2σ Guide

使用証拠を求められた時の
提出資料と商標実務

不使用取消審判、商標審査、警告書対応、ライセンス監査で求められる資料を、要件ごとに整理し、客観資料の連鎖として組み立てるための企業法務向けガイドです。

3年不使用取消審判の要証期間
6要素時期・国内・主体・対象・商標・態様
10分類提出資料チェックリスト
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使用証拠を求められた時の 提出資料と商標実務

単独資料ではなく、商標使用を要件ごとに結びつける設計として捉えます。

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使用証拠を求められた時の 提出資料と商標実務
単独資料ではなく、商標使用を要件ごとに結びつける設計として捉えます。
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  • 使用証拠を求められた時の 提出資料と商標実務
  • 単独資料ではなく、商標使用を要件ごとに結びつける設計として捉えます。

POINT 1

  • 使用証拠を求められた時の提出資料の全体像
  • 単独資料ではなく、商標使用を要件ごとに結びつける設計として捉えます。
  • 提出資料の核は客観資料の連鎖です
  • 使用証拠を求められた時の提出資料は、商品写真やウェブ画面を単発で出すものではありません。

POINT 2

  • 使用証拠とは何を証明する資料か
  • 商標表示だけでなく、商品・役務、時期、主体、国内使用、使用態様まで説明できる資料群です。
  • 不使用取消審判
  • 商標登録出願
  • 警告書・紛争対応

POINT 3

  • 使用証拠を求められる主要場面
  • 不使用取消審判、審査、紛争、契約監査では、同じ資料でも使い方が変わります。
  • 不使用取消審判を請求された場合
  • 商標登録出願の審査で使用又は使用意思を確認される場合
  • 警告書、侵害紛争、交渉、契約監査で求められる場合

POINT 4

  • 使用証拠の法的要件と不使用取消審判
  • 1. 請求範囲を読む:審判請求書で取消しを求められている指定商品・指定役務を確認します。
  • 2. 社内分類と照合:商品名、SKU、サービス名、プラン名、カタログ分類を登録上の表示に対応させます。
  • 3. 商標の同一性を確認:登録商標そのものか、社会通念上同一と説明できる表示かを比較します。
  • 4. 取引・公開資料へ:日付、国内使用、主体、使用態様を裏付けます。
  • 5. 補強又は見直し:対応表、同一性説明、別商標出願、対象範囲の見直しを検討します。

POINT 5

  • 使用証拠を求められた時の提出資料チェックリスト
  • 権利範囲、商標表示、商品・役務、取引、時期、場所、主体を分けて確認します。
  • この一覧のうち、最重要は商標表示資料、商品・役務特定資料、取引資料、時期資料、使用主体資料です。
  • 広告的使用の場合は、公開・頒布資料も同じくらい重要になります。

POINT 6

  • 使用証拠の提出資料を商品・役務・広告・SaaS別に整理
  • 事業モデルごとに、商標表示、取引、公開、国内性、使用主体の示し方が変わります。
  • 商品に商標を付して販売している場合
  • 役務、サービス、店舗ビジネスの場合
  • EC、オンラインショップ、プラットフォームの場合

POINT 7

  • 使用証拠は証明の連鎖で組み立てる
  • 1. 登録商標:登録原簿、公報、商標画像で権利内容を示します。
  • 2. 実使用商標:商品写真、Web画面、広告に表示された商標を示します。
  • 3. 商品又は役務:SKU、型番、サービス説明、指定商品・役務対応表で対象をつなげます。
  • 4. 取引又は公開:注文書、納品書、請求書、広告掲載証明、ログで実際の使用を補います。
  • 5. 時期・国内・主体:日付、住所、契約主体、ライセンス契約で6要素の不足を埋めます。
  • 6. 立証趣旨:証拠説明書、陳述書、主張書面で資料の意味を言語化します。

POINT 8

  • 使用証拠を求められた時の手続別対応
  • 1. 請求範囲と期限の確認:審判請求書、請求対象、予告登録日、答弁期限を法務、知財、外部専門家で確認します。
  • 2. 要証事項の棚卸し:要証期間、対象商品・役務、使用主体、使用商標を事業部や営業、マーケティングと確認します。
  • 3. 証拠収集と対応表作成:原本確認、写真、取引資料、広告資料、ログを集め、資料間の対応表を作成します。
  • 4. 提出書類の準備:証拠説明書、答弁書、陳述書、マスキング方針、翻訳を準備します。
  • 5. 証拠の穴を再確認:請求対象との対応、提出形式、個人情報・営業秘密の扱いを最終確認します。

まとめ

  • 使用証拠を求められた時の 提出資料と商標実務
  • 使用証拠を求められた時の提出資料の全体像:単独資料ではなく、商標使用を要件ごとに結びつける設計として捉えます。
  • 使用証拠とは何を証明する資料か:商標表示だけでなく、商品・役務、時期、主体、国内使用、使用態様まで説明できる資料群です。
  • 使用証拠を求められる主要場面:不使用取消審判、審査、紛争、契約監査では、同じ資料でも使い方が変わります。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

