2σ Guide

遺留分侵害額請求の
時効と請求期限

「知った時から1年」と「相続開始から10年」を軸に、通知の到達、調停、税務、請求後の回収までを一般情報として整理します。

1年 知った時から
10年 相続開始から
10か月 相続税申告
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遺留分侵害額請求の 時効と請求期限

「知った時から1年」と「相続開始から10年」を軸に、通知の到達、調停、税務、請求後の回収までを一般情報として整理します。

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遺留分侵害額請求の 時効と請求期限
「知った時から1年」と「相続開始から10年」を軸に、通知の到達、調停、税務、請求後の回収までを一般情報として整理します。
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  • 遺留分侵害額請求の 時効と請求期限
  • 「知った時から1年」と「相続開始から10年」を軸に、通知の到達、調停、税務、請求後の回収までを一般情報として整理します。

POINT 1

  • 遺留分侵害額請求の時効は通知と到達から考える
  • 金額確定よりも、期限内に権利行使の意思を相手方へ届かせることが出発点です。
  • 結論は「先に通知、後で計算」です
  • どの期限が何を制限するかを分けることで、今すぐ必要な対応と後で詰める論点を読み取れます。
  • 遺留分侵害額請求は、1年以内に裁判を終わらせる制度ではありません。

POINT 2

  • 遺留分侵害額請求の基本と2019年7月1日前後の違い
  • 誰に遺留分があり、現行制度で何を請求するのかを整理します。
  • 遺留分侵害額請求
  • 遺留分減殺請求
  • 死亡日から制度を選ぶ

POINT 3

  • 遺留分侵害額請求の1年・10年・請求後の時効
  • 1. 被相続人の死亡:相続は死亡によって開始します。
  • 2. 相続開始と遺留分侵害を認識:死亡と、遺留分を侵害する贈与または遺贈を知った時から1年の時効が問題になります。
  • 3. 相続税申告期限:相続税が発生する規模では、遺留分紛争が未解決でも税務期限は延びません。
  • 4. 請求権行使の意思表示:相手方へ到達させることが重要です。
  • 5. 金銭債権の回収:請求権行使で発生した金銭債権には、民法166条の一般債権の時効が別に問題になります。

POINT 4

  • 遺留分侵害額請求の起算点は「死亡日」だけでは決まらない
  • 死亡だけでは足りない
  • 概要の把握でも争点になる
  • 遺産の大半が特定人物に渡ると知っていた場合、詳細資料が未開示でも起算点が争われることがあります。

POINT 5

  • 遺留分侵害額請求は意思表示・到達・証拠化が核心
  • 1. 相続開始と侵害認識の日を確認:最も早い起算点になり得る日を仮置きします。
  • 2. 1年以内に到達できるか:差出日ではなく、相手方に届くことを基準にします。
  • 3. 通知を先行:金額未確定でも権利行使の意思を明確にします。
  • 4. 調査と通知準備:財産資料を集めつつ、通知文と送付先を整えます。

POINT 6

  • 遺留分侵害額請求の相手方・負担順序・金額算定
  • 誰に請求するか、どの順序で負担するか、計算をどう進めるかを分けます。
  • 次の比較は、受遺者と受贈者がいる場合の負担順序を整理したものです。
  • 上から順番に確認することで、遺産総額だけでなく、生前贈与、債務、特別受益、相続債務まで反映する必要があることを読み取れます。
  • 預貯金、不動産、株式、事業用資産などを確認します。

POINT 7

  • 遺留分侵害額請求の調停・税務・請求後の管理
  • 調停は話合いの場であり、税務期限と金銭債権の時効は別に進みます。
  • 申立てだけでは通知にならない
  • 相続税は10か月
  • 請求後の債権も管理

POINT 8

  • 遺留分侵害額請求の期限管理でよくある失敗
  • 話合いに応じているから大丈夫
  • 交渉中でも、明確な権利行使がなければ時効を主張される可能性があります。
  • 調停を申し立てたから安心
  • 調停申立てとは別に、相手方への意思表示を到達させる必要があります。

まとめ

  • 遺留分侵害額請求の 時効と請求期限
  • 遺留分侵害額請求の時効は通知と到達から考える:金額確定よりも、期限内に権利行使の意思を相手方へ届かせることが出発点です。
  • 遺留分侵害額請求の基本と2019年7月1日前後の違い:誰に遺留分があり、現行制度で何を請求するのかを整理します。
  • 遺留分侵害額請求の1年・10年・請求後の時効:民法1048条の期間制限と、権利行使後の金銭債権を分けて見ます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

