2σ Guide

相続時精算課税で払った贈与税と
相続税の関係

贈与時に納めた贈与税は、将来の相続税と無関係な別税ではありません。相続時に持ち戻し、控除し、控除しきれない場合は還付まで検討する制度構造を整理します。

110万円 令和6年以後の年基礎控除
2,500万円 累計の特別控除
20% 特別控除後の税率
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相続時精算課税で払った贈与税と 相続税の関係

贈与時に納めた贈与税は、将来の相続税と無関係な別税ではありません。

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相続時精算課税で払った贈与税と 相続税の関係
贈与時に納めた贈与税は、将来の相続税と無関係な別税ではありません。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 相続時精算課税で払った贈与税と 相続税の関係
  • 贈与時に納めた贈与税は、将来の相続税と無関係な別税ではありません。

POINT 1

  • 相続時精算課税で払った贈与税と相続税の関係を先に整理
  • 贈与時に納めた税金は、贈与者の死亡時に相続税の中で控除・還付まで含めて精算されます。
  • 贈与税は最終税額とは限りません
  • 加算額は原則として贈与時の価額です
  • 2,500万円は完全非課税枠ではありません

POINT 2

  • 相続時精算課税で払った贈与税と相続税の関係を理解する用語
  • 1. 贈与者と受贈者の年齢要件を確認:原則として60歳以上の父母・祖父母などから18歳以上の子・孫などへの贈与が対象です。
  • 2. 贈与者ごとに選択する:父からの贈与だけを選び、母からは暦年課税を続ける設計もあり得ます。
  • 3. 初回選択年の届出を確認:贈与税申告が不要な110万円以下の年でも、初回選択なら届出書自体が必要です。
  • 4. 同じ贈与者について戻れない:一度選ぶと、その特定贈与者からの贈与は以後も相続時精算課税で扱います。

POINT 3

  • 相続時精算課税で払った贈与税は相続税でどう精算されるか
  • 1. 贈与時の課税価格を計算:その年の贈与額から110万円の基礎控除と、残っている2,500万円の特別控除を差し引きます。
  • 2. 課税価格に20%を掛ける:特別控除を超えた部分に、一律20%の贈与税がかかります。
  • 3. 贈与者死亡時に相続税へ持ち戻す:令和6年以後の贈与は、各年110万円控除後の残額を相続税の課税価格へ加算します。
  • 4. 既に払った贈与税を控除:相続税額から贈与税相当額を差し引き、余る場合は還付の検討に進みます。

POINT 4

  • 相続時精算課税で払った贈与税と暦年課税の違い
  • 同じ贈与者について戻れない
  • 一度選択すると、その贈与者からの贈与は以後も相続時精算課税で扱われます。
  • 値下がり資産では不利になり得る
  • 相続時の加算額は原則として贈与時価額ベースのため、死亡時に値下がりしていても調整されにくい構造です。

POINT 5

  • 相続時精算課税で払った贈与税と相続税の計算例
  • 値上がり資産では有利に働きやすい
  • 3,000万円の土地が死亡時に5,000万円へ上がっても、令和6年以後の加算額は通常2,890万円が基準になります。
  • 値下がり資産では不利になり得る
  • 死亡時に2,000万円へ下がっても、相続税上は贈与時価額ベースの2,890万円が加算される可能性があります。

POINT 6

  • 相続時精算課税で払った贈与税と相続税の境界事例
  • 1. 110万円控除なしの贈与を抽出:相続時精算課税贈与があれば、原則として贈与時価額をそのまま加算候補にします。
  • 2. 各年110万円控除後の金額を整理:同一年に複数の特定贈与者がいる場合は、あん分計算の有無も確認します。
  • 3. 相続財産と合わせて申告判断:相続税がゼロでも、既払贈与税があれば還付申告の必要性を確認します。

