2σ Guide

反社該当が疑われる場合の
社内対応

疑いを断定に変えず、担当者を孤立させず、証拠保全・外部専門機関連携・契約判断・再発防止まで進める企業法務の実務ガイドです。

24時間初動と安全確保
1万8,800人令和6年末の構成員等
6点中小企業の最小実装
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反社該当が疑われる場合の 社内対応

疑いを断定に変えず、担当者を孤立させず、証拠保全・外部専門機関連携・契約判断・再発防止まで進める 企業法務の実務ガイドです。

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反社該当が疑われる場合の 社内対応
疑いを断定に変えず、担当者を孤立させず、証拠保全・外部専門機関連携・契約判断・再発防止まで進める 企業法務の実務ガイドです。
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  • 反社該当が疑われる場合の 社内対応
  • 疑いを断定に変えず、担当者を孤立させず、証拠保全・外部専門機関連携・契約判断・再発防止まで進める 企業法務の実務ガイドです。

POINT 1

  • 反社該当が疑われる場合の「反社会的勢力」とは何か
  • 疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。
  • 2 「疑い」と「認定」を分ける
  • 企業実務でいう「反社会的勢力」は、暴力団だけを意味しません。
  • この点は実務上重要です。

POINT 2

  • 反社該当が疑われる場合の反社対応を支える法令・指針・実務基準
  • 疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。
  • 1 政府指針
  • 2 暴力団対策法
  • 3 暴力団排除条例

POINT 3

  • 反社該当が疑われる場合の初動対応 ― 最初の24時間で何をすべきか
  • 疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。
  • 1 受付窓口を一元化する
  • 2 事実と評価を分けて記録する
  • 3 証拠保全を行う

POINT 4

  • 反社該当が疑われる場合の調査の方法 ― 反社チェックをどう進めるか
  • 疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。
  • 1 調査対象を特定する
  • 2 情報源の信頼性を格付けする
  • 3 調査の深度をリスクベースで決める

POINT 5

  • 反社該当が疑われる場合の社内体制 ― 誰が何を決めるべきか
  • 疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。
  • 1 反社会的勢力対応部署
  • 2 関与すべき社内外メンバー
  • 3 取締役会・監査役・内部監査の関与

POINT 6

  • 反社該当が疑われる場合の契約段階別の対応
  • 疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。
  • 1 契約前に疑いが生じた場合
  • 2 契約交渉中に疑いが生じた場合
  • 3 既存契約中に疑いが生じた場合

POINT 7

  • 反社該当が疑われる場合の不当要求が発生した場合の対応
  • 疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。
  • 1 不当要求の類型
  • 2 対応原則
  • 3 正当なクレームと不当要求の切り分け

POINT 8

  • 反社該当が疑われる場合の反社排除条項の設計
  • 疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。
  • 1 基本構造
  • 2 条項例
  • 3 条項がない場合

まとめ

  • 反社該当が疑われる場合の 社内対応
  • 反社該当が疑われる場合の「反社会的勢力」とは何か:疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。
  • 反社該当が疑われる場合の反社対応を支える法令・指針・実務基準:疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。
  • 反社該当が疑われる場合の初動対応 ― 最初の24時間で何をすべきか:疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

反社該当が疑われる場合のこのページの結論

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

基本原則組織として対応し、外部専門機関と連携し、取引を含めた関係遮断を検討し、有事には民事・刑事の法的対応を行い、裏取引や資金提供を避けます。

次の判断の流れは、疑義情報を得てから再発防止までの順番を示しています。この順番は、担当者の安全、証拠保全、法的評価、経営判断を分離するために重要です。上から順に、情報入手、暫定管理、調査、評価、実行、記録化へ進む構造として読んでください。

疑義発生から再発防止までの判断の流れ

情報入手

疑義情報、不当要求、通報、報道、取引先情報を受け付けます。

一元化と保全

担当者単独対応を止め、証拠を保全し、安全と取引制限を検討します。

一次・二次調査

契約、役員、株主、実質的支配者、公開情報、外部専門機関への相談を整理します。

法的評価と経営判断

解除、取引拒絶、段階的解消、継続監視、追加調査のどれを選ぶか判断します。

「反社該当が疑われる場合の社内対応」で最も重要なのは、反社であると軽々に断定しないことと、疑いを個人担当者に抱え込ませないことの両立です。反社会的勢力対応は、単なる取引審査ではなく、法務、コンプライアンス、危機管理、内部統制、従業員安全、個人情報管理、契約実務、場合によっては刑事対応を横断する企業防衛の問題です。

初動では、営業担当者や購買担当者が相手方に不用意な説明をしたり、独自に交渉したり、相手方を刺激する通知を出したりすることは避ける必要があります。社内では、反社会的勢力対応部署または法務・コンプライアンス部門に情報を一元化し、証拠を保全し、取引停止・契約解除・継続監視・追加調査のいずれを選ぶかを、経営陣の関与の下で判断します。

政府指針は、反社会的勢力による被害防止の基本原則として、組織としての対応、外部専門機関との連携、取引を含めた一切の関係遮断、有事における民事・刑事の法的対応、裏取引や資金提供の禁止を掲げています。したがって、疑いがある案件でも、単なる噂や断片情報だけで即時解除に走るのではなく、合理的根拠に基づくリスク評価と、関係遮断に向けた法的に耐え得るプロセスを構築することが中核となります。

