2σ Guide

自筆証書遺言の財産目録は
パソコンで作成できる?

2019年改正で可能になった財産目録のパソコン作成について、本文自書の原則、各ページ署名押印、保管制度、検認、遺留分・税務・登記への影響まで整理します。

20191月13日施行
各頁署名押印が必要
2020法務局保管制度開始
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自筆証書遺言の財産目録は パソコンで作成できる?

2019年改正で便利になった点と、今も守るべき方式を先に整理します。

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自筆証書遺言の財産目録は パソコンで作成できる?
2019年改正で便利になった点と、今も守るべき方式を先に整理します。
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  • 自筆証書遺言の財産目録は パソコンで作成できる?
  • 2019年改正で便利になった点と、今も守るべき方式を先に整理します。

POINT 1

  • 自筆証書遺言の財産目録をパソコンで作成できる改正の全体像
  • 2019年改正で便利になった点と、今も守るべき方式を先に整理します。
  • パソコンで作れるのは財産目録です
  • 中心になる条文は民法968条2項で、本文の自書原則を残しつつ、財産を特定する目録部分だけを柔軟にした改正です。
  • 最初に重要な線引きを整理します。

POINT 2

  • 自筆証書遺言の財産目録をパソコンで作成できるようになった改正内容
  • 1. 財産目録の自書不要が施行:この日以後に作成された自筆証書遺言では、要件を満たせばパソコン作成の財産目録を添付できます。
  • 2. 法務局の保管制度が開始:自筆証書遺言を法務局で保管できる制度が始まり、保管された遺言は家庭裁判所の検認が不要になります。
  • 3. 相続登記が義務化:相続で不動産を取得したことを知った日から原則3年以内に登記申請が必要となりました。
  • 4. 相続税の申告と納税:相続税が必要な場合、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内が原則期限です。

POINT 3

  • 自筆証書遺言の財産目録と本文の境界
  • 1. 記載したい内容を確認:不動産の所在、口座番号、証券会社名など、財産を特定する情報かを見ます。
  • 2. 取得者や配分を含むか:長男Aに相続させる、妻Bに全部与える、割合で分けるなどの意思表示があるかを確認します。
  • 3. 本文として自書する領域:配分内容は遺言の中核です。
  • 4. 目録に整理しやすい領域:財産の番号、種類、所在地、口座番号などは目録に整理できます。

POINT 4

  • 自筆証書遺言の財産目録に書く財産別の実務
  • 不動産、預貯金、有価証券、保険、貸付金、非上場株式、デジタル資産を整理します。
  • コピー資料を使う場合の考え方
  • 登記に耐える特定
  • 口座と契約の特定

POINT 5

  • 自筆証書遺言の財産目録と法務局保管制度・検認
  • 保管制度、家庭裁判所の検認、様式上の注意を混同しないように確認します。
  • 法務局の自筆証書遺言書保管制度
  • 様式面の注意
  • 自筆証書遺言書保管制度は、法務局で自筆証書遺言を保管する制度です。

POINT 6

  • 自筆証書遺言の財産目録が遺留分・相続税・相続登記に与える影響
  • 遺留分
  • 遺産全体の把握がしやすくなり、侵害の有無、代償金、生命保険の活用、資金手当てを検討しやすくなります。
  • 相続税
  • 税法上の評価額、債務控除、葬式費用、非課税財産、生前贈与、小規模宅地等の特例などの検討につながります。

POINT 7

  • 自筆証書遺言の財産目録で起きやすい無効リスク
  • 本文をパソコン作成
  • 遺言書全体をパソコンで作り、署名押印だけ手書きにすると、自筆証書遺言の方式を満たさないおそれがあります。
  • 署名押印漏れ
  • 自書しない財産目録の一部ページ、コピー資料、両面印刷の裏面で漏れがあると、財産特定に影響する可能性があります。

POINT 8

  • 自筆証書遺言の財産目録をパソコンで作成する手順とチェックリスト
  • 1. 1 財産資料を集める:登記事項証明書、課税明細書、通帳、残高証明書、証券残高報告書、保険証券、借入金明細、契約書、会社資料を確認します。
  • 2. 2 財産目録を作成:財産ごとに番号を付け、取得者や配分文言を入れず、特定情報を中心に整理します。
  • 3. 3 遺言本文を自書:目録番号を参照しながら、誰に何を相続させるか、遺贈するか、遺言執行者を誰にするかを書きます。
  • 4. 4 各ページに署名押印:パソコン作成の目録やコピー資料の各ページ、両面印刷の場合は両面を確認します。
  • 5. 5 保管方法を決める:自宅保管、専門家保管、法務局保管制度、公正証書遺言への切替えを検討します。

