2σ Guide

著作者人格権の不行使特約の
必要性と書き方

著作権譲渡だけでは処理しきれない公表、氏名表示、改変、二次利用、第三者利用のリスクを、企業法務・知財法務の視点から整理し、契約条項へ落とし込む考え方を解説します。

3権利 人格権の柱
27・28条 明示論点
2024年 フリーランス法施行
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著作者人格権の不行使特約の 必要性と書き方

著作権譲渡だけでは、改変、公表、氏名表示、二次利用のリスクを処理しきれません。

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著作者人格権の不行使特約の 必要性と書き方
著作権譲渡だけでは、改変、公表、氏名表示、二次利用のリスクを処理しきれません。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 著作者人格権の不行使特約の 必要性と書き方
  • 著作権譲渡だけでは、改変、公表、氏名表示、二次利用のリスクを処理しきれません。

POINT 1

  • 著作者人格権の不行使特約の必要性と書き方 ― まず押さえる結論
  • 著作権譲渡だけでは、改変、公表、氏名表示、二次利用のリスクを処理しきれません。
  • 譲渡ではなく不行使で処理する
  • 改変や第三者利用で重要になる
  • 買い切りだけでは足りない

POINT 2

  • 著作者人格権の不行使特約を理解するための三本柱
  • 公表権、氏名表示権、同一性保持権を区別して読む必要があります。
  • 次の比較一覧は、著作権と著作者人格権、著作者と著作権者の違いを整理しています。
  • ここを誤ると、「著作権を譲り受けたから自由に改変できる」という誤解につながります。
  • 著作者の名誉または声望を害する方法で著作物を利用する行為は、著作者人格権侵害とみなされる場合があります。

POINT 3

  • 著作者人格権の不行使特約が必要な理由 ― 納品後の変化とリスク
  • 成果物は納品時のまま固定されず、事業活動の中で変化します。
  • 読者にとって重要なのは、日常的に見える変更でも、公表権、氏名表示権、同一性保持権の問題を生じさせる可能性がある点です。
  • レスポンシブ対応、写真のトリミング、広告転用、SEO用の見出し変更、SNS投稿、メールマガジン利用を行います。
  • 15秒版、30秒版、縦型ショート動画版への再編集、字幕追加、ロゴ追加、色調補正、媒体仕様への調整を行います。

POINT 4

  • 著作者人格権の不行使特約の法的性質と裁判例の教訓
  • 1. 著作権を処理する:譲渡か利用許諾かを決め、必要に応じて27条・28条を明示します。
  • 2. 著作者人格権を処理する:譲渡ではなく、一定の相手方・利用行為について行使しない約束として書きます。
  • 3. 利用と改変を具体化する:公表、氏名表示、編集、改変、翻訳、媒体変換、第三者利用を列挙します。
  • 4. 協議・承諾を検討:社会的評価への影響が大きい場合は事前協議を入れます。
  • 5. 包括的に許容:誤字修正、形式調整、媒体仕様への変換などを明記します。

POINT 5

  • 著作者人格権の不行使特約が必要になりやすい契約類型
  • 成果物の種類ごとに、想定される利用と改変を条項へ落とし込みます。
  • 次の契約類型一覧は、不行使特約が必要になりやすい場面を、成果物の種類ごとに整理しています。
  • 各項目には、どの利用・改変が起こるかを記載しているため、自社の発注内容に近いものから確認します。
  • バナー、動画、LP、チラシ、SNS投稿、展示会素材を複数媒体へ展開し、サイズ変更、短縮、字幕追加、BGM差替えを行います。

POINT 6

  • 著作者人格権の不行使特約を書く前の確認事項
  • 1. 成果物を特定:完成データ、ラフ、設計書、仕様書、ソースコード、画像、動画、音声、図表、改訂版、派生物を確認します。
  • 2. 著作者を特定:従業員、役員、業務委託者、再委託先、フリーランス、外部スタジオ、素材提供者を確認します。
  • 3. 利用態様を列挙:自社サイト、広告、SNS、営業資料、アプリ、海外利用、グループ会社、販売代理店、顧客提供を確認します。
  • 4. 改変を分類:軽微な改変は包括的に許容し、重大な改変は協議・承諾を検討します。

POINT 7

  • 著作者人格権の不行使特約の基本条項と書き方
  • 対象者、対象行為、関与者、存続期間まで書くと実務で使いやすくなります。
  • 対象行為
  • 存続期間
  • 次の重要ポイントは、条項を組み立てる際に最低限そろえるべき要素を示しています。