遺留分侵害額請求の時効は通知と到達から考える

金額確定よりも、期限内に権利行使の意思を相手方へ届かせることが出発点です。

遺留分侵害額請求の時効と請求期限で最初に確認すべきなのは、相続開始と遺留分侵害を知った時から1年、相続開始から10年、請求後の金銭債権、相続税申告の10か月という複数の期限です。どの期限が何を制限するかを分けることで、今すぐ必要な対応と後で詰める論点を読み取れます。

結論は「先に通知、後で計算」です

遺留分侵害額請求は、1年以内に裁判を終わらせる制度ではありません。期限内に、請求権を行使する意思表示を相手方へ到達させ、その後に財産調査、交渉、調停、訴訟で金額を整理するという順序が重要です。

次の一覧は、期限ごとに問題になる行動をまとめたものです。左から順に、期限、必要な対応、根拠となる性質を見れば、単なる話合いと法的な権利行使を混同しないための全体像がつかめます。

期限・期間必要な対応読み取り方
知った時から1年遺留分侵害額請求権を行使する意思表示を到達させる短期消滅時効として最優先で管理します
相続開始から10年遺留分侵害額請求権を行使する知っていたかどうかにかかわらず進む長期制限です
請求後5年または10年発生した金銭債権を回収する通知後に放置すると別の時効が問題になります
死亡を知った日の翌日から10か月相続税申告と納税を検討する遺留分紛争と並行して進む税務期限です
重要家庭裁判所の調停を申し立てただけでは、相手方への意思表示にはならないとされています。調停を使う場合も、内容証明郵便等による通知を別に管理する必要があります。
Section 01

遺留分侵害額請求の基本と2019年7月1日前後の違い

誰に遺留分があり、現行制度で何を請求するのかを整理します。

遺留分は、兄弟姉妹以外の一定の相続人に保障される最低限の取り分です。次の比較は、誰に遺留分があるかを確認するためのものです。遺留分権利者かどうかは請求の入口なので、右列で例外や代襲関係まで読み取ることが重要です。

区分遺留分の有無説明
配偶者あり法律婚の夫または妻は遺留分権利者になります。
あり子が先に死亡している場合は、孫などの代襲相続人が問題になります。
直系尊属あり父母や祖父母は、子がいない場合などに遺留分権利者となることがあります。
兄弟姉妹なし民法1042条は兄弟姉妹以外の相続人を対象にしています。
甥・姪原則なし兄弟姉妹に遺留分がないため、通常はその代襲相続人にもありません。

次の比較は、遺留分侵害額請求と旧制度の違いを示します。死亡日が2019年7月1日前か後かで、請求の効果や利用できる手続が変わるため、古い相続では最初に死亡日を読み取る必要があります。

2019年7月1日以後

遺留分侵害額請求

現行法では、侵害額に相当する金銭の支払いを求める請求として扱われます。不動産そのものの返還ではなく、金銭債権化される点が中心です。

2019年6月30日以前

遺留分減殺請求

改正前民法が問題になり、物件返還や共有関係など、現行制度とは異なる効果を検討する場面があります。

確認事項

死亡日から制度を選ぶ

制度名だけで判断せず、被相続人がいつ亡くなったか、遺言や贈与の内容が何かを確認してから期限管理をします。

遺留分の総体的割合は、直系尊属のみが相続人なら3分の1、それ以外では2分の1が大枠です。複数の相続人がいる場合は、この割合に各人の法定相続分を掛けて、個別の遺留分割合を把握します。

Section 02

遺留分侵害額請求の1年・10年・請求後の時効

民法1048条の期間制限と、権利行使後の金銭債権を分けて見ます。

次の時系列は、相続開始から請求後までに管理する期限の順番を表しています。左から右へ時間が進むと考えると、相続税の10か月、請求権行使の1年、相続開始から10年、請求後の債権回収という別々の管理対象を読み取れます。

