2σ Guide

パワハラ防止法で
会社に義務付けられた措置の内容

労働施策総合推進法と厚生労働省指針を前提に、会社が整えるべき方針、相談体制、調査、被害者配慮、行為者措置、再発防止、プライバシー保護を実務目線で整理します。

4層予防・相談・事後対応・保護
10項目指針が示す主要措置
2026年10月関連改正の施行予定時期
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パワハラ防止法で 会社に義務付けられた措置の内容

会社の義務は、窓口を置くだけでなく、予防から再発防止まで続く雇用管理上の体制整備です。

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パワハラ防止法で 会社に義務付けられた措置の内容
会社の義務は、窓口を置くだけでなく、予防から再発防止まで続く雇用管理上の体制整備です。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • パワハラ防止法で 会社に義務付けられた措置の内容
  • 会社の義務は、窓口を置くだけでなく、予防から再発防止まで続く雇用管理上の体制整備です。

POINT 1

  • パワハラ防止法で会社に義務付けられた措置の全体像
  • 会社の義務は、窓口を置くだけでなく、予防から再発防止まで続く雇用管理上の体制整備です。
  • パワハラ防止法で会社に義務付けられた措置の内容は、多数の項目に分かれます。
  • 自社で不足している層を見つけることが、形式だけでない対策につながるため重要です。
  • 各行では、制度として用意すべきものと、相談が起きた後に実際に動かすべき対応を読み取ってください。

POINT 2

  • パワハラ防止法の正式名称とパワハラの定義
  • 単独の「パワハラ防止法」があるのではなく、労働施策総合推進法と指針を中心に理解します。
  • 優越的な関係を背景とした言動
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
  • 労働者の就業環境が害されること

POINT 3

  • パワハラ防止法の方針明確化と相談窓口の整備
  • 周知不足
  • 窓口の存在を従業員が知らない、閲覧場所が分からない、社内掲示だけで実際には認知されていない状態です。
  • 担当者教育の不足
  • 担当者がパワハラの定義、傾聴、記録化、緊急対応、秘密保持、二次被害防止を理解していない状態です。

POINT 4

  • パワハラ防止法の事実確認と調査対応
  • 1. 相談受付と初回聴取:相談者の話を遮らず、日時、場所、相手、発言・行為、頻度、証拠、目撃者、体調、緊急性、希望、情報共有範囲を確認します。
  • 2. 緊急性判断と暫定措置
  • 3. 調査方針と証拠確認:誰が調査するか、どの範囲を調べるか、どの資料を確認するか、どの順番で聴取するかを決めます。
  • 4. 関係者聴取と事実認定
  • 5. 措置案と説明:被害者配慮、行為者措置、職場改善、再発防止を検討し、当事者へ説明します。

POINT 5

  • パワハラ防止法の被害者配慮・行為者措置・再発防止
  • 調査中の保護、認定後の措置、職場環境改善を切り分けて検討します。
  • 研修と個別指導
  • 制度と配置の見直し
  • 再周知と継続確認

POINT 6

  • パワハラ防止法のプライバシー保護と不利益取扱い禁止
  • 評価・昇進
  • 相談後の低評価、昇進・昇格からの排除について、相談とは無関係の客観的理由を説明できる記録が必要です。
  • 配置・業務配分
  • 異動、業務からの排除、指揮命令系統の変更は、被害者保護なのか不利益なのかを丁寧に分けます。

POINT 7

  • パワハラ防止法を就業規則・社内規程に落とし込む方法
  • 規程を整えるだけでなく、実態として運用されているかを点検します。
  • 窓口と担当者
  • 調査と報告
  • 相談者保護

POINT 8

  • パワハラ防止法で対応を誤った場合のリスク
  • 行政対応だけでなく、民事責任、労災、採用市場や取引先評価への影響も問題になります。
  • 行政上のリスク
  • 民事上のリスク
  • 信用面のリスク

まとめ

  • パワハラ防止法で 会社に義務付けられた措置の内容
  • パワハラ防止法で会社に義務付けられた措置の全体像:会社の義務は、窓口を置くだけでなく、予防から再発防止まで続く雇用管理上の体制整備です。
  • パワハラ防止法の正式名称とパワハラの定義:単独の「パワハラ防止法」があるのではなく、労働施策総合推進法と指針を中心に理解します。
  • パワハラ防止法の方針明確化と相談窓口の整備:予防のための規程と、相談が起きたときに機能する窓口運用を分けて点検します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

パワハラ防止法で会社に義務付けられた措置の全体像

会社の義務は、窓口を置くだけでなく、予防から再発防止まで続く雇用管理上の体制整備です。

パワハラ防止法で会社に義務付けられた措置の内容は、多数の項目に分かれます。実務では、まず「予防」「相談体制」「事後対応」「保護」の4層で捉えると、社内規程、研修、相談窓口、調査、被害者配慮、行為者措置、再発防止を一つの仕組みとして整理できます。

次の比較表は、会社が整えるべき4層の役割と具体例を示しています。自社で不足している層を見つけることが、形式だけでない対策につながるため重要です。各行では、制度として用意すべきものと、相談が起きた後に実際に動かすべき対応を読み取ってください。

