2σ Guide

法務デューデリジェンスとは何か
M&A・投資判断の実務体系

対象会社の権利義務を調査し、取引可否、価格、契約条件、クロージングPMIへつなげる考え方を、実務で使える形に整理します。

4つ 権利・義務・評価・対応
13領域 株式から外為法まで
5区分 重要度の整理
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法務デューデリジェンスとは何か M&A・投資判断の実務体系

対象会社の権利義務を調査し、取引可否、価格、契約条件、クロージング、PMIへつなげる考え方を、実務で使える形に整理します。

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法務デューデリジェンスとは何か M&A・投資判断の実務体系
対象会社の権利義務を調査し、取引可否、価格、契約条件、クロージング、PMIへつなげる考え方を、実務で使える形に整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 法務デューデリジェンスとは何か M&A・投資判断の実務体系
  • 対象会社の権利義務を調査し、取引可否、価格、契約条件、クロージング、PMIへつなげる考え方を、実務で使える形に整理します。

POINT 1

  • 法務デューデリジェンスの全体像をつかむ
  • 取引判断、価格、契約条件、PMI までつながる実務の入口を整理します。
  • 権利の確認
  • 義務の確認
  • リスクの評価

POINT 2

  • 法務デューデリジェンスが必要になる場面
  • M&A だけでなく、投資、IPO、融資、事業再生でも調査目的が変わります。
  • 他の調査との関係
  • 法務デューデリジェンスは、M&Aで最も典型的に使われます。
  • 以下の比較一覧は、場面ごとに法務デューデリジェンスの焦点がどう変わるかを示します。

POINT 3

  • 法務デューデリジェンスの基本プロセス
  • 1. 目的設定と範囲決定:取引目的、スキーム、業種、上場・非上場、国内外、規制、競争法・外為法、調査期間、資料、予算、報告形式を定めます。
  • 2. 資料請求リストの作成:会社・株式、契約、資産、労務、知財、個人情報、許認可、紛争、コンプライアンス、税務・会計連携の資料を求めます。
  • 3. VDR確認と資料精査:完全性、版、署名、契約期間、別紙、修正契約、電子契約の証跡、英文・和文の整合性を確認します。
  • 4. Q&Aと経営陣への聞き取り
  • 5. イシューリスト化:事実、資料、法令・契約条項、発生可能性、影響度、推奨対応、契約反映案、未確認事項を一覧化します。
  • 6. 報告書と契約反映:問題の有無だけでなく、価格、前提条件、補償、是正、PMIのどこで対応するかを明確にします。

POINT 4

  • 法務デューデリジェンスの調査対象と主要論点
  • 株式・会社組織
  • 重要契約

POINT 5

  • 法務デューデリジェンスのリスク評価方法
  • 発生可能性、影響度、金額化、帰属を分けて、取引条件に反映します。
  • 可能性と影響度を分ける
  • リスクの帰属まで整理する
  • 発見事項は、単に重要・軽微と分けるだけでは足りません。

POINT 6

  • 法務デューデリジェンス結果を契約へ反映する
  • 表明保証、補償、前提条件、誓約、開示別紙に実装します。
  • 報告書で問題を指摘しても、最終契約に反映されなければ実務上の意味は薄くなります。
  • 法務デューデリジェンスの結果は、表明保証、補償、クロージング前提条件、誓約事項、開示別紙に接続します。
  • なぜ重要かというと、過去リスク、将来リスク、是正可能なリスクでは、契約上の置き場所が違うためです。

POINT 7

  • 法務デューデリジェンスを支える専門家の役割
  • 弁護士だけでなく、登記、知財、労務、税務、会計、IT、内部監査が連携します。
  • 法務デューデリジェンスは、弁護士だけで完結するものではありません。

POINT 8

  • 売主側・中小企業の法務デューデリジェンス準備
  • 1. 会社・株式・議事録を整える:定款、登記、株主名簿、過去の株式移動記録、取締役 会・株主総会議事録を確認します。
  • 2. 重要契約・許認可・知財を一覧化する:契約、許認可、知財、訴訟・クレーム、借入・担保・保証、関連当事者取引、保険を整理します。
  • 3. 労務・個人情報・コンプライアンスを確認する:就業規則、勤怠、個人情報、セキュリティ、反社チェック、社内規程の未整備を早期に把握します。
  • 4. 開示すべき事項と守るべき機密を分ける:NDA、VDR、アクセス制限、マスキング、質疑回答を整え、従業員・取引先への説明方針も検討します。

