2σ Guide

実用新案・意匠の企業法務実務
製品とデザインを守る知財戦略

実用新案・意匠の違い、出願、費用、契約、M&A、侵害対応、海外展開まで、企業法務で確認したい実務論点を体系的に整理します。

10年 実用新案権の期間
25年 現行意匠権の最長期間
100 ハーグ制度の最大意匠数
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実用新案・意匠の企業法務実務 製品とデザインを守る知財戦略

実用新案・意匠の違い、出願、費用、契約、M&A、侵害対応、海外展開まで、企業法務で確認したい実務論点を体系的に整理します。

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実用新案・意匠の企業法務実務 製品とデザインを守る知財戦略
実用新案・意匠の違い、出願、費用、契約、M&A、侵害対応、海外展開まで、企業法務で確認したい実務論点を体系的に整理します。
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  • 実用新案・意匠の企業法務実務 製品とデザインを守る知財戦略
  • 実用新案・意匠の違い、出願、費用、契約、M&A、侵害対応、海外展開まで、企業法務で確認したい実務論点を体系的に整理します。

POINT 1

  • 実用新案・意匠の全体像 ― 製品価値を分解して守る
  • 機能・構造・外観・ブランド・ノウハウを分けて考えると、出願と契約の優先順位が見えます。
  • 機能は実用新案または特許、外観は意匠、表示は商標、秘密は営業秘密で重ねて守ります
  • 模倣の抑止
  • 契約交渉力

POINT 2

  • 実用新案・意匠の定義と他の知的財産権との違い
  • 実用新案は物品の構造的工夫、意匠は視覚に訴える外観を中心に整理します。
  • 実用新案とは、物品の実用的な形、構造、組合せに関する技術的工夫を保護する制度です。
  • 方法、材料、抽象的なアイデア、サービスの仕組みそのものは、通常、実用新案の中心的な保護対象ではありません。
  • 読者にとって重要なのは、単に「小さな特許」と見るのではなく、物品の形状・構造・組合せに技術的効果があるかを読み取ることです。

POINT 3

  • 実用新案・意匠の出願、審査、技術評価書、法改正のポイント
  • 1. 出願書類と請求項を準備します:願書、明細書、実用新案登録請求の範囲、図面、要約書を整えます。
  • 2. 方式審査と基礎的要件を経て登録されます:迅速に登録される一方で、有効性が詳細に審査済みとは限りません。
  • 3. 技術評価書を取得し、有効性を検討します:警告や訴訟の前に、評価対象請求項、評価結果、追加先行技術、相手方製品の構成を確認します。
  • 4. 願書と図面で外観を特定します:正面、背面、左右側面、平面、底面、斜視図、断面図、拡大図、参考図などを適切に組み合わせます。
  • 5. 審査を経て登録され、出願日から最長25年保護されます:令和2年4月1日以降の制度では、存続期間が出願日から25年に変更されています。

POINT 4

  • 実用新案・意匠の費用と戦略的な使い分け
  • 公式費用だけでなく、調査、図面、代理人、海外、維持、紛争対応まで含めて判断します。
  • 実務では、出願時点の特許庁料金表を確認します。
  • 実用新案技術評価請求は42,000円に請求項数×1,000円を加えた額とされています。
  • 次の費用表は、公式費用の主要項目と期間ごとの登録料を表しています。

POINT 5

  • 実用新案・意匠の発売・発表より先に行う公開管理
  • 1. 製品価値を分けます:構造、外観、名称、ノウハウ、説明資料を分解します。
  • 2. 出願対象を決めます:実用新案、特許、意匠、商標、営業秘密の使い分けを確認します。
  • 3. 外部共有先を確認します:OEM先、ODM先、試作業者、撮影業者、広告代理店、販売代理店を洗い出します。
  • 4. 出願・NDA・証拠を先に整えます:公開日、公開媒体、公開内容、公開者を記録します。
  • 5. 届出とレビューを続けます:デザインレビュー記録、開発ノート、出願判断を残します。

POINT 6

  • 実用新案・意匠の契約法務と社内規程
  • 共同開発、製造委託、デザイン委託では、権利帰属と出願協力を契約で明確にします。
  • 届出手続
  • 権利承継
  • 報奨と評価

POINT 7

  • 実用新案・意匠のM&A・事業承継・投資デューデリジェンス
  • 登録の有無だけでなく、事業上本当に効く権利かを確認します。
  • 実用新案・意匠は、M&Aや投資で見落とされやすい権利です。
  • 次の調査表は、M&A デューデリジェンスで実用新案・意匠を確認する項目を表しています。
  • 重要なのは、登録番号の一覧だけではなく、名義、維持、権利範囲、契約、紛争、海外権利まで読み取ることです。

POINT 8

  • 実用新案・意匠の侵害対応、防御、税関・EC模倣品対策
  • 1. 権利を確認します:有効性、存続期間、名義、登録公報、図面、請求項、技術評価書、関連意匠を確認します。
  • 2. 証拠を保全します:相手方製品を購入・保全し、写真、動画、販売ページ、広告を記録します。
  • 3. 先行技術・先行意匠を再調査します:無効理由、先使用、権利濫用、消尽、契約上の抗弁を想定します。
  • 4. 目的を決めます:販売停止、設計変更、在庫処理、ライセンス、和解金、謝罪広告、税関差止めを整理します。
  • 5. 警告・交渉・手続を選びます:警告書、交渉、仮処分、訴訟、税関差止め、ECプラットフォーム申告を選択します。

まとめ

  • 実用新案・意匠の企業法務実務 製品とデザインを守る知財戦略
  • 実用新案・意匠の全体像 ― 製品価値を分解して守る:機能・構造・外観・ブランド・ノウハウを分けて考えると、出願と契約の優先順位が見えます。
  • 実用新案・意匠の定義と他の知的財産権との違い:実用新案は物品の構造的工夫、意匠は視覚に訴える外観を中心に整理します。
  • 実用新案・意匠の出願、審査、技術評価書、法改正のポイント:早期登録の利点と、権利行使時の検討負担を分けて理解します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

