2σ Guide

サプライチェーン人権方針の策定を
法務・調達・ガバナンスへつなぐ

国連指導原則、日本政府ガイドライン、海外法制、契約実務、苦情処理、内部統制まで、人権方針を実装できる経営リスク管理文書として整理します。

3点 方針・人権DD・救済
90日 初期体制と方針案
1年 監査・開示・見直し
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サプライチェーン人権方針の策定を 法務・調達・ガバナンスへつなぐ

国連指導原則、日本政府ガイドライン、海外法制、契約実務、苦情処理、内部統制まで、人権方針を実装できる経営リスク管理文書として整理します。

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サプライチェーン人権方針の策定を 法務・調達・ガバナンスへつなぐ
国連指導原則、日本政府ガイドライン、海外法制、契約実務、苦情処理、内部統制まで、人権方針を実装できる経営リスク管理文書として整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • サプライチェーン人権方針の策定を 法務・調達・ガバナンスへつなぐ
  • 国連指導原則、日本政府ガイドライン、海外法制、契約実務、苦情処理、内部統制まで、人権方針を実装できる経営リスク管理文書として整理します。

POINT 1

  • サプライチェーン人権方針の策定は経営リスク管理の入口です
  • 方針、人権デュー・ディリジェンス、救済を契約・調達・内部統制へ接続します。
  • 方針は公表して終わりではありません
  • 取締役会監督
  • 契約管理

POINT 2

  • サプライチェーン人権方針の範囲と主要概念
  • サプライチェーン、バリューチェーン、人権方針、行動規範、ライツホルダーを整理します。
  • ライツホルダー
  • ステークホルダー
  • 人権デュー・ディリジェンス

POINT 3

  • 国際基準と海外法制から見るサプライチェーン人権方針
  • 1. EU CSDDD成立:企業サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令が成立し、人権・環境リスク管理の制度化が進みました。
  • 2. EU強制労働規則の適用開始予定:強制労働により作られた製品をEU市場で販売できないようにする制度が予定されています。
  • 3. CSDDD国内措置の採択・公表期限:EU加盟国で国内措置が整備される予定です。
  • 4. CSDDDの原則適用開始予定:一定規模のEU会社や第三国会社を中心に、デュー・ディリジェンス対応が問題になります。
  • 5. 現代奴隷制・UFLPAなど:声明作成、強制労働推定、輸入制限、顧客調査票などを通じて日本企業にも波及します。

POINT 4

  • 企業法務から見たサプライチェーン人権方針の法的機能
  • 取締役会・経営陣の監督
  • 契約リスク管理
  • 開示・説明責任
  • 紛争予防・危機対応
  • 取締役会、契約、開示、紛争予防の四つの機能で方針を読みます。

POINT 5

  • サプライチェーン人権方針の策定手順とプロジェクト体制
  • 1. ステップ0 プロジェクト憲章:目的、範囲、責任者、期限、成果物、承認ルートを明確にします。
  • 2. ステップ1 現状把握:事業、主要市場、サプライヤー所在地、高リスク産品、過去事案、既存規程、契約を棚卸しします。
  • 3. ステップ2 初期評価:深刻度、発生可能性、自社との関係、影響力、緊急性、証拠状況で人権リスクを評価します。
  • 4. ステップ3 対話:労働組合、従業員代表、サプライヤー、NGO、専門家、投資家、顧客から意見を得ます。
  • 5. ステップ4から5 文案とレビュー:方針案を作り、過大な保証、契約矛盾、適用範囲、個人情報、競争法、実装可能性を確認します。
  • 6. ステップ6から8 承認・公開・実装:経営陣が承認し、ウェブサイト掲載、多言語周知、規程・契約・監査・開示へ落とし込みます。

POINT 6

  • サプライチェーン人権方針に盛り込む主要項目と文案上の注意点
  • 尊重と保証を分けます
  • ゼロトレランスを慎重に使います
  • 重大な人権侵害を容認しない姿勢は重要ですが、発見時の対応は被害者救済と是正を優先します。

POINT 7

  • 契約・調達にサプライチェーン人権方針を実装する方法
  • 1. 新規取引先登録:人権リスク質問票を実施し、国、業種、製品、取引金額、過去事案でリスクランクを付けます。
  • 2. 高リスク先の追加確認:追加資料、面談、第三者監査、現地確認を組み合わせます。
  • 3. 契約実装:人権条項とサプライヤー行動規範を取引基本契約や購買契約に組み込みます。
  • 4. 自己評価・監査:定期的に自己評価を更新し、問題がある場合は改善計画を求めます。
  • 5. 是正追跡と報告:改善状況を追跡し、重大案件は法務、コンプライアンス、経営に報告します。