POINT 7

  • 相続時精算課税で払った贈与税と相続税のよくある誤解
  • 2,500万円、110万円、還付、持戻し、不可逆性を取り違えないことが重要です。
  • 2,500万円まで完全非課税ではありません
  • 110万円以下でも初回届出は別問題です
  • 相続税ゼロでも還付手続が残ることがあります

POINT 8

  • 相続時精算課税で払った贈与税と相続税を実務で判断する方法
  • 基礎控除以下に収まりそう
  • 将来の遺産総額が基礎控除以下なら、暦年課税の方がシンプルなことがあります。
  • 値下がりリスクが大きい
  • 贈与時価額で固定されるため、死亡時に価値が下がると不利になり得ます。

まとめ

  • 相続時精算課税で払った贈与税と 相続税の関係
  • 相続時精算課税で払った贈与税と相続税の関係を先に整理:贈与時に納めた税金は、贈与者の死亡時に相続税の中で控除・還付まで含めて精算されます。
  • 相続時精算課税で払った贈与税と相続税の関係を理解する用語:贈与者ごとに選ぶ制度で、一度選ぶと同じ贈与者について暦年課税へ戻れません。
  • 相続時精算課税で払った贈与税は相続税でどう精算されるか:贈与時の課税価格、相続時の持戻し、既払贈与税の控除、還付を順に確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

相続時精算課税で払った贈与税と相続税の関係を先に整理

贈与時に納めた税金は、贈与者の死亡時に相続税の中で控除・還付まで含めて精算されます。

相続時精算課税で払った贈与税と相続税の関係は、贈与税と相続税を別々に終わらせる関係ではありません。贈与時にいったん贈与税を計算し、贈与者が亡くなった時点で相続税に持ち戻して、既に納めた贈与税相当額を控除する通算型の制度です。

次の一覧は、この制度を読むうえで最初に押さえる結論をまとめたものです。贈与時の納税だけを見ると損得を誤りやすいため、相続時の加算、控除、還付、手続の4点を一体で読み取ることが重要です。

Point 01

贈与税は最終税額とは限りません

相続時精算課税で納めた贈与税は、贈与者死亡時に相続税額から控除されます。控除しきれない場合は還付の対象になり得ます。

Point 02

加算額は原則として贈与時の価額です

令和6年以後の贈与では、各年の贈与額から110万円を控除した残額が相続税の加算対象になります。

Point 03

2,500万円は完全非課税枠ではありません

累計2,500万円の特別控除は、贈与時の税額計算で使う控除です。相続時には持ち戻しの対象になります。

Point 04

損得は相続時まで見て判断します

資産価格の変動、遺産総額、誰が相続で財産を取得するか、申告や還付の手続まで含めて判断します。

次の比較は、相続時精算課税を理解するための主要な数値です。金額や期限は制度判断の入口になるため、どの数字が贈与時の計算に関係し、どの数字が相続時の申告や還付に関係するかを読み分けてください。

数字意味確認すべき場面
年110万円令和6年以後の相続時精算課税に係る基礎控除です。贈与時の課税価格と相続時の加算額を計算するときに確認します。
累計2,500万円贈与時の税額計算で使う特別控除です。累計で使った残高を贈与者ごとに管理します。
20%特別控除後の課税価格にかかる相続時精算課税の贈与税率です。贈与時にいったん納める税額を計算します。
5年還付を受けるための相続税申告を、相続開始の日の翌日から提出できる期間の目安です。相続税がゼロでも過去の贈与税を回収したいときに確認します。
結論相続時精算課税の贈与税は、制度上「先払い」または「仮払い」に近い性質を持つことがあります。ただし、自動的に戻るわけではなく、相続税申告や資料整理が必要です。
Section 01

相続時精算課税で払った贈与税と相続税の関係を理解する用語

贈与者ごとに選ぶ制度で、一度選ぶと同じ贈与者について暦年課税へ戻れません。

用語の違いを曖昧にしたまま計算へ進むと、2,500万円控除や110万円控除の意味を誤りやすくなります。次の表では、制度上の言葉と実務上の意味を対応させ、どの場面で確認するかを読み取れるように整理しています。