実用新案・意匠の全体像 ― 製品価値を分解して守る

機能・構造・外観・ブランド・ノウハウを分けて考えると、出願と契約の優先順位が見えます。

このページは、日本法を中心に、実用新案・意匠を企業法務と知財法務の視点から整理する一般情報です。個別案件では、対象製品、先行技術、先行意匠、契約関係、事業国、公開時期、証拠状況により結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士・弁理士等の専門家へ確認する必要があります。

実用新案と意匠は、どちらも製品競争力を支える産業財産権ですが、守る対象が異なります。実用新案は物品の形状、構造または組合せに係る技術的な考案を扱い、意匠は物品、建築物、画像などの外観デザインを扱います。

次の重要ポイントは、実用新案・意匠を単独の出願手続ではなく事業防衛の設計として見る考え方を表しています。読者にとって重要なのは、権利の名前よりも製品価値のどの部分をどの制度で守るかを読み取ることです。

機能は実用新案または特許、外観は意匠、表示は商標、秘密は営業秘密で重ねて守ります

製品の価値を分解し、契約、証拠管理、模倣品監視、税関差止め、ライセンス、M&Aデューデリジェンスと組み合わせることで、実用新案・意匠は企業価値に結びつきます。

次の三つの項目は、実用新案・意匠が企業活動のどこで効くかを表しています。なぜ重要かというと、出願だけでなく交渉力、証拠化、企業価値評価に影響するためです。どの場面で自社の弱点が出やすいかを読み取ってください。

Imitation

模倣の抑止

構造が見れば分かる製品、短い商品サイクルの日用品、工具、雑貨、玩具、包装容器、家具、スマートフォンアクセサリ、医療・介護用品、建築部材では早期保護の手段になります。

Negotiation

契約交渉力

製造委託、販売代理、共同開発、OEM、ODM、ライセンス、アライアンス、M&Aでは、誰がどの権利を持つかが価格、保証、補償、解除、独占販売権に影響します。

Evidence

証拠化と内部統制

出願書類、図面、願書、登録原簿、評価書、先行調査記録、デザインレビュー記録、開発ノート、NDA、譲渡契約は、社内知財の発生と承継を示す資料になります。

企業法務上の中核は、「どちらを出願するか」だけではありません。製品の競争力を分解し、機能・構造は実用新案または特許、外観・UI・建築・内装は意匠、ブランド表示は商標、ノウハウは営業秘密、販売資料やソフトウェア表現は著作権で守る設計が重要です。

Section 01

実用新案・意匠の定義と他の知的財産権との違い

実用新案は物品の構造的工夫、意匠は視覚に訴える外観を中心に整理します。

実用新案とは、物品の実用的な形、構造、組合せに関する技術的工夫を保護する制度です。方法、材料、抽象的なアイデア、サービスの仕組みそのものは、通常、実用新案の中心的な保護対象ではありません。

次の比較表は、実用新案で検討しやすい対象と注意点を整理しています。読者にとって重要なのは、単に「小さな特許」と見るのではなく、物品の形状・構造・組合せに技術的効果があるかを読み取ることです。

対象実用新案で検討しやすい例注意点
物品の形状持ちやすい工具のグリップ形状、掃除具のヘッド形状、容器の注ぎ口形状外観の美しさが中心であれば意匠も検討します。
物品の構造折りたたみ機構、固定具、ヒンジ、係止部、収納構造構造的効果を明細書で説明できるかが重要です。
物品の組合せ複数部品の連結方法、セット部材の組合せ、装着構造単なる寄せ集めではなく技術的効果を整理します。
方法・製造方法原則として特許を検討します。実用新案は方法を中心的対象にしません。
ソフトウェア処理特許、著作権、営業秘密、契約で検討します。画面デザインは意匠の可能性があります。

意匠とは、製品等の外観デザインを保護する制度です。令和2年4月以降は、従来の物品デザインに加え、画像、建築物、内装デザインも保護対象に含まれます。技術思想ではなく、視覚を通じて美感を起こさせる外観が中心です。

次の比較表は、意匠で検討しやすい対象と注意点を表しています。なぜ重要かというと、どの外観を権利化するかで模倣品に対する効き方が変わるためです。全体、部分、関連バリエーション、画像、建築物・内装の違いを読み取ってください。

対象意匠で検討しやすい例注意点
物品全体の外観家電、家具、工具、雑貨、包装容器、車両部品量産可能性、用途・機能、図面の特定が重要です。
部分意匠製品の特徴的な一部分、ボタン配置、取手、先端部どの部分を権利化するかが権利範囲を左右します。
関連意匠同一コンセプトのバリエーション、シリーズ商品基礎意匠からの出願時期管理が重要です。
画像意匠操作画面、機能表示画面、GUIコンテンツ画像そのものは慎重に検討します。
建築物・内装店舗外観、オフィス内装、施設内装図面表現、統一的美感、公開時期が問題になります。
秘密意匠発売前に登録内容を伏せたい新製品デザイン秘密期間、権利行使時期、社内発表時期を調整します。

実用新案・意匠を正しく使うには、特許、商標、著作権、不正競争防止法との違いを押さえる必要があります。次の比較表は、制度ごとの主な保護対象と使いどころを表しています。読者にとって重要なのは、一つの製品を複数制度で重ねて守る発想を読み取ることです。

制度主な保護対象典型例企業法務上の使いどころ
特許高度な技術的思想としての発明制御方法、製造方法、材料、装置、ソフトウェア関連発明長期・強力な技術保護に向きますが、審査に時間と費用がかかります。
実用新案物品の形状・構造・組合せに係る考案日用品の構造、工具、部材、簡易機構早期登録、短期商品、構造模倣対策に使います。ただし権利行使は慎重に進めます。
意匠物品・建築物・画像等の外観デザイン家電外観、包装、GUI、店舗内装模倣デザイン対策、ブランド体験保護、シリーズ商品保護に使います。
商標商品・役務の出所表示ブランド名、ロゴ、商品名ブランド保護、EC模倣対策、税関差止めで重要です。
著作権創作的表現文章、画像、イラスト、ソフトウェアコード登録不要ですが、産業製品形態の保護には限界があります。
不正競争防止法周知表示、著名表示、商品形態模倣、営業秘密等デッドコピー、営業秘密流出登録がない場合の補完になりますが、要件と期間制限に注意します。

新しい美容器具の例では、内部の振動機構は特許または実用新案、持ち手やヘッドの外観は意匠、商品名は商標、説明書や販促写真は著作権、製造条件や配合ノウハウは営業秘密として管理することが考えられます。