POINT 8

  • 苦情処理・救済メカニズムとサプライチェーン人権方針
  • 通報制度だけではなく、被害者保護、是正、救済、報復禁止まで設計します。
  • アクセス可能性
  • 予測可能性
  • 継続的学習

まとめ

  • サプライチェーン人権方針の策定を 法務・調達・ガバナンスへつなぐ
  • サプライチェーン人権方針の策定は経営リスク管理の入口です:方針、人権デュー・ディリジェンス、救済を契約・調達・内部統制へ接続します。
  • サプライチェーン人権方針の範囲と主要概念:サプライチェーン、バリューチェーン、人権方針、行動規範、ライツホルダーを整理します。
  • 国際基準と海外法制から見るサプライチェーン人権方針:UNGPs、OECD、ILO、日本政府ガイドライン、EU・米英豪制度を方針設計に反映します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

サプライチェーン人権方針の策定は経営リスク管理の入口です

方針、人権デュー・ディリジェンス、救済を契約・調達・内部統制へ接続します。

サプライチェーン人権方針の策定とは、自社、グループ会社、取引先、委託先、代理店、物流、原材料調達先などに対して、人権尊重の基本姿勢、期待事項、管理体制、デュー・ディリジェンス、救済、情報開示の考え方を明文化する作業です。

次の重要ポイントは、人権方針を単なる理念ではなく、経営リスク管理文書として読むための整理です。読者は、方針、人権デュー・ディリジェンス、救済が一体で機能するかを確認してください。

方針は公表して終わりではありません

方針は出発点です。取締役会または経営陣の承認、社内規程、調達基準、取引基本契約、サプライヤー行動規範、リスク評価、是正措置、苦情処理、監査、教育、開示までつなげて初めて実効性を持ちます。

次の一覧は、人権方針が接続する実務領域を表します。どの領域で証跡や契約条項が必要になるかを読み取ることが重要です。

GOVERNANCE

取締役会監督

重大な人権リスクは、事業継続、輸入停止、取引停止、訴訟、行政調査、投資家対応に発展し得るため、経営の監督事項として扱います。

CONTRACT

契約管理

取引基本契約、購買契約、業務委託契約、代理店契約、物流契約などに、人権関連条項を段階的に組み込みます。

CONTROL

内部統制

新規取引先審査、リスク評価、監査結果、改善計画、苦情処理、経営報告を統制活動に組み込みます。

REMEDY

救済・苦情処理

問題発生時には、違反確認だけでなく、被害者保護、是正、再発防止、責任ある取引停止を設計します。

基本姿勢方針には、誰に何を約束し、誰に何を期待し、問題が起きたときにどのように対応するかを明確に書く必要があります。実施できない過大な約束は、開示責任や説明責任を高めるため注意が必要です。
Section 01

サプライチェーン人権方針の範囲と主要概念

サプライチェーン、バリューチェーン、人権方針、行動規範、ライツホルダーを整理します。

人権リスクは、原材料の採掘や製造現場だけでなく、物流、販売代理店、AIサービス、データ処理、警備、建設、農業、移民労働者、消費者対応でも発生します。方針名にサプライチェーンと入れる場合でも、本文では必要に応じてバリューチェーン全体を視野に入れることが重要です。

次の比較表は、サプライチェーンとバリューチェーンの違いを表します。対象範囲の広さが違うため、どの関係者に方針の趣旨を伝えるかを読み取ります。

概念対象範囲人権リスクの例
サプライチェーン原材料、部品、製造、物流、販売など供給の連鎖農業生産地の児童労働、工場の長時間労働、物流倉庫の安全衛生など
バリューチェーン研究開発、設計、調達、製造、販売、利用、保守、廃棄、金融、広告、代理店など価値創造全体AI差別、プライバシー侵害、警備会社の過剰対応、販売代理店の不適切勧誘など

次の比較表は、人権方針とサプライヤー行動規範の役割を表します。上位文書と具体的基準を分けて読むと、公開文書と契約実務のつなぎ方が分かります。

文書役割企業法務上の位置づけ
人権方針企業自身の基本姿勢を示す上位文書取締役会または経営陣が承認し、経営理念、行動規範、調達方針と整合させます
サプライヤー行動規範取引先に求める具体的な行動基準強制労働、児童労働、安全衛生、監査協力、是正措置などを契約に近い実務基準として定めます

