2σ Guide

生前贈与で払った贈与税と
相続税の二重課税調整

親から生前贈与を受けて贈与税を払っていた場合に、親の相続税申告でどの財産を加算し、どの贈与税を控除し、還付の可能性をどう見分けるかを整理します。

3年→7年 暦年課税の加算期間
110万円 基礎控除の要確認額
2,500万円 精算課税の特別控除上限
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生前贈与で払った贈与税と 相続税の二重課税調整

贈与税を払った事実だけで判断せず、課税方式・加算対象・控除不足時の扱いを分けて確認します。

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生前贈与で払った贈与税と 相続税の二重課税調整
贈与税を払った事実だけで判断せず、課税方式・加算対象・控除不足時の扱いを分けて確認します。
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  • 生前贈与で払った贈与税と 相続税の二重課税調整
  • 贈与税を払った事実だけで判断せず、課税方式・加算対象・控除不足時の扱いを分けて確認します。

POINT 1

  • 生前贈与で払った贈与税と相続税の二重課税調整の全体像
  • 贈与税を払った事実だけで判断せず、課税方式・加算対象・控除不足時の扱いを分けて確認します。
  • 実際には、一定の生前贈与を相続税の課税価格に加算したうえで、対応する贈与税額を相続税額から控除する調整制度があります。
  • したがって、「贈与税を払ったから相続税では関係ない」も、「贈与税と相続税が完全に二重取りされる」も正確ではありません。
  • 相続税の課税価格に戻し入れたうえで、対応する贈与税額を控除するという構造です。

POINT 2

  • 贈与税と相続税の二重課税調整が必要になる理由と基本用語
  • 生前贈与加算、贈与税額控除、相続時精算課税を混同しないことが出発点です。
  • 暦年課税
  • 相続時精算課税
  • 生前贈与加算

POINT 3

  • 暦年課税の生前贈与と相続税の二重課税調整
  • 1. 相続開始前3年以内:従来どおり、死亡前3年以内の暦年課税贈与が主な確認対象です。
  • 2. 2024年1月1日から死亡日まで:経過措置により、2024年以後の贈与を死亡日まで確認します。
  • 3. 相続開始前7年以内:死亡前7年以内の暦年課税贈与が確認対象になります。

POINT 4

  • 相続時精算課税の贈与税と相続税の二重課税調整
  • 制度の中心は相続時の精算であり、控除不足額の還付があり得る点が暦年課税と異なります。
  • 2024年以後の年間110万円基礎控除
  • 相続時に加算する価額
  • 控除不足額の還付

POINT 5

  • 贈与税と相続税の二重課税調整を判定する手順
  • 1. 贈与税申告書と届出書を確認:暦年課税か相続時精算課税か、父・母・祖父母の誰からの贈与かを分けます。
  • 2. 相続で取得した財産を確認:遺言、遺産分割、生命保険金、死亡退職金、相続放棄、相続時精算課税適用財産を確認します。
  • 3. 死亡日から加算対象期間を確定:2026年まで、2027年から2030年まで、2031年以後で確認範囲が異なります。
  • 4. 加算財産に対応する贈与税だけ控除:父母双方の贈与がある年は按分し、控除不足額は原則還付されません。
  • 5. 贈与税相当額を精算:控除不足額は相続税申告により還付される場合があります。

POINT 6

  • 生前贈与と相続税の二重課税調整の計算事例
  • 500万円贈与、父母双方からの贈与、相続時精算課税3,000万円贈与を具体的に確認します。
  • 父から500万円の暦年贈与
  • 父母双方から同年贈与
  • 相続時精算課税で3,000万円

POINT 7

  • 生前贈与と相続税の二重課税調整で争いになりやすい論点
  • 贈与税申告との整合性
  • 申告自体が事実関係に合っていたか、父母どちらからの贈与として申告していたかを確認します。
  • 親の相続財産性
  • 子名義口座でも、親が管理していた場合は親の預金として計上すべきか問題になります。

POINT 8

  • 贈与税と相続税の二重課税調整で税務調査に備える資料
  • 過去の資金移動
  • 贈与、貸付け、生活費・教育費、立替払い、名義預金、使い込みの区別が問われます。
  • 申告の整合性
  • 父からの贈与として申告していたのに、父の相続税申告で生前贈与加算をしていない場合は照会される可能性があります。

まとめ

  • 生前贈与で払った贈与税と 相続税の二重課税調整
  • 生前贈与で払った贈与税と相続税の二重課税調整の全体像:贈与税を払った事実だけで判断せず、課税方式・加算対象・控除不足時の扱いを分けて確認します。
  • 贈与税と相続税の二重課税調整が必要になる理由と基本用語:生前贈与加算、贈与税額控除、相続時精算課税を混同しないことが出発点です。
  • 暦年課税の生前贈与と相続税の二重課税調整:7年加算、110万円以下の贈与、100万円控除、控除不足額の非還付を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

