整備不良の立証で必要になる専門家
事故前からの不具合か、衝突後の損傷かを見分けることが中心です。
整備不良の代表例には、ブレーキの摩耗、制動力不足、エア漏れ、ブレーキ液漏れ、タイヤの摩耗や空気圧不足、偏摩耗、バースト、ホイールナットの緩み、ホイールボルト折損、操舵やサスペンションの摩耗、灯火装置の不点灯、OBDに記録された故障コードの放置などがあります。
次の専門家一覧は、整備不良の有無と事故前からの存在を調べる分担を示しています。読者にとって重要なのは、現物を見る実務家、力学的に説明する専門家、破断面を読む専門家、電子制御データを見る専門家がそれぞれ異なることです。どの不具合を疑うかに応じて、必要な専門家を読み分けてください。
自動車整備士・自動車検査員
点検整備記録簿と実車状態、ブレーキ、タイヤ、ホイール、灯火、操舵、サスペンション、オイル漏れ、エア漏れ、警告灯、スキャンツール診断を確認します。
現物確認記録照合車両工学鑑定人
部品や装置が事故発生にどう関与したかを、制動、操舵、車両重量、路面条件、停止距離、フェード、運転者の認識可能性から説明します。
因果関係停止距離材料工学・破壊解析の専門家
ホイールボルト、操舵部品、サスペンション、フレーム、ブレーキ部品の破断面、疲労破壊、腐食、熱影響、規格違い、締付け状態を見ます。
破断面現物保全電子制御装置と診断データの専門家
電子制御ブレーキ、ABS、ESC、衝突被害軽減ブレーキ、カメラ、レーダー、ステアリングアシスト、DTC、ECU履歴を解析します。
OBD記録条件不具合ごとの鑑定事項
次の比較表は、整備不良が疑われる代表場面で確認する事項を整理しています。なぜ重要かというと、事故後に部品が壊れているだけでは整備不良の証明にならず、事故前からの摩耗、腐食、熱損傷、緩み、整備記録の欠落と結び付ける必要があるためです。各行から、どの痕跡が事故前不具合の判断材料になるかを読み取ってください。
| 疑われる不具合 | 確認する主な痕跡 | 鑑定上の注意点 |
|---|---|---|
| ブレーキ不良 | 摩耗、漏れ、制動力低下、フェード、停止距離、事故後損傷との区別、日常点検や定期点検での発見可能性 | 車両重量、積荷重量、速度、路面条件を踏まえて、正常時性能と比較します。 |
| タイヤ不良 | バースト発生時点、溝深さ、偏摩耗、空気圧不足、過荷重、規格、破断面、リム損傷、落下物や縁石接触 | 事故前に破裂したか、衝突後に破損したかを区別します。 |
| 車輪脱落 | ホイールナットの締付け、錆、給脂、増し締め記録、マーキング、規定トルク、作業管理表、日常点検表 | タイヤ交換後の管理記録と実車状態の整合性が非常に重要です。 |
| 材料破壊 | 新鮮な破断面、腐食、疲労破壊のビーチマーク、延性破壊、脆性破壊、焼付き、変色、締付け不足や過大締付け | 洗浄、切断、研磨の前に、採取位置、寸法、写真、保管方法を記録します。 |
| 電子制御装置 | OBD点検結果、DTC、ECU警告履歴、ADAS校正記録、エーミング記録、事故前の警告灯、整備用スキャンツール出力 | データがないことは、不具合がなかったことを直ちに意味しません。記録条件と欠落理由も説明します。 |
国土交通省は、事故時の車両情報を記録するEDRについて国連規則を国内の保安基準へ導入する改正を公表しています。また、大型車についても、車両総重量3.5トンを超える貨物車などを対象として、令和8年12月以降の新型車から段階的にEDRを備える方針を公表しています。ただし、EDRは万能ではなく、車種、年式、装置仕様、読出し環境によって取得できる内容が異なります。