次の一覧は、策定前に押さえる主要概念を表します。各概念を分けて読むことで、自社リスクではなく人への影響を中心に評価できます。

RIGHTS

ライツホルダー

企業活動によって影響を受け得る人々です。労働者、地域住民、消費者、外国人労働者、子ども、障害者、移民労働者などが含まれます。

STAKEHOLDER

ステークホルダー

ライツホルダー本人に加え、労働組合、NGO、投資家、顧客、行政、専門家、業界団体などを含みます。

HUMAN RIGHTS DD

人権デュー・ディリジェンス

実際または潜在的な負の影響を特定し、防止・軽減し、実効性を追跡し、対応を説明する継続的プロセスです。

LINKAGE

負の影響との関係

引き起こす、助長する、取引関係を通じて直接関連する、という三分類で対応を分けます。

SALIENT

顕著な人権課題

企業にとっての財務的重要性ではなく、人に対する負の影響の深刻度、規模、範囲、回復困難性で優先順位を付けます。

Section 02

国際基準と海外法制から見るサプライチェーン人権方針

UNGPs、OECD、ILO、日本政府ガイドライン、EU・米英豪制度を方針設計に反映します。

サプライチェーン人権方針は、国連指導原則、OECDガイドライン、ILO基準、日本政府ガイドライン、海外法制を参照して設計します。日本に包括的な人権デュー・ディリジェンス義務法がない場合でも、国際取引、投資家対応、公共調達、顧客契約を通じて実務上の要請が生じます。

次の比較表は、主要な国際基準と実務上の意味を表します。方針の文言に列挙するだけでなく、どの基準がどの運用に関係するかを読み取ります。

基準・制度実務上の意味
国連「ビジネスと人権に関する指導原則」方針によるコミットメント、人権デュー・ディリジェンス、救済プロセスの三点を土台にします
OECD多国籍企業行動指針・デュー・ディリジェンス・ガイダンス責任ある企業行動を方針・経営システムに組み込み、負の影響を特定・評価し、是正・開示につなげます
ILO基準結社の自由、強制労働撤廃、児童労働廃止、差別撤廃、安全で健康的な作業環境を中心に労働人権を整理します
日本政府ガイドライン・実務参照資料自社の現状把握、方針案作成、経営陣承認、公開・周知、人権DDの初期評価に役立ちます
日本の改定行動計画人権DD、サプライチェーン、情報開示、公共調達、救済へのアクセスが重点分野として扱われます

次の時系列は、海外法制の影響を表します。年や基準は適用可能性の入口であり、子会社、売上、従業員数、取引先の所在を合わせて読む必要があります。

2024年

EU CSDDD成立

企業サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令が成立し、人権・環境リスク管理の制度化が進みました。

2027年12月

EU強制労働規則の適用開始予定

強制労働により作られた製品をEU市場で販売できないようにする制度が予定されています。

2028年7月

CSDDD国内措置の採択・公表期限

EU加盟国で国内措置が整備される予定です。

2029年7月

CSDDDの原則適用開始予定

一定規模のEU会社や第三国会社を中心に、デュー・ディリジェンス対応が問題になります。

英国・豪州・米国

現代奴隷制・UFLPAなど

声明作成、強制労働推定、輸入制限、顧客調査票などを通じて日本企業にも波及します。

次の一覧は、方針に最低限反映しやすい労働人権課題を表します。読み方としては、業種固有の重点課題を追加し、一般論だけで終わらせないことが重要です。

FORCED

強制労働・人身取引

債務労働、旅券保持、違法な採用手数料、移動の自由制限を含めて確認します。

CHILD

児童労働・若年労働者

児童労働禁止に加え、若年労働者の保護、教育機会、救済を検討します。

EQUALITY

差別・ハラスメント

雇用、職業、賃金、昇進、職場環境、ジェンダー、国籍、障害などのリスクを確認します。

ASSOCIATION

結社の自由・団体交渉

現地法の制約がある場合でも、国際人権基準を最大限尊重する方法を検討します。

SAFETY

安全で健康的な作業環境

労働時間、休憩、休日、賃金、安全衛生、寮生活、化学物質を確認します。

MIGRANT

外国人・移民労働者

採用費用、言語アクセス、在留資格、住居、派遣元・仲介業者の管理を確認します。

Section 04

サプライチェーン人権方針の策定手順とプロジェクト体制

現状把握、初期評価、対話、文案、レビュー、承認、公開、実装を順番に進めます。

策定プロジェクトでは、法務、コンプライアンス、調達、人事、サステナビリティ、内部監査、リスク管理、経営企画、情報セキュリティ、外部専門家が関与します。中小企業でも、経営者、総務・人事、購買、営業、経理、外部専門家が協力し、簡素でも実効性のある体制を作ることが重要です。

