2σ Guide

遺留分を生前に放棄する方法と
家庭裁判所の許可

生前の遺留分放棄は、当事者間の合意や念書だけでは効力が生じません。家庭裁判所の許可を前提に、申立人、必要書類、審査で見られる事情、相続放棄との違いを整理します。

1049条 民法上の許可根拠
800円 申立て収入印紙
2分の1 多くのケースの総体的割合
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遺留分を生前に放棄する方法と 家庭裁判所の許可

生前の遺留分放棄は、当事者間の合意や念書だけでは効力が生じません。

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遺留分を生前に放棄する方法と 家庭裁判所の許可
生前の遺留分放棄は、当事者間の合意や念書だけでは効力が生じません。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 遺留分を生前に放棄する方法と 家庭裁判所の許可
  • 生前の遺留分放棄は、当事者間の合意や念書だけでは効力が生じません。

POINT 1

  • 遺留分を生前に放棄する方法と家庭裁判所の許可の全体像
  • 口約束や念書で終わらせず、制度の入口で何が必要かを確認します。
  • 家庭裁判所の許可が効力発生の出発点
  • 生前にできるが許可が必要
  • 相続放棄とは別制度

POINT 2

  • 遺留分とは何か ― 生前放棄の前提になる最低限の取り分
  • 誰に遺留分があり、どの割合が基準になるのかを確認します。
  • 遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分です。
  • 現行民法で遺留分があるのは、兄弟姉妹以外の相続人です。
  • 一般的には、配偶者、子、直系尊属が問題になります。

POINT 3

  • 遺留分を生前に放棄する方法は家庭裁判所への申立て
  • 1. 遺留分の有無を確認:兄弟姉妹以外の相続人か、相続関係と戸籍で確認します。
  • 2. 放棄する本人の意思を確認:親族の希望ではなく、本人が制度と不利益を理解しているかを整理します。
  • 3. 家庭裁判所へ申立て:相続開始前に、被相続人の住所地の家庭裁判所へ許可を求めます。
  • 4. 遺留分放棄の効力:将来の遺留分侵害額請求を前もって外す効果が生じます。
  • 5. 設計の再点検:説明不足、代償性、別制度の適否を検討し直します。

POINT 4

  • 遺留分の生前放棄で家庭裁判所が見る手続資料
  • 1. 相続関係と遺留分の有無を確認:戸籍や家族関係を確認し、申立人が兄弟姉妹以外の相続人として遺留分を有するかを整理します。
  • 2. 放棄理由と財産状況を整理:住宅購入資金の援助、生活の安定、事業承継の必要性など、放棄の背景事情を説明できる形にします。
  • 3. 照会や事情聴取に対応:家庭裁判所から追加の書面照会や直接の確認が行われることがあり、単なる形式審査ではない点に注意します。

POINT 5

  • 遺留分の生前放棄の許可基準 ― 真意・合理性・衡平性
  • 真意性
  • 本人が制度の意味と不利益を理解し、親族からの圧力ではなく自由で真摯な意思に基づいているかが問題になります。
  • 合理性・必要性
  • 既に多額の援助を受けている、後継者へ事業用資産を集中させる必要があるなど、放棄する理由の具体性が問われます。

POINT 6

  • 遺留分の生前放棄と相続放棄の違い
  • 時期、対象、効果を混同すると、借金対策や相続設計を誤りやすくなります。
  • 生前の遺留分放棄は、相続開始前に遺留分という最低保障部分を前もって外す制度です。
  • 相続放棄は、相続開始後に相続人としての地位全体を問題にする制度です。
  • 「親に借金があるから、生前に遺留分を放棄しておけば安心」という理解は危険です。

POINT 7

  • 遺留分の生前放棄が許可された後の効果と却下時の見直し
  • 許可後に何が固定され、何は固定されないのかを分けて考えます。
  • 遺留分侵害額請求を失う
  • 相続権そのものは残り得る
  • 他の相続人の遺留分は増えない