生前贈与で払った贈与税と相続税の二重課税調整の全体像

贈与税を払った事実だけで判断せず、課税方式・加算対象・控除不足時の扱いを分けて確認します。

親から生前に贈与を受け、その時点で贈与税を払っていた人が、親の死亡後に相続税申告をする場面では、同じ財産について贈与税と相続税が重なるように見えることがあります。実際には、一定の生前贈与を相続税の課税価格に加算したうえで、対応する贈与税額を相続税額から控除する調整制度があります。

次の比較表は、暦年課税と相続時精算課税で、相続時の処理と還付可能性がどう変わるかを表しています。最初にこの違いを押さえることが重要で、読者は「どの制度で贈与税を払ったか」と「控除しきれない場合に戻る余地があるか」を読み取ってください。

贈与時の課税方式相続時の基本処理既に払った贈与税の調整控除しきれない場合
暦年課税加算対象期間内の贈与財産を、原則として贈与時価額で相続税の課税価格に加算します。加算された贈与財産に対応する贈与税額を、受贈者本人の相続税額から控除します。原則として還付されません。相続税額を0にするところで止まります。
相続時精算課税特定贈与者からの相続時精算課税適用財産を、相続税計算に組み込んで精算します。既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除します。控除しきれない金額は、相続税申告により還付される場合があります。

したがって、「贈与税を払ったから相続税では関係ない」も、「贈与税と相続税が完全に二重取りされる」も正確ではありません。相続税の課税価格に戻し入れたうえで、対応する贈与税額を控除するという構造です。ただし、暦年課税では控除不足額が原則還付されない点が大きな注意点です。

注意このページは一般的な情報提供です。具体的な申告、税務判断、法律上の対応、登記申請は、資料を整理したうえで税理士、弁護士、司法書士等の専門家へ確認する必要があります。
Section 01

贈与税と相続税の二重課税調整が必要になる理由と基本用語

生前贈与加算、贈与税額控除、相続時精算課税を混同しないことが出発点です。

親から500万円、1,000万円、または不動産・株式などを生前に贈与され、その時点で贈与税を申告・納付していた場合でも、親の相続税申告で「その生前贈与も相続税の課税価格に加算する」と説明されることがあります。これは死亡直前の駆け込み贈与により相続税負担を不当に減らすことを防ぎつつ、既に納めた贈与税との重複を調整する仕組みです。

次の一覧は、二重課税調整を理解するための基本用語を整理したものです。制度名が似ているため、どの時点で課税され、どの金額が相続税計算に戻るのかを分けて読むことが重要です。

Gift Tax

贈与税

個人から財産をもらった人に課される税です。暦年課税では1月1日から12月31日までの贈与財産を合計し、基礎控除額110万円を差し引いた残額に税率を乗じます。

Inheritance Tax

相続税

被相続人から財産を取得した場合に課される税です。基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、申告・納税は原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内です。

Calendar Year

暦年課税

贈与税の原則的な方式です。110万円の基礎控除は贈与者ごとではなく受贈者ごとに適用され、複数人から贈与を受けても基礎控除額は合計110万円です。

Settlement

相続時精算課税

60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などへの贈与で選択できる制度です。いったん選択すると、その特定贈与者からの贈与は暦年課税へ戻せません。

Add-back

生前贈与加算

相続や遺贈などにより財産を取得した人が、被相続人から一定期間内に暦年課税の贈与を受けていた場合、その贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算する制度です。

Credit

贈与税額控除

相続税の課税価格に加算された贈与財産に対応する贈与税額を、相続税額から控除する制度です。加算税、延滞税、利子税は含まれません。

調整の要点は、贈与時の課税方式、親の相続税計算で加算対象になるか、既に支払った贈与税のうち控除できる金額、控除しきれない場合の還付可否を順に分けることです。ここを混同すると、110万円以下の贈与や父母双方からの贈与で誤りが起きやすくなります。

Section 02

暦年課税の生前贈与と相続税の二重課税調整

7年加算、110万円以下の贈与、100万円控除、控除不足額の非還付を確認します。

暦年課税での基本処理

暦年課税による生前贈与は、まず被相続人から受けた贈与が加算対象期間内にあるかを確認します。対象であれば、贈与時の価額で相続税の課税価格に加算し、その加算財産に対応する贈与税額を受贈者本人の相続税額から控除します。これは相続税を計算しない制度ではなく、相続税計算に戻し入れたうえで重複を調整する制度です。

次の時系列は、暦年課税の生前贈与加算で相続開始日ごとに確認対象がどう変わるかを表しています。相続開始日で確認範囲が大きく変わるため、死亡日と贈与日を照合して、どの期間の贈与を集めるべきかを読み取ってください。

2026年12月31日までの相続開始

相続開始前3年以内

従来どおり、死亡前3年以内の暦年課税贈与が主な確認対象です。

2027年1月1日から2030年12月31日まで

2024年1月1日から死亡日まで

経過措置により、2024年以後の贈与を死亡日まで確認します。

2031年1月1日以後の相続開始

相続開始前7年以内

死亡前7年以内の暦年課税贈与が確認対象になります。

次の比較表は、加算対象期間を相続開始日別にまとめたものです。時系列と同じ内容を日付で確認できるようにしており、申告資料を集めるときは死亡日がどの行に入るかを最初に判断します。

