2σ Guide

通報者保護・
不利益取扱禁止条項の書き方

公益通報者保護法と令和7年改正を踏まえ、通報者を孤立させない条項設計を、社内規程、契約、退職合意、FAQまで整理します。

2026年12月1日令和7年改正の施行日
300人超体制整備義務の基準
1年以内解雇・懲戒推定の対象期間
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通報者保護・ 不利益取扱禁止条項の書き方

公益通報者保護法と令和7年改正を踏まえ、通報者を孤立させない条項設計を、社内規程、契約、退職合意、FAQまで整理します。

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通報者保護・ 不利益取扱禁止条項の書き方
公益通報者保護法と令和7年改正を踏まえ、通報者を孤立させない条項設計を、社内規程、契約、退職合意、FAQまで整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 通報者保護・ 不利益取扱禁止条項の書き方
  • 公益通報者保護法と令和7年改正を踏まえ、通報者を孤立させない条項設計を、社内規程、契約、退職合意、FAQまで整理します。

POINT 1

  • 通報者保護・不利益取扱禁止条項の書き方の全体像
  • 禁止文だけで終わらせず、保護対象、通報先、不利益の種類、救済手続まで条項化します。
  • 何を通報として保護するか
  • 誰を保護対象にするか
  • どの通報先を守るか

POINT 2

  • 公益通報者保護法と令和7年改正を条項に反映する
  • 現行法対応と令和8年12月1日施行後の対応を分けて、通報妨害や通報者探索まで明記します。
  • 通報者保護条項では、法律上の最低限だけでなく、社内制度として早期相談を促す範囲まで広げると運用しやすくなります。
  • 各行は、規程に入れるべき概念の入口を示します。
  • 施行日は令和8年12月1日であり、施行日前の規程では、現行法対応部分と施行後に適用する部分を分けて読む必要があります。

POINT 3

  • 通報者保護条項の定義は広く、しかし曖昧にしない
  • 公益通報、通報者、不利益取扱い、範囲外共有、通報者探索、通報妨害を定義します。
  • 通報者保護条項では、最初に用語をそろえる必要があります。
  • 法定の公益通報だけを保護対象にすると、通報時点で法律上の要件該当性が不明な相談や調査協力が漏れやすくなります。
  • 一方で、定義が曖昧すぎると担当者が何を禁止すべきか判断できません。

POINT 4

  • 通報者保護・不利益取扱禁止条項の基本原則
  • 1. 1. 通報等の受付と担当者限定:受付時点で通報者を特定させる情報を分離し、必要最小限の従事者だけが扱います。
  • 2. 2. 調査と保護措置の分離:事実確認を進めながら、配置、評価、契約更新、賞与、退職金への影響を監視します。
  • 3. 3. 1年以内の措置を事前審査:解雇、懲戒、雇止め、契約解除、降格、減給、評価不利益などは、通報を理由としない資料を確認します。
  • 4. 4. 関連性が疑われる場合は停止:関連性を否定できない場合は措置を停止し、独立担当者が理由、代替案、救済の要否を再確認します。
  • 5. 5. 記録と救済:理由書、協議記録、評価資料、契約資料を保存し、不利益があれば撤回、原状回復、再発防止を行います。

POINT 5

  • 社内規程で使う通報者保護・不利益取扱禁止条項例
  • 目的、定義、禁止行為、情報管理、救済、懲戒、教育まで、条項単位で整理します。
  • モデル条項は、会社の既存規程や組織体制に合わせて調整する必要があります。
  • ここでは、社内規程に入れる主要条項を、役割ごとに整理します。
  • 単に条文を並べるのではなく、どの条項がどのリスクを抑えるかを確認することが大切です。

POINT 6

  • NDA・退職合意・業務委託契約に入れる通報者保護条項
  • 秘密保持や清算条項が公益通報を妨げないよう、契約ごとに例外文を置きます。
  • 通報者保護条項は、社内規程だけに置いても足りません。
  • 秘密情報の開示禁止が、公益通報、行政機関への申告、捜査機関、監督官庁、裁判所、専門家への相談を妨げないことを明記します。
  • 一切の請求放棄や口外禁止が、公益通報、不利益取扱いに基づく請求、行政申告、調査協力を妨げないことを清算条項に加えます。