POINT 8

  • 著作者人格権の不行使特約と著作権譲渡条項のセット設計
  • ウェブ・広告制作
  • 掲載、配信、複製、編集、トリミング、リサイズ、色調補正、文字入れ、翻訳、要約、短尺化、縦型・横型変換を含めます。
  • 専門家文章
  • 誤字修正、表記統一、見出し調整、図表追加、SEO上の軽微修正、法改正・制度変更に伴う更新を含めます。

まとめ

  • 著作者人格権の不行使特約の 必要性と書き方
  • 著作者人格権の不行使特約の必要性と書き方 ― まず押さえる結論:著作権譲渡だけでは、改変、公表、氏名表示、二次利用のリスクを処理しきれません。
  • 著作者人格権の不行使特約を理解するための三本柱:公表権、氏名表示権、同一性保持権を区別して読む必要があります。
  • 著作者人格権の不行使特約が必要な理由 ― 納品後の変化とリスク:成果物は納品時のまま固定されず、事業活動の中で変化します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

著作者人格権の不行使特約の必要性と書き方 ― まず押さえる結論

著作権譲渡だけでは、改変、公表、氏名表示、二次利用のリスクを処理しきれません。

企業がウェブサイト、広告、ソフトウェア、動画、写真、イラスト、記事、UI、キャラクター、研修資料、営業資料、ホワイトペーパー、システム仕様書などを外部クリエイターや開発会社に発注する場合、契約書には著作権の譲渡だけでなく、著作者人格権の不行使特約を置くべき場面が多くあります。

日本の著作権法上、著作権と著作者人格権は別の権利です。著作者人格権は著作者に一身専属するため、著作権のように譲渡できません。成果物を修正する、トリミングする、翻訳する、改訂する、別媒体に展開する、氏名を表示しない、会社名義で公表する、子会社・委託先・広告代理店・販売代理店にも利用させる行為は、著作者人格権との関係で問題化することがあります。

次の重要ポイント一覧は、不行使特約がなぜ必要で、どのように書くべきかを5つに分けて示しています。読者にとって重要なのは、強く広く書けば足りるのではなく、実際の利用態様に合わせて具体化するほど契約の防御力が高まるという点です。

Point 1

譲渡ではなく不行使で処理する

著作者人格権は譲渡できないため、「著作者人格権を譲渡する」ではなく、通常は「行使しない」と書きます。

Point 2

改変や第三者利用で重要になる

修正、翻案、翻訳、再編集、SNS投稿、広告配信、グループ会社利用、顧客提供が予定される契約では特に重要です。

Point 3

買い切りだけでは足りない

著作権譲渡と人格権不行使は別問題です。翻案権や二次的著作物利用権を含める場合は27条・28条も明示します。

Point 4

広すぎる条項は争点になり得る

対価、利用目的、改変の程度、名誉・声望への影響、取引関係によっては、過度な条項が紛争化します。

Point 5

対象を具体化する

誰が、何を、どこまで、誰に対して、どの利用について、どの改変まで不行使とするかを明確にします。

前提このページは一般的な情報提供を目的とする解説です。実際の契約書作成・紛争対応では、契約目的、成果物の性質、当事者の立場、対価、利用態様、業界慣行、既存契約、権利者の数、海外法の関与などを踏まえ、弁護士・弁理士等の専門家に確認する必要があります。
Section 01

著作者人格権の不行使特約を理解するための三本柱

公表権、氏名表示権、同一性保持権を区別して読む必要があります。

次の比較表は、著作者人格権の三本柱を企業実務の場面に置き換えて整理したものです。列ごとに、権利の内容と問題になりやすい利用場面を対比して読むと、不行使特約で何をカバーすべきかが分かります。

権利概要企業実務で問題になりやすい場面
公表権未公表の著作物を公表するか、いつ・どのように公表するかを決める権利納品物をウェブ公開する、広告出稿する、会社名義で発表する、社外資料に掲載する場面
氏名表示権著作者名を表示するか、表示しないか、実名・変名のいずれにするかを決める権利クレジットを入れない、会社名義で出す、SNS投稿で作者名を省略する、共同制作物で一部のみ表示する場面
同一性保持権著作物や題号を著作者の意に反して改変されない権利デザイン修正、写真のトリミング、記事の編集、翻訳、UI変更、動画の再編集、ソフトウェア改修、広告コピーの調整