用語やさしい説明実務上の注意
相続時精算課税贈与時に贈与税を計算し、将来の相続税で精算する制度です。贈与者ごとに選択し、同じ贈与者については暦年課税へ戻れません。
特定贈与者相続時精算課税の選択対象となった父母・祖父母などです。父は相続時精算課税、母は暦年課税のように分けることがあります。
相続時精算課税適用財産選択後に特定贈与者から受けた贈与財産です。相続時には、原則として贈与時の価額を基準に持ち戻します。
贈与税相当額既に納め、相続税計算で控除対象となる贈与税です。相続税額から控除しきれないと還付される可能性があります。
遺産に係る基礎控除相続税がかかるかを判断する基準額です。3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算します。
暦年課税1年ごとに贈与税を計算する通常の方式です。相続開始前一定期間の加算や還付の扱いが相続時精算課税と異なります。

次の判断の流れは、相続時精算課税を選ぶ入口で確認する順番を示しています。年齢要件、贈与者ごとの選択、届出、不可逆性の順で確認すると、制度を選んだ後に戻れないリスクを読み取りやすくなります。

相続時精算課税を選ぶ前の確認順序

贈与者と受贈者の年齢要件を確認

原則として60歳以上の父母・祖父母などから18歳以上の子・孫などへの贈与が対象です。

贈与者ごとに選択する

父からの贈与だけを選び、母からは暦年課税を続ける設計もあり得ます。

初回選択年の届出を確認

贈与税申告が不要な110万円以下の年でも、初回選択なら届出書自体が必要です。

同じ贈与者について戻れない

一度選ぶと、その特定贈与者からの贈与は以後も相続時精算課税で扱います。

次の時系列は、制度を選んでから相続時の精算までを並べたものです。どの時点で届出・申告・控除・還付の検討が必要になるかを、順番に追って確認してください。

贈与を受けた年

制度を選ぶかを判断

贈与者ごとに選択し、年110万円の基礎控除と2,500万円の特別控除の利用状況を記録します。

翌年2月1日から3月15日

初回届出と贈与税申告

必要な場合は贈与税申告書に相続時精算課税選択届出書を添付します。

贈与者死亡時

相続税の課税価格へ加算

相続財産に、相続時精算課税適用財産の加算額を足して相続税を計算します。

相続税申告時

既払贈与税を控除し還付を検討

相続税額から贈与税相当額を差し引き、控除しきれない場合は申告により還付を検討します。

Section 02

相続時精算課税で払った贈与税は相続税でどう精算されるか

贈与時の課税価格、相続時の持戻し、既払贈与税の控除、還付を順に確認します。

次の順序は、贈与時と相続時で税額がどのようにつながるかを示しています。青系の段階は計算の入口、注意色の段階は控除・還付の判断点です。贈与時だけで終わらず、最後に相続税で再計算する点を読み取ってください。

贈与時から相続時までの精算構造

贈与時の課税価格を計算

その年の贈与額から110万円の基礎控除と、残っている2,500万円の特別控除を差し引きます。

課税価格に20%を掛ける

特別控除を超えた部分に、一律20%の贈与税がかかります。

贈与者死亡時に相続税へ持ち戻す

令和6年以後の贈与は、各年110万円控除後の残額を相続税の課税価格へ加算します。

既に払った贈与税を控除

相続税額から贈与税相当額を差し引き、余る場合は還付の検討に進みます。

次の表は、令和5年以前の贈与と令和6年以後の贈与で、相続税に加算する金額がどう違うかを整理しています。年次により110万円控除の有無が変わるため、複数年の贈与がある場合は年ごとに区分して読む必要があります。