被相続人の相続開始日加算対象期間
2026年12月31日まで相続開始前3年以内
2027年1月1日から2030年12月31日まで2024年1月1日から死亡の日まで
2031年1月1日以後相続開始前7年以内

110万円以下の贈与も加算され得る

暦年課税では、年間110万円以下の贈与であれば贈与税はかかりません。しかし、生前贈与加算では、加算対象期間内で、受贈者が相続等により財産を取得している場合、贈与税がかかっていなかった贈与も相続税の課税価格に加算される可能性があります。贈与税を払っていないため、対応する贈与税額控除はありません。

重要「110万円以下だから相続税でも無関係」とは限りません。贈与税が0だったかではなく、相続税の課税価格に加算される財産かどうかを確認します。

3年超7年以内部分の100万円控除

2024年改正では、加算期間が7年へ延びる一方で、相続開始前3年以内に取得した財産以外の部分、つまり3年超7年以内部分について、その贈与時価額の合計額から総額100万円までは相続税の課税価格に加算しない取扱いがあります。この100万円は毎年ではなく、受贈者ごとの合計です。

次の計算例は、2032年に父が死亡した場合に、死亡前2年・4年・6年の贈与がどう扱われるかを示しています。100万円控除の対象になるのは3年超7年以内部分だけであるため、どの贈与が全額加算され、どの贈与が控除対象になるかを読み取ってください。

贈与時期贈与額加算関係
死亡の2年前200万円相続開始前3年以内なので全額加算。100万円控除の対象外です。
死亡の4年前80万円3年超7年以内部分として100万円控除の対象です。
死亡の6年前70万円3年超7年以内部分として100万円控除の対象です。

3年超7年以内部分の合計は150万円です。ここから総額100万円を控除し、50万円を加算します。死亡の2年前の200万円は3年以内贈与として原則全額加算します。

加算しない贈与財産

被相続人からの生前贈与でも、贈与税の配偶者控除の適用額、直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税適用額、教育資金の一括贈与の非課税適用額、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税適用額など、一定の特例により加算しない財産があります。ただし、教育資金や結婚・子育て資金では、贈与者死亡時の管理残額が相続税の課税価格に加算される場合があります。

贈与税額控除と還付されない差額

暦年課税で控除できるのは、相続税の課税価格に加算された贈与財産に対応する贈与税額です。同じ年に父母双方から贈与を受け、父だけが死亡した場合、納付済み贈与税の全額ではなく、父からの贈与に対応する部分を按分します。加算税、延滞税、利子税は控除対象外です。

計算例父から500万円の贈与を受け、贈与税48万5,000円を納付し、その全額が父の相続税の課税価格に加算される場合、長男の相続税額120万円から48万5,000円を控除すると納付税額は71万5,000円です。相続税額が30万円にとどまる場合でも、暦年課税分の18万5,000円の控除不足額は原則として還付されず、相続税額が0になるにとどまります。

死亡した年の贈与

親が贈与をした年に死亡した場合、相続時精算課税の適用を受けている者または受けようとする者については、死亡した年の相続時精算課税適用分の贈与財産は相続税の課税対象となり、贈与税の申告は不要です。相続時精算課税を適用していない者についても、相続財産を取得する場合、その死亡年の贈与財産は贈与税ではなく相続税の課税対象となります。一方、相続財産を取得しない場合には贈与税の課税対象となります。

Section 03

相続時精算課税の贈与税と相続税の二重課税調整

制度の中心は相続時の精算であり、控除不足額の還付があり得る点が暦年課税と異なります。

相続時精算課税は、贈与時に一定の贈与税計算を行い、特定贈与者の死亡時に相続税で精算する制度です。暦年課税と異なり、相続時の精算が制度の中心にあるため、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額は相続税額から控除され、控除しきれない場合には還付を受けられることがあります。

次の表は、相続時精算課税を使える典型的な要件と、選択後の効果を整理しています。選択は特定贈与者ごとに行うため、父について選択したか、母について選択したかを分けて確認することが重要です。

項目内容
贈与者贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母など
受贈者贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の子または孫など、一定の直系卑属
手続贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、相続時精算課税選択届出書などを提出
効果いったん選択すると、その特定贈与者からの贈与について暦年課税へ戻れません

2024年以後の年間110万円基礎控除

2024年1月1日以後の贈与について、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が設けられました。贈与税計算では、特定贈与者ごとに1年間の相続時精算課税適用財産の価額から、相続時精算課税に係る基礎控除額110万円と、累計2,500万円を限度とする特別控除額を控除し、残額に20%を乗じます。

同一年中に2人以上の特定贈与者から相続時精算課税に係る贈与を受けた場合、110万円の基礎控除は特定贈与者ごとの贈与税の課税価格で按分します。父110万円、母110万円と二重に控除できるわけではありません。

相続時に加算する価額

相続時精算課税を選択した受贈者は、特定贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税適用財産の価額と、相続や遺贈により取得した財産の価額を合計して相続税額を計算します。相続財産と合算する価額は原則として贈与時の価額であり、2024年以後の贈与は年分ごとに相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額です。

