2σ Guide

デジタル遺産を遺言書に
安全に記載する注意点

パスワードや秘密鍵を本文に書かず、財産の帰属、財産目録、アクセス手順書、遺言執行者の権限を分けて設計するための実務整理です。

3層 本文・目録・手順書
7類型 財産・契約・データ等
年1回 主要変更時に更新
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デジタル遺産を遺言書に 安全に記載する注意点

パスワードや秘密鍵を本文に書かず、財産の帰属、財産目録、アクセス手順書、遺言執行者の権限を分けて設計するための実務整理です。

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デジタル遺産を遺言書に 安全に記載する注意点
パスワードや秘密鍵を本文に書かず、財産の帰属、財産目録、アクセス手順書、遺言執行者の権限を分けて設計するための実務整理です。
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  • デジタル遺産を遺言書に 安全に記載する注意点
  • パスワードや秘密鍵を本文に書かず、財産の帰属、財産目録、アクセス手順書、遺言執行者の権限を分けて設計するための実務整理です。

POINT 1

  • デジタル遺産を遺言書に記載する場合の全体像
  • 秘密情報を本文に書かず、帰属、目録、手順を分けて設計します。
  • 遺言書は権利と権限、秘密情報は別管理
  • 遺言書本文
  • 財産目録

POINT 2

  • デジタル遺産を遺言書で特定するための分類
  • 財産、アカウント、データ、アクセス手段を同じものとして扱わないことが出発点です。
  • 権利として帰属を指定するもの
  • 各社制度に従うもの
  • 付言事項に向くもの

POINT 3

  • デジタル遺産を遺言書に書く方式と保管の注意点
  • 1. 方式を選ぶ:争いが予想される、資産価値が大きい、オンライン事業がある場合は、公正証書遺言を優先的に検討します。
  • 2. 本文と目録を分ける:本文には帰属と権限を書き、財産目録に資産特定情報を置き、秘密情報は別の安全管理へ移します。
  • 3. 検認や保管制度を確認する:自筆証書遺言では検認が必要になる場合があります。
  • 4. 主要変更ごとに見直す:スマートフォン、メール、ウォレット、二要素認証、規約、資産価格が変わるため、少なくとも年1回の更新が現実的です。

POINT 4

  • デジタル遺産を遺言書に記載する類型別の書き方
  • 暗号資産、ネット金融、SNS、収益アカウント、NFT、継続課金を分けて記載します。
  • デジタル遺産の書き方は、類型ごとに「財産として取得させるもの」と「事業者に申請するもの」を分ける必要があります。
  • 各項目の文言から、権利帰属、処理方針、資料取得、規約遵守を分けて読むことが重要です。
  • 交換業者名、口座識別情報、BTCやETHなどの資産内容、換金または承継方針、残高証明や取引履歴の取得権限を書きます。

POINT 5

  • デジタル遺産の財産目録とアクセス手順書の作り方
  • 1. 権利の帰属や執行権限か:取得者、遺言執行者、換価、解約、移管、資料取得の権限なら遺言書本文に置きます。
  • 2. 資産を特定する入口か:サービス名、識別情報の一部、処理方針、必要資料なら財産目録に置きます。
  • 3. 秘密情報そのものか:パスワード、秘密鍵、復元フレーズ、二要素認証コードなら遺言書にも財産目録にも書かず、別管理します。
  • 4. 保管場所と開封条件を残す:中身ではなく、保管場所、開封できる人、記録保存、専門家関与を残します。

POINT 6

  • デジタル遺産を遺言書で実行する遺言執行者と税務設計
  • 暗号資産の評価資料不足
  • オンライン収益の未収金
  • ブログ、動画、EC、アフィリエイト、オンライン講座では、売上、費用、請求書、支払調書、会計データが必要です。

POINT 7

  • デジタル遺産を遺言書に入れる標準条項と作成手順
  • 1. デジタル遺産を棚卸しする
  • 2. 財産とアカウントを分ける
  • 3. 遺言執行者を決める:暗号資産、オンライン事業、SNS、クラウド、税務資料を扱える人を選び、必要に応じて専門家を組み合わせます。
  • 4. 本文と財産目録を作る:誰に何を取得させるか、遺言執行者に何をさせるかを書き、財産目録で具体化します。
  • 5. アクセス手順書を作る:パスワード管理、秘密鍵、二要素認証、端末、連絡先、優先順位を整理し、暗号化、封緘、分割保管、専門家保管を検討します。
  • 6. 公正証書化または法務局保管を検討する:争いが予想される場合、価値が大きい場合、暗号資産やオンライン事業がある場合は、公正証書遺言を優先的に検討します。
  • 7. 定期更新する:暗号資産の売買、メール変更、スマートフォン機種変更、結婚、離婚、事業開始、税制や規約変更のときに見直します。