POINT 7

  • 通報者保護条項のレビューと悪い例の直し方
  • チェックリストで抜けを見つけ、内部窓口限定や秘密保持の絶対化を修正します。
  • 特に、社内規程だけを直しても、秘密保持契約や退職合意に古い文言が残ると矛盾が生じます。
  • 各行は、見落としやすい観点と確認すべき文言を対応させています。
  • 読み取るべきポイントは、通報者を守る条項が、情報管理、調査、労務、人事、契約終了、取引停止まで及ぶことです。

POINT 8

  • 通報者保護条項のよくある質問
  • 個別事案の結論ではなく、一般的な制度理解と実務上の注意点を整理します。
  • Q1. 公益通報者保護法上の公益通報だけを対象にすれば足りますか。
  • Q2. 匿名通報も保護対象にする必要がありますか。
  • Q3. 上司が事実確認のために通報者を探すことは許されますか。

まとめ

  • 通報者保護・ 不利益取扱禁止条項の書き方
  • 通報者保護・不利益取扱禁止条項の書き方の全体像:禁止文だけで終わらせず、保護対象、通報先、不利益の種類、救済手続まで条項化します。
  • 公益通報者保護法と令和7年改正を条項に反映する:現行法対応と令和8年12月1日施行後の対応を分けて、通報妨害や通報者探索まで明記します。
  • 通報者保護条項の定義は広く、しかし曖昧にしない:公益通報、通報者、不利益取扱い、範囲外共有、通報者探索、通報妨害を定義します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

通報者保護・不利益取扱禁止条項の書き方の全体像

禁止文だけで終わらせず、保護対象、通報先、不利益の種類、救済手続まで条項化します。

通報者保護・不利益取扱禁止条項の書き方で最も重要なのは、「会社は通報者に不利益な取扱いをしません」という一文だけで終わらせないことです。通報者が安心して通報でき、通報後も孤立せず、調査と是正が利益相反なく進む仕組みを、社内規程、就業規則、秘密保持契約、退職合意、業務委託契約に横断して入れる必要があります。

次の一覧は、条項に必ず入れたい6つの設計要素を表します。各項目は、通報者が実際に恐れやすい不利益を防ぐために重要です。読み取るべきポイントは、保護の対象を人、通報内容、通報先、禁止行為、情報管理、救済措置に分け、どれか一つを欠くと制度全体が弱くなる点です。

Scope

何を通報として保護するか

公益通報だけでなく、社内規程違反、企業倫理、会計、品質、安全衛生、情報管理、人権、ハラスメント、競争法、贈収賄防止、利益相反などの相談、報告、情報提供、調査協力まで含めます。

Person

誰を保護対象にするか

労働者、派遣労働者、退職者、役員、取引先、業務委託先、フリーランス、調査協力者、通報したと誤認された人まで含める設計が実務上有効です。

Route

どの通報先を守るか

内部窓口だけでなく、行政機関、報道機関、消費者団体、労働組合、外部専門家など、法令上認められる通報や相談を不当に狭めないことが重要です。

Conduct

どの行為を禁止するか

解雇、懲戒、雇止め、契約解除、降格、減給、評価不利益、配置転換、取引停止、報酬減額、嫌がらせ、退職金や賞与での不利益を例示します。

Control

情報共有をどう制限するか

通報者を特定させる情報は、必要最小限の担当者だけが扱います。通報者探索、範囲外共有、口止め、外部通報の一律禁止を明確に禁じます。

Remedy

起きた場合にどう戻すか

不利益取扱いが疑われる場合の調査、撤回、原状回復、評価修正、再発防止、関係者への懲戒を定め、保護を宣言で終わらせないようにします。

条項例会社は、通報者又は調査協力者が通報等を行ったことを理由として、解雇、懲戒、雇止め、契約解除、降格、減給、評価上の不利益、配置転換、取引停止、報酬減額、嫌がらせその他不利益となる取扱いを行いません。会社は、不利益取扱いが疑われる場合、事実確認、救済、原状回復及び再発防止に必要な措置を講じます。

条項の中心は、「通報者を罰しない」から「通報者を孤立させない」へ移す必要があります。仕事を外される、評価を下げられる、上司から通報の理由を問い詰められる、秘密保持違反だと警告されるといった現実的な不安を、具体的な禁止行為と手続で受け止めることが大切です。

