2σ Guide

信託契約書に記載すべき
内容と条項の具体例

相続対策、認知症対策、不動産管理、事業承継で使う信託契約書について、標準構成、条項例、税務と登記、専門職確認を一般情報として整理します。

29項目主要条項を体系化
18段階実務上の作成手順
年1回以上会計報告の目安
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信託契約書に記載すべき 内容と条項の具体例

相続 対策、認知症対策、不動産管理、事業承継で使う信託契約書について、標準構成、条項例、税務と登記、専門職確認を一般情報として整理します。

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信託契約書に記載すべき 内容と条項の具体例
相続 対策、認知症対策、不動産管理、事業承継で使う信託契約書について、標準構成、条項例、税務と登記、専門職確認を一般情報として整理します。
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  • 信託契約書に記載すべき 内容と条項の具体例
  • 相続 対策、認知症対策、不動産管理、事業承継で使う信託契約書について、標準構成、条項例、税務と登記、専門職確認を一般情報として整理します。

POINT 1

  • 要旨
  • 主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。
  • 信託契約書は財産管理の設計図です
  • 次の重要ポイントは、信託契約書をひな型の穴埋めで終わらせない理由を表します。
  • なぜ重要かというと、契約書の一文が受託者の権限、税務、登記、金融機関審査、相続人への説明を左右するためです。

POINT 2

  • 1. 信託契約書とは何か
  • 主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。
  • 相続対策で使われる信託は、一般に「家族信託」または「民事信託」と呼ばれることがあるが、法律上の基本構造は信託法上の信託です。
  • 相続対策で信託契約書を作る典型例は、次のような場面です。
  • なぜ重要かというと、文章だけでは違いが見えにくい条件、役割、注意点を一度に確認できるためです。

POINT 3

  • 2. 用語の定義
  • 主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。
  • 信託契約書では、法律用語と家族内の日常用語が混在しやすい。
  • 読者が最初に理解すべき基本用語は、次のとおりです。
  • なぜ重要かというと、文章だけでは違いが見えにくい条件、役割、注意点を一度に確認できるためです。

POINT 4

  • 3. 信託契約書作成の基本原則
  • 主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。
  • 3.1 目的から逆算する
  • 3.2 財産を特定する
  • 3.3 受託者の権限と制限を同時に書く

POINT 5

  • 4. 信託契約書の標準構成
  • 1. 信託目的を特定:生活支援、承継、事業、障害者支援などを分けます。
  • 2. 財産の種類を確認:預金、不動産、株式、保険、知的財産で必要条項が変わります。
  • 3. 権限と制限を調整:売却、借入、担保、投資、親族取引には承認や報告を置きます。
  • 4. 税務、登記、金融機関確認:完成前に税理士、司法書士、金融機関の実務確認を行います。

POINT 6

  • 5. 条項の具体例
  • 主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。
  • 5.1 表題、前文
  • 5.2 定義条項
  • 5.3 信託の設定

POINT 7

  • 6. 相続対策としての重要論点
  • 主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。
  • 6.1 遺言との違い
  • 6.2 成年後見、任意後見との違い
  • 6.3 遺留分との関係

POINT 8

  • 7. 財産別の設計
  • 主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。
  • 7.1 預貯金、現金
  • 7.2 自宅
  • 7.3 賃貸不動産

まとめ

  • 信託契約書に記載すべき 内容と条項の具体例
  • 要旨:主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。
  • 1. 信託契約書とは何か:主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。
  • 2. 用語の定義:主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

要旨

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

次の重要ポイントは、信託契約書をひな型の穴埋めで終わらせない理由を表します。なぜ重要かというと、契約書の一文が受託者の権限、税務、登記、金融機関審査、相続人への説明を左右するためです。契約書を権限書、行動規範、証拠文書として読み取ってください。

信託契約書は財産管理の設計図です

誰のために、どの財産を、誰が、どの権限で、いつまで、どのように管理し、最後に誰へ帰属させるかを具体化します。

このページは、相続に関連した財産管理、認知症対策、障害のある家族の生活支援、共有不動産の承継、事業承継などを検討する読者に向けて、「信託契約書に記載すべき内容と条項の具体例」を体系的に整理する専門解説です。信託契約書は、単なるひな型の穴埋めではなく、委託者、受託者、受益者、信託財産、信託目的、受益権、管理処分権限、会計報告、受託者の交代、信託終了、残余財産の帰属、税務、登記、紛争処理を一体として設計する法的文書です。

とくに相続分野の信託は、遺言、任意後見、法定後見、遺産分割、遺留分、相続税、贈与税、不動産登記、金融機関の実務、家族間紛争の予防と密接に関係します。したがって、信託契約書を作る際は、弁護士、司法書士、税理士、行政書士、公証人、信託銀行等の相続実務担当、不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、公認会計士、中小企業診断士、ファイナンシャル・プランナー、社会保険労務士などの視点を分解し、必要な場面で適切に接続する必要があります。

このページは、2026年5月14日時点で公表されている信託法、民法、不動産登記法、法務省、国税庁、金融庁、日本公証人連合会等の公的情報を基礎にした一般的解説です。個別案件では、事実関係、財産内容、家族関係、税務状況、金融機関の取扱いによって結論が変わります。したがって、このページは個別の法律意見、税務意見、登記申請代理、投資助言を代替するものではありません。

Section 01

1. 信託契約書とは何か

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

信託契約書とは、委託者が一定の財産を受託者に託し、受託者が信託目的に従ってその財産を管理、運用、処分し、受益者に利益を帰属させる関係を文書化した契約書です。相続対策で使われる信託は、一般に「家族信託」または「民事信託」と呼ばれることがあるが、法律上の基本構造は信託法上の信託です。

信託契約書の中心は、誰のために、どの財産を、誰が、どの権限で、いつまで、どのように管理し、最後に誰へ帰属させるかを明確にすることです。この点が曖昧な信託契約書は、金融機関で信託口口座を作れない、不動産登記で補正を求められる、相続人間で解釈が争われる、税務上の評価や課税関係を説明できない、受託者の使い込みを疑われるなどの問題を生みやすい。

相続対策で信託契約書を作る典型例は、次のような場面です。

次の表は、直前の説明で扱った項目を比較しやすく整理したものです。なぜ重要かというと、文章だけでは違いが見えにくい条件、役割、注意点を一度に確認できるためです。列ごとの意味を見比べ、どの項目を確認すべきかを読み取ってください。

場面信託で実現したいこと契約書で重要になる条項
親の認知症対策親の判断能力が低下しても不動産管理や生活費支払いを継続する受託者権限、支払基準、会計報告、監督人
自宅や賃貸不動産の承継相続開始後の共有化や売却停滞を避ける信託財産目録、売却権限、残余財産帰属
障害のある子の生活支援親亡き後の生活費を長期的に確保する受益者保護、受益者代理人、監督人、終了事由
再婚家庭前配偶者との子、現在の配偶者、後継者の利益を調整する受益者連続、遺留分配慮、残余財産帰属
事業承継株式議決権と経済的利益を設計する議決権行使、後継者、税務、会社法上の整合性
高齢者の金融資産管理預貯金、有価証券、保険、生活費を整理する分別管理、支払手続、投資方針、記録保存
Section 02