POINT 8

  • デジタル遺産を遺言書に書く前のチェックリストとFAQ
  • 本文、財産目録、アクセス手順書、専門家連携を最終確認します。
  • よくある質問
  • 専門家の役割は、相続法、税務、登記、公証、情報セキュリティ、プラットフォーム実務で分かれます。
  • 最後の確認では、本文、財産目録、アクセス手順書を別々に点検します。

まとめ

  • デジタル遺産を遺言書に 安全に記載する注意点
  • デジタル遺産を遺言書に記載する場合の全体像:秘密情報を本文に書かず、帰属、目録、手順を分けて設計します。
  • デジタル遺産を遺言書で特定するための分類:財産、アカウント、データ、アクセス手段を同じものとして扱わないことが出発点です。
  • デジタル遺産を遺言書に書く方式と保管の注意点:方式の選択、財産目録、法務局保管、公正証書化を一体で確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

デジタル遺産を遺言書に記載する場合の全体像

秘密情報を本文に書かず、帰属、目録、手順を分けて設計します。

デジタル遺産を遺言書に記載する場合は、IDやパスワードをそのまま残す発想から離れることが出発点です。遺言書は相続開始後に複数の関係者が確認する可能性があり、秘密鍵、復元フレーズ、二要素認証コードまで書くと、漏えい、改ざん、無断アクセス、利用規約違反、相続人間の疑いを招きます。

このページの中心は三層構造です。どの情報を遺言書に置き、どの情報を財産目録に置き、どの情報を別管理するかを分けることが重要です。次の重要ポイントからは、秘密情報を書き込むのではなく、権利の帰属、執行権限、保管場所の役割分担を読み取ってください。

遺言書は権利と権限、秘密情報は別管理

遺言書には財産の帰属、遺言執行者、処分方針、必要な権限を書きます。財産目録にはデジタル資産を特定できる情報を書きますが、パスワード、秘密鍵、復元フレーズ、二要素認証手段の中身は書かず、アクセス手順書や安全な保管方法に分離します。

三層構造を実務に移すと、書く場所ごとに目的が変わります。この比較一覧は、どの文書が何を担うかを示すもので、秘密情報の所在と中身を混同しないために重要です。左から順に、法的効果、発見可能性、実務上の操作という役割の違いを確認してください。

第1層

遺言書本文

誰に取得させるか、誰を遺言執行者にするか、換価、解約、移管、削除申請、資料取得の権限を定めます。

第2層

財産目録

サービス名、事業者名、口座識別情報、財産内容、処理方針、アクセス手順書の保管場所を整理します。秘密情報の中身は入れません。

第3層

アクセス手順書

パスワード管理、秘密鍵保管、二要素認証端末、スマートフォン、専門家連絡先、開封条件を安全に管理します。

基準日このページは2026年5月21日時点の制度、各社実務、税務情報を前提に整理しています。電子的な遺言制度をめぐる法改正の動きがあっても、デジタル遺産の特定、秘密情報管理、遺言執行者の権限、税務資料保存という基本論点は残ります。
Section 01

デジタル遺産を遺言書で特定するための分類

財産、アカウント、データ、アクセス手段を同じものとして扱わないことが出発点です。

デジタル遺産は民法や相続税法に単一の定義がある言葉ではありません。財産的価値、契約上の地位、利用権、データ、記録、アカウント、収益源、知的財産、アクセス手段が重なっているため、遺言書では抽象的に「一切」と書くだけでは足りない場合があります。

次の分類表は、デジタル遺産を相続手続で見つけるための入口を示しています。類型ごとに、相続財産として扱いやすいもの、規約に左右されるもの、秘密情報として別管理すべきものが異なります。左の類型から、何を特定し、何を本文に書かないかを読み取ってください。