相続開始

被相続人の死亡

相続は死亡によって開始します。死亡日から10年の長期制限が進みます。

知った時

相続開始と遺留分侵害を認識

死亡と、遺留分を侵害する贈与または遺贈を知った時から1年の時効が問題になります。

10か月

相続税申告期限

相続税が発生する規模では、遺留分紛争が未解決でも税務期限は延びません。

1年以内

請求権行使の意思表示

相手方へ到達させることが重要です。金額確定や裁判終了までは求められていません。

請求後

金銭債権の回収

請求権行使で発生した金銭債権には、民法166条の一般債権の時効が別に問題になります。

1年の起算点は主観的認識を基準にしますが、10年は知っていたかどうかにかかわらず進みます。この違いを押さえると、海外在住や資料未開示のような事情があっても、10年経過後は極めて厳しいことが分かります。

注意財産調査や不動産評価が未了でも、1年の時効は止まりません。金額が不明なときは、金額調査中であることを明記しつつ、権利行使の意思表示を先行させることを検討します。
Section 03

遺留分侵害額請求の起算点は「死亡日」だけでは決まらない

遺言書・贈与・登記・通帳など、何をいつ知ったかが争点になります。

次の比較は、遺留分侵害を知ったと評価されやすい場面を整理したものです。右列の日付は起算点として争われやすいため、資料を受け取った日、確認した日、説明を受けた日を時系列で読み取ることが重要です。

場面起算点として問題になりやすい日
遺言書の写しを受け取った遺言内容を確認した日、または確認可能になった日
家庭裁判所の検認手続で遺言内容を知った検認期日またはその前後で内容を知った日
公正証書遺言の存在と内容を知らされたその通知を受けた日
不動産登記で相続・贈与移転を知った登記事項証明書を取得・確認した日
預貯金履歴から多額の生前贈与を把握した履歴や資料を入手し、内容を認識した日
遺産目録や税理士資料で偏った取得を知った資料を受け取った日

次の重要ポイントは、起算点で誤解しやすい要素を並べたものです。各項目は「知らなかった」と主張できるかではなく、相手方から時効を主張されたときに何が争点になるかを読み取るためのものです。

死亡だけでは足りない

死亡を知っていても、遺留分を侵害する贈与や遺贈を知らなければ、1年の起算点がまだ到来していないと主張できる可能性があります。

概要の把握でも争点になる

遺産の大半が特定人物に渡ると知っていた場合、詳細資料が未開示でも起算点が争われることがあります。

無効主張中も注意

遺言無効や贈与無効を争う場合でも、予備的な遺留分侵害額請求の通知を検討する必要があります。

改正前民法下の最高裁昭和57年11月12日判決は、「減殺すべき贈与があったことを知った時」の解釈に関する考え方を示しました。現行法でも、無効主張に一応の根拠があるか、権利行使をしなかったことがもっともといえるかが問題になるため、遺言や贈与の無効を争う場合も期限管理を別に行うことが大切です。

Section 04

遺留分侵害額請求は意思表示・到達・証拠化が核心

内容証明郵便が多く使われる理由と、通知書に入れる要素を整理します。

次の判断の流れは、期限内に何を優先するかを表しています。上から順に進むと、調停申立てや金額確定よりも、相手方への明確な意思表示と到達証拠を先に確認する必要があることを読み取れます。

期限内対応の判断順序

相続開始と侵害認識の日を確認

最も早い起算点になり得る日を仮置きします。

1年以内に到達できるか

差出日ではなく、相手方に届くことを基準にします。

期限が近い
通知を先行

金額未確定でも権利行使の意思を明確にします。

余裕がある
調査と通知準備

財産資料を集めつつ、通知文と送付先を整えます。

次の一覧は、通知書に入れるべき基本要素をまとめています。左列は記載項目、右列はなぜ必要かを示しており、請求の相続、請求者、相手方、権利行使の意思を具体的に読み取れる内容にすることが重要です。

項目記載する理由
被相続人の氏名・死亡日どの相続についての請求か特定するため
請求者の氏名・立場遺留分権利者であることを示すため
相手方の氏名誰に対して請求するか明確にするため
遺言・遺贈・贈与等により遺留分が侵害されている旨請求原因を概括的に示すため
遺留分侵害額請求権を行使する明確な文言時効対策の中心になるため
金額は調査中である旨金額未確定でも権利行使するため
資料開示・協議申入れその後の交渉につなげるため

口頭、普通郵便、メール、メッセージでも意思表示自体が問題になり得ますが、後で「いつ、どの内容が、誰に届いたか」を証明しなければなりません。そのため、実務では配達証明付き内容証明郵便が多く使われます。