まとめ

  • 自筆証書遺言の財産目録は パソコンで作成できる?
  • 自筆証書遺言の財産目録をパソコンで作成できる改正の全体像:2019年改正で便利になった点と、今も守るべき方式を先に整理します。
  • 自筆証書遺言の財産目録をパソコンで作成できるようになった改正内容:施行日、本文自書の原則、各ページ署名押印を条文構造から確認します。
  • 自筆証書遺言の財産目録と本文の境界:目録に書ける財産特定情報と、本文に自書すべき意思表示を分けます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

自筆証書遺言の財産目録をパソコンで作成できる改正の全体像

2019年改正で便利になった点と、今も守るべき方式を先に整理します。

自筆証書遺言の財産目録は、2019年1月13日以後、パソコンで作成した一覧表や通帳コピー、登記事項証明書のコピーを添付できるようになりました。中心になる条文は民法968条2項で、本文の自書原則を残しつつ、財産を特定する目録部分だけを柔軟にした改正です。

最初に重要な線引きを整理します。次の強調表示は、この改正で何が便利になり、どこで方式違反が起きやすいかを表しています。本文と財産目録の違いを読み取ることが、遺言の有効性を守るうえで特に重要です。

パソコンで作れるのは財産目録です

誰に何を相続させるか、誰を遺言執行者にするかといった遺言本文は、現在も遺言者本人の自書が原則です。自書しない財産目録には、各ページの署名押印が必要です。

改正後の扱いは、作れるものと作れないものを分けて確認すると理解しやすくなります。次の比較表は、作成方法、必要な署名押印、誤った場合のリスクを並べたものです。どの欄が本文で、どの欄が添付資料にすぎないのかを確認してください。

対象パソコン作成必要な対応主な注意点
遺言本文原則不可全文、日付、氏名を自書し押印署名押印だけ手書きにしても方式違反のおそれがあります。
財産目録可能自書しない各ページに署名押印両面印刷なら表面と裏面の双方に署名押印が必要です。
通帳や登記事項証明書のコピー添付可能財産目録として扱うページに署名押印財産の特定、最新性、本文との対応関係を確認します。

この改正の意義は、財産が多い人や手書きが難しい人の負担を下げ、転記ミスを減らす点にあります。他方で、目録への配分文言の混入、署名押印漏れ、古い資料の利用、保管方法の不備など、新しい確認事項も増えています。

Section 01

自筆証書遺言の財産目録をパソコンで作成できるようになった改正内容

施行日、本文自書の原則、各ページ署名押印を条文構造から確認します。

改正前は財産目録も全文自書が必要でした

改正前の自筆証書遺言では、遺言書の全文、日付、氏名だけでなく、財産目録もすべて遺言者本人が手書きする必要がありました。預貯金、不動産、有価証券、投資信託、生命保険契約、貸付金、事業用資産、非上場株式、知的財産権、暗号資産、貴金属、動産などが多い場合、正確に書き写す負担は大きいものでした。

不動産では所在、地番、地目、地積、家屋番号、種類、構造、床面積、共有持分などを登記情報に沿って書く必要があります。預貯金では金融機関名、支店名、預金種別、口座番号を正確に特定します。書き損じがあると訂正方式も厳格で、実務上は作り直しが勧められる場面も少なくありません。

改正の流れは、いつ作成された遺言かによって結論が変わるため、時期を押さえることが重要です。次の時系列は、方式緩和、保管制度、相続登記義務化、相続税申告期限の関係を示します。日付ごとの意味を読み取り、作成日や相続開始後の期限を混同しないようにしてください。