評価リスク贈与後に不動産や株式が値下がりしていても、原則として贈与時の価額で相続税計算に組み込まれます。逆に値上がりした場合は、贈与時価額が基礎となることが有利に働く場合もあります。

控除不足額の還付

相続時精算課税では、相続税額から既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除します。控除しきれない金額がある場合には、相続税申告により還付を受けられることがあります。相続税の計算結果が基礎控除額以下で申告義務がない場合でも、過去に相続時精算課税分の贈与税を納めているときは、還付を受けるための申告を検討します。この申告書は、相続開始の日の翌日から起算して5年を経過する日まで提出できるとされています。

次の計算例は、3,000万円の贈与で相続時精算課税を選んだ場合に、贈与時の税額と相続時の還付可能性がどうつながるかを示しています。控除の順番と、控除不足が暦年課税とは異なり還付につながり得る点を読み取ってください。

場面計算読み取り方
贈与時3,000万円 − 110万円 − 2,500万円 = 390万円
390万円 × 20% = 78万円
相続時精算課税に係る贈与税78万円を納付します。
相続時の加算額3,000万円 − 110万円 = 2,890万円2025年贈与分は、基礎控除後の残額を相続税の課税価格に加算します。
還付可能性50万円 − 78万円 = △28万円相続時精算課税分の控除不足28万円は、相続税申告により還付を受けられる可能性があります。

相続で何も取得しない適用者

相続時精算課税では、受贈者が特定贈与者の相続で実際の遺産を取得しなかった場合でも、相続税計算上、相続時精算課税適用財産を相続等により取得したものとみなされ得ます。父から生前に相続時精算課税で多額の贈与を受けた長男が、父の遺言では何も相続しない場合でも、相続税申告上は完全に無関係とは限りません。

Section 04

贈与税と相続税の二重課税調整を判定する手順

申告書類、取得財産、加算期間、加算額、控除額の順で確認します。

暦年課税と相続時精算課税は、加算される範囲、110万円の扱い、控除不足額の扱いが大きく異なります。まず全体比較で制度差を確認し、その後に実務上の確認手順へ進むと、贈与税申告書と相続税申告書のつながりを整理しやすくなります。

次の比較表は、暦年課税と相続時精算課税を主要論点ごとに並べたものです。どちらの制度で過去の贈与が処理されていたかにより、相続税に加算する金額と控除不足時の結論が変わることを読み取ってください。

論点暦年課税相続時精算課税
贈与時の制度年間110万円基礎控除後、累進税率で計算します。2024年以後は年間110万円基礎控除+累計2,500万円特別控除、超過部分20%です。
選択手続原則不要です。相続時精算課税選択届出書が必要です。
選択後の撤回該当しません。特定贈与者ごとに撤回できません。
相続時に加算される範囲加算対象期間内の贈与です。2024年以後の贈与は段階的に7年へ延長されます。特定贈与者からの相続時精算課税適用財産です。
110万円以下の贈与加算対象期間内なら、贈与税がなくても加算され得ます。2024年以後の基礎控除部分は、原則として相続税に加算しません。
加算価額贈与時の価額です。原則として贈与時の価額です。2024年以後は年分ごとの基礎控除後の残額です。
既に払った贈与税加算された贈与財産に対応する贈与税額を控除します。相続時精算課税分の贈与税相当額を控除します。
控除不足額原則還付なしです。還付があり得ます。
相続で何も取得しない場合加算対象者性を慎重に確認します。相続時精算課税適用財産を相続等により取得したものとみなされ得ます。
典型的リスク7年加算、110万円以下贈与の加算、控除不足額の非還付です。撤回不可、評価額下落リスク、還付申告漏れです。

次の判断の流れは、相続税申告前に確認する順番を表しています。順番を飛ばすと、父母の取り違え、加算期間の誤り、贈与税額控除の過大計上が起きやすいため、各段階で確認資料を対応させることが重要です。

二重課税調整の確認順序

贈与税申告書と届出書を確認

暦年課税か相続時精算課税か、父・母・祖父母の誰からの贈与かを分けます。

相続で取得した財産を確認

遺言、遺産分割、生命保険金、死亡退職金、相続放棄、相続時精算課税適用財産を確認します。

死亡日から加算対象期間を確定

2026年まで、2027年から2030年まで、2031年以後で確認範囲が異なります。

暦年課税
加算財産に対応する贈与税だけ控除

父母双方の贈与がある年は按分し、控除不足額は原則還付されません。

精算課税
贈与税相当額を精算

控除不足額は相続税申告により還付される場合があります。

確認すべき資料と項目

最初に確認すべき資料は、贈与税申告書、相続時精算課税選択届出書、納付書、e-Taxの受付通知、税務署からの通知です。贈与者は父か母か祖父母か、受贈者は相続人本人か孫か配偶者か、贈与年、財産内容、課税方式、贈与税額、加算税・延滞税・利子税の混在を確認します。

次の一覧は、相続で財産を取得したかどうかを確認する対象をまとめています。暦年課税の生前贈与加算では取得者性が重要になるため、遺産を受け取っていないように見えても、みなし相続財産や遺贈がないかを読み取ってください。