Section 05

遺留分侵害額請求の相手方・負担順序・金額算定

誰に請求するか、どの順序で負担するか、計算をどう進めるかを分けます。

次の比較は、受遺者と受贈者がいる場合の負担順序を整理したものです。請求先を誤ると反論されるため、左列の状況ごとに、右列の負担関係を読み取って相手方を検討する必要があります。

状況負担の考え方
受遺者と受贈者がいる原則として受遺者が先に負担します。
受遺者が複数いる目的価額の割合に応じて負担します。遺言者の別段の意思表示が問題になる場面があります。
受贈者が複数いる原則として後の贈与から順に負担します。
相手方が死亡している相続人調査、住所調査、当事者構成が必要になります。

次の一覧は、遺留分侵害額を試算するときの計算順序を示します。上から順番に確認することで、遺産総額だけでなく、生前贈与、債務、特別受益、相続債務まで反映する必要があることを読み取れます。

1

相続開始時の財産価額

預貯金、不動産、株式、事業用資産などを確認します。

基礎財産
2

一定の贈与を加算

相続人以外への贈与、相続人への特別受益など、算入範囲を検討します。

生前贈与
3

債務を控除

借入金、保証債務、未払税金などを控除対象として整理します。

控除
4

遺留分割合を掛ける

総体的遺留分割合と各人の法定相続分を使い、個別的遺留分を出します。

割合
5

既取得分等を調整

遺贈、特別受益、承継債務などを調整し、請求額を検討します。

調整

生前贈与の算入範囲では、相続人以外への贈与は原則として相続開始前1年以内が問題になり、損害を加えることを知っていた場合はそれ以前も問題になり得ます。相続人への特別受益に該当する贈与は、原則として相続開始前10年間のものが算入対象になります。

評価不動産評価は、固定資産評価額、路線価、公示価格、実勢価格、鑑定評価額のどれを参考にするかで金額が変わることがあります。ただし、評価の確定を待つことで1年の時効対策が遅れる点に注意が必要です。
Section 06

遺留分侵害額請求の調停・税務・請求後の管理

調停は話合いの場であり、税務期限と金銭債権の時効は別に進みます。

次の比較は、家庭裁判所の調停で必要になりやすい資料を整理したものです。左列の種類ごとに、右列の例を確認すると、身分関係、遺言、財産、債務、手続資料を分けて準備する必要が読み取れます。

種類
身分関係資料被相続人の出生時から死亡時までの戸籍、相続人全員の戸籍など
遺言関係資料遺言書写し、検認調書謄本の写しなど
遺産資料不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳写し、残高証明書、有価証券資料など
債務資料借入金、保証債務、未払税金、医療費、葬儀費用などの資料
手続資料申立書、写し、進行に関する照会回答書など

次の重要ポイントは、調停、相続税、請求後の回収を別々に管理する必要を示します。それぞれ目的が異なるため、調停が進んでいることだけで時効や税務期限が解決するとは読まないことが大切です。

調停

申立てだけでは通知にならない

調停は話合いの手続です。相手方へ請求権行使の意思表示を到達させる対応は別に必要です。

税務

相続税は10か月

未分割や遺留分紛争があっても申告期限は延びません。必要に応じて税理士と連携します。

回収

請求後の債権も管理

請求権行使後に発生した金銭債権は、支払合意、訴訟、強制執行などの管理が必要です。

未分割で相続税申告をした後、実際の分割や遺留分侵害額請求の確定により税額が変わる場合、修正申告や更正の請求が問題になります。更正の請求は、分割があったことを知った日の翌日から4か月以内とされています。

Section 07

遺留分侵害額請求の期限管理でよくある失敗

話合い・調停・金額未確定・相手方特定を理由に先送りしないことが重要です。

次の一覧は、期限管理で起こりやすい失敗をまとめたものです。各項目は、どのような思い込みが危険かを示しているため、自分の状況と照らし合わせて、通知や証拠化が遅れていないかを読み取ってください。

話合いに応じているから大丈夫

交渉中でも、明確な権利行使がなければ時効を主張される可能性があります。

調停を申し立てたから安心

調停申立てとは別に、相手方への意思表示を到達させる必要があります。

金額が分からないから待つ

財産評価が未了でも、請求権行使の意思表示は可能です。

遺言無効だけを争う

無効主張が認められなかった場合に備え、予備的通知を検討します。

差出日で期限を見る

重要なのは作成日や投函日ではなく、相手方への到達です。

相手方を一人と思い込む

受遺者・受贈者が複数いる場合や死亡している場合、通知先の整理が必要です。

2019年7月1日前に被相続人が亡くなっている場合は、現行の遺留分侵害額請求ではなく、改正前の遺留分減殺請求が問題になります。古い相続では、制度名、効果、調停の種類を確認する必要があります。

