交通事故で弁護士費用特約を利用している途中でも、原則として弁護士変更は可能です。ただし、保険会社への事前連絡、旧弁護士費用の精算、限度額残額、事件記録の引継ぎ、期限管理を同時に確認する必要があります。
交通事故で 弁護士費用特約を利用している途中でも、原則として弁護士変更は可能です。
変えられるかという問題と、特約で費用が出るかという問題を分けて整理します。
交通事故事件で弁護士費用特約を利用している途中でも、依頼者は原則として現在の弁護士との委任契約を終了し、新しい弁護士に依頼できます。委任契約は信頼関係を基礎にしており、民法上も委任は各当事者がいつでも解除できるとされています。
もっとも、弁護士を変えられることと、新旧双方の弁護士費用が当然に全額補償されることは別です。弁護士費用特約は保険契約に基づく制度であり、多くの約款や商品説明では、弁護士への委任や費用支出について保険会社への事前連絡または承認が求められます。
下の強調部分は、このページ全体の結論を一文でまとめたものです。読者にとって重要なのは、感情的に契約を終える前に、費用、記録、期限、承認の四つを同時に確認する必要がある点です。
変更前に保険会社へ連絡し、既払額、未払額、新弁護士の見積り、保険金支払限度額、事前承認の要否を確認することが実務上の出発点です。
弁護士費用特約の代表的な理解を、変更前に確認すべき実務項目として整理します。左列は判断軸、右列は読者が具体的に確認すべき内容を示しており、どこか一つでも空欄のまま進めると、自己負担や期限遅れにつながる可能性があります。
| 判断軸 | 確認する内容 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 変更の可否 | 現在の弁護士との委任契約を終了できるか | 原則として可能ですが、期限直前や訴訟中は空白期間を避ける配慮が必要です。 |
| 保険会社の承認 | 新弁護士の費用が特約の対象になるか | 事前連絡なしに依頼すると、一部または全部が対象外になる可能性があります。 |
| 限度額残額 | 旧弁護士への既払金、未払金、実費 | 弁護士を変えても、同一事故の限度額がリセットされるわけではありません。 |
| 記録引継ぎ | 医療記録、交渉履歴、証拠、裁判資料 | 資料不足があると、後遺障害申請、示談交渉、訴訟対応が遅れるおそれがあります。 |
| 期限管理 | 時効、自賠責請求期限、裁判期日、提出期限 | 変更そのものよりも、期限を守れる移行計画が重要です。 |
委任契約、保険契約、保険会社との費用承認を分けて理解します。
弁護士費用特約は、自動車保険などに付帯される特約で、交通事故などの法的紛争について、法律相談、交渉、訴訟対応などの費用を一定範囲で補償するものです。特に、被害者側に賠償責任がない事故では、自分の保険会社が相手方との示談交渉を代行できないことがあり、弁護士費用特約の意味が大きくなります。
次の比較表は、弁護士変更に関係する基本用語を整理したものです。制度名だけを見ると同じ費用問題に見えますが、契約関係、限度額、承認の要否が異なるため、どの項目がどの契約から生じているかを読み分けることが重要です。
| 用語 | 意味 | 弁護士変更時の注意 |
|---|---|---|
| 弁護士費用特約 | 交通事故などの法律相談、示談交渉、訴訟対応にかかる費用を一定範囲で補償する特約です。 | 対象事故、対象者、対象費用、承認手続は契約約款に従います。 |
| 保険金支払限度額 | 例として、弁護士費用300万円、法律相談費用10万円などの商品説明がみられます。 | 商品ごとに異なり、旧弁護士への支払いも同じ事故の限度額に通算されるのが通常です。 |
| 委任契約 | 依頼者が弁護士に示談交渉や訴訟代理などを依頼する契約です。 | 民法651条により、委任は各当事者がいつでも解除できるとされています。 |
| 準委任 | 法律行為ではない事務処理の委託に関する整理です。 | 資料収集、医療記録の整理、助言などが関わる場面で問題になります。 |
| 事前連絡または承認 | 保険会社に委任契約書案、費用見積り、支出予定を伝える手続です。 | 承認なしの費用は保険金の対象外または一部対象外となる可能性があります。 |
