自筆証書遺言の実費、法務局保管、公正証書遺言、検認、相続登記、相続税、紛争予防まで含めて、総費用で判断するための考え方を整理します。
自筆証書遺言の実費、法務局保管、公正証書遺言、検認、相続登記、相続税、紛争予防まで含めて、総費用で判断するための考え方を整理します。
紙、筆記具、印鑑だけの直接費用と、死亡後に遺言を使うための費用は分けて見る必要があります。
遺言書を自分で書けば費用はほとんどかからないのかという問いへの結論は、どの範囲の費用を見るかで変わります。紙、筆記具、印鑑だけで自筆証書遺言を作るという意味では、作成時の直接費用はほぼゼロに近いといえます。
しかし、相続実務では、遺言書は死亡後に使われて初めて意味を持つ文書です。方式違反による無効、記載のあいまいさ、家庭裁判所の検認、法務局保管、不動産の相続登記、相続税申告、遺留分侵害額請求、遺言執行者の有無、専門家相談まで含めて総費用を考える必要があります。
次の比較表は、遺言書の費用を5種類に分けたものです。作成時の出費だけを見て判断しないために重要で、読者はどの費用が今発生し、どの費用が死亡後に表面化するのかを読み取る必要があります。
| 費用の種類 | 内容 | 典型例 |
|---|---|---|
| 直接費用 | 遺言書を作るためにその場で支払う費用 | 用紙、筆記具、印鑑、住民票、法務局手数料、公証人手数料 |
| 手続費用 | 死亡後に遺言を使うための費用 | 検認、戸籍収集、遺言書情報証明書、相続登記、金融機関手続 |
| 専門家費用 | 相談、文案確認、作成支援、執行を依頼する費用 | 弁護士、司法書士、税理士、行政書士、公証人、信託銀行等 |
| 紛争費用 | 相続人間で争いになったときの費用 | 交渉、遺留分侵害額請求、調停、審判、訴訟、鑑定 |
| 機会費用 | 誤った遺言により生じる損失 | 税務特例の使いにくさ、不動産売却の遅延、事業承継の停滞、家族関係の悪化 |
次の重要ポイント一覧は、自己作成の費用判断で最初に押さえるべき結論をまとめています。どのポイントも、初期費用の安さと死亡後の安全性を分けて読むために重要です。
既に紙、筆記具、印鑑があれば、作成時の現金支出はほぼゼロに近くなります。
保管と検認省略に効果がありますが、内容の法律的妥当性までは保証されません。
公証人手数料や証人費用は発生しますが、方式不備、紛失、検認のリスクを下げやすくなります。
不動産、相続税、再婚家庭、事業承継、認知能力への不安があると、専門家確認の価値が高まります。
全部を自分で済ませるか丸ごと依頼するかではなく、自分で整理する部分と確認を受ける部分を分けます。
費用が低くても、民法上の方式を外すと死亡後に使えないリスクがあります。
自筆証書遺言とは、遺言者本人が自分で書いて作る遺言書です。民法は、遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印することを基本要件としています。財産目録については自書でない目録を添付できますが、その場合は目録の各ページに署名と押印が必要です。
方式は単なる作法ではありません。遺言は作成者本人が亡くなった後に効力を発生させる文書であり、後から本人に真意を確認できないため、方式の誤りは遺言の全部または一部の無効につながることがあります。
次の比較表は、自筆証書遺言で最低限確認すべき要件を整理したものです。直接費用を抑える場合ほど、どの要件が死亡後の有効性に関わるかを読み取ることが重要です。
| 要件 | 内容 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 全文の自書 | 遺言本文を本人が手書きします。 | 本文をパソコンで作る、家族に代筆してもらう、音声入力で作ることは原則として避けます。 |
| 日付の自書 | 作成年月日を特定できるように書きます。 | 「吉日」のように日を特定できない表現は避けます。 |
| 氏名の自書 | 本人を特定できる氏名を書きます。 | 法務局保管制度を使う場合は戸籍や住民票上の氏名との整合が重要です。 |
| 押印 | 印を押します。 | 認印でもよいとされますが、本人作成性の証拠として慎重に考えます。 |
| 財産の特定 | 誰に何を与えるかを特定します。 | 不動産は登記事項証明書、預金は金融機関、支店、口座番号などを確認します。 |
| 訂正方式 | 訂正箇所を明示し、変更した旨を書き、署名し、押印します。 | 訂正が多い場合は書き直す方が安全です。 |