贈与の時期贈与時の扱い相続時の加算額注意点
令和5年以前相続時精算課税に年110万円の基礎控除はありません。原則として贈与時価額の全額を加算します。新制度と混在すると、過去分だけ扱いが異なります。
令和6年以後年110万円の基礎控除を差し引きます。各年の贈与額から110万円を控除した残額を加算します。同一年に複数の特定贈与者がいると、基礎控除はあん分されます。
贈与時の式その年に特定贈与者から受けた贈与額 - 年110万円の基礎控除 - 累計2,500万円までの特別控除 = 課税価格。課税価格 × 20% = 贈与税額です。
相続時の式相続財産 + 相続時精算課税適用財産の加算額 - 債務・葬式費用・非課税財産等 + 暦年課税の加算対象贈与 = 各人の課税価格です。

次の強調表示は、相続時精算課税と暦年課税の大きな違いである還付の有無を示しています。控除しきれない税額がどう処理されるかは、過去に贈与税を納めた家庭にとって資金回収の可否を左右します。

相続時精算課税では控除しきれない贈与税相当額が還付され得ます

相続税額が配偶者の税額軽減などで圧縮された後、既に納めた相続時精算課税分の贈与税相当額を差し引くため、相続税がゼロでも還付申告が必要になることがあります。

次の表は、相続税計算で控除がどの順序で効くかを簡略化したものです。相続時精算課税分の控除が後段で処理されるため、他の控除で税額が小さくなった後に還付が生じ得る点を読み取ってください。

順序控除の種類実務上の意味
1暦年課税分の贈与税額控除生前贈与加算に対応する贈与税を相続税から調整します。
2配偶者の税額軽減など各種の税額軽減により、相続税額が大きく下がることがあります。
3相続時精算課税分の贈与税相当額控除最後に既払贈与税を控除し、余れば還付が問題になります。
Section 03

相続時精算課税で払った贈与税と暦年課税の違い

同じ生前贈与でも、相続時に加算される範囲と還付の扱いが根本的に異なります。

次の比較表は、暦年課税と相続時精算課税を、相続時の再計算という観点で並べたものです。各列は同じ論点を制度別に比較しているため、贈与時の控除だけでなく、相続時の加算範囲と還付の有無を重点的に読んでください。

比較項目暦年課税相続時精算課税
選択通常は特別な選択手続をしません。贈与者ごと・受贈者ごとに選択します。
贈与時の控除毎年110万円の基礎控除です。毎年110万円の基礎控除と累計2,500万円の特別控除です。
贈与時の税率10%から55%の累進税率です。特別控除後の部分に一律20%です。
相続時の加算範囲相続開始前一定期間の贈与が対象です。令和13年以後は原則7年の加算が問題になります。その特定贈与者から受けた相続時精算課税贈与を全期間分加算します。令和6年以後分は各年110万円控除後です。
控除しきれない贈与税還付されません。還付される可能性があります。
向きやすい場面少額を長期にわたり贈与したい場合です。値上がりが見込まれる資産や、管理権・議決権を早く移したい場合です。

次の注意点一覧は、相続時精算課税を選ぶ前に見落としやすいリスクをまとめたものです。各項目は制度選択後の後戻り、価格変動、紛争、申告手続に関係するため、複数当てはまる場合は単純な税額比較だけで判断しないことが重要です。

同じ贈与者について戻れない

一度選択すると、その贈与者からの贈与は以後も相続時精算課税で扱われます。

値下がり資産では不利になり得る

相続時の加算額は原則として贈与時価額ベースのため、死亡時に値下がりしていても調整されにくい構造です。

税務と民法上の争いは別問題

相続税上の持戻しと、特別受益・遺留分・贈与の有効性をめぐる紛争は同じではありません。

還付には申告が必要

相続税がゼロでも、過去に払った贈与税を戻すには相続税申告が必要になることがあります。

Section 04

相続時精算課税で払った贈与税と相続税の計算例

138万円の贈与税が還付される例と、値上がり・値下がり資産の違いを確認します。

次の強調表示は、贈与時に138万円を納めても、相続時の基礎控除により最終的に還付が生じる典型例を示しています。贈与時の税額だけでは制度の損得を判断できないことを読み取ってください。

