟対応を支援します。
コンプライアンス担当制度運用、研修、周知、通報受付、再発防止管理を担います。
人事・労務担当不利益取扱い防止、人事処分審査、ハラスメント・労務案件対応を担います。
社会保険労務士就業規則、懲戒規程、労務管理、管理職教育への助言を担います。
内部監査担当制度実効性監査、通報処理状況の検証、統制改善提案を担います。
公認会計士・フォレンジック会計士会計不正、横領、粉飾、内部統制不備の調査を支援します。
デジタルフォレンジック専門家メール、ログ、PC、スマートフォン等の証拠保全・解析を支援します。
個人情報保護担当通報者情報、調査資料、越境移転、漏えい対応を管理します。
購買・事業部門フリーランス・委託先への周知、契約解除・発注停止の事前相談を担います。
監査役・社外取締役経営陣関与案件の監督、制度実効性の監視、独立性確保を担います。
経営トップ通報者保護文化の明示、資源配分、重大案件の是正責任を担います。

次の一覧は、企業法務・コンプライアンス担当が実務で確認するためのチェック項目です。分野別に見ることが重要なのは、制度設計、周知、契約、調査、不利益取扱い防止、監査改善のどこかが抜けると、通報者が安心して利用できる制度にならないためです。自社の未完了項目を確認してください。

制度設計

取締役会または経営会議での位置付け、改正対応済み規程、従事者指定、守秘義務研修、アクセス制限、独立ルート、社内外窓口、匿名通報の方法を確認します。

設計

周知・教育

労働者等、フリーランス、業務委託先、管理職、退職者・契約終了者への周知と研修資料の表現を確認します。

教育

契約・規程

秘密保持契約、退職合意書、業務委託契約、就業規則・懲戒規程、調査協力依頼書の通報妨害・探索リスクを確認します。

契約
調

調査・是正

受付票、初動評価票、調査計画書、ヒアリング記録、利益相反排除、証拠保全、法的評価、是正措置、通知方針を確認します。

調査

不利益取扱い防止

通報後1年以内の解雇・懲戒、配置転換、評価、賞与、契約解除、発注停止、通報者保護フラグ、処分理由の記録を確認します。

人事

監査・改善

通報件数、類型、処理期間、是正状況、取締役会・監査機関への報告、内部監査、外部レビュー、制度利用者の信頼度、行政資料の更新確認を行います。

監査
Section 13

改正公益通報者保護法対応のFAQ

よくある疑問を、一般的な制度説明として整理します。

Q1. 300人以下の会社は対応しなくてもよいのですか。

一般的には、300人以下の事業者について体制整備等は努力義務とされています。ただし、通報者への不利益取扱い、秘密漏えい、通報妨害、探索、労働法上の紛争、レピュテーションリスクは企業規模に関係なく発生する可能性があります。具体的な制度の厚みは、会社規模やリスクに応じて専門家へ相談する必要があります。

Q2. 匿名通報は受け付けた方がよいのですか。

一般的には、匿名通報も受け付けられる仕組みがあると重大不正の初期情報を拾いやすいとされています。ただし、匿名では追加確認が難しい場合があります。追加質問の方法、証拠資料の提出方法、虚偽通報への対応を整理したうえで制度設計を検討する必要があります。

Q3. 通報者に問題行動がある場合でも処分できないのですか。

一般的には、公益通報を理由とする処分は禁止されますが、通報者への処分が常に禁止されるわけではないとされています。ただし、通報後1年以内の解雇・懲戒では推定規定が問題になります。処分理由が公益通報とは無関係であり、必要性・相当性・均衡があることを記録で説明できるかを慎重に確認する必要があります。

Q4. 外部窓口を置けば社内体制整備は不要になりますか。

一般的には、外部窓口は有効な手段の一つですが、それだけで社内体制整備が不要になるわけではありません。受付後の調査、是正、不利益取扱い防止、周知、記録、取締役会報告と結びついて初めて機能します。外部窓口の役割と社内共有範囲を明確にする必要があります。

Q5. フリーランスへの周知はどの部門が担当しますか。

一般的には、法務・コンプライアンス部門が制度内容を設計し、購買部門・事業部門が契約・発注・業務開始・終了の各場面で周知する形が現実的とされています。ただし、会社の購買管理や契約管理の実態によって担当部門は変わるため、委託先台帳の整備を前提に役割分担を決める必要があります。

Q6. 通報者探索と正当な調査の境界はどこにありますか。

一般的には、目的と必要性が重要とされています。事実確認のために必要な範囲で関係者へ質問することは調査として必要な場合があります。他方、通報者を特定する目的で聞き込みを行うことや、被通報者・管理職に通報者探しをさせることは危険です。質問内容、共有範囲、担当者、記録を管理する必要があります。

Q7. どの資料を最優先で確認しますか。

一般的には、消費者庁の制度概要、令和7年改正概要、法定指針、指針の解説、公益通報者保護制度Q&A、事業者向けページ、e-Gov法令検索の条文を確認することが出発点になります。ただし、業種や会社規模により確認すべき法令・行政資料は変わるため、自社の対象法律とリスクを棚卸しする必要があります。

Section 14

改正公益通報者保護法で企業がすべきことのまとめ

施行日前の形式対応で終わらせず、通報が来たときに説明できる状態を作ります。

改正公益通報者保護法で企業がすべきことは、単に内部通報窓口を設置することではありません。企業は、通報を受け付け、通報者を守り、事実を調査し、違反を是正し、再発を防止し、その全過程を検証可能に記録する仕組みを構築する必要があります。

令和7年改正により、体制整備義務の実効性は行政措置・立入検査・罰則により強化されます。フリーランスも保護対象になります。通報妨害と通報者探索は明示的に禁止されます。通報後1年以内の解雇・懲戒には推定規定が働き、公益通報を理由とする解雇・懲戒には直罰が導入されます。

次の強調項目は、改正対応の最終的な判断軸を示しています。制度の完成度を見るうえで重要なのは、規程が存在するかではなく、従業員、役員、退職者、派遣労働者、フリーランスが重大な法令違反を知ったときに安心して通報できるかです。その問いに答えられる制度を作ることが、改正公益通報者保護法で企業がすべきことです。

内部通報制度は統治制度の再設計です

不祥事対応、労務管理、契約管理、情報管理、取締役会監督、内部監査を横断し、通報者保護と是正措置を実行できる状態にすることが重要です。

Reference

参考資料

制度概要、条文、事業者向け資料、Q&Aを中心に確認しています。

公的資料

  • 消費者庁「公益通報者保護法と制度の概要」
  • 消費者庁「改正概要(公益通報者保護法、法定指針)」
  • e-Gov法令検索「公益通報者保護法(平成16年法律第122号)」
  • 消費者庁「事業者の方へ」
  • 消費者庁「公益通報者保護法において通報の対象となる法律について」
  • 消費者庁「公益通報者保護制度Q&A」
  • 消費者庁「はじめての公益通報者保護法」