使用証拠を求められた時の提出資料の全体像

単独資料ではなく、商標使用を要件ごとに結びつける設計として捉えます。

使用証拠を求められた時の提出資料は、商品写真やウェブ画面を単発で出すものではありません。その商標が、いつ、どこで、誰によって、どの商品又は役務について、どのような態様で使われたかを、客観資料の組合せで説明できるように整えるものです。

次の重要ポイントは、このページ全体で扱う立証設計の中心を表しています。商標登録を守る場面では要件を外すと資料の量が多くても評価されにくいため、読者は期間、国内使用、使用主体、対象商品・役務、商標同一性、使用態様の6要素を必ず同時に確認する必要があります。

提出資料の核は客観資料の連鎖です

不使用取消審判では、審判請求の登録前3年以内に、日本国内で、商標権者・専用使用権者・通常使用権者のいずれかが、請求対象の商品又は役務について、登録商標又は社会通念上同一の商標を使用していたことを示す必要があります。

実務上は、商標が表示された商品・包装の写真、商品を特定できる注文書・納品書・請求書・領収書、販売先や販売地域を示す資料、商標権者又は使用権者との関係資料、証拠説明書をつなげて提出します。ウェブサイトや広告を使う場合も、商標、日付、URL、運営主体、商品・役務との関係、公開又は頒布の事実を補う資料が必要になります。

注意このページは一般的な情報提供です。個別案件では、商標、指定商品・指定役務、請求範囲、証拠状況、提出期限、手続段階によって結論が変わります。具体的な対応は弁護士・弁理士等の専門家に確認する必要があります。
Section 01

使用証拠とは何を証明する資料か

商標表示だけでなく、商品・役務、時期、主体、国内使用、使用態様まで説明できる資料群です。

ここでいう使用証拠とは、主に商標の使用を証明する資料です。商標には、商品名、サービス名、ロゴ、ブランド名、店舗名、アプリ名、サービスロゴなど、事業者の商品又は役務を示す標識が含まれます。

次の一覧は、使用証拠を求められる場面を整理したものです。場面ごとに立証目的が異なるため、読者は自社がどの手続や交渉で資料を求められているのかを先に特定し、提出範囲と開示水準を読み分けることが重要です。

審判

不使用取消審判

登録商標を要証期間内に日本国内で使用していたことを、商標権者側が客観資料で示す場面です。

審査

商標登録出願

指定商品又は指定役務について、実際の使用又は使用意思があることを説明する場面です。

交渉

警告書・紛争対応

相手方に使用実態、使用開始時期、対象商品・役務を説明し、交渉や公的手続に備える場面です。

監査

ライセンス・社内管理

使用権者や事業部門から使用状況を報告させ、ブランド管理と将来の証拠保存につなげる場面です。

特に不使用取消審判は、登録商標を実際に使っていたとしても、それを証明できなければ登録が取り消されるリスクがあります。そのため、このページでは不使用取消審判を中心に、審査、紛争、契約管理、社内証跡管理まで含めて整理します。

Section 02

使用証拠を求められる主要場面

不使用取消審判、審査、紛争、契約監査では、同じ資料でも使い方が変わります。

不使用取消審判を請求された場合

日本では、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が、継続して3年以上、日本国内で、指定商品又は指定役務について登録商標を使用していない場合、何人も、その指定商品又は指定役務に関する商標登録の取消しを請求できます。

  • 期間は審判請求日ではなく、原則として審判請求の登録日、つまり予告登録日の前3年以内です。
  • 使用場所は日本国内である必要があります。
  • 使用主体は商標権者、専用使用権者又は通常使用権者である必要があります。
  • 使用対象は請求に係る指定商品又は指定役務に含まれる商品・役務である必要があります。
  • 使用商標は登録商標そのもの又は社会通念上同一と認められる商標である必要があります。
  • 使用態様は商標法2条3項各号のいずれかに該当する必要があります。

商標登録出願の審査で使用又は使用意思を確認される場合

審査では、出願人が指定商品又は指定役務に係る業務を行っていること、又は今後行う予定があることを示す資料が重視されます。カタログ、ちらし、店舗写真、業務内容を紹介する記事、売上高資料、使用意思を明記した文書、準備状況を示す資料などが検討対象になります。

使用意思を説明する場合は、出願後3〜4年以内、登録後3年に相当する時期までに商標の使用を開始する意思があるかが問題になり得ます。広く指定しすぎた商品・役務が原因で疑義が出た場合は、実態に合う範囲へ補正することが合理的な場合もあります。

警告書、侵害紛争、交渉、契約監査で求められる場合

相手方から本当にその商標を使っているのか、どの商品に使っているのか、いつから使っているのかと問われることがあります。交渉資料なら必要最小限の開示にとどめる場合があり、公的手続なら証拠番号、作成者、作成年月日、立証趣旨を明確にして反論に耐える客観性を高める必要があります。