3,300万円の贈与で138万円を納めても、相続税が0円なら還付され得ます

配偶者1人・子2人の例では、相続時の課税価格が4,690万円となり、基礎控除4,800万円を下回るため相続税は0円です。この場合、相続税申告を通じて既払贈与税138万円の還付が問題になります。

次の表は、上記の数値例を段階別に分解したものです。左から贈与時、相続時、基礎控除判定、還付の順で読むと、138万円がどの時点で発生し、なぜ戻り得るかが分かります。

段階計算結果
贈与時の課税価格3,300万円 - 110万円 - 2,500万円690万円
贈与税690万円 × 20%138万円
相続時加算額3,300万円 - 110万円3,190万円
課税価格の合計3,190万円 + 相続財産1,500万円4,690万円
基礎控除3,000万円 + 600万円 × 3人4,800万円
最終判定4,690万円 < 4,800万円相続税0円。申告により138万円の還付を検討します。

次の一覧は、贈与後に資産価格が動いた場合の読み方をまとめています。相続税の加算額が原則として贈与時価額に固定されるため、値上がりと値下がりで評価が逆方向に働く点を確認してください。

値上がり資産では有利に働きやすい

3,000万円の土地が死亡時に5,000万円へ上がっても、令和6年以後の加算額は通常2,890万円が基準になります。

値下がり資産では不利になり得る

死亡時に2,000万円へ下がっても、相続税上は贈与時価額ベースの2,890万円が加算される可能性があります。

売却時の所得税は別に検討する

贈与後に受贈者が資産を売却する場合、相続税ではなく譲渡所得課税の検討が必要です。

次の一覧は、相続で実物を受け取らない受贈者にも相続時精算課税の持戻しが残り得る場面を整理しています。税務上の扱いと遺産分割の実感がずれる点を読み取ってください。

Case

生前に多額の贈与を受けた長男

死亡時の遺産分割ではほとんど財産を取得しなくても、相続時精算課税適用財産は相続税計算に残り得ます。

Tax

税務上は取得したものとみなす扱い

相続や遺贈で財産を取得しなかった受贈者についても、適用財産を取得したものとみなす場面があります。

Dispute

家族間の公平感は別に整理

税務上の持戻しだけでは、民法上の特別受益や遺留分をめぐる争いは解決しません。

Section 05

相続時精算課税で払った贈与税と相続税の境界事例

贈与者が同年中に亡くなった場合、複数贈与者、旧制度と新制度の混在に注意します。

次の表は、相続時精算課税で実務上つまずきやすい境界事例を整理しています。各行は通常の計算から外れやすい場面なので、どの時点の手続や年分が問題になるかを読み取ってください。

場面基本的な考え方注意点
贈与者が贈与した年に死亡相続時精算課税の対象者については、その年の贈与財産が贈与税ではなく相続税の対象になることがあります。初回選択なら届出書の提出期限・提出先が通常と異なるため確認が必要です。
同一年に複数の特定贈与者年110万円の基礎控除は贈与者ごとに丸ごと使えるわけではありません。各贈与者の課税価格に応じてあん分します。
令和5年以前と令和6年以後が混在令和5年以前は110万円控除なし、令和6年以後は控除後の残額を加算します。年別の贈与額、特別控除残高、加算額を表にして管理します。

次の時系列は、新旧制度が混在する家庭で確認すべき記録の順番です。年ごとに扱いが変わるため、古い贈与から新しい贈与へ順に整理し、相続時の加算対象額を積み上げてください。