会社が行うべきこと具体例
第1層 ― 予防会社の方針を明確にし、労働者に周知・啓発する就業規則、ハラスメント防止規程、社内ポリシー、研修、社内掲示、イントラ掲載
第2層 ― 相談体制相談窓口を整備し、幅広い相談に適切に対応する人事窓口、外部相談窓口、匿名相談、相談担当者研修、相談対応マニュアル
第3層 ― 事後対応事実確認、被害者配慮、行為者措置、再発防止を迅速かつ適切に行う聴取、証拠確認、配置転換、懲戒、謝罪、メンタルヘルス支援、再発防止研修
第4層 ― 保護プライバシーを守り、相談・協力を理由とする不利益取扱いを禁止する秘密保持、情報管理、報復禁止、評価・異動・契約更新での不利益排除

重要なのは、「窓口を設置した」「研修を1回実施した」という形式だけでは十分な措置と評価されにくい場合がある点です。厚生労働省指針が示す具体的な項目を、会社の規模、職場環境、雇用形態、相談実績に合わせて運用できる状態に落とし込む必要があります。

このページでは、制度の前提となるパワハラの定義、会社に求められる措置、相談後の調査手順、労働者側・会社側が外部相談を検討する場面、企業向けチェックリストまでを順に確認します。

Section 01

パワハラ防止法の正式名称とパワハラの定義

単独の「パワハラ防止法」があるのではなく、労働施策総合推進法と指針を中心に理解します。

一般に「パワハラ防止法」と呼ばれる制度は、主に労働施策総合推進法に基づく職場のパワーハラスメント防止措置義務を指します。事業主には、職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題について、相談体制の整備その他の雇用管理上必要な措置が求められます。

ここでいう事業主には、株式会社、合同会社、個人事業主、医療法人、学校法人、社会福祉法人、NPO法人など、労働者を雇用して事業を行う主体が広く含まれます。大企業だけでなく、中小企業にも適用される点が重要です。

条文は大枠を定め、実務上の中核は厚生労働省のパワーハラスメント防止指針にあります。指針、パンフレット、就業規則、懲戒規程、労働契約法、民法、個人情報保護法、労働安全衛生法、裁判例、労働局の実務、社内の過去事例を組み合わせて確認する必要があります。

パワハラ該当性を考える基本は、3つの要素を同時に確認することです。この一覧は判断枠組みを表しており、会社が相談を受けたときにどの事実を集めるべきかを理解するために重要です。各項目では、立場の差、言動の相当性、就業環境への影響を分けて読むことができます。

Element 01

優越的な関係を背景とした言動

上司・部下に限らず、専門知識、経験差、集団的圧力、業務協力の不可欠性、人事評価や契約更新への影響など、抵抗や拒絶が難しい関係が問題になります。

Element 02

業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動

業務上の必要性がない叱責、人格否定、侮辱、暴言、脅迫、過度な頻度・時間・場所での叱責、達成不能な業務量、仕事を与えない対応などが問題になり得ます。

Element 03

労働者の就業環境が害されること

出勤への強い苦痛、集中困難、睡眠障害、食欲不振、不安、抑うつ、孤立、退職を考えるほどの職場環境悪化などが検討対象になります。

次の比較表は、厚生労働省指針が典型例として示す6類型を整理したものです。6類型は限定列挙ではないため、表にぴったり当てはまらない言動でも、3要素を満たせば問題になり得ます。行ごとに、どの種類の言動が職場環境を害しやすいかを確認してください。

類型内容典型例
身体的な攻撃暴行・傷害殴る、蹴る、物を投げつける、身体を小突く
精神的な攻撃脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言人格否定、長時間叱責、大勢の前での侮辱、退職強要的発言
人間関係からの切り離し隔離、仲間外し、無視会議から外す、情報共有しない、集団で無視する
過大な要求不要または遂行不可能なことを強制する達成不能なノルマ、過大な業務量、必要性のない雑務押し付け
過小な要求能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない専門職に合理的理由なく単純作業だけをさせる、長期間仕事を与えない
個の侵害私的なことに過度に立ち入る私生活の詮索、家族関係への干渉、病歴や性的指向・性自認等の暴露

2026年10月1日からは、カスタマーハラスメント対策や求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化等が予定されているため、社内規程や研修資料は現在の条文番号だけで固定せず、改正後の法令・指針の表記も確認する必要があります。

Section 02

パワハラ防止法で会社に求められる10項目

厚生労働省指針の主要項目を、社内で点検しやすい順番に並べます。

パワハラ防止法で会社に義務付けられた措置は、指針上、主に10項目で整理できます。次の一覧は、会社が「何を作り、何を周知し、相談後に何を実行するか」を表しています。各項目が単独で存在するのではなく、相談受付から再発防止まで連動していることを読み取ることが重要です。