次の比較表は、主な機能と役割を表します。部門ごとの役割を読むことで、方針文言と現場運用のどちらが不足しているかを確認できます。

機能主な役割
法務・企業内弁護士法的リスク、契約、開示、海外法制、紛争対応、取締役会付議を整理します
コンプライアンス行動規範、通報制度、研修、違反対応、グループ展開を担います
調達・購買サプライヤー管理、調達基準、監査、是正、契約実装を担います
人事・労務自社・グループの労働人権、ハラスメント、安全衛生、外国人労働者対応を確認します
サステナビリティ国際基準、ESG開示、ステークホルダー対話、統合報告を担当します
内部監査・リスク管理実効性検証、証跡確認、改善提案、全社リスクマップを担当します
外部専門家国際人権、現地法、労務、調査、フォレンジック、専門機関連携を補います

次の判断の流れは、策定手順を上から下へ示します。順番には意味があり、リスク評価や対話の前に文案だけを作ると、実態から離れた方針になりやすい点を読み取ります。

サプライチェーン人権方針を策定する順番

ステップ0 プロジェクト憲章

目的、範囲、責任者、期限、成果物、承認ルートを明確にします。

ステップ1 現状把握

事業、主要市場、サプライヤー所在地、高リスク産品、過去事案、既存規程、契約を棚卸しします。

ステップ2 初期評価

深刻度、発生可能性、自社との関係、影響力、緊急性、証拠状況で人権リスクを評価します。

ステップ3 対話

労働組合、従業員代表、サプライヤー、NGO、専門家、投資家、顧客から意見を得ます。

ステップ4から5 文案とレビュー

方針案を作り、過大な保証、契約矛盾、適用範囲、個人情報、競争法、実装可能性を確認します。

ステップ6から8 承認・公開・実装

経営陣が承認し、ウェブサイト掲載、多言語周知、規程・契約・監査・開示へ落とし込みます。

次の比較表は、初期評価で見るべき内容を表します。企業への損害だけでなく、人への影響を基準にして読むことが重要です。

評価項目見るべき内容
深刻度生命・身体・自由・人格・生活基盤への影響、規模、範囲、回復困難性を確認します
発生可能性国・地域、産業、過去事案、労働集約度、移民労働者比率、監査結果を確認します
自社との関係引き起こす、助長する、直接関連する、という関係を整理します
影響力取引金額、代替可能性、契約上の権限、共同イニシアチブ参加可能性を確認します
緊急性現在進行中か、被害が拡大するか、輸入停止・事故・訴訟の懸念があるかを確認します
証拠状況通報、監査、報道、NGO報告、行政処分、現地情報、取引先回答を確認します
Section 05

サプライチェーン人権方針に盛り込む主要項目と文案上の注意点

コミットメント、国際基準、適用範囲、重点課題、人権DD、救済、報復禁止、開示、見直しを整理します。

方針案は、国際基準の要件を満たしつつ、自社の言葉で書く必要があります。雛形をそのまま使うと、何を約束し、何を取引先に期待し、問題が起きたときにどう動くかが曖昧になりがちです。