次のリスク一覧は、形式を満たしていない遺言書で死亡後に起こりやすい問題を示しています。作成時に費用をかけない場合でも、どの失敗が後から修正できない問題になるかを読み取ってください。
自筆証書遺言の本文は本人の手書きが基本であり、方式違反が問題になります。
作成日を特定できないと、複数の遺言や判断能力の時期をめぐって争いになります。
自書でない目録を使う場合、各ページの署名押印が問題になることがあります。
夫婦連名のような共同遺言は危険で、個別に作成する必要があります。
政府広報は、自筆証書遺言の短所として、要件を満たしていないと無効になるおそれ、紛失や忘れ去られるおそれ、書き換え、廃棄、隠匿のおそれ、死亡後の検認手続を挙げています。低費用で作れることと、死亡後に争われにくいことは別問題です。
作成時だけなら安くても、保管や検認まで含めると必要な支出と手間が変わります。
自宅で自筆証書遺言を作成し、自宅で保管するなら、作成時の費用はほぼゼロです。ただし、必要に応じて用紙、封筒、筆記具、財産資料の取得費、専門家への相談費用が発生します。
次の比較表は、自己作成時に発生し得る直接費用を整理したものです。金額の大小だけでなく、どの費用が保存性や財産特定に関わるかを読み取ることが重要です。
| 項目 | 金額の考え方 | コメント |
|---|---|---|
| 用紙、封筒、筆記具 | 数百円程度から | 長期保存に向く紙、消えにくい筆記具を使います。 |
| 印鑑 | 既に持っていれば追加費用なし | 実印である必要はないものの、本人作成性の証拠として慎重に考えます。 |
| 財産資料 | 必要に応じて実費 | 登記事項証明書、固定資産評価証明書、通帳コピー、証券会社資料などを確認します。 |
| 専門家への相談 | 相談先と範囲により異なる | 初回相談だけで足りる場合と、文案作成支援まで必要な場合があります。 |
次の時系列は、自己作成の遺言で費用や手間が発生するタイミングを示しています。作成時は低額でも、保管、検認、証明書取得、相続登記へ進むにつれて負担が増えることを読み取ってください。
自宅保管なら作成時の現金支出はほぼゼロに近い一方、方式や文言の確認は本人の責任になります。
紛失、盗難、偽造、改ざん、発見されない問題を下げ、検認不要という効果があります。
検認の申立費用は遺言書1通につき収入印紙800円、検認済証明書は遺言書1通につき150円分の収入印紙が必要です。
不動産や相続税がある場合、登録免許税、司法書士報酬、税理士報酬、資料取得費が問題になります。
次の判断の流れは、自分で書く場合でも追加確認が必要かを見る順番を示しています。分岐ごとに、低費用のまま進めやすい場面と専門家確認が必要になりやすい場面を読み取ってください。
預貯金、不動産、保険、株式、債務、推定相続人を整理します。
登記、相続税、遺留分、前婚の子、認知能力などを確認します。
弁護士、司法書士、税理士等に範囲を絞って確認します。
方式と保管の弱点を補うため、1通3,900円の制度利用を検討します。
法務局保管制度は、方式面と保管面の安全装置です。ただし、遺言内容の法律相談、遺留分、税務、登記、相続人間の利害調整を代わりに行う制度ではありません。
公正証書遺言は、公証役場で証人2人以上の立会いのもと、公証人が関与して作成する遺言です。原本は公証役場で保管され、方式不備、改ざん、廃棄、隠匿、検認の問題を減らしやすい一方、証人や公証人手数料などの費用が発生します。
次の比較表は、公正証書遺言の手数料基準を整理したものです。財産を受ける人ごとに目的価額を当てはめて合算するため、財産総額だけで一度計算しない点を読み取る必要があります。
| 目的の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円を超え100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円を超え500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円を超え1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円を超え3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円を超え5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円を超え1億円以下 | 49,000円 |