1

方針の明確化と周知・啓発

パワハラを禁止する会社の姿勢、定義、相談先、調査手続、保護措置を明文化し、従業員に継続的に知らせます。

予防
2

行為者への対処方針の規定化

行為の悪質性、被害の程度、反復性、過去の注意歴などに応じた懲戒・人事措置の根拠を整えます。

規程
3

相談窓口の設置

人事、コンプライアンス内部通報、産業医、外部窓口、匿名相談など、相談者がアクセスしやすい入口を用意します。

窓口
4

相談担当者による適切な対応

パワハラに該当するか微妙な相談も含め、傾聴、記録化、初期リスク判断、秘密保持、二次被害防止を行います。

運用
5

事実関係の迅速かつ正確な確認

拙速な断定を避けながら、初回聴取、証拠確認、関係者聴取、事実認定を進めます。

調査
6

被害者への適正な配慮

接触を減らす、指揮命令系統を変更する、在宅勤務や時差出勤を認める、医療機関につなぐなどの措置を検討します。

配慮
7

行為者への適正な措置

注意、指導、研修、配置転換、降格、減給、出勤停止、諭旨解雇、懲戒解雇などを事実認定に応じて選びます。

措置
8

再発防止措置

個人処分だけでなく、研修、管理職指導、業務量調整、評価制度見直し、職場アンケートまで含めて改善します。

改善
9

プライバシー保護

相談した事実、被害内容、関係者名、証拠、診断書、心身の状態、人事評価などの情報管理を徹底します。

保護
10

不利益取扱いの禁止と周知

相談、事実確認への協力、労働局等への相談を理由に、解雇、雇止め、降格、低評価、孤立化などを行わないことを明示します。

禁止

10項目は、書面上の制度と実際の対応の両方で確認する必要があります。たとえば、規程に相談窓口が書かれていても、従業員が知らない、担当者が定義を理解していない、相談後に情報が漏れるといった状態では、実効的な措置とはいえない場合があります。

Section 03

パワハラ防止法の方針明確化と相談窓口の整備

予防のための規程と、相談が起きたときに機能する窓口運用を分けて点検します。

会社の最初の対応は、「パワハラを許さない」という基本姿勢を明文化し、労働者が実際に理解できる形で周知することです。就業規則、ハラスメント防止規程、コンプライアンス規程、行動規範、社内ポリシーには、禁止事項だけでなく、相談先、調査手続、被害者保護、行為者措置、プライバシー保護、不利益取扱い禁止、虚偽申告や相談妨害への対応、管理職の責任まで盛り込むことが考えられます。

周知・啓発は一度きりでは足りません。次の一覧は、方針を従業員に浸透させるための主な方法を示しています。方法ごとに届く対象者が異なるため、管理職、一般従業員、新入社員、非正規雇用労働者に必要な情報が行き渡っているかを読み取ることが重要です。

研修と理解度確認

入社時研修、管理職研修、全従業員向け研修、eラーニング、理解度テスト、事例集やQ&Aの配布を組み合わせます。

継続

見える場所での案内

社内イントラネット、ポスター、携帯用案内、社内チャット、就業規則・ハラスメント規程の閲覧場所で相談窓口を案内します。

周知

経営トップからの発信

会社として禁止する姿勢と、相談者・協力者への不利益取扱いを許さない方針を、経営層の言葉で明確に伝えます。

姿勢

相談窓口は、設置そのものより運用が重要です。人事部門、コンプライアンス窓口、内部通報窓口、産業医・保健師等への相談ルート、外部専門機関、社外ホットライン、匿名通報システムなど、会社の規模や業態に応じて安心してアクセスできる入口を整える必要があります。

次の一覧は、相談窓口が機能していないと評価されやすい状態をまとめたものです。読者にとって重要なのは、窓口名があるかどうかではなく、相談者が不利益や情報漏えいを恐れずに相談できる運用になっているかです。各項目から、改善すべき運用上の弱点を確認してください。

周知不足

窓口の存在を従業員が知らない、閲覧場所が分からない、社内掲示だけで実際には認知されていない状態です。

担当者教育の不足

担当者がパワハラの定義、傾聴、記録化、緊急対応、秘密保持、二次被害防止を理解していない状態です。

情報管理の不備

相談内容がすぐ上司に漏れる、行為者とされる者に相談者名を無断で伝えるなど、信頼を損なう対応です。

門前払い

「証拠がないなら対応できない」と断る、相談者に不用意に責任を帰す、相談記録を残さない対応です。

事後対応の欠落

相談を受けても事実確認をしない、相談後の不利益取扱いを監視しない、フォローアップをしない状態です。

微妙な相談への拒否

上司の言い方、会議から外される、業務量の急増、私生活への質問、チーム内の無視など、初期段階の相談を扱わない状態です。

パワハラに該当するか微妙な相談にも幅広く対応することで、重大な紛争に発展する前に職場環境を改善できる可能性があります。

Section 04

パワハラ防止法の事実確認と調査対応

相談を受けた会社は、迅速性と正確性を両立させながら証拠と聴取を整理します。

相談を受けた会社は、事実関係を迅速かつ正確に確認する必要があります。迅速性だけを重視して拙速に結論を出すと誤認定や処分無効のリスクが生じ、正確性を理由に対応が長期化すると被害者の就業環境が悪化するおそれがあります。

次の時系列は、相談受付からフォローアップまでの標準的な調査順序を示しています。順番を意識することが重要なのは、緊急性判断、暫定措置、証拠確認、弁明機会、再発防止を飛ばすと、被害者保護と手続保障の両方で問題が生じるためです。各段階で何を確認するかを読み取ってください。