2. 用語の定義

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

信託契約書では、法律用語と家族内の日常用語が混在しやすい。読者が最初に理解すべき基本用語は、次のとおりです。

次の表は、直前の説明で扱った項目を比較しやすく整理したものです。なぜ重要かというと、文章だけでは違いが見えにくい条件、役割、注意点を一度に確認できるためです。列ごとの意味を見比べ、どの項目を確認すべきかを読み取ってください。

用語意味契約書での注意点
委託者財産を信託する人高齢の親が委託者となる場合、判断能力と意思確認が極めて重要である
受託者財産を託され、信託目的に従って管理処分する人忠実義務、善管注意義務、分別管理義務、帳簿作成、報告義務を負う
受益者信託から利益を受ける人初期受益者、第二受益者、残余財産帰属者を混同しない
信託財産信託の対象となる財産不動産、金銭、株式、投資信託、債権、知的財産などの特定が必要である
信託目的受託者が従うべき目的「家族のため」だけでは抽象的すぎるため、生活支援、療養看護費、財産承継など具体化する
受益権受益者が有する信託上の権利譲渡、相続、放棄、分割、担保設定の可否を設計する
信託監督人受託者を監督し、受益者保護を補う人高齢者、未成年者、障害のある受益者がいる場合に有用である
受益者代理人受益者に代わって権利行使する人受益者の意思表示が困難な場合、実務上重要である
残余財産帰属権利者信託終了時に残る財産を受け取る人遺言の受遺者と似て見えるが、信託契約上の地位として設計する

信託契約書では、これらの用語を前文や定義条項で明示し、本文中で同じ意味で使い続ける必要があります。たとえば「相続人」「受益者」「帰属権利者」「遺言執行者」「信託監督人」を曖昧に使うと、相続発生後に誰が何を請求できるのかが不明になります。

Section 03

3. 信託契約書作成の基本原則

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

信託契約書に記載すべき内容と条項の具体例を検討する前に、作成の基本原則を確認します。

3.1 目的から逆算する

信託契約書は、財産目録から書き始めるのではなく、目的から逆算して作成します。目的が「親の生活費支払い」なのか、「賃貸不動産の管理継続」なのか、「後継者への株式承継」なのかによって、受託者権限、支払基準、監督、終了事由、税務確認が大きく異なります。

目的条項が広すぎると受託者の裁量が過大になり、狭すぎると実務上必要な行為ができません。したがって、目的条項は「信託の存在理由」と「受託者が具体的に何をしてよいか」をつなぐ役割を持つ。

3.2 財産を特定する

信託財産は、契約書本文だけでなく、別紙目録で具体的に特定します。不動産なら所在、地番、家屋番号、種類、構造、床面積、持分を登記事項証明書どおりに記載します。金銭なら信託設定時の金額、追加信託の方法、管理口座を明記します。株式なら会社名、株式数、種類株式の有無、議決権制限、株主名簿の名義書換手続を確認します。

財産特定が不十分な契約書は、受託者が何を管理すべきか不明になり、不動産登記、金融機関手続、税務説明、相続人への報告で支障を生む。

3.3 受託者の権限と制限を同時に書く

受託者には実務を動かす権限が必要です。しかし、権限だけを書き、制限を書かない契約書は、他の相続人から「使い込み」「利益相反」「勝手な売却」と疑われやすい。したがって、売却、賃貸、修繕、借入、担保設定、投資、寄附、親族への貸付、自己取引などについて、許される範囲、承認機関、報告義務を併せて定めることが望ましいとされています。

3.4 判断能力低下後の運用を想定する

相続対策で信託を使う多くの理由は、委託者や受益者の判断能力が低下した後も財産管理を止めないことにあります。そのため、契約締結時だけでなく、10年後、20年後の運用を想定する必要があります。受託者が死亡した場合、病気になった場合、海外転居した場合、家族関係が悪化した場合、金融機関が追加資料を求めた場合を想定して条項化します。

3.5 税務と登記を後回しにしない

信託契約は民事法上成立しても、税務と登記の説明ができなければ実務上破綻することがあります。受益者が誰か、受益権がいつ誰に移るか、対価の有無、受益者連続型か、残余財産が誰に帰属するかによって、贈与税、相続税、所得税、不動産取得税、登録免許税の検討が必要となります。不動産を信託する場合は、所有権移転登記と信託登記、信託目録の記載、信託終了時の登記も確認します。

Section 04

4. 信託契約書の標準構成

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

次の判断の流れは、条項を案件に合わせて組み立てる順序を表します。なぜ重要かというと、預金だけの信託と不動産、非上場株式、再婚家庭、障害のある家族が関わる信託では必要条項が大きく変わるためです。上から順に、どこで条項を増やすべきかを読み取ってください。

条項を組み立てる順序

信託目的を特定

生活支援、承継、事業、障害者支援などを分けます。

財産の種類を確認

預金、不動産、株式、保険、知的財産で必要条項が変わります。

権限と制限を調整

売却、借入、担保、投資、親族取引には承認や報告を置きます。

税務、登記、金融機関確認

完成前に税理士、司法書士、金融機関の実務確認を行います。

専門実務で用いられる信託契約書は、一般に次の構成をとる。

  1. 表題
  2. 前文
  3. 定義条項
  4. 信託の設定
  5. 信託目的
  6. 信託財産
  7. 信託財産の引渡し、名義変更、登記
  8. 受託者の権限
  9. 受託者の義務
  10. 分別管理、帳簿、報告
  11. 受益者、受益権、受益内容
  12. 受益権の譲渡、質入れ、放棄、相続の制限
  13. 受益者連続または第二受益者
  14. 受益者代理人、信託監督人
  15. 受託者報酬、費用償還
  16. 受託者の辞任、解任、死亡、後継受託者
  17. 利益相反、自己取引、親族取引
  18. 借入、担保、保証、投資
  19. 不動産管理、賃貸、売却、修繕
  20. 税務申告、資料保管、専門家関与
  21. 信託の変更
  22. 信託の終了
  23. 清算、残余財産の帰属
  24. 秘密保持、個人情報
  25. 紛争解決、管轄
  26. 公正証書化、附属書類、署名押印
  27. 別紙信託財産目録、関係者一覧、承認書式

この構成は固定的なものではありません。財産が預金だけであれば不動産条項は不要であり、賃貸不動産が中心なら修繕、賃料管理、敷金、保険、管理会社、借入、売却の条項が重要になります。非上場株式が中心なら、議決権行使、株主総会、会社法、株式評価、事業承継税制後継者育成を検討する必要があります。

Section 05

5. 条項の具体例

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

以下の条項例は、実務設計の考え方を示すための参考例です。実際の契約書にそのまま使用すると、家族構成、財産内容、税務、登記、金融機関実務と合わない可能性があります。原則として専門家の確認を受けることが望ましいとされています。

5.1 表題、前文

表題は契約の性質を明確にします。単に「契約書」とするよりも、「信託契約書」とするのが望ましいです。前文では、委託者の意思、家族状況、財産管理の必要性、信託の目的を簡潔に示します。

記載例
信託契約書

委託者 山田太郎、受託者 山田一郎および受益者 山田太郎は、委託者の高齢化に伴う財産管理の継続、委託者の生活、療養および介護に必要な費用の安定的な支出、ならびに信託終了後の残余財産の円滑な承継を目的として、次のとおり信託契約を締結する。