Section 02

実用新案・意匠の出願、審査、技術評価書、法改正のポイント

早期登録の利点と、権利行使時の検討負担を分けて理解します。

実用新案は、方式審査と基礎的要件の確認を経て迅速に登録される制度です。権利期間は出願から10年です。特許のように新規性・進歩性等について詳細な実体審査を受けてから権利が発生する制度ではないため、登録後の権利行使では技術評価書や先行技術調査が重要になります。

次の時系列は、実用新案と意匠で出願後に重視する段階の違いを表しています。読者にとって重要なのは、実用新案では登録の速さと行使前の評価、意匠では図面・審査・関連意匠の管理を読み取ることです。

実用新案

出願書類と請求項を準備します

願書、明細書、実用新案登録請求の範囲、図面、要約書を整えます。請求項は権利範囲を決める中核文書です。

実用新案

方式審査と基礎的要件を経て登録されます

迅速に登録される一方で、有効性が詳細に審査済みとは限りません。短期市場での牽制や表示には使いやすい反面、警告には注意が必要です。

権利行使

技術評価書を取得し、有効性を検討します

警告や訴訟の前に、評価対象請求項、評価結果、追加先行技術、相手方製品の構成を確認します。

意匠

願書と図面で外観を特定します

正面、背面、左右側面、平面、底面、斜視図、断面図、拡大図、参考図などを適切に組み合わせます。

意匠

審査を経て登録され、出願日から最長25年保護されます

令和2年4月1日以降の制度では、存続期間が出願日から25年に変更されています。古い登録意匠では出願日・登録日・満了日を個別確認します。

実用新案の出願では、展示会、EC掲載、クラウドファンディング、SNS投稿、プレスリリース、販売代理店向け資料、OEM先への非秘密提供より先に出願時期を確認します。先行技術調査、図面の明確化、特許出願との関係、権利行使を前提にしすぎない運用も重要です。

次の確認表は、実用新案に基づく警告を検討する際の前提条件を表しています。なぜ重要かというと、実体審査を経ない登録のまま強い文面で警告すると、後に無効となった場合の損害賠償責任や信用毀損リスクにつながるためです。評価書、請求項、相手方製品、交渉目的の順に確認してください。

確認事項実務上の意味
技術評価書を取得したか取得していない場合、原則として権利行使へ進みにくくなります。
評価結果は肯定的か否定的評価がある場合、警告・訴訟は特に慎重に判断します。
評価対象請求項と侵害主張請求項は一致するか評価されていない請求項で主張するとリスクが高まります。
追加の先行技術を把握していないか技術評価書にない先行技術で無効となる可能性があります。
相手方製品が請求項を充足するか見た目が似ているだけでは実用新案侵害とはいえません。
警告文の表現は過度でないか取引先への通知は信用毀損・不正競争リスクもあります。
交渉目的は何か差止め、設計変更、在庫処理、ライセンス、和解金などを明確にします。

意匠登録では、工業上利用できる意匠であること、新規性、創作非容易性、先に出願された意匠の一部と同一または類似でないこと、不登録事由に該当しないこと、一意匠一出願、先願などが問題になります。図面は単なるイメージではなく、保護したい外観を特定する資料です。

次の一覧は、意匠出願前に検討する実務事項を表しています。重要なのは、外観のどの範囲を押さえるか、競合がどう回避するか、国内外の出願順序をどう管理するかです。各項目から、発売・発表より先に決める事項を読み取ってください。

権利化する外観

製品全体、特徴的部分、画面、建築物、内装のどれを保護するかを決めます。

公開時期

展示会、ウェブ掲載、SNS、クラウドファンディング、カタログ、販売開始より先に出願時期を確認します。

回避変更の予測

色、比率、一部形状、部分模倣など、競合が変更しそうな点を想定します。

関連意匠

シリーズ商品、色違い、形状違い、後継モデルを含めたポートフォリオを作ります。

秘密意匠

発売より先に登録内容が公報で見えると不利な場合、秘密意匠制度を検討します。

海外出願

日本だけでなく、米国、EU、中国、韓国、ASEANなど主要市場を含めて順序を決めます。

令和元年意匠法改正では、画像・建築物・内装の保護、関連意匠制度の拡充、意匠権の存続期間変更、創作非容易性の水準明確化、組物の意匠の拡充、間接侵害の対象拡大、損害賠償算定方法の見直し、複数意匠一括出願手続の導入などが示されています。デジタルプロダクト、SaaS、アプリ、医療機器UI、工場設備UI、店舗設計、ホテル内装、オフィス空間、展示施設でも意匠戦略が必要になりました。

Section 03

実用新案・意匠の費用と戦略的な使い分け

公式費用だけでなく、調査、図面、代理人、海外、維持、紛争対応まで含めて判断します。

実務では、出願時点の特許庁料金表を確認します。このページで扱う公式費用では、実用新案登録出願の出願料は14,000円、意匠登録出願の出願料は一意匠につき16,000円です。実用新案技術評価請求は42,000円に請求項数×1,000円を加えた額とされています。

次の費用表は、公式費用の主要項目と期間ごとの登録料を表しています。読者にとって重要なのは、初期費用だけでなく、請求項数、年数、維持費が総コストに影響する点を読み取ることです。

項目金額・期間企業法務での見方
実用新案登録出願料14,000円早期登録の入口費用です。調査費、図面費、代理人費用は別に見ます。
意匠登録出願料一意匠につき16,000円複数バリエーションや関連意匠を出す場合、件数管理が重要です。
実用新案技術評価請求42,000円+請求項数×1,000円権利行使や警告の前提資料として重視します。
実用新案登録料第1年から第3年は毎年2,100円+請求項数×100円初期の短期商品では維持費が比較的読みやすいです。
実用新案登録料第4年から第6年は毎年6,100円+請求項数×300円販売期間が延びる場合に維持要否を見直します。
実用新案登録料第7年から第10年は毎年18,100円+請求項数×900円後半は費用対効果を確認します。
意匠登録料第1年から第3年は毎年8,500円、第4年から第25年は毎年16,900円長期ブランド商品では維持管理の意味が大きくなります。