類型具体例遺言書での注意点
金銭的価値を持つ資産暗号資産、電子マネー残高、ポイント、ネット証券、ネット銀行、オンライン決済残高財産目録で特定し、税務評価、換金、承継方法を明確にします。
契約アカウントGoogle、Apple、Meta、X、Amazon、楽天、メール、クラウド、サブスクリプション承継可否は利用規約や各社制度に左右されます。
データ、コンテンツ写真、動画、メール、ブログ記事、SNS投稿、クラウド文書相続財産になるものと、閲覧や削除の権限が制限されるものを分けます。
収益アカウント動画収益、広告収益、アフィリエイト、ECショップ、ドメイン、サーバー、アプリ事業承継、名義変更、未収収益、知的財産、個人情報を整理します。
知的財産著作権、商標、特許、ソースコード、NFT関連コンテンツ権利そのものと、プラットフォーム上の表示、ウォレット、契約を分けます。
アクセス手段パスワード、秘密鍵、復元フレーズ、二要素認証端末、パスキー、ハードウェアウォレット遺言書に直接書かず、別管理が原則です。
負債、継続課金有料クラウド、サブスクリプション、レンタルサーバー、アプリ課金死後も課金が続くリスクを解約、継続、名義変更に分けます。

アカウントと財産を分ける視点も欠かせません。この比較一覧は、同じサービス内にあっても、相続可能な財産、規約上の手続、保存や削除の希望が分かれることを示します。読者は、遺言書で「ログインできる」と断定せず、申請権限や処理方針へ分解する点を確認してください。

財産

権利として帰属を指定するもの

暗号資産、日本円残高、未収収益、著作権などは、相続または遺贈の対象として特定しやすい領域です。

手続

各社制度に従うもの

SNS、メール、クラウド、AppleやGoogleの死後アカウント制度などは、各社の本人確認、規約、対象データの制限を前提に申請します。

希望

付言事項に向くもの

写真を共有してほしい、追悼化してほしい、仕事用データは慎重に扱ってほしいといった希望は、法的効果のある本文と分けます。

Section 02

デジタル遺産を遺言書に書く方式と保管の注意点

方式の選択、財産目録、法務局保管、公正証書化を一体で確認します。

デジタル遺産ほど、遺言の方式違反が後から大きな問題になります。自筆証書遺言、公正証書遺言、法務局の保管制度は、秘密情報を書かないという原則を共有しつつ、形式、保管、検認、紛争予防の面で違いがあります。

次の比較表は、遺言方式ごとの実務上の利点と注意点を整理したものです。どの方式でも秘密情報を本文に入れないことは同じであり、表では特に、財産目録の署名押印、検認の有無、内容面の相談先を読み取ってください。

方式主な利点デジタル遺産での注意点
自筆証書遺言本文、日付、氏名を自書し、押印する方式です。財産目録はパソコン作成もできます。財産目録の各ページに署名押印が必要です。別紙が多くなりやすいため、ページ番号、差し替え防止、署名押印漏れに注意します。
公正証書遺言公証人が作成し、原本が公証役場に保管され、家庭裁判所の検認を要しません。公証人や証人が関与する文書にも秘密鍵や復元フレーズを書かない方針は変わりません。
法務局保管制度自筆証書遺言の紛失、消失、改ざん、隠匿リスクを軽減し、通知制度もあります。法務局は内容の相談に応じません。形式面だけでなく、法律、税務、情報セキュリティの設計が必要です。
電子的な制度の動き保管証書遺言などの制度創設が議論されています。2026年5月21日時点では現行方式に従うことが前提です。将来の制度でも秘密情報管理と執行権限の論点は残ります。

遺言方式を選ぶときは、紛失や改ざんの防止だけでなく、相続人が実行できるかを見ます。この時系列は、方式を決めてから手順書を更新するまでの順番を示すものです。順番に沿って、形式確認、内容設計、秘密情報管理を別々に進めることが重要です。