Step 01

相談受付と初回聴取

相談者の話を遮らず、日時、場所、相手、発言・行為、頻度、証拠、目撃者、体調、緊急性、希望、情報共有範囲を確認します。

Step 02

緊急性判断と暫定措置

暴力、脅迫、自殺念慮、重大なメンタル不調、退職強要、証拠隠滅のおそれがある場合は、接触回避や医療機関連携を検討します。

Step 03

調査方針と証拠確認

誰が調査するか、どの範囲を調べるか、どの資料を確認するか、どの順番で聴取するかを決めます。

Step 04

関係者聴取と事実認定

行為者とされる者、第三者、周辺者への聴取を行い、事実として認められること、認められないこと、判断が困難なことを分けます。

Step 05

措置案と説明

被害者配慮、行為者措置、職場改善、再発防止を検討し、当事者へ説明します。個人情報に関わる内容は慎重に扱います。

パワハラ調査では、当事者の言い分が対立することが多いため、客観的資料の確認が重要です。次の一覧は、調査で確認対象になり得る資料を示しています。資料の種類ごとに、発言内容、業務量、評価、体調、過去の対応を裏付ける情報がどこに残るかを読み取ってください。

コミュニケーション記録

メール、チャットログ、会議録、録音・録画、相談記録、過去の注意指導記録を確認します。

発言

業務・人事資料

業務指示書、勤怠記録、業務量・担当案件一覧、評価資料、異動・配置・契約更新資料を確認します。

業務

心身・職場環境資料

診断書、産業医面談記録、社内アンケート、セキュリティログなどを、個人情報保護に注意して扱います。

慎重

聴取では、事前に目的、秘密保持、不利益取扱い禁止を説明し、中立的な担当者が誘導質問を避けて行います。日時、場所、発言内容、頻度を具体的に確認し、記録を残し、被害者に再被害を与えない配慮と、行為者とされる者への弁明機会を両立させます。

次の一覧は、外部専門家の関与を検討しやすい状況を示しています。社内だけでは中立性や専門性を確保しにくい場面を見分けるために重要です。どの要素が調査の公平性、法的リスク、危機管理を高めるかを確認してください。

役員・幹部が関与

行為者とされる者が役員・幹部である場合、人事部門だけで調査すると中立性が疑われやすくなります。

人事部門が関与

相談窓口や人事部門自体が関与している場合、社内の通常ルートでは利益相反が起きるおそれがあります。

重大事案化の可能性

労災、訴訟、刑事事件化、メディア・SNS公表の可能性がある場合、初期対応の設計が重要になります。

当事者が代理人を立てている

被害者または行為者が弁護士を立てている場合、説明範囲や証拠管理を慎重に設計する必要があります。

Section 05

パワハラ防止法の被害者配慮・行為者措置・再発防止

調査中の保護、認定後の措置、職場環境改善を切り分けて検討します。

会社は、パワハラが認定された後だけでなく、相談を受けた初期段階でも被害者の就業環境を守るための暫定措置を検討する必要があります。ただし、被害者を一方的に異動させる、希望しない休職を迫る、評価を下げるといった対応は、不利益取扱いと評価されるおそれがあります。

次の一覧は、被害者の安心と就業継続を両立させるために検討される配慮措置を示しています。重要なのは、相談者本人の意向、健康状態、業務継続、安全確保を分けて確認することです。各項目から、調査結果を待たずに必要となる暫定対応を読み取ってください。

接触を減らす措置

行為者とされる者との接触を減らす、指揮命令系統を一時的に変更する、座席や勤務場所を調整します。

安全

働き方の調整

業務分担を見直す、在宅勤務や時差出勤を認める、一時的な休暇取得を支援するなどの方法があります。

継続

心身への支援

産業医、保健師、カウンセラー、医療機関につなぎ、相談者への定期的なフォローを行います。

配慮

行為者に対する措置は、事実認定に応じて選択します。行為の内容、回数・期間、被害の程度、業務上の必要性、職位、被害者との関係、過去の注意歴、反省の有無、再発可能性、職場全体への影響を総合的に考慮します。

次の比較表は、行為者措置を考えるときの確認事項を整理しています。会社にとって重要なのは、重い処分を急ぐことではなく、証拠に基づく事実認定、弁明機会、過去事例との均衡、被害者保護とのバランスを確保することです。各列から、処分の相当性を支える要素を読み取ってください。

措置の種類検討される場面注意点
注意・指導・面談軽度または初回の問題、改善可能性がある場合指導内容と再発防止の約束を記録します。
研修・権限見直し管理職の指導方法や職場運営に問題がある場合個人だけでなくチーム運営の改善も検討します。
配置転換・評価反映・降格職位や指揮命令関係が被害拡大につながる場合業務上の必要性と過去事例との均衡を確認します。
減給・出勤停止・解雇等重大性、反復性、悪質性が高い場合就業規則上の根拠、弁明機会、懲戒手続、処分の重さを慎重に確認します。