弁護士費用特約を使った弁護士変更では、三つの関係が重なります。次の三つの項目は、誰が誰に対してどの判断をするのかを分けるための整理で、保険会社の費用審査と依頼者の弁護士選択を混同しないことが読み取りの中心です。
委任契約の問題です。説明、報告、方針協議、費用精算、記録返還、秘密保持などが中心になります。
保険契約の問題です。対象事故、対象者、対象費用、限度額、免責事由、費用の相当性が確認されます。
報告書、委任契約書、請求書、費用明細、進捗報告の提出など、費用承認の実務が関係します。
弁護士変更の法的根拠は、委任が信頼関係を基礎とする点にあります。依頼者は、治療状況、収入、家族関係、後遺症、事故当時の記憶など私的な情報を弁護士に預けます。信頼関係が失われたまま継続することは、依頼者にとっても弁護士にとっても望ましくありません。
一方で、保険会社は弁護士の選択そのものを絶対的に固定する立場ではなくても、保険金として支払う費用かどうかを約款に基づいて確認します。したがって、弁護士変更では「依頼関係を終える権利行使」と「保険給付の承認」という二段階で考える必要があります。
不満の強さだけでなく、説明、連絡、専門性、期限、証拠の状態から判断します。
弁護士変更を検討する場面は、単なる感情的不満だけではなく、事件処理の説明、連絡頻度、交通事故分野の専門性、証拠整理、医療記録の読み込み、過失割合への対応、費用説明、信頼関係の破綻の程度から判断する必要があります。
次の一覧は、変更を検討する合理的なきっかけになりやすい事情をまとめたものです。各項目は読者が現在の依頼状況を点検するためのもので、当てはまる数だけでなく、後遺障害申請や期限に直結しているかを読み取ることが重要です。
合理的な期間を超えて連絡がなく、問い合わせても進行状況や回答期限が示されない場合です。
慰謝料、休業損害、逸失利益、後遺障害等級、過失割合などの説明がなく、代替案やリスクも分からない場合です。
医療記録、画像所見、症状固定、後遺障害診断書、事故態様資料の扱いに不安がある場合です。
診断書案、画像、神経学的所見、日常生活状況、事故態様との整合性が確認されない場合です。
保険金限度額、項目別限度額、自己負担、旧弁護士費用、新弁護士費用の関係が分からない場合です。
保険会社への費用承認のための報告と、依頼者利益の軽視を混同せず、合理的な疑問があれば説明を求める場面です。
一方で、弁護士変更には慎重さが必要な場面もあります。次の比較表は、変更を急ぐべき事情と、まず協議や確認を優先すべき事情を対比しています。変更の必要性の列は目安であり、最終的には事件の段階、証拠、期限、保険契約で変わります。
| 状況 | 変更検討の必要性 | まず確認すべきこと |
|---|---|---|
| 1か月以上、合理的理由なく連絡がない | 高い | 書面やメールで進行状況の回答期限を設ける |
| 後遺障害申請前なのに医療資料を見ていない | 高い | 診断書、画像、カルテの確認予定を聞く |
| 費用説明がなく自己負担が不明 | 高い | 委任契約書、保険会社承認額、限度額残額を確認する |
| 方針に不満があるが説明は丁寧 | 中程度 | セカンドオピニオンで見通しを比較する |
| 期待額を保証してくれない | 低いことが多い | 期待額の根拠とリスク説明を受ける |
| 裁判期日が目前 | 慎重 | 新弁護士が期限対応できるか確認する |
| 示談書に署名済み | 低いことが多い | 示談の有効性を別途相談する |
| 保険会社との費用承認が未了 | 高い | 変更前に保険会社へ連絡する |
弁護士が依頼者にとって厳しい見通しを説明すること自体は、変更理由にならない場合があります。過失割合の修正が難しい、後遺障害等級の認定可能性が高くない、整骨院費用の全額回収が難しい、裁判をしても費用対効果が低いといった説明は、専門的なリスク説明であることがあります。
変更理由は、新しい弁護士に説明できる程度まで具体化しておくことが重要です。「連絡が遅い」だけではなく、いつ連絡したか、どの質問に回答がないか、どの期限が不安か、どの資料を確認していないと思うか、費用説明のどこが不明かを整理します。
変更の成否は、保険会社の承認と旧弁護士費用の通算処理に左右されます。