次の比較一覧は、著作権と著作者人格権、著作者と著作権者の違いを整理しています。ここを誤ると、「著作権を譲り受けたから自由に改変できる」という誤解につながります。

区分意味契約上の処理
著作権複製権、公衆送信権、譲渡権、貸与権、翻案権など、著作物を経済的に利用する財産権譲渡または利用許諾の対象にできます。
著作者人格権著作者の人格的利益を保護する権利譲渡ではなく、不行使の約束として処理します。
著作者著作物を創作した者制作会社の従業員、外部協力者、再委託先に残る可能性があります。
著作権者著作権を持っている者譲渡により発注者が著作権者になっても、人格権は原則として創作者に残ります。

著作者の名誉または声望を害する方法で著作物を利用する行為は、著作者人格権侵害とみなされる場合があります。不行使特約を取得していても、社会的評価を損なう利用は別のリスクとして残るため、名誉・声望への配慮を条項に入れることがあります。

Section 02

著作者人格権の不行使特約が必要な理由 ― 納品後の変化とリスク

成果物は納品時のまま固定されず、事業活動の中で変化します。

次の一覧は、企業が成果物を納品後にどのように変化させるかを整理したものです。読者にとって重要なのは、日常的に見える変更でも、公表権、氏名表示権、同一性保持権の問題を生じさせる可能性がある点です。

1

ウェブ・広告

レスポンシブ対応、写真のトリミング、広告転用、SEO用の見出し変更、SNS投稿、メールマガジン利用を行います。

公表改変
2

動画・写真・デザイン

15秒版、30秒版、縦型ショート動画版への再編集、字幕追加、ロゴ追加、色調補正、媒体仕様への調整を行います。

再編集氏名表示
3

ソフトウェア

バージョンアップ、バグ修正、別環境への移植、API変更、保守会社の交代、顧客別カスタマイズを行います。

改修第三者利用
4

社内資料・翻訳

研修資料を社内事情に合わせて編集し、グループ会社にも展開し、英文資料を日本語化し、海外向けに翻訳します。

翻訳展開

次のリスク表は、不行使特約がない場合に企業側で起こり得る問題を整理したものです。左列はリスクの種類、右列は実務上の影響を示しており、事業価値や企業価値に直結するものから優先的に確認します。

リスク内容
差止リスク著作物の利用差止め、掲載停止、配信停止、販売停止、改変物の使用停止を求められる可能性があります。
損害賠償リスク改変、無断公表、氏名不表示などを理由に損害賠償を請求される可能性があります。
名誉回復措置リスク事案によっては謝罪広告その他の名誉・声望回復措置を求められる可能性があります。
信用低下リスククリエイター、開発者、研究者、デザイナーとの関係悪化、SNS炎上、メディア報道につながる可能性があります。
事業遅延リスク広告出稿、プロダクトローンチ、ウェブ公開、システム移行、出版、展示会、M&Aクロージングが遅れる可能性があります。
契約違反・表明保証違反リスク顧客、投資家、買主、ライセンシーに対する権利保証に違反する可能性があります。
DD上の減点IPO、M&A、資金調達、ライセンス監査で権利処理不備として指摘される可能性があります。
注意「買取り」「買い切り」「全権利込み」という実務用語だけでは、著作権譲渡、利用許諾、27条・28条、不行使特約、再委託先の同意、媒体、期間、地域、対価が明確になりません。
Section 04

著作者人格権の不行使特約が必要になりやすい契約類型

成果物の種類ごとに、想定される利用と改変を条項へ落とし込みます。

次の契約類型一覧は、不行使特約が必要になりやすい場面を、成果物の種類ごとに整理しています。各項目には、どの利用・改変が起こるかを記載しているため、自社の発注内容に近いものから確認します。

1

ウェブサイト制作

デザイン、文章、写真、UI、HTML/CSS、JavaScript、CMSテンプレート、動画、図表を含み、更新・修正・差替え・リニューアル・広告転用が起こります。