Section 04

使用証拠を求められた時の提出資料チェックリスト

権利範囲、商標表示、商品・役務、取引、時期、場所、主体を分けて確認します。

分類提出資料立証する内容注意点
権利・請求範囲資料商標登録原簿、登録証、J-PlatPat情報、審判請求書、拒絶理由通知、相手方書簡どの商標・商品役務・期間が問題かまず請求対象を確定します。
商標表示資料商品写真、包装写真、ラベル、タグ、Web画面、広告、アプリ画面実際に表示された商標商標部分を鮮明に示します。
商品・役務特定資料カタログ、仕様書、SKU表、型番表、サービス説明書、利用規約どの商品・役務に使われたか登録上の指定商品・役務と対応づけます。
取引資料契約書、注文書、発注書、納品書、請求書、領収書、売上台帳、POSデータ販売・提供・譲渡・納品の事実写真の商品と同一の商品であることを示します。
時期資料日付入り書類、撮影日、掲載日、配布日、ログ、タイムスタンプ要証期間内の使用印刷日と掲載日を区別します。
場所資料店舗所在地、国内販売先住所、配送伝票、国内広告媒体、日本語Webページ日本国内での使用海外サイトが日本から見えるだけでは弱い場合があります。
使用主体資料商標権者資料、使用許諾契約、フランチャイズ契約、グループ会社資料誰が使用したか第三者使用なら通常使用権者性を説明します。
公開・頒布資料広告掲載証明、配布記録、広告会社請求書、媒体見本、Web出力広告的使用の公開性チラシ素材だけでは頒布の証明が弱くなります。
補助資料メール、FAX、チャット、議事録、社内申請、製造指示、物流記録証拠間の連結・補強主要事実を直接示す証拠の補助として使います。
説明資料証拠説明書、要証事実対応表、陳述書、翻訳文、比較表証拠の意味を審査官・審判官・相手方に伝える証拠の束を読める構造にします。

この一覧のうち、最重要は商標表示資料、商品・役務特定資料、取引資料、時期資料、使用主体資料です。広告的使用の場合は、公開・頒布資料も同じくらい重要になります。

Section 05

使用証拠の提出資料を商品・役務・広告・SaaS別に整理

事業モデルごとに、商標表示、取引、公開、国内性、使用主体の示し方が変わります。

商品に商標を付して販売している場合

次の表は、商品販売型ビジネスで提出資料がどの目的を担うかを表しています。写真だけでは時期や主体が分からないことが多いため、読者は商標表示と取引書類を同じ商品名・型番で結びつける必要があることを読み取ってください。

目的推奨資料
商標が商品・包装に表示されていること商品本体写真、包装写真、ラベル写真、タグ写真、箱写真、ロット番号写真
商品が特定できること商品名、型番、SKU、JANコード、仕様書、カタログ、商品マスタ
要証期間内に販売されたこと注文書、納品書、請求書、領収書、売上台帳、POSデータ、EC注文履歴
日本国内で販売されたこと国内販売先住所、配送伝票、店舗住所、国内取引先との契約書
商標権者等が使用したこと販売者名、会社名、ライセンス契約、販売代理店契約、フランチャイズ契約
証拠間の連結写真の商品名・型番と請求書の商品名・型番を一致させる対応表

役務、サービス、店舗ビジネスの場合

次の表は、無形の役務をどの資料で説明するかを示しています。役務では商品写真のような一点資料が作りにくいため、読者は提供場面、顧客が見る表示、契約・請求・予約の記録を組み合わせて読むことが重要です。

役務類型提出資料の例
飲食店店舗看板写真、メニュー、予約台帳、レシート、店舗所在地、Web予約ページ、店内写真
教育・研修講座案内、申込書、受講契約、教材、受講者請求書、開催記録、配布資料
コンサルティング契約書、提案書、報告書、請求書、業務完了報告、サービス紹介ページ
医療・美容・ヘルスケア予約ページ、施術メニュー、同意書、領収書、店舗写真、広告、利用規約
IT・SaaSサービス画面、ログイン画面、利用規約、申込フォーム、サブスクリプション請求書、利用ログ
金融・保険商品説明書、契約申込書、約款、顧客向けWebページ、広告審査資料、取引記録

EC、オンラインショップ、プラットフォームの場合

  1. 商品ページのスクリーンショット又は保存データを用意します。
  2. URL、出力日、掲載日、商品名、価格、販売者名が分かる資料を添えます。
  3. 注文履歴、注文確認メール、納品書、配送記録、決済記録を組み合わせます。
  4. 商品ページの商品と注文履歴の商品が同じであることをSKU・商品コードで示します。
  5. 販売先又は配送先が日本国内であることを示します。
  6. 商標権者又は使用権者がショップを運営していることを示します。

SaaS、アプリ、デジタルコンテンツの場合

次の比較一覧は、SaaSやアプリで重要になる立証事項と資料を対応させています。デジタル証拠は改変可能性を疑われやすいため、読者は画面だけでなく、取得方法、URL、ログ、契約主体、国内向け提供を合わせて確認する必要があります。

01

画面上の商標表示

ログイン画面、管理画面、ダッシュボード、アプリ画面のキャプチャで表示を示します。

表示
02

サービス提供の実態

利用規約、申込フォーム、サブスクリプション契約、利用開始メールをつなげます。

提供
03

要証期間との関係

リリースノート、画面更新履歴、ログ、請求日、契約開始日で時期を示します。

時期
04

日本国内向け提供

日本語ページ、日本国内顧客、国内請求先、国内サポート体制で国内性を補います。

国内
05

商標権者等による提供

運営会社表示、特定商取引法表示、契約主体、グループ会社関係、ライセンス契約を確認します。

主体

広告、カタログ、チラシ、LP、SNS広告の場合

次の表は、広告本体と補強資料の関係を表しています。広告的使用では広告データがあるだけでは足りないことがあるため、読者は公開・頒布された事実を示す資料を必ずセットで確認してください。