ただし、公式費用は総コストの一部です。弁理士費用、先行調査費、図面作成費、翻訳費、海外代理人費用、拒絶理由対応費、年金管理費、訴訟費用、税関差止め費用は別に発生します。企業法務では、出願、維持、監視、行使、海外展開、契約交渉まで含めた総コストで判断します。

次の比較表は、事業課題ごとに実用新案と意匠の向き不向きを表しています。なぜ重要かというと、技術とデザインを一律に分けるだけでは、製品の実際の競争力を守りきれないためです。自社の課題が構造、外観、期間、地域のどこにあるかを読み取ってください。

事業課題実用新案が向く場面意匠が向く場面
構造を真似されそうヒンジ、固定具、収納機構、組合せ構造に特徴がある場合外観も同時に似せられるなら併用します。
見た目を真似されそう構造的効果がある場合は検討します。製品外観、部分形状、包装、UI、内装を保護します。
早く牽制したい早期登録を活かせます。ただし評価書が重要です。審査を経るため登録までの時間を考慮します。
短命の商品10年保護でも十分な場合があります。季節商品、雑貨、ファッション性ある製品にも有効です。
長期ブランド商品特許・意匠・商標の組合せを検討します。関連意匠でシリーズを継続保護します。
GUI・画面構造よりも特許・著作権・営業秘密を検討します。画像意匠として検討します。
店舗・建築・空間原則として意匠・著作権・契約を中心に検討します。建築物・内装意匠を検討します。
海外模倣品対策国ごとの制度差を確認します。ハーグ制度や各国意匠出願を検討します。

最も多い実務上の誤りは、「技術は特許、デザインは意匠」と単純化しすぎることです。特徴的な形状が、見た目の差別化であると同時に持ちやすさ、冷却効率、組立容易性、強度向上に寄与している場合、意匠と実用新案の双方を検討する価値があります。

Section 04

実用新案・意匠の発売・発表より先に行う公開管理

展示会、SNS、EC、クラウドファンディング、営業資料の前に知財確認を組み込みます。

実用新案・意匠の実務で特に危険なのは、出願より先に製品やデザインを外部に見せることです。展示会、SNS、ECサイト、クラウドファンディング、プレスリリース、営業資料、動画公開は事業上自然な活動ですが、新規性喪失の問題を生じ得ます。

次の判断の流れは、商品企画から販売開始までに知財確認を入れる順番を表しています。重要なのは、外部に見せる行為が始まる前に出願要否、秘密保持、例外規定の証拠を確認することです。上から順に、どの部署が止めどころを持つかを読み取ってください。

発売・発表前の確認順序

製品価値を分けます

構造、外観、名称、ノウハウ、説明資料を分解します。

出願対象を決めます

実用新案、特許、意匠、商標、営業秘密の使い分けを確認します。

外部共有先を確認します

OEM先、ODM先、試作業者、撮影業者、広告代理店、販売代理店を洗い出します。

外部に見せる
出願・NDA・証拠を先に整えます

公開日、公開媒体、公開内容、公開者を記録します。

社内のみ
届出とレビューを続けます

デザインレビュー記録、開発ノート、出願判断を残します。

企業法務担当者は、展示会、プレスリリース、SNS、クラウドファンディングの承認手順に知財確認欄を設けます。OEM先、ODM先、試作業者、撮影業者、広告代理店、販売代理店との契約には秘密保持条項を入れ、再委託先にも義務が及ぶように設計します。

次の一覧は、社内の業務手順に入れたい公開管理の要素を表しています。読者にとって重要なのは、知財部門だけでなくマーケティング、広報、営業、EC、デザイン、開発部門も同じ確認項目を使うことです。どの行動が新規性喪失につながりやすいかを読み取ってください。

Review

デザインレビュー会議

公開予定日と出願予定日を同時に確認します。出願判断が未了のまま外部発表に進まない運用にします。

Approval

発表承認

展示会、プレスリリース、SNS、クラウドファンディングの承認手順に知財確認欄を設けます。

NDA

外部協力先

製造委託先、広告代理店、販売代理店、撮影業者との秘密保持条項と再委託先への義務を確認します。

Storage

情報共有管理

社内チャットやクラウドストレージでの外部共有を管理し、公開内容と時期の記録を残します。

Exception

新規性喪失の例外

例外規定を使う可能性がある場合は、期限、証拠、公開態様を厳密に管理します。

Training

社内研修

販売開始後に初めて知財相談が来る体制を改め、発売・発表より先に相談する文化を作ります。

「公開してから売れたら出願する」という発想は、実用新案・意匠では重大なリスクになります。商品企画、マーケティング、営業、EC、デザイン、研究開発が同じ基準で動く体制を整えることが重要です。

Section 05

実用新案・意匠の契約法務と社内規程

共同開発、製造委託、デザイン委託では、権利帰属と出願協力を契約で明確にします。

実用新案・意匠は社内だけで創作されるとは限りません。外部デザイナー、設計会社、大学、研究機関、製造委託先、金型業者、広告代理店、UI/UX会社、建築設計事務所、施工会社、コンサルタントが関与する場合、契約で権利帰属を明確にしないと、誰が出願できるか、誰が実施できるか、誰がライセンスできるかが争点になります。

次の契約条項一覧は、実用新案・意匠が外部関係者と関わる場面で確認する項目を表しています。重要なのは、著作権譲渡だけで安心せず、意匠登録を受ける権利、実用新案登録を受ける権利、ノウハウ、出願協力を分けて読むことです。

条項実務上のポイント
成果物の定義図面、3Dデータ、試作品、UI画面、金型データ、提案書、改良案を含めます。
知的財産権の帰属実用新案登録を受ける権利、意匠登録を受ける権利、著作権、ノウハウを分けます。
出願協力義務発明者・考案者・創作者の署名、譲渡書、宣誓書、海外出願協力を定めます。
秘密保持出願より先に外部へ漏れることを防ぎ、協力会社の再委託先にも義務を及ぼします。
競合利用禁止委託先が類似デザイン・類似構造を競合に提供しないように定めます。
改良発明・改良意匠改良の帰属、実施権、通知義務、共同出願の可否を定めます。
図面・データの返還削除3D CAD、レンダリング、金型データ、ソースデータを管理します。
侵害保証第三者権利を侵害しない保証の範囲と限界を定めます。
紛争対応警告、訴訟、税関差止め、証拠提供、費用負担を定めます。

