自己破産で残せる財産を、破産法34条、99万円以下の現金、差押禁止財産、自由財産拡張、財産別の判断まで体系的に整理します。
自己破産で残せる財産を、破産法34条、99万円以下の現金、差押禁止財産、自由財産拡張、財産別の判断まで体系的に整理します。
破産財団に入る財産と、生活再建のために残せる財産を最初に整理します。
自己破産を検討するとき、「財産をすべて失うのではないか」という不安が生じやすいです。しかし日本の破産制度は、債権者への公平な配当だけを目的とする制度ではありません。個人が生活を立て直せるように、一定の財産は破産手続の対象から外されます。この財産が、実務上「自由財産」と呼ばれるものです。
自由財産とは、個人が自己破産をしても、破産管財人による換価・配当の対象にならず、破産者が生活再建のために保有・使用できる財産です。破産法34条は、破産手続開始時に持っている財産を原則として破産財団に入れる一方で、99万円以下の現金、差押禁止財産、開始後に得た新得財産、裁判所が自由財産拡張を認めた財産などを区別しています。
最初に重要な数値と制度の柱を確認すると、自己破産で残せる財産の考え方を大きく誤解しにくくなります。下の強調部分は、法律上の現金上限、計算の根拠、実務上の分類を示すもので、以後の章ではこの3点を基準に読み進めると整理しやすくなります。
正確な財産開示を前提に、法律上当然に残るものと、裁判所に必要性を説明して残すものを分けて検討します。
ただし、実務上の結論は単純ではありません。現金と預貯金は扱いが異なり、自動車、保険、退職金、敷金、給与、年金、家族名義の財産などは、それぞれ評価方法と裁判所運用が異なります。同じ99万円という数字でも、法律上当然に残せる現金と、自由財産拡張で考慮される総額の目安は意味が違います。
このページは、法令、裁判所公開資料、司法支援機関の公開情報を基礎に、自由財産の定義、制度趣旨、判断枠組み、具体例、相談時に準備すべき資料を一般情報として整理するものです。個別の見通しや対応方針は、財産の種類、金額、生活状況、申立地の裁判所運用で変わるため、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
自由財産は、自己破産のうち財産清算の場面で問題になる概念です。
自己破産は、支払不能に陥った個人について、裁判所の関与のもとで財産関係を清算し、一定の要件を満たす場合に免責によって借金の支払責任から解放する制度です。破産手続をとっただけで借金が当然に消えるわけではなく、個人の場合は免責許可決定が重要になります。
自己破産には、財産をどう扱うかという面と、借金の支払責任をどう扱うかという面があります。この違いは、自由財産がどの場面で問題になるかを理解するうえで重要です。下の一覧では、手続の二つの側面と、自由財産が関わる位置を読み取ってください。
破産手続開始時に持っている一定の財産を、破産管財人が管理・処分し、債権者への配当に充てる場面です。
免責許可決定が確定すると、原則として多くの借金について法的な支払責任を免れます。
自由財産は、主に財産清算の場面で、どの財産を破産者の手元に残せるかを考える仕組みです。
破産手続は、債権者の利益だけを考える制度ではありません。衣服、寝具、最低限の生活費、仕事や通院に不可欠な道具まで失えば、生活再建は困難になります。そのため、破産法は、破産財団に属する財産と、破産者が保持できる財産を分けています。
本来的自由財産、新得財産、自由財産拡張、財団放棄、第三者財産を区別します。
自由財産は、破産財団と対になる概念です。破産財団とは、破産手続で管理・換価・配当の対象となる財産の集合です。破産法34条1項は、破産者が破産手続開始時に有する一切の財産を、原則として破産財団に属すると定めています。
自由財産かどうかは、いきなり財産名だけで判断するのではなく、破産手続開始時に持っていた財産か、原則として破産財団に入るか、例外的に残せるかという順番で見ることが重要です。下の判断の流れでは、この3段階を順番に確認してください。
開始後に得た財産かどうかで、新得財産の問題が分かれます。