最初

方式を選ぶ

争いが予想される、資産価値が大きい、オンライン事業がある場合は、公正証書遺言を優先的に検討します。

作成時

本文と目録を分ける

本文には帰属と権限を書き、財産目録に資産特定情報を置き、秘密情報は別の安全管理へ移します。

保管時

検認や保管制度を確認する

自筆証書遺言では検認が必要になる場合があります。公正証書遺言や法務局保管制度では検認不要の扱いも確認します。

更新時

主要変更ごとに見直す

スマートフォン、メール、ウォレット、二要素認証、規約、資産価格が変わるため、少なくとも年1回の更新が現実的です。

Section 03

デジタル遺産を遺言書に記載する類型別の書き方

暗号資産、ネット金融、SNS、収益アカウント、NFT、継続課金を分けて記載します。

デジタル遺産の書き方は、類型ごとに「財産として取得させるもの」と「事業者に申請するもの」を分ける必要があります。暗号資産、ネット金融、SNS、収益アカウント、著作権、NFT、ゲーム、継続課金では、遺言書に入れるべき情報と入れてはいけない情報が異なります。

次の一覧は、主要なデジタル遺産ごとに、遺言書へ入れる中心事項を並べたものです。各項目の文言から、権利帰属、処理方針、資料取得、規約遵守を分けて読むことが重要です。

01

暗号資産

交換業者名、口座識別情報、BTCやETHなどの資産内容、換金または承継方針、残高証明や取引履歴の取得権限を書きます。自己管理ウォレットの秘密鍵と復元フレーズは本文に書きません。

帰属秘密情報別管理
02

ネット銀行、ネット証券、オンライン決済

金融機関名、口座種別、口座番号の一部、登録メールの一部、契約種類、認証端末の保管場所を整理し、残高照会、解約、払戻し、移管の権限を書きます。

金融資産資料取得
03

電子マネー、ポイント、マイル

サービスごとの規約により、死亡時失効、譲渡禁止、家族移行、相続手続可が分かれます。財産的価値が大きいものを優先して一覧化します。

規約確認価値重視
04

SNS、メール、クラウド

写真、動画、文書、投稿、メールの保存、追悼化、削除、データ取得申請を、各社制度と第三者のプライバシーに配慮して書きます。

データ申請権限
05

ブログ、動画、広告収益、EC

ドメイン、サーバー、著作物、未収収益、顧客データ、個人情報、税務資料を含め、事業継続、売却、閉鎖、分配の方針を書きます。

事業資産未収収益
06

著作権、写真、動画、ソースコード

著作権の帰属、保存場所、公開、非公開、削除、収益化、共同著作者や勤務先との契約、肖像権への配慮を分けます。

知的財産契約確認
07

NFT、ゲーム、オンラインアイテム

NFTはトークン、マーケットプレイス、対象コンテンツ、ライセンス、税務資料を分けます。ゲームアカウントは譲渡や相続が規約で制限される前提で書きます。

NFT規約制限
08

サブスクリプション、継続課金

解約すべき契約、継続すべき契約、事業上必要な契約を分け、未払金、請求確認、名義変更を権限に含めます。

負債継続課金

文例を入れる場合も、秘密情報を書かない設計が中心です。次の比較表は、条項に含める言葉と避ける言葉を対比したものです。右列はそのまま断定的な法律助言ではなく、一般的な作成方針として読み取ってください。

場面入れる文言の方向性避ける文言
暗号資産交換業者死亡通知、残高証明、取引履歴、本人確認、換価、移管、解約、税務資料取得の権限秘密鍵、復元フレーズ、PIN、二要素認証コードの直書き
SNS、クラウド各サービスの規約と法令に従い、追悼化、削除、データ取得、解約を申請する権限全アカウントへの無制限ログイン許可
収益アカウント未収収益の受領、契約名義変更、管理者変更、個人情報保護措置、税務資料取得の権限家族の一人にすべて任せるだけの不透明な記載
著作物、NFT権利を有する範囲で著作権その他財産的権利を取得させる記載NFT保有だけで著作権も当然に移るという記載
継続課金契約内容確認、解約、名義変更、未払金確認、資料取得の権限税務資料や事業資料を確認する前の一括削除命令
Section 04

デジタル遺産の財産目録とアクセス手順書の作り方

資産を見つける情報と秘密情報を分け、復元不能と漏えいを防ぎます。

財産目録は、見つからないデジタル資産を相続人や遺言執行者が発見するための入口です。紙の通帳や権利証のような物理的手がかりが乏しいため、サービス名、識別情報、処理方針、必要資料、手順書の所在を整理することが重要です。

次の表は、財産目録に入れる項目と書き方を整理したものです。列ごとに、資産の発見、本人確認、税務資料、秘密情報の分離という役割が違います。パスワードの中身ではなく、調査の入口が書かれているかを確認してください。