広告媒体広告本体補強資料
新聞・雑誌掲載紙面、表紙、奥付、発行日媒体資料、掲載証明、広告請求書
チラシチラシ現物、データ印刷会社納品書、配布会社報告書、配布地域・日付、広告費領収書
カタログカタログ現物、表紙、該当ページ、奥付発行日、配布先、発送記録、展示会配布記録
Web広告広告画像、LP、広告管理画面配信期間、配信対象地域、広告費請求書、クリックログ
SNS投稿画面、投稿URL、投稿日時アカウント運営者、投稿ログ、広告配信設定、インサイト資料
看板看板写真、設置場所設置契約、施工請求書、撮影日、所在地、掲出期間証明

ライセンシー、代理店、フランチャイジーが使っている場合

商標権者本人ではなく、通常使用権者、専用使用権者、販売代理店、フランチャイジー、グループ会社が商標を使っている場合、提出資料は二段階になります。第一に、使用者が商標権者から許諾を受けた者であることを示す資料が必要です。第二に、その使用権者が要証期間内に日本国内で請求対象の商品・役務について登録商標を使用した資料が必要です。契約書だけでは足りないため、販売実績、商品写真、納品書、広告、店舗資料、請求書も集めます。

  • 商標使用態様をブランドガイドラインに従わせる条項
  • 年1回又は四半期ごとの使用証拠提出義務
  • 商品写真、包装写真、広告、販売実績、取引書類の保存義務
  • 不使用取消審判、異議、訴訟、税関、行政対応時の協力義務
  • 使用証拠提出期限、原本提出、翻訳、証人協力に関する条項
  • 契約終了後も一定期間、証拠保存・協力義務を残す条項
Section 06

使用証拠は証明の連鎖で組み立てる

資料を点で並べず、登録商標、実使用商標、商品・役務、取引、時期、主体をつなげます。

使用証拠の弱さは、多くの場合、証拠が点でしか存在しないことにあります。商品写真は商標表示を示しても時期を示さず、請求書は取引を示しても商標表示を示さず、ウェブ画面は広告を示しても公開期間や国内向けであることを示さない場合があります。

次の判断の流れは、資料を単独で並べるのではなく、登録商標から立証趣旨までを順番に結びつける構造を表しています。この順番が重要なのは、審査官、審判官、相手方、社内決裁者が、どの資料がどの事実を支えるかを追えるようにするためです。

証明の連鎖

登録商標

登録原簿、公報、商標画像で権利内容を示します。

実使用商標

商品写真、Web画面、広告に表示された商標を示します。

商品又は役務

SKU、型番、サービス説明、指定商品・役務対応表で対象をつなげます。

取引又は公開

注文書、納品書、請求書、広告掲載証明、ログで実際の使用を補います。

時期・国内・主体

日付、住所、契約主体、ライセンス契約で6要素の不足を埋めます。

立証趣旨

証拠説明書、陳述書、主張書面で資料の意味を言語化します。

要証事実対応表を作る

次の表は、要証事実、該当証拠、説明を対応させる例を表しています。この表が重要なのは、資料の穴や重複が見え、追加すべきSKU表、商品マスタ、掲載証明、配布報告書を判断しやすくなるためです。

要証事実該当証拠説明
登録商標は「ABC」ロゴである乙1 登録原簿、乙2 商標公報登録番号、指定商品、商標構成を示します。
実使用商標は登録商標と社会通念上同一である乙3 商品写真、乙4 比較表文字部分・図形部分が同一で、色変更のみであることを示します。
商品「ABCクリーム」は指定商品「化粧品」に含まれる乙5 商品仕様書、乙6 カタログ商品の用途・成分・販売分類を示します。
要証期間内に販売された乙7 2025年6月10日付請求書、乙8 納品書2025年6月に国内取引先へ販売したことを示します。
日本国内で使用された乙7 請求書、乙8 納品書、乙9 配送記録販売先・配送先が東京都内であることを示します。
使用者は商標権者である乙1 登録原簿、乙7 請求書請求書発行者が商標権者であることを示します。
商標法2条3項2号の使用に該当する乙3、乙7、乙8商標を付した商品を譲渡・引渡ししたことを示します。

証拠説明書を軽視しない

証拠説明書には、号証番号、標目、原本・写しの別、作成年月日、作成者、立証趣旨、必要に応じて証拠方法の種類、外国語資料の翻訳文を記載します。2026年5月21日以降の特許庁手続では、電磁的記録を証拠として提出できるようになるため、文書か電磁的記録かの整理にも注意します。

