会社法430条の3の決議、会社負担、税務、開示を一体で整理します。
会社法430条の3の決議、会社負担、税務、開示を一体で整理します。
D&O保険の保険料を会社負担する場合の手続きでは、保険料を経費として支払う前に、会社法430条の3に基づいて保険契約の主要内容を決定することが出発点になります。取締役会設置会社では取締役会、取締役会非設置会社では株主総会で決議します。
会社負担にする場合は、被保険者の範囲、保険期間、支払限度額、補償内容、免責事由、保険料、会社負担の有無、契約締結権限までを議事録と添付資料で確認できる状態にします。税務上も、この会社法上の手続を踏んだ負担であれば、役員個人への給与課税は不要と整理されています。
次の一覧は、D&O保険の会社負担で最初に押さえる3つの柱を示しています。どの柱が欠けると会社法、税務、開示のいずれかで説明が弱くなるため、まず全体のつながりを確認することが重要です。
会社負担の根拠を決議資料と議事録で残し、給与課税不要の整理を税務部門でも確認します。
役員選任議案、公開会社の事業報告、毎年の更新決議、グループ会社の按分を商事法務カレンダーに組み込みます。
役員等賠償責任保険契約に当たるか、どの機関で決議するかを確認します。
D&O保険は、一般にDirectors and Officers Liability Insurance、すなわち会社役員賠償責任保険を指します。役員等が職務執行に関連して損害賠償請求を受けた場合に、損害賠償金、和解金、争訟費用、弁護士費用などを保険契約の範囲で補償する仕組みです。
会社法上の役員等には、取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人が含まれます。D&O保険は、役員個人の資産保護だけでなく、過度な萎縮を避けて合理的な経営判断を行える環境を整え、社外取締役や監査役などの人材確保にも役立ちます。
一方で、責任追及リスクを緩和する性質があるため、モラルハザードや利益相反への配慮が必要です。会社法430条の3は、この有用性と職務執行の適正性を調整するため、契約内容の決定に機関決議を求めています。
次の比較表は、会社の機関設計ごとに、D&O保険の内容をどの機関で決めるかを整理したものです。自社がどの類型に当たるかで決議ルートが変わるため、最初に機関設計を確認することが重要です。
| 会社の類型 | 必要な決議機関 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 取締役会非設置会社 | 株主総会 | 会社法430条の3第1項は特別決議までは求めていないため、通常は普通決議で整理します。 |
| 取締役会設置会社 | 取締役会 | 契約締結前または更新前に、保険内容と会社負担を取締役会で決めます。 |
| 監査等委員会設置会社 | 取締役会 | 内容決定は取締役への委任ができない事項として扱います。 |
| 指名委員会等設置会社 | 取締役会 | 内容決定は執行役への委任ができない事項として扱います。 |
D&O保険に該当するかは、商品名だけでは判断できません。次の判断の流れは、保険証券、約款、特約、重要事項説明書、見積書を確認するときの順番を示しています。上から順に確認すると、会社法430条の3決議が必要な契約かどうかを整理しやすくなります。
役員個人契約を会社が補填する形とは区別します。
取締役、監査役、執行役、会計監査人などを見ます。
第三者賠償責任保険やPL保険の一部に役員補償が含まれる場合もあります。
主要条件と会社負担を資料化します。
PL保険、CGL保険、使用者賠償責任保険などとの違いを確認します。
保険内容の棚卸しから決議、契約締結、開示、更新管理までを順に整理します。
D&O保険の保険料を会社負担にする標準手続は、保険内容の把握から更新管理までを一つの業務として設計します。法務、リスク管理、経理、税務、商事法務、監査役等が連携しないと、決議、開示、税務証跡のいずれかが抜けやすくなります。
次の時系列は、会社負担のD&O保険を導入または更新するときの標準的な順番を示しています。順番を守ることで、契約締結後に決議を追認する形を避け、税務や開示の説明資料も同時に整えやすくなります。
見積書、約款、特約、被保険者、保険料、支払限度額、免責事由を一覧化します。
会社法430条の3の役員等賠償責任保険契約に該当するかを法務部門で確認します。
会社負担時の給与課税、源泉徴収、損金処理、前払費用処理を経理・税務部門で確認します。
会社負担の合理性、免責条項、職務執行の適正性を損なわない措置を説明します。
保険契約の主要内容、会社負担、契約締結権限を決議し、議事録に残します。
決議内容に沿って契約し、保険証券、請求書、支払証憑を保存します。
役員選任議案の参考書類や公開会社の事業報告に必要事項を記載します。
満期前の資料準備、更新決議、前年契約との比較を年間カレンダーで管理します。
決議前の確認論点は、会社法だけでなく税務、開示、グループ会社、更新管理まで広がります。次の表は、取締役会資料に入れる前に各担当が確認すべき論点をまとめたもので、空欄のまま上程すると後日の説明が難しくなります。
| 論点 | 確認事項 |
|---|---|
| 会社法430条の3該当性 | 対象保険が役員等賠償責任保険契約に該当するかを確認します。 |
| 決議機関 | 取締役会設置会社か、非設置会社かを確認します。 |
| 決議内容 | 主要な契約条件と会社負担が決議対象に含まれているかを確認します。 |
| 特別利害関係 | 被保険者に含まれる取締役の議決参加について、会社の整理を残します。 |
| 利益相反取引規制 | 会社法430条の3第2項による適用除外で整理できるかを確認します。 |
| 税務 | 役員個人への給与課税が生じない根拠と証跡を確認します。 |