本人の財産で、換価価値があるかを確認します。
99万円以下の現金、差押禁止財産、自由財産拡張などを検討します。
実務上の自由財産は、おおむね次の5種類に整理できます。表の左列は分類名、中央列は制度上の意味、右列は代表例です。似た名称でも根拠が異なるため、どの分類に当たるかを読み分けることが重要です。
| 種類 | 内容 | 代表例 |
|---|---|---|
| 本来的自由財産 | 破産法上、当然に破産財団に属しない財産です。 | 99万円以下の現金、差押禁止財産 |
| 新得財産 | 破産手続開始後に新たに取得した財産です。 | 開始決定後の労働に対する給与、開始後に取得した賞与の一部 |
| 自由財産拡張により認められた財産 | 本来は破産財団に入るが、裁判所が生活再建等を考慮して残すことを認めた財産です。 | 預貯金、保険解約返戻金、自動車、退職金見込額の評価部分 |
| 破産財団から放棄された財産 | 換価困難、費用倒れなどにより、破産管財人が破産財団から外した財産です。 | 買い手のない低価値不動産、処分費用が高い動産 |
| 第三者の財産 | そもそも破産者本人の財産ではないものです。 | 配偶者固有の預金、親名義の自動車、実質も子どもの財産である預金 |
注意すべき点は、「家にあるものだから本人の財産」とも、「名義が家族だから無条件に家族の財産」ともいえないことです。名義、購入資金の出どころ、使用状況、管理者、贈与の有無などを総合的に見て、実質的に誰の財産かが問題になります。
99万円は、現金に関する法律上の上限であり、すべての財産に当然に広がる枠ではありません。
自己破産で最もよく知られている自由財産が、99万円以下の現金です。破産法34条3項1号は、民事執行法131条3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭を、破産財団に属しない財産としています。民事執行法施行令では、標準的な世帯の2か月間の必要生計費を踏まえた金額として66万円が定められています。
99万円という数字は、生活再建に直結するため誤解が起きやすい部分です。次の強調部分は、66万円を基準にした計算関係を示します。ここでは、99万円が現金に関する法律上の数字であることを読み取ってください。
破産手続では、この99万円が法律上当然に残せる現金の上限として導かれます。
ここで重要なのは、法律上当然に残せる対象が「現金」である点です。銀行口座の残高は、法的には銀行に対する預金払戻請求権であり、現金そのものではありません。下の比較表では、現金、預貯金、自由財産拡張における総額目安を分けて確認してください。
| 項目 | 扱い | 読み取り方 |
|---|---|---|
| 99万円以下の現金 | 法律上当然に自由財産となります。 | 紙幣や硬貨として手元に存在する金銭が中心です。 |
| 預貯金 | 現金とは別の財産として評価されます。 | 生活再建に必要な場合、自由財産拡張で残せるかを検討します。 |
| 総額99万円程度の目安 | 実務上の検討目安として使われることがあります。 | 法律上、どの財産でも当然に合計99万円まで残せるという意味ではありません。 |
預貯金、生命保険の解約返戻金、自動車、株式、暗号資産、退職金見込額、不動産などは、当然に99万円枠へ入るわけではありません。これらは原則として破産財団に属する財産として評価され、そのうえで自由財産拡張や財団放棄の対象になるかを検討します。
生活に欠くことができない物は、最低生活保障の観点から保護されるのが原則です。
破産法34条3項2号は、差し押さえることができない財産を、原則として破産財団に属しない財産としています。つまり、民事執行法上、差押えが禁止される財産は、自己破産でも自由財産として残せるのが原則です。
差押禁止財産は、生活や仕事を続けるために最低限必要なものを示します。次の一覧では、左の印が分類の目安、中央が保護されやすい財産、右側が読み取りたい実務上の注意点です。生活上の必要性が中心であり、単に名称だけで決まらない点を確認してください。
生活に欠くことができない衣服、寝具、通常の家具、台所用具などは保護されるのが原則です。