Section 07

使用証拠を求められた時の手続別対応

不使用取消審判、審査、交渉、監査で初動と開示範囲を切り分けます。

不使用取消審判を請求された場合の初動

次の時系列は、不使用取消審判で初動から提出前までに何を行うかを表しています。期限が限られる場面では順番が重要になるため、読者は受領直後に請求対象と期限を確定し、証拠収集と説明資料作成を並行して進めることを読み取ってください。

受領当日〜3日

請求範囲と期限の確認

審判請求書、請求対象、予告登録日、答弁期限を法務、知財、外部専門家で確認します。

3日〜1週間

要証事項の棚卸し

要証期間、対象商品・役務、使用主体、使用商標を事業部や営業、マーケティングと確認します。

1〜2週間

証拠収集と対応表作成

原本確認、写真、取引資料、広告資料、ログを集め、資料間の対応表を作成します。

2〜3週間

提出書類の準備

証拠説明書、答弁書、陳述書、マスキング方針、翻訳を準備します。

提出前

証拠の穴を再確認

請求対象との対応、提出形式、個人情報・営業秘密の扱いを最終確認します。

審査で使用又は使用意思を問われた場合

特許庁審査で確認された場合、実際に業務を行っている資料を提出する、使用意思と準備状況を示す、疑義のある指定商品・指定役務を削除又は限定する補正を行う、という三つの選択肢を検討します。事業実態に合わない範囲を無理に維持しようとすると、説明が弱くなる場合があります。

警告書・紛争交渉で求められた場合

次の表は、紛争交渉での段階的開示を表しています。相手方に全資料を最初から開示すると営業秘密や交渉上の不利益が生じることがあるため、読者は目的に応じて公開資料、一部マスキング資料、秘密保持契約後の詳細資料、公的手続用資料を分けて読むことが重要です。

段階開示資料目的
初期回答商標表示のある商品写真、公開済みWebページ、公開カタログ使用実態の存在を示します。
交渉段階一部マスキング済み請求書、販売期間、商品対応表要証期間内の使用を示します。
秘密保持契約後取引先名、数量、売上、契約書、ライセンス資料詳細立証、和解条件交渉に使います。
審判・訴訟号証化した客観資料、証拠説明書、陳述書公的手続での立証に使います。

ライセンス監査・ブランド監査で求められた場合

ライセンス監査では、使用商品一覧、使用商標一覧、販売地域、販売期間、販売チャネル、商品写真、包装写真、広告資料、売上数量又は販売実績、商標ガイドライン遵守状況、サンプル現物又は画像、不適切使用の是正記録、証拠保存フォルダの一覧を保存します。

Section 08

使用証拠のよくある失敗例と補強方法

資料があるのに評価されない典型例を知り、補強資料を先に用意します。

次の一覧は、使用証拠で起きやすい失敗と補強方法を並べたものです。失敗例を先に知ることが重要なのは、資料を集めた後で要件不足が判明すると、追加取得が難しいことが多いためです。読者は各項目から、どの弱点をどの資料で補うかを読み取ってください。

ロゴデザイン案だけを提出する

案、版下、ロゴデータだけでは実際の使用を示しません。商品を包装した写真、販売記録、納品書、請求書、広告頒布記録を補います。

写真はあるが日付がない

撮影日が分からないと要証期間内の使用を示しにくくなります。撮影者の陳述書、メタデータ、同一商品の請求書、広告掲載日を補います。

請求書はあるが商標がない

請求書の商品名、型番、SKU、JANコードを、商標表示のある商品写真やカタログと一致させます。

ウェブ画面にURL・出力日がない

URL、出力日、掲載日、運営者、商品・役務内容、価格又は申込導線を保存します。

海外サイトの閲覧可能性だけに頼る

日本語ページ、日本円価格、日本国内配送、国内顧客への販売、国内広告、国内問い合わせ窓口を補います。

ノベルティ表示を指定商品の使用と誤解する

販促品への表示が本来の商品・役務の宣伝にすぎない場合があります。請求対象の商品・役務との関係を確認します。

使用許諾関係を示さない

第三者使用では、使用許諾契約、フランチャイズ契約、販売代理店契約、ブランド使用承認メールを提出します。

マスキングしすぎる

日付、取引先、商品名、型番、数量、金額、住所、契約主体を隠しすぎると証拠力が落ちます。必要に応じて閲覧制限を検討します。

Section 09

使用証拠としての電子データ・ログの扱い

スクリーンショット、メール、ログは取得方法と同一性を説明できる形で保存します。

電子データは紙資料よりも改変可能性を疑われやすいため、取得方法と同一性を説明できる状態で保存します。次の一覧は、電子証拠ごとに何を記録するかを示しています。読者は画面の見た目だけではなく、取得者、取得日、抽出条件、保存媒体まで説明できるかを確認してください。

Web

ウェブページ

URL、出力日、ページ全体、運営者情報、対象商品・役務ページ、申込導線を保存します。

URL出力日
Mail

メール・チャット

本文、送受信者、送受信日時、添付ファイル、ヘッダー情報、関連スレッドを保存します。

補助資料
Log

ログ

出力元システム、出力権限者、対象期間、抽出条件、フィールドの意味、顧客IDや取引IDとの対応を説明します。

業務データ
Hash

保全情報

ファイル形式、ハッシュ値、保存媒体、原本データの保管場所、加工・マスキングの有無を記録します。

同一性

2026年5月21日から、特許庁手続では電磁的記録を証拠として提出できるようになることが案内されています。ただし、電子化された文書、Webページ、メール、画像、動画、音声等は従来どおり文書や準文書として提出してもよいとされています。提出前には、対象手続での提出方法、DVD-R提出、電子特殊申請、PDF化、証拠説明書の記載、相手方副本の要否を確認します。