まとめ

  • 法務デューデリジェンスとは何か M&A・投資判断の実務体系
  • 法務デューデリジェンスの全体像をつかむ:取引判断、価格、契約条件、PMI までつながる実務の入口を整理します。
  • 法務デューデリジェンスが必要になる場面:M&A だけでなく、投資、IPO、融資、事業再生でも調査目的が変わります。
  • 法務デューデリジェンスの基本プロセス:目的設定から報告書まで、調査を意思決定に変える順序を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

法務デューデリジェンスの全体像をつかむ

取引判断、価格、契約条件、PMIまでつながる実務の入口を整理します。

法務デューデリジェンスとは、企業買収、出資、事業譲渡、合併、会社分割、業務提携、IPO、事業承継、融資、再生案件などで、対象会社または対象事業に潜む法的リスクを調査し、取引の実行可否や条件に反映する実務です。

中小M&Aガイドラインでは、法務DDは主に譲り受け側が必要に応じて行う調査であり、弁護士が依頼者と協議して調査範囲を決めるものと説明されています。株式譲渡では対象会社の法的リスクを引き継ぎやすいため、株式、会社組織、重要契約、資産、負債、人事労務、訴訟、許認可、コンプライアンス、環境問題などを広く確認することが多いとされています。

要点法務デューデリジェンスは、単なる書類確認ではありません。発見した法的リスクを、価格、前提条件、表明保証、補償、誓約、開示事項、クロージング前後の対応へ翻訳する作業です。

法務デューデリジェンスの4つの本質

次の4項目は、調査で何を見ているのかを示す一覧です。権利と義務を確認するだけで終えず、影響評価と対応策までつなげることが重要です。各項目を読むと、法務デューデリジェンスが経営判断の材料になる理由が分かります。

RIGHTS

権利の確認

株式、資産、知的財産、許認可、契約上の地位、データ利用権、営業秘密、重要人材との契約関係など、事業に必要な権利を対象会社が本当に持つかを確認します。

DUTIES

義務の確認

未払賃金、保証債務、競業避止義務、秘密保持義務、製品保証、損害賠償義務、行政報告義務など、契約上・法令上の義務を把握します。

RISK

リスクの評価

取引の実行可否、価格、契約条件、統合、企業価値、評判、行政処分、刑事責任、民事責任にどの程度影響するかを評価します。

ACTION

対応策の設計

取引中止、価格調整、前提条件、表明保証、補償、誓約、開示事項、是正、保険、PMI、内部統制強化に落とし込みます。

個別案件の結論は、取引スキーム、対象会社の業種、法域、上場・非上場の別、規制業種該当性、契約関係、紛争状況、税務・会計・労務・知財・個人情報・競争法・外為法上の事情によって変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Section 01

法務デューデリジェンスが必要になる場面

M&Aだけでなく、投資、IPO、融資、事業再生でも調査目的が変わります。

法務デューデリジェンスは、M&Aで最も典型的に使われます。ただし、少数株式投資、資本業務提携、IPO、融資、プロジェクトファイナンス、事業再生でも、対象となる権利義務と調査深度は変わります。

以下の比較一覧は、場面ごとに法務デューデリジェンスの焦点がどう変わるかを示します。なぜ重要かというと、同じ資料でも、買収、投資、上場準備、融資では意思決定に使う観点が異なるためです。左から対象場面、主な確認事項、取引条件への反映先を読むと、調査目的の違いが整理できます。

対象場面主な確認事項結果の反映先
M&A株式、会社組織、契約、許認可、労務、知財、紛争、反社、競争法、外為法取引スキーム、価格、前提条件、表明保証、補償、PMI
出資・資本業務提携投資契約、株主間契約、優先株式、既存株主、ストックオプション、知財、個人情報、主要契約投資条件、拒否権、情報権、創業者拘束、撤退条件
IPO・上場準備適時開示、関連当事者取引、反社排除、労務、知財、契約管理、許認可、内部統制審査対応、内部統制整備、開示体制、規程整備
融資・担保資産の権利関係、担保の有効性、財務制限条項、許認可、事業継続性、環境リスク融資判断、担保設定、保証、財務制限条項
事業再生未払債務、租税公課、担保、保証、否認リスク、役員責任、資金繰り、事業価値の維持スポンサー条件、事業譲渡、私的整理、再生計画