| 1億円を超え3億円以下 | 49,000円に超過額5,000万円までごとに15,000円を加算 |
| 3億円を超え10億円以下 | 109,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算 |
| 10億円を超える場合 | 291,000円に超過額5,000万円までごとに9,000円を加算 |
次の比較表は、簡易な試算例です。受ける人を分けると、同じ総額でも手数料の中心部分が変わるため、誰にいくら渡すかを分けて読むことが重要です。
| 例 | 計算 | 読み方 |
|---|---|---|
| 配偶者1人に4,000万円 | 33,000円 + 13,000円 = 46,000円 | 4,000万円の区分に、財産全体1億円以下の遺言加算を足します。 |
| 長男3,000万円、長女1,000万円 | 26,000円 + 20,000円 + 13,000円 = 59,000円 | 受ける人ごとの取得価額で計算します。 |
| 9,000万円を3人に3,000万円ずつ | 26,000円 × 3人 + 13,000円 = 91,000円 | 1人に9,000万円渡す場合とは手数料の中心部分が異なります。 |
次の比較一覧は、自筆証書遺言と公正証書遺言を、費用と安全性の観点から並べたものです。作成時費用だけではなく、死亡後の検認、保管、内容面の安全性まで読み取ってください。
| 方法 | 作成時費用 | 死亡後の検認 | 紛失、改ざん対策 | 内容面の安全性 | 向くケース |
|---|---|---|---|---|---|
| 自筆証書遺言、自宅保管 | ほぼゼロから | 原則必要 | 弱い | 本人次第 | 財産、家族関係が単純で保管場所が明確な場合 |
| 自筆証書遺言、法務局保管 | 保管申請3,900円等 | 不要 | 強い | 形式面中心。内容保証なし | 費用を抑えつつ保管、検認リスクを下げたい場合 |
| 公正証書遺言 | 公証人手数料、証人等 | 不要 | 強い | 比較的強い | 不動産、遺留分、判断能力、相続人対立がある場合 |
| 専門家関与の自筆証書遺言 | 相談、文案確認費用 | 保管方法による | 保管方法による | 強化できる | 費用を抑えつつ内容リスクを下げたい場合 |
| 専門家関与の公正証書遺言 | 専門家費用と公証人手数料 | 不要 | 強い | 最も強化しやすい | 複雑、高額、紛争予防重視の相続 |
方式違反、あいまいな文言、遺留分、遺言執行者の未指定が死亡後の費用につながります。
自筆証書遺言の最大の利点は低コストです。しかし、相続実務で問題になるのは、作成時の安さではなく失敗したときの損失です。遺言者は死亡後に説明できないため、わずかな文言の誤りが長期紛争や税務上の不利、不動産売却の遅れ、事業承継の混乱につながることがあります。
次の比較表は、方式違反として問題になりやすい例を整理したものです。作成時に専門家が見れば防ぎやすいものでも、死亡後に発見されると修正できない点を読み取ることが重要です。
| ミス | 何が問題か |
|---|---|
| 本文をパソコンで作った | 自筆証書遺言の本文は自書が必要です。 |
| 日付を「吉日」とした | 作成日が特定できません。 |
| 財産目録に署名押印がない | 目録部分の効力に問題が出る可能性があります。 |
| 訂正方法が民法の方式に合わない | 訂正の効力が否定される可能性があります。 |
| 押印がない | 自筆証書遺言の方式を満たさない可能性があります。 |
| 夫婦連名で書いた | 共同遺言は禁止されるため危険です。 |
次の比較表は、あいまいな文言がどのような争点につながるかを示しています。家族なら分かるという表現では、金融機関、法務局、税務署、裁判所で使いにくくなることを読み取ってください。
| あいまいな文言 | 想定される争点 |
|---|---|
| 長男に家を譲る | 土地も含むのか、建物だけか、所在地はどこか。 |
| 預金は妻に任せる | 妻に相続させる趣旨か、管理を任せるだけか。 |
| 世話をしてくれた人に財産を渡す | 誰を指すのか、どの財産か、どの割合か。 |
| 残りは家族で話し合う | 分配を定めたのか、遺産分割協議が必要なのか。 |