ウェブ
2

広告・マーケティング制作

バナー、動画、LP、チラシ、SNS投稿、展示会素材を複数媒体へ展開し、サイズ変更、短縮、字幕追加、BGM差替えを行います。

広告
3

写真・動画撮影

トリミング、リサイズ、色調補正、明度補正、合成、文字入れ、ロゴ追加、短縮、字幕追加、縦型・横型変換を想定します。

写真動画
4

記事・寄稿文・ホワイトペーパー

誤字修正、表記統一、タイトル変更、見出し変更、図表追加、要約、抜粋、公開後の更新を想定します。

文章
5

ソフトウェア・システム開発

保守、改修、移植、機能追加、ソースコードの分割・統合、リファクタリング、第三者ソフトウェアとの連携を想定します。

開発
6

ロゴ・キャラクター・ブランドデザイン

長期利用、媒体変更、商品展開、単色化、余白調整を想定しつつ、基本的印象を大きく変える改変は協議制にします。

ブランド
7

共同開発・共同制作

共同著作者、従業員、再委託先、研究者、デザイナー、開発者、外部ライター、データ提供者の関与を確認します。

共同制作
実務専門家名義の文章、アーティスト作品、デザイン性の高い成果物、ブランド価値に関わる作品では、通常改変は許容しつつ、重大改変は事前協議・事前承諾制にする設計が現実的です。
Section 05

著作者人格権の不行使特約を書く前の確認事項

成果物、著作者、利用態様、改変の種類を先に洗い出します。

次の判断の流れは、不行使特約を書く前に確認する順番を示しています。順番は、成果物の範囲、著作者、利用目的・媒体・地域・期間、改変の種類です。この順番で読むと、条項の対象が曖昧なまま広い文言だけを書く危険を避けられます。

不行使特約を書く前の確認手順

成果物を特定

完成データ、ラフ、設計書、仕様書、ソースコード、画像、動画、音声、図表、改訂版、派生物を確認します。

著作者を特定

従業員、役員、業務委託者、再委託先、フリーランス、外部スタジオ、素材提供者を確認します。

利用態様を列挙

自社サイト、広告、SNS、営業資料、アプリ、海外利用、グループ会社、販売代理店、顧客提供を確認します。

改変を分類

軽微な改変は包括的に許容し、重大な改変は協議・承諾を検討します。

次の比較表は、軽微な改変と重大な改変を分けて整理したものです。左右の列は、包括的に許容しやすい変更と、事前協議を検討すべき変更を示します。この区別を置くと、発注者側の利用自由度と創作者側の人格的利益の両方を調整しやすくなります。

分類条項での扱い
軽微な改変誤字脱字修正、表記統一、サイズ変更、色調補正、レイアウト調整、データ形式変換、トリミング、字幕追加、画面遷移調整通常利用に必要な範囲として、不行使の対象に含めやすい変更です。
重大な改変内容の結論変更、キャラクターの世界観変更、専門家の意見を別文脈で利用、政治・宗教・差別的文脈への転用、作品の印象を大きく損なう加工事前協議または事前承諾を置くことが有効です。
Section 06

著作者人格権の不行使特約の基本条項と書き方

対象者、対象行為、関与者、存続期間まで書くと実務で使いやすくなります。

次の比較表は、最小限の条項、標準的な条項、名誉・声望配慮型、限定型を比べたものです。列ごとに、保護範囲と向いている場面を読むと、案件に応じてどの水準から調整するべきかが分かります。

類型中心となる書き方向いている場面
最小限乙は、甲及び甲が指定する第三者に対し、本成果物に関する著作者人格権を行使しない。単発で低リスクな成果物。ただし、企業実務では不足しやすいです。
標準型関係会社、委託先、顧客、販売代理店、承継人を対象に含め、公表、複製、翻訳、翻案、編集、改変、媒体変換、二次利用を列挙します。企業が長期・多媒体・多部門で成果物を使う場合です。
配慮型通常利用に必要な改変は許容しつつ、著作者の名誉または声望を不当に害する態様で利用しないと定めます。クリエイター側の懸念を緩和し、合理的な契約設計を示したい場合です。
限定型目的、媒体、期間の範囲内に限り不行使とし、重大な改変は事前協議制にします。専門家名義の文章、写真、動画、ブランド制作、研究者・大学教員・士業との共同制作に向きます。