反社該当が疑われる場合の社内対応は、概ね次の流れで進める。

情報入手
  ↓
担当者単独対応の禁止・情報の一元化
  ↓
証拠保全・安全確保・暫定的な取引制限
  ↓
一次調査 ― 契約、相手方、役員、株主、実質的支配者、取引経緯、支払状況の確認
  ↓
二次調査 ― 外部情報、専門機関、弁護士、必要に応じて警察・暴追センターへの相談
  ↓
法的評価 ― 反社該当性、不当要求該当性、契約解除可否、利益供与リスク、個人情報・名誉毀損リスク
  ↓
経営判断 ― 解除、取引拒絶、期限管理、継続監視、回収、社外対応
  ↓
実行 ― 通知、交渉窓口統一、支払・納品・情報アクセス制御、警察連携
  ↓
記録化・再発防止・規程改定・教育
Section 01

反社該当が疑われる場合の「反社会的勢力」とは何か

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

1 単一の法律上の定義だけで完結しない概念

企業実務でいう「反社会的勢力」は、暴力団だけを意味しません。政府答弁書は、「反社会的勢力」について、その形態が多様で、時々の社会情勢に応じて変化し得ることから、あらかじめ限定的かつ統一的に定義することは困難であるとの考え方を示しています。この点は実務上重要です。なぜなら、反社対応では、単に「暴力団員名簿に載っているか」だけではなく、名義貸し、フロント企業、実質的支配者、役員・株主・紹介者・下請先との関係、不当要求の態様などを総合評価する必要があるからです。

政府指針は、反社会的勢力をとらえる際に、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に加え、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要であるとしています。

ここでいう属性要件とは、「誰であるか」に関する要素です。たとえば、暴力団員、暴力団関係企業、暴力団と密接な関係を有する者、総会屋等が問題となります。行為要件とは、「何をしているか」に関する要素です。たとえば、威力を示して金銭を要求する、法的根拠を超えた補償を要求する、企業の不祥事や弱みを利用して口止め料を求める、SNS・街宣・取引先通報等を示唆して圧力をかける、といった行為が典型です。

2 「疑い」と「認定」を分ける

実務では、「反社である」と断定できる案件よりも、「反社該当が疑われる」案件の方が圧倒的に難しいです。疑いには濃淡があります。

次の比較表は、反社該当が疑われる場合の「反社会的勢力」とは何かを項目ごとに整理したものです。判断や作業の抜けを防ぐために重要で、左から順に項目、意味、対応上の読み取り方を確認してください。

区分典型例初動の考え方
高度の疑い警察・暴追センター・業界団体等から重大な情報がある、反社条項該当を裏付ける複数資料がある、不当要求が現に発生している取引停止・新規取引禁止・経営報告・外部専門機関連携を即時実施
中程度の疑い役員、株主、実質的支配者、紹介者、主要取引先に疑義がある、過去報道や公開情報に整合性のある懸念がある追加調査、関係者ヒアリング、契約確認、支払・納品の暫定管理
低度の疑い風評、匿名通報、同姓同名、過去の不確かなネット情報のみ断定を避け、同一性確認、情報源評価、継続監視
行為面の疑い相手が暴力団関係者とは確認できないが、脅迫的言動、過大請求、業務妨害示唆がある反社属性の有無とは別に、不当要求・恐喝・業務妨害リスクとして危機対応

疑いの段階で最も危険なのは、社内で「反社らしい」という言葉だけが独り歩きすることです。名誉毀損、信用毀損、個人情報保護、取引停止に伴う損害賠償、下請法・独禁法・労働法等の別問題を誘発し得ます。したがって、社内文書では「反社と断定」ではなく、「反社該当性に関する疑義」「反社条項該当可能性」「不当要求該当可能性」「追加調査を要するリスク情報」など、証拠状況に応じた表現を用いるべきです。

Section 03

反社該当が疑われる場合の初動対応 ― 最初の24時間で何をすべきか

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

次の時系列は、最初の24時間で行うべき対応を示しています。安全確保と証拠保全は後から取り戻しにくいため、上から順に、窓口統一、記録、資料保存、暫定制限へ進むことが重要です。

入手直後

窓口を一元化する

営業、購買、店舗、CSが単独で説明や交渉を続けないよう、法務・コンプライアンスへ集約します。

当日中

事実と評価を分けて記録する

情報入手日時、情報源、発言内容、一次資料の有無、未確認事項を分けて残します。

1 受付窓口を一元化する

疑義情報を受けた部署は、相手方とのやり取りを独自に継続せず、直ちに社内の反社会的勢力対応部署、法務部、コンプライアンス部、リスク管理部、または指定された危機管理窓口に連絡する。営業担当者、購買担当者、店舗責任者、カスタマーサポート担当者が、相手に「当社はあなたを反社と疑っている」などと伝えることは避けます。

一元化の目的は、情報統制だけではありません。担当者の安全確保、発言の一貫性、証拠保全、外部専門機関連携、社内意思決定の迅速化、秘密保持、誤認防止のためです。政府指針も、担当者や担当部署だけに任せず、代表取締役等の経営トップ以下、組織全体として対応することを求めています。

2 事実と評価を分けて記録する

初動記録では、事実と評価を分ける。

悪い記載例 ―

望ましい記載例 ―

このような記録は、後日の取締役会報告、監査対応、外部弁護士への相談、警察・暴追センターへの相談、契約解除の正当性説明、訴訟対応において重要となります。

3 証拠保全を行う

証拠保全の対象は、契約書やメールだけではありません。電話記録、チャット、SNS、名刺、請求書、見積書、注文書、納品書、振込口座、登記簿、本人確認資料、反社チェック結果、取引審査票、稟議書、議事録、面談メモ、防犯カメラ、入退館記録、紹介者とのやり取り、社内通報記録、苦情対応記録、反社条項への表明保証、過去の支払履歴を含みます。

相手方から不当要求があった場合は、発言日時、場所、同席者、発言内容、要求内容、相手の態度、脅迫的表現、金額、期限、示された根拠、録音・録画の有無を記録します。録音の可否は状況により検討を要しますが、少なくとも担当者の記憶が新しいうちに詳細メモを作成します。