令和5年以前

110万円控除なしの贈与を抽出

相続時精算課税贈与があれば、原則として贈与時価額をそのまま加算候補にします。

令和6年以後

各年110万円控除後の金額を整理

同一年に複数の特定贈与者がいる場合は、あん分計算の有無も確認します。

相続発生後

相続財産と合わせて申告判断

相続税がゼロでも、既払贈与税があれば還付申告の必要性を確認します。

Section 06

相続時精算課税で払った贈与税と相続税のよくある誤解

2,500万円、110万円、還付、持戻し、不可逆性を取り違えないことが重要です。

次の一覧は、相続時精算課税でよくある誤解を、正しい読み替えとセットで整理したものです。誤解の内容だけでなく、なぜ相続税計算で問題になるのかを読み取ってください。

Misread 01

2,500万円まで完全非課税ではありません

2,500万円は贈与時の特別控除であり、相続時には相続税計算へ持ち戻されます。

Misread 02

110万円以下でも初回届出は別問題です

令和6年以後に贈与税申告が不要でも、初めて選ぶなら選択届出書が必要です。

Misread 03

相続税ゼロでも還付手続が残ることがあります

過去に納めた相続時精算課税の贈与税を戻すには、相続税申告が必要になることがあります。

Misread 04

相続で何も受けなくても税務上は消えません

相続時精算課税適用財産は、実際の遺産分割と別に相続税計算へ反映されます。

Misread 05

後から暦年課税へ戻せません

同じ特定贈与者については、選択後も相続時精算課税が継続します。

注意制度の有利不利は、贈与時の税額だけではなく、相続発生時の遺産総額、資産価格の変動、申告・還付手続、家族間の紛争可能性まで含めて判断します。
Section 07

相続時精算課税で払った贈与税と相続税を実務で判断する方法

値上がり資産、納税資金、家族間の公平感、専門家の役割分担を同時に確認します。

次の一覧は、相続時精算課税を前向きに検討しやすい場面を整理したものです。各項目は税額だけでなく、管理権や資産承継の時期にも関係するため、何を早く移したいのかを読み取ってください。

将来値上がりしそうな資産

土地、事業用不動産、自社株、成長見込みのある金融資産などは、贈与時価額での固定化が有利に働くことがあります。

価格変動

遺産総額が相続税の課税水準を超えそうな家庭

相続時に持ち戻す制度なので、最終的に相続税が発生する前提と相性が良い設計です。

相続税

管理権・議決権・収益権を早く移したい場面

事業承継や賃貸不動産の承継では、単純な税額比較だけでは測れない意味があります。

承継設計

次の一覧は、慎重に検討すべき場面をまとめたものです。複数該当する場合は、税理士だけでなく、紛争や登記に詳しい専門職も交えて検討する必要があります。

基礎控除以下に収まりそう

将来の遺産総額が基礎控除以下なら、暦年課税の方がシンプルなことがあります。

値下がりリスクが大きい

贈与時価額で固定されるため、死亡時に価値が下がると不利になり得ます。

受贈者が相続財産を取得しない可能性

それでも相続時精算課税の持戻しは残るため、納税資金の確認が必要です。

家族間対立がある

税務上有利でも、特別受益・遺留分・使途不明金などの争いが起きることがあります。

次の役割分担表は、相談先を決めるための整理です。相続時精算課税は税制度ですが、財産の種類や家族関係により、登記・紛争・評価の専門職が必要になる点を読み取ってください。

専門職主な役割相談が必要になりやすい場面
税理士課税方式の比較、年別加算額、特別控除残高、相続税申告、還付申告を担います。制度選択、申告、評価、税務調査対応がある場合です。
弁護士贈与の有効性、特別受益、遺留分、使い込み疑いなどの紛争を扱います。家族間で対立がある場合です。
司法書士贈与登記、相続登記、戸籍収集、不動産関係書類を担います。不動産贈与や相続登記がある場合です。
行政書士争いのない文書整理や相続関係説明図の作成支援を担います。紛争・税務申告・登記申請を伴わない書類整理です。
不動産鑑定士・土地家屋調査士不動産評価、境界、測量、分筆などを扱います。広大地、共有、収益物件、境界未確定地などです。