Section 10

使用証拠提出時のマスキングと閲覧制限

営業秘密や個人情報を守りながら、日付、主体、商品名、国内性などの証拠力を残します。

使用証拠には、取引先名、価格、数量、売上、契約条件、個人名、メールアドレス、顧客住所、社内担当者名などが含まれることがあります。提出時は、立証に必要な開示と秘密保護のバランスを取る必要があります。

次の表は、マスキング可否の目安と理由を表しています。証拠力に関わる情報まで隠すと立証が弱くなるため、読者は何を隠せるかだけでなく、何を残さなければならないかを読み取ることが重要です。

情報マスキング可否の目安理由
商品名、型番、SKU原則として隠さない商品特定に必要です。
日付原則として隠さない要証期間内かを示します。
取引主体名原則として隠さない又は一部開示使用主体・取引実在性に必要です。
住所国内使用の立証に必要な範囲で開示日本国内使用を示します。
金額必ずしも全額開示不要だが注意取引実在性を示す場合があります。
個人名必要に応じて限定開示個人情報保護との調整が必要です。
口座番号、電話番号原則マスキング可立証に不要な場合が多いです。
営業秘密部分必要最小限マスキング又は閲覧制限検討証拠力低下に注意します。

マスキングにより証拠価値が落ちる場合、手続上の閲覧制限や秘密保持措置を検討します。提出前には、個人情報を含むか、取引先との秘密保持義務に抵触しないか、営業秘密を含むか、マスキング後も立証趣旨を満たすか、原本保管と写し提出の管理ができているかを確認します。

Section 11

使用証拠の評価軸を裁判例・審判実務から確認

認められた例と否定された例から、証拠の連鎖、対象商品・役務、同一性、国内性を点検します。

次の比較一覧は、使用が認められた例と否定された例から見える評価軸をまとめたものです。実務で重要なのは事件名そのものではなく、資料が何を示し、どの要素が足りなかったかです。読者は肯定例では資料の連鎖、否定例では商品・役務との関係、同一性、国内性の弱さを読み取ってください。

評価提出資料・判断のポイント実務上の教訓
使用が認められたサンローラン事件商品パッケージ、購入確認書、代金振込資料、売上伝票などが提出されました。商品写真だけでなく、取引書類と入金・売上記録を組み合わせます。
使用が認められた極事件ラベルが貼られた商品の写真、ラベル、対応する伝票、受領書、陳述書などが提出されました。写真、ラベル、伝票、受領記録を同じ商品でつなげます。
使用が認められたPRTIMES事件広告依頼に関するチラシ、チラシ作成・配布会社からの納品書、チラシ代金の領収書などが提出されました。広告素材だけでなく、頒布又は公開された事実を示します。
使用が否定されたDALE CARNEGIE事件講座教材に商標が表示されていても、指定商品「印刷物」についての使用とは認められませんでした。表示物が請求対象の商品・役務についての使用かを確認します。
使用が否定されたHERTZ事件カーレンタル事業の販促品に表示された企業名は、指定商品についての商標使用とは認められませんでした。ノベルティ表示と商品・役務の商標使用を混同しないようにします。
使用が否定されたPrincess Cruises事件、MAGIC事件図形部分のない文字のみの使用や異なる結合態様が問題になりました。ロゴリニューアル、略称、文字だけの使用では同一性を検討します。
使用が否定されたPAPA JOHN'S事件米国サーバー上の英語ページで、日本の需要者を対象としたものとは認められませんでした。日本語表示、国内顧客、国内配送、国内広告、国内代理店、国内販売実績で補強します。
Section 12

使用証拠を社内で保存する体制

商標ごと、商品・役務ごと、年度ごとに、後から説明できる証拠保存体制を作ります。

使用証拠は、求められてから作るものではありません。ウェブページの更新、担当者の退職、商品の廃番、古い請求書の所在不明が起きる前に、登録後の各年に証拠を保存する運用を作ることが重要です。

次の一覧は、各登録商標について年1回保存すべき資料を表しています。年次保存が重要なのは、後から要証期間内の資料を探すよりも、商標ごと・商品ごと・年度ごとの証拠を継続的に残す方が、審判や交渉時に再現性を保ちやすいためです。

権利情報

登録商標情報、登録番号、指定商品・指定役務、実使用商標画像を保存します。

商品・広告資料

商品写真、包装写真、ラベル、タグ、カタログ、パンフレット、チラシを保存します。

Web・取引資料

URL・出力日付きWebページ、注文書、納品書、請求書、領収書を保存します。

広告・使用報告

広告掲載証明、広告管理画面、配布記録、ライセンシーの使用報告書を保存します。

国内実績

国内販売先又は国内提供実績の資料、販売地域、販売期間、販売チャネルを保存します。

変更履歴

ロゴ変更履歴、ブランドガイドライン、商品・役務対応表を保存します。

証拠フォルダの命名規則

次の保存例は、商標番号、商標名、年度、資料種別でフォルダを分ける方法を表しています。第三者が後から読める形にすることが重要なため、読者は年度と資料種別で検索できる構造を読み取ってください。