他の調査との関係

財務デューデリジェンスは収益性、正常収益力、簿外債務、キャッシュフローを見ます。税務デューデリジェンスは法人税、消費税、源泉税、組織再編税制、移転価格を扱います。ビジネスデューデリジェンスは市場、顧客、成長性、シナジーを検証します。

法務デューデリジェンスは、これらの結果を切り離さず、訴訟引当金、未払残業代、偶発債務、保証債務、契約解除リスク、課徴金リスクなどを、法的発生可能性と金額評価の両面からつなぎます。人事労務、知財、IT、環境、人権も専門性が高いため独立調査になることがありますが、権利義務に関わる限り法務デューデリジェンスの一部です。

Section 02

法務デューデリジェンスの基本プロセス

目的設定から報告書まで、調査を意思決定に変える順序を確認します。

法務デューデリジェンスは、すべての資料を無限に調べる作業ではありません。取引目的、スキーム、業種、規制、期間、予算、報告先を踏まえて、重要な法的リスクを把握するための作業です。

次の手順図は、開始前の目的設定から報告書作成までの順序を表します。なぜ重要かというと、調査範囲が曖昧なまま進むと、最後に何を見たのか、何を見ていないのかが分からなくなるためです。上から下へ読むと、資料確認、聞き取り、論点整理、報告書の役割がつながります。

法務デューデリジェンスの進め方

目的設定と範囲決定

取引目的、スキーム、業種、上場・非上場、国内外、規制、競争法・外為法、調査期間、資料、予算、報告形式を定めます。

資料請求リストの作成

会社・株式、契約、資産、労務、知財、個人情報、許認可、紛争、コンプライアンス、税務・会計連携の資料を求めます。

VDR確認と資料精査

完全性、版、署名、契約期間、別紙、修正契約、電子契約の証跡、英文・和文の整合性を確認します。

Q&Aと経営陣への聞き取り

口頭合意、未処理クレーム、税務調査、行政相談、開発中の知財、サイバーインシデントなど、書類だけでは分からない情報を確認します。

イシューリスト化

事実、資料、法令・契約条項、発生可能性、影響度、推奨対応、契約反映案、未確認事項を一覧化します。

報告書と契約反映

問題の有無だけでなく、価格、前提条件、補償、是正、PMIのどこで対応するかを明確にします。

資料請求リストの軸

次の一覧は、法務デューデリジェンスで資料を集める典型分野を示します。分野ごとに必要資料を並べる理由は、資料不足そのものが情報不足リスクになるからです。右列の資料例を見ると、どの部署や専門家に確認を依頼すべきかが分かります。

分野典型資料
会社・株式定款、登記簿、株主名簿、株式譲渡承認記録、議事録、株主間契約、ストックオプション資料
契約主要取引契約、販売契約、業務委託契約、代理店契約、ライセンス契約、NDA、借入契約、保証契約
資産不動産登記、賃貸借契約、動産リース、担保設定資料、保険証券
労務就業規則、雇用契約、賃金規程、36協定、勤怠資料、退職金制度、労使協定、ハラスメント対応記録
知財特許・商標・意匠・著作権管理資料、登録状況、ライセンス契約、共同開発契約、職務発明規程
個人情報・データプライバシーポリシー、管理規程、委託先契約、越境移転資料、漏えい対応記録
許認可・紛争許可証、届出書、更新記録、行政指導・処分記録、訴訟、調停、仲裁、クレーム、内部通報
コンプライアンス・会計連携反社チェック、贈収賄防止、内部通報制度、研修記録、税務調査資料、引当金、偶発債務
Section 03

法務デューデリジェンスの調査対象と主要論点

株式、契約、労務、知財、データ、許認可、競争法まで、分野別の見方を整理します。

調査対象は、対象会社の価値を支える権利と、その価値を損なう義務・制約の両方です。株式や契約だけでなく、労務、知財、個人情報、許認可、競争法、紛争、コンプライアンス、環境、人権、外為法まで広がります。

次の一覧は、主要な調査分野と代表的な確認事項をまとめたものです。なぜ重要かというと、取引の失敗は一つの重大論点から生じることも、複数の中程度リスクが重なって生じることもあるためです。各項目の左側で分野を確認し、右側で重点的に見るべき実務論点を読み取ってください。