次の重要ポイントは、条項を組み立てる際に最低限そろえるべき要素を示しています。読者は、対象者、対象行為、関与者、存続期間、対価の5点に抜けがないかを確認します。

Element

対象者

甲だけでなく、関係会社、委託先、顧客、販売代理店、ライセンシー、承継人を事業利用に合わせて含めます。

Element

対象行為

公表、氏名表示または不表示、複製、公衆送信、翻訳、翻案、編集、改変、トリミング、媒体変換を列挙します。

Element

関与者

従業員、業務委託先、再委託先、共同著作者から同等の同意を取得させます。

Element

存続期間

成果物は契約終了後も使われるため、契約終了、解除、期間満了後も効く存続条項を検討します。

Element

対価

委託料に著作権譲渡、利用許諾、不行使、二次利用、改変の対価が含まれるかを明確にします。

文言例乙は、甲、甲の関係会社、甲の委託先及び甲の承継人に対し、本契約に定める目的の範囲内で本成果物を利用することについて、著作者人格権を行使しない。
Section 08

著作者人格権の不行使特約と職務著作、フリーランス、生成AI

権利処理の相手が契約当事者だけで足りるかを確認します。

次の比較表は、職務著作、フリーランス取引、生成AI利用で注意すべき点を整理しています。各行は、誰が著作者になり得るか、どの同意が必要か、どの証拠を残すかという観点で読みます。

場面確認するポイント実務対応
職務著作会社の発意、職務上の作成、会社名義での公表、就業規則や契約の別段の定め職務著作に依存しすぎず、就業規則、誓約書、業務委託契約で不行使確認を補完します。
フリーランス取引成果物、報酬額、支払時期、譲渡か利用許諾か、27条・28条、不行使範囲、二次利用、実績公開2024年11月1日施行のフリーランス・事業者間取引適正化等法の下で、取引条件の明示や禁止行為への対応も重要になります。
生成AI利用人間の創作的関与、既存著作物や第三者素材の混入、サービス規約、商用利用制限、再配布制限AI利用の有無を契約時に確認し、納品時にも記録を残し、第三者権利非侵害保証と不行使特約を整合させます。

次の重要ポイント一覧は、関与者から同意を取得する場面で確認すべき資料を示しています。書類の種類ごとに意味が異なるため、単に「契約書がある」だけで終わらせず、権利処理の中身を確認します。

Evidence

権利処理証明

再委託先、従業員、外部協力者から著作権譲渡または利用許諾と不行使同意を取得していることを確認します。

Evidence

素材ライセンス一覧

ストック素材、フォント、テンプレート、オープンソース、第三者ライブラリの利用条件を保存します。

Evidence

AI利用記録

生成AIを利用した場合、利用ツール、入力情報、出力物の編集過程、権利確認結果を残します。

フリーランスとの交渉では、企業側の通常利用を確保しつつ、重大改変、名誉・声望を害する利用、想定外の二次利用、実績表示、クレジット表示、追加対価を協議対象にすることで、合理的な契約に近づけられます。

Section 09

著作者人格権の不行使特約の実務チェックリストと失敗例

基本チェック、高リスク案件、社内運用、修正例をまとめます。

次のチェック一覧は、不行使特約のレビュー時に見るべき項目を3段階に分けています。基本、リスクの高い案件、社内運用の順に読むことで、契約条項だけでなく運用管理まで確認できます。

区分確認事項
基本チェック成果物の定義、譲渡か利用許諾か、27条・28条、譲渡ではなく不行使、公表・氏名表示・同一性保持、改変、関係会社・委託先・顧客、存続期間、対価、再委託先からの取得を確認します。
高リスク案件政治、宗教、医療、金融、教育、採用、成人向け、著作者名表示、専門家見解の編集、作品性の高い素材、実績表示、海外展開、生成AI、M&A、IPO、顧客提供を確認します。
社内運用契約書と発注書・見積書・仕様書の一致、納品物一覧、権利帰属、使用可能媒体、改変可否、クレジット条件、素材ライセンス一覧、契約管理システムへの登録、関係部署への共有を確認します。

次の修正例一覧は、契約レビューでよく見る不備と修正文例を対応させたものです。左列に該当する文言がある場合、右列の考え方を使って修正します。

失敗例問題点修正方針
著作者人格権を譲渡する著作者人格権は譲渡できません。甲及び甲が指定する者に対し、著作者人格権を行使しないと書きます。
著作権を全部譲渡するだけ人格権不行使が処理されていません。著作権譲渡条項と不行使特約を分けます。
27条・28条がない翻案権・二次的著作物利用権が留保されたと推定され得ます。著作権法第27条及び第28条に定める権利を含むと明記します。
対象者が甲だけ関係会社、委託先、顧客、承継人が漏れます。事業利用に合わせて対象者を広げます。
重大改変も無制限交渉決裂や紛争化につながりやすいです。通常改変と重大改変を分け、重大改変は協議制にします。
存続条項がない長期利用時に争いが生じます。契約終了後も存続すると定めます。
Section 10