共同開発契約では、共同出願と単独出願の使い分けが重要です。共同出願は公平に見えても、譲渡、ライセンス、権利行使、費用負担、相手方の倒産、M&A時の処理が複雑になります。共同出願にする場合は、持分、実施権、第三者ライセンス、費用、放棄、権利行使、海外出願を詳細に定めます。

次の項目一覧は、社内規程に入れる実用新案・意匠の運用要素を表しています。なぜ重要かというと、届出が上がらない文化では優れた考案やデザインが外部公開され、権利化の機会を失うためです。届出、承継、報奨、退職者対応までを一連の運用として読み取ってください。

Notice

届出手続

考案・意匠創作の届出手続、出願可否の判断プロセス、出願しない場合のノウハウ管理を定めます。

Transfer

権利承継

権利承継の時期と方法、発明者・考案者・創作者の認定基準を明確にします。

Reward

報奨と評価

報奨金または評価制度を整え、届出が増える文化を作ります。

Secrecy

秘密管理

秘密保持義務、共同開発・外部委託案件の特則、海外出願の判断基準を定めます。

Retirement

退職・異動対応

退職者・異動者の協力義務を定め、出願・権利行使に必要な署名や説明を確保します。

Culture

届出文化

出願すると仕事が増える、報奨がない、どうせ却下されるという感覚を減らす運用が重要です。

企業法務と知財部門は、経営陣、人事、研究開発、デザイン部門と連携し、出願、報奨、評価の仕組みを整える必要があります。

Section 06

実用新案・意匠のM&A・事業承継・投資デューデリジェンス

登録の有無だけでなく、事業上本当に効く権利かを確認します。

実用新案・意匠は、M&Aや投資で見落とされやすい権利です。特許や商標に比べて小さく見えることがありますが、日用品、家具、家電、アパレル周辺、雑貨、医療・介護用品、包装、店舗デザイン、UI/UX、建築・内装ビジネスでは、意匠や実用新案が収益源そのものを守っている場合があります。

次の調査表は、M&Aデューデリジェンスで実用新案・意匠を確認する項目を表しています。重要なのは、登録番号の一覧だけではなく、名義、維持、権利範囲、契約、紛争、海外権利まで読み取ることです。

調査項目確認内容
権利一覧登録番号、出願番号、出願日、登録日、満了日、国、権利者を確認します。
名義対象会社名義か、創業者個人名義か、外部デザイナー名義かを確認します。
維持費年金・登録料が支払われているか、失効予定がないかを確認します。
権利範囲主力製品を本当にカバーしているか、競合品に使えるかを確認します。
共同権利共同出願人・共有者がいないか、同意制限がないかを確認します。
ライセンス独占・非独占、地域、期間、サブライセンス、ロイヤルティを確認します。
担保・譲渡制限質権、担保、譲渡制限、資金調達契約上の制約を確認します。
紛争警告、訴訟、無効審判、税関差止め、侵害通知を確認します。
職務創作従業員・外注先から適切に承継しているかを確認します。
海外主要市場で権利化しているか、模倣国での保護があるかを確認します。

買収後に、主力商品のデザインが外部デザイナー個人に帰属していた、共同開発先の同意なしにライセンスできない、維持料未納で失効していた、実用新案は登録されているが技術評価が否定的だった、という事実が判明すると、買収価格、表明保証、補償、PMIに大きく影響します。

売主側は、M&Aより先に知財棚卸しを行い、名義不備、契約不備、年金管理、出願漏れを整理します。買主側は、登録の有無だけでなく、主力製品や収益源に対する実効性を確認します。

Section 07

実用新案・意匠の侵害対応、防御、税関・EC模倣品対策

警告する側も受ける側も、有効性、権利範囲、証拠、事業目的を冷静に整理します。

侵害対応では、最初に相手が悪いと決めつけるのではなく、権利の有効性、権利範囲、相手方製品、証拠、事業目的、交渉戦略を整理します。実用新案では請求項の構成要件を相手方製品がすべて充足するかを見ます。意匠では登録意匠と相手方意匠が同一または類似かを、全体的印象、要部、用途・機能、既存デザインとの関係から検討します。

次の判断の流れは、侵害対応を進める標準的な順番を表しています。読者にとって重要なのは、警告書作成より先に権利・証拠・無効理由・事業目的を確認することです。上から順に、どの段階で専門的判断が必要になるかを読み取ってください。

侵害対応の標準的な順番

権利を確認します

有効性、存続期間、名義、登録公報、図面、請求項、技術評価書、関連意匠を確認します。

証拠を保全します

相手方製品を購入・保全し、写真、動画、販売ページ、広告を記録します。

先行技術・先行意匠を再調査します

無効理由、先使用、権利濫用、消尽、契約上の抗弁を想定します。

目的を決めます

販売停止、設計変更、在庫処理、ライセンス、和解金、謝罪広告、税関差止めを整理します。

警告・交渉・手続を選びます

警告書、交渉、仮処分、訴訟、税関差止め、ECプラットフォーム申告を選択します。

警告書は法的文書であると同時にビジネス文書です。強すぎる表現は反発や信用毀損リスクを生み、弱すぎる表現は実効性を失います。実用新案では、技術評価書の提示、請求項の特定、侵害理由、有効性検討の記録が特に重要です。

次の確認表は、警告を受けた企業が最初に見るべき事項を表しています。重要なのは、直ちに販売停止や謝罪をする発想ではなく、警告の根拠を精査し、非侵害、無効、設計変更、ライセンス、和解などの選択肢を読み取ることです。

確認事項実務対応
権利は有効に存続しているか登録番号、満了日、維持料、名義を確認します。
警告者は権利者か権利者、専用実施権者、代理人権限を確認します。
実用新案で技術評価書があるか提示の有無は対応方針に影響します。
請求項または意匠が特定されているか漠然とした警告には説明を求めることがあります。
自社製品が権利範囲に入るか構成要件対比または意匠類否分析を行います。
無効理由があるか先行技術・先行意匠・公開事実を調査します。
先使用・契約関係があるか開発時期、販売開始時期、取引経緯を確認します。
事業上の影響在庫、顧客、販売停止費用、設計変更可能性を把握します。