生活用品1か月間の生活に必要な食料や燃料は、最低生活を維持するための財産として扱われます。
生活維持農業、漁業、職人・労務者等の業務に不可欠な器具等は、収入維持との関係で問題になります。
仕事道具職業または生活に欠くことができない印章や、実用上必要な一定の書類・道具も検討対象です。
実用品通常の冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、炊飯器、食器、布団、衣類、机、椅子、一般的なテレビやパソコンなどは、多くの場合、処分対象になりません。一方で、下の注意要素に当たるものは、生活必需品という名称だけで残せるとは限りません。高価品か、換価価値があるか、代替できるかを読み取ることが大切です。
ブランドバッグ、宝飾品、高級時計などは、生活に不可欠とは評価されにくいことがあります。
資産価値があるものは、生活用品ではなく換価対象として検討される可能性があります。
仕事に必要な道具か、趣味や投資目的の物かで扱いが変わります。
自由財産かどうかは、財産の名称ではなく、生活上の必要性、換価価値、代替可能性、取得経緯、収入、家族構成、健康状態などから判断されます。
入金日だけでなく、発生原因が破産手続開始前か後かを確認します。
破産法34条1項は、破産者が破産手続開始時に有する財産を破産財団とする構造を採っています。したがって、破産手続開始決定後に新たに取得した財産は、原則として破産財団には入りません。これを新得財産といいます。
新得財産の判断では、時系列の位置が重要です。次の時系列は、破産手続開始前、開始時、開始後のどこに原因があるかを示します。読者は、入金された日ではなく、労働や契約などの原因がいつ生じたかを確認してください。
開始前に働いた未払給与、開始前の事故に基づく損害賠償請求権、開始前契約の売掛金などは、受領が開始後でも破産財団に属する可能性があります。
破産手続開始時に持っている本人財産は、原則として破産財団に入るかを検討します。
開始後の労働に対する給与などは、生活再建の原資として原則手元に残ります。
給与や報酬は、入金日だけを見ると判断を誤りやすい財産です。次の比較表では、開始前原因と開始後原因を分け、どこを確認すればよいかを示します。対象期間、支給日、契約原因を読み取ることが重要です。
| 財産 | 主な扱い | 確認点 |
|---|---|---|
| 開始後に働いて得た給与 | 原則として新得財産です。 | 開始決定後の労働に対応しているかを確認します。 |
| 開始前に働いた未払給与 | 開始前原因に基づく財産として破産財団に属する可能性があります。 | 給与の対象期間と支給日を分けて確認します。 |
| 開始前の事故に基づく損害賠償請求権 | 受領が開始後でも破産財団に属する可能性があります。 | 損害発生原因が開始前かどうかを確認します。 |
| 開始前契約の売掛金 | 開始前原因に基づく将来請求権として問題になります。 | 契約時期、履行時期、請求権発生時期を確認します。 |
給与については、民事執行法上、一定部分の差押えが禁止されています。賃金の4分の3は差押えが禁止され、原則として4分の1までしか差し押さえられないという考え方があり、月例賃金が一定額を超える場合には差押禁止額33万円も問題になります。
預貯金、保険、自動車、退職金評価額などは、必要性の説明が鍵になります。
自由財産拡張とは、本来であれば破産財団に属する財産について、裁判所が破産者の生活状況、財産の種類・額、収入見込みその他の事情を考慮し、破産財団に属しない財産として扱う範囲を広げる制度です。根拠は破産法34条4項です。
自由財産拡張で重要なのは、「残したい」という希望だけでは足りないことです。次の一覧は、裁判所や破産管財人に必要性を説明する際に重視されやすい事情をまとめたものです。読者は、自分の財産が生活再建にどう関係するかを読み取ってください。
病気や障害により、預貯金や保険契約を維持する必要性が高い場合があります。
公共交通機関が乏しい地域では、自動車が生活や収入維持に不可欠な場合があります。