著作者人格権の不行使特約とM&A・IPO・資金調達

知的財産権の権利処理はDDで確認される重要項目です。

次の時系列は、M&A、IPO、資金調達で不行使特約を確認する流れを示しています。順番は、権利帰属の確認、不備の発見、是正対応、価格・条件への反映です。この順番で読むと、権利処理の不備を取引リスクとしてどう扱うかが分かります。

Step 1

主要プロダクトの権利帰属を確認

外部委託で作成したソフトウェア、デザイン、コンテンツについて契約書があり、27条・28条と不行使特約があるかを確認します。

Step 2

関与者と素材を確認

再委託先、個人クリエイター、オープンソース、フォント、ストック素材、第三者素材、退職者作成物の扱いを確認します。

Step 3

不備を是正

追加の著作権譲渡契約、不行使確認書、再委託先同意書、既存素材の差替え、利用範囲の限定を検討します。

Step 4

取引条件へ反映

表明保証・補償、買収価格、投資条件、クロージング条件、誓約事項へ反映します。

次の比較表は、不行使特約と一緒に置く関連条項を整理しています。各行は、第三者からの請求や社内運用上の争点に備えるための条項です。

関連条項役割
表明保証条項成果物について、契約範囲で利用するために必要な権利を有し、第三者の権利を侵害しないことを確認します。
補償条項権利処理不備に起因して第三者から請求、異議、警告、訴訟等を受けた場合の費用負担を定めます。
実績表示条項クリエイターが制作実績として表示できるか、秘密情報や未公表情報をどう守るかを定めます。
クレジット表示条項氏名、名称、クレジットを表示する義務の有無や、媒体ごとの扱いを定めます。
既存著作物・第三者素材の除外条項既存素材、プログラム、フォント、テンプレート、ライブラリの内容と利用条件を開示させます。
Section 11

著作者人格権の不行使特約のドラフティング手順

成果物分類、利用シナリオ、権利条項、社内管理を一体で設計します。

次の判断の流れは、不行使特約を作成するときの実践手順を示しています。上から順に、成果物分類、利用シナリオ、権利条項の組み合わせ、社内利用制限の管理へ進みます。この順序で読むと、契約書だけで終わらず運用までつなげられます。

条項ドラフティングの実践手順

成果物を分類

完全オーダーメイド、既存素材、汎用モジュール、第三者素材、共同制作物、職務著作、AI利用成果物に分けます。

利用シナリオを列挙

将来利用、他媒体展開、改変予定、外部委託先利用、顧客提供、海外展開、商品化、事業承継を整理します。

権利条項を組み合わせる

成果物定義、譲渡または利用許諾、27条・28条、不行使、非侵害保証、再委託先取得、補償、存続条項を組み合わせます。

社内利用制限を管理

利用可能媒体、改変可否、クレジット、実績公開条件、地域制限、素材ライセンス条件を契約管理に登録します。

次の簡易チェック一覧は、契約レビュー用の確認項目を要約したものです。各欄は、取引概要、著作権条項、著作者人格権不行使条項、運用管理に対応しています。

確認欄主な項目
取引概要契約名、発注者、受注者、成果物、契約類型、利用目的、媒体、期間、地域、第三者利用、改変予定
著作権条項譲渡または利用許諾、27条・28条、既存素材・汎用モジュール、第三者素材、オープンソース・フォント・ストック素材
不行使条項「譲渡」ではなく「行使しない」、対象成果物、対象者、公表、氏名表示、改変、関係会社、委託先、承継人、顧客、再委託先取得、名誉・声望配慮、存続条項
運用管理契約条件の登録、利用制限の共有、納品物一覧、素材ライセンス一覧、クレジット条件、実績表示可否、再利用時の確認手順
Section 12

著作者人格権の不行使特約のFAQ

一般的な制度説明として、個別案件の断定を避けて整理します。

著作者人格権の不行使特約は必ず必要ですか。

一般的には、すべての契約で必須というわけではありません。ただし、成果物を企業が編集、改変、公表、二次利用、第三者提供する可能性がある場合は、必要性が高いとされています。具体的な要否は、成果物の性質や利用態様によって変わります。