株式・会社組織

定款、登記事項、発行済株式数、株主名簿、株券発行の有無、譲渡制限、名義株、種類株式、新株予約権、議事録、関連当事者取引、利益相反取引を確認します。

重要契約

契約期間、解約権、支配権変更条項、譲渡禁止、独占権、最低購入義務、責任制限、秘密保持、個人情報、知財、再委託、反社、準拠法、管轄を確認します。

資産・金融

不動産登記、賃貸借、担保、リース、保守契約、借入契約、期限の利益喪失、財務制限条項、経営者保証、金融機関同意を確認します。

人事・労務

雇用契約、就業規則、36協定、勤怠、残業代、管理監督者、固定残業代、有期雇用、派遣・請負、社会保険、ハラスメント、労働組合、キーパーソン維持を確認します。

知的財産・技術

特許、商標、意匠、著作権、登録名義、職務発明、共同研究、ライセンス、OSS、外注開発、営業秘密、AI学習データ、生成物を確認します。

個人情報・データ

利用目的、プライバシーポリシー、第三者提供、委託先管理、共同利用、越境移転、安全管理措置、ログ、漏えい報告、データ統合を確認します。

許認可・業法

金融、医薬、建設、不動産、運送、食品、通信、教育、人材、旅行、エネルギー、廃棄物、輸出入などで、株主変更・事業譲渡・合併時の手続を確認します。

競争法・外為法

企業結合届出、市場シェア、排他条件、情報交換、下請・取引適正化、外資規制、輸出管理、経済安全保障、技術・情報流出を確認します。

紛争・不祥事・ESG

訴訟、調停、仲裁、行政調査、内部通報、反社、贈収賄、環境、土壌汚染、廃棄物、人権、サプライチェーン、第三者委員会を確認します。

契約リスクは、条文だけで判断しません。実際の取引実態、相手方との関係、交渉力、過去の運用、代替取引先の有無、売上依存度、規制業種かどうかを踏まえて評価します。

Section 04

法務デューデリジェンスのリスク評価方法

発生可能性、影響度、金額化、帰属を分けて、取引条件に反映します。

発見事項は、単に重要・軽微と分けるだけでは足りません。発生可能性、影響度、金額化できる範囲、誰が負担すべきリスクかを分けて整理することで、交渉と契約に使える情報になります。

次の表は、法務デューデリジェンスでよく使われる重要度区分を示します。なぜ重要かというと、同じ問題でも、取引中止、価格調整、補償、PMI対応のどこに置くべきかが変わるためです。左から区分、意味、典型対応の順に読むと、発見事項の扱い方が整理できます。

区分意味典型対応
ディールブレイカー取引目的を根本的に損なう重大リスク取引中止、スキーム変更、重大な前提条件
重大リスク価格・補償・前提条件に大きく影響価格調整、特別補償、クロージング前是正
中程度リスク管理可能だが契約・PMI対応が必要表明保証、誓約、PMIタスク
軽微リスク取引判断への影響は限定的通常補償、管理改善
情報不足資料未開示・回答未了追加資料請求、開示別紙、前提条件

可能性と影響度を分ける

発生可能性は低くても、主要許認可の失効や事業停止につながる場合は重大です。一方、軽微な契約書不備が多数ある場合は、個別影響は小さくても管理体制の弱さを示します。法的リスクは、未払残業代、訴訟請求額、違約金、課徴金、契約解除時の売上影響、システム改修費、行政対応費用、専門家費用、PMIコストなど、可能な範囲で概算します。

次の強調枠は、金額化できるものと金額だけでは評価しにくいものを区別するための見方を示します。なぜ重要かというと、価格で調整できるリスクと、評判・許認可・刑事責任のように価格だけでは扱いにくいリスクを混同しないためです。文章の前半で評価対象を、後半で取引上の扱いを読み取ってください。

リスクの帰属まで整理する

売主が負うべき過去リスクか、買主が引き受ける将来リスクか、対象会社が是正できるリスクか、第三者同意や行政判断に依存するリスクか、保険でカバーできるリスクかを分けることで、最終契約に落とし込めます。