2019年1月13日

財産目録の自書不要が施行

この日以後に作成された自筆証書遺言では、要件を満たせばパソコン作成の財産目録を添付できます。

2020年7月10日

法務局の保管制度が開始

自筆証書遺言を法務局で保管できる制度が始まり、保管された遺言は家庭裁判所の検認が不要になります。

2024年4月1日

相続登記が義務化

相続で不動産を取得したことを知った日から原則3年以内に登記申請が必要となりました。

相続開始後10か月以内

相続税の申告と納税

相続税が必要な場合、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内が原則期限です。

本文の自書原則は残っています

民法968条の基本は、遺言者本人が遺言書の全文、日付、氏名を自書し、押印することです。改正で加わった例外は、自筆証書遺言に添付する財産目録について、自書しなくてもよいという点に限られます。本人の最終意思を示す部分までパソコン作成や代筆を広く認めると、第三者の介入、偽造、本人意思とのずれが問題になりやすいためです。

署名押印は各ページで確認します

自書しない財産目録を添付する場合、その各ページに遺言者本人が署名押印します。片面印刷なら各用紙の表面、両面印刷なら表面と裏面の双方に必要です。押印は法律上、実印に限られないとされますが、信用性や後日の争いを考えると、実印や印鑑登録証明書の保管状況を含めて整理する実務上の配慮が重要になります。

Section 02

自筆証書遺言の財産目録と本文の境界

目録に書ける財産特定情報と、本文に自書すべき意思表示を分けます。

この改正で最も争点になりやすいのは、財産目録と遺言本文の境界です。次の判断の流れは、ある記載が財産を特定する情報なのか、相続させる意思表示なのかを確認するためのものです。分岐の順番を追うことで、パソコン作成の目録に入れてよい内容と、自書本文に残す内容を読み分けられます。

本文と財産目録を分ける判断の流れ

記載したい内容を確認

不動産の所在、口座番号、証券会社名など、財産を特定する情報かを見ます。

取得者や配分を含むか

長男Aに相続させる、妻Bに全部与える、割合で分けるなどの意思表示があるかを確認します。

含む
本文として自書する領域

配分内容は遺言の中核です。パソコン作成の目録に入れると無効リスクがあります。

含まない
目録に整理しやすい領域

財産の番号、種類、所在地、口座番号などは目録に整理できます。

危険な書き方と安全な書き方

形式上「財産目録」と題していても、取得者や配分文言が入ると、単なる財産特定を超える可能性があります。次の比較表は、同じ財産を扱う場合でも、目録に書くべき情報と本文に自書すべき情報を分けたものです。どの列がリスクにつながるかを確認してください。

場面避けたい目録記載安全に近い整理
自宅土地建物自宅土地建物を長男Aに相続させる目録には登記情報を記載し、本文で「別紙財産目録第1記載の不動産を長男Aに相続させる」と自書します。
預貯金〇〇銀行の預金を妻Bに全部相続させる目録には金融機関名、支店名、種別、口座番号を書き、取得者は本文に書きます。
複数財産表の取得者欄に相続人名を並べる第1不動産、第2預貯金、第3有価証券のように番号を付け、本文から番号で参照します。

本文と目録を対応させるには、別紙財産目録第1、不動産、別紙財産目録第2、預貯金、別紙財産目録第3、有価証券のように番号付けする方法が有用です。本文で番号を参照すれば、配分内容を自書本文に残しつつ、目録では特定情報を正確に整理できます。

注意目録に取得者名を書くこと自体が常に直ちに無効と断定されるわけではありませんが、本文的な意思表示と評価される可能性があります。具体的な有効性は記載全体、作成経緯、証拠関係で変わるため、争いが予想される場合は専門家へ確認する必要があります。
Section 03

自筆証書遺言の財産目録に書く財産別の実務

不動産、預貯金、有価証券、保険、貸付金、非上場株式、デジタル資産を整理します。

財産目録の役割は、財産を相続人や手続先が特定できるように整理することです。次の一覧は、財産の種類ごとに必要になりやすい情報と注意点をまとめたものです。列ごとの差を確認することで、どの資料を集め、どの情報を目録に入れるべきかを読み取れます。