税関の知的財産侵害物品の差止申立制度では、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権等を有する者が、自己の権利を侵害すると認める貨物について、輸出入差止めと認定手続を申し立てることができます。模倣品対策では、意匠権と商標権の組合せが特に重要です。

次の一覧は、税関・ECプラットフォーム対応で準備する資料を表しています。なぜ重要かというと、登録権利があっても、正規品と模倣品の違いを第三者が理解できなければ、実効的な削除や差止めにつながりにくいためです。証拠、識別資料、権利の組合せを読み取ってください。

登録資料

登録証、登録公報、権利者情報を整理しておきます。

識別資料

正規品と模倣品の識別ポイントを画像で示します。

販売証拠

販売ページ、販売者情報、販売価格、レビュー、在庫表示を証拠化します。

権利の組合せ

意匠権、商標権、著作権、不正競争防止法を組み合わせます。

海外販売者

税関差止め、現地権利、プラットフォーム申告を併用します。

実用新案

技術評価書と侵害対比を準備します。

模倣品対策は、権利を取ってから始まるだけではありません。製品発売より先に、どの権利をどの国で取得するか、どのECで監視するか、正規品識別資料をどう作るか、税関申立てをするかを設計しておく必要があります。

Section 08

実用新案・意匠の海外展開、デジタルデザイン、生成AI

国ごとの権利、ハーグ制度、画像意匠、仮想空間、生成AIの創作過程をまとめて管理します。

実用新案制度は国によって有無や内容が大きく異なります。日本で実用新案登録を受けても、海外で当然に保護されるわけではありません。海外展開を行う企業は、各国の特許、実用新案、意匠、商標、不正競争法、税関制度を個別に検討します。

意匠については、ハーグ制度を利用できる場合があります。ハーグ制度は、一つの国際出願により複数国・地域でデザイン保護を求めるための仕組みで、一つの国際出願に最大100意匠を含められる制度として説明されています。ただし、指定国ごとの審査、拒絶、保護範囲、図面要件を確認します。

次の一覧は、海外展開で起きやすい失敗を表しています。読者にとって重要なのは、日本での販売開始や外部発表が海外出願の機会を狭めること、製造国・販売国・EC監視国を分けて読むことです。

期限喪失

日本で販売開始後、海外出願の期限を失うことがあります。

主要市場の出願漏れ

中国、米国、EU、韓国など主要市場で意匠出願がない状態になり得ます。

製造国の権利不足

製造国に権利がないと、模倣品製造を止めにくくなります。

商標だけの保護

販売国で商標だけ取得し、デザイン模倣に弱い状態が生じます。

図面不適合

ハーグ出願の図面が各国実務に合わない場合があります。

現地代理店の先取り

現地代理店が先に商標・意匠を出願するリスクがあります。

デジタル領域では、令和元年意匠法改正により画像意匠の保護が拡充されました。さらに、仮想空間で用いられる画像の意匠登録出願に関する考え方も整理されています。デジタルプロダクトでは、意匠、著作権、商標、契約、利用規約を組み合わせる必要があります。

次の切り分け表は、デジタルデザインや生成AIが関係する対象ごとに検討制度を表しています。なぜ重要かというと、画面、コンテンツ、仮想店舗、3Dデータ、AI生成物では保護の根拠が異なるためです。対象ごとに、意匠だけで足りるか、契約・記録・利用規約が必要かを読み取ってください。

対象検討すべき制度
アプリの操作画面画像意匠、著作権、商標、契約を検討します。
産業機器の操作UI画像意匠、特許、営業秘密、契約を検討します。
ゲーム内のコンテンツ画像著作権、商標、不正競争防止法、契約を検討します。意匠は慎重に見ます。
仮想店舗の内装・UI意匠、著作権、商標、利用規約を検討します。
3Dアバター・デジタル商品現行法上の保護範囲を個別に検討します。契約・利用規約が重要です。
生成AIによるデザイン案著作権、意匠、秘密管理、創作過程の証拠化を検討します。

生成AIがデザイン創作に関与する場合、誰が創作者か、学習データや入力プロンプトに第三者権利侵害がないか、社内外のデータが漏えいしていないか、生成物を出願できるか、創作過程をどう証拠化するかが問題になります。制作過程、関与者、入力情報、修正履歴、採用理由、公開日を記録し、契約・利用規約・社内ルールを整備します。

Section 09

実用新案・意匠の期限管理とリーガルオペレーション

出願日、優先日、登録日、応答期限、年金納付期限、秘密意匠、関連意匠を一元管理します。

実用新案・意匠の管理では、出願日、優先日、登録日、応答期限、年金納付期限、秘密意匠期間、関連意匠の出願可能期間、海外優先権期限を正確に管理します。期限管理の失敗は、権利喪失、出願機会喪失、拒絶確定、損害賠償リスクに直結します。

特許庁は、令和8年4月1日からオンライン発送制度が変更され、オンライン発送される特定通知等について、受取可能となった日の翌日から一定期間を経過すると到達したとみなす制度が導入されると公表しています。オンライン発送機能を利用するには新たに「特定通知等を受ける旨の届出」が必要で、業として対特許庁手続を代理する者にはオンライン受領が必須とされています。

次の一覧は、企業法務・知財法務で整えるリーガルオペレーションを表しています。重要なのは、代理人任せにせず社内でも期限と責任者を二重に見える化することです。どの業務が人の異動や通知見落としで止まりやすいかを読み取ってください。

System

期限の一元管理

知財管理システムで出願、応答、年金、秘密意匠、関連意匠、海外優先権を管理します。

Double Check

社内の二重管理

出願代理人任せにせず、社内でも期限を持ちます。

Notice

オンライン発送

書類の確認頻度、届出要否、担当者不在時の確認経路を定めます。

Handover

異動・退職時の引継ぎ

担当者変更で期限管理が途切れないよう、役割とバックアップを定めます。

Communication

連絡経路

代理人、社内知財、法務、事業部の連絡経路を明確にします。

Reorganization

組織再編時の名義

M&Aや組織再編時に名義変更、包括承継、ライセンス登録を確認します。

知財管理は、専門知識だけではなく業務設計の問題です。リーガルオペレーション担当、パラリーガル、知財事務、外部特許事務所管理担当の役割も大きくなります。

Section 10

実用新案・意匠の企業規模別戦略と専門職の役割

スタートアップ、中小企業、大企業で、出願基準と管理体制の重点は変わります。

企業規模によって、実用新案・意匠の使い方は変わります。スタートアップは資金と時間が限られる一方で模倣に弱く、中小企業はニッチ市場の製品を守る実効性が高く、大企業はグローバルなポートフォリオ管理と内部統制の一部として扱います。