Section 01

公益通報者保護法と令和7年改正を条項に反映する

現行法対応と令和8年12月1日施行後の対応を分けて、通報妨害や通報者探索まで明記します。

公益通報者保護法は、労働者、退職者、役員などが事業者の法令違反を一定の通報先へ公益通報した場合に、解雇その他不利益な取扱いを受けないようにする制度です。通報者保護条項では、法律上の最低限だけでなく、社内制度として早期相談を促す範囲まで広げると運用しやすくなります。

次の表は、公益通報者保護法の基本構造を、条項化するときの意味に置き換えたものです。各行は、規程に入れるべき概念の入口を示します。読み取るべきポイントは、保護対象者、通報対象事実、通報先、守秘義務、体制整備を別々に定義しないと、保護範囲が不明確になる点です。

項目条項化するときの意味
公益通報の定義不正の目的でなく、一定の通報対象事実について、一定の通報先に通報することをいいます。社内規程では、法定の公益通報と社内制度上の通報等を区別して書くと整理しやすくなります。
保護対象者現行法上の労働者、退職者、役員等に加え、取引先側の労働者や役員も関係し得ます。令和7年改正の施行後はフリーランス等も加わるため、業務委託契約にも条項を置きます。
通報対象事実国民の生命、身体、財産等の保護に関する法律に規定される犯罪行為、過料対象行為、刑罰や過料につながる行為が中心です。社内制度では、企業倫理や人権、会計、品質も含めると実務上扱いやすくなります。
通報先事業者内部、権限を有する行政機関、報道機関等の外部通報先があります。内部窓口だけを保護する文言は、法定の外部通報を狭めるように読まれるおそれがあります。
体制整備常時使用する労働者数300人超の事業者は、従事者の指定や内部公益通報対応体制の整備が義務になります。300人以下の事業者も努力義務を踏まえた最低限の規程が必要です。
守秘義務公益通報対応業務従事者には、通報者を特定させる事項について守秘義務があります。氏名だけでなく、所属、事案、時期などから推知される情報も管理対象にします。

次の表は、令和7年改正の主な内容と、条項へ落とし込むときの修正方向を示します。施行日は令和8年12月1日であり、施行日前の規程では、現行法対応部分と施行後に適用する部分を分けて読む必要があります。

改正項目条項への反映
フリーランス等の保護対象化業務委託契約、委任契約、準委任契約、外部人材契約、取引基本契約にも、通報者保護、不利益取扱禁止、秘密保持例外を置きます。
通報妨害の禁止公益通報をしない合意、口止め、外部通報の一律禁止、通報時の事前承認要求を禁止又は無効と明記します。
通報者探索の禁止通報者を特定する目的の質問、聞き込み、ログ照合、資料閲覧者の洗い出しを、正当な理由がある例外を除いて禁止します。
通報後1年以内の解雇又は懲戒の推定解雇、懲戒、雇止め、契約解除、降格、評価変更などについて、独立審査、理由書、客観資料、証跡保存を求めます。
解雇、懲戒に対する刑事罰取締役、人事、管理職、事業部門長に対し、通報者情報の取扱いと不利益措置の承認手続を教育します。
行政措置の強化従事者指定、内部規程、周知、教育、記録化を明文化し、対応体制が形式だけにならないようにします。
注意2026年12月1日前に規程を改定する場合は、「改正法施行に対応する部分は施行日から適用します。ただし、会社は施行日前であっても、通報者保護の趣旨に照らし、可能な限り本規程に沿って対応します」という注記を置く方法があります。

公開ページでは、現行法上の義務と施行後に強化される事項を混同しないことが重要です。特に、令和7年改正施行後は一定の解雇や懲戒について抑止と救済が強化されるため、人事措置の承認手続と記録保存を条項に入れる必要があります。

Section 02

通報者保護条項の定義は広く、しかし曖昧にしない

公益通報、通報者、不利益取扱い、範囲外共有、通報者探索、通報妨害を定義します。

通報者保護条項では、最初に用語をそろえる必要があります。法定の公益通報だけを保護対象にすると、通報時点で法律上の要件該当性が不明な相談や調査協力が漏れやすくなります。一方で、定義が曖昧すぎると担当者が何を禁止すべきか判断できません。