遺言による取得

遺言書で財産を取得している場合、相続税上の取得者に当たる可能性があります。

遺産分割による取得

遺産分割協議で預金、不動産、有価証券などを取得する場合は確認対象です。

みなし相続財産

生命保険金、死亡退職金などを受け取る場合、生前贈与加算との関係を確認します。

相続放棄

民事上の相続放棄と、相続税上の取得者性は単純に一致しない場合があります。

相続時精算課税適用財産

実際の遺産を受け取らなくても、相続税計算上取得したものとみなされ得ます。

加算額を計算するとき、暦年課税では加算対象期間内の贈与財産を原則として贈与時価額で加算し、2027年1月2日以後の相続では3年超7年以内部分の100万円控除を検討します。相続時精算課税では、特定贈与者からの適用財産を贈与時価額で加算し、2024年以後の贈与は年分ごとの基礎控除額を控除した残額を相続税の課税価格に算入します。

Section 05

生前贈与と相続税の二重課税調整の計算事例

500万円贈与、父母双方からの贈与、相続時精算課税3,000万円贈与を具体的に確認します。

計算事例では、贈与税の納付額そのものではなく、相続税の課税価格に加算された贈与財産に対応する部分を見ます。次の一覧は典型的な3パターンを並べたもので、贈与者が誰か、制度がどちらか、相続時に還付可能性があるかを読み取ることが重要です。

Case 01

父から500万円の暦年贈与

父が2026年8月1日に死亡し、長男が2025年に父から500万円の贈与を受け、特例税率で48万5,000円を納付していた例です。

Case 02

父母双方から同年贈与

成人した長女が父から500万円、母から300万円を受け、父だけが死亡した例です。父の相続で控除できる贈与税額は按分します。

Case 03

相続時精算課税で3,000万円

父から3,000万円を受け、相続時精算課税を選択し、贈与税78万円を納付していた例です。控除不足額の還付可能性を確認します。

事例1 ― 父から500万円の暦年贈与

父は2026年8月1日に死亡し、長男は2025年に父から500万円の贈与を受けました。長男は贈与時の1月1日に18歳以上で、特例税率により贈与税48万5,000円を納付し、父の相続で財産を取得しています。

贈与税計算500万円 − 110万円 = 390万円。390万円 × 15% − 10万円 = 48.5万円。

父の死亡日は2026年8月1日なので、加算対象期間は相続開始前3年以内です。2025年の500万円贈与は加算対象期間内であり、長男は父の相続で財産を取得しているため、500万円を長男の相続税の課税価格に加算します。そのうえで、加算された500万円に対応する贈与税48万5,000円を長男の相続税額から控除します。長男の相続税額が48万5,000円未満でも、暦年課税分の控除不足額は原則として還付されません。

事例2 ― 父母双方から同じ年に贈与

2025年、成人した長女が父から500万円、母から300万円の贈与を受け、2026年に父だけが死亡した例です。長女は父の相続で財産を取得し、母は存命です。贈与はいずれも特例贈与財産に該当します。

次の計算表は、父母双方からの贈与がある年に、父の相続税で控除できる贈与税額をどう按分するかを示しています。贈与税申告上は父母の贈与を合算していても、父の相続税で控除できるのは父からの贈与に対応する部分だけである点を読み取ってください。

計算項目金額・式意味
父母からの贈与合計500万円 + 300万円 = 800万円2025年分の特例贈与財産の合計です。
基礎控除後800万円 − 110万円 = 690万円受贈者ごとの基礎控除を差し引きます。
贈与税690万円 × 30% − 90万円 = 117万円2025年分の納付済み贈与税です。
父の相続での控除額117万円 × 500万円 / 800万円 = 73.125万円父からの贈与に対応する部分だけを控除します。

母からの300万円は父の相続税の課税価格には加算しません。したがって、納付済み贈与税117万円の全額を父の相続税から控除するのは誤りです。

事例3 ― 相続時精算課税で3,000万円の贈与

2025年、父が長男へ3,000万円を贈与し、長男は父について相続時精算課税を選択しました。長男は贈与税78万円を納付し、その後父が死亡した例です。

贈与時3,000万円 − 110万円 − 2,500万円 = 390万円。390万円 × 20% = 78万円。
相続時2025年贈与分について相続時に加算する額は、原則として3,000万円 − 110万円 = 2,890万円です。相続時精算課税分の贈与税相当額控除前の税額が50万円であれば、50万円 − 78万円 = △28万円となり、この28万円は相続税申告により還付を受けられる可能性があります。
Section 06

生前贈与と相続税の二重課税調整で争いになりやすい論点

税務上の加算と民法上の特別受益、不動産評価、非上場株式、相続放棄を分けて整理します。

税務上の加算と民法上の特別受益は別問題

親からの生前贈与は、税務上は生前贈与加算や相続時精算課税の問題となります。同時に、民法上は特別受益、遺留分、遺産分割の公平、使い込み疑いなどの問題になることがあります。ただし、税務上の加算対象になることと、民法上当然に特別受益として同じ金額を持ち戻すことは同一ではありません。