弁護士費用特約を使って途中で弁護士を変える場合、保険会社に確認すべき事項は多岐にわたります。電話だけで終わらせず、可能であればメールや書面で残すと、後日「承認した」「承認していない」「その費用は対象外」という認識の相違を防ぎやすくなります。
次の表は、保険会社へ確認する項目を、変更前に優先して聞く順番で並べています。読者は、左列の項目を一つずつ確認し、右列の理由から自己負担や承認漏れに直結するものを読み取ってください。
| 確認項目 | 確認の理由 |
|---|---|
| 本件事故に弁護士費用特約が適用されるか | 対象事故でなければ、新弁護士費用の前提が崩れます。 |
| 自分が補償対象者に含まれるか | 記名被保険者、同居家族、別居の未婚の子などの範囲は契約で異なります。 |
| 弁護士費用、法律相談費用、実費、訴訟費用の限度額 | 総額だけでなく、項目別の上限がある場合があります。 |
| 旧弁護士への既払額と未請求費用 | 既払金や未払見込み額は、同一事故の限度額から控除されるのが通常です。 |
| 新弁護士の着手金、報酬金、実費の扱い | 費用の相当性や重複の有無を保険会社が確認します。 |
| 委任契約書案や見積書の事前提出 | 事前承認が必要な商品では、提出前の委任が問題になることがあります。 |
| 直接払いか、立替後精算か | 依頼者の一時負担が発生するかを把握できます。 |
| 訴訟、控訴、異議申立て時の追加承認 | 手続が進むたびに承認が必要になる場合があります。 |
| LAC基準や保険会社基準との関係 | 委任契約上の費用と保険会社の承認額が一致しない場合があります。 |
| 費用で争いが起きた場合の相談窓口 | そんぽADRセンターや弁護士費用保険ADRが問題になることがあります。 |
旧弁護士との費用精算では、着手金、報酬金、実費を分けて考えます。次の一覧は、費目ごとに何が問題になりやすいかを示しており、特に「支払済みだから終わり」ではなく、新しい弁護士費用に使える限度額がどれだけ残るかを読み取ることが大切です。
途中解任時に返金されるか、一部返金されるか、返金されないかは、委任契約書、事件の進行度、作業内容、報酬合意で異なります。
限度額通算交通事故証明書、診断書、画像CD、カルテ、刑事記録、郵送費、印紙、予納郵券などの明細は、重複取得を避けるためにも重要です。
明細保管多くの商品説明では、弁護士費用について1事故1被保険者あたり300万円、法律相談費用について10万円などの限度額が示される例があります。ただし、商品ごとの約款で決まるため、一律の金額として扱うことはできません。
保険金支払いを巡って、保険会社が新弁護士の着手金を承認しない、旧弁護士の報酬請求が高い、二重払いと扱われる、弁護士と保険会社で費用基準が対立する、自己負担の説明がなかった、という紛争が起きることがあります。損害保険に関する相談や紛争解決支援、弁護士費用保険に関するADRが問題になる場面もあります。
損害賠償の根拠資料を途切れさせないことが、変更後の初動を左右します。
交通事故の弁護士変更は、担当者を替えるだけの手続ではありません。治療経過、画像所見、後遺障害診断書、休業損害資料、過失割合の根拠、実況見分調書、ドライブレコーダー映像、車両損傷写真、修理見積り、相手方保険会社との交渉履歴など、損害賠償の根拠資料を移す工程です。
次の表は、新弁護士へ引き継ぐ資料を分野別に整理したものです。列ごとに資料の種類、具体例、重要になる理由を示しており、読者は自分の事件で不足している資料や、旧弁護士の手元にしかない資料を確認してください。
| 分野 | 主な資料 | 重要になる理由 |
|---|---|---|
| 事故状況 | 交通事故証明書、事故発生状況報告書、警察提出資料、実況見分調書、供述調書 | 過失割合、事故態様、衝突状況の基礎資料になります。 |
| 映像と写真 | ドライブレコーダー映像、防犯カメラ映像、現場写真、車両損傷写真 | 口頭説明だけでは伝わらない事故態様や受傷機転を補強します。 |
| 物損資料 | 修理見積書、修理明細、全損評価資料、代車資料、評価損資料 | 物損交渉だけでなく、人身損害の受傷機転を説明する補助資料にもなります。 |