子どもの養育、転居、医療費、介護費などで通常より多くの生活資金が必要な場合があります。
仕事道具を失うと収入を得られない場合や、保険解約後の再加入が困難な場合は重要な事情になります。
自由財産拡張には、申立ての時期と資料準備が関係します。次の時系列は、破産申立て前から裁判所判断までの実務上の動きを示します。順番に沿って、どの段階で財産評価と必要性の説明を準備するかを確認してください。
預貯金、保険、自動車、退職金見込額などを一覧化し、証明資料を集めます。
破産手続開始決定から、決定確定後1か月を経過する日までの間に、申立てまたは職権で判断されます。
管財事件では、破産管財人が財産調査を行い、自由財産拡張について意見を述べます。
財産の種類、金額、生活状況、収入見込みなどを総合して最終判断されます。
99万円は、自由財産拡張でもよく登場する数字ですが、法律上当然の上限とは限りません。下の表では、現金の99万円と、拡張判断における総額目安の違いを確認してください。両者を分けることが、誤った判断を避けるために重要です。
| 論点 | 正確な理解 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 99万円以下の現金 | 法律上当然に残せる自由財産です。 | 預貯金や保険などへ当然に広がるわけではありません。 |
| 拡張の総額目安 | 預貯金、保険、自動車、退職金評価額などを含め、99万円程度が目安になることがあります。 | 全国一律の機械的ルールではなく、申立地の運用差があります。 |
| 99万円を超える拡張 | 特別事情があれば問題になり得ます。 | 容易ではなく、医療・介護・扶養・収入維持などの具体的資料が必要です。 |
自由財産拡張が必要な財産があると、管財事件として調査されやすくなります。
管財事件とは、破産管財人が選任され、破産者の財産、負債、免責不許可事由の有無などを調査する事件です。破産法上は管財事件が原則であり、債務者の財産が極めて少なく、換価しても破産手続費用を支出できないと確実に認められる場合には、破産管財人を選任せず同時廃止となることがあります。
管財事件と同時廃止事件の違いは、自由財産を考える際にも重要です。下の比較表では、左列で手続分類、中央で調査の有無、右列で自由財産との関係を示します。財産を残せるかと、管財事件になるかは別問題として読み分けてください。
| 手続分類 | 特徴 | 自由財産との関係 |
|---|---|---|
| 管財事件 | 破産管財人が選任され、財産や免責不許可事由を調査します。 | 預貯金、保険、自動車、退職金などの拡張判断が必要な場合に扱われやすくなります。 |
| 同時廃止事件 | 破産手続開始と同時に、配当原資がないことを理由として手続が廃止されます。 | 換価すべき財産が乏しく、免責調査上の問題も大きくない場合に検討されます。 |
東京地方裁判所の公開情報では、管財事件として扱われる例として、33万円以上の現金がある場合、20万円以上の換価対象資産がある場合、資産調査が必要な場合、法人代表者・個人事業者の場合、免責調査が相当な場合などが挙げられています。次の強調部分は、これが全国一律の処分基準ではなく、手続分類の目安であることを確認するためのものです。
この数字は、必ず処分される基準ではなく、管財事件として調査される可能性を考える目安です。
自由財産拡張が必要な財産がある場合、破産管財人による調査や意見が必要になりやすいため、管財事件として扱われることがあります。次の判断の流れでは、財産を正確に開示し、必要な場合に拡張を求める方向へ進むことを読み取ってください。
現金、預貯金、保険、自動車、退職金、家族名義財産を整理します。
一定額の資産、直前の入出金、免責調査事項があれば管財事件が問題になります。
破産管財人と裁判所に、残す必要性を資料で説明します。
財産が乏しく調査事項が少ない場合に検討されます。
「財産を残したいから同時廃止にしたい」という発想は適切とは限りません。むしろ、財産を正確に開示し、必要に応じて管財事件の中で自由財産拡張を求めることが、財産を適法に残すための重要な手段になることがあります。