相続税申告では贈与時価額で加算します。一方、遺産分割の交渉では、贈与の趣旨、時期、金額、生活費・教育費・住宅資金としての性質、被相続人の意思、相続人間の公平を踏まえて議論されます。税務申告書の金額が、民事紛争における特別受益額や遺留分侵害額を自動的に決定するわけではありません。

贈与が成立していたか

親子間の資金移動では、「贈与を受けた」と本人が考えていても、税務上・民事上、本当に贈与が成立していたかが問題になることがあります。典型例は名義預金です。親が子名義の口座に資金を入れたものの、通帳、印鑑、キャッシュカードを親が管理し、子が自由に使えなかった場合、税務署から親の財産と判断される可能性があります。

次の一覧は、贈与の成立や相続人間の争いで確認されやすいポイントをまとめています。贈与税を払っていたとしても、事実関係が合っているかどうかが別に問われるため、どの資料で管理支配と意思を説明できるかを読み取ってください。

贈与税申告との整合性

申告自体が事実関係に合っていたか、父母どちらからの贈与として申告していたかを確認します。

親の相続財産性

子名義口座でも、親が管理していた場合は親の預金として計上すべきか問題になります。

過去の贈与税の扱い

事実と異なる贈与税申告だった場合、更正の請求や還付の余地が問題になることがあります。

相続人間の管理争い

誰が実質的に管理・使用していたかが、使い込みや特別受益の争いと結びつきます。

孫への贈与と相続放棄

孫は通常、子が存命であれば祖父母の法定相続人ではありません。しかし、祖父母から孫へ生前贈与があり、さらに孫が生命保険金や遺贈を受けている場合、相続税申告上の取得者として生前贈与加算の対象になることがあります。法定相続人かどうかだけでなく、相続、遺贈、みなし相続財産などにより財産を取得したかを確認します。

相続放棄をした人が、被相続人から生前に暦年課税の贈与を受けていた場合、その人が相続税上の財産を何も取得しないのであれば、生前贈与加算の対象者に該当しない可能性があります。ただし、生命保険金を受け取る、遺贈を受ける、相続時精算課税適用財産を取得しているといった事情があれば別です。相続放棄は家庭裁判所で行う民事上の制度であり、税務上の取得者性とは単純に一致しません。

不動産・非上場株式・事業承継

親から不動産の贈与を受けた場合、贈与税申告では相続税評価額を基礎に評価するのが通常です。生前贈与加算や相続時精算課税の対象となる場合も、基本的には贈与時の価額が問題になります。都市部の土地、再開発地域、収益不動産、農地、山林、共有持分、借地権、貸家建付地などでは評価方法の誤りが税額に直結します。

次の一覧は、不動産や非上場株式が絡む場合に確認すべき評価・権利関係のポイントです。税額だけでなく登記、経営権、遺留分、税務調査が同時に問題化しやすいため、どの専門職と連携すべきかを読み取ってください。

1

不動産の評価時点

相続時精算課税で不動産を贈与した場合、相続時に価額が下落していても、原則として贈与時価額ベースで精算されます。

評価下落リスク
2

相続登記義務化

相続登記は2024年4月1日から義務化され、不動産所有権の取得を知った日から3年以内に申請する必要があります。

登記期限
3

非上場株式

株式評価、相続時精算課税の有無、事業承継税制、会社価値の変動、議決権、経営権、後継者争いを確認します。

事業承継
4

税務調査の評価項目

類似業種比準価額、純資産価額、役員退職金、貸付金、土地評価などが問題になり得ます。

評価資料
Section 07

贈与税と相続税の二重課税調整で税務調査に備える資料

過去の資金移動、贈与税申告との整合性、相続時精算課税の選択歴を説明できる資料を集めます。

税務調査で見られやすいポイント

被相続人の預金口座から相続人や孫の口座へ数百万円単位の振込がある場合、その性質が確認されます。贈与、貸付け、生活費・教育費、立替払い、名義預金、使い込みのどれに当たるかを、契約書や通帳、資金の使用状況で説明できるようにします。

次の一覧は、税務調査で確認されやすい論点をまとめたものです。過去の贈与税申告がある場合でも、それだけで贈与の成立が完全に保証されるわけではないため、申告内容と実際の資金管理が一致しているかを読み取ってください。

過去の資金移動

贈与、貸付け、生活費・教育費、立替払い、名義預金、使い込みの区別が問われます。

申告の整合性

父からの贈与として申告していたのに、父の相続税申告で生前贈与加算をしていない場合は照会される可能性があります。

按分計算の誤り

父母双方からの贈与を受けているのに、父の相続税で贈与税額控除を全額控除している場合は問題になり得ます。

相続時精算課税の選択歴

10年以上前の住宅取得資金や不動産贈与で選択していたことを忘れている例があります。

加算税・延滞税

無申告加算税、過少申告加算税、延滞税、利子税は贈与税額控除の対象ではありません。

必要資料チェックリスト

次の一覧は、贈与税関係、相続税関係、紛争関係の資料を目的別に整理したものです。相続税申告と相続人間の説明に同じ資料を使う場面が多いため、税額計算に必要な資料と、贈与の成立・管理状況を説明する資料を分けて読み取ってください。