| 全財産を長男に相続させる | 遺留分、債務、他の相続人の反発、登記、税務への配慮が問題になります。 |
次の重要リスク一覧は、作成時の節約が死亡後の紛争費用に変わりやすい場面をまとめています。どの要素があると専門家確認の必要性が上がるのかを読み取ってください。
兄弟姉妹以外の一定の相続人には最低限の取り分があり、金銭請求が起こる可能性があります。
遺贈、金融機関多数、不動産複数、非協力的な相続人がいる場合に手続が停滞しやすくなります。
筆跡、押印、作成日、認知能力、同居人の関与などが争点になることがあります。
会社株式や不動産売却が絡むと、評価、税務、登記、納税資金の問題が連鎖します。
不動産の相続登記、登録免許税、相続税申告は、遺言書作成費用とは別に検討します。
不動産がある相続では、遺言書作成費用だけでなく、相続登記費用を考える必要があります。2024年4月1日から相続登記の申請が義務化され、相続や遺言により不動産の所有権を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
次の重要表示は、登録免許税の概算例を示しています。遺言書を無料に近い費用で書いても、不動産を取得する場面では登記費用が別に発生することを読み取るために重要です。
相続による所有権移転登記の税率は不動産価額の1,000分の4です。単純化すると、3,000万円 × 0.4% = 12万円となります。
次の比較表は、不動産がある遺言で確認すべき事項を整理しています。登記事項証明書どおりに特定しないと、死亡後の名義変更や売却で支障が出る可能性がある点を読み取ってください。
| 確認事項 | 見落とした場合の問題 |
|---|---|
| 土地と建物の範囲 | 土地も含むのか、建物だけかで争いになることがあります。 |
| 私道持分や共有持分 | 生活や売却に必要な権利が漏れる可能性があります。 |
| 隣接地、農地、山林、未登記建物 | 遺言対象から漏れ、遺産分割協議が必要になることがあります。 |
| 住宅ローン、抵当権、借地借家関係 | 取得後の負担や売却可能性に影響します。 |
| 登記名義 | 祖父母名義のままなど、前提となる登記整理が必要になる場合があります。 |
相続税が発生する可能性がある場合、遺言書の内容は税務にも影響します。基礎控除額は3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数で、相続税の申告は死亡を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
次の一覧は、相続税がある場合に遺言の書き方へ影響しやすい論点です。税額だけでなく、納税資金、特例、二次相続、不動産配分まで読み取ることが重要です。
一次相続の税負担だけでなく、二次相続への影響も検討します。
誰が取得するか、要件を満たすかで税負担が変わる可能性があります。
不動産を取得する相続人が現金を持たないと、納税や遺留分対応が難しくなります。
株式評価、会社借入、役員貸付金、退職金、生命保険との整合が必要です。
専門家を使わないことではなく、必要な部分だけ確認してもらうことが費用対策になります。
相続では、専門家ごとに担当領域が異なります。費用を抑えるには、専門家を使わないのではなく、適切な専門家に適切な部分だけ依頼することが重要です。
次の比較表は、専門家ごとの役割と、遺言作成で費用をかけるべき場面を整理したものです。自分の論点に合う相談先を読み取り、重複依頼や相談先のずれを防ぐために使います。
| 専門家 | 主な役割 | 費用をかけるべき場面 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 紛争予防、遺留分、交渉、調停、審判、訴訟、使い込み疑い | 相続人間に対立がある、遺留分が問題になる、再婚家庭、疎遠な相続人、認知能力争いが予想される場合 |
| 司法書士 | 相続登記、不動産名義変更、戸籍収集、登記用書類、裁判所提出書類作成 | 不動産がある、相続登記が必要、登記名義が古い場合 |
| 税理士 | 相続税申告、税務相談、税務代理、税務調査対応 | 基礎控除を超えそう、不動産や非上場株式がある、特例を検討する場合 |
| 行政書士 | 紛争、税務、登記申請を除く書類作成、遺言作成支援 | 争いがなく、書類整理や文案整理を中心に依頼したい場合 |
| 公証人 | 公正証書遺言の作成 | 方式不備を避けたい、本人の意思確認を強化したい、検認を避けたい場合 |