項目書き方
分類暗号資産、ネット銀行、SNS、クラウド、ドメインなどに分けます。
サービス名と事業者名正式名称、会社名、国、問い合わせ先の種別を残します。
口座識別情報顧客番号、契約番号、登録メールアドレスの一部など、本人確認に役立つ範囲にします。
名義と財産内容個人名義、法人名義、屋号、共同名義を分け、BTC、日本円残高、著作権、未収広告収益などを書きます。
推定価値と基準日直近の概算と基準日を残し、変動資産では後日の比較ができるようにします。
承継先と処理方針誰に取得させるか、継続、解約、換金、保存、削除のどれかを明確にします。
必要資料残高証明、取引履歴、契約書、請求書、税務資料を取得できるようにします。
手順書の保管場所アクセス手順書がどこにあるかだけを書き、秘密情報の中身は書かないと明記します。

アクセス手順書は、遺言書とは違って実務上の操作情報を整理するものです。この一覧は、相続開始後に何がないと手続が止まるかを示します。上から順に、端末、認証、保管、連絡先、優先順位を確認し、無断ログインや勝手な投稿を防ぐ読み方をしてください。

項目内容
デバイススマートフォン、PC、タブレット、ハードウェアウォレットの所在を整理します。
認証手段二要素認証アプリ、SMS、パスキー、セキュリティキーを確認します。
パスワード管理管理ツール名、緊急アクセス方法、マスターパスワードの扱いを設計します。
秘密鍵、復元フレーズ保管場所、封筒番号、開封条件、分割保管の有無を整理します。
連絡先と窓口弁護士、税理士、司法書士、情報管理担当者、事業者窓口を残します。
優先順位と禁止事項すぐ止める契約、継続する事業、価格変動資産、無断ログイン禁止を明確にします。

秘密情報の保管方法は、安全性、発見しやすさ、更新のしやすさのバランスで選びます。次の比較表は、各方法の長所と注意点を並べたものです。読者は、ひとつの方法に頼り切らず、盗難、先取り、復元不能、費用のリスクを読み取ってください。

方法長所注意点
耐火金庫家族が見つけやすい。生前の盗難や、相続人による先取りに注意します。
貸金庫物理的安全性が高い。死後の開扉手続が必要です。
封緘書面改ざんの痕跡が分かりやすい。保管場所と開封条件を明確にします。
パスワード管理ツール更新しやすい。緊急アクセス機能とマスターパスワード管理が必要です。
専門家保管紛争時に中立性が高い。費用、責任範囲、保管契約を確認します。
分割保管一人の不正取得を防ぎやすい。復元不能にならない設計が必要です。

遺言書、財産目録、アクセス手順書の判断は、どこに何を書くかを順番に分けると整理しやすくなります。次の判断の流れは、情報の置き場所を決めるためのものです。上から順に、法的効果、特定情報、秘密情報の順で振り分ける点を確認してください。

情報の置き場所を分ける判断の流れ

権利の帰属や執行権限か

取得者、遺言執行者、換価、解約、移管、資料取得の権限なら遺言書本文に置きます。

資産を特定する入口か

サービス名、識別情報の一部、処理方針、必要資料なら財産目録に置きます。

秘密情報そのものか

パスワード、秘密鍵、復元フレーズ、二要素認証コードなら遺言書にも財産目録にも書かず、別管理します。

保管場所と開封条件を残す

中身ではなく、保管場所、開封できる人、記録保存、専門家関与を残します。

Section 05

デジタル遺産を遺言書で実行する遺言執行者と税務設計

遺言執行者の権限、資料取得、相続税、準確定申告、紛争予防をつなげます。

デジタル遺産では、相続人が単独でログインしたり移転したりすると、使い込み、削除、価格変動、情報漏えい、無断アクセス、利用規約違反の疑いが生じやすくなります。遺言執行者には、実行に必要な権限を具体的に与える必要があります。

次の表は、遺言執行者に与えるべき権限を実務作業ごとに整理しています。項目ごとに、事業者対応、証拠資料、資産保全、税務、プライバシー配慮が分かれている点を読み取ってください。