贈与税関係

贈与税申告書の控え、納付書、領収証書、ダイレクト納付記録、e-Tax受付通知、相続時精算課税選択届出書、贈与契約書、預金通帳、振込明細、取引履歴、証券口座の移管記録を確認します。

課税方式納付額

評価資料

不動産贈与契約書、登記事項証明書、固定資産税評価証明書、贈与税申告時の評価明細書、税理士が作成した計算資料を確認します。

贈与時価額

相続税関係

被相続人の戸籍一式、相続人関係説明図、遺言書、遺産分割協議書案または協議書、預貯金残高証明書、取引履歴、不動産評価資料、路線価図、倍率表、賃貸借契約書を集めます。

取得財産

財産・債務資料

有価証券残高証明書、生命保険金支払通知書、債務、未払金、葬式費用の資料、過去の相続時精算課税適用財産の明細、過去の暦年課税贈与の年次一覧表を整理します。

課税価格

紛争関係

親の意思能力に関する診断書、介護記録、認知症関連資料、通帳・印鑑・キャッシュカードの管理状況、贈与に関するメール、手紙、LINE、メモ、兄弟姉妹間の協議記録を確認します。

管理支配
使

使途資料

使途を示す領収書、住宅購入契約書、学費資料、弁護士・税理士・司法書士との相談記録を残します。

説明資料

過去7年分の贈与一覧表には、贈与日、贈与者、受贈者、財産内容、贈与時価額、課税方式、贈与税額、相続税加算対象、贈与税額控除額を記載します。相続開始日による経過措置はありますが、資料収集の観点では7年分を確認する運用が安全です。

Section 08

生前贈与と相続税の二重課税調整を専門職と進める実務

税務、民事、登記、不動産評価、事業承継を分けつつ連携させることが重要です。

二重課税調整は税務の問題に見えますが、相続人間で揉めている場合、不動産がある場合、会社株式がある場合は、法律、登記、評価、事業承継が重なります。専門職ごとの役割を分けておくと、相談先と資料の出し方を整理しやすくなります。

次の一覧は、専門職ごとの主な役割を整理したものです。どの専門職が税額計算、民事紛争、登記、評価、事業承継を担当するかを読み取り、必要な場面では連携して進めることが重要です。

税理士

相続税申告、贈与税額控除、相続時精算課税分の還付、税務調査対応を担います。過去に贈与税申告がある、相続時精算課税の選択歴が不明、7年以内に複数年の贈与がある、父母双方から同年贈与がある場合に重要です。

申告税務調査

弁護士

生前贈与が特別受益だと主張される、遺留分侵害額請求を受けている、親の預金の使い込みを疑われる、判断能力が争われる、遺産分割協議がまとまらない場合に関与します。

紛争

司法書士

相続財産に不動産がある場合、相続登記、不動産の名義変更、戸籍収集、登記原因証明情報の作成、家庭裁判所提出書類作成などで関与します。

登記

その他の専門職

行政書士は遺産分割協議書などの作成、不動産鑑定士は不動産評価、土地家屋調査士は境界確認・分筆・表示登記、宅地建物取引士や不動産仲介業者は売却実務で関与します。

評価・売却

事業承継の連携

会社株式や事業承継が絡む場合は、公認会計士、中小企業診断士、弁護士、税理士の連携が重要です。

非上場株式

実務上の提言

贈与税を払った事実だけでは安心できません。暦年課税では生前贈与加算により相続税の課税価格へ戻し入れることがあり、相続時精算課税では制度上、相続時に精算することが予定されています。

父からの贈与と母からの贈与は、相続税申告では別々に考えます。父の相続では父からの贈与、母の相続では母からの贈与が問題になります。同じ年に父母双方から贈与を受けている場合、贈与税申告上は合算していることがあるため、相続税で控除できる贈与税額の按分を誤りやすくなります。

相続時精算課税は、過去に一度選択すると、その特定贈与者からの贈与について暦年課税へ戻れません。10年以上前の住宅取得資金贈与や不動産贈与で選択していたことを忘れている例があるため、相続税申告前に過去の贈与税申告書、相続時精算課税選択届出書、税理士事務所の控え、税務署への照会などで確認します。

税務申告には期限があります。民事紛争では交渉、調停、審判、訴訟に時間がかかります。相続人間で生前贈与をめぐる争いがある場合でも、税務申告期限を意識して、期限内申告、修正申告、更正の請求、未分割申告の可能性を検討します。

次の重要ポイントは、相続税申告前に優先して確認したい実務上の結論です。どれも二重課税調整の誤りを防ぐために重要で、特に課税方式、死亡日、加算対象、控除額、還付可否を分けて読み取ってください。

最重要ポイントは、贈与税を払ったかではなく相続税で加算される贈与かどうかです

課税方式を申告書で確認し、親の死亡日から加算対象期間を判定し、加算された贈与財産に対応する贈与税だけを控除します。暦年課税は原則還付なし、相続時精算課税は還付があり得るという違いを押さえます。