次の表は、条項の前に定義しておきたい主要概念を整理したものです。各列は、用語、書き方、実務上の注意を対応させています。読み取るべきポイントは、公益通報者保護法上の概念と、会社の社内制度として広く保護する概念を分けることです。

用語書き方実務上の注意
公益通報公益通報者保護法に定める公益通報を指すものとして、法律上の保護要件に結び付けます。法定要件を満たすかは事後的に争われることがあるため、窓口段階で早期に切り捨てない運用が必要です。
通報等公益通報のほか、法令、社内規程、企業倫理、会計、品質、安全衛生、情報管理、人権、ハラスメント、競争法、贈収賄防止、利益相反に関する相談、報告、情報提供、調査協力を含めます。社内制度として広く保護すると、問題の早期把握と是正につながります。
通報者労働者、派遣労働者、退職者、役員、取引先、業務委託先、フリーランス、調査協力者、通報したと誤認された者を含めます。不利益は本人だけでなく協力者や周辺者に及ぶことがあるため、保護対象を広げます。
不利益な取扱い解雇、退職強要、雇止め、契約解除、降格、休職、配置転換、出向、評価不利益、減給、賞与、退職金、報酬減額、取引停止、嫌がらせなどを例示します。列挙は限定ではなく例示であると明記します。
範囲外共有通報者を特定させる事項を、必要最小限の範囲を超えて共有する行為を指します。氏名だけでなく、所属、時期、事案、アクセスログなどから推知される情報も含めます。
通報者探索通報者を特定する目的で質問、聞き込み、ログ照合、資料閲覧者の洗い出しを行うことを指します。正当な理由がない探索は禁止し、必要な調査は独立した担当者が最小限で行います。
通報妨害公益通報をしない合意、外部通報禁止、事前承認要求、口止め、秘密保持違反の警告などにより通報を萎縮させる行為を指します。NDA、退職合意、和解、誓約書、懲戒規程との整合が必要です。

次の比較表は、通報妨害につながりやすい危険な文言と、なぜ問題になるかを示します。文言単体だけでなく、秘密保持条項や退職合意の文脈で読むことが重要です。読み取るべきポイントは、会社情報を守る条項でも、公益通報や行政申告、専門家相談まで禁じるように読めると制度全体と矛盾する点です。

危険な文言問題点修正方向
会社の許可なく行政機関、報道機関、外部専門家へ情報提供してはいけません。公益通報や法令上の申告まで禁止するように読めます。法令上認められる公益通報、行政機関への申告、専門家相談を妨げない旨を加えます。
退職後、会社に関する一切の事実を第三者に開示しません。退職者の公益通報や調査協力を萎縮させます。秘密情報の範囲を限定し、公益通報、裁判所、捜査機関、監督官庁、専門家への相談を例外にします。
本件について今後一切異議、申立て、通報、請求をしません。不利益取扱いに基づく権利行使や公益通報まで放棄させるおそれがあります。清算条項は、強行法規上の権利、公益通報、行政申告を妨げないと明記します。
内部通報制度を利用せず外部へ通報した場合は懲戒します。法定の外部通報を一律に妨げます。法令に基づく通報先の選択を尊重し、社内窓口利用を推奨にとどめます。
通報前に必ず上長へ相談してください。上長が関係者の場合に通報を萎縮させ、法定要件を上乗せするおそれがあります。内部窓口、監査役、社外窓口、行政機関等を選べる設計にします。
条項例本規程において「通報等」とは、公益通報者保護法に定める公益通報に該当するもののほか、法令、社内規程、企業倫理、会計、品質、安全衛生、情報管理、人権、ハラスメント、競争法、贈収賄防止、利益相反その他コンプライアンス上の問題に関する報告、相談、情報提供及び調査協力をいいます。
Section 03

通報者保護・不利益取扱禁止条項の基本原則

法定保護より狭く書かず、通報後1年以内の人事措置を厳格に確認します。

条項設計の原則は、法定保護より狭く書かないこと、公益通報と内部通報を混同しないこと、保護対象者を広めに置くこと、故意の虚偽通報を過度に強調しないこと、通報後の人事や契約措置を統制することです。

次の判断の流れは、通報後に人事、懲戒、契約解除、評価変更、報酬減額などを検討する場面の確認順序を表します。順番に意味があり、最初に通報者情報を知る範囲を絞り、その後に措置理由を客観資料で確認します。読み取るべきポイントは、通報と措置の関連性を後から説明できる記録を残すことです。