前文は法的拘束力の解釈に影響することがあるため、情緒的な記載だけでは足りません。「家族の幸せのため」といった表現に加え、生活費、療養費、不動産管理、相続紛争予防などを具体的に記載します。

5.2 定義条項

定義条項は、契約全体の読み方を固定します。

記載例
第1条(定義)
本契約において使用する用語の意味は、別段の定めがない限り、次の各号に定めるところによる。
1 「本信託」とは、本契約に基づき設定される信託をいう。
2 「信託財産」とは、別紙信託財産目録記載の財産および本契約に基づき追加信託された財産をいう。
3 「受益者」とは、第6条に定める者をいう。
4 「信託口口座」とは、受託者が本信託のために開設し、信託財産に属する金銭を管理する口座をいう。
5 「信託事務」とは、信託目的を達成するために受託者が行う管理、運用、処分、支払、記録、報告その他一切の事務をいう。

定義条項を置くことで、後の条項で同じ言葉を繰り返さずに済む。ただし、定義が多すぎると一般読者に理解しにくい契約書になるため、実務上本当に必要な用語に絞る。

5.3 信託の設定

信託設定条項は、委託者が財産を信託し、受託者が引き受ける意思を明示する中核条項です。

記載例
第2条(信託の設定)
委託者は、信託目的を達成するため、信託財産を受託者に信託し、受託者はこれを引き受ける。
2 受託者は、信託財産を自己の固有財産および他の信託財産と分別して管理し、本契約および信託法その他関係法令に従って信託事務を処理する。

ここでは、単なる財産の預かりではなく、信託であることを明確にします。受託者が「名義だけ借りる」状態になると、登記、税務、金融機関実務で説明が困難になります。

5.4 信託目的

目的条項は最重要条項の一つです。相続対策では、本人保護と承継設計を分けて書くと明確になります。

記載例
第3条(信託目的)
本信託の目的は、次の各号に掲げる事項を実現することにあります。
1 委託者兼当初受益者の生活、療養、介護、施設入所、医療、住居維持およびこれらに付随する費用を安定的に支出すること。
2 委託者の判断能力が低下した場合であっても、信託財産の管理、保全、運用および必要な処分を継続すること。
3 信託財産に属する不動産を適切に管理し、必要に応じて賃貸、修繕、売却その他の処分を行うこと。
4 委託者死亡後の受益権または残余財産の帰属を定めることにより、相続人間の紛争を予防し、円滑な財産承継を図ること。

目的条項は、受託者権限の根拠になります。たとえば売却権限を認めたい場合、目的条項にも「必要に応じた処分」を含めることが望ましいとされています。逆に、売却を避けたい自宅であれば、売却できる条件を限定する必要があります。

5.5 信託財産

信託財産条項は、本文と別紙目録を組み合わせる。

記載例
第4条(信託財産)
本信託の当初信託財産は、別紙1信託財産目録記載の不動産および金銭とする。
2 委託者は、受託者の同意を得て、金銭その他受託者が管理可能な財産を追加信託することができます。
3 信託財産から生じる賃料、配当、利息、売却代金、保険金その他の収益および代替財産は、信託財産に属する。

別紙目録の例は次のとおりです。

記載例
別紙1 信託財産目録

1 不動産
所在 東京都〇〇区〇〇町一丁目
地番 1番1
地目 宅地
地積 150.00平方メートル
持分 全部

所在 東京都〇〇区〇〇町一丁目1番地1
家屋番号 1番1
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階70.00平方メートル、2階60.00平方メートル
持分 全部

2 金銭
金10,000,000円

3 その他
前各号の信託財産から生じる果実、代替財産および追加信託された財産

不動産の記載は、固定資産税通知書ではなく、登記事項証明書を基準にするのが原則です。持分がある場合は、誰の何分の何を信託するのかを明記します。

5.6 財産の引渡し、名義変更、登記

信託契約を締結しても、財産移転や対抗要件が未了では実務上機能しないことがあります。不動産なら所有権移転登記と信託登記、金銭なら信託口口座への移動、株式なら株主名簿の名義書換などが必要となります。

記載例
第5条(信託財産の引渡しおよび名義変更)
委託者および受託者は、本契約締結後すみやかに、信託財産について、信託を原因とする所有権移転登記、信託登記、口座開設、金銭の移動、株主名簿の名義書換その他必要な対抗要件具備および管理開始手続を行う。
2 前項の手続に要する登録免許税、手数料、専門家報酬その他の費用は、信託財産から支出する。ただし、当事者間で別段の合意をした場合はこの限りでありません。

不動産がある信託では、司法書士との連携が不可欠です。信託目録にどの条項を記載するか、金融機関が信託口口座を認めるか、登録免許税や固定資産税納税通知書の扱いを事前に確認します。

5.7 受益者と受益内容

相続対策では、委託者が当初受益者となる自己信託的な設計が多い。ただし、受益者が変わる瞬間に課税関係が発生する可能性があるため、税理士確認が重要です。

記載例
第6条(受益者)
本信託の当初受益者は、委託者である山田太郎とする。
2 受益者は、本契約に定めるところにより、信託財産から生活費、医療費、介護費、住居維持費、租税公課その他信託目的達成のために必要な給付を受ける権利を有する。
3 受託者は、受益者の心身の状態、生活状況、収入、医療介護の必要性、信託財産の状況を考慮し、相当と認める範囲で給付を行う。

受益内容を「必要な費用」とだけ書くと、どこまでが必要か争われます。医療、介護、生活、住居、税金、保険、葬儀、施設入所一時金など、想定される支出を列挙することが望ましいです。

5.8 第二受益者、受益者連続

委託者死亡後に配偶者、子、障害のある家族などへ受益権を承継させる場合は、第二受益者条項を置く。ただし、受益者連続型の信託には税務と信託法上の期間制限が関係するため、安易な長期設計は避けます。

記載例
第7条(第二受益者)
当初受益者が死亡したときは、当初受益者の死亡時において生存する配偶者 山田花子を第二受益者とする。
2 第二受益者は、信託財産から生活費、医療費、介護費、住居維持費その他信託目的達成のために必要な給付を受ける権利を有する。
3 第二受益者が死亡したときは、本信託は終了し、第25条に従い残余財産を帰属させる。

再婚家庭では、第二受益者を現在の配偶者、残余財産帰属権利者を前婚の子にする設計が検討されることがあります。この場合、遺留分配偶者居住権、婚姻期間、同居状況、扶養実態、相続税を慎重に検討する必要があります。

5.9 受益権の譲渡、質入れ、差押え対策

受益権を自由に譲渡できると、信託の目的が崩れることがあります。とくに生活支援目的の信託では、受益権の譲渡や担保化を制限する条項が必要です。

記載例
第8条(受益権の譲渡等の制限)
受益者は、受託者および信託監督人の書面による承諾がない限り、受益権を譲渡し、担保に供し、放棄し、またはその他一切の処分をしてはなりません。
2 前項に違反する処分は、本信託の目的に反するものとして受託者に対抗することができません。
3 受託者は、受益権の処分により受益者の生活、療養、介護または住居の安定が害されるおそれがあると認めるときは、承諾してはなりません。