Section 05

法務デューデリジェンス結果を契約へ反映する

表明保証、補償、前提条件、誓約、開示別紙に実装します。

報告書で問題を指摘しても、最終契約に反映されなければ実務上の意味は薄くなります。法務デューデリジェンスの結果は、表明保証、補償、クロージング前提条件、誓約事項、開示別紙に接続します。

次の一覧は、発見事項をどの契約部品に反映するかを示します。なぜ重要かというと、過去リスク、将来リスク、是正可能なリスクでは、契約上の置き場所が違うためです。各行のタグと本文を読むと、調査結果の実装先が分かります。

01

表明保証

株式所有、会社の設立・存続、権限、財務諸表、税務、重要契約、資産、知財、労務、許認可、法令遵守、紛争、個人情報、反社、贈収賄防止、環境、開示情報の正確性を整理します。

事実確認
02

補償

表明保証違反や特定リスクが顕在化した場合に、補償対象、期間、上限、免責額、少額免責、手続、第三者請求対応、税務効果、保険との関係を設計します。

損失配分
03

クロージング前提条件

株主総会・取締役会承認、金融機関同意、主要契約相手方の同意、許認可、独禁法、外為法、訴訟和解、担保抹消、労務規程整備、反社チェックを条件化します。

実行条件
04

誓約事項

契約締結からクロージングまで、またはクロージング後の通常業務運営、重要契約変更禁止、資産処分禁止、借入制限、従業員処遇、情報提供、PMI協力を定めます。

行為義務
05

開示別紙

売主が表明保証の例外を開示し、買主が既知リスクとして価格や補償に反映します。法務デューデリジェンス結果と最終契約をつなぐ資料です。

例外管理
Section 06

法務デューデリジェンスを支える専門家の役割

弁護士だけでなく、登記、知財、労務、税務、会計、IT、内部監査が連携します。

法務デューデリジェンスは、弁護士だけで完結するものではありません。対象会社の業種、取引規模、リスクに応じて、司法書士、弁理士、社会保険労務士、税理士、公認会計士、内部監査、コンプライアンス、個人情報、IT、フォレンジック、経営コンサルタントが協働します。

次の表は、専門家・担当者ごとの主な役割を整理したものです。なぜ重要かというと、労務リスクが財務評価に反映されない、知財リスクが補償に反映されない、個人情報リスクがPMIへ引き継がれない、といった分断を避ける必要があるためです。左列で担当を確認し、右列でどの論点を任せるかを読み取ってください。

専門家・担当者主な役割
弁護士・企業内弁護士・外部弁護士法的リスク全体、契約、訴訟、許認可、労務、知財、規制、最終契約への反映、社内意思決定、PMI連携
司法書士・弁理士商業登記、不動産登記、株式・役員変更、担保抹消、特許・商標・意匠、知財権利化、権利範囲、侵害・無効リスク
社会保険労務士・税理士・公認会計士就業規則、労働時間、社会保険、税務リスク、組織再編税制、内部統制、不正調査、偶発債務
内部監査・コンプライアンス・個人情報担当統制不備、業務プロセス、通報制度、研修、反社・贈収賄、越境移転、漏えい対応
IT・セキュリティ・フォレンジック・経営コンサルタントシステム、アクセス権限、脆弱性、ログ、証拠保全、解析、事業計画、PMI、業務統合
Section 07

売主側・中小企業の法務デューデリジェンス準備

資料未整備や経営者依存を前提に、早期整理と是正を進めます。

法務デューデリジェンスは買主側だけのものではありません。売主が事前に行うセラーズ・デューデリジェンスは、重大問題の把握、是正、買主質問への準備、開示資料の整備、過大な表明保証の回避、価格交渉上の不意打ち防止、クロージング遅延防止に役立ちます。

次の時系列は、売主側が早めに整えるべき準備の順番を表します。なぜ重要かというと、資料管理の不備は、それ自体が管理体制への疑念につながるからです。上から順に読むと、会社資料、契約、労務、金融、データ、説明方針の整備が進みます。