財産の種類目録で整理する情報実務上の注意点
不動産所在、地番、地目、地積、家屋番号、種類、構造、床面積、共有持分住居表示だけでなく登記情報に基づきます。マンションは専有部分、敷地権、共有持分に注意します。
預貯金金融機関名、支店名、預金種別、口座番号残高は変動します。通帳コピーは口座番号や名義がわかるページを使います。
有価証券・投資信託証券会社名、部店名、口座番号、名義人、銘柄名、数量売却、買替え、償還、分配、株式分割で内容が変わるため、口座全体か個別銘柄かを検討します。
生命保険保険会社名、証券番号、契約者、被保険者、受取人、保険種類死亡保険金は受取人固有の権利と扱われることが多く、遺言対象との関係を確認します。
貸付金・債権債務者、契約日、元本額、残高、利息、弁済期、担保書面がない貸付は、贈与か貸付かをめぐって争いになりやすいです。
非上場株式・事業用資産会社名、株数、種類株式、譲渡制限、株主名簿、定款評価、事業承継、遺留分、納税資金、後継者の支配権を一体で検討します。
デジタル資産・暗号資産交換業者名、口座番号、資産の種類秘密鍵、パスワード、二段階認証コードを遺言書に直接書くことは情報漏えいの観点から危険です。

コピー資料を使う場合の考え方

登記事項証明書、固定資産税納税通知書、課税明細書、通帳、残高報告書、保険証券、貸付契約書などのコピーは、財産目録として有用です。ただし、コピーを添付すれば常に十分というわけではありません。本文との対応関係、最新性、不要な個人情報、誤解を招く記載の有無を確認します。

財産ごとの確認事項は、手続先や財産の性質によって変わります。次の一覧は、不動産、金融資産、会社・デジタル資産の3系統で何を重視するかを表しています。自分の財産構成に近い項目から、重点的に読み取ってください。

不動産

登記に耐える特定

土地、建物、敷地権、私道持分、附属建物、未登記建物の漏れを確認します。古い登記事項証明書では売却、抵当権抹消、分筆、合筆が反映されていないことがあります。

金融資産

口座と契約の特定

預貯金は支店名や口座番号、証券は口座番号や銘柄、保険は証券番号を整理します。残高だけでは口座特定が不十分な場合があります。

特殊財産

承継と管理の設計

非上場株式、事業用資産、暗号資産は、権利の特定だけでなく、評価、管理権限、秘密情報の扱い、後継者への引継ぎを検討します。

Section 04

自筆証書遺言の財産目録と法務局保管制度・検認

保管制度、家庭裁判所の検認、様式上の注意を混同しないように確認します。

法務局の自筆証書遺言書保管制度

自筆証書遺言書保管制度は、法務局で自筆証書遺言を保管する制度です。自宅保管に伴う紛失、破棄、隠匿、改ざんのリスクを一定程度下げる効果があり、法務局で保管された自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が不要になります。

ただし、保管制度は遺言内容の法律的・税務的な妥当性を保証するものではありません。次の比較表は、保管制度と検認の役割を整理したものです。制度ごとの目的を読み分けることで、「預ければ内容まで有効になる」「検認を受ければ方式違反が直る」といった誤解を避けられます。

制度主な役割できないこと
法務局保管制度自筆証書遺言を保管し、形式面を一定程度確認します。保管された遺言は検認不要です。誰に何を相続させるか、遺留分侵害、税務、登記可否などの内容判断は行いません。
家庭裁判所の検認遺言書の状態や内容を確認し、相続人に存在と内容を知らせる証拠保全的な手続です。遺言が有効か無効かを最終的に判断する手続ではありません。
自宅保管費用を抑えて本人の手元で保管できます。発見されない、紛失する、破棄・改ざんされるリスクがあります。

様式面の注意

保管制度を利用する場合、用紙サイズ、余白、片面記載、ページ番号、綴じないことなどの様式面が問題になります。財産目録も本文と同様に形式面のルールに従う必要があります。実務上は、署名押印漏れを防ぐ意味でも、財産目録を片面印刷にして各ページ余白に署名押印する方法が扱いやすいです。

確認検認不要や法務局保管は、方式不備や遺言能力の争いをすべて消すものではありません。内容面の紛争予防には、作成時点での記載確認、資料整理、必要に応じた専門家の関与が重要です。
Section 06

自筆証書遺言の財産目録で起きやすい無効リスク

本文のパソコン作成、署名押印漏れ、日付や訂正の誤りを確認します。

自筆証書遺言の財産目録をパソコンで作成できるようになっても、方式の確認が不要になったわけではありません。次の一覧は、典型的な無効リスクや紛争リスクをまとめたものです。どのミスが本文、目録、日付、保管のどこで起きるのかを読み取ってください。