ただし、差押えを完全に排除できるわけではありません。債権者対応や破産、生活保護、成年後見との関係が問題になる場合は、弁護士に確認します。

5.10 受託者の一般権限

受託者権限は包括的に書きすぎると危険であり、細かすぎると動けません。一般権限と個別権限を組み合わせる。

記載例
第9条(受託者の権限)
受託者は、信託目的を達成するため、信託財産について、次の各号の行為を行うことができます。
1 保存、管理、修繕、保険契約、租税公課および公共料金の支払
2 金銭の受領、保管、送金、支払、信託口口座による管理
3 不動産の賃貸、賃貸借契約の更新、解除、賃料改定、敷金精算、管理会社への委託
4 不動産の売却、交換、建替え、大規模修繕。ただし、第10条に定める承認を要する
5 有価証券、投資信託その他金融商品の保管、換金。ただし、新規投資は第12条に定める方針に従う
6 信託事務の一部を弁護士、司法書士、税理士、行政書士、不動産業者、管理会社その他相当な専門家に委託すること
7 その他信託目的達成のために必要かつ相当な行為

「その他一切の行為」とだけ書くのは望ましくありません。少なくとも、売却、借入、担保、投資、贈与、親族取引、自己取引の扱いを別に定めることが望ましいとされています。

5.11 重要行為の承認

売却や借入など家族紛争になりやすい行為は、信託監督人、受益者代理人、第三者専門家、一定の親族の承認を要件にすることがあります。

記載例
第10条(重要行為の承認)
受託者は、次の各号の行為を行う場合、事前に信託監督人の書面による承認を得なければなりません。
1 信託不動産の売却、交換、建替えまたは大規模修繕
2 信託財産を担保に供すること
3 信託財産に属する金銭を用いた1回100万円を超える支出。ただし、医療費、介護費、税金、施設入所費その他緊急または定型的な支出を除く
4 受託者またはその親族との取引
5 信託財産に関する訴訟、調停、仲裁または重要な和解
2 緊急を要する場合、受託者は必要最小限の行為を行うことができます。この場合、受託者はすみやかに信託監督人に報告しなければなりません。

承認者を相続人全員にすると、かえって機動性を失うことがあります。誰が、どの期間内に、どの形式で承認するかを定めることが重要です。

5.12 受託者の義務

受託者の義務は、信託契約書の倫理的かつ法的な核です。

記載例
第11条(受託者の義務)
受託者は、信託目的に従い、受益者のために、善良な管理者の注意をもって信託事務を処理しなければなりません。
2 受託者は、法令および本契約に別段の定めがある場合を除き、自己または第三者の利益を図る目的で信託財産を利用してはなりません。
3 受託者は、信託財産を自己の固有財産および他の信託財産と分別して管理しなければなりません。
4 受託者は、信託事務に関する帳簿および証拠書類を作成し、信託終了後10年間保存します。
5 受託者は、受益者または信託監督人から合理的な説明を求められたときは、信託事務の処理状況および信託財産の状況を説明しなければなりません。

受託者を家族にする場合でも、義務を弱めることは避ける必要があります。むしろ家族だからこそ、疑われないための記録、領収書、口座分離、定期報告が重要です。

5.13 分別管理、信託口口座、帳簿

使い込み疑いを防ぐには、分別管理条項と帳簿条項が不可欠です。

記載例
第12条(分別管理および帳簿)
受託者は、信託財産に属する金銭を信託口口座において管理し、自己の生活費、事業資金、他の家族の資金と混同してはなりません。
2 受託者は、信託財産に関する収入、支出、資産、負債を記録する帳簿を作成し、領収書、請求書、契約書、通帳、振込記録その他証拠書類を保存します。
3 受託者は、毎年1回、受益者および信託監督人に対し、信託財産状況報告書を提出する。
4 受託者は、信託監督人から閲覧または写しの交付を求められたときは、正当な理由がない限りこれに応じる。

金融機関によっては、信託口口座の開設条件、契約書の形式、公正証書の要否、受託者の本人確認、信託目的の審査が異なります。契約書完成前に金融機関へ相談することが望ましいです。

5.14 給付基準

受益者への給付基準は、受託者の裁量を適切に統制します。

記載例
第13条(受益者への給付)
受託者は、信託財産の範囲内で、受益者の生活、医療、介護、住居、税金、保険、施設入所、成年後見その他必要かつ相当な費用を支払うことができます。
2 受託者は、受益者本人への現金交付が受益者の利益に反するおそれがあると認めるときは、医療機関、介護事業者、施設、家主、公共機関その他支払先に直接支払うことができます。
3 受託者は、受益者の生活水準、従前の支出状況、信託財産の残高、受益者の収入および公的給付を考慮し、過大な支出を避けなければなりません。

受益者が浪費傾向を有する場合、障害や認知症がある場合、親族が受益者に金銭を要求する可能性がある場合は、直接払い方式が有効です。

5.15 不動産の管理、賃貸、売却

不動産信託では、賃貸管理、修繕、売却権限を具体的に書く。将来、施設入所費を捻出するため自宅売却が必要になる場合があります。

記載例
第14条(信託不動産の管理および処分)
受託者は、信託不動産について、保存、修繕、保険契約、賃貸借契約の締結および更新、賃料回収、管理会社への委託その他通常の管理行為を行うことができます。
2 受託者は、受益者の生活、療養、介護、施設入所または信託財産の保全のため必要かつ相当と認める場合、信託監督人の承認を得て、信託不動産を売却することができます。
3 受託者は、信託不動産を売却する場合、原則として宅地建物取引業者に価格査定を依頼し、必要に応じて不動産鑑定士その他専門家の意見を聴く。
4 売却代金は信託財産に属し、受託者は信託口口座で管理します。

売却価格を巡る紛争を防ぐため、査定書、媒介契約、重要事項説明書、売買契約書、決済資料を保存します。共有不動産や境界未確定土地では、土地家屋調査士による境界確認、分筆、測量が必要になることがあります。

5.16 借入、担保、保証

借入や担保設定は、信託財産を大きく変動させるため慎重に定める。

記載例
第15条(借入、担保および保証の制限)
受託者は、信託監督人の事前の書面承認がない限り、信託財産を担保に供し、信託財産に関して借入を行い、または第三者の債務を保証してはなりません。
2 受託者は、信託不動産の修繕、建替え、納税、受益者の医療介護その他信託目的達成のため必要不可欠であり、信託財産の状況に照らして相当と認められる場合に限り、前項の承認を求めることができます。
3 受託者は、借入または担保設定を行う場合、返済計画、資金使途、担保内容、金利、期限、契約書を信託監督人に提示しなければなりません。

金融機関は、信託不動産を担保にした融資について慎重な審査を行うことが多い。契約書に借入権限があっても、実際に融資が受けられるとは限りません。

5.17 投資、運用

高齢者の生活支援信託では、元本保全が中心となることが多い。投資を認める場合は方針を明記します。

記載例
第16条(運用方針)
受託者は、信託財産の安全性および流動性を重視し、投機的取引を行ってはなりません。
2 受託者は、信託財産に属する金銭を、預貯金、個人向け国債その他安全性が高いと合理的に認められる方法で管理することができます。
3 受託者が株式、投資信託、外貨建商品、暗号資産その他価格変動リスクの高い資産に新規投資する場合、信託監督人の事前承認を要する。
4 受託者は、信託財産に属する既存の有価証券を換金することが信託目的に照らして相当と認める場合、税務上の影響を確認した上で処分することができます。