現金、預貯金、自動車、保険、退職金、給与、不動産、暗号資産などを個別に確認します。
自由財産の判断は、単純な一覧表だけでは完結しません。現金と預貯金、自動車とローン、保険と解約返戻金、退職金と退職予定の有無など、財産ごとに確認点が異なります。
次の比較表は、主要な財産について、原則的な扱いと確認すべきポイントを横断的に整理したものです。左列で財産の種類、中央で破産手続上の基本的な見方、右列で資料や注意点を読み取ってください。
| 財産 | 基本的な扱い | 確認すべきポイント |
|---|---|---|
| 現金 | 99万円以下の現金は法律上当然に自由財産です。 | 多額の現金、直前の引出し、使途、保管状況は説明を求められることがあります。 |
| 預貯金 | 現金とは別の財産として扱われます。 | 生活費、家賃、医療費、子どもの費用、公共料金、引越費用などの必要性を説明します。債権者銀行の口座は凍結や相殺にも注意が必要です。 |
| 家財道具・生活用品 | 通常の生活に必要な物は差押禁止財産として残せるのが原則です。 | 高価なブランド家具、高級オーディオ、美術品、骨董品、宝飾品、事業用在庫は別に評価される可能性があります。 |
| 自動車・バイク | ローンの有無、所有者、時価、必要性で結論が変わります。 | 車検証、査定書、ローン契約書、通勤経路、公共交通機関の状況、通院・介護事情を整理します。 |
| 生命保険・医療保険・学資保険 | 解約返戻金がある場合、財産として評価されます。 | 保険証券、解約返戻金証明書、保障内容、契約者、被保険者、受取人、保険料支払者を確認します。 |
| 退職金・退職金見込額 | 受領済みなら現金または預貯金、在職中なら見込額の一部が評価対象になります。 | 退職予定がない場合、自己都合退職金見込額の8分の1評価が用いられる例があります。退職後未受領や近く受領予定の場合は4分の1相当額が問題になることがあります。 |
| 給与・賞与 | 開始後の労働に対する給与は原則として新得財産です。 | 開始前に発生していた未払給与は、開始前原因に基づく財産として別途検討が必要です。 |
| 年金・生活保護・児童手当 | 受給権自体が差押禁止とされるものが多く、生活保障の性格が強い財産です。 | 口座入金後は預貯金として扱われる場面があるため、入金原資と使途予定を説明できるようにします。 |
| 敷金・保証金 | 敷金返還請求権も財産ですが、退去時まで返還されず控除もあり得ます。 | 居住継続の必要性、換価の現実性、原状回復控除を確認します。 |
| 不動産 | 自宅や土地は原則として高額財産であり、自由財産として残すことは容易ではありません。 | 住宅ローンがある場合は担保権実行が問題になります。自宅を残したい場合は個人再生の住宅資金特別条項も検討対象です。 |
| 株式・投資信託・暗号資産 | 原則として財産価値があるため破産財団に属します。 | 取引所口座、ウォレット、秘密鍵、取引履歴、取得価格、現在価値を正確に開示します。 |
| 事業用財産 | 工具、機械、在庫、売掛金、営業車、什器備品、事業用口座などが問題になります。 | 個人事業主の自己破産は管財事件になりやすく、事業継続の可否や法人破産との関係も検討します。 |
退職金は誤解が多い財産です。退職予定がない在職者について、自己都合退職した場合の退職金見込額400万円を例にすると、8分の1評価では50万円が財産評価として問題になります。この50万円が当然に処分されるという意味ではなく、他の財産状況や生活再建の必要性により自由財産拡張が検討されます。
自動車を残したい場合は、時価だけでなく必要性が重要です。地方在住で公共交通機関が乏しく、車がなければ通勤できず収入を失うような場合には、自由財産拡張を求める余地があります。ただし、査定書、車検証、勤務先までの距離、時刻表、通院・介護の事情などの資料が必要になります。
家族固有財産は原則対象外ですが、名義だけの移転や財産隠しは重大な問題になります。