次の一覧は、方針に入れる主要項目を表します。項目名だけでなく、各項目がどの実務に接続するかを読み取ることが重要です。

1

経営トップのコミットメント

事業活動が人々の権利に影響し得ることを認識し、国連指導原則に基づいて人権尊重の責任を果たす姿勢を示します。

2

参照する国際基準

国際人権章典、ILO基本原則、UNGPs、OECD、ILO多国籍企業宣言など、社内で意味を説明できる基準を明記します。

3

適用範囲

自社・グループ役職員には直接適用し、取引先には理解と協力を期待するなど、適用と期待を分けます。

4

重点人権課題

強制労働、児童労働、差別、ハラスメント、安全衛生、外国人労働者、プライバシー、地域社会を扱います。

5

人権デュー・ディリジェンス

リスク特定、防止・軽減、実効性追跡、情報開示、対話、救済への協力、継続的改善を含めます。

6

救済と報復禁止

是正、未払賃金、採用手数料返還、再発防止、通報者保護、不利益取扱い禁止を明記します。

7

情報開示

関係者の安全、個人情報、営業秘密、調査の秘密に配慮しながら、取組状況を適切に開示します。

8

見直し

法令、国際基準、事業環境、ステークホルダー意見、DD結果を踏まえて定期的に見直します。

次の比較表は、業種別に重点課題を追加する読み方を表します。共通項目だけでなく、自社の事業に特有の課題を入れることで、方針の実効性が高まります。

業種重点課題の例
製造業サプライヤー工場の労働時間、安全衛生、化学物質、技能実習・外国人労働者
アパレル縫製工場、児童労働、強制労働、賃金、結社の自由、過度な短納期
食品・農業農園・漁業の児童労働、移民労働、土地権、水資源、季節労働者
電機・電子鉱物調達、部品工場、化学物質、長時間労働、寮生活
建設・不動産下請構造、安全衛生、外国人労働者、地域住民、土地取得
IT・AIプライバシー、AI差別、監視、人権侵害用途、コンテンツ、委託先労働
金融投融資先の人権リスク、プロジェクトファイナンス、制裁、苦情処理
物流長時間労働、安全、委託ドライバー、倉庫労働、外国人労働者

次の重要ポイントは、文案作成時に避けるべき表現を示します。言葉の強さが責任範囲や実装可能性に影響するため、読者は尊重、保証、容認しない、即時解除の違いを読み分けます。

尊重と保証を分けます

多層的なサプライチェーンで人権侵害が一切発生しないことを保証する表現は避け、リスク特定、防止・軽減、是正、改善を約束します。

ゼロトレランスを慎重に使います

重大な人権侵害を容認しない姿勢は重要ですが、発見時の対応は被害者救済と是正を優先します。

取引先に一方的に求めすぎません

価格、納期、仕様変更、支払条件など、自社の調達慣行が人権リスクを高めないかも確認します。

統制の程度で言葉を使い分けます

グループ会社、合弁会社、代理店、フランチャイジーには、適用、要請、期待、働きかけを使い分けます。

現地法との関係を示します

現地法令を遵守しつつ、国際的に認められた人権を最大限尊重する方法を追求する姿勢を示します。

Section 06

契約・調達にサプライチェーン人権方針を実装する方法

サプライヤー行動規範、契約条項、調達手続、責任ある取引停止をつなげます。

方針を策定した後は、サプライヤー行動規範、取引基本契約、購買手続、監査、改善計画に落とし込みます。公開方針と契約条項が矛盾すると、取引先も社内担当者も判断しにくくなるため、法務と調達が共同で設計します。

次の一覧は、サプライヤー行動規範に入れる主な項目を表します。方針より具体的な行動基準として、どのリスクを取引先に説明し、どの証跡を求めるかを読み取ります。

LABOR

労働人権

強制労働、児童労働、労働時間、賃金、休暇、安全衛生、差別、ハラスメント、結社の自由を扱います。

MIGRANT

外国人労働者

採用手数料、旅券保持、住居、言語アクセス、派遣元・仲介業者の管理を確認します。

SUPPLY

二次以降への展開

二次サプライヤーへの周知、監査協力、情報提供、是正措置を定めます。

REMEDY

通報・是正

苦情処理、報復禁止、監査、改善計画、是正完了の証跡を扱います。

REGION

環境・地域社会

環境と地域住民、紛争鉱物、高リスク原材料、土地・水資源への影響を確認します。

次の比較表は、契約条項の設計を表します。各行は解除権だけでなく、情報提供、監査協力、是正、責任ある取引停止を段階的に読むためのものです。

条項考え方
方針・行動規範の遵守取引先に趣旨理解と合理的措置を求め、強制労働、児童労働、差別、ハラスメント、安全衛生上の重大危険を防止します
情報提供・監査協力重大な人権リスクが疑われる合理的理由がある場合、必要かつ相当な範囲で情報提供と協力を求めます
是正措置重大な負の影響が発生し、または発生するおそれがある場合、通知、原因分析、改善計画、再発防止を求めます
責任ある取引停止重大侵害が是正されない場合でも、被害者への影響、代替手段、是正可能性、取引停止による人権上の影響を考慮します

次の判断の流れは、調達実務への組込みを表します。上から下へ進む順序で、リスク評価、契約、監査、是正、経営報告をつなげます。

調達実務に組み込む順番

新規取引先登録

人権リスク質問票を実施し、国、業種、製品、取引金額、過去事案でリスクランクを付けます。

高リスク先の追加確認

追加資料、面談、第三者監査、現地確認を組み合わせます。

契約実装

人権条項とサプライヤー行動規範を取引基本契約や購買契約に組み込みます。

自己評価・監査

定期的に自己評価を更新し、問題がある場合は改善計画を求めます。

是正追跡と報告

改善状況を追跡し、重大案件は法務、コンプライアンス、経営に報告します。

KPIの注意調達部門のKPIが価格削減率だけに偏ると、人権リスクを高める可能性があります。品質、価格、納期に加え、人権、労働、安全衛生、環境、コンプライアンスも評価に入れることが重要です。
Section 07