Section 08

遺留分侵害額請求の期限が迫るときの実務対応

時系列、通知、財産調査、合意書の順に整理します。

次の表は、期限が迫っているときに最初に記録する時系列を示します。左列の項目ごとに、右列の資料や日付を埋めることで、1年の起算点と10年の長期制限を保守的に読み取れます。

確認事項記録すべき内容
被相続人の死亡日戸籍、死亡診断書、除籍謄本などで確認
死亡を知った日連絡を受けた日、葬儀参列日など
遺言の存在を知った日遺言書写し、通知書、検認資料など
遺言の内容を知った日遺言書を実際に見た日、写しを受け取った日
生前贈与を知った日登記、通帳履歴、相手方説明、税務資料など
財産資料を入手した日資料名、入手元、入手日
相手方と交渉した日メール、メッセージ、議事録、録音メモなど
すでに送った通知内容、送付日、到達日、配達証明

次の一覧は、通知後に進める財産調査の対象を整理したものです。分野ごとに資料を分けて見ることで、請求額の試算に必要な資料と、後の調停・訴訟で証拠になりやすい資料を読み取れます。

戸籍と相続関係

戸籍一式、相続関係説明図、法定相続情報一覧図などを整理します。

身分関係

遺言と検認資料

公正証書遺言、自筆証書遺言、検認調書、遺言執行者通知を確認します。

遺言

財産と債務

登記、評価証明、名寄帳、通帳、残高証明、証券、債務資料を集めます。

財産評価

生前贈与

贈与契約書、振込記録、贈与税申告書、家族間の記録を確認します。

特別受益

次の表は、話合いで解決する場合の合意書に入れる項目をまとめています。支払条件、遅れた場合の処理、税務、清算の範囲を読み取れる内容にしておくと、後の紛争を抑えやすくなります。

項目実務上の意味
支払総額遺留分侵害額としていくら支払うか
支払期限一括払いか分割払いか
振込先支払方法を明確にする
遅延損害金不払い時の処理
期限の利益喪失分割払い不履行時に残額一括請求できるか
清算条項他に請求しない範囲を明確化する
税務処理相続税の修正申告や更正の請求、当事者間精算を検討する
強制執行認諾公正証書化する場合に検討する
Section 09

遺留分侵害額請求を受けた側の時効・金額・支払対応

請求された側も、時効完成の有無と金額の妥当性を整理します。

次の比較は、請求された側が最初に確認する事項をまとめています。左列を順に確認すると、請求者の権利、期限、通知の有効性、金額、支払方法を分けて読み取れます。

確認事項内容
死亡日と認識日被相続人の死亡日、請求者が死亡や遺言・贈与を知った日を確認する
通知の到達日請求通知がいつ、誰に、どの内容で届いたかを確認する
1年・10年の完成可能性時効援用を検討できるかを資料に基づき整理する
遺留分権利者性兄弟姉妹ではないか、相続欠格・廃除はないかを確認する
請求額の根拠財産評価、債務、生前贈与、既取得財産、負担順序を確認する
支払困難への対応分割払い、借入、不動産売却、期限の許与などを検討する

支払困難だからといって請求を無視すると、調停、訴訟、強制執行へ進むリスクがあります。現行法では金銭債権化されているため、不動産を受け取った側が現金を用意しにくい場合も、資料を整理し合理的な支払案を検討することが重要です。

一般情報時効援用や支払条件の見通しは、通知内容、認識時期、財産評価、相手方の人数で変わります。個別の対応方針は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
Section 10

遺留分侵害額請求の時効でよくある質問

個別判断になりやすい点を、一般的な制度説明として整理します。

Q1. 亡くなってから1年以内に裁判しなければなりませんか。

一般的には、1年以内に裁判を終わらせる必要はなく、民法1048条の期間内に遺留分侵害額請求権を行使する意思表示を相手方に到達させることが重要とされています。ただし、請求後の金銭債権の回収には別途時効が問題になるため、通知後も放置しないことが必要です。