次の比較一覧は、企業規模ごとの重点を表しています。重要なのは、同じ実用新案・意匠でも、資金調達、展示会、OEM、税関、グローバル出願、生成AIなど、事業段階ごとに優先順位が変わることです。自社の規模で最初に整えるべき点を読み取ってください。

Startup

スタートアップ

主力製品の外観は販売より先に意匠出願を検討します。構造上の工夫があれば特許と実用新案のどちらが適切か早期に見ます。ピッチ資料、展示会、クラウドファンディングより先の知財確認、創業者個人名義の整理、投資契約の表明保証への対応も重要です。

SME

中小企業

短期で市場投入する改良品、地域ブランド商品、工業部品、工具、介護用品、食品容器、雑貨では費用対効果が高い場合があります。展示会出展前の出願チェック、取引先への図面提供時のNDA、製造委託先との権利帰属条項、模倣品発見時の証拠保全が重要です。

Enterprise

大企業・上場企業

単発の権利取得ではなく、ポートフォリオ管理、ブランド戦略、グローバル模倣品対策、M&A、ESG、内部統制の一部として扱います。関連意匠、グローバル出願国の選定、競合ウォッチング、標準契約、生成AI利用ルール、知財KPIが重要です。

実用新案・意匠の実務は、一人の専門家だけでは完結しません。次の役割表は、関係者ごとの主な役割を表しています。読者にとって重要なのは、商品開発の初期段階から専門職と事業部が同じ情報を見て、公開・出願・契約・証拠化を同時に進めることです。

専門職・担当主な役割
弁理士出願戦略、明細書・図面、意匠図面、拒絶理由対応、先行調査、鑑定を担います。
弁護士契約、警告、交渉、訴訟、仮処分、損害賠償、M&A、危機対応を担います。
企業内弁護士経営判断、社内調整、外部専門家管理、リスク判断を担います。
法務担当契約レビュー、権利帰属、警告対応、社内規程、証拠管理を担います。
知財法務担当出願管理、ポートフォリオ、調査、年金管理、侵害監視を担います。
デザイン部門創作過程、図面・レンダリング、バリエーション、公開管理を担います。
研究開発部門技術的効果、構造説明、試作記録、先行技術情報を担います。
営業・マーケティング公開時期、展示会、カタログ、EC、顧客対応を担います。
内部監査・内部統制権利管理、契約遵守、期限管理、情報漏えい対策を確認します。
経営者出願予算、事業戦略、リスク許容度、権利行使方針を決めます。
税理士・会計士知財評価、M&A、減損、ロイヤルティ、移転価格等を確認します。
税関・通関専門家輸出入差止め、模倣品対策、真正品識別資料を支援します。
Section 11

実用新案・意匠のチェックリスト ― 出願前、権利行使前、警告対応

チェック項目を分けることで、出願漏れ、証拠不足、過度な警告、対応遅れを減らします。

次の一覧は、出願より先に確認する事項を表しています。重要なのは、機能、外観、契約、創作者、図面、海外、維持費を同時に見て、公開や販売に進む前の不足を読み取ることです。

場面確認する事項
出願前対象製品の機能的特徴と外観的特徴を分けて整理します。
出願前実用新案、特許、意匠、商標、著作権、営業秘密のどれで守るか検討します。
出願前展示会、SNS、EC、クラウドファンディング、プレスリリースより先かを確認します。
出願前先行技術・先行意匠を調査します。
出願前外部委託先、共同開発先、デザイナーとの契約で権利帰属を確認します。
出願前発明者、考案者、創作者を確認します。
出願前図面、写真、CG、説明資料を権利化に適した形で準備します。
出願前海外出願、秘密意匠、関連意匠、部分意匠、維持費・管理体制を検討します。

次の一覧は、権利行使を検討する前に確認する事項を表しています。なぜ重要かというと、実用新案では評価書、意匠では類否分析、いずれも証拠と無効理由の確認が欠けると交渉・訴訟リスクが高まるためです。権利、証拠、相手方製品、交渉目標の順に読み取ってください。

場面確認する事項
権利行使前権利の名義、存続期間、維持料を確認します。
権利行使前実用新案では技術評価書を取得し、結果を精査します。
権利行使前相手方製品を適法に入手し、証拠保全します。
権利行使前請求項対比または意匠類否対比を作成します。
権利行使前無効理由となり得る先行技術・先行意匠を再調査します。
権利行使前警告書の宛先、表現、添付資料を確認します。
権利行使前取引先・顧客・販売店への通知範囲を検討します。
権利行使前交渉目標、広報、営業、カスタマーサポートとの対応方針を共有します。
権利行使前反訴、無効審判、信用毀損、不正競争のリスクを検討します。

次の一覧は、警告を受けた場合の初動を表しています。読者にとって重要なのは、回答期限だけに引っ張られず、権利者、登録資料、自社製品、非侵害理由、無効理由、在庫・顧客影響を並行して確認することです。

場面確認する事項
警告対応権利者・代理人の権限を確認します。
警告対応登録番号、請求項、図面、意匠公報を取得します。
警告対応実用新案で技術評価書が提示されているかを確認します。
警告対応自社製品の販売開始時期、開発記録、図面を保全します。
警告対応非侵害理由と無効理由を検討します。
警告対応設計変更の可能性を検討します。
警告対応在庫、納入契約、顧客対応、販売停止影響を算定します。
警告対応反論書・回答書の期限と方針を決め、経営陣にリスクと選択肢を報告します。
FAQ

実用新案・意匠でよくある質問

一般的な制度説明として整理し、個別案件の結論は資料と専門家確認で判断します。

Q1. 実用新案・意匠はどちらを先に出願しますか。

一般的には、製品の価値が構造にある場合は実用新案または特許、外観にある場合は意匠を検討するとされています。ただし、多くの製品では構造と外観が重なります。公開時期、先行技術・先行意匠、事業国、契約関係によって結論が変わる可能性があります。具体的な出願方針は、資料を整理したうえで弁護士・弁理士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 実用新案は小さな特許と考えてよいですか。