著作権を譲渡してもらえば、不行使特約は不要ですか。

一般的には、不要とはいえません。著作権と著作者人格権は別の権利であり、著作権を譲り受けても著作者人格権は著作者に残ります。したがって、著作権譲渡条項と著作者人格権不行使条項を分けて書く必要があります。

「著作者人格権を放棄する」と書いてもよいですか。

一般的には、「放棄」よりも「行使しない」と書く方が実務上適切とされています。著作者人格権は一身専属の権利であり、譲渡できません。権利そのものを消滅させるような表現ではなく、契約上の不行使義務として設計します。

不行使特約があれば、どんな改変でもできますか。

一般的には、契約文言、利用目的、改変の程度、著作者の名誉・声望への影響、対価、当事者の関係などによって限界があります。著作者の社会的評価を害する利用や、契約時に想定されていなかった重大な改変は、紛争化する可能性があります。

クレジットを表示しない場合も不行使特約が必要ですか。

一般的には、氏名表示権との関係で必要になることがあります。著作者名を表示しない、会社名義で公表する、ブランド名義で出す、共同制作物の一部のみ表示する場合には、氏名表示に関する合意を明確にすることが望ましいです。

制作会社と契約すれば、従業員や再委託先の人格権も処理できますか。

当然には処理できません。制作会社が実際の著作者から必要な同意を取得しているかが重要です。契約書には、制作会社が従業員、再委託先、協力者から必要な権利処理を取得する義務と表明保証を入れることが考えられます。

職務著作なら不行使特約は不要ですか。

職務著作に該当し、会社が著作者となる場合には、従業員個人の著作者人格権行使リスクは低くなります。ただし、職務著作の要件を満たすかは個別に判断されます。社内規程、雇用契約、誓約書で補完することが望ましいです。

海外クリエイターとの契約でも同じですか。

海外クリエイターとの契約では、準拠法、裁判管轄、現地法上の著作者人格権、ベルヌ条約、職務著作、譲渡・放棄の可否、翻訳文の優先関係を確認する必要があります。日本国内で利用する場合、日本法上の問題も生じ得ます。

Section 13

著作者人格権の不行使特約のまとめ ― 利用実態に合わせて書く

成果物を事業に活かしながら、創作者の人格的利益も尊重します。

著作者人格権は譲渡できないため、企業が成果物を安全に公表、編集、改変、二次利用、第三者展開するには、著作権譲渡条項とは別に、利用実態に即した著作者人格権の不行使特約を明確に書く必要があります。

企業側にとって重要なのは、不行使特約を入れたかどうかだけではありません。どの成果物について、誰が、誰に対して、どの利用行為について、どの範囲の改変まで、どの期間、どの対価で、不行使を約束するのかを明確にすることです。

次の姿勢一覧は、実務上の推奨スタンスを整理しています。各項目は、条項の強さだけでなく、合理性と運用可能性を高めるための視点です。

Stance

法律構造を正しく理解する

著作権は譲渡できますが、著作者人格権は譲渡できません。不行使特約で処理します。

Stance

利用実態に合わせて書く

抽象的な定型文ではなく、実際に予定される利用、改変、第三者利用を条項化します。

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人格的利益に配慮する

名誉・声望を害する利用を避け、重大改変は協議制にするなど、合理的なバランスを取ります。

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背後の著作者を確認する

制作会社、再委託先、従業員、共同著作者、素材提供者からの権利処理を忘れないようにします。

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社内運用も整える

法務が契約を締結しても、事業部が利用条件を知らなければリスクは残ります。契約管理、素材管理、社内教育が必要です。

Reference

参考資料・根拠資料

公的資料・法令

  • e-Gov法令検索「著作権法」
  • 公益社団法人著作権情報センター「著作者の権利とは?」
  • 経済産業省「情報システム・モデル取引・契約書」
  • 特許庁「デザイナーが身につけておくべき知財の基本」関連教材
  • 公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」
  • 公正取引委員会「フリーランス法施行に関するガイドライン等の公表」
  • 特許庁「著作権侵害への救済手続」

裁判例

  • 裁判所「東京地方裁判所平成13年7月2日判決・ゲームソフト『宇宙戦艦ヤマト』事件」
  • 裁判所「平成15年(ワ)第6670号 損害賠償等請求事件」