POINT 8

  • 事業承継で遺留分を生前に放棄する方法だけでは足りない場面
  • 自社株式や事業用資産を後継者へ集中させる場合は、別制度も視野に入ります。
  • 会社や個人事業の承継では、通常の遺留分放棄だけでは対応しきれないことがあります。
  • 後継者への株式や事業用資産の集中を本格的に図る場合、中小企業庁が案内する遺留分に関する民法の特例が検討対象になります。
  • 経営承継円滑化法上の民法特例では、通常、推定相続人全員の合意、経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可が必要です。

まとめ

  • 遺留分を生前に放棄する方法と 家庭裁判所の許可
  • 遺留分を生前に放棄する方法と家庭裁判所の許可の全体像:口約束や念書で終わらせず、制度の入口で何が必要かを確認します。
  • 遺留分とは何か ― 生前放棄の前提になる最低限の取り分:誰に遺留分があり、どの割合が基準になるのかを確認します。
  • 遺留分を生前に放棄する方法は家庭裁判所への申立て:誰が、いつ、どこの家庭裁判所に申し立てるのかを整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

遺留分を生前に放棄する方法と家庭裁判所の許可の全体像

口約束や念書で終わらせず、制度の入口で何が必要かを確認します。

遺留分を生前に放棄する方法は、家庭裁判所に遺留分放棄の許可を申し立て、許可審判を得ることです。家族会議で合意した、公正証書を作った、将来請求しないと書面にしたという事情だけでは、生前の遺留分放棄としての効力は原則として生じません。

この制度は、相続争いを予防する有力な手段になり得ます。家業承継、不動産に偏った相続、再婚家庭、先に多額の援助を受けた相続人がいる場合などでは、将来の遺留分侵害額請求を見越した調整に使われることがあります。

一方で、安易な節税策や家族内の押し付けとして使える制度ではありません。裁判所は、放棄する本人の真意、放棄に合理的な理由があるか、経済的なバランスが取れているかを実質的に見ます。

次の重要ポイントは、生前の遺留分放棄が何を解決し、何を解決しないのかを整理するものです。最初に制度の射程を押さえることで、相続放棄や遺言書作成と混同しやすい部分を読み分けやすくなります。

家庭裁判所の許可が効力発生の出発点

遺留分放棄は、放棄する本人が相続開始前に申し立て、家庭裁判所の許可を受けたときに効力を生じます。借金対策や相続人の地位を完全に外す手続ではない点に注意が必要です。

次の一覧は、相談で誤解されやすい3つの視点を並べたものです。各項目がどの制度に関係するかを読むと、後続の手続説明でどの資料や検討が必要になるかを把握しやすくなります。

Point 01

生前にできるが許可が必要

遺留分の生前放棄は、民法1049条により家庭裁判所の許可を受けたときに限って効力が生じます。

Point 02

相続放棄とは別制度

相続放棄は相続開始後に相続人の地位全体を問題にする制度で、生前の遺留分放棄とは時期も効果も異なります。

Point 03

事業承継では特例も検討

自社株式や事業用資産を後継者に集中させる場面では、経営承継円滑化法上の民法特例が問題になることがあります。

Section 01

遺留分とは何か ― 生前放棄の前提になる最低限の取り分

誰に遺留分があり、どの割合が基準になるのかを確認します。

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分です。遺留分を侵害する贈与や遺贈があっても当然に無効になるわけではなく、遺留分権利者が請求した場合には、遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求が問題になります。

現行民法で遺留分があるのは、兄弟姉妹以外の相続人です。一般的には、配偶者、子、直系尊属が問題になります。兄弟姉妹には遺留分がありません。

次の比較表は、遺留分の有無と基本割合を整理したものです。誰が権利者になるかは申立人適格に直結するため、まず兄弟姉妹とそれ以外の相続人を分けて読み取ることが重要です。

相続人の類型遺留分の有無基本割合の考え方
配偶者あります直系尊属のみが相続人である場合を除き、総体として2分の1が基準になります。
あります代襲相続が問題になる場合を含め、兄弟姉妹以外の相続人として検討します。
直系尊属あります直系尊属のみが相続人である場合は、総体として3分の1が基準になります。
兄弟姉妹ありません遺留分放棄の申立人になる前提を欠くため、別の相続対策を検討します。