権限の分野具体的に書く内容
事業者対応各サービス事業者、金融機関、暗号資産交換業者、決済事業者、通信事業者、レンタルサーバー、ドメイン、広告、クラウドへの死亡通知、照会、必要書類提出。
資料取得残高証明、取引履歴、契約内容、請求書、収益明細、税務資料、ログ、管理画面情報の取得。
処理手続解約、払戻し、換価、移管、名義変更、管理者変更、追悼化、削除申請、公開停止、保存措置。
価格変動資産相続財産の保全に必要な換価または移管。
税務相続税申告、準確定申告、所得税申告、消費税申告に必要な資料取得と税理士への提供。
秘密情報アクセス手順書の保管場所確認、封緘書面の開封、専門家への引渡し。
第三者保護プライバシー、通信の秘密、営業秘密、個人情報に配慮した保存、削除、開示制限。

税務では、財産を見つけることと評価資料を残すことが不可欠です。この重要ポイントは、デジタル遺産が相続税、準確定申告、所得税、未収収益にまたがることを示します。相続税の基礎控除と10か月期限だけでなく、暗号資産やオンライン収益の資料保存を読み取ってください。

相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数

暗号資産、ネット証券、オンライン決済残高、未収広告収益、著作権収入、NFT、事業価値などは課税対象になり得ます。相続税申告は原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。

申告漏れや紛争は、資産そのものよりも資料不足から起こることがあります。次の注意点一覧は、税務や相続人間の争いにつながりやすい要素をまとめたものです。各項目から、遺言書に資料取得権限と記録保存を入れる必要性を読み取ってください。

暗号資産の評価資料不足

課税時期の取引価格、残高証明、取得価額、取引履歴、ウォレット移転履歴がないと、相続税や換金時の所得税の整理が難しくなります。

オンライン収益の未収金

ブログ、動画、EC、アフィリエイト、オンライン講座では、売上、費用、請求書、支払調書、会計データが必要です。

相続人の先行ログイン

誰がいつログインし、何を移転したかが不明になると、返還請求、損害賠償、刑事上の問題、税務上の問題に発展する可能性があります。

遺留分と価格変動

暗号資産やオンライン事業の価値が大きい場合、特定相続人への集中承継は遺留分や不公平感の争点になりやすくなります。

思い出データと秘密情報の混在

家族写真と仕事上の秘密、第三者との通信、医療情報、顧客情報が同じアカウント内にある場合は、選別して共有範囲を定める必要があります。

Section 06

デジタル遺産を遺言書に入れる標準条項と作成手順

標準条項、作成順序、失敗例を並べて、実行できる遺言へ整えます。

標準条項は、総括条項、秘密情報の非記載、アクセス手順書の所在、遺言執行者の権限、法令・規約遵守、換価、付言事項に分けると整理しやすくなります。条項名ごとに役割を分けることで、家族が読んだときに何を実行すべきかが明確になります。

次の比較表は、標準条項の役割と書き方の方向性を示します。左列の条項を、権利、秘密情報、実務、税務、感情面の説明に分けて読むことで、文章の重複や過不足を防げます。

条項書く内容の方向性
総括条項暗号資産、電子マネー、オンライン金融口座、クラウドデータ、SNS、メール、ウェブサイト、ドメイン、広告収益、著作権、NFTなどを、財産目録に従って相続または遺贈させる。
秘密情報を記載しない条項パスワード、秘密鍵、復元フレーズ、二要素認証コード、パスキー、セキュリティキーの具体的内容は、遺言書や財産目録に記載しない。
アクセス手順書の所在条項自宅耐火金庫内の封緘封筒など、アクセス手順書の保管場所と開封できる人を明記する。
遺言執行者の権限条項死亡通知、残高照会、契約内容照会、取引履歴、解約、払戻し、換価、移管、名義変更、追悼化、削除申請、税務資料取得の権限を明記する。
法令、規約遵守条項法令、利用規約、本人確認、個人情報保護、通信の秘密、第三者のプライバシー、営業秘密、知的財産権を尊重する。
換価条項暗号資産、NFT、外国為替、オンライン証券など価格変動が大きい資産について、必要がある場合に相当な方法で換価し代金を管理できる。
付言事項家族の思い出の共有、仕事上の秘密や第三者の通信への配慮、遺言執行者の指示に従う希望を伝える。

作成手順は、棚卸しから更新までを飛ばさず進めることが大切です。次の時系列は、作業の順番を表します。上から順に、資産の発見、分類、執行者、文書化、保管、方式、更新の流れを読み取ってください。