4 暫定的な取引制限を検討する

疑いの程度に応じ、次の措置を検討します。

  • 新規契約、契約更新、追加発注、追加与信、前払、融資、保証、紹介、代理店権限付与を一時停止する。
  • 既存契約の履行について、法的義務違反にならない範囲で、納品・支払・情報開示・システム権限・施設入館・顧客データ提供を管理する。
  • 相手方との接触窓口を限定し、単独面談を禁止する。
  • 従業員への安全上の注意喚起を行います。
  • 緊急性が高い場合は、警察、弁護士、暴追センターに即時相談する。

注意すべき点は、暫定停止が契約違反や優越的地位濫用、下請法違反、労働法違反、個人情報保護違反等を生じさせないようにすることです。たとえば、単なる風評だけで納品済み代金を一方的に不払いにすることは、別の法的リスクを生む。反社対応は「強く出ればよい」ではなく、「毅然と、しかし法的に正しく」行うべきです。

Section 04

反社該当が疑われる場合の調査の方法 ― 反社チェックをどう進めるか

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

1 調査対象を特定する

反社チェックでは、相手方法人名だけを検索しても不十分です。少なくとも次の対象を確認します。

次の比較表は、反社該当が疑われる場合の調査の方法 ― 反社チェックをどう進めるかを項目ごとに整理したものです。判断や作業の抜けを防ぐために重要で、左から順に項目、意味、対応上の読み取り方を確認してください。

対象確認事項
法人商号、旧商号、本店、支店、設立日、目的、許認可、登記履歴、破産・行政処分・訴訟・報道
役員代表者、取締役、監査役、執行役、相談役、顧問、実質的経営者、過去役員
株主・出資者主要株主、親会社、実質的支配者、匿名組合・ファンド・SPCの背後関係
担当者交渉担当者、紹介者、代理人、名刺上の肩書、実権者との関係
グループ会社子会社、関連会社、屋号、別法人、同一住所法人、同一電話番号法人
取引実態商流、資金流、物流、契約当事者と実際の履行者の一致、支払口座の名義
行為不当要求、威迫、過大請求、秘密性の要求、口止め、第三者利用、業務妨害示唆

とくに注意すべきは、名義人と実質的支配者が異なる場合です。法人の登記上は無害に見えても、実際の交渉者、資金提供者、取引を主導する者、紹介者、下請先、支払口座の管理者にリスクがあることがあります。

2 情報源の信頼性を格付けする

情報源は、信頼性に応じて扱いを変える。

次の比較表は、反社該当が疑われる場合の調査の方法 ― 反社チェックをどう進めるかを項目ごとに整理したものです。判断や作業の抜けを防ぐために重要で、左から順に項目、意味、対応上の読み取り方を確認してください。

情報源信頼性評価の視点
公的資料法令、行政処分、裁判例、登記、官報、警察発表等は一次資料として重視
業界団体・暴追センター・弁護士情報守秘義務や提供範囲に留意しつつ、実務上重要
報道複数媒体、時期、実名性、訂正・削除の有無、訴訟結果を確認
商用データベースデータ更新時期、同一性、根拠資料、誤登録可能性を確認
取引先・社内通報動機、伝聞か直接経験か、具体性、裏付けの有無を確認
SNS・掲示板誹謗中傷、同姓同名、虚偽情報の可能性が高く、単独根拠にしない

調査結果は、単に「ヒットあり・なし」で処理しないことが重要です。「同一人物か」「現在も関係があるか」「過去の役員就任だけか」「犯罪・行政処分・民事紛争のどれか」「報道後に無罪・不起訴・訂正があったか」「反社条項の定義に該当するか」を確認します。

3 調査の深度をリスクベースで決める

全ての取引先に同じ深度の調査を行うのは、費用対効果が悪い。リスクに応じて、調査レベルを分ける。

次の比較表は、反社該当が疑われる場合の調査の方法 ― 反社チェックをどう進めるかを項目ごとに整理したものです。判断や作業の抜けを防ぐために重要で、左から順に項目、意味、対応上の読み取り方を確認してください。

リスクレベル取引例調査深度
少額・単発・標準条件・相手方が上場企業等基本的な商号・役員・反社DB・公知情報確認
継続取引、代理店、委託、紹介、顧客接点、一定金額以上役員・株主・実質的支配者、過去社名、関連会社、報道、行政処分確認
M&A、出資、融資、共同事業、フランチャイズ、許認可業種、不動産、金融、海外、現金性が高い取引外部調査、弁護士レビュー、実質支配者確認、現地確認、契約条項強化、経営承認
緊急不当要求、脅迫、街宣・SNS拡散予告、従業員安全リスク警察・暴追センター・弁護士への即時相談、接触制限、安全確保

金融庁のマネロン・テロ資金供与対策ガイドラインでも、リスクベース・アプローチにおいて、商品・サービス、取引形態、国・地域、顧客属性等のリスクを具体的に検証し、リスクの特定・評価・低減を順に検討する考え方が示されています。 一般事業会社の反社対応でも、この発想は有用です。

Section 05

反社該当が疑われる場合の社内体制 ― 誰が何を決めるべきか

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

1 反社会的勢力対応部署

政府指針は、反社会的勢力による不当要求が発生した場合の対応を統括する部署を整備し、反社会的勢力に関する情報を一元的に管理・蓄積し、社内体制整備、研修、マニュアル整備、外部専門機関連携等を行うことを求めています。