信託は投資で利益を上げるための制度とは限りません。相続対策の信託では、生活維持、管理継続、紛争予防が主目的であることを忘れてはなりません。

5.18 受託者報酬、費用償還

家族受託者が無報酬で長期間管理する場合、後に負担感や不公平感が生じることがあります。報酬を定めるか、無報酬とするかを明確にします。

記載例
第17条(受託者報酬および費用償還)
受託者の報酬は、月額〇万円とし、信託財産から支払う。
2 前項にかかわらず、受託者が無報酬で信託事務を処理する旨を別に合意した場合、受託者報酬は発生しません。
3 受託者は、信託事務処理のために必要かつ相当な費用を支出したときは、信託財産から償還を受けることができます。
4 受託者は、費用償還を受ける場合、領収書その他支出を証明する資料を保存しなければなりません。

報酬が高すぎると他の相続人から疑義が出ます。報酬を設ける場合は、事務量、財産規模、専門職報酬水準、家族間の公平を考慮します。

5.19 信託監督人

受益者が高齢、認知症、未成年、障害を有する場合、信託監督人を置くことで透明性が高まる。

記載例
第18条(信託監督人)
本信託の信託監督人として、佐藤次郎を指定する。
2 信託監督人は、受益者の利益を保護するため、受託者から信託事務および信託財産の状況について報告を受け、帳簿および資料を閲覧し、必要な意見を述べることができます。
3 受託者は、本契約において信託監督人の承認を要すると定められた事項について、事前に書面または電磁的方法により承認を得なければなりません。
4 信託監督人が死亡、辞任、解任、判断能力喪失その他の理由により職務を行えない場合、〇〇弁護士会所属の弁護士または当事者が合意する専門職を後任候補者とする。

信託監督人は、親族でも専門家でもよいが、利益相反が少なく、記録確認ができる人を選ぶ必要があります。

5.20 受益者代理人

受益者が意思表示できない場合、受益者代理人が重要になります。

記載例
第19条(受益者代理人)
受益者が認知症、精神上の障害、疾病その他の理由により、本契約に基づく権利を適切に行使することが困難となった場合、受益者代理人を置くことができます。
2 受益者代理人は、受益者の利益のため、受益者に代わって受託者に対する報告請求、帳簿閲覧請求、承認、異議申立てその他本契約に定める権利を行使する。
3 受益者代理人は、受託者と利益相反関係にない者でなければなりません。

受益者代理人を誰にするかは、家族関係により大きく変わります。受託者の配偶者や子を代理人にすると、監督機能が弱くなることがあります。

5.21 利益相反、自己取引、親族取引

家族信託で最も紛争化しやすいのは、受託者が自分や自分の家族に利益を移す場面です。

記載例
第20条(利益相反行為等の制限)
受託者は、信託財産について、自己または自己の配偶者、直系血族、兄弟姉妹その他利益相反のおそれがある者との間で売買、賃貸、貸付、担保設定、債務引受その他の取引を行う場合、信託監督人の事前承認を得なければなりません。
2 前項の取引条件は、信託財産および受益者に不利益を及ぼさない公正な条件でなければなりません。
3 受託者は、前2項の取引を行った場合、取引条件、価格算定根拠、承認資料を保存し、受益者および信託監督人に報告する。

たとえば、受託者が信託不動産を安く買い取る、受託者の会社に安く貸す、受託者の子に無償使用させるといった行為は、後に激しい紛争になり得る。

5.22 専門家への委託

受託者はすべてを自分で行う必要はありません。むしろ、不動産、税務、登記、訴訟、介護などは専門家を使う方が適切です。

記載例
第21条(第三者への委託)
受託者は、信託事務の一部を、弁護士、司法書士、税理士、行政書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、公認会計士、社会保険労務士、金融機関、介護事業者、管理会社その他相当な第三者に委託することができます。
2 受託者は、委託先の選任および監督について、信託目的に照らして相当な注意を払わなければなりません。
3 前項の委託に要する費用は、信託財産から支出することができます。

ただし、信託を業として引き受ける行為には信託業法上の規制が関係します。専門家が受託者となる場合や、反復継続して報酬を得る仕組みを設計する場合は、金融庁の信託業法関連情報を確認する必要があります。

5.23 受託者の辞任、解任、死亡、後継受託者

受託者が一人だけで、後継受託者がいない契約は危険です。

記載例
第22条(受託者の辞任、解任および後継受託者)
受託者は、やむを得ない事由がある場合、信託監督人の承認を得て辞任することができます。
2 受託者が死亡、破産、後見開始、保佐開始、補助開始、長期入院、所在不明その他信託事務を継続できない状態となった場合、次順位の者を後継受託者とする。
第1順位 山田二郎
第2順位 山田三郎
第3順位 信託監督人が選任する弁護士または司法書士
3 受託者が本契約または法令に違反し、信託財産または受益者に重大な損害を与えた場合、信託監督人は、受託者の解任および後継受託者の選任を求めることができます。
4 前受託者またはその相続人は、後継受託者に対し、信託財産、帳簿、証拠書類、通帳、契約書その他信託事務に必要な資料を引き渡さなければなりません。

後継受託者が決まっていないと、信託事務が止まり、家庭裁判所手続や関係者協議が必要になることがあります。高齢の受託者を選ぶ場合は、原則として次順位を置く。

5.24 信託の変更

家族状況や法律、税制、財産状況は変化します。変更条項を置くことで柔軟性を確保します。

記載例
第23条(信託の変更)
委託者、受託者および受益者は、信託目的に反しない範囲で、書面により本契約を変更することができます。
2 委託者が判断能力を欠くに至った場合、本契約の変更は、受託者、受益者代理人および信託監督人の合意により行う。ただし、受益者の利益を害する変更、残余財産帰属権利者を実質的に変更する変更、信託財産を不当に減少させる変更は行うことができません。
3 信託財産に不動産が含まれる場合、変更内容が信託登記に影響するときは、受託者は必要な変更登記を行う。

変更条項は便利だが、濫用されると委託者の当初意思が失われます。判断能力低下後の変更は、客観的な必要性と監督手続が必要です。

5.25 信託の終了

終了事由を明確にしないと、いつまで信託が続くのか不明になります。

記載例
第24条(信託の終了)
本信託は、次の各号のいずれかに該当したときに終了する。
1 当初受益者および第二受益者がいずれも死亡したとき
2 信託財産が信託目的を達成するために必要な範囲を超えて消滅し、信託を継続する意義がなくなったとき
3 信託目的の達成または達成不能が明らかとなったとき
4 受託者、受益者代理人および信託監督人が、信託目的に照らして終了が相当であると合意したとき
5 法令または裁判所の判断により終了すべきこととなったとき