個人の自己破産で破産財団に入るのは、原則として破産者本人の財産です。配偶者、親、子ども、同居家族の固有財産は、破産者の破産財団には入りません。配偶者が自分の収入で貯めた預金、親が所有する自動車、子どもに贈与され実質的にも子どものために管理されている預金などは、原則として本人財産ではありません。
ただし、名義だけでは決まりません。下の注意一覧は、家族名義財産や申立て前の行動で問題になりやすいものを示します。どの行為が手続への信頼を損ない、免責や管財事件化に影響し得るかを読み取ってください。
通帳、保険、退職金、暗号資産、現金、売掛金、親族への貸付金、相続財産などを隠すと重大な問題になります。
自動車、不動産、預金、保険契約を家族や知人名義に変更すると、否認や免責不許可の問題になり得ます。
親族、友人、勤務先、保証人付き債務、取引先だけを優先すると、偏頗弁済として返還を求められることがあります。
時期、金額、使途、債権者への影響によっては、不自然な財産操作と見られる可能性があります。
自由財産拡張で維持できる可能性がある保険を解約すると、保障を失い再加入が難しくなることがあります。
家族に迷惑をかけたくないという心理から財産移転をしてしまうと、結果的に家族や友人が返還請求を受ける可能性があります。次の判断の流れでは、財産を移すのではなく、正確に開示して説明する方向へ進むことを確認してください。
名義、購入資金、管理者、使用状況、贈与の有無を確認します。
申立て前の名義変更、親族返済、資金移動があれば説明資料を整理します。
自己判断で移転・解約・返済をせず、資料を整理して相談します。
財産の種類だけでなく、法的性質、取得時期、換価価値、生活必要性を総合します。
自由財産として残せるかどうかは、単に財産の種類だけでは決まりません。実務では、財産の法的性質、取得時期、発生原因、換価価値、生活必要性、代替可能性、収入見込み、家族状況、債権者への影響、手続誠実性を総合的に検討します。
次の表は、自由財産性を検討するときの主な確認要素を整理したものです。左列で検討要素、右列で具体的な確認事項を示しています。資料を集める際は、この表の各行に対応する証拠があるかを読み取ってください。
| 検討要素 | 具体的な確認事項 |
|---|---|
| 財産の法的性質 | 現金か、預貯金か、動産か、債権か、不動産か、第三者財産かを確認します。 |
| 取得時期 | 破産手続開始前に取得したか、開始後の新得財産かを確認します。 |
| 発生原因 | 開始前の原因に基づく将来請求権か、開始後の労働・契約によるものかを確認します。 |
| 換価価値 | 市場価値、査定額、解約返戻金、回収可能性、費用倒れの有無を確認します。 |
| 生活必要性 | 生活、通勤、通院、介護、養育、仕事に不可欠かを確認します。 |
| 代替可能性 | 他の手段で代替できるか、公共交通機関や家族支援はあるかを確認します。 |
| 収入見込み | 今後の給与、年金、生活保護、就労可能性を確認します。 |
| 家族状況 | 扶養家族、ひとり親、障害、介護、同居家族の収入を確認します。 |
| 債権者への影響 | 換価すれば配当に回る金額、債権者平等との均衡を確認します。 |
| 手続誠実性 | 財産開示の正確性、浪費、隠匿、偏頗弁済の有無を確認します。 |
具体例で見ると、自由財産の結論は金額だけでなく周辺事情に左右されます。次の比較表は、典型的な6つの場面を示し、どこが結論を分けるかを整理したものです。現金、預金、保険、自動車、退職金、自宅、開始後給与を分けて読んでください。
| 例 | 整理のポイント | 注意点 |
|---|---|---|
| 現金40万円、預金10万円、通常の家財のみ | 現金40万円は99万円以下の現金です。預金10万円は現金とは別ですが、生活費として必要な少額財産として検討されます。 | 東京地裁の例では33万円以上の現金がある場合に管財事件として扱われる例があり、残せるかと手続分類は別問題です。 |
| 預金60万円、保険解約返戻金25万円、現金5万円 | 法律上当然に残せる現金は5万円です。預金と保険返戻金は財産評価の対象です。 | 生活費、医療保障、扶養家族、収入状況を説明できれば、自由財産拡張が問題になります。 |