苦情処理・救済メカニズムとサプライチェーン人権方針

通報制度だけではなく、被害者保護、是正、救済、報復禁止まで設計します。

人権方針の信頼性は、問題が起きたときの対応で決まります。社内通報制度があっても、取引先従業員、派遣社員、委託先従業員、外国人労働者、地域住民、消費者が使えなければ、サプライチェーン上の人権リスクを把握しにくくなります。

次の一覧は、実効的な苦情処理メカニズムの要件を表します。読者は、窓口の有無だけでなく、アクセス、秘密保持、手続、追跡、経営報告まで確認します。

ACCESS

アクセス可能性

多言語、匿名または秘密保持、スマートフォン、電話、書面、対面など複数経路を用意します。

PROTECTION

保護

報復禁止、被害者保護、証拠保全、通報者の安全確保を明記します。

PROCESS

予測可能性

受付後の流れ、期限、担当者、調査方法、是正までの進め方を説明できるようにします。

REMEDY

救済

謝罪、原状回復、未払賃金支払、採用手数料返還、医療支援、再発防止などを検討します。

LEARNING

継続的学習

統計情報を経営に報告し、方針、契約、研修、監査を改善します。

次の比較表は、通報制度と人権救済の違いを表します。左から右へ読むと、不正発見で終わらせず、権利回復まで追う必要があることが分かります。

制度主な目的人権方針での注意点
コンプライアンス通報制度社内不正、法令違反、規程違反の発見と是正社外のライツホルダーが使えるか、言語や報復防止が十分かを確認します
人権救済メカニズム被害を受けた人の権利回復、是正、再発防止採用手数料返還、契約書多言語化、旅券保持解消、仲介業者の是正など具体的救済を追跡します
実務上の読み方現地の労働者が問題ないと回答しても、それだけで安心できるとは限りません。報復への恐怖、言語の壁、在留資格、借金、仲介業者、寮生活などにより、自由に話せない場合があります。
Section 08

内部統制・証跡管理・情報開示で人権方針を形骸化させない

新規取引先審査、監査結果、改善計画、苦情処理、KPI、開示表現を管理します。

人権方針は、内部統制に接続しなければ形骸化します。内部統制とは、業務の有効性、報告の信頼性、法令遵守、資産保全を確保する仕組みであり、人権リスク対応もリスク評価、統制活動、情報伝達、モニタリングに組み込めます。

次の比較表は、内部統制と証跡管理の具体例を表します。どの証跡を残すかを読むことで、将来の顧客、投資家、当局、裁判所、監査人への説明がしやすくなります。

領域管理する内容
内部統制新規取引先登録時の人権リスク審査、高リスク契約の人権条項、重大リスクの法務・コンプライアンス承認を設けます
監査・是正監査結果、改善計画、是正完了証跡、期限管理、重大案件の取締役会報告を残します
苦情処理受付から解決までの記録、被害者保護、報復防止、救済内容、再発防止を管理します
教育・周知研修資料、受講記録、理解度確認、海外子会社・取引先への周知記録を保存します
開示レビュー開示内容と実態、監査件数、苦情件数、対象範囲、実施済み・予定の区別を確認します

次の一覧は、開示で避ける表現と望ましい考え方を表します。実態以上の断定を避け、範囲、限界、継続的改善を示すことが重要です。

存在しないとの断定を避けます

「サプライチェーンには人権侵害は存在しません」と断定せず、把握範囲とリスクベースの取組を説明します。

完全管理を示しません

全取引先を完全に管理しているような表現は避け、対象範囲と監査・確認の方法を明示します。

即時停止だけにしません

問題発生時は、被害者救済と是正を優先し、改善が見込めない場合に責任ある取引停止を検討します。

件数の定義を明確にします

苦情件数、監査件数、重大不適合件数、是正完了率は、対象範囲と定義を示します。

次の比較表は、人権対応のKPI例を表します。数値が低いことが常に良いとは限らないため、何を測っているかを読み取ります。

領域KPI例
方針浸透研修受講率、理解度テスト、海外子会社展開率
調達高リスク取引先評価率、行動規範同意率、契約条項導入率
監査監査実施件数、重大不適合件数、是正完了率
苦情処理受付件数、処理期間、救済件数、報復防止措置
ステークホルダー対話対話回数、参加者属性、方針・施策への反映件数
開示年次更新、対象範囲、第三者レビュー有無
Section 09