現在の民法では、遺留分の放棄は第1049条に位置づけられています。旧制度の遺留分減殺請求や旧条文番号を前提にした説明が残っていることがあるため、令和元年7月1日以後の相続を考える場合は、現行法の用語で確認する必要があります。

Section 02

遺留分を生前に放棄する方法は家庭裁判所への申立て

誰が、いつ、どこの家庭裁判所に申し立てるのかを整理します。

遺留分を生前に放棄するには、遺留分を有する相続人本人が、相続開始前に、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所へ遺留分放棄の許可を申し立てます。被相続人予定者が単独で、子や配偶者の遺留分を放棄させる形ではありません。

この点を誤ると、家族内で念書を作っただけで安心してしまったり、許可のない合意を前提に遺言や事業承継を組んでしまったりするおそれがあります。許可審判を得ることを中心に手続を設計する必要があります。

次の判断の流れは、生前の遺留分放棄を検討するときの順番を表しています。上から順に確認すると、誰が申立人になるか、家庭裁判所の許可が必要な場面か、どの資料準備に進むかを読み取れます。

生前の遺留分放棄を検討する順番

遺留分の有無を確認

兄弟姉妹以外の相続人か、相続関係と戸籍で確認します。

放棄する本人の意思を確認

親族の希望ではなく、本人が制度と不利益を理解しているかを整理します。

家庭裁判所へ申立て

相続開始前に、被相続人の住所地の家庭裁判所へ許可を求めます。

許可
遺留分放棄の効力

将来の遺留分侵害額請求を前もって外す効果が生じます。

不許可
設計の再点検

説明不足、代償性、別制度の適否を検討し直します。

家族会議、公正証書、合意書は事情説明の資料として意味を持つことがあります。しかし、それらだけで民法1049条の許可に代わるわけではありません。

Section 03

遺留分の生前放棄で家庭裁判所が見る手続資料

費用、必要書類、照会や事情聴取まで見通します。

裁判所の案内では、遺留分放棄許可の申立てに必要な費用として、収入印紙800円と連絡用の郵便切手が挙げられています。郵便切手の額や組み合わせは裁判所ごとに異なるため、申立先の案内を確認する必要があります。

標準的な添付書類としては、申立書、被相続人の戸籍謄本、申立人の戸籍謄本が挙げられます。裁判所の書式では財産目録も用意されており、財産状況や既に受けた援助などの説明が重視されることが分かります。

次の比較表は、申立てで整理する代表的な資料と、その資料が審査で何を示すかをまとめたものです。必要書類を単なる提出物として見るのではなく、真意や経済的バランスを説明する材料として読むことが重要です。

資料・費用主な内容読み取るポイント
収入印紙800円申立て自体に必要な基本費用です。
郵便切手連絡用として裁判所ごとに指定申立先ごとの運用確認が必要です。
申立書申立人、被相続人、放棄理由など本人の意思と放棄理由を裁判所へ説明する中心資料です。
戸籍謄本被相続人と申立人の身分関係申立人に遺留分があるかを確認する基礎資料です。
財産目録土地、建物、現金、預貯金、株式など相続財産の偏りや既受利益とのバランスを検討する材料になります。

次の時系列は、申立て前後で準備すべきことを並べたものです。順番を追うと、書類をそろえる前に本人意思と財産状況を確認し、提出後も照会や事情聴取に備える必要があることが読み取れます。

準備段階

相続関係と遺留分の有無を確認

戸籍や家族関係を確認し、申立人が兄弟姉妹以外の相続人として遺留分を有するかを整理します。

申立て前

放棄理由と財産状況を整理

住宅購入資金の援助、生活の安定、事業承継の必要性など、放棄の背景事情を説明できる形にします。

審理中

照会や事情聴取に対応

家庭裁判所から追加の書面照会や直接の確認が行われることがあり、単なる形式審査ではない点に注意します。

Section 04

遺留分の生前放棄の許可基準 ― 真意・合理性・衡平性

条文に細かな基準が列挙されていない分、事情整理が重要になります。

民法1049条は、相続開始前の遺留分放棄には家庭裁判所の許可が必要であると定めています。一方で、許可基準を条文上細かく列挙しているわけではありません。実務では、本人の真意、放棄の合理的理由や必要性、放棄に見合う代償や経済的衡平が中心的な検討軸になります。