大企業では、法務部、コンプライアンス部、リスク管理部、総務部、内部統制部が中心となることが多い。中小企業では、専任部署を置けないこともあるが、その場合でも、少なくとも「代表取締役直轄の対応責任者」「外部弁護士」「警察・暴追センター連絡先」「反社チェック記録簿」「契約条項の標準化」は整備する必要があります。

2 関与すべき社内外メンバー

反社該当が疑われる場合の社内対応では、次のような役割分担が望ましい。

次の比較表は、反社該当が疑われる場合の社内体制 ― 誰が何を決めるべきかを項目ごとに整理したものです。判断や作業の抜けを防ぐために重要で、左から順に項目、意味、対応上の読み取り方を確認してください。

役割主な担当
最終判断代表取締役、担当取締役、リスク委員会、コンプライアンス委員会
法的評価法務部、企業内弁護士、外部弁護士
事実調査コンプライアンス部、内部監査、事業部、必要に応じてフォレンジック専門家
契約・通知法務部、外部弁護士、事業部
支払・与信管理経理、財務、与信管理部門
従業員安全総務、人事、危機管理、警備担当
個人情報・情報管理プライバシー担当、情報システム、CISO
社外説明広報、IR、経営企画、外部PRアドバイザー
外部連携警察、暴追センター、弁護士、業界団体、必要に応じて監督官庁

重要なのは、営業部門だけで判断させないことです。営業部門は取引継続のインセンティブを持つ一方、反社対応では企業全体のレピュテーション、法令遵守、役職員の安全、社会的責任が問題となります。したがって、一定以上の疑義がある場合は、営業部門を情報提供者としつつ、判断主体は法務・コンプライアンス・経営に移する必要があります。

3 取締役会・監査役・内部監査の関与

重大な反社疑義案件では、取締役会または経営会議への報告が必要となります。とくに、金額が大きい、上場会社である、金融機関である、許認可に影響する、役員や主要株主が関係する、反社への利益供与が疑われる、不当要求が発生している、メディア報道リスクがある場合は、経営レベルの判断を避けることはできません。

監査役、監査等委員、社外取締役、内部監査部門は、反社対応が内部統制上の重要リスクであることを前提に、体制整備、運用状況、記録、例外承認、取引先管理、教育の実効性を確認します。政府指針も、反社会的勢力による被害防止を内部統制システムに明確に位置付ける必要があるとしています。

Section 06

反社該当が疑われる場合の契約段階別の対応

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

1 契約前に疑いが生じた場合

契約締結前であれば、原則として契約自由の下で取引を行わない判断がしやすい。ただし、相手方への説明方法には注意を要する。単に「社内審査の結果、取引を見送ります」「総合的判断により、今回は契約を締結しません」といった説明にとどめ、調査内容や情報源を開示しない方が安全な場合が多い。

相手方が理由を強く要求してきた場合でも、社内の反社疑義情報、警察・暴追センター・業界団体・第三者からの情報、調査会社の情報を不用意に伝えることは避ける必要があります。情報提供者の安全、守秘義務、名誉毀損、個人情報保護、証拠隠滅、さらなる不当要求の誘発につながり得るためです。

2 契約交渉中に疑いが生じた場合

契約交渉中の場合は、次の措置を検討します。

  • 交渉窓口を法務・コンプライアンスに移します。
  • 反社条項、表明保証、解除条項、損害賠償免責、再委託先管理、実質的支配者変更時の通知義務を確認します。
  • 必要に応じて追加資料を求めます。ただし、相手方を刺激する質問設計は避けます。
  • 期限や独占交渉義務がある場合は、契約上の義務を確認します。
  • 社内で取引を進めない方針を決める場合は、説明文言を弁護士と調整する。

3 既存契約中に疑いが生じた場合

最も難しいのが、既に契約が存在し、商品・サービス提供、支払、委託、代理店、雇用、出資、融資等が継続している場合です。この場合、直ちに全取引を停止すればよいとは限りません。

確認すべき事項は次のとおりです。

  1. 契約書に反社会的勢力排除条項があるか。
  2. 条項の定義に、相手方本人だけでなく、役員、実質的支配者、主要株主、親会社、子会社、再委託先、代理人が含まれているか。
  3. 「疑い」だけで解除できるのか、「該当」または「表明保証違反」が必要なのか。
  4. 催告なく解除できるか。
  5. 解除による損害賠償免責があるか。
  6. 既履行分の支払義務、回収義務、前払金、保証金、在庫、顧客データ、知的財産、システムアクセスをどう処理するか。
  7. 取引停止が顧客・消費者・下請先・従業員に影響するか。
  8. 監督官庁・金融機関・取引先への報告義務があるか。

政府指針は、反社会的勢力とは知らずに関係を有してしまった場合には、相手方が反社会的勢力であると判明した時点や、疑いが生じた時点で速やかに関係を解消することを求めています。もっとも、実務では、契約、証拠、従業員安全、債権回収、法的紛争リスクを踏まえ、解除、更新拒絶、段階的縮小、期限管理、継続監視等を組み合わせることがあります。

4 契約終了後に判明した場合

契約終了後に反社該当性が判明した場合でも、検証は必要です。過去に利益供与があったか、再発防止が必要か、内部統制に不備があったか、担当者の関与があったか、同一グループとの別取引が残っていないか、顧客データや秘密情報が渡っていないかを確認します。

上場会社や金融機関では、過去取引の発覚がレピュテーション、監督対応、開示、内部統制報告、監査に影響する可能性があります。単に「契約は終わっているから問題ない」と処理してはなりません。

Section 07

反社該当が疑われる場合の不当要求が発生した場合の対応

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

1 不当要求の類型

政府指針の解説は、不当要求の手口として、接近型と攻撃型を挙げています。接近型は、機関誌購読、物品購入、寄付金、賛助金、下請契約等を一方的なお願いや勧誘の形で求めるもの。攻撃型は、企業のミス、役員スキャンダル、商品欠陥、従業員対応等を材料として、金銭要求や街宣活動等を行うものです。