初期整理

会社・株式・議事録を整える

定款、登記、株主名簿、過去の株式移動記録、取締役会・株主総会議事録を確認します。

資料棚卸し

重要契約・許認可・知財を一覧化する

契約、許認可、知財、訴訟・クレーム、借入・担保・保証、関連当事者取引、保険を整理します。

是正準備

労務・個人情報・コンプライアンスを確認する

就業規則、勤怠、個人情報、セキュリティ、反社チェック、社内規程の未整備を早期に把握します。

説明設計

開示すべき事項と守るべき機密を分ける

NDA、VDR、アクセス制限、マスキング、質疑回答を整え、従業員・取引先への説明方針も検討します。

中小企業で特に出やすい論点

中小企業では、契約書がない、議事録が不完全、就業規則が古い、株主名簿が更新されていない、許認可資料が担当者の手元だけにある、取引先との合意が口頭である、といった状況が珍しくありません。経営者、経理、人事、営業、工場長、現場責任者、顧問税理士、社会保険労務士、司法書士への聞き取りが大きな意味を持ちます。

経営者個人への依存、代表者保証、個人所有資産の利用、親族株主、役員貸付金、不動産賃貸借、関連会社取引、未払残業代、社会保険未加入、退職金規程、未払租税公課、買掛金遅延、手形、リース、環境・安全衛生、下請取引、口頭保証は、財務DD・税務DDと連携して金額化を試みます。

Section 08

法務デューデリジェンスのレッドフラッグ

取引を止める可能性がある兆候と、条件調整で扱える兆候を分けます。

レッドフラッグは、必ずしも取引中止を意味しません。重要なのは、リスクの大きさ、是正可能性、契約反映可能性、価格反映可能性、PMIでの管理可能性を判断することです。

次の表は、分野ごとに特に注意すべき兆候を一覧化しています。なぜ重要かというと、重大な兆候は単独で取引目的を損なうことも、複数組み合わさって企業価値を下げることもあるためです。左列で分野を確認し、右列の兆候を重点確認項目として読み取ってください。

領域注意すべき兆候
株式株主不明、名義株、相続未了、種類株式拒否権、株主間契約の不開示
契約主要契約の解除権、支配権変更条項、譲渡禁止、独占義務、損害賠償無制限
許認可無許可営業、更新期限切れ、譲渡不能、代表者変更時の再審査
労務未払残業代、36協定不備、社会保険未加入、解雇紛争、ハラスメント未処理
知財・個人情報権利帰属不明、外注先に著作権残存、商標未登録、OSS違反、利用目的不備、漏えい未報告
競争法・金融カルテル疑い、届出未了、排他契約、優越的地位濫用、期限の利益喪失、個人保証、担保過多
紛争・環境・外為重大訴訟、行政調査、刑事告発、反社疑義、土壌汚染、制裁対象取引、技術提供管理不備
ガバナンス議事録欠落、利益相反未承認、関連当事者取引、内部統制不備
Section 09

法務デューデリジェンスの失敗例と報告書チェックリスト

重要論点の見落とし、契約未反映、PMIへの引き継ぎ漏れを防ぎます。

実務上の失敗は、調査不足だけで起きるわけではありません。調査範囲が広すぎて重要論点が埋もれる、法務DD結果が契約に反映されない、資料がないことを問題なしと誤解する、専門家の関与が遅れる、PMIへ引き継がれない、といった形で起きます。

次の一覧は、報告書に含めると読み手が意思決定しやすい項目をまとめています。なぜ重要かというと、報告書は法律専門家だけでなく、経営者、投資委員会、事業部、財務担当、PMI担当にも読まれるからです。順番に読むと、調査範囲からクロージング後対応までの情報設計が確認できます。

REPORT

冒頭で意思決定情報を示す

エグゼクティブサマリー、調査範囲、前提、除外事項、重要発見事項、ディールへの影響、契約反映推奨事項を明確にします。

DETAIL

分野別調査結果を整理する

会社・株式、重要契約、資産、金融、労務、知財、個人情報、許認可、競争法、紛争、コンプライアンス、環境、外為を分けます。

ACTION

未確認事項と対応を残す

未確認事項、クロージング前対応、クロージング後対応、添付資料を示し、PMI担当者がそのままタスク化できる形にします。

高レベルチェックリスト

会社・株式では、定款、登記簿、株主名簿、譲渡制限、株主間契約、種類株式、新株予約権、議事録、会社法手続、関連当事者取引を確認します。契約では、主要契約の開示、解除、更新、譲渡禁止、支配権変更、独占、責任制限、個人情報、データ、知財、反社、契約実態を見ます。