ステップ1

デジタル遺産を棚卸しする

ネット銀行、ネット証券、暗号資産、決済残高、広告、EC、クラウド、ドメイン、データ、知的財産、認証手段、負債、関係者を洗い出します。

ステップ2

財産とアカウントを分ける

暗号資産や預金は帰属指定、SNSの追悼化や削除は規約上の申請、写真や動画は著作権、保存データ、家族共有の希望に分けます。

ステップ3

遺言執行者を決める

暗号資産、オンライン事業、SNS、クラウド、税務資料を扱える人を選び、必要に応じて専門家を組み合わせます。

ステップ4

本文と財産目録を作る

誰に何を取得させるか、遺言執行者に何をさせるかを書き、財産目録で具体化します。秘密情報は書きません。

ステップ5

アクセス手順書を作る

パスワード管理、秘密鍵、二要素認証、端末、連絡先、優先順位を整理し、暗号化、封緘、分割保管、専門家保管を検討します。

ステップ6

公正証書化または法務局保管を検討する

争いが予想される場合、価値が大きい場合、暗号資産やオンライン事業がある場合は、公正証書遺言を優先的に検討します。

ステップ7

定期更新する

暗号資産の売買、メール変更、スマートフォン機種変更、結婚、離婚、事業開始、税制や規約変更のときに見直します。

失敗例は、秘密情報の直書き、資料の削除、先行ログイン、規約上の承継不能に集中します。次の注意点一覧は、後から取り返しにくい失敗を示すものです。各項目から、秘密情報を別管理し、記録を残し、事業者手続に分解する必要性を読み取ってください。

秘密鍵が失われた

暗号資産の存在だけを書いても、自己管理ウォレットの秘密鍵や復元フレーズが不明なら回収不能になることがあります。

パスワードを複数人が見た

遺言書にパスワードを書くと、誰がログインしたか分からなくなり、疑いが残ります。

SNS削除で税務資料も消えた

ブログ、SNS、クラウド、広告アカウントをすぐ削除すると、未収収益、経費、請求書、権利資料が失われることがあります。

相続人の一人が先に処分した

暗号資産やオンライン決済残高は物理的な通帳なしに移転できるため、他の相続人から使い込みを疑われやすくなります。

アカウント承継ができなかった

遺言書にアカウントを相続させると書いても、規約上ログインや譲渡が認められない場合があります。

Section 07

デジタル遺産を遺言書に書く前のチェックリストとFAQ

本文、財産目録、アクセス手順書、専門家連携を最終確認します。

専門家の役割は、相続法、税務、登記、公証、情報セキュリティ、プラットフォーム実務で分かれます。デジタル遺産は単一の専門家だけで完結しないことが多いため、どの論点を誰に確認するかを決める必要があります。

次の表は、専門職ごとの主な役割を整理したものです。左列から担当分野を確認し、右列から遺言書、財産目録、税務資料、データ保全のどこで関与するかを読み取ってください。

専門職主な役割
弁護士遺言内容の法的設計、遺留分、相続紛争、使い込み疑い、交渉、調停、審判、訴訟、遺言執行。
司法書士相続登記、戸籍収集、登記用書類、裁判所提出書類作成、自筆証書遺言の形式面確認支援。
税理士相続税申告、暗号資産評価、オンライン収益、準確定申告、税務調査対応。
行政書士紛争、税務、登記申請を除く範囲での書類作成、遺言作成支援、遺産分割協議書作成。
公証人公正証書遺言の作成と中立公正な公証事務。
遺言執行者遺言内容の実現、事業者対応、資料取得、解約、換価、移管、削除申請。
信託銀行等遺言信託、遺言書作成相談、保管、執行支援。
公認会計士、中小企業診断士オンライン事業を含む事業承継、財務分析、企業価値評価、経営改善。
弁理士特許、商標、知的財産の相続、特許庁手続。
情報セキュリティ専門家秘密鍵、パスワード管理、二要素認証、データ保全、ログ確認。

最後の確認では、本文、財産目録、アクセス手順書を別々に点検します。この比較表は、作成後に見るべき項目を文書ごとに整理したものです。各行から、誰に何を渡すか、何を残すか、何を秘密にするかを確認してください。