次の一覧は、家庭裁判所の審査で問題になりやすい3つの要素を整理したものです。各要素は独立しているだけでなく相互に関係するため、どれか一つではなく全体として説明できているかを読み取る必要があります。

真意性

本人が制度の意味と不利益を理解し、親族からの圧力ではなく自由で真摯な意思に基づいているかが問題になります。

合理性・必要性

既に多額の援助を受けている、後継者へ事業用資産を集中させる必要があるなど、放棄する理由の具体性が問われます。

衡平性・代償性

既受利益、他の配慮、相続全体の公平感などを総合的に見て、著しい不利益がないかが検討されます。

真意性では、親や兄弟から強く迫られていないか、内容を理解しないまま署名していないか、高齢や病気、認知機能低下により判断能力に問題がないかが問題になります。ここでは面談記録や説明経過の整理が重要です。

合理性・必要性では、既に住宅取得資金、学費、事業資金などの援助を受けているか、放棄者自身に独立した資産や収入があるか、家族全体の承継設計が明確かが検討されます。

衡平性・代償性では、厳密な対価契約が常に必要という意味ではありません。既受利益、代償財産、他の相続人とのバランスを総合的に説明できるかが実務上の焦点になります。

注意単に親が望んでいる、後継者と揉めたくないという理由だけでは、許可判断において弱い事情になりやすいと考えられます。個別の見通しは家族関係、財産内容、本人意思の形成過程によって変わります。
Section 05

遺留分の生前放棄と相続放棄の違い

時期、対象、効果を混同すると、借金対策や相続設計を誤りやすくなります。

生前の遺留分放棄は、相続開始前に遺留分という最低保障部分を前もって外す制度です。相続放棄は、相続開始後に相続人としての地位全体を問題にする制度です。

「親に借金があるから、生前に遺留分を放棄しておけば安心」という理解は危険です。遺留分放棄は相続放棄の代用品ではなく、負債承継まで含めて整理する場面では相続開始後の相続放棄が別途問題になります。

次の比較表は、遺留分の生前放棄と相続放棄の違いを同じ軸で並べたものです。時期と対象の列を見ると、借金対策としてどちらが問題になるか、相続権そのものを失うかを区別しやすくなります。

項目遺留分の生前放棄相続放棄
できる時期被相続人の生前相続開始後
裁判所家庭裁判所の許可家庭裁判所への申述
対象遺留分という最低保障部分相続人としての相続全体
法的効果遺留分侵害額請求を前もって失う初めから相続人でなかったものとみなされる
借金対策相続放棄の代わりにはなりません負債承継を含めた検討対象になります

遺留分を放棄しても、被相続人が遺言で何らかの財産を取得させることはあり得ます。また、遺留分放棄は他の共同相続人の遺留分を増やす制度でもありません。将来の相続関係を完全にゼロにする手続ではなく、特定の保護権を前もって外す手続と理解する必要があります。

Section 06

遺留分の生前放棄が許可された後の効果と却下時の見直し

許可後に何が固定され、何は固定されないのかを分けて考えます。

家庭裁判所の許可が有効に成立すると、放棄した人は、将来の相続開始後に対象となる被相続人について遺留分侵害額請求を行えなくなると理解されます。これが制度の中核的効果です。

ただし、共同相続人の一人が遺留分を放棄しても、他の共同相続人の遺留分には影響しません。放棄者の遺留分が他の相続人へ自動的に上乗せされるわけではないため、遺言、生前贈与、事業承継特例などを含めた設計が必要になります。

次の一覧は、許可後に起きることと起きないことを分けたものです。制度の効果を読み違えると、他の相続人の取り分や遺言設計について誤った期待を持ちやすいため、各項目の違いを確認することが重要です。