通報後の不利益措置を避ける確認順序

1. 通報等の受付と担当者限定

受付時点で通報者を特定させる情報を分離し、必要最小限の従事者だけが扱います。

2. 調査と保護措置の分離

事実確認を進めながら、配置、評価、契約更新、賞与、退職金への影響を監視します。

3. 1年以内の措置を事前審査

解雇、懲戒、雇止め、契約解除、降格、減給、評価不利益などは、通報を理由としない資料を確認します。

4. 関連性が疑われる場合は停止

関連性を否定できない場合は措置を停止し、独立担当者が理由、代替案、救済の要否を再確認します。

5. 記録と救済

理由書、協議記録、評価資料、契約資料を保存し、不利益があれば撤回、原状回復、再発防止を行います。

条項例会社は、通報者又は調査協力者に対し、通報等の日から1年以内に解雇、懲戒、雇止め、契約解除、降格、減給、評価上の不利益、配置転換、取引停止、報酬減額その他不利益となり得る措置を行おうとするときは、当該措置が通報等を理由とするものではないことを客観的資料に基づき確認し、法務部門又はコンプライアンス部門の事前審査を受けます。
条項例本条は、公益通報者保護法その他法令に基づく公益通報、行政機関への申告、捜査機関、監督官庁、裁判所、弁護士、公認会計士その他専門家への相談又は情報提供を禁止し、制限し、又はこれらを理由として不利益な取扱いを行う趣旨ではありません。
注意故意の虚偽通報や不正目的通報を除外する文言は必要ですが、冒頭で強く打ち出すと通報者を萎縮させます。結果として事実と異なる通報と、故意に虚偽を告げる通報は分けて扱います。

社内規程では、公益通報者保護法上の保護を狭めないことに加え、社内制度上の通報、相談、調査協力まで守ることが実務的です。窓口担当者が「これは公益通報ではありません」と早期に切り捨てる設計は、制度の実効性を損ないます。

Section 04

社内規程で使う通報者保護・不利益取扱禁止条項例

目的、定義、禁止行為、情報管理、救済、懲戒、教育まで、条項単位で整理します。

モデル条項は、会社の既存規程や組織体制に合わせて調整する必要があります。ここでは、社内規程に入れる主要条項を、役割ごとに整理します。単に条文を並べるのではなく、どの条項がどのリスクを抑えるかを確認することが大切です。

次の一覧は、社内規程で必要になりやすい条項と、その狙いを表します。左から順に、条項のテーマ、入れるべき内容、実務上の注意を示しています。読み取るべきポイントは、不利益取扱いの禁止だけでなく、受付、調査、情報管理、救済、教育、見直しまで一体で定める必要がある点です。

条項テーマ入れる内容実務上の注意
目的通報者及び調査協力者を保護し、通報等を理由とする不利益な取扱いを禁止し、法令遵守、内部統制、自浄作用を確保します。会社が法律相談を行うような表現ではなく、社内体制整備の目的として書きます。
通報等の範囲公益通報のほか、社内規程違反、企業倫理、会計、品質、安全、情報管理、人権、ハラスメント、競争法、贈収賄防止、利益相反を含めます。法定の公益通報だけに限定しないことで、早期相談を保護します。
保護対象者労働者、派遣労働者、退職者、役員、取引先、業務委託先、フリーランス、調査協力者、誤認された者を含めます。令和7年改正施行後のフリーランス追加に対応できるよう契約側にも反映します。
不利益取扱いの禁止解雇、懲戒、退職強要、雇止め、契約解除、降格、減給、評価、配置転換、取引停止、報酬減額、嫌がらせを例示します。限定列挙ではなく例示である旨を添えます。
通報妨害の禁止公益通報をしない合意、口止め、外部通報禁止、事前承認要求、秘密保持違反の警告を禁じます。NDA、退職合意、和解、懲戒規程にも同じ例外文を入れます。
通報者探索の禁止通報者を特定する目的の質問、聞き込み、ログ照合、資料閲覧者の洗い出しを禁じます。正当な理由がある場合でも、目的、範囲、担当者、記録を限定します。
範囲外共有の禁止通報者を特定させる情報の共有範囲を必要最小限に限定します。氏名、所属、事案、時期、証拠、ログなど推知情報も対象にします。
従事者指定受付、調査、是正、通報者保護に関与する担当者を書面等で指定します。指定、教育、守秘義務、退任後の義務、記録化をセットで定めます。
利益相反排除被通報者、関係部署、利害関係者を調査から外し、経営陣案件は独立ルートを置きます。監査役、社外役員、外部専門家など通常ライン外の経路を用意します。
救済と回復不利益取扱いが疑われる場合の調査、撤回、原状回復、評価修正、再発防止を定めます。通報者本人が不利益を訴えやすい窓口を明示します。
懲戒と是正不利益取扱い、範囲外共有、通報者探索、通報妨害を行った者への措置を定めます。処分だけでなく、教育、配置、権限見直し、再発防止を含めます。
周知と教育労働者、役員、退職者、取引先、フリーランスに制度を周知します。管理職、人事、法務、監査、窓口担当者には具体例で教育します。
条項例会社は、通報等の内容が結果として事実と異なることが判明した場合であっても、通報者が故意に虚偽の事実を告げた場合又は不正の目的で通報等を行った場合を除き、当該通報等を理由として不利益な取扱いを行いません。
条項例会社は、不利益取扱い、範囲外共有、通報者探索又は通報妨害が疑われる場合、速やかに事実確認を行い、必要に応じて当該行為の停止、撤回、原状回復、評価修正、配置上の配慮、関係者への措置及び再発防止を行います。