階層保存内容
商標別フォルダ商標番号、商標名、年度で整理します。
01_registration登録原簿、公報、指定商品・役務の情報
02_goods_photos商品本体、包装、ラベル、タグの写真
03_web_pagesURL・出力日付きWebページ、ECページ、LP
04_transactions注文書、納品書、請求書、領収書、売上台帳
05_ads広告、カタログ、チラシ、配布記録、掲載証明
06_licensee_reportsライセンシーの使用報告書、契約資料
07_correspondenceメール、チャット、承認記録、社内申請
08_evidence_matrix要証事実対応表、証拠説明書案

ファイル名には、日付、資料名、商品名、商標名、作成者を入れます。たとえば「2025年6月10日・請求書・ABCクリーム・取引先名一部省略」「2025年6月12日・包装写真・営業部撮影」のように、後から資料の意味が分かる名称にします。

事業部門への依頼文例

次の文例は、法務・知財部門が事業部へ必要資料を依頼するときの要素を表しています。単に使用証拠を求めるとロゴ画像だけが送られてくることがあるため、読者は商品名、型番、日付、販売先、販売地域、原本保管場所まで指定する必要があることを読み取ってください。

依頼する資料求める情報
商標が表示された商品本体、包装、ラベル、タグの写真商品名、型番、撮影日、撮影者、撮影場所
国内で販売・納品した注文書、納品書、請求書、領収書、売上台帳日付、販売先、販売地域、商品名、型番
カタログ、商品マスタ、仕様書商品名、型番、SKU、用途、販売分類
Webページ、ECページ、広告、チラシ、カタログURL、出力日、掲載日、配布日、運営者
代理店・販売店・ライセンシーの資料契約書、許諾関係資料、使用報告書、販売実績
資料管理情報原本保管場所、作成者、作成日、加工・マスキングの有無
Section 13

使用証拠提出前の実務テンプレート

提出前チェック、証拠説明書、陳述書、ライセンス条項まで、実務で使う形に落とします。

使用証拠提出前チェックリスト

次のチェックリストは、提出前に確認すべき項目を表しています。最終確認が重要なのは、証拠提出後に不足が見つかると、補正や追加提出の余地が限られる場合があるためです。読者は確認欄を使い、対象範囲、期間、同一性、主体、国内性、説明書まで漏れがないかを読み取ってください。

チェック項目確認コメント
請求対象の指定商品・指定役務を確認した登録全体ではなく請求対象を確認します。
要証期間を正確に計算した審判請求の登録日から逆算します。
使用商標と登録商標の同一性を比較したロゴ変更・結合商標・色違いに注意します。
使用者が商標権者又は使用権者であることを示したライセンス契約等を確認します。
日本国内使用を示した国内住所、国内顧客、国内媒体を示します。
商品・役務と指定商品・役務の対応表を作ったSKU・型番・サービス名を対応づけます。
写真と取引書類が同じ商品を示す商品名、型番、JANコードを合わせます。
広告の頒布・公開を示す資料を付けた媒体日付、配布記録、広告会社請求書を確認します。
URL・出力日付きWeb資料を保存したWeb証拠の基本です。
証拠説明書を作った号証、標目、作成者、立証趣旨を整理します。
外国語資料に翻訳を付けた取調べを求める部分を翻訳します。
マスキングで証拠力が落ちていないか確認した必要なら閲覧制限を検討します。
原本保管場所を記録した原本提出を求められる場合に備えます。

証拠説明書風の記載例

次の表は、証拠説明書で号証、標目、作成年月日、作成者、原本・写し、立証趣旨をどう対応させるかを表しています。提出資料の意味を第三者が追えるようにすることが重要なため、読者は標目だけでなく立証趣旨まで具体化する必要があります。

号証標目作成年月日作成者原本・写し立証趣旨
乙1商標登録原簿写し2026年6月1日特許庁写し本件登録商標、商標権者、指定商品を示します。
乙2商品「ABCクリーム」の包装写真2025年6月12日営業部担当者写し商品包装に本件商標と社会通念上同一の商標が表示されていることを示します。
乙32025年6月10日付納品書2025年6月10日被請求人写し要証期間内に日本国内の取引先へ商品「ABCクリーム」を納品したことを示します。
乙4商品マスタ2025年6月1日商品管理部写し乙2の商品と乙3記載の商品が同一であることを示します。
乙5Web商品ページ出力物2025年6月15日出力被請求人写し又は電磁的記録本件商標が商品広告に表示され、日本国内向けに商品が紹介されていたことを示します。

陳述書の骨子

次の一覧は、陳述書に含めるべき要素を表しています。陳述書は客観証拠の代替ではなく補助資料であるため、読者は写真、請求書、納品書、契約書、広告資料と組み合わせる前提で読む必要があります。