  1. 贈与時の課税方式が暦年課税か相続時精算課税かを申告書で確認します。
  2. 親の死亡日を基準に、加算対象期間を正確に判定します。
  3. 贈与税を払ったかどうかではなく、相続税の課税価格に加算される贈与財産かどうかを確認します。
  4. 控除できる贈与税額は、加算された贈与財産に対応する部分だけです。
  5. 暦年課税は原則還付なし、相続時精算課税は還付があり得る、という違いを押さえます。
FAQ

よくある質問

個別事情で結論が変わるため、一般的な制度説明として確認してください。

Q1. 親から生前贈与を受けて贈与税を払いました。相続税も払うのは二重課税ですか。

一般的には、一定の生前贈与は相続税の課税価格に加算されるため、形式的には同じ財産が贈与税と相続税の双方の計算に現れることがあります。ただし、暦年課税では加算された贈与財産に対応する贈与税額を相続税額から控除し、相続時精算課税では既に納めた贈与税相当額を控除する仕組みがあります。具体的な処理は、贈与税申告書や相続財産の取得状況を整理し、税理士等の専門家へ確認する必要があります。

Q2. 110万円以下の贈与なら相続税でも無視できますか。

一般的には、無視できるとは限りません。暦年課税の生前贈与加算では、加算対象期間内の贈与であれば、贈与税がかかったかどうかに関係なく相続税の課税価格に加算される可能性があります。相続開始日、贈与日、受贈者が相続等で財産を取得したかによって結論が変わるため、具体的な申告判断は税理士等へ相談する必要があります。

Q3. 暦年課税で払った贈与税が相続税より多い場合、差額は戻りますか。

一般的には、暦年課税分の贈与税額控除は相続税額を0にするところまでの控除とされています。相続時精算課税のように控除不足額が還付される扱いとは異なるため、納付済み贈与税、加算財産、相続税額を対応させて確認する必要があります。

Q4. 相続時精算課税で払った贈与税は戻ることがありますか。

一般的には、相続時精算課税では、既に納めた贈与税相当額を相続税額から控除し、控除しきれない金額がある場合に相続税申告により還付を受けられることがあります。ただし、申告期限や計算関係、過去の届出状況によって扱いが変わるため、資料を整理して税理士等へ確認する必要があります。

Q5. 贈与された不動産が相続時には値下がりしていました。相続税では値下がり後の価額でよいですか。

一般的には、暦年課税の生前贈与加算でも相続時精算課税でも、加算する価額は原則として贈与時の価額とされています。相続時の値下がりがそのまま反映されるとは限りません。不動産の種類、評価方法、贈与時の資料、相続時精算課税の選択状況により確認事項が変わるため、専門家による評価確認が必要です。

Q6. 相続税申告をしなくてよい財産規模なら、過去の贈与税は気にしなくてよいですか。

一般的には、相続時精算課税で過去に贈与税を納めている場合、相続税の申告義務がない財産規模でも確認が必要です。相続税申告により還付を受けられる場合があるため、過去の贈与税申告書と選択届出書を確認し、税理士等へ相談する必要があります。

Q7. 贈与税を払っていた事実は、遺産分割で有利に働きますか。

一般的には、贈与税を払っていた事実は、生前贈与があったことを示す資料の一つになり得ます。ただし、民法上の特別受益、遺留分、持戻し、使い込みの有無は、贈与の趣旨、時期、金額、被相続人の意思、相続人間の公平などを踏まえて判断されます。税務申告上の処理と民事上の帰結は区別し、紛争がある場合は弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q8. 親の死亡前7年以内に毎年100万円ずつもらっていました。贈与税は払っていません。相続税申告で必要ですか。

一般的には、暦年課税の贈与で贈与税がかかっていなくても、加算対象期間内であれば相続税の課税価格に加算される可能性があります。贈与税額控除は発生しない一方、相続税の課税価格に影響する場合があるため、死亡日、贈与日、相続等による取得の有無を確認する必要があります。

Q9. 生前贈与を受けたお金を既に使ってしまいました。相続税は払わなくてよいですか。

一般的には、贈与されたお金を使ってしまったかどうかは、生前贈与加算の有無を直接左右しません。加算対象となる場合は、贈与時の価額を相続税の課税価格に加算します。住宅購入、教育費、投資、生活費などに使っていても、相続税計算に反映される可能性があるため、具体的な判断は資料を整理して専門家へ相談する必要があります。

Reference

参考資料

贈与税額控除、生前贈与加算、相続時精算課税、相続登記の確認に用いた主な公的資料名です。

国税庁の資料

  • 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
  • 国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
  • 国税庁「No.4301 相続時精算課税の選択と相続税の申告義務」
  • 国税庁「No.4152 相続税の計算」
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
  • 国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
  • 国税庁「No.4410 複数の人から贈与を受けたとき」
  • 国税庁「No.4307 贈与者が贈与をした年に死亡した場合の贈与税及び相続税の取扱い」
  • 国税庁「No.4105 相続税がかかる財産」
  • 国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」

法令・登記関連資料

  • e-Gov法令検索「相続税法」
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」