| 地方在住で自動車時価35万円、通勤に必須 | 時価があるため換価対象として問題になりますが、通勤に不可欠なら拡張を求める余地があります。 | 査定書、勤務先までの距離、公共交通機関の時刻表、通院・介護事情が重要です。 |
| 退職金見込額400万円、退職予定なし | 8分の1評価の例では50万円が財産評価として問題になります。 | 裁判所ごとの運用差、退職予定、自由財産拡張の可否を確認します。 |
| 住宅ローン付き自宅を残したい | 抵当権者の担保権実行により、任意売却や競売が進むことがあります。 | 自宅を残したい場合、自己破産ではなく個人再生の住宅資金特別条項を検討することがあります。 |
| 開始決定後に働いて得た給与 | 開始後の労働に対する給与は、原則として新得財産として手元に残ります。 | 開始前に働いた分の未払給与が開始後に入金された場合は、別途検討が必要です。 |
このような事情を資料に基づいて整理し、裁判所や破産管財人に説明できるかどうかが、自由財産拡張の成否に大きく影響します。
見通しは資料で変わるため、財産別に証明資料を整理しておくことが重要です。
自由財産の見通しは、資料がなければ判断できません。相談時には、財産の種類ごとに、金額、名義、取得時期、必要性、直前の動きを確認できる資料を準備すると、専門家が正確に検討しやすくなります。
次の表は、相談前に集めたい資料を財産別に整理したものです。左列で財産・事情、右列で準備資料を示しています。どの財産を残したいかだけでなく、必要性を裏付ける資料があるかを読み取ってください。
| 財産・事情 | 準備資料 |
|---|---|
| 預貯金 | 全口座の通帳、取引明細、ネット銀行の明細、直近1から2年程度の履歴 |
| 現金 | 手元現金額、保管場所、直近の引出し理由、使途メモ |
| 保険 | 保険証券、解約返戻金証明書、保障内容、契約者・被保険者・受取人情報 |
| 自動車 | 車検証、査定書、ローン契約書、所有者欄、使用状況、通勤・通院事情 |
| 退職金 | 退職金見込証明書、退職金規程、勤続年数、退職予定の有無 |
| 給与 | 給与明細、賞与明細、源泉徴収票、雇用契約書、未払給与の有無 |
| 年金・給付 | 年金通知書、生活保護決定通知、児童手当通知、入金口座の明細 |
| 不動産 | 登記事項証明書、固定資産評価証明書、ローン残高証明、査定書 |
| 借金 | 債権者一覧、請求書、督促状、訴状、差押命令、保証人の有無 |
| 家計 | 家計収支表、家賃、医療費、教育費、介護費、扶養家族の状況 |
弁護士を選ぶ際は、自己破産・管財事件の経験、申立地の裁判所運用への理解、費用と法テラス利用の可否、財産を残すための説明方針を確認することが重要です。下の一覧は、相談時に確認したい観点を並べたものです。どの観点が自分の財産状況に関係するかを読み取ってください。
預貯金、保険、自動車、退職金などを残したい場合、破産管財人とのやり取りや資料作成の経験が重要です。
自由財産拡張、管財事件への振り分け、予納金、退職金評価、自動車評価には地域差があります。
弁護士費用、裁判所費用、管財予納金、分割払い、民事法律扶助の利用可否を確認します。
どの財産が問題になり、どの資料で必要性を説明するかまで見通しを示せるかを確認します。
法テラスは、経済的に余裕のない人に対し、無料法律相談や、必要な場合の弁護士・司法書士費用等の立替えを案内する制度です。利用条件や費用は制度上の審査により決まるため、法テラスまたは対応可能な専門家に確認してください。
FAQは一般的な制度説明であり、具体的な結論は資料と裁判所運用で変わります。
一般的には、通常の生活に必要な家財道具は差押禁止財産として残せるのが原則とされています。ただし、高価なブランド品、貴金属、美術品など換価価値の高いものは別に評価される可能性があります。具体的な対応は、財産の内容と資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、99万円以下として法律上当然に残せるのは現金とされています。預貯金は現金とは別の財産であり、自由財産拡張により残せるかを検討します。ただし、生活再建に必要な預貯金は裁判所の判断により残せる可能性があり、具体的な見通しは資料に基づく確認が必要です。