| 遺言執行者 | 遺言内容の実現 | 相続人が協力しない可能性、遺贈、寄付、金融機関が多い場合 |
次の重要ポイント一覧は、専門家費用を失敗予防費として考えるべき場面をまとめています。該当する要素が多いほど、初期費用を抑えるより、事前確認で死亡後の紛争費用を避ける意味が大きくなります。
前婚の子、認知した子、養子、内縁関係、海外居住者がいる場合は相続人確認が重要です。
多く渡す、何も渡さない、介護した人に多く渡す場面では遺留分や説明資料が問題になります。
収益不動産、農地、山林、共有不動産、会社株式、借金、保証債務があると検討範囲が広がります。
認知症、入院、施設入所、筆跡の変化、家族主導の作成では証拠化が重要になります。
次の比較表は、自分で作成しやすい場合と専門家を入れるべき場合を分けたものです。低費用で進められる条件と、完全な自己作成を避ける条件を読み比べてください。
| 自己作成が比較的向く条件 | 専門家を入れるべき条件 |
|---|---|
| 財産が預貯金中心で、不動産がない、または単純 | 相続人の一部に多く渡す、一部に渡さない |
| 相続人が少なく、関係が良好 | 再婚、前婚の子、養子、子のない夫婦で兄弟姉妹が関係する |
| 分け方が法定相続分に近い | 不動産、会社、非上場株式、相続税がある |
| 遺留分を大きく侵害しない | 認知症、入院、施設入所中、寄付や遺贈がある |
| 法務局保管制度を利用して発見可能性を高める | 相続人が海外にいる、未成年者や後見利用者がいる |
資料を自分で整理し、相談範囲を限定し、保管制度や見直しを組み合わせます。
遺言書作成の費用を抑える最良の方法は、専門家を一切使わないことではありません。自分で情報を整理し、専門家に確認してもらう範囲を絞ることです。
次の比較表は、相談前に準備すべき資料を整理したものです。家族関係、財産、負債、希望、懸念を分けて準備すると、相談時間と調査費を抑えやすくなります。
| 資料 | 用途 |
|---|---|
| 家族関係図 | 相続人、推定相続人、遺留分権利者を把握します。 |
| 戸籍の概要 | 前婚の子、養子、認知、兄弟姉妹関係を確認します。 |
| 財産一覧 | 預金、不動産、株式、保険、車、貴金属、貸付金、債務を整理します。 |
| 不動産資料 | 登記事項証明書、固定資産税通知書、評価証明書、測量図、賃貸借契約書を確認します。 |
| 金融資産資料 | 通帳、残高証明、証券口座、投資信託、保険証券を整理します。 |
| 希望メモ | 誰に何を渡したいか、その理由を明確にします。 |
| 懸念事項 | 争いそうな相続人、連絡が取れない人、介護負担、使い込み疑いを整理します。 |
次の比較表は、段階ごとに自分でできることと専門家に確認すべきことを分けたものです。全部を依頼する前に、自分で整理できる部分を読み取り、確認だけ依頼する範囲を決めるために使います。
| 段階 | 自分でできること | 専門家に確認すべきこと |
|---|---|---|
| 家族関係の整理 | 家系図を書く | 法定相続人、遺留分、戸籍上の漏れ |
| 財産整理 | 通帳、固定資産税通知書、証券資料を集める | 不動産の特定、評価、税務上の扱い |
| 分け方の原案 | 希望をメモにする | 遺留分、相続税、登記、執行可能性 |
| 文案作成 | 自筆で下書きする | 法的表現、曖昧性、財産特定、遺言執行者 |
| 保管 | 法務局保管制度を予約する | 内容にリスクがある場合は事前相談 |
| 見直し | 家族構成や財産変更時に確認する | 再婚、死亡、出生、売買、相続税改正など |
次の4つのモデルは、費用と安全性の組み合わせを整理したものです。安さを優先するほどリスクが残り、複雑な相続ほど専門家の連携が必要になることを読み取ってください。
最も安い一方、紛失、検認、方式不備、内容不備のリスクが高く、推奨できる場面は限られます。
費用を抑えながら、保管と検認の問題を改善できます。一般家庭で現実的な選択肢になり得ます。
不動産、遺留分、相続人対立、判断能力への不安がある場合に向きます。
会社、相続税、財産規模、家族関係が複雑な場合、遺言、保険、生前贈与、事業承継を合わせて検討します。
方式、内容、紛争予防、保管を分けて確認すると、低費用でも失敗を減らしやすくなります。