番号記載要素
1陳述者の所属・役職・担当業務
2対象商標と対象商品の概要
3対象商品の販売開始時期
4商標が商品・包装・広告に表示されていた具体的状況
5要証期間内の販売・納品の事実
6添付証拠の作成経緯、保管状況、原本の所在
7写真撮影日、撮影場所、撮影者
8ライセンシー又は代理店が関与する場合の関係
9マスキング箇所の理由
10陳述内容が真実である旨、日付、署名又は記名押印

ライセンス契約条項例

次の条項例は、使用証拠の保存と提出をライセンス契約に組み込む考え方を表しています。将来の不使用取消審判や紛争で協力を得るために重要なため、読者は保存期間、提出期限、説明可能性、契約終了後の存続を読み取ってください。

項目条項例の要点
保存義務ライセンシーは、本商標を使用した商品、包装、広告、ウェブページ、販売資料、取引書類、販売実績その他の資料を、各使用日から少なくとも一定期間保存します。
提出義務ライセンサーから請求を受けた場合、権利維持又は権利行使に必要な範囲で、前項の資料を一定営業日以内に提出します。
説明可能性作成日、作成者、原本の所在、対象商品又は役務、販売地域、販売期間を合理的に説明できるよう管理します。
存続期間本条の義務は、本契約終了後も一定期間存続させます。
Section 14

使用証拠を求められた時のよくある質問

一般情報として、提出資料の考え方と注意点を確認します。

商品写真だけで使用証拠になりますか

一般的には、商品写真は商標表示を示す重要な資料とされています。ただし、撮影日、販売時期、販売場所、使用主体、請求対象の商品・役務との関係が写真だけでは分からないことがあります。具体的な提出方針は、証拠関係と手続段階を整理したうえで弁護士・弁理士等の専門家へ相談する必要があります。

請求書に商標が出ていない場合は使えませんか

一般的には、請求書だけで商標表示を示せない場合でも、商品名、型番、SKU、JANコードが商標表示のある商品写真やカタログと一致すれば補強資料になり得ます。ただし、商品・役務の対応関係や証拠全体の整合性によって評価は変わります。具体的には、資料一式を確認して専門家に相談する必要があります。

Webページのスクリーンショットは何を残せばよいですか

一般的には、商標表示だけでなく、URL、出力日、掲載日、運営者、商品・役務内容、価格又は申込導線、国内向けであることを示す情報を残すことが重要とされています。ただし、手続や相手方の争点によって必要資料は変わります。具体的な保存方法は、証拠の取得方法と原本管理を含めて専門家へ確認する必要があります。

取引先名や金額はすべて開示する必要がありますか

一般的には、立証に不要な個人情報や口座番号などはマスキングを検討できます。一方で、日付、商品名、取引主体、国内住所などを隠しすぎると証拠力が落ちる可能性があります。個別の開示範囲は、営業秘密、個人情報、閲覧制限の可否、手続段階によって変わるため、専門家へ相談する必要があります。

Section 15

使用証拠を求められた時の提出資料の結論

商標使用を証明できる状態を、平時から会社の運用として残しておきます。

使用証拠を求められた時の提出資料は、単なる資料集めではなく、法的要件から逆算した立証設計です。最初に確認すべきなのは、どの商標について、どの商品・役務について、どの期間の、誰による、どの地域での、どの態様の使用が問われているかです。

不使用取消審判では、登録商標又は社会通念上同一の商標が、要証期間内に、日本国内で、商標権者又は使用権者により、請求対象の商品又は役務について、商標法上の使用態様で使われたことを、客観資料の連鎖で示す必要があります。

そのために必要となる資料は、商品写真、包装写真、ウェブページ、広告、注文書、納品書、請求書、領収書、売上台帳、契約書、ライセンス資料、ログ、メール、証拠説明書です。ただし、どの資料が必要かは、商品か役務か、広告的使用か販売使用か、権利者本人かライセンシーか、国内使用か海外使用かによって変わります。

企業法務としては、求められてから慌てるのではなく、商標ごと、商品・役務ごと、年度ごとに使用証拠を保存する体制を作ることが重要です。ブランドは、登録して終わりではありません。登録後も、正しく使い、使った事実を証明できる状態にしておくことで、法的資産として機能しやすくなります。

Reference

参考文献・公的資料

  • e-Gov法令検索「商標法」
  • Japanese Law Translation, Trademark Act, Article 1
  • Japanese Law Translation, Trademark Act, Article 2
  • Japanese Law Translation, Trademark Act, Article 50 and Article 54
  • 特許庁「不使用取消審判請求に対する登録商標の使用の立証のための参考資料」
  • 特許庁「不使用による商標登録取消審判Q&A」
  • 特許庁「商標審査便覧 41.100.03 商標の使用又は商標の使用の意思を確認するための審査に関する運用について」
  • 特許庁「令和8年5月21日以降の証拠説明書の提出について」
  • 特許庁「証拠説明書の提出について」
  • 特許庁「審判便覧 34-01 証拠提出に関する書類の点検と注意事項」
  • 知的財産高等裁判所判決に関する公的解説資料(PRTIMES事件、エコルクス事件、PAPA JOHN'S事件等)