Q2. 遺言書の内容をまだ見ていない場合、時効は進みますか。

一般的には、相続開始を知っていても、遺留分を侵害する遺贈・贈与を知らなければ、1年の起算点がまだ到来していないと主張できる可能性があります。ただし、遺言の概要や財産の大半が特定人物に移った事情を知っていたかで結論は変わります。

Q3. 金額が分からないまま通知してもよいですか。

一般的には、金額が未確定でも、遺留分侵害額請求権を行使する意思表示は可能とされています。通知では、金額は資料開示や評価後に確定する旨を記載できますが、権利行使の意思が曖昧にならないよう注意が必要です。

Q4. メールやメッセージで請求すれば足りますか。

一般的には、意思表示の形式自体は限定されていません。ただし、送信内容、到達時期、相手方の受領を後で証明できるかが問題になります。実務では、配達証明付き内容証明郵便など、証拠化しやすい方法が多く用いられます。

Q5. 相手が内容証明郵便を受け取らない場合はどうなりますか。

一般的には、意思表示は到達が原則です。ただし、相手方が正当な理由なく到達を妨げた場合には、通常到達すべき時に到達したものと扱われる制度が問題になることがあります。受取拒否、不在返戻、住所誤り、海外居住などで結論は変わります。

Q6. 遺言無効を主張している場合も遺留分侵害額請求を検討しますか。

一般的には、予備的な検討が必要になることがあります。遺言無効を争っている間に1年が経過し、後で遺言が有効と判断されると、遺留分侵害額請求が時効で争われる可能性があります。具体的な併用方法は専門的な判断が必要です。

Q7. 相続税申告が終わっていない場合、遺留分請求を待つべきですか。

一般的には、相続税申告期限は原則10か月であり、遺留分紛争が未解決でも延びません。税務申告と遺留分請求は並行して管理する必要があり、相続税が発生する可能性がある場合は税理士等への相談も必要です。

Q8. 兄弟姉妹にも遺留分はありますか。

一般的には、兄弟姉妹に遺留分はありません。民法1042条は、兄弟姉妹以外の相続人を遺留分の対象としています。ただし、相続人関係や代襲関係の確認は個別資料で行う必要があります。

Q9. 2019年6月に亡くなった相続は現行制度ですか。

一般的には、2019年7月1日より前に被相続人が亡くなった場合、改正前民法の遺留分減殺請求が問題になります。現行の遺留分侵害額請求とは効果が異なるため、古い相続では専門的な確認が必要です。

Q10. いつ専門家へ相談すべきですか。

一般的には、遺言書を見て取り分が少ないと感じた時点、生前贈与の疑いを知った時点、相手方から請求された時点で、早めの相談が望ましいとされています。特に死亡や遺言内容を知ってから6か月以上経過している場合は、準備期間が短くなりやすいです。

Section 11

遺留分侵害額請求の時効チェックリスト

請求する側と請求された側で、確認すべき資料と期限を分けて見ます。

次の比較は、請求する側と請求された側の確認事項を並べたものです。左右を見比べると、同じ時効問題でも、通知を出す側は到達証拠、受ける側は起算点と通知内容を重点的に読む必要があることが分かります。

請求する側請求された側
死亡日、死亡を知った日、遺言内容を知った日を記録する通知書の到達日と通知内容を確認する
1年期限と10年期限を仮設定する請求者がいつ相続開始と遺言・贈与を知ったか確認する
遺留分権利者に該当するか確認する請求者が遺留分権利者か確認する
相手方が受遺者・受贈者の誰か確認する請求額の算定根拠と負担順序を確認する
金額未確定でも通知が必要か検討する支払原資、分割払い、期限の許与を検討する
調停申立てとは別に意思表示を行う相続税の修正申告や更正の請求の要否を確認する
相続税申告期限10か月を確認する弁護士・税理士等への相談を検討する

時効対策は、最終的に「通知」「到達」「証拠化」に集約されます。期限内に相手方へ権利行使の意思表示を到達させ、到達日と内容を証拠として残し、その後に金額、税務、支払条件を整理する流れで管理します。

Reference

この記事の参考情報源

法令・裁判所資料

  • e-Gov法令検索「民法」
  • 裁判所「遺留分侵害額の請求調停」
  • 最高裁昭和57年11月12日第二小法廷判決・民集36巻11号2193頁

制度改正・税務資料

  • 法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について」
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
  • 国税庁「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」