| 医療資料 | 診断書、診療報酬明細書、施術証明書、画像データ、検査結果、カルテ | 治療費、休業損害、後遺障害、逸失利益の判断に関わります。 |
| 後遺障害資料 | 後遺障害診断書、等級認定票、理由書、日常生活状況報告、意見書 | 申請、異議申立て、訴訟での医学的立証に関わります。 |
| 収入と生活 | 休業損害証明書、源泉徴収票、確定申告書、給与明細、家事従事者資料、学生資料 | 休業損害、逸失利益、生活再建の見通しを確認します。 |
| 公的制度 | 労災、傷病手当金、障害年金、健康保険、障害福祉、介護保険の資料 | 損害賠償と公的給付の調整、復職支援、生活再建に関わります。 |
| 交渉履歴 | 相手方保険会社とのメール、手紙、示談案、口頭合意のメモ | 何が決まり、何が未決かを新弁護士が把握するために不可欠です。 |
| 契約と費用 | 旧弁護士との委任契約書、報酬説明書、請求書、領収書、特約承認書類 | 旧費用の精算、新費用の承認、限度額残額の把握に必要です。 |
| 裁判資料 | 訴状、答弁書、準備書面、証拠説明書、期日調書、証拠原本 | 訴訟中の変更では、次回期日と提出期限に直結します。 |
弁護士変更で最も危険なのは、相手方との交渉履歴が抜けることです。次の重要項目は、書面化されていない情報ほど引継ぎで失われやすいことを示しています。旧弁護士、新弁護士、依頼者の三者で、決定済み事項と未決事項を時系列で確認する必要があります。
相手方保険会社が口頭で期限を示している場合、記録がなければ新弁護士が把握できません。
口頭で一定の譲歩があった場合、メールやメモで残しておかないと交渉を再現しにくくなります。
事前認定か被害者請求か、追加資料の予定があるかを明確にしておく必要があります。
準備書面や証拠提出の期限が近い場合、記録到着の遅れが手続に影響します。
交通事故事件では、法律、医療、保険、事故調査、車両技術、労務福祉、生活再建が交差します。次の比較表は、各専門領域で引継ぎ時に確認すべき観点を示しており、損害賠償だけでなく、事故後の生活全体を見落とさないことが重要です。
| 観点 | 確認すべき資料や事情 | 弁護士変更での意味 |
|---|---|---|
| 警察、事故調査、鑑定 | 信号表示、停止線、ブレーキ痕、衝突角度、EDRデータ、道路構造 | 過失割合や事故態様の再評価に必要です。 |
| 医療とリハビリ | 診断書、画像所見、カルテ、リハビリ記録、神経学的検査 | 後遺障害と損害額の中核資料になります。医学的判断は医師が行います。 |
| 保険会社と損害調査 | 費用の相当性、対象事故性、限度額、旧費用と新費用の重複 | 承認遅れや自己負担を避けるため、実務的必要性を説明します。 |
| 車両修理 | 修理見積り、損傷写真、骨格損傷、時価額、評価損、代車期間 | 物損交渉や低速度衝突の受傷機転に関係することがあります。 |
| 労務福祉と生活再建 | 労災、休業補償、傷病手当金、障害年金、復職支援 | 賠償金だけでなく、公的制度を含めた全体設計が必要な事件があります。 |
解任、新委任、保険会社承認、関係先通知を空白期間なくつなぎます。
最も安全な実務処理は、現在の弁護士を先に解任してから慌てて新しい弁護士を探すことではありません。先に事件段階、期限、費用残額、新弁護士の受任可能性を確認し、旧弁護士から新弁護士へ記録が移る順番を組み立てることが重要です。
次の判断の流れは、変更前後の順番を可視化したものです。上から下へ進むほど手続が具体化し、途中の確認が抜けると費用承認や期限管理に支障が出るため、各段階で何を確認するかを読み取ってください。
事故段階、期限、旧弁護士への不満、資料の所在を整理します。
正式依頼の前に、変更先候補へ資料を示して受任可能性を確認します。
既払額、未払見込み、残額、新弁護士費用の承認手続を確認します。
委任契約終了、記録写し、費用精算書、未処理事項の説明を求めます。
自己負担、限度額超過、追加業務、報告頻度、実費範囲を書面で確認します。
相手方保険会社、裁判所、自賠責、労災関係機関などへ代理人変更を知らせます。
変更の各段階では、手元に残す記録が異なります。次の時系列は、どの時点で何を文書化するかを示しており、後日の認識違いを防ぐため、電話だけで終わらせないことが読み取りの中心です。