社内規程用の条項は、現場で運用できる粒度にすることが重要です。たとえば「不利益な取扱いを禁止します」だけでは、評価、賞与、退職金、契約更新、取引停止、報酬減額に現れる不利益を見落としやすくなります。

Section 05

NDA・退職合意・業務委託契約に入れる通報者保護条項

秘密保持や清算条項が公益通報を妨げないよう、契約ごとに例外文を置きます。

通報者保護条項は、社内規程だけに置いても足りません。秘密保持契約、雇用契約、退職合意、和解契約、業務委託契約、取引基本契約、サプライヤー行動規範の文言が公益通報を萎縮させる場合、制度全体が矛盾します。

次の一覧は、契約類型ごとにどの通報者保護条項を入れるかを示します。契約の種類によって問題になりやすい不利益が異なるため、読み取るべきポイントは、秘密保持、契約解除、報酬、取引停止、清算条項をそれぞれ調整する点です。

N

秘密保持契約・NDA

秘密情報の開示禁止が、公益通報、行政機関への申告、捜査機関、監督官庁、裁判所、専門家への相談を妨げないことを明記します。

秘密保持例外文
E

退職合意・退職時誓約書

一切の請求放棄や口外禁止が、公益通報、不利益取扱いに基づく請求、行政申告、調査協力を妨げないことを清算条項に加えます。

退職清算条項
O

業務委託契約

委託先、個人事業主、フリーランスが法令違反や品質不正を通報したことを理由に、契約解除、発注停止、報酬減額、評価不利益を受けないよう定めます。

業務委託フリーランス
S

サプライヤー契約

サプライチェーン上の人権、品質、安全、贈収賄、下請法、競争法に関する通報を受け付け、通報者や所属会社への報復を禁止します。

取引基本人権
W

和解契約

和解により紛争を終了させる場合も、公益通報、法令上の証言、捜査や調査への協力、専門家相談を妨げないことを確認します。

和解調査協力
G

グループ会社規程

親会社、子会社、関連会社の共通窓口を使う場合、共有範囲、個人情報、海外法令、不利益時の親会社の介入権限を定めます。

グループ海外
条項例本条は、公益通報者保護法その他法令に基づく公益通報、行政機関への申告、捜査機関、監督官庁、裁判所、弁護士、公認会計士その他専門家への相談又は情報提供を禁止し、制限し、又はこれらを理由として不利益な取扱いを行う趣旨ではありません。
条項例委託者は、受託者、受託者の役員、従業員、再委託先又は業務従事者が、法令違反、品質不正、人権侵害、情報管理上の問題その他コンプライアンス上の問題について通報、相談又は調査協力を行ったことを理由として、契約解除、発注停止、報酬減額、取引数量の削減、評価上の不利益その他不利益となる取扱いを行いません。
条項例本合意の清算条項は、公益通報又は通報等を理由とする不利益な取扱いに基づく請求、公益通報者保護法その他強行法規に基づく権利、行政機関への申告又は協力に関する権利を放棄させる趣旨ではありません。