M&A・インシデント対応・中小企業でのサプライチェーン人権方針の使い方

買収前確認、疑惑発生時の初動、規模に応じた実践、ロードマップを整理します。

M&Aでは、対象会社のサプライチェーンに強制労働、児童労働、環境汚染、土地紛争、安全衛生問題、ハラスメント、移民労働者問題がある場合、買収価格、表明保証、補償、クロージング条件、PMIに影響します。

次の比較表は、M&Aで確認する人権関連項目を表します。買収前のデュー・ディリジェンスだけでなく、契約条件と買収後統合に反映する読み方が重要です。

確認項目確認する内容
方針・行動規範人権方針、サプライヤー行動規範、取引先管理体制の有無を確認します
高リスク関与高リスク国・産品、労務コンプライアンス、労災、ハラスメント、差別案件を確認します
苦情・報道通報・苦情処理制度、NGO・メディア報道、行政調査、訴訟、制裁、輸入停止を確認します
顧客契約顧客からの人権条項、監査権、表明保証、補償、是正要求を確認します
PMI買収後に方針を展開し、教育、契約改定、リスク評価を行います

次の判断の流れは、人権侵害疑惑が発生した場合の初動を表します。上から順に、被害者保護、証拠保全、調査、是正、報告を分けて進めることが重要です。

人権侵害疑惑が発生した場合の初動

受付・初期評価

事案の重大性、関係者、法的リスク、継続中の被害を確認します。

安全確保・証拠保全

被害者・通報者の安全を確保し、証拠保全と報復防止を行います。

調査体制の決定

独立性、通訳、秘密保持、現地法、労働者が自由に話せる環境を確認します。

暫定判断

取引継続、停止、出荷停止、顧客・当局・投資家・メディア対応を整理します。

是正・救済・再発防止

被害を止め、救済し、改善計画を追跡し、取締役会・監査機関へ報告します。

次の時系列は、中小企業でも現実的に進めやすいロードマップを表します。日数ごとに、方針策定、契約実装、監査、開示へ進む順番を読み取ります。

最初の90日

方針案と体制を作る

経営陣に必要性を説明し、既存方針・契約・調達基準を棚卸しし、主要サプライヤーと高リスク領域を仮特定します。

180日まで

承認・公表・契約化を進める

経営会議または取締役会で承認し、ウェブサイトで公表し、研修、行動規範、契約雛形、質問票、苦情窓口を整えます。

1年まで

評価・監査・開示へ広げる

リスク評価を更新し、高リスク取引先の是正計画を管理し、内部監査、取締役会報告、開示資料、方針見直しを行います。

Section 10

完成したサプライチェーン人権方針の品質チェックとモデル文案

承認、国際基準、適用範囲、救済、調達連動、開示、多言語、証跡を確認します。

完成した方針は、公表する段階で品質を確認します。次の比較表は、方針文書だけでなく、実装、開示、証跡まで見るためのものです。各行を確認すると、実態以上の約束や運用不能な表現を避けやすくなります。

チェック項目確認内容
最上位承認取締役会または経営陣の承認があるかを確認します
国際基準UNGPs、OECD、ILO等への言及が適切かを確認します
適用範囲自社、グループ、取引先への適用・期待が明確かを確認します
重点課題自社固有の人権リスクが反映されているかを確認します
人権DD特定、予防・軽減、追跡、開示が入っているかを確認します
救済苦情処理、是正、報復禁止が明記されているかを確認します
ガバナンス責任部門、監督、報告体制があるかを確認します
調達連動サプライヤー行動規範、契約、監査に接続するかを確認します
開示実態以上の表現がないかを確認します
多言語必要な関係者が理解できる言語で提供されるかを確認します
見直し定期的なレビューが定められているかを確認します
証跡策定、承認、周知、実施の記録が残るかを確認します