現在の作業、未処理事項、期限、相手方との交渉経過、費用請求状況を文書で尋ねます。
不満点だけでなく、事故証明書、診断書、示談案、契約書、特約承認書類を示します。
委任契約書案、見積書、旧費用精算書、残額を提出できるよう準備します。
解任日、受任日、窓口変更日をずらしすぎないようにし、交渉の空白期間を避けます。
依頼者本人が相手方保険会社と直接やり取りを続けると情報が錯綜するため、新弁護士に集約します。
旧弁護士へは、感情的な表現ではなく、委任契約を終了したい旨、事件記録の写し、費用精算書、実費明細、保険会社への請求状況が分かる資料の交付を求める旨を明確に伝えます。あわせて、現在までの処理状況、相手方との交渉経過、取得済み資料、未処理事項、期限の有無を確認します。
保険会社には、代理人弁護士の変更を検討していること、本件における特約の支払限度額、旧弁護士への既払額および未払見込み額、新弁護士へ依頼する場合の事前承認手続、提出が必要な契約書や見積書、自己負担が発生し得る費目を確認します。回答は後日の確認のため、メールまたは書面でもらうことが望ましいです。
新弁護士へは、現在の依頼状況、弁護士費用特約を利用していること、変更を検討する具体的理由、旧弁護士の費用精算が未了かどうか、保険会社へ変更前相談を予定していることを伝えます。あわせて、受任可能性、変更時のリスク、保険会社承認の見通しを確認します。
治療中、症状固定前後、後遺障害、示談、訴訟ではリスクが異なります。
弁護士変更のリスクは、事故の段階によって大きく変わります。事故直後、治療中、治療費打切り交渉中、症状固定前、後遺障害診断書作成前、後遺障害申請中、結果待ち、異議申立て検討中、示談交渉中、訴訟提起前、訴訟中、和解協議中、判決後、示談成立後では、必要な作業と避けるべき空白期間が異なります。
次の比較表は、事故段階ごとに注意すべき資料と判断を整理したものです。段階が後ろに進むほど期限や既に成立した合意の影響が大きくなるため、どの時期に何を確認すべきかを読み取ってください。
| 事故段階 | 重要な確認事項 | 変更時の注意 |
|---|---|---|
| 治療中 | 治療費打切り、通院頻度、検査不足、症状の一貫性、休業損害 | 診療録や通院状況が後の後遺障害判断に影響します。 |
| 症状固定前後 | 後遺障害診断書、必要検査、画像資料、可動域測定、日常生活上の支障 | 後遺障害申請に対応できる弁護士へ、医療記録を速やかに渡す必要があります。 |
| 後遺障害申請中 | 提出済み資料、追加提出の可否、結果見込み | 新弁護士が申請資料を把握できないと、異議申立て準備が遅れます。 |
| 後遺障害認定後 | 異議申立て、紛争処理制度、訴訟、新たな医学的資料 | 単に納得できないという理由だけでは足りず、追加資料の有無が重要です。 |
| 示談交渉中 | 相手方提示額、弁護士基準との差、過失割合、既払金、損害項目 | 旧弁護士がどの条件まで交渉済みかを確認しないと、時間がかかります。 |
| 訴訟中 | 辞任届、委任状、訴訟記録、次回期日、提出期限、争点整理 | 裁判所は手続の進行を重視するため、長期延期が当然に認められるとは限りません。 |
| 示談成立後 | 示談書、清算条項、錯誤や説明不足の有無 | 成立済みの示談を覆すことは容易ではなく、示談前の相談が重要です。 |
事故類型によっても、引継ぎの重点は変わります。次の一覧は、物損のみ、むち打ち、骨折、高次脳機能障害、死亡事故、業務中または通勤中の事故で、どの資料や制度に注目すべきかを示しています。
損害額が小さい場合、新たな着手金の承認について、保険会社が費用の相当性を慎重に見ることがあります。
通院頻度、症状の一貫性、神経学的所見、事故態様、治療終了時期が重要になります。
画像、手術記録、可動域測定、抜釘予定、将来治療費、逸失利益の引継ぎが重要です。
脳画像、意識障害、神経心理学的検査、家族の観察記録、就労や学校生活の資料が関係します。
労災保険、休業補償、特別支給金、障害補償給付、会社の証明資料が関係します。
自賠責保険の被害者請求では、傷害は事故発生の翌日から3年以内、後遺障害は症状固定日の翌日から3年以内、死亡は死亡日の翌日から3年以内と説明されています。人身損害の損害賠償請求権にも期間制限があるため、弁護士変更は期限管理と一体で考える必要があります。