再発防止は、事案処理後に必ず検討します。次の一覧は、個人処分で終わらせず、職場環境そのものを改善するための手段を示しています。なぜ重要かというと、職場の業務量、評価制度、管理職教育、コミュニケーション不全が残れば、同じ問題が再び起きる可能性があるためです。どの組織的原因に手を入れるべきかを読み取ってください。

Training

研修と個別指導

事案を踏まえた研修、管理職への個別指導、コミュニケーションルール整備、1on1面談の改善を行います。

System

制度と配置の見直し

チーム体制、業務量、評価制度、人員配置、ハラスメント防止規程を見直し、組織的背景を改善します。

Monitor

再周知と継続確認

相談窓口の再周知、職場アンケート、定期的なフォローアップで、表面上の解決にとどまらない状態を確認します。

Section 06

パワハラ防止法のプライバシー保護と不利益取扱い禁止

相談者だけでなく、行為者とされる者、調査協力者の情報も適切に扱う必要があります。

会社は、相談者、被害者、行為者とされる者、調査協力者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じる必要があります。パワハラ調査では、情報漏えい自体が二次被害になることがあります。特に小規模な職場では、わずかな情報でも相談者が特定される場合があります。

次の比較表は、保護すべき情報と、秘密保持の限界を説明するときの考え方を整理しています。読者にとって重要なのは、「絶対に誰にも知られない」と安易に説明するのではなく、事実確認と安全確保のために必要最小限の共有があり得ると伝えることです。どの情報をどの目的で共有するかを読み取ってください。

情報の種類保護が必要な理由共有する場合の考え方
相談した事実・相談内容・被害内容相談者の特定や報復、二次被害につながるおそれがあります。調査目的と共有範囲を限定し、相談者の意向をできる限り確認します。
関係者の氏名・聴取内容・証拠行為者とされる者や協力者の名誉・信用にも影響します。関係者には秘密保持と報復禁止を説明します。
診断書・病歴・家族関係・性的指向や性自認・心身の状態センシティブな個人情報であり、取扱いを誤ると別の法的問題が生じます。利用目的、必要性、本人同意、管理方法を慎重に検討します。
人事評価・処分内容個人の処遇情報であり、説明範囲を誤ると紛争が拡大します。相談者への説明と、行為者側の個人情報保護を両立させます。

不利益取扱いの禁止も極めて重要です。労働者がパワハラについて相談したこと、事実確認に協力したこと、労働局等に相談したことを理由に、解雇、雇止め、契約更新拒否、降格、減給、不利益な配置転換、低評価、業務からの排除、退職勧奨、嫌がらせ、孤立化を行ってはなりません。

次の一覧は、不利益取扱いを防ぐために会社が特に記録化すべき場面を示しています。重要なのは、表向きは別理由に見える評価や異動でも、相談時期と近い場合には疑義が生じやすい点です。各項目から、通常以上に慎重な検討が必要な人事判断を確認してください。

評価・昇進

相談後の低評価、昇進・昇格からの排除について、相談とは無関係の客観的理由を説明できる記録が必要です。

配置・業務配分

異動、業務からの排除、指揮命令系統の変更は、被害者保護なのか不利益なのかを丁寧に分けます。

契約更新・退職

雇止め、契約更新拒否、退職勧奨が相談後に行われる場合、時期と理由の整合性が重要になります。

調査協力者への報復

相談者だけでなく、証言した従業員、相談者を支援した従業員への報復的取扱いも問題になります。

Section 07

パワハラ防止法を就業規則・社内規程に落とし込む方法

規程を整えるだけでなく、実態として運用されているかを点検します。

パワハラ防止法で会社に義務付けられた措置を実効化するには、就業規則や社内規程への落とし込みが不可欠です。就業規則には、ハラスメント禁止規定、パワハラの定義、禁止される言動の例、懲戒事由、懲戒処分の種類、相談窓口、調査協力義務、秘密保持義務、不利益取扱い禁止、再発防止措置を定めることが考えられます。

次の比較表は、就業規則とハラスメント防止規程に書く事項を分けて整理したものです。読者にとって重要なのは、就業規則では基本的なルールと懲戒根拠を、詳細規程では相談受付から調査・記録管理までの運用を具体化する点です。どの文書に何を置くべきかを読み取ってください。

文書定める事項運用上の狙い
就業規則禁止規定、定義、禁止例、懲戒事由、懲戒処分の種類、相談窓口、調査協力義務、秘密保持義務、不利益取扱い禁止、再発防止措置労働条件と懲戒・人事措置の根拠を明確にします。
ハラスメント防止規程目的、適用範囲、定義、禁止行為、相談受付方法、調査手続、暫定措置、被害者保護、行為者措置、記録管理、報復禁止、外部専門家の活用相談が起きたときに誰が何をするかを具体化します。
研修資料・社内案内6類型、具体例、相談先、秘密保持、不利益取扱い禁止、管理職の初期対応、Q&A従業員と管理職が実際に理解し行動できる状態にします。

規程が整っていても、実態として運用されていなければ意味がありません。次の一覧は、社内監査やコンプライアンス点検で確認すべき項目を示しています。なぜ重要かというと、制度と実態のずれが相談対応の遅れや再発につながるからです。各項目から、規程どおりに運用されているかを読み取ってください。