相続対策では、受益者死亡時に信託を終了させるのか、次の受益者へ移すのか、一定年齢まで継続するのかを慎重に設計します。

5.26 清算と残余財産帰属

信託終了後に残る財産を誰が取得するかは、相続紛争予防の核心です。

記載例
第25条(清算および残余財産の帰属)
本信託が終了した場合、受託者は清算受託者として、未払債務、租税公課、専門家報酬、管理費、葬儀関連費用その他信託財産に関する費用を支払った上で、残余財産を次の者に帰属させる。
1 長男 山田一郎 2分の1
2 長女 山田春子 2分の1
2 前項の残余財産帰属権利者の一人が信託終了時に死亡している場合、その者の子が代わって取得する。ただし、別紙2に別段の定めがある場合はこれに従う。
3 受託者は、残余財産の帰属に必要な登記、名義変更、引渡し、換価、分配を行う。

残余財産帰属の設計は遺言に近い機能を持つが、遺言そのものではありません。遺留分、相続税、遺言との矛盾、受益権の評価、生命保険、特別受益、生前贈与を含めて検討する必要があります。

5.27 税務協力

税務条項は、税務申告を誰が行うか、資料を誰が保存するかを明確にします。

記載例
第26条(税務および資料提供)
受託者は、本信託に関して必要となる所得税、相続税、贈与税、固定資産税、不動産取得税、登録免許税その他租税公課について、税理士その他専門家の助言を受けることができます。
2 受託者、受益者、残余財産帰属権利者およびその相続人は、税務申告、税務調査、登記、名義変更に必要な資料の提供および説明に協力する。
3 受託者は、信託財産に関する収入、支出、資産、負債、受益者への給付、残余財産の分配に関する資料を保存します。

信託の課税関係は、単純な贈与や相続より複雑になり得る。契約書作成段階で税理士が確認していない信託は、後に想定外の課税問題を生む可能性があります。

5.28 紛争解決、管轄

家族信託でも紛争条項は必要です。

記載例
第27条(協議および管轄)
本契約に定めのない事項または本契約の解釈に疑義が生じた場合、当事者は、信託目的および受益者の利益を尊重し、誠実に協議して解決する。
2 本契約に関して訴訟の必要が生じた場合、信託不動産の所在地または受託者の住所地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

相続人間の紛争が予想される場合、訴訟管轄だけでなく、調停、専門家意見、鑑定、帳簿開示手続を整えておくとよい。

5.29 公正証書化

信託契約を公正証書にすることは、法律上常に必須ではないが、実務上は有益です。

記載例
第28条(公正証書)
当事者は、本契約を公正証書により作成することに合意する。
2 本契約の公正証書作成に要する費用は、信託財産から支出する。ただし、当事者間で別段の合意をした場合はこの限りでありません。

公正証書にする利点は、本人確認、意思確認、日付の明確化、証拠性、金融機関や登記実務での説明のしやすさにあります。もっとも、公正証書にすれば内容が自動的に有効かつ適切になるわけではありません。契約内容の法務、税務、登記、金融機関実務の確認が別途必要です。

Section 06

6. 相続対策としての重要論点

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

6.1 遺言との違い

遺言は、原則として死亡後の財産承継を定める制度です。これに対し、信託契約は、生前から財産管理を開始し、判断能力低下後も管理を続け、死亡後の受益権や残余財産帰属まで定めることができます。

ただし、信託があれば遺言が不要になるとは限りません。信託していない財産、身分関係、祭祀財産、遺言執行者の指定、認知、未成年後見人の指定など、遺言で処理すべき事項が残ることがあります。信託と遺言は代替関係ではなく、補完関係として設計するのが基本です。

6.2 成年後見、任意後見との違い

信託は主に財産管理の制度であり、本人の身上監護そのものを包括的に担う制度ではありません。施設入所契約、医療同意、介護サービス契約、日常生活支援、福祉制度の利用には、任意後見、法定後見、親族支援、行政サービスが関係します。

したがって、認知症対策では、信託契約だけでなく、任意後見契約、見守り契約、死後事務委任契約、遺言、医療介護の意思表示文書を組み合わせることがあります。

6.3 遺留分との関係

信託契約によって、遺留分を当然に排除できるわけではありません。特定の相続人に過大な利益を与え、他の相続人の遺留分を侵害する設計は、相続開始後に遺留分侵害額請求などの紛争を招く可能性があります。

信託契約書には、遺留分に配慮した財産配分、代償金の原資、生命保険、遺言、付言事項、家族への説明記録を組み合わせることが望ましいです。弁護士が関与する場合、紛争化したときの主張立証まで見据えて設計します。

6.4 使い込み疑いへの対策

受託者が子で、他の子が受託者でない場合、相続開始後に「親の財産を勝手に使った」と疑われることがあります。これを防ぐには、次の仕組みを契約書と運用に入れます。

次の表は、直前の説明で扱った項目を比較しやすく整理したものです。なぜ重要かというと、文章だけでは違いが見えにくい条件、役割、注意点を一度に確認できるためです。列ごとの意味を見比べ、どの項目を確認すべきかを読み取ってください。

対策内容
信託口口座受託者の個人口座と分ける
帳簿作成収入、支出、残高を記録する
領収書保存医療、介護、修繕、生活費の証拠を残す
定期報告受益者、監督人、必要に応じて親族へ報告する
重要行為承認売却、借入、親族取引に承認手続を置く
専門家確認税務、登記、不動産価格の客観資料を残す

最も重要なのは、後で説明できる支出だけを行うことです。家族だから記録はいらない、という考えは危険です。

Section 07

7. 財産別の設計

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

7.1 預貯金、現金

預貯金信託では、信託口口座の開設可否が実務上の要点です。金融機関により必要書類や審査が異なるため、契約書作成前に相談することが望ましいです。

契約書では、信託する金額、追加信託の方法、生活費支払基準、口座管理、振込権限、キャッシュカードやインターネットバンキングの管理、通帳保管、報告方法を明記します。

7.2 自宅

自宅を信託する場合、本人が住み続ける権利、施設入所後の管理、空き家化した場合の売却、固定資産税、火災保険、修繕、近隣対応を定める。

自宅売却には感情的抵抗が大きい。売却できる条件を「受益者が自宅に居住しなくなり、医療介護費、施設入所費、信託財産維持のため必要な場合」など具体化すると、将来の説明がしやすい。

7.3 賃貸不動産

賃貸不動産を信託する場合、賃貸借契約、賃料、敷金、修繕、原状回復、管理会社、火災保険、借入、減価償却、確定申告が問題になります。

受託者が賃料を受け取る場合、誰の所得として申告するか、必要経費をどう整理するか、信託財産責任負担債務をどう扱うかを税理士に確認します。

7.4 農地、山林、境界未確定地

農地は農地法、山林は管理責任、境界未確定地は測量や隣地立会いが関係します。信託契約書だけで解決できるとは限りません。土地家屋調査士、行政書士、司法書士、不動産業者との連携が必要となります。

7.5 非上場株式、事業承継

非上場株式を信託する場合、議決権行使、配当受領、株式評価、株主間契約、定款の譲渡制限、後継者、会社の資金繰り、相続税、事業承継税制を検討します。公認会計士、中小企業診断士、税理士、弁護士の共同検討が必要になりやすい。

条項例は次のとおりです。

記載例
第〇条(株式に関する議決権行使)
受託者は、信託財産に属する株式について、会社の継続的発展、受益者の利益および信託目的を考慮して議決権を行使する。
2 代表取締役の選解任、合併、会社分割、株式交換、重要な事業譲渡、定款変更その他会社経営に重大な影響を及ぼす事項については、信託監督人および別紙後継者会議の意見を聴かなければなりません。