確認対象主なチェック項目
遺言書本文総括条項、取得者、資産区分、各社規約に従う書き方、遺言執行者、具体的権限、秘密情報の非記載、税務資料取得権限、遺留分への配慮。
財産目録サービス名、事業者名、名義、識別情報、登録メールの一部、財産内容、概算価値、基準日、承継先、処理方針、手順書の保管場所、署名押印。
アクセス手順書パスワード管理ツール、二要素認証端末、スマートフォン解約時期、秘密鍵、復元フレーズ、ハードウェアウォレット、停止契約、継続事業、専門家連絡先、開封条件、年1回更新。

よくある質問

遺言書にパスワードを書いてはいけませんか

一般的には、遺言書にパスワード、秘密鍵、復元フレーズ、二要素認証コードを直接書かない方がよいとされています。遺言書は相続開始後に複数人が見る可能性があり、漏えい時の被害が大きいからです。ただし、保管方法や家族関係、資産内容によって設計は変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士、税理士、情報セキュリティ専門家などへ相談する必要があります。

デジタル遺産一切を配偶者に相続させると書けば十分ですか

一般的には、それだけでは不十分になりやすいとされています。暗号資産、SNS、クラウドデータ、著作権、収益アカウント、電子マネー、サブスクリプションは性質が異なります。ただし、財産構成や家族関係で必要な記載は変わります。具体的には、総括条項に加えて別紙財産目録で具体化し、専門家に確認する必要があります。

SNSアカウントは相続できますか

一般的には、相続財産としてのデータや著作権と、アカウント利用契約やログイン権限は分けて考える必要があります。多くのプラットフォームは、死後アカウント、追悼化、削除、データ取得について独自の手続を設けています。具体的な見通しは、サービス規約、本人確認、データ内容によって変わるため、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

暗号資産は相続税の対象になりますか

一般的には、暗号資産を相続や遺贈により取得した場合、相続税の課税対象になり得るとされています。評価資料、残高証明、取引履歴、取得価額資料を残すことが重要です。ただし、取引所保管か自己管理ウォレットか、活発な市場の有無などで確認資料は変わります。具体的な税務判断は税理士等へ相談する必要があります。

公正証書遺言にすれば秘密鍵を書いても安全ですか

一般的には、公正証書遺言でも秘密鍵や復元フレーズを記載することは避けるべきとされています。公正証書遺言には原本保管や検認不要という利点がありますが、秘密情報を文書に入れるリスクは残ります。具体的な保管方法は、資産内容や相続人関係に応じて専門家へ相談する必要があります。

法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すれば内容も保証されますか

一般的には、同制度は保管や形式面の確認に関する制度であり、遺言内容の適切性まで保証するものではないとされています。デジタル遺産の分配、遺留分、税務、規約対応は内容面の検討が必要です。具体的には、法律、税務、情報管理の専門家へ相談する必要があります。

デジタル遺産の遺言はどの専門家に相談すべきですか

一般的には、争いがある、または争いが予想される場合は弁護士、相続税が関係する場合は税理士、不動産や登記関係がある場合は司法書士、公正証書遺言では公証人、暗号資産やシステム管理が複雑な場合は情報セキュリティ専門家の関与が考えられます。ただし、必要な専門家は資産内容や相続人関係によって変わります。具体的な進め方は、資料を整理したうえで複数の専門家に確認する必要があります。

Reference

参考資料

公的機関、裁判所、税務資料

  • 法務省「遺言書の様式等についての注意事項」
  • 政府広報オンライン「遺言書の基礎知識」
  • 日本公証人連合会「遺言」
  • 裁判所「遺言書の検認」
  • 裁判所「遺言執行者の選任」
  • 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて FAQ」
  • 国税庁「相続税がかかる場合」
  • 国税庁「相続税の申告と納税」

主要プラットフォーム、知的財産、制度動向

  • Google Account Help「About Inactive Account Manager」
  • Apple Support「How to add a Legacy Contact for your Apple Account」
  • Apple Support「How to request access to a deceased family member's Apple account」
  • X Help Center「How to contact X about a deceased family member's account」
  • Facebook Help Center「What will happen to my Facebook account if I pass away?」
  • 法務省「第221回国会提出主要法律案」
  • 内閣法制局「民法等の一部を改正する法律案」
  • 公益社団法人著作権情報センター「著作権は永遠に保護されるのですか」