Operation

窓口と担当者

窓口は実際に機能しているか、担当者は研修を受けているか、相談記録は保存されているかを確認します。

Process

調査と報告

調査手順は守られているか、再発防止まで実施されているか、経営層に適切に報告されているかを点検します。

Protection

相談者保護

相談者や協力者への不利益取扱いが起きていないか、情報共有範囲が限定されているかを確認します。

望ましい取組として、パワハラだけを単独で扱うのではなく、セクハラ、マタハラ、パタハラ、カスハラ、差別、内部通報、メンタルヘルス、安全衛生、コンプライアンスを一体的に設計する方法があります。相談の入り口を広くし、必要に応じて専門窓口につなぐ体制が有効です。

Section 08

パワハラ防止法で対応を誤った場合のリスク

行政対応だけでなく、民事責任、労災、採用市場や取引先評価への影響も問題になります。

会社がパワハラ防止措置義務を十分に履行しない場合、厚生労働大臣による助言、指導、勧告等の対象になり得ます。勧告に従わない場合には公表の対象となる可能性があり、報告徴収に応じない、または虚偽報告をした場合には過料の対象となる可能性もあります。

次の一覧は、対応を誤った場合に想定されるリスクを整理しています。会社にとって重要なのは、パワハラ防止法が個別行為を直接処罰するだけの制度ではなく、行政対応、民事責任、社会的信用の問題へ連鎖し得る点です。各項目から、どの種類の責任や影響が生じるかを読み取ってください。

Administrative

行政上のリスク

助言、指導、勧告、公表、報告徴収、虚偽報告時の過料などが問題になり得ます。措置義務を怠った状態を放置しないことが重要です。

Civil

民事上のリスク

行為者本人の不法行為責任、使用者責任、安全配慮義務違反、職場環境配慮義務違反、債務不履行責任などが問題になります。

Trust

信用面のリスク

SNS、口コミサイト、報道、採用市場、取引先評価に影響することがあります。握りつぶしや隠蔽と評価される対応は特に危険です。

民事上の請求では、慰謝料休業損害、治療費、逸失利益、弁護士費用相当額などが問題になることがあります。精神障害が発症した場合には、労災認定、長期休職、復職支援も重要になります。

注意パワハラ対応は、単なる労務管理ではなく、ガバナンス、コンプライアンス、人的資本経営、危機管理の問題でもあります。調査中に結論を断定する、被害申告を一方的に否定する、被害者の属性や相談内容を不用意に公表する対応は避ける必要があります。
Section 09

パワハラ相談を受けた会社の実務手順

初回相談で断定せず、緊急性、調査設計、事実認定、説明、フォローアップを順に進めます。

会社がパワハラ相談を受けた場合、初回受付の段階で「それはパワハラではない」と断定することは避ける必要があります。まずは事実、証拠、体調、緊急性、相談者の希望、情報共有範囲を確認し、必要な暫定措置と調査方針を設計します。

次の判断の流れは、相談受付からフォローアップまでの行動順序を示しています。なぜ重要かというと、緊急対応を遅らせることも、証拠確認なしに処分することも、いずれも紛争拡大につながるためです。上から下へ、どの段階で安全確保、調査、評価、説明を行うかを確認してください。

相談受付後の基本手順

相談受付

日時、場所、相手、発言・行為、頻度、証拠、体調、希望、情報共有範囲を確認します。

緊急性の判断

暴力、脅迫、自殺念慮、重大なメンタル不調、退職強要、証拠隠滅のおそれを確認します。

緊急性あり
暫定措置を検討

接触禁止、指揮命令系統変更、勤務場所分離、産業医面談、証拠保全、外部専門家への相談を検討します。

緊急性が高くない
調査設計へ進む

調査担当者、調査範囲、確認資料、聴取順序を決めます。

事実確認

相談者、行為者とされる者、目撃者、関係者から聴取し、客観資料を確認します。

事実認定と評価

認められる事実、認められない事実、判断が困難な事実、法的評価、労務上必要な対応を分けます。

措置決定とフォローアップ

被害者保護、行為者措置、職場改善、再発防止、当事者説明、事後確認を行います。

事実確認の質問は、主観的評価ではなく具体的事実に向ける必要があります。たとえば「上司はパワハラをしましたか」と聞くより、「何月何日の何時頃、どの場所で、どのような発言がありましたか。周囲には誰がいましたか。その後、業務や体調にどのような影響がありましたか」と確認する方が、調査に必要な情報を整理しやすくなります。

次の一覧は、事実認定と評価の段階で分けて整理する項目を示しています。重要なのは、認定できる事実と、証拠上判断が困難な事実を混同しないことです。各項目から、会社が説明責任を果たすためにどの区分で記録すべきかを読み取ってください。