次の一覧は、簡易モデル文案の骨子を表します。実際に使う場合は、業種、規模、海外展開、契約実務、リスク評価に合わせて修正し、過大な保証表現を避けることが重要です。

1

基本的な考え方

事業活動が人権に影響を及ぼし得ることを認識し、国際的に認められた人権を尊重する姿勢を示します。

2

参照する基準

国際人権章典、ILO基本原則、UNGPs、OECD、ILO多国籍企業宣言を尊重する旨を示します。

3

適用範囲

自社・グループ役員・従業員への適用と、取引先・代理店などへの期待を分けます。

4

重点課題

強制労働、児童労働、差別、ハラスメント、結社の自由、安全衛生、外国人労働者、プライバシーを扱います。

5

人権DD

負の影響の特定・評価、防止・軽減、追跡、情報開示を継続的に実施する旨を示します。

6

救済

引き起こし、助長し、直接関連する負の影響について、関係性に応じて是正と救済に取り組む旨を示します。

7

苦情処理と報復禁止

相談・通報窓口を整備し、誠実な懸念提起への報復、不利益取扱い、脅迫、嫌がらせを認めない旨を示します。

8

教育・開示・見直し

役員・従業員への教育、取引先への理解要請、適切な情報開示、定期的な見直しを示します。

Section 11

サプライチェーン人権方針の策定に関するFAQ

一般的な制度説明として、方針策定で迷いやすい論点を整理します。

日本では人権DDが法律で義務化されていないなら方針は不要ですか

一般的には、日本に包括的な人権DD義務法が未整備であっても、国際基準、政府ガイドライン、取引先要請、海外法制、投資家対応、公共調達、輸入規制により、実務上の対応が求められる可能性があります。方針は、その入口として整理されます。

中小企業でもサプライチェーン人権方針は必要ですか

一般的には、必要性はリスクと取引関係によって変わります。海外顧客、大企業、公共調達、労働集約型事業、外国人労働者、委託・下請構造がある場合は、簡潔な方針でも整える意味があります。

人権方針とコンプライアンス方針を一体化してよいですか

一般的には、一体化することはあり得ます。ただし、人権方針には、ライツホルダー、人権DD、救済、ステークホルダー対話、サプライチェーンへの期待など、通常の法令遵守方針にはない要素が必要です。

方針を公表すると責任が重くなりませんか

一般的には、公表により説明責任は高まります。ただし、何も公表しないことにもリスクがあります。重要なのは、実態以上の約束をせず、実施可能な範囲を明確にし、継続的改善を示すことです。

サプライヤーが方針に同意しない場合はどう考えますか

一般的には、まず方針の趣旨を説明し、懸念点を確認します。契約交渉力、取引重要性、リスクの深刻度によって結論は変わります。重大リスクがあるのに協力が得られない場合は、代替調達や責任ある取引停止を検討することがあります。

取引先監査は必須ですか

一般的には、全取引先への監査は現実的ではありません。高リスク国、産品、業種、取引先を優先し、自己評価、書面確認、面談、現地訪問、第三者監査、業界共同監査を組み合わせる方法が考えられます。

取引先に問題が見つかったら即時解除すべきですか

一般的には、常に即時解除が適切とは限りません。被害者救済と是正を優先する考え方が重要です。ただし、重大侵害が継続し、是正意思がなく、報復や証拠隠滅がある場合は、責任ある取引停止を検討する必要があります。

方針は何年ごとに見直すべきですか

一般的には、少なくとも年1回の確認が望ましいとされています。重大な法改正、新規事業、M&A、新規国進出、重大インシデント、顧客要請があった場合は、随時見直す必要があります。

外国語版は必要ですか

一般的には、海外子会社、海外取引先、外国人労働者が関係する場合は必要性が高くなります。英語だけでなく、実際に関係者が理解できる言語を検討することが重要です。

法務部門はどこまで関与すべきですか

一般的には、方針文言、承認手続、契約条項、開示、海外法制、紛争対応、M&A、調査、通報・救済制度に関与することが重要です。ただし、法務単独では実装できないため、調達、人事、サステナビリティ、内部監査と連携する必要があります。

Reference

サプライチェーン人権方針の参考資料

制度・基準・公的資料の

  • Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights「Guiding Principles on Business and Human Rights」
  • United Nations Digital Library「Guiding Principles on Business and Human Rights」
  • OECD「OECD Due Diligence Guidance for Responsible Business Conduct」
  • OECD「OECD Guidelines for Multinational Enterprises on Responsible Business Conduct」
  • International Labour Organization「Fundamental Principles and Rights at Work」
  • International Labour Organization「Tripartite Declaration of Principles concerning Multinational Enterprises and Social Policy」
  • 経済産業省「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」
  • 経済産業省「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料」
  • 外務省「ビジネスと人権に関する行動計画」
  • European Commission「Corporate sustainability due diligence」
  • EUR-Lex「Directive on corporate sustainability due diligence」
  • European Commission「Forced Labour Regulation」
  • Federal Office for Economic Affairs and Export Control「Supply Chain Due Diligence Act」
  • GOV.UK「Slavery and human trafficking in supply chains guidance」
  • Australian Government「Official Modern Slavery Act Guidance」
  • U.S. Customs and Border Protection「Uyghur Forced Labor Prevention Act」