7.6 知的財産

特許権、商標権、著作権などを信託する場合、登録、使用許諾、ライセンス収入、更新料、侵害対応が問題になります。弁理士や弁護士の関与が必要となります。

Section 08

8. 税務上の要点

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

信託契約書に記載すべき内容と条項の具体例を検討する際、税務は避けて通れません。信託の課税は、形式上の所有者である受託者だけを見れば足りるわけではなく、受益者が誰か、受益権を誰が取得したか、対価があるか、信託が終了したか、残余財産が誰に帰属するかを検討する必要があります。

税務上とくに注意すべき場面は、次のとおりです。

次の表は、直前の説明で扱った項目を比較しやすく整理したものです。なぜ重要かというと、文章だけでは違いが見えにくい条件、役割、注意点を一度に確認できるためです。列ごとの意味を見比べ、どの項目を確認すべきかを読み取ってください。

場面主な確認事項
委託者が受益者となる信託設定設定時に受益者が変わらないか
受益者を子にする信託設定贈与税の有無
委託者死亡により第二受益者が取得相続税または贈与税の整理
受益者連続型信託特例、評価、課税時期
不動産から賃料が生じる所得税、必要経費、帳簿
信託不動産を売却する譲渡所得、取得費、居住用特例の可否
信託終了により残余財産を取得相続税、贈与税、所得税の整理

国税庁は、新たに信託の設定等を行った場合に、適正な対価を負担せず受益権を取得したときは贈与税の対象となる旨を説明しています。したがって、「親が子に管理を任せるだけ」という感覚で、受益権まで子に移してしまうと、想定外の税務問題が生じ得ます。

税務条項を契約書に入れても、それだけで節税になるわけではありません。税務上重要なのは、契約書に書かれた権利義務、実際の資金移動、受益者の実質、財産評価、申告内容が整合していることです。

Section 09

9. 登記上の要点

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

不動産を信託する場合、信託契約書は登記実務と不可分です。信託による所有権移転登記と信託登記を行うことで、信託財産であることを第三者に示します。信託目録には、信託目的、信託財産の管理方法、受益者、受託者、信託終了事由など、登記上必要な事項が記録されます。

2024年4月1日から相続登記の申請義務化が始まっているため、信託の終了後に残余財産が相続人や帰属権利者へ移る場合も、登記を放置しない設計が重要です。信託で不動産の共有化を避けても、終了時の移転登記や相続登記が未了なら、将来の売却、担保設定、境界確認、空き家対策に支障が出る。

登記実務で確認すべき事項は、次のとおりです。

次の表は、直前の説明で扱った項目を比較しやすく整理したものです。なぜ重要かというと、文章だけでは違いが見えにくい条件、役割、注意点を一度に確認できるためです。列ごとの意味を見比べ、どの項目を確認すべきかを読み取ってください。

確認事項担当専門職注意点
信託設定時の所有権移転登記司法書士登記原因、信託目録、登録免許税
信託目録の記載司法書士、弁護士契約書と矛盾させない
境界未確定、分筆土地家屋調査士売却前に測量が必要なことがある
不動産評価不動産鑑定士、宅建業者遺産分割や売却価格で争われやすい
信託終了時の登記司法書士帰属権利者への移転を放置しない
Section 10

10. 専門職別の確認ポイント

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

信託契約書は一人の専門職だけで完結しないことが多い。以下は、各専門職が確認すべき典型論点です。

次の表は、直前の説明で扱った項目を比較しやすく整理したものです。なぜ重要かというと、文章だけでは違いが見えにくい条件、役割、注意点を一度に確認できるためです。列ごとの意味を見比べ、どの項目を確認すべきかを読み取ってください。

専門職主な確認ポイント
弁護士信託目的、受託者義務、利益相反、遺留分、相続紛争、使い込み疑い、調停、訴訟リスク
司法書士不動産登記、信託登記、信託目録、相続登記、戸籍、裁判所提出書類作成
税理士贈与税、相続税、所得税、譲渡所得、受益権評価、税務調査対応
行政書士紛争や税務代理、登記申請を除く書類作成、遺産分割協議書、相続人関係説明図
公証人公正証書作成、本人確認、意思確認、日付と証拠性の確保
遺言執行者遺言と信託の整合、信託外財産の承継、相続手続の実行
信託銀行等遺言信託、信託口口座、保管、執行、金融実務
不動産鑑定士不動産価格、賃料、共有持分、売却価格の客観性
土地家屋調査士境界、分筆、表示登記、測量、地積更正
宅地建物取引士、不動産仲介業者売却、賃貸、重要事項説明、市場価格、媒介
家庭裁判所関係者後見、特別代理人、遺産分割調停、審判、鑑定
公認会計士非上場株式、会社価値、財務分析、事業承継
中小企業診断士後継者育成、経営改善、承継計画
弁理士特許、商標、知的財産の承継と登録
FP家計、保険、老後資金、専門家連携
社会保険労務士遺族年金、公的年金、死亡後の周辺手続
法務局、遺言書保管官自筆証書遺言書保管制度、登記、形式確認
市区町村戸籍担当死亡届、戸籍、住民票、相続人調査の入口
医師、検案医死亡診断書、死体検案書
銀行、保険会社預金払戻し、死亡保険金、相続手続、本人確認

この表は、すべての案件で全専門職が必要という意味ではありません。信託財産が預金だけなら不動産鑑定士は通常不要であり、相続税が発生しない規模なら税務確認の範囲も限定されることがあります。一方、不動産、会社、再婚、障害のある家族、相続人間不和が重なる案件では、複数専門職の連携が不可欠です。

Section 11

11. よくある失敗例

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

11.1 目的が抽象的すぎる

「家族の円満のため」とだけ書かれた信託目的は、受託者の具体的権限を説明しにくい。生活費支払、不動産管理、売却、介護費、承継など、具体的に記載します。

11.2 信託財産の目録が不十分

不動産の地番や家屋番号が違う、持分が書かれていない、追加信託の方法がない、金銭の金額が不明などは、登記や金融機関手続の障害になります。

11.3 後継受託者がいない

受託者が死亡または認知症になったとき、後継受託者がいなければ信託事務が止まる。原則として次順位を定める。

11.4 報告義務がない

報告義務がないと、受託者が適切に管理していても疑われます。年1回以上の報告、帳簿、領収書、残高証明を定めます。

11.5 売却権限が曖昧

施設入所費を作るため自宅を売りたいのに、売却権限がない、または承認者が死亡していると動けません。売却条件と承認手続を明確にします。

11.6 税務を確認していない

受益者を変える設計、受益者連続型、残余財産帰属、低額譲渡、親族間売買は、税務確認なしに進めることは避ける必要があります。

11.7 遺言と矛盾する

信託契約で残余財産を長男へ帰属させる一方、遺言で同じ不動産を長女へ遺贈すると、相続開始後に紛争化します。信託、遺言、生命保険、贈与、任意後見を一覧化して整合させます。

Section 12

12. 契約締結前に確認すべきチェックリスト

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

次の表は、直前の説明で扱った項目を比較しやすく整理したものです。なぜ重要かというと、文章だけでは違いが見えにくい条件、役割、注意点を一度に確認できるためです。列ごとの意味を見比べ、どの項目を確認すべきかを読み取ってください。