実務上は、これに加えて、次の類型があります。

  • SNS拡散型 ― SNS、口コミサイト、動画配信、まとめサイト等での拡散を示唆する。
  • 取引先通報型 ― 主要顧客、金融機関、監督官庁、上場審査関係者、スポンサーに連絡すると脅す。
  • 個人攻撃型 ― 役員、担当者、家族、店舗スタッフに直接圧力をかける。
  • クレーム偽装型 ― 消費者クレーム、品質クレーム、ハラスメント通報等を装う。
  • 内部者利用型 ― 元従業員、下請先、代理店、紹介者が内部情報を材料に要求する。
  • 反社疑義逆用型 ― 「反社扱いしたら名誉毀損で訴える」と過度に威迫する。

2 対応原則

不当要求への対応原則は明確です。

  1. 一人で会わない。
  2. 社外の密室で会わない。
  3. 即答しない。
  4. 金銭・物品・便宜を供与しない。
  5. 念書・謝罪文・確認書に不用意に署名しない。
  6. 相手の要求内容、発言、日時、場所、同席者を記録します。
  7. 警察・暴追センター・弁護士に相談する。
  8. 正当なクレーム部分がある場合でも、不当要求とは切り分ける。
  9. 従業員の安全を最優先する。
  10. 経営陣が関与し、担当者に責任を押し付けない。

政府指針も、不当要求があった場合には、速やかに反社会的勢力対応部署へ報告し、担当取締役等に報告すること、外部専門機関に相談すること、民事上の法的対抗手段と刑事事件化を躊躇しない対応を行うことを示しています。

3 正当なクレームと不当要求の切り分け

相手方が反社会的勢力である、またはその疑いがあるとしても、企業側に本当に契約不履行、品質問題、事故、ハラスメント、個人情報漏えい、説明義務違反等がある場合は、その正当な部分については適切に対応する必要があります。政府指針も、要求が正当なものであるときは法律に照らして相当な範囲で責任を負うとしています。

ただし、正当なクレームがあることと、法的責任を超えた金銭要求、口止め料、過大な慰謝料、威迫的交渉、秘密裏の利益供与に応じることは別です。正当部分は通常のクレーム処理・事故対応・不祥事対応として処理し、不当要求部分は拒絶する。この切り分けができないと、反社側に「弱み」を握られ、要求が拡大する。

Section 08

反社該当が疑われる場合の反社排除条項の設計

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

1 基本構造

反社排除条項は、少なくとも次の構造を持ちます。

  1. 反社会的勢力に該当しないことの表明保証
  2. 反社会的勢力と関係を有しないことの表明保証
  3. 自らまたは第三者を利用して不当要求等を行わないことの誓約
  4. 表明保証違反・誓約違反時の無催告解除
  5. 解除による損害賠償責任の免除
  6. 反社該当を理由とする損害賠償・補償請求の排除
  7. 再委託先、代理人、役員、実質的支配者、主要株主の管理
  8. 変更発生時の通知義務
  9. 調査協力義務

2 条項例

以下は一般的な参考例であり、個別契約にそのまま使用する前に弁護士等の専門家の確認を受ける必要があります。

第○条(反社会的勢力の排除)
1. 甲および乙は、自己ならびに自己の役員、実質的に経営を支配する者、
主要株主、代理人、媒介者および再委託先が、現在、暴力団、暴力団員、
暴力団員でなくなった時から一定期間を経過しない者、暴力団準構成員、
暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、
特殊知能暴力集団その他これらに準ずる者に該当しないことを表明し、保証する。
2. 甲および乙は、自己または第三者を利用して、暴力的要求行為、
法的責任を超えた不当要求行為、脅迫的言動、暴力行為、風説の流布、
偽計または威力を用いた信用毀損または業務妨害その他これらに準ずる行為を
行わないことを誓約する。
3. 甲または乙は、相手方が前二項に違反したと合理的に認められる場合、
何らの催告を要せず、本契約の全部または一部を解除することができる。
4. 前項に基づき解除した当事者は、当該解除により相手方に生じた損害について
一切の責任を負わない。

実務上は、「合理的に認められる場合」という文言の入れ方、調査協力義務、疑義発生時の資料提出義務、再委託先排除、解除後の精算、知的財産・秘密情報・個人情報の返還削除、データアクセス停止、損害賠償、期限の利益喪失等を契約類型に応じて調整します。

3 条項がない場合

反社排除条項がない場合でも、契約解除が不可能とは限りません。相手方の行為が債務不履行、不法行為、信頼関係破壊、錯誤・詐欺、強迫、公序良俗違反、業法違反、暴排条例違反等に該当する可能性があります。ただし、条項がない場合は解除根拠の構成が難しくなるため、外部弁護士と慎重に検討します。

Section 09

反社該当が疑われる場合の個人情報・名誉毀損・情報管理上の注意

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

反社チェックでは、個人情報、要配慮情報に近い情報、犯罪歴に関する情報、風評情報、暴力団関係情報を取り扱うことがあります。これらを不用意に社内共有したり、取引先に伝えたり、メールで広範囲に転送したりすることは危険です。

実務上の注意点は次のとおりです。

  • 共有範囲は、法務・コンプライアンス・経営・調査担当等の必要最小限に限定する。
  • メール件名に「反社」など刺激的な表現を使わず、管理番号を用います。
  • 調査結果は、事実、情報源、評価、未確認事項を分けて記載する。
  • 商用データベースの利用規約、保存期間、第三者提供制限を確認します。
  • 警察・暴追センター・弁護士から得た情報は、提供条件・守秘義務を厳守する。
  • 相手方本人から開示請求・削除要求・抗議があった場合の対応を事前に定めます。
  • 調査資料はアクセス制限を設定し、退職者・異動者の権限を速やかに削除する。