常時使用する労働者数が300人以下の事業者でも、条項不要という結論にはなりません。小規模組織では通報者が推測されやすく、経営者、上司、人事担当者の距離が近いため、通報者探索や評価不利益が起きやすいからです。最低限、窓口、不利益取扱い禁止、範囲外共有禁止、経営陣案件の独立ルートを置くことが重要です。

Section 06

通報者保護条項のレビューと悪い例の直し方

チェックリストで抜けを見つけ、内部窓口限定や秘密保持の絶対化を修正します。

条項レビューでは、保護対象者、通報対象、通報先、不利益取扱い、通報妨害、通報者探索、範囲外共有、救済、周知教育を横断的に確認します。特に、社内規程だけを直しても、秘密保持契約や退職合意に古い文言が残ると矛盾が生じます。

次の表は、レビュー時の確認事項を一覧化したものです。各行は、見落としやすい観点と確認すべき文言を対応させています。読み取るべきポイントは、通報者を守る条項が、情報管理、調査、労務、人事、契約終了、取引停止まで及ぶことです。

観点確認事項
保護対象者労働者、派遣労働者、退職者、役員、取引先、業務委託先、フリーランス、調査協力者、通報者と誤認された者を含めていますか。
通報対象公益通報に限定せず、社内規程違反、企業倫理、会計、品質、安全、労務、人権、情報管理を含めていますか。
通報先内部窓口だけでなく、行政機関、報道機関、専門家等への法令上認められる通報を妨げていませんか。
不利益取扱い解雇、懲戒、雇止め、契約解除、降格、減給、評価、異動、取引停止、報酬減額、嫌がらせを具体的に列挙していますか。
通報妨害誓約書、退職合意、NDA、上長承認、外部通報禁止による萎縮を防いでいますか。
通報者探索通報者の特定を目的とする質問、ログ調査、聞き込みを禁止していますか。
範囲外共有氏名だけでなく推知情報を含め、必要最小限共有を定めていますか。
従事者書面指定、守秘義務、教育、記録化がありますか。
利益相反関係者を調査から外し、経営陣案件は独立ルートを用意していますか。
通報後人事通報後1年以内の不利益措置について、事前審査と証跡保存を定めていますか。
救済不利益取扱いが起きた場合の撤回、原状回復、評価修正、懲戒、再発防止を定めていますか。
秘密保持公益通報、行政申告、専門家相談の例外を置いていますか。

次の比較表は、悪い条項例と修正例を並べています。左列はリスクのある文言、中央列は問題点、右列は修正方向です。読み取るべきポイントは、「外部に出すな」「一切請求しない」「虚偽なら処分」という強い言い方を、公益通報や法令上の権利を妨げない文言へ置き換えることです。

悪い例問題点修正例
社外通報を一律に禁止します。公益通報者保護法が一定要件で行政機関や報道機関等への通報を保護する構造と合いません。従業員は社内通報窓口を利用できます。会社は、法令に基づく行政機関、報道機関その他適切な通報先への通報を妨げません。
虚偽通報をした者は理由を問わず懲戒します。結果として事実と異なる通報まで萎縮させるおそれがあります。故意に虚偽の事実を告げた場合又は不正の目的で通報等を行った場合を除き、結果的な誤りを理由として不利益に扱いません。
会社秘密を第三者へ開示してはいけません。公益通報、行政申告、専門家相談まで秘密保持違反と読めるおそれがあります。秘密保持義務は、公益通報、行政機関への申告、捜査機関、裁判所、専門家への相談又は情報提供を禁止又は制限する趣旨ではないと明記します。
退職後、一切の請求、申立て、通報をしません。公益通報、不利益取扱いに基づく請求、強行法規上の権利まで放棄させるように読めます。清算条項は、公益通報、行政機関への申告、法令上の権利行使、不利益取扱いに基づく請求を妨げないと明記します。

部門別には、法務は規程と契約の整合性、人事は評価や異動への影響、内部監査は範囲外共有と利益相反、取締役会は経営陣案件の独立性を確認します。通報制度は一つの規程だけではなく、組織全体の運用として点検する必要があります。