労務では、就業規則、賃金規程、36協定、勤怠、未払残業代、ハラスメント、労働組合、キーパーソン退職リスクを確認します。知財・データでは、権利帰属、登録名義、職務発明、外注開発、OSS、営業秘密、AI・データ利用を見ます。個人情報では、利用目的、第三者提供、委託、共同利用、越境移転、安全管理措置、漏えい履歴、M&A後のデータ統合を確認します。

許認可・規制では、必要な許認可、更新期限、株主変更・代表者変更・事業譲渡時の手続、行政指導・処分履歴、広告・表示・説明義務を確認します。紛争・コンプライアンスでは、訴訟、調停、仲裁、労働審判、行政調査、内部通報、反社チェック、贈収賄、不正会計、横領、情報漏えいの兆候を確認します。

Section 10

法務デューデリジェンスのよくある質問

期間、専門家、契約レビューとの違いを一般情報として整理します。

法務デューデリジェンスは必ず弁護士に依頼する必要がありますか

一般的には、法務デューデリジェンスは法的判断を伴うため、重要案件では弁護士の関与が強く推奨されるとされています。ただし、社内法務担当が一次調査を行い、重大論点を外部専門家に確認する方法もあります。取引規模、規制業種、労務、知財、個人情報、訴訟、独禁法、外為法、海外要素によって必要な体制は変わるため、具体的には専門家へ相談する必要があります。

どの程度の期間が必要ですか

一般的には、小規模な株式譲渡では1〜3週間程度でレッドフラッグ調査を行うことがあります。中規模以上のM&Aでは4〜8週間以上かかることもあります。ただし、規制業種、海外子会社、訴訟、不祥事、知財・データリスクがある場合は長期化する可能性があります。

すべての契約を読む必要がありますか

一般的には、重要契約を網羅的に確認することが望ましいとされていますが、すべての契約を同じ深さで読む必要があるとは限りません。売上、利益、事業継続、権利帰属、規制、リスクに関係する契約を優先し、重要性基準、サンプルレビュー、重点レビューを組み合わせることがあります。

問題が出たら取引は中止になりますか

一般的には、問題が出ても直ちに取引中止になるとは限りません。価格調整、補償、前提条件、誓約、是正、PMIで管理できる場合があります。ただし、事業継続に不可欠な許認可、主要契約、重大な法令違反、反社関係、知財帰属、行政・刑事リスクなどは結論を大きく左右する可能性があり、個別事情に応じた専門家の検討が必要です。

契約書レビューとは何が違いますか

一般的には、契約書レビューは特定の契約書の条項を確認・修正する作業です。法務デューデリジェンスは、対象会社または対象事業全体の法的リスクを、取引判断、価格、契約条件、PMIへ反映する作業です。契約書レビューは、法務デューデリジェンスの一部に位置づけられます。

Guide

法務デューデリジェンスで次に確認したいこと

目的に近い詳しい解説へ進めるよう、関連するテーマを整理しました。

知りたい内容を選ぶと、手続、費用、地域、具体的な論点などの詳しい解説に進めます。

このテーマから次に確認されやすい詳しい解説を10件表示しています。

Reference

法務デューデリジェンスの参考資料

公的資料・法令・ガイドライン名のみを整理しています。

公的資料・法令

  • 中小企業庁・経済産業省「中小M&Aガイドライン(第3版)」
  • 経済産業省「中小M&Aガイドライン改訂(第3版)に関する概要資料」
  • e-Gov法令検索「会社法」
  • e-Gov法令検索「民法」
  • e-Gov法令検索「労働基準法」
  • e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」
  • e-Gov法令検索「特許法」
  • e-Gov法令検索「著作権法」
  • e-Gov法令検索「不正競争防止法」
  • e-Gov法令検索「金融商品取引法」
  • e-Gov法令検索「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」
  • e-Gov法令検索「外国為替及び外国貿易法」

実務ガイドライン

  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
  • 個人情報保護委員会「漏えい等報告・本人への通知の義務化について」
  • 公正取引委員会「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」
  • 日本取引所グループ・東京証券取引所「会社情報適時開示ガイドブック」
  • 東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」
  • 金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準の改訂について」
  • 経済産業省「企業買収における行動指針」
  • 厚生労働省「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」
  • 経済産業省「AI事業者ガイドライン」
  • 財務省「対内直接投資審査制度について」
  • 経済産業省「安全保障貿易管理ガイダンス」
  • 内閣府「経済安全保障推進法」