本文をパソコン作成

遺言書全体をパソコンで作り、署名押印だけ手書きにすると、自筆証書遺言の方式を満たさないおそれがあります。

署名押印漏れ

自書しない財産目録の一部ページ、コピー資料、両面印刷の裏面で漏れがあると、財産特定に影響する可能性があります。

配分文言の混入

目録に「Aに相続させる」「Bに遺贈する」と書くと、本文的な意思表示と見られる危険があります。

日付の不明確さ

「令和〇年〇月吉日」のように具体的な作成日がわからない記載は問題になります。複数遺言では日付が特に重要です。

訂正方法の誤り

自筆証書遺言の訂正方式は厳格です。誤記がある場合は、該当ページや遺言全体を作り直す方が安全なことがあります。

遺言能力や真意の争い

認知症、入院中の作成、家族の関与が強い作成状況では、医療記録、作成経緯、面談記録などが重要になります。

重要方式違反が疑われる場合でも、有効性は遺言全体の記載、添付資料、作成経緯、証拠関係によって争点が変わります。個別の見通しや対応方針は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
Section 07

自筆証書遺言の財産目録をパソコンで作成する手順とチェックリスト

資料収集から保管まで、作成段階ごとに確認する項目を整理します。

作成作業は、資料収集、目録作成、本文自書、署名押印、保管の順で確認すると漏れを減らせます。次の手順図は、財産目録をパソコンで作る場合の基本的な行動順を表しています。順番どおりに見ることで、どの段階で財産調査、本文自書、署名押印、保管判断を行うかを把握できます。

財産目録を使う自筆証書遺言の作成手順

1 財産資料を集める

登記事項証明書、課税明細書、通帳、残高証明書、証券残高報告書、保険証券、借入金明細、契約書、会社資料を確認します。

2 財産目録を作成

財産ごとに番号を付け、取得者や配分文言を入れず、特定情報を中心に整理します。

3 遺言本文を自書

目録番号を参照しながら、誰に何を相続させるか、遺贈するか、遺言執行者を誰にするかを書きます。

4 各ページに署名押印

パソコン作成の目録やコピー資料の各ページ、両面印刷の場合は両面を確認します。

5 保管方法を決める

自宅保管、専門家保管、法務局保管制度、公正証書遺言への切替えを検討します。

実務チェックリスト

作成前、本文、財産目録、保管は、それぞれ確認する項目が異なります。次の比較表は、段階ごとの確認事項をまとめたものです。自分が今どの段階にいるかに合わせて、漏れがないかを読み取ってください。

段階確認すること
作成前推定相続人、戸籍関係、財産と債務、不動産登記事項証明書、預貯金・証券・保険資料、遺留分、相続税、相続登記、事業承継を確認します。
本文本人が自書しているか、誰に何を相続させるかが明確か、目録番号と参照が一致しているか、日付、氏名、押印、遺言執行者、予備的条項を確認します。
財産目録財産特定情報に徹しているか、取得者や配分内容を書いていないか、各ページ署名押印、ページ番号、登記情報、口座情報、証券・保険の特定、資料の新しさを確認します。
保管発見可能性、改ざん・破棄・隠匿リスク、法務局保管制度、公正証書遺言にすべき事情、家族や遺言執行者への情報共有を確認します。

実務上安全に近い方針

  1. 本文は必ず遺言者本人が自書します。
  2. 財産目録には財産の特定情報だけを書きます。
  3. 取得者、配分割合、相続させる文言は本文に書きます。
  4. 財産目録は片面印刷にします。
  5. 財産目録の各ページに署名押印します。
  6. 不動産は登記事項証明書に基づいて特定します。
  7. 預貯金は金融機関名、支店名、種別、口座番号で特定します。
  8. 古い資料を使わないようにします。
  9. 遺留分、相続税、相続登記を事前に検討します。
  10. 争いが予想される場合は公正証書遺言も検討します。
  11. 作成後は法務局保管制度の利用を検討します。
  12. 遺言執行者を指定するか検討します。
Section 08

自筆証書遺言の財産目録を専門家が見る視点

紛争予防、登記、税務、書類整理、公正証書化、執行実務の観点を整理します。

財産目録のパソコン化によって、専門職が資料作成や確認に関与しやすくなりました。一方で、専門職ごとに見ているリスクや扱える業務範囲は異なります。次の一覧は、誰がどの論点を重視するかを表しています。自分の事案に近い課題から、どの専門家に確認すべきかを読み取ってください。