政府指針の解説でも、反社会的勢力情報のデータベース化や共有に関し、個人情報保護法との関係を整理しています。 もっとも、個人情報保護法は改正が重なっているため、古い条文番号や過去の整理をそのまま機械的に用いるのではなく、現行法と個人情報保護委員会ガイドラインを踏まえた運用が必要です。

Section 10

反社該当が疑われる場合の業務類型別の実務ポイント

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

1 仕入先・外注先・業務委託先

外注先が反社該当または疑義先である場合、企業は自社の顧客、従業員、情報、システム、施設を危険にさらします。委託先が顧客データや個人情報を扱う場合は、情報漏えい、脅迫、二次利用リスクもあります。

対応としては、契約解除だけでなく、代替業者確保、納期影響、在庫・成果物の引渡し、秘密情報の回収、ID停止、再委託先の把握、顧客影響の説明を検討します。

2 販売代理店・フランチャイズ・紹介者

代理店・フランチャイズ・紹介者は、自社ブランドを使って外部と接触するため、反社リスクが高いです。とくに、手数料、成功報酬、紹介料、現金性の高い商材、顧客紹介、不動産、金融、医療美容、投資、教育、情報商材、広告、芸能、スポーツなどでは注意が必要です。

契約では、再委託・再代理の禁止または承認制、顧客からの現金受領禁止、反社チェック義務、苦情報告義務、監査権、商標使用停止、即時解除、顧客データ返還を定めます。

3 顧客・利用者

顧客が反社該当または疑義先である場合、取引拒絶・利用停止・契約解除が問題となります。金融機関、決済、プラットフォーム、EC、通信、不動産賃貸、ホテル、イベントでは、顧客との関係遮断が社会的要請である一方、消費者契約、利用規約、差別的取扱い、説明義務、既払金返還、サービス停止のタイミングに注意が必要です。

利用規約には、反社排除条項、不当要求禁止、威力業務妨害禁止、虚偽登録禁止、アカウント停止、売上金留保・返金・相殺、関係当局への通報、調査協力義務を定めます。

4 役員・従業員・採用候補者

役員や従業員に反社該当疑義がある場合は、労働法・会社法上の慎重な対応が必要です。採用時の反社チェック、役員就任時の表明保証、誓約書、服務規程、懲戒規程、情報アクセス管理、内部通報制度を整備する。

ただし、風評だけで内定取消、解雇、降格、懲戒を行うことは危険です。労働契約上の地位に影響する措置は、証拠、弁明機会、就業規則、職務関連性、企業秩序への影響、比例原則を踏まえる必要があります。

5 株主・出資者・M&A

反社会的勢力が株主となる場合、株主権の行使、不当要求、経営介入、企業価値の収奪、上場審査・金融機関取引への影響が問題となります。M&Aでは、対象会社、売主、買主、役員、株主、主要取引先、実質的支配者、資金源、アドバイザー、仲介者を調査対象に含める。

株式譲渡契約、投資契約、株主間契約では、反社排除の表明保証、誓約、クロージング条件、補償、解除、買戻し、議決権制限、情報提供義務を設計する。スタートアップ投資や不動産SPCでは、資金の出所、名義株主、ファンドLP、匿名組合員、紹介者にも注意する。

6 不動産・建設

不動産・建設は、暴排条例、近隣対応、地上げ、境界、残置物、警備、廃棄物、下請・再下請、地元関係者、反対運動、街宣、資金流入等のリスクが高い。売買・賃貸・請負・下請・管理・仲介の各契約で反社条項を入れ、下請先・再委託先の確認を行います。

反社該当が疑われる相手との不動産取引では、解除後の占有、明渡し、鍵、残置物、近隣安全、警察相談、仮処分・訴訟・強制執行まで見据える必要があります。

Section 11

反社該当が疑われる場合の意思決定 ― 解除・継続監視・追加調査の判断基準

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

反社該当が疑われる場合の社内対応では、最終的に次のいずれかを選択する。

次の比較表は、反社該当が疑われる場合の意思決定 ― 解除・継続監視・追加調査の判断基準を項目ごとに整理したものです。判断や作業の抜けを防ぐために重要で、左から順に項目、意味、対応上の読み取り方を確認してください。

判断適する状況留意点
取引拒絶契約前、疑義が相当程度ある、代替可能理由説明を最小限にし、情報源を秘匿
即時解除契約条項があり、反社該当または不当要求の証拠が十分、緊急性が高い通知文、解除根拠、精算、安全確保を弁護士と確認
段階的解消契約上即時解除が難しい、期限の利益・既履行がある、顧客影響が大きい新規追加を止め、更新拒絶、代替先確保、証拠追加
継続監視疑いが低い、同一性不明、風評のみ監視期限、再チェック条件、追加情報入手時の対応を設定
追加調査情報が不足、相手方の構造が複雑、M&A・投資・高額取引外部調査、実質支配者確認、専門機関連携
警察・暴追センター即時相談脅迫、暴力、街宣、従業員安全リスク、不当要求単独対応を避け、記録・証拠を持参

判断に際しては、反社該当性だけでなく、次の項目を総合評価する。

  • 情報の確度
  • 取引金額・継続性
  • 相手方の自社への依存度
  • 自社の相手方への依存度
  • 代替可能性
  • 支払済み・未収金・前払金
  • 顧客・従業員・社会への影響
  • 契約解除条項の有無
  • 暴排条例・業法・監督指針の影響
  • 監督官庁・金融機関・取引先への説明可能性
  • 訴訟リスク
  • 名誉毀損・個人情報リスク
  • 役職員の安全
Section 12