チェック項目確認内容
本人意思委託者が契約内容を理解し、自発的に署名する状態か
判断能力診断書、面談記録、公証人確認が必要な状況か
家族関係推定相続人、遺留分、再婚、養子、前婚の子を確認したか
財産目録不動産、預金、株式、保険、借入、保証を一覧化したか
信託目的生活支援、管理継続、承継目的が具体的か
受託者年齢、健康、居住地、信用、事務能力、利益相反を確認したか
後継受託者第2順位、第3順位を定めたか
受益者当初受益者、第二受益者、残余財産帰属権利者を区別したか
税務贈与税、相続税、所得税、譲渡所得を税理士が確認したか
登記司法書士が信託登記と目録を確認したか
金融機関信託口口座の開設可否を確認したか
不動産売却、修繕、境界、賃貸、管理会社を確認したか
監督信託監督人、受益者代理人、報告方法を定めたか
変更判断能力低下後の変更手続を定めたか
終了終了事由と清算方法を定めたか
遺言信託外財産と遺言の整合を確認したか
公正証書公正証書化の要否を検討したか
説明記録家族への説明、専門家意見、承認書を保存したか
Section 13

13. ひな型利用時の注意

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

インターネット上のひな型は、学習には有用だが、そのまま使用するのは危険です。信託契約書は、財産の種類、家族関係、受託者の能力、税務、登記、金融機関、将来の紛争可能性に応じて設計する必要があります。

とくに次の案件では、ひな型だけで進めることは避ける必要があります。

  1. 推定相続人の一部が反対しています。
  2. 遺留分侵害が予想されます。
  3. 委託者の判断能力に不安があります。
  4. 受託者が財産を使い込む疑いを持たれやすいです。
  5. 不動産が複数あります。
  6. 賃貸不動産や借入があります。
  7. 非上場会社の株式があります。
  8. 受益者連続型の設計をします。
  9. 再婚家庭です。
  10. 障害のある子、未成年者、後見利用者が関係します。
  11. 海外居住者、外国籍、国外財産があります。
  12. 相続税申告が必要となる可能性が高いです。
Section 14

14. 専門的な条項追加例

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

14.1 判断能力確認条項

記載例
第〇条(委託者の意思確認)
委託者は、本契約の内容、信託財産の範囲、受託者の権限、受益者および残余財産帰属権利者を理解した上で、本契約を締結する。
2 受託者は、本契約締結時の委託者の意思確認資料として、面談記録、説明資料、医師の診断書その他相当な資料を保存することができます。

14.2 介護施設入所時の支出条項

記載例
第〇条(施設入所費等)
受託者は、受益者が介護施設、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅その他施設に入所する場合、入居一時金、月額利用料、医療費、介護費、日用品費、保証金その他必要かつ相当な費用を信託財産から支払うことができます。

14.3 空き家対策条項

記載例
第〇条(空き家となった信託不動産)
受託者は、信託不動産が空き家となった場合、防犯、防災、換気、清掃、草木管理、近隣対応、保険契約の見直しその他必要な管理を行う。
2 受託者は、空き家状態の継続が信託財産の価値を著しく減少させ、または近隣に損害を及ぼすおそれがある場合、信託監督人の承認を得て、賃貸、売却、解体その他相当な措置をとることができます。

14.4 デジタル資産条項

記載例
第〇条(電子記録およびデジタル資産)
受託者は、信託財産の管理に必要な電子記録、オンライン口座、電子契約、デジタルデータについて、信託目的の範囲内で管理し、必要な手続を行うことができます。
2 暗号資産、電子マネー、ポイントその他法的性質または換価方法が不明確な資産を信託財産に含める場合、別紙において種類、管理方法、アクセス情報の保管方法、換価方針を定める。

14.5 医療介護連携条項

記載例
第〇条(医療介護関係者との連携)
受託者は、受益者の生活、療養、介護に必要な範囲で、医療機関、介護事業者、地域包括支援センター、成年後見人、任意後見受任者その他関係者と連携し、信託財産から必要な費用を支払うことができます。
Section 15

15. 実務上の作成手順

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

信託契約書を作る実務手順は、次の流れが望ましいです。

  1. 家族関係図を作ります。
  2. 推定相続人と遺留分を確認します。
  3. 財産目録を作ります。
  4. 借入、保証、未払税金、賃貸借契約を確認します。
  5. 委託者の意思と判断能力を確認します。
  6. 信託で実現したい目的を文章化します。
  7. 受託者と後継受託者を選びます。
  8. 受益者、第二受益者、残余財産帰属権利者を決めます。
  9. 税理士に課税関係を確認します。
  10. 司法書士に登記可能性を確認します。
  11. 金融機関に信託口口座の可否を確認します。
  12. 不動産がある場合、管理会社、宅建業者、鑑定士、土地家屋調査士の必要性を確認します。
  13. 契約書案を作成します。
  14. 家族説明とリスク説明を行います。
  15. 公正証書化を検討します。
  16. 契約締結後、登記、口座開設、金銭移動、名義変更を行います。
  17. 帳簿と報告体制を開始します。
  18. 年1回以上、運用状況を見直します。

この手順のうち、最も軽視されやすいのは、金融機関確認と税務確認です。契約書を作った後に口座が開けない、受益者移転で課税問題が出る、登記目録が契約書と合わない、といった事態を避けるため、契約書完成前の確認が重要です。

Section 16

16. まとめ

主要な確認事項を、一般情報として読みやすく整理します。

「信託契約書に記載すべき内容と条項の具体例」を一言でまとめるなら、信託契約書は、財産管理の権限書であり、受託者の行動規範であり、受益者保護の仕組みであり、相続承継の設計図であり、将来の紛争を予防する証拠文書です。

相続対策として有効な信託契約書には、少なくとも次の事項が必要です。

  1. 信託目的の明確化
  2. 信託財産の正確な特定
  3. 受託者の権限と義務
  4. 分別管理、帳簿、報告
  5. 受益者と受益内容
  6. 受益権の承継、譲渡制限
  7. 重要行為の承認
  8. 受託者の交代と後継受託者
  9. 信託監督人または受益者代理人
  10. 税務、登記、金融機関手続
  11. 信託変更、終了、清算
  12. 残余財産帰属
  13. 紛争予防と証拠化

信託は、家族の信頼を前提としながらも、信頼だけに依存しない制度設計を行うための法的仕組みです。相続に不安がある人ほど、早い段階で財産目録、家族関係、本人意思、税務、登記、金融機関実務を整理し、専門職の助言を受けて契約書を作成することが望ましいです。

Reference

この記事の参考資料

公的機関、法令、実務資料を中心に整理しています。

  • このページでは、次の公的資料および法令情報を参考資料として整理しています。実際の対応では、最新の法令、通達、金融機関実務、裁判例、税務取扱いを再確認する必要があります。
  • e-Gov法令検索「信託法」
  • e-Gov法令検索「民法」
  • e-Gov法令検索「不動産登記法」
  • 法務省民事局「知って活用!信託制度」
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • 国税庁「No.4427 新たに信託の設定等を行った場合」
  • 国税庁「受益者連続型信託の特例」
  • 国税庁「信託受益権の評価明細書」
  • 金融庁「改正信託業法が施行されました」
  • 日本公証人連合会「公証制度」