Effect 01

遺留分侵害額請求を失う

許可の対象となった被相続人について、将来の遺留分侵害額請求を前もって外す効果が中心です。

Effect 02

相続権そのものは残り得る

遺留分放棄は、相続人の地位全体を消す制度ではありません。遺言による取得も別途あり得ます。

Effect 03

他の相続人の遺留分は増えない

民法1049条2項により、他の共同相続人の遺留分には影響しないとされています。

申立てが却下された場合、家事事件手続法上は即時抗告が問題になります。もっとも実務上は、抗告に進む前に、事情説明が不足していなかったか、財産資料の出し方に問題がなかったか、代償や衡平の説明が弱くなかったか、通常の遺留分放棄以外の制度が適切ではないかを再点検することが多いでしょう。

Section 07

事業承継で遺留分を生前に放棄する方法だけでは足りない場面

自社株式や事業用資産を後継者へ集中させる場合は、別制度も視野に入ります。

会社や個人事業の承継では、通常の遺留分放棄だけでは対応しきれないことがあります。後継者への株式や事業用資産の集中を本格的に図る場合、中小企業庁が案内する遺留分に関する民法の特例が検討対象になります。

経営承継円滑化法上の民法特例では、通常、推定相続人全員の合意、経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可が必要です。通常の民法1049条による個別の遺留分放棄とは、関係者の範囲と手続の組み立てが異なります。

次の比較表は、通常の遺留分放棄と事業承継特例の違いを示します。事業用資産や自社株式が中心となる場合は、どの列に自分の状況が近いかを読み取り、早い段階で制度選択を検討することが重要です。

項目通常の遺留分放棄事業承継特例
主な場面個別の推定相続人が遺留分を放棄する場面後継者に自社株式や事業用資産を集中させる場面
関係者放棄する本人が中心推定相続人全員の合意が問題になります
手続家庭裁判所の許可合意、経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可
検討事項真意、合理性、衡平性株価上昇リスク、評価固定、算定除外、納税猶予との整合

次の専門家の役割一覧は、遺留分の生前放棄が単独の家事審判にとどまらず、遺言、贈与、事業承継、相続税、登記に広がることを示します。どの専門領域の確認が必要かを読むと、相談先を分ける理由が分かります。

1

弁護士

許可申立ての法的構成、真意性や合理性の事情整理、家族間の利害調整、却下時の抗告判断、事業承継特例との接続を担います。

法務
2

司法書士・公証人

戸籍収集、相続登記、遺言執行実務、公正証書遺言との組み合わせを整理します。

登記・遺言
3

税理士・評価専門家

生前贈与や代償設計の税務影響、将来の相続税評価、自社株や不動産評価、事業承継税制との整合を確認します。

税務・評価
4

行政書士・中小企業診断士

紛争性がない段階の資料整理、関係説明資料、事業承継計画の補助などで関与することがあります。

資料整理
Section 08

遺留分の生前放棄を進める前の実務チェック

申立て前に確認すべき項目を、制度・資料・家族関係に分けて整理します。

申立て前には、申立人に本当に遺留分があるか、生前に対応すべき案件か、放棄理由が整理できているか、財産内容が把握できているかを確認します。本人の意思確認記録や家族内圧力の有無も重要です。

次の一覧は、実務上の確認項目を3つの領域に分けたものです。左から制度、資料、家族関係の順に読むと、どの確認が不足していると家庭裁判所への説明が弱くなるかを把握しやすくなります。

A

制度の入口

兄弟姉妹ではないか、生前の遺留分放棄で解決すべき問題か、相続放棄や遺言書だけで足りる問題ではないかを確認します。

申立人制度選択
B

資料と財産内容

戸籍、申立書、財産目録、既受利益、独立生計、後継者承継の必要性などを説明できる形にします。

戸籍財産目録
C

本人意思と家族関係

面談メモ、説明書、相談履歴を残し、家族内の圧力が疑われないように意思形成の経過を整理します。

真意性記録
  1. 申立人に遺留分があるかを確認する。
  2. 本当に生前に対応すべき案件かを確認する。
  3. 既受利益、独立生計、後継者承継の必要性など、放棄理由を整理する。
  4. 財産目録を作れる程度に財産内容を把握する。
  5. 本人の意思確認記録を残す。
  6. 家族内圧力がないかを点検する。
  7. 会社や個人事業の承継では、事業承継特例の適否を検討する。
Section 09