FAQ

通報者保護条項のよくある質問

個別事案の結論ではなく、一般的な制度理解と実務上の注意点を整理します。

Q1. 公益通報者保護法上の公益通報だけを対象にすれば足りますか。

一般的には、法定の公益通報だけに限定すると、通報時点で要件該当性が不明な相談、社内規程違反、企業倫理違反、ハラスメント、人権問題、会計上の懸念、情報管理上の問題が保護対象から漏れる可能性があります。社内制度では、公益通報に加え、広い意味の通報、相談、報告、調査協力を保護する設計が実務上検討されます。具体的な範囲は、会社の制度とリスクを踏まえて弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 匿名通報も保護対象にする必要がありますか。

一般的には、匿名通報を受け付ける設計は通報者の心理的負担を下げるとされています。ただし、匿名の場合は追加確認が難しいため、調査方法や連絡手段を別途検討する必要があります。匿名通報であっても、通報者が判明した場合に不利益取扱いを禁止し、匿名性を不当に破らないことを条項化する方法があります。

Q3. 上司が事実確認のために通報者を探すことは許されますか。

一般的には、正当な理由なく通報者を特定する目的の質問、聞き込み、ログ照合を行うことは避けるべき対応とされています。調査に必要な確認であっても、目的、担当者、範囲、記録を限定する必要があります。具体的には事案の性質、証拠関係、調査体制によって判断が変わるため、専門家に相談する必要があります。

Q4. 通報内容が間違っていた場合に懲戒できますか。

一般的には、結果として事実と異なる通報であったことだけを理由に懲戒する設計は、通報制度を萎縮させる可能性があります。故意に虚偽の事実を告げた場合や不正の目的がある場合は別途検討されますが、証拠関係や動機、調査経緯によって結論は変わります。具体的な処分判断は専門家へ相談する必要があります。

Q5. 秘密情報を外部に出した通報者を処分できますか。

一般的には、公益通報者保護法その他法令上保護される通報であり、通報に必要かつ相当な範囲の情報提供であれば、秘密保持違反を理由とする不利益取扱いは慎重に検討されます。一方で、必要な範囲を明らかに超える情報流出や不正目的の開示まで一律に保護されるわけではありません。具体的な判断は情報の内容、通報先、目的、範囲によって変わります。

Q6. 通報後に評価を下げることはできますか。

一般的には、通報と無関係な客観的評価理由があり、通常の評価手続に沿っている場合でも、通報後の評価不利益は慎重に扱う必要があります。令和7年改正施行後は、通報後1年以内の一定の解雇や懲戒について推定規定が問題になります。評価、配置、賞与、退職金への影響も証拠化して確認する必要があります。

Q7. 退職合意で一切の請求放棄を書いてよいですか。

一般的には、公益通報や通報を理由とする不利益取扱いに基づく請求まで放棄させるように読める文言は避ける必要があります。清算条項には、公益通報、行政機関への申告、法令上の権利行使、不利益取扱いに基づく請求を妨げない旨を明記する方法があります。具体的な文言は合意内容によって変わります。

Q8. 取引先の従業員からの通報も保護する必要がありますか。

一般的には、取引先事業者の労働者、退職者、役員が一定の場合に公益通報の主体となり得るため、サプライチェーンや業務委託先からの通報も保護対象として検討されます。品質不正、人権侵害、贈収賄、下請法違反などは取引先から発覚することもあります。取引基本契約やサプライヤー行動規範での整備が重要です。

Reference

参考資料

公益通報者保護制度と事業者の体制整備に関する公的資料を整理します。

  • 消費者庁「公益通報者保護法と制度の概要」
  • 消費者庁「公益通報者保護法に関するQ&A(基本的事項)」
  • 消費者庁「公益通報者保護法において通報の対象となる法律について」
  • 消費者庁「通報者の方へ」
  • 消費者庁「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項に基づく法定指針」
  • 消費者庁「公益通報者保護法に基づく指針の解説」
  • 消費者庁「法定指針の改正」
  • 消費者庁「改正概要(公益通報者保護法、法定指針)」
  • 政府広報オンライン「公益通報者保護法が改正。内部通報制度で不正を止めるための解説」
  • 消費者庁「罰則その他事項に関するQ&A」
  • 消費者庁「第11条(事業者がとるべき措置)」
  • 消費者庁「第12条(公益通報対応業務従事者の義務)」