反社該当が疑われる場合の通知・交渉の実務

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

1 通知文の基本方針

取引拒絶・解除・更新拒絶の通知文では、必要以上の事実認定を書かない。反社該当性を詳細に記載すると、相手方から名誉毀損、信用毀損、損害賠償、情報源開示要求を受ける可能性があります。

契約条項に基づく解除の場合、通知文は次の要素に絞ることが多い。

  • 契約名、契約日、当事者
  • 解除条項
  • 解除の意思表示
  • 解除日
  • 今後の精算・返還・アクセス停止等
  • 連絡窓口

具体的な情報源や調査方法は原則として記載しない。ただし、訴訟を見据え、社内の意思決定記録には根拠資料を保存する。

2 交渉窓口を固定する

相手方との交渉窓口は、法務・コンプライアンス・外部弁護士に固定します。営業担当者が情に流されて発言したり、謝罪したり、代替条件を提示したりすると、後日の紛争で不利になります。

相手方が来社を求める場合は、複数名で対応し、会議室、入退館管理、警備、録音・議事録、終了時刻、緊急連絡先を準備します。脅迫・暴力行為の危険性が高い場合は、一般に警察への通報が優先される対応とされています。金融庁の監督指針も、緊急性が高い場合には直ちに警察に通報する体制を求めています。

Section 13

反社該当が疑われる場合の社外対応・レピュテーション管理

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

反社疑義案件が報道、SNS、取引先、監督官庁、金融機関、株主、顧客に波及する場合、広報・IR・法務・経営が連携する必要があります。

社外説明の基本は、次の三点です。

  1. 事実確認中の事項を断定しない。
  2. 関係遮断の方針と社内体制を説明する。
  3. 捜査・調査・個人情報・安全確保に支障がある事項は開示しない。

上場会社では、適時開示の要否、コーポレートガバナンス報告書、内部統制報告、監査法人対応、金融機関への説明が問題となります。非上場会社でも、主要取引先、金融機関、許認可行政、フランチャイズ加盟店、従業員への説明が必要になることがあります。

危機対応で避けるべき表現は、「問題ないと認識している」と早期に断定すること、「相手が反社だ」と証拠なく公表すること、「担当者の個人的判断だった」と組織責任を回避すること、「すべて調査済み」と根拠なく述べることです。

Section 14

反社該当が疑われる場合の平時から整備すべき反社対応体制

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

反社対応は有事だけでは機能しない。平時から次の体制を整備する必要があります。

1 基本方針

社内外に公表する反社会的勢力排除方針を策定する。内容は、反社会的勢力との関係遮断、不当要求拒絶、外部専門機関連携、民事・刑事の法的対応、資金提供禁止、従業員安全確保を含める。

2 規程・マニュアル

反社対応規程、取引先審査規程、与信管理規程、契約審査規程、内部通報規程、個人情報管理規程、危機管理規程に反社対応を組み込む。マニュアルには、初動連絡先、記録様式、調査手順、承認権限、外部相談先、緊急時対応、禁止行為を明記する。

3 反社チェック運用

新規取引時だけでなく、契約更新時、役員変更時、株主変更時、商号変更時、所在地変更時、取引金額増加時、支払口座変更時、紹介者変更時、M&A・出資時、不祥事発覚時に再チェックを行います。

4 教育・訓練

営業、購買、店舗、カスタマーサポート、経理、総務、人事、役員向けに教育を行います。特に、現場担当者には「一人で会わない」「即答しない」「金銭を渡さない」「念書を書かない」「上長と法務に報告する」という行動原則を徹底します。

5 外部専門機関連携

警察署の暴力団担当部署、都道府県暴力追放運動推進センター、顧問弁護士、業界団体、必要に応じて調査会社・フォレンジック専門家と、平時から連絡先を確認します。政府指針の解説も、警察署や暴追センターの担当者と平素から意思疎通し、有事に躊躇なく相談できる関係を構築することの重要性を示しています。

Section 15

反社該当が疑われる場合の中小企業向けの最小実装モデル

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

中小企業では、大企業と同じ専任部署や高額データベースを導入できないことがあります。それでも、最低限、次の六点は整備する必要があります。

  1. 反社会的勢力排除の基本方針を定めます。
  2. 契約書・注文書・利用規約に反社条項を入れる。
  3. 新規取引先について、商号、代表者、所在地、役員、公開情報を確認します。
  4. 不審情報があれば、担当者単独で対応せず、代表者・法務担当・顧問弁護士に報告する。
  5. 警察・暴追センター・顧問弁護士の連絡先を一覧化する。
  6. 不当要求には金銭・物品・便宜を供与しない。

小規模企業ほど、担当者が相手方と近い関係になりやすく、情実、紹介者、地域関係、取引依存により判断が曇ることがあります。だからこそ、簡潔なルールと外部相談先が重要となります。

Section 16

反社該当が疑われる場合の実務用チェックリスト

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

1 初動チェックリスト

  • 情報入手日時、入手者、情報源を記録した。
  • 担当者単独対応を停止した。
  • 法務・コンプライアンス・反社対応部署に共有した。
  • 相手方に不用意な説明をしていない。
  • 契約書、反社条項、支払状況を確認した。
  • メール、チャット、録音、請求書、登記等を保全した。
  • 従業員安全上のリスクを確認した。
  • 新規発注・追加与信・前払・情報提供の一時停止を検討した。
  • 弁護士・警察・暴追センターへの相談要否を判断した。
  • 経営報告の要否を判断した。