一般的には、ローンの有無、所有者、時価、使用目的、生活・仕事上の必要性によって扱いが変わるとされています。低価値の車や、通勤・通院・介護に不可欠な車は、自由財産拡張が問題になる可能性があります。具体的には、査定書や必要性を示す資料を整理して専門家へ相談する必要があります。
一般的には、解約返戻金がある保険は財産として評価されます。ただし、医療保障の必要性、再加入困難性、家族構成、解約返戻金額などによっては、自由財産拡張により維持できる可能性があります。具体的な対応は、保険証券と解約返戻金証明書を整理したうえで相談する必要があります。
一般的には、すでに受け取った退職金は現金または預貯金として扱われ、在職中で退職予定がない場合は退職金見込額の一部が財産評価される運用があるとされています。裁判所書式では8分の1評価が用いられる例がありますが、退職予定や申立地の運用で変わるため、具体的には専門家に確認する必要があります。
一般的には、破産手続開始後の労働に対する給与は新得財産として手元に残るとされています。ただし、開始前に働いた分の未払給与が開始後に支払われる場合は、開始前の原因に基づく財産として別途検討が必要です。対象期間と支給日を整理して確認する必要があります。
一般的には、家族固有の財産であれば破産者の破産財団には入らないとされています。しかし、名義だけ家族で実質的には破産者の財産である場合や、申立て直前に名義変更した場合は問題になる可能性があります。名義、購入資金、管理状況、使用状況を正確に説明する必要があります。
一般的には、金額の大小にかかわらず、財産隠しは破産手続への信頼を損ない、免責不許可、管財事件化、調査長期化などにつながる可能性があります。具体的な対応は、隠すのではなく全財産を正確に申告し、自由財産として残せるかを専門家に確認する必要があります。
一般的には、収入や資産などの条件を満たす場合、法テラスの民事法律扶助により無料法律相談や費用立替えを利用できる可能性があります。ただし、条件や費用は制度上の審査により決まります。具体的には、法テラスまたは対応可能な専門家へ確認する必要があります。
制度上は破産者の申立てにより可能とされています。ただし、実務上は財産評価、必要性の説明、資料作成、破産管財人対応、裁判所運用の理解が必要です。預貯金、保険、自動車、退職金などを残したい場合は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
財産を隠すのではなく、正確に開示し、残せる根拠を整理することが重要です。
自己破産しても、すべての財産を失うわけではありません。99万円以下の現金、差押禁止財産、破産手続開始後に取得した新得財産、裁判所が自由財産拡張を認めた財産などは、手元に残せる可能性があります。
最終的な理解を一つにまとめると、自由財産とは、破産者の最低生活と経済的再出発を保障するために、破産財団から外される財産です。次の強調部分では、現金、差押禁止財産、拡張対象財産の関係を確認してください。個別事情で結論が変わるため、一覧表だけで決めないことが重要です。
99万円以下の現金や差押禁止財産は中核であり、預貯金・保険・自動車・退職金なども、事情により自由財産拡張を通じて残せる可能性があります。
しかし、自由財産の判断は、現金と預貯金の違い、保険の解約返戻金、自動車の必要性、退職金見込額、家族名義財産、開始前後の給与、裁判所ごとの運用差など、多くの論点を含みます。最も重要なのは、財産を隠すことではなく、正確に開示したうえで、法律上・実務上残せる財産を適切に主張することです。
自己判断で名義変更、現金化、保険解約、親族返済をする前に、できるだけ早い段階で資料を整理し、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
公的機関・法令・司法支援機関の公開情報を中心に確認しています。