次の確認表は、制度選択前に最低限見るべき項目です。左列から順に確認し、不安が複数ある場合は、単独判断ではなく専門家会議で整理することを読み取ってください。

確認項目見るべき理由
贈与者の将来の遺産総額相続税の基礎控除を超えるかで制度の意味が変わります。
贈与資産の値上がり・値下がり見込み贈与時価額で固定されるため、価格変動が損得に直結します。
受贈者の納税資金相続で実物をもらわなくても税務上の持戻しが残ることがあります。
年別の贈与履歴令和5年以前と令和6年以後で加算額が異なります。
初回届出の有無110万円以下でも初回選択なら届出が必要です。
不動産の評価・登記・境界税額だけでなく登記義務や紛争リスクにも関係します。
兄弟姉妹間の公平感税務上の最適解が家族紛争の回避と一致しないことがあります。
Section 08

相続時精算課税で払った贈与税と相続税に関するFAQ

個別事情で結論が変わるため、回答は一般的な制度説明として整理します。

相続時精算課税で払った贈与税は、二重課税にならないのですか。

一般的には、贈与者死亡時の相続税計算で既に払った贈与税相当額を控除する仕組みとされています。ただし、贈与時期、贈与額、相続財産、各種控除、申告手続によって実際の結果は変わる可能性があります。具体的な見通しは、資料を整理したうえで税理士等の専門家へ相談する必要があります。

相続税がかからないなら、申告しなくてよいですか。

一般的には、相続税そのものの申告義務がない場合でも、相続時精算課税で既に納めた贈与税の還付を受けたいときは申告が必要になるとされています。相続開始の日の翌日から5年を経過する日までに提出できる扱いが案内されていますが、個別事情で確認が必要です。

父と母の両方から贈与を受ける場合、相続時精算課税はどうなりますか。

一般的には、制度は贈与者ごとに選択するとされています。父だけ相続時精算課税、母は暦年課税という併用もあり得ます。ただし、同一年に複数の特定贈与者から贈与を受ける場合の110万円基礎控除は、各贈与者の課税価格に応じたあん分が問題になります。

2,500万円の特別控除を使えば相続税もかからないのですか。

一般的には、2,500万円は贈与時の税額計算で使う特別控除であり、相続時の課税価格への加算がなくなる制度ではありません。相続時の遺産総額、法定相続人の数、他の贈与、各種控除によって結論が変わるため、個別の税額は専門家による確認が必要です。

値上がり資産なら常に有利ですか。

一般的には、贈与時価額で相続税上の加算額が固定されるため、値上がり資産では有利に働く可能性があります。ただし、値下がり、譲渡所得課税、納税資金、家族間紛争、登記費用などで結果が変わる可能性があります。具体的には税理士・弁護士・司法書士等へ相談する必要があります。

Reference

相続時精算課税で払った贈与税と相続税の参考資料

公的な税務資料

  • 国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
  • 国税庁「No.4409 贈与税の計算(相続時精算課税の選択をした場合)」
  • 国税庁「贈与税の申告のしかた(令和7年分)」
  • 国税庁「No.4301 相続時精算課税の選択と相続税の申告義務」
  • 国税庁「No.4152 相続税の計算」
  • 国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」
  • 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
  • 国税庁「贈与税の計算方法等の概要(令和7年分)」
  • 国税庁「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」
  • 国税庁「No.4307 贈与者が贈与をした年に死亡した場合の贈与税及び相続税の取扱い」
  • 国税庁「No.4302 贈与者が贈与した年の中途に死亡した場合の相続時精算課税の選択」

法令・制度資料

  • 財務省「贈与税に関する資料」
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」