自分で書く場合でも、方式と内容を分けて確認する必要があります。一つでも不安がある場合は、自己判断だけで完成させず、専門家に確認することが一般的には望ましいとされています。
次のチェック一覧は、自己作成の前に確認する項目を4つの領域に分けたものです。どの領域で不安があるかを読み取り、必要な相談先を決めるために使います。
| 領域 | 確認項目 |
|---|---|
| 方式 | 本文をすべて手書きしたか、年月日を日まで特定したか、氏名を自書したか、押印したか、財産目録の各ページに署名押印したか、訂正方式を満たしたか、夫婦連名にしていないか、消えるインクを使っていないか。 |
| 内容 | 誰に渡すか、何を渡すか、不動産の特定、預金の特定、残余財産、遺言執行者、予備的指定、借金や納税資金を確認したか。 |
| 紛争予防 | 遺留分、支払原資、付言事項、介護や同居の証拠化、認知能力、海外居住者、未成年者、後見利用者の有無を確認したか。 |
| 保管 | 発見される場所か、勝手に処分されない場所か、法務局保管制度を使うか、保管証や制度利用を信頼できる人に知らせるか、古い遺言との関係が明確か。 |
制度の一般的な考え方として、費用と注意点を整理します。
一般的には、作成時の直接費用だけなら、紙、ペン、印鑑があればほとんどかからないことが多いとされています。ただし、法務局で保管する場合の3,900円、死亡後の検認費用と手間、不動産の相続登記費用、相続税申告費用、争いが生じた場合の弁護士費用等が発生する可能性があります。具体的な総費用は、財産内容と相続人関係を整理して専門家へ相談する必要があります。
一般的には、作成時の費用が安いのは自筆証書遺言とされています。ただし、公正証書遺言は公証人手数料や証人等の費用がかかる一方、検認不要、方式不備、紛失、改ざん、隠匿のリスクを下げやすいとされています。財産や家族関係が複雑な場合は、作成費用だけでなく後日の紛争費用も含めて検討する必要があります。
一般的には、法務局保管制度は有用ですが、内容の法律相談に応じる制度ではないとされています。方式面や保管面の安全性は上がりますが、遺留分、税務、登記、遺言執行、相続人間の対立を解決する制度ではありません。内容に不安がある場合は、弁護士、司法書士、税理士等へ相談する必要があります。
一般的には、相続税がかからない場合でも、不動産登記、遺留分、遺言執行、相続人間の対立は発生し得ます。相続税の有無と、遺言書の法的安全性は別問題です。具体的な必要性は、財産の種類、家族関係、遺言内容を整理して確認する必要があります。
一般的には、家族に預けることが直ちに禁止されるわけではありません。ただし、遺言内容で不利益を受ける相続人がいる場合、保管していた家族への疑いが生じる可能性があります。保管方法は、法務局保管制度や公正証書遺言も含めて検討する必要があります。
一般的には、公正証書遺言でも、遺言能力、遺留分、解釈、財産評価をめぐって争われる可能性はあります。ただし、方式不備、紛失、隠匿、検認の問題は減り、作成過程の信用性も高まりやすいとされています。具体的な争点の見通しは、資料を整理して専門家へ相談する必要があります。
一般的には、全財産について明確な分け方が定められていれば、遺産分割協議を避けられることが多いとされています。ただし、漏れた財産がある、内容があいまい、相続人全員で別の分け方を望む、遺留分請求があるなどの場合は、協議や調整が必要になる可能性があります。
一般的には、全財産を一人に渡す単純な遺言では有効に働く場合もあります。ただし、不動産、預金、株式、保険、債務、デジタル資産、祭祀財産、事業用資産がある場合は、財産をできる限り特定し、残余財産条項を置き、遺言執行者を指定する方が安全とされています。具体的な文言は専門家へ確認する必要があります。
安く書けたことより、死亡後に有効に使え、相続人が困らず、争いを予防できることが重要です。
遺言書を自分で書けば、作成時の費用はほとんどかからないことがあります。これは事実です。しかし、遺言書の価値は安く書けたことではなく、死亡後に有効に使え、相続人が困らず、争いを予防できることにあります。
自筆証書遺言は、費用を抑えながら本人の意思を残せる制度です。特に法務局の保管制度を利用すれば、従来の自筆証書遺言の弱点であった紛失、隠匿、検認の問題をかなり改善できます。一方で、内容の法律的妥当性、税務上の有利不利、登記の実行可能性、遺留分への対応、遺言能力の証拠化までは自動的に解決しません。
法令、公的機関、専門職団体の公開資料をもとに整理しています。