弁護士

遺留分、特別受益、寄与分、使い込み疑い、遺言能力、無効確認訴訟など、相続紛争を予防できるかを検討します。

紛争予防

司法書士

不動産の特定、私道持分、共有持分、敷地権、附属建物、未登記建物、相続登記に耐える記載を確認します。

登記

税理士

相続税申告、納税資金、二次相続、過去の贈与、名義預金、小規模宅地等の特例を検討します。

税務

行政書士

争いのない場面での書類整理、財産資料の一覧化、本人の意思確認の補助などを担います。

書類整理

公証人

複雑な家族関係、高額財産、事業承継、遺留分紛争が予想される場合、公正証書遺言も比較検討します。

公正証書

遺言執行者

財産目録が正確であれば、金融機関、不動産登記、証券会社、保険会社との手続を進めやすくなります。

手続実務

不動産・評価の専門家

不動産鑑定、境界、分筆、表示登記、未登記建物、売却可能性など、将来の評価や処分まで見据えて確認します。

評価

家庭裁判所実務

検認、遺産分割調停、審判、特別代理人選任など、方式や内容に問題がある場合の紛争化を意識します。

裁判手続
範囲各専門職の業務範囲には限界があります。紛争、税務、登記、財産評価、保険、事業承継が絡む場合は、単独の視点ではなく複数の専門家の連携が望ましい場面があります。
Section 09

自筆証書遺言の財産目録についてよくある誤解

全部パソコンで作れるのか、保管や検認で有効性が保証されるのかを一般情報として確認します。

自筆証書遺言は全部パソコンで作れるようになったのですか

一般的には、パソコンで作成できるようになったのは添付する財産目録に限られるとされています。本文、日付、氏名は遺言者本人の自書が原則です。ただし、具体的な有効性は記載全体や作成時期によって変わる可能性があります。個別の見通しは、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

財産目録に署名押印すれば本文もパソコンでよいのですか

一般的には、財産目録の各ページに署名押印する要件は、自書しない目録の要件であり、本文の自書要件をなくすものではないとされています。ただし、本文と目録の境界は記載内容によって問題になる可能性があります。具体的には専門家へ確認する必要があります。

財産目録は家族が作成してもよいのですか

一般的には、財産目録自体は本人以外がパソコンで作成することも可能とされています。ただし、遺言者本人が内容を理解し、各ページに署名押印する必要があります。家族の関与が強い場合、本人の真意や遺言能力が争われる可能性があるため、作成経緯の記録が重要になります。

コピー資料だけを添付すれば十分ですか

一般的には、通帳コピーや登記事項証明書のコピーは有用な資料とされています。ただし、本文との対応関係が明確でない場合、どの財産を誰に取得させる趣旨かが争点になる可能性があります。資料の最新性や署名押印の有無も確認する必要があります。

法務局に預ければ内容まで有効になりますか

一般的には、法務局保管制度は保管と形式面の確認を中心とする制度であり、遺言内容の法律的・税務的な妥当性を保証するものではないとされています。遺留分、相続税、登記可否、事業承継などは個別事情によって結論が変わるため、必要に応じて専門家へ相談する必要があります。

検認を受ければ方式違反は解消されますか

一般的には、検認は遺言書の状態を確認する手続であり、有効性を確定する手続ではないとされています。方式違反、遺言能力、偽造、錯誤、遺留分侵害などの争いは残る可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。

Section 10

自筆証書遺言の本文例と財産目録例

本文に自書する事項と、パソコンで整理できる目録情報の違いを文例で確認します。

文例は、本文に書くべき意思表示と、財産目録に整理する特定情報を分ける感覚をつかむために重要です。次の比較表は、本文例と目録例の役割の違いを表しています。左側が本人の意思表示、右側が財産特定のための情報であることを読み取ってください。