一般的には、便宜的にそのように説明されることがありますが、実務上は誤解に注意が必要とされています。実用新案は物品の形状・構造・組合せに係る考案を対象とし、技術的審査を経ずに登録されます。権利期間や権利行使の前提も特許と異なるため、具体的な活用は専門家へ確認する必要があります。

Q3. 意匠は見た目が少し違えば侵害になりませんか。

一般的には、意匠権は登録意匠と同一の意匠だけでなく、類似する意匠にも効力が及ぶとされています。ただし、類否は図面、先行意匠、需要者から見た全体的印象、要部、用途・機能によって変わります。具体的な侵害判断は、資料を整理したうえで弁護士・弁理士等の専門家へ相談する必要があります。

Q4. 自社で公開してしまったデザインは意匠登録できませんか。

一般的には、出願より先の公開は新規性喪失の問題を生じるとされています。ただし、一定の要件を満たす場合には例外規定を利用できる可能性があります。期限、公開日、公開媒体、公開内容、公開者などによって結論が変わるため、速やかに資料を整理して専門家へ相談する必要があります。

Q5. 実用新案登録がある場合、すぐ警告書を送れますか。

一般的には、実用新案は技術的審査を経ずに登録されるため、権利行使には技術評価書の取得と検討が重要とされています。十分に有効性を吟味しない警告は、後に権利が無効となった場合の損害賠償責任につながる可能性があります。個別の警告可否は、弁護士・弁理士等の専門家へ相談する必要があります。

Q6. 意匠だけで製品の機能を守れますか。

一般的には、意匠は外観を守る制度であり、機能そのものを独占する制度ではないとされています。機能や構造を守りたい場合は、特許または実用新案を検討します。ただし、外観と機能が密接に関係する製品では、制度の組合せが問題になるため、具体的には専門家へ確認する必要があります。

Q7. 海外では日本の実用新案・意匠がそのまま使えますか。

一般的には、知的財産権は国ごとに成立するとされています。日本で登録しても、海外で当然に権利行使できるわけではありません。海外市場や製造国が重要であれば、各国出願、ハーグ制度、現地商標、税関差止めを検討します。具体的な国別対応は専門家へ相談する必要があります。

Q8. 外部デザイナーが作ったデザインを会社が意匠出願できますか。

一般的には、契約内容と権利承継の有無によって判断が変わるとされています。外部デザイナーが創作した場合、会社が当然にすべての権利を取得するとは限りません。業務委託契約で、意匠登録を受ける権利、著作権、二次利用、改変、出願協力、秘密保持を確認する必要があります。

Q9. 実用新案・意匠を取得しても、競合が少し変えてきたら終わりですか。

一般的には、出願設計によって権利の効き方が変わるとされています。実用新案では請求項の書き方、意匠では部分意匠、関連意匠、バリエーション出願が重要です。ただし、具体的な権利範囲や回避可能性は図面、請求項、先行資料で変わるため、専門家へ確認する必要があります。

Q10. 中小企業でも実用新案・意匠を取る意味はありますか。

一般的には、構造が見て分かる製品、外観模倣されやすい商品、展示会やECで販売する商品、短期で市場を押さえたい商品では、有効な牽制手段となる可能性があります。ただし、出願する権利を絞り、維持費と行使可能性を考えた費用対効果を確認する必要があります。

Section 12

実用新案・意匠は出願手続ではなく事業防衛の設計です

事業を守り、交渉力を高め、紛争を予防し、必要な場面で使える状態を作ります。

実用新案・意匠は、単に特許庁へ書類を出す手続ではありません。製品のどこに競争力があるか、競合はどこを真似するか、どの国で売るか、いつ公開するか、誰が創作したか、どの契約で権利を確保するか、侵害時にどのように証拠を集めるか、税関やECでどう止めるかまでを含む、事業防衛の設計です。

実用新案は、物品の形状・構造・組合せに係る技術的工夫を早期に保護する制度として有用です。ただし、無審査登録に近い性質を持つため、技術評価書、有効性調査、警告文の適正化が欠かせません。

意匠は、製品、画像、建築物、内装などのデザイン価値を保護する制度として、ブランド戦略と模倣品対策の中心になり得ます。関連意匠、部分意匠、秘密意匠、海外意匠、税関差止めを組み合わせることで、外観保護を超えて市場での競争優位を構築できます。

企業法務における最終的な目標は、権利を取ることだけではなく、事業を守り、交渉力を高め、紛争を予防し、必要な場面では実効的に権利を使える状態を作ることです。そのためには、弁護士、弁理士、企業内弁護士、法務担当、知財担当、研究開発、デザイン、営業、経営陣が、開発初期から同じ情報を見て実用新案・意匠を検討する必要があります。

Guide

実用新案・意匠で次に確認したいこと

目的に近い詳しい解説へ進めるよう、関連するテーマを整理しました。

知りたい内容を選ぶと、手続、費用、地域、具体的な論点などの詳しい解説に進めます。

このテーマから次に確認されやすい詳しい解説を8件表示しています。

Reference

参考情報・一次情報

実用新案・意匠の制度資料

  • 特許庁「特許・実用新案とは」
  • 特許庁「初めてだったらここを読む 実用新案出願のいろは」
  • INPIT「実用新案技術評価請求書について教えてください」
  • INPIT「実用新案の設定の登録を受けた権利を行使する場合の注意点」
  • 特許庁「意匠制度の概要」
  • 特許庁「初めてだったらここを読む 意匠出願のいろは」
  • 特許庁「令和元年意匠法改正特設サイト」
  • 特許庁「意匠審査基準」
  • 特許庁「産業財産権関係料金一覧」

水際対策・海外・デジタル領域

  • 税関「知的財産侵害物品の差止申立制度に関する資料」
  • WIPO「Hague System The International Design System」
  • 特許庁「仮想空間において用いられる画像の意匠登録出願に関するガイドブック」
  • 特許庁「オンライン発送制度の見直しについて」

法令

  • e-Gov法令検索「実用新案法」
  • e-Gov法令検索「意匠法」