遺留分の生前放棄に関するよくある質問

個別判断を避け、一般的な制度説明として整理します。

Q1. 親子で合意書を作れば、生前の遺留分放棄として有効ですか。

一般的には、生前の遺留分放棄は家庭裁判所の許可が効力発生要件とされています。合意書や念書は事情説明の資料になり得ますが、それだけで許可に代わるわけではありません。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 親本人が申し立てるのですか。

一般的には、申立人は遺留分を有する相続人、つまり放棄する本人とされています。ただし、相続関係や戸籍、本人の意思形成過程によって確認すべき事項は変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q3. 費用はいくらですか。

一般的には、裁判所の案内上、収入印紙800円と連絡用郵便切手が必要とされています。郵便切手の額や組み合わせは申立先の家庭裁判所によって異なる可能性があります。具体的な対応は、申立先の案内と資料を確認したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q4. 一人が放棄すると、他の兄弟姉妹以外の相続人の遺留分は増えますか。

一般的には、共同相続人の一人がした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響しないとされています。ただし、遺言、生前贈与、財産構成によって相続設計の見え方は変わる可能性があります。具体的には弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q5. 相続放棄と同じですか。

一般的には、遺留分放棄は生前に行う最低保障部分の放棄であり、相続放棄は相続開始後に相続人の地位全体を問題にする別制度とされています。借金や負債の承継が関係する場合は結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q6. 会社を継がせるときは、普通の遺留分放棄だけで足りますか。

一般的には、後継者へ自社株式や事業用資産を集中させる場面では、通常の遺留分放棄のほか、経営承継円滑化法上の民法特例が検討対象になる可能性があります。会社の株価、推定相続人の合意、税務、資産構成によって判断が変わるため、具体的には専門家へ相談する必要があります。

Section 10

遺留分を生前に放棄する方法と家庭裁判所の許可のまとめ

制度の要点を、相続設計に落とし込むために振り返ります。

遺留分を生前に放棄する方法は、家庭裁判所への許可申立てを中心に考えます。申立ては遺留分を有する相続人本人が、相続開始前に、被相続人の住所地の家庭裁判所へ行うのが基本です。

次の重要ポイントは、このページで確認した結論を一つにまとめたものです。許可、申立人、資料、審査、相続放棄との違い、事業承継特例の順に読むと、実務で見落としやすい点を再確認できます。

生前の遺留分放棄は、家族内の利害調整を裁判所の外部審査で固定する制度です

許可なく作った合意書だけで進めず、本人の真意、合理的理由、経済的衡平、相続放棄との違い、事業承継特例の適否まで一体で検討することが重要です。

  1. 生前の遺留分放棄は可能ですが、家庭裁判所の許可が必要です。
  2. 申立ては、遺留分を有する相続人本人が、被相続人の住所地の家庭裁判所に対して行います。
  3. 必要書類は申立書や戸籍謄本などが基本で、財産目録や事情説明も重要になります。
  4. 裁判所は、真意、合理性、衡平性を実質的に審査します。
  5. 相続放棄とは制度も効果も異なります。
  6. 事業承継では、経営承継円滑化法上の民法特例まで視野に入れる必要があります。
Reference

参考資料

制度内容の確認に用いた公的資料・中立資料です。

公的資料

  • 裁判所「遺留分放棄の許可」
  • 裁判所「遺留分放棄の許可の申立書」および記入例
  • Japanese Law Translation「Domestic Relations Case Procedure Act, Article 216」
  • e-Gov法令検索「民法」
  • 法務省「相続に関するルールが大きく変わります」
  • 裁判所「相続の放棄の申述」

制度解説・事業承継資料

  • 学術論文「遺留分事前放棄の申立ての許可基準について」
  • 中小企業庁「遺留分に関する民法特例のポイント」
  • 中小企業庁「事業承継と民法<遺留分>」