Fact

証拠上認められること

メール、チャット、聴取、勤怠、評価資料などから、日時、場所、発言内容、頻度、影響を整理します。

Difficult

判断が困難なこと

証拠が乏しい部分、当事者の説明が対立する部分、記憶が曖昧な部分は、結論を急がず区別します。

Action

必要な対応

法的評価、人事・労務上必要な対応、職場環境改善上必要な対応を分けて検討します。

Section 10

パワハラ防止法を労働者側・会社側から見る相談先

会社の義務を知ることは、労働者の相談準備にも、会社の公正な調査にも役立ちます。

会社の義務内容は、労働者側にとっても重要です。パワハラを受けたと感じた場合、可能な範囲で発言・行為の日時、場所、相手、具体的な言葉や行動、目撃者、メール・チャット等の証拠、体調への影響、業務への影響、これまでの相談経緯、希望する対応を整理しておくと、会社や外部機関に相談しやすくなります。

次の一覧は、労働者側と会社側で相談を検討しやすい場面を分けて示しています。重要なのは、心身の不調が強い場合には証拠整理より安全確保と医療機関への相談が優先されること、会社側も社内だけで抱え込むと中立性や手続保障を損なう場合があることです。各項目から、どの窓口や専門家につなぐべきかを読み取ってください。

立場相談を検討する場面主な相談先
労働者側会社に相談しても対応されない、相談後に不利益を受けた、行為者が役員や人事担当者で社内相談が難しい場合弁護士、都道府県労働局、総合労働相談コーナー、労働基準監督署、労働組合、社会保険労務士、産業医・医療機関、法テラス
会社側役員・幹部が行為者とされている、被害者が休職・退職・労災申請をしている、通知書や損害賠償請求、懲戒処分、訴訟・労働審判、SNS・報道対応が絡む場合弁護士、社会保険労務士、産業医、外部調査担当者、危機管理・広報担当者

会社側が外部専門家に相談する目的は、会社を一方的に守ることだけではありません。公正な調査、被害者保護、適正な行為者措置、再発防止、説明責任を果たすためにも、専門的な助言が有効です。

整理労働者側が弁護士に相談する場合は、証拠、時系列、会社の対応履歴、就業規則、雇用契約書、診断書等を整理しておくと、一般的には相談内容を把握しやすくなります。ただし、個別の見通しや対応方針は、具体的事情によって変わります。
Section 11

パワハラ防止法の誤解とFAQ

よくある誤解をほどき、FAQは一般情報として整理します。

よくある誤解

次の一覧は、パワハラ防止法について生じやすい誤解と、実務上の正しい理解を対比しています。誤解を放置すると、窓口設置だけで十分と考えたり、証拠が乏しい相談を門前払いしたりする危険があるため重要です。各行で、会社が避けるべき短絡的な理解を確認してください。

誤解正しい理解
パワハラ防止法は行為者を処罰する法律である事業主に雇用管理上の措置を義務付ける制度です。個別行為は民法、労働契約、安全配慮義務、場合により刑法などが別途問題になります。
相談窓口を作れば義務は果たしたことになる方針周知、適切な相談対応、事実確認、被害者配慮、行為者措置、再発防止、プライバシー保護、不利益取扱い禁止まで必要です。
パワハラかどうかは被害者の感じ方だけで決まる受け止めは重要ですが、言動内容、業務上の必要性、相当性、関係性、職場状況、一般的な労働者の受け止めも考慮されます。
厳しい指導はすべてパワハラである適正な業務指導は直ちにパワハラとは限りません。ただし、人格否定、侮辱、過度な叱責、見せしめ、私生活への侵害などを伴えば問題になり得ます。
証拠がなければ会社は何もしなくてよい客観証拠が乏しくても、相談を受けた以上、必要な範囲で事実確認や職場環境改善を検討する必要があります。
被害者を異動させれば解決する本人の希望や合理的理由がないまま被害者を異動させると、不利益取扱いと評価されるおそれがあります。

FAQ

Q1. 中小企業にもパワハラ防止法は適用されますか。

一般的には、企業規模を問わず事業主にパワハラ防止措置義務が課されています。方針の明確化、相談体制、事後対応、プライバシー保護、不利益取扱い禁止などが問題になります。ただし、具体的な体制の作り方は会社規模や業態によって変わるため、必要に応じて専門家へ相談することが考えられます。

Q2. 社長や役員によるパワハラにも対応が必要ですか。

一般的には、経営層や幹部が関与する事案でも、会社として適切な対応体制を整える必要があります。このような事案では社内調査の中立性が問題になりやすいため、外部専門家の関与を検討する場面があります。具体的な対応は、事実関係や社内体制によって変わります。

Q3. 派遣社員へのパワハラも対象になりますか。

一般的には、派遣労働者についても職場環境に関する措置が問題になります。派遣元だけでなく、派遣先でも対応が求められる場面があります。ただし、具体的な責任分担や対応手順は契約関係、指揮命令関係、相談経緯によって変わります。

Q4. 在宅勤務中のチャットやオンライン会議での暴言も対象になりますか。

一般的には、業務が行われる場面でのチャット、メール、オンライン会議、業務用SNSの言動も問題になり得ます。物理的なオフィス内だけが職場ではありません。ただし、業務上の関係性、言動内容、頻度、就業環境への影響によって評価は変わります。

Q5. パワハラと認定できない場合、会社は何もしなくてよいですか。

一般的には、明確なパワハラと認定できない場合でも、職場環境に問題があるなら業務配分、指導方法、コミュニケーション、管理職教育などを見直す必要があります。具体的な改善内容は、調査で確認できた事実や職場の状況によって変わります。