誤解されやすい点を一般情報として整理します。
一般的には、依頼者と弁護士の委任契約は原則として終了できるとされています。ただし、保険会社の紹介制度やLACを通じた案件では、保険会社、弁護士会、旧弁護士、新弁護士の報告関係があるため、手続を丁寧に進める必要があります。具体的な対応は、契約資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、変更しただけで当然に使えなくなるわけではないと考えられます。ただし、新弁護士の費用について保険会社の承認が必要になる可能性があります。事故態様、契約約款、費用見積り、旧弁護士費用の精算状況によって結論は変わるため、事前に保険会社へ確認する必要があります。
一般的には、同一事故、同一被保険者ごとの限度額で管理されるのが通常とされています。旧弁護士に支払われた費用は通算される可能性があります。具体的な残額や自己負担の有無は、保険会社の支払状況、旧弁護士の未請求費用、新弁護士の見積りによって変わります。
一般的には、限度額超過、項目別限度額超過、対象外費用、保険会社未承認費用がある場合、自己負担が生じる可能性があります。委任契約時には、保険会社承認が得られない費用、限度額を超えた費用、実費の範囲について説明を受け、書面で確認する必要があります。
一般的には、適切に引き継げば、弁護士変更自体が直ちに不利に扱われるわけではありません。ただし、頻繁な変更や方針の一貫性の欠如は、交渉を長期化させる可能性があります。具体的には、交渉履歴、示談案、証拠、期限を新弁護士へ正確に引き継ぐ必要があります。
一般的には、弁護士費用特約のみの利用はノーカウント事故として扱われ、翌年の等級に影響しないと説明される商品が多くあります。ただし、同じ事故で車両保険、対人賠償、対物賠償などを使う場合には扱いが異なる可能性があります。契約内容によって変わるため、保険会社に確認する必要があります。
権利行使と保険給付を二段階で整理し、焦らず計画的に進めます。
弁護士費用特約を使った弁護士変更は、二段階で整理すると理解しやすくなります。第1段階は、依頼者が現在の弁護士との委任契約を終了し、新しい弁護士を選べるかという問題です。これは、民法上の委任解除、弁護士職務倫理、依頼者の自己決定に関わり、原則として可能です。
第2段階は、その変更によって発生する費用を保険会社が弁護士費用特約で支払うかという問題です。これは、保険約款、事前承認、費用の相当性、限度額、既払金、報酬基準の問題であり、当然に全額補償されるとは限りません。
次の比較表は、弁護士変更によるメリットとデメリットを整理したものです。左列は期待できる効果、右列は同時に確認すべき負担やリスクを示しており、変更の必要性と実行時期を決めるための材料として読み取ってください。
| メリット | デメリットやリスク |
|---|---|
| 信頼関係を回復できる | 旧弁護士費用が保険金限度額を消費している可能性があります。 |
| 交通事故に詳しい弁護士へ切り替えられる | 新弁護士の着手金が承認されない可能性があります。 |
| 後遺障害、過失割合、訴訟方針を再評価できる | 引継ぎに時間がかかり、交渉が一時停止することがあります。 |
| 連絡体制や説明頻度を改善できる | 期限直前では、新弁護士が対応しきれないことがあります。 |
| 医療、事故態様、損害算定を再整理できる | 旧弁護士との費用精算で紛争が生じることがあります。 |
変更前にすべきことは、現在の弁護士に進行状況と今後の方針を文書で尋ねること、弁護士費用特約の約款、証券、承認書類を確認すること、保険会社に既払額、残額、変更手続を確認すること、新弁護士候補に受任可能性と費用見積りを確認すること、訴訟期日、時効、自賠責請求期限などを一覧化することです。
変更後にすべきことは、新弁護士に全資料を渡すこと、相手方保険会社との連絡窓口を新弁護士に一本化すること、保険会社に新委任契約書と費用見積りを提出すること、旧弁護士から未着資料があれば再請求すること、重要期限を新弁護士と共有すること、今後の報告頻度を決めることです。
制度説明、保険実務、紛争解決、後遺障害調査に関する資料名を整理しています。