2 調査チェックリスト

  • 法人名、旧商号、所在地、役員を確認した。
  • 代表者、実質的支配者、主要株主を確認した。
  • 同一住所・同一電話番号・同一役員の関連法人を確認した。
  • 取引経緯、紹介者、交渉担当者を確認した。
  • 支払口座、請求名義、契約当事者、実際の履行者の一致を確認した。
  • 公開情報、行政処分、報道、裁判情報を確認した。
  • 商用DBのヒット内容について同一性を確認した。
  • 風評情報について、一次情報か伝聞かを区別した。
  • 不当要求の有無を確認した。
  • 調査結果を事実・評価・未確認事項に分けて記録した。

3 意思決定チェックリスト

  • 反社該当性の根拠と不確実性を整理した。
  • 契約解除根拠を確認した。
  • 解除以外の選択肢を検討した。
  • 支払・回収・納品・顧客影響を整理した。
  • 個人情報・名誉毀損・守秘義務リスクを確認した。
  • 従業員安全措置を確認した。
  • 外部専門機関への相談結果を記録した。
  • 経営陣の承認を得た。
  • 通知文を弁護士が確認した。
  • 再発防止策を決めた。
Section 17

反社該当が疑われる場合のFAQ

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

Q1. 反社かどうか確証がない場合でも取引を止められるか。

一般的には、契約前であれば取引を見送る余地が比較的大きいとされています。既存契約では、契約条項、疑義の程度、取引停止の影響、相手方の権利、関係法令によって結論が変わる可能性があります。追加調査、暫定停止、更新拒絶、段階的解消などの選択肢は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 警察に照会すれば反社かどうか教えてもらえるか。

一般的には、警察は保有情報を厳格に管理しており、企業の照会に常に回答するものではないとされています。公益性、被害防止、情報提供基準、手続、相談内容によって対応は変わる可能性があります。相談する場合は、相手方情報、疑義の根拠、契約関係、不当要求の有無、被害リスクを整理し、必要に応じて警察、暴追センター、弁護士等へ確認することが考えられます。

Q3. 反社チェックでヒットしなければ安全か。

一般的には、反社チェックでヒットしないことだけで安全と断定することはできないとされています。データベースの限界、同姓同名、名義貸し、実質的支配者、最新情報未反映、匿名・流動型犯罪グループのような流動的集団の問題があるためです。具体的な評価は、取引規模、相手方属性、追加情報の有無を踏まえて専門家へ相談する必要があります。

Q4. 相手方に調査結果を開示すべきか。

一般的には、調査結果の開示は慎重に扱う必要があるとされています。情報源保護、守秘義務、名誉毀損、個人情報、証拠隠滅、従業員安全の問題があるためです。開示請求や抗議があった場合の具体的な対応は、個人情報保護法、契約、訴訟リスクを踏まえ、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q5. 反社疑義のある相手から正当な請求書が来た場合、支払ってよいか。

一般的には、支払義務の有無、契約解除の有無、既履行の内容、暴排条例上の利益供与該当性、支払先口座、相手方の要求態様を分けて確認するとされています。単なる反社疑義だけで当然に不払いにできるとは限らず、不当要求や利益供与に当たる支払は別のリスクになります。具体的な精算方針は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q6. 相手方が「反社扱いは名誉毀損だ」と強く抗議してきたらどうするか。

一般的には、社内外の表現、通知文、共有範囲を確認し、不要な断定表現を避けることが重要とされています。証拠不十分なまま第三者に「反社」と伝えると、名誉毀損や信用毀損のリスクが生じる可能性があります。抗議への具体的な対応は、窓口管理や通知文の内容を含めて、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q7. 従業員が反社関係者と私的交際している疑いがある場合はどうするか。

一般的には、就業規則、服務規程、職務内容、情報アクセス、企業秩序への影響、関係の具体性、本人の弁明機会を確認するとされています。私生活上の交際だけで直ちに懲戒できるとは限らず、職務上の便宜供与、情報漏えい、取引紹介、金銭授受、威迫行為の有無で判断が変わる可能性があります。具体的には、人事・法務部門で資料を整理し、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Section 18

反社該当が疑われる場合の社内対応まとめ

疑いの濃淡、情報源、契約根拠、安全確保、外部連携を順に整理します。

反社該当が疑われる場合の社内対応は、「見つけたら即解除」という単純な作業ではありません。必要なのは、疑いの濃淡を見極め、担当者を孤立させず、証拠を保全し、外部専門機関と連携し、法的根拠を確認し、経営判断として関係遮断または継続監視を実行することです。

企業が守るべき原則は明確です。反社会的勢力とは関係を持たない。不当要求には応じない。裏取引や資金提供をしない。従業員の安全を確保する。民事・刑事の法的手段を躊躇しない。これらの判断を属人的な勘ではなく、記録、証拠、規程、契約、外部専門機関連携に基づく内部統制として運用することが重要です。

「反社該当が疑われる場合の社内対応」は、危機発生時のマニュアルであると同時に、平時のガバナンスの成熟度を映す鏡です。平時から反社排除方針、契約条項、取引先審査、社内報告ルート、教育、外部連携を整備している企業ほど、有事においても、過剰反応と対応遅延の双方を避け、社会的信頼を守ることができます。

Reference

この記事の参考情報源

区分資料名
政府指針全国暴力追放運動推進センター「企業防衛指針」
定義参議院「反社会的勢力の定義に関する質問に対する答弁書」
法令e-Gov法令検索「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」
金融監督金融庁「反社会的勢力との関係遮断に向けた取組みの推進について」
監督指針金融庁「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」
犯罪情勢警察庁「令和6年における組織犯罪の情勢について」
AML/CFT金融庁「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」