Q6. 相談者が匿名を希望した場合、会社は調査できますか。

一般的には、匿名相談でも可能な範囲で対応できます。ただし、具体的な事実確認や行為者とされる者への聴取には限界があります。会社は匿名対応の限界、情報共有範囲、相談者の意向を丁寧に説明する必要があります。

Q7. パワハラ行為者を直ちに懲戒解雇できますか。

一般的には、懲戒解雇は重い処分であり、就業規則上の根拠、事実認定、行為の重大性、手続の適正性、過去事例との均衡が問題になります。個別の処分可否は証拠と事情によって変わるため、具体的には専門家へ相談する必要があります。

Q8. 会社が相談後に評価を下げた場合、違法になりますか。

一般的には、評価の理由が相談や調査協力であれば、不利益取扱いとして問題になる可能性があります。一方で、相談とは無関係の客観的理由に基づく評価であれば、評価の適法性は事情によって変わります。会社側は理由を説明できる記録を整備する必要があります。

Section 12

パワハラ防止法の企業チェックリストと専門論点

最後に、社内点検項目と、結果責任ではなく体制整備・適正対応義務として理解する視点を整理します。

パワハラ防止法で会社に義務付けられた措置の内容を実際に点検するには、方針・規程、周知・研修、相談体制、調査・対応、フォロー・監査を分けて確認するのが有効です。次の一覧は、社内点検で使いやすい項目をまとめたものです。重要なのは、各分類のどこが弱いかを見つけ、規程整備だけでなく運用改善までつなげることです。

方針・規程

禁止方針、定義、6類型、懲戒・人事措置の根拠、相談・調査・再発防止の手順、プライバシー保護、不利益取扱い禁止を確認します。

文書

周知・研修

入社時研修、管理職研修、全従業員研修、相談窓口の周知、eラーニング、研修受講記録の保存を確認します。

教育

相談体制

相談窓口、複数ルート、担当者教育、受付記録、匿名相談への対応方針、外部相談窓口の利用を確認します。

入口
調

調査・対応

中立性、事実確認手順、緊急時の暫定措置、被害者配慮、行為者への弁明機会、懲戒処分の相当性、再発防止策を確認します。

対応

フォロー・監査

相談後の不利益取扱い、事案後のフォローアップ、相談件数・傾向、部署別リスク、規程・研修内容の見直し、経営層報告を確認します。

継続

措置義務の本質は、会社が「職場でパワハラが一切発生しないこと」まで保証する結果責任ではなく、体制整備、予防、適正対応、環境調整の義務として理解するのが実務的です。ただし、必要な措置を怠り、被害の発生・拡大を防げなかった場合には、安全配慮義務違反や使用者責任などの民事責任が問われる可能性があります。

次の比較表は、適正な業務指導とパワハラに近い言動の境界を整理しています。管理職研修で重要なのは、指導自体を萎縮させることではなく、目的、内容、方法、場所、頻度、記録、事後対応を具体的に区別することです。各行で、業務改善のための指導と、威圧や人格攻撃に近い対応の違いを読み取ってください。

観点適正な指導に近い例パワハラに近い例
目的業務改善・安全確保・品質向上威圧、見せしめ、退職誘導、個人的感情の発散
内容具体的な業務上の問題を指摘人格、能力、家族、属性を攻撃
方法冷静、短時間、必要な範囲怒鳴る、侮辱する、長時間拘束する
場所必要に応じた面談室等大勢の前で晒す
頻度必要な都度反復継続、執拗
記録指導内容が明確感情的で記録がない
事後対応改善支援がある放置、孤立化、報復

内部通報制度との関係では、役員・幹部によるハラスメント、組織的隠蔽、報復人事、法令違反を伴う事案で、通報者保護、秘密保持、利益相反の排除、調査の独立性が特に重要になります。パワハラ相談窓口と内部通報窓口は完全に分断せず、案件の性質に応じて連携できる体制を整えることが考えられます。

メンタルヘルス・労災との関係では、うつ病、適応障害、不安障害、睡眠障害等が生じた場合に、労災申請、休職、復職、就業配慮が問題になります。医療情報はセンシティブな個人情報であるため、本人の同意、利用目的、共有範囲を慎重に扱う必要があります。

広報・危機管理との関係では、報道、SNS、口コミサイト、取引先、採用候補者、株主、行政機関への説明が問題になることがあります。事実確認前に断定しないこと、関係者のプライバシーを守ること、会社としての対応方針を明確にすることが重要です。

会社の対策は制度整備から実効運用へ

パワハラ対策は単なる法令遵守にとどまらず、人が安心して働ける職場をつくり、企業の信頼を守り、健全な組織文化を形成するための基盤です。

Reference

参考資料・根拠資料

公的資料・法令情報

  • 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
  • 厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
  • 厚生労働省「あかるい職場応援団」資料ダウンロード
  • 厚生労働省「職場におけるハラスメント対策パンフレット」
  • 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部を改正する法律関係」
  • 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部を改正する法律の施行について」
  • e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」
  • e-Gov法令検索「労働契約法」
  • e-Gov法令検索「民法」