本文に自書する例財産目録に整理する例
遺言者〇〇〇〇は、次のとおり遺言する。別紙財産目録第1 不動産
第1条 遺言者は、別紙財産目録第1記載の不動産を、長男〇〇〇〇に相続させる。土地 所在〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目、地番〇番〇、地目宅地、地積〇〇・〇〇平方メートル、持分全部
第2条 遺言者は、別紙財産目録第2記載の預貯金を、妻〇〇〇〇に相続させる。建物 所在〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地〇、家屋番号〇番〇、種類居宅、構造木造瓦葺2階建、床面積、持分全部
第3条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、長女〇〇〇〇を指定する。令和〇年〇月〇日 遺言者〇〇〇〇 印
令和〇年〇月〇日 住所、遺言者氏名、押印パソコン作成の財産目録は各ページに署名押印します。
文例の読み方この例は考え方を示す一般的な整理です。実際には家族関係、財産内容、遺留分、税務、登記、事業承継、健康状態、作成経緯によって必要な記載が変わります。
Section 11

自筆証書遺言の財産目録を使う事案別の判断

財産が少ない場合、不動産がある場合、対立がある場合、相続税や会社承継がある場合を整理します。

財産目録の活用度は、財産の量、家族関係、税務や登記の有無によって変わります。次の一覧は、典型的な事案別に、財産目録を使う意義と追加で確認すべき点を表しています。自分に近い状況を探し、どのリスクが強いかを読み取ってください。

財産が少ない

本文だけで足りる場合もある

預貯金口座が1つか2つ程度で不動産がない場合、本文中にすべて自書する方法も考えられます。ただし、支店名や口座番号の書き間違いを防ぐため、目録作成はなお有用です。

不動産がある

目録の活用価値が高い

登記事項証明書の記載を正確に反映させ、相続登記に使いやすい遺言にする必要があります。司法書士の確認を受けると、登記実務上の不備を避けやすくなります。

対立がある

方式不備が争点化しやすい

認知症の疑い、入院中の作成、同居相続人の強い関与、財産の大半を一人に与える内容では、作成経緯の透明性が重要です。公正証書遺言も検討対象になります。

相続税が見込まれる

税務検討の出発点になる

財産目録は納税資金、特例適用、二次相続、過去の贈与、名義預金の確認につながります。税理士への確認が重要です。

会社経営者

株式承継が経営権に直結

株式数や会社名を明確にし、本文で後継者への承継を示します。遺留分、株式評価、納税資金、会社法上の制限、定款、株主間契約も併せて検討します。

Section 12

自筆証書遺言の財産目録をパソコンで作成する改正のまとめ

本文自書、各ページ署名押印、専門家確認の必要性を最後に確認します。

改正の評価

自筆証書遺言の財産目録をパソコンで作成できるようになった改正は、自筆証書遺言の利用を促進する重要な制度改正です。不動産や預貯金口座が複数ある場合、パソコン作成の一覧表やコピー資料を利用できることは、手書き転記ミスを減らし、相続人や遺言執行者が財産を把握しやすくする効果があります。

ただし、方式緩和は方式の消滅ではありません。本文は自書、財産目録には各ページ署名押印、取得者や配分文言は本文に残す、古い資料を使わない、保管方法を確認するという基本線を外さないことが重要です。

最終的に押さえるべき要点を一覧でまとめます。次の重要ポイントは、制度を利用するうえで何を守り、何を専門家確認につなげるかを表しています。形式と内容の双方を整える視点で読み取ってください。

本文は自書、目録はパソコン可、各ページ署名押印

この3点が改正後の自筆証書遺言を理解する軸です。遺留分、相続税、相続登記、遺言執行、事業承継、不動産評価は、財産目録のパソコン化だけでは解決しないため、事案に応じて専門家と連携することが重要です。

一般情報としての限界

このページは、一般的な法制度と実務上の注意点を整理するものです。個別の遺言作成、法律判断、税務判断、登記判断、鑑定評価、保険、投資判断については、財産内容、家族関係、健康状態、作成経緯、証拠関係によって必要な対応が変わります。

Reference

この記事の参考情報源

公的機関・専門団体の資料

  • 法務省「相続に関するルールが大きく変わります」
  • 政府広報オンライン「知っておきたい遺言書のこと」
  • 日本公証人連合会「自筆証書遺言はどのようにして作成するのですか」
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度」関連資料
  • 裁判所「遺言書の検認」
  • 国税庁「相続税の申告と納税」
  • 国税庁「相続税がかかる場合」
  • 法務省「相続登記の申請義務化」
  • e-Gov法令検索「民法」