| 開示 | 株主総会参考書類と事業報告への記載要否を確認します。 |
| グループ会社 | 子会社役員を含む場合、誰が保険料を実質負担するかを確認します。 |
| 更新 | 更新時にも決議を行う運用と期限管理を確認します。 |
会社負担の合理性は、役員個人への利益供与ではなく、会社のガバナンスとリスク管理のための支出として説明することが大切です。取締役会資料では、合理的な経営判断、社外役員候補者の確保、株主代表訴訟や第三者訴訟への備え、統一的な役員リスク管理、免責条項による職務執行適正性の確保を明示します。
主要条件、会社負担、一任決議、特別利害関係、利益相反を確認します。
取締役会決議では、D&O保険に加入することだけを抽象的に承認するのではなく、会社財産をどの契約条件に支出するのかを判断できる程度に具体化します。保険料を会社が全額負担する場合は、その旨を議案書、取締役会資料、議事録に明記します。
次の表は、D&O保険の保険料を会社負担する決議で最低限近く押さえたい事項を示しています。各行は議事録や別紙に残すべき判断材料であり、重要変更がある場合の再承認ルールまで入れると更新時の運用が安定します。
| 項目 | 記載の方向性 |
|---|---|
| 保険契約者 | 当社を契約者とすることを明記します。 |
| 保険者 | 保険会社名を記載します。 |
| 被保険者 | 取締役、監査役、執行役、会計監査人、退任役員、子会社役員などの範囲を示します。 |
| 保険期間 | 開始日と満了日を記載します。 |
| 支払限度額 | 1事故ごと、保険期間中総額などの単位を示します。 |
| 補償対象 | 職務執行に起因する損害賠償金、和解金、争訟費用などを示します。 |
| 主な免責事由 | 犯罪行為、故意の法令違反、私的利益供与などを示します。 |
| 保険料 | 年額または上限額を示します。 |
| 保険料負担 | 全額を当社が負担する旨、または役員負担割合を明記します。 |
| 契約締結権限 | 主要条件に実質的変更を生じさせない範囲で代表取締役等に事務を委任します。 |
| 重要変更時の扱い | 重要な変更がある場合は、改めて取締役会の承認を得る旨を残します。 |
被保険者に含まれる取締役が議決に参加できるかは、特別利害関係の論点として整理が必要です。次の一覧は、通常の全員加入型と、一部役員だけが有利になる設計の違いを示しており、どの程度慎重な手当てが必要かを読み取るために重要です。
共通利害関係として議決参加を認める整理があり得ます。議事録には、特定取締役だけに個別利益を与えるものではないことを残します。
当該取締役の特別利害関係が問題になりやすくなります。議決除外や株主総会決議を検討します。
特別利害関係リスクが高まります。外部専門家、独立社外取締役、監査役等の関与を検討します。
会社の損害回復方針や責任追及方針との関係が問題になり得ます。株主説明と免責条項を慎重に確認します。
利益相反取引規制との関係では、会社法430条の3第2項により、典型的なD&O保険では会社法356条や365条などの利益相反取引規定を重ねて適用しない整理になります。ただし、役員個人契約の保険料を会社が補填する場合、子会社が実質負担する場合、特定役員の過去リスクを補償するような特殊設計では、報酬規制、利益相反取引、会社補償契約、税務上の給与課税を別途確認します。
給与課税不要の整理、過去の取扱い、手続不備の税務リスクを確認します。
税務上の中心は、会社法430条の3に基づいて会社がD&O保険料を負担した場合、役員個人への経済的利益の供与はなく、役員個人に対する給与課税を行う必要はないとする国税庁の取扱いです。ここでは、税務結論が会社法上の適切な手続と結びついている点が重要です。
次の比較表は、D&O保険料の会社負担に関する税務整理の変化を示しています。過去の取扱いと現在の会社法430条の3中心の整理を区別することで、古い社内メモやひな形を更新すべきか判断できます。
| 時期・制度 | 会社負担の考え方 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 平成6年取扱い | 基本契約部分は給与課税不要、株主代表訴訟担保特約部分は会社負担なら給与課税対象と整理されました。 | 旧来の区分処理です。 |
| 平成28年取扱い | 一定の会社法上の手続を経れば、株主代表訴訟敗訴時担保部分も給与課税不要と整理されました。 | 取締役会承認に加え、社外取締役等の関与が重視されました。 |
| 令和元年改正会社法施行後 | 会社法430条の3に基づいて会社が保険料を負担すれば給与課税不要と整理されています。 | 取締役会または株主総会による内容決定が中心です。 |
法人側では、D&O保険料は通常、会社のリスク管理、役員確保、経営判断環境の整備という事業上の目的を有するため、保険料として処理されることが多いです。ただし、保険期間、分割払い、解約返戻金、子会社按分、海外保険料、消費税、源泉所得税、役員給与該当性は個別に確認します。
次の一覧は、会社法430条の3決議を行わないまま会社がD&O保険料を負担した場合に問題になりやすいリスクを示しています。各項目は税務だけでなく会社法と開示にも波及するため、決議証跡を先に整えることが重要です。
保険契約内容の決定手続に問題があると評価される可能性があります。
役員に対する経済的利益の供与として給与課税が問題になる可能性があります。
源泉徴収漏れを指摘される可能性があります。
役員給与として損金不算入が問題になる可能性があります。
取締役の任務懈怠や説明不足が問題になる可能性があります。
事業報告や株主総会参考書類の記載漏れが問題になる可能性があります。
役員選任議案、公開会社の事業報告、任意開示の関係を整理します。
D&O保険の保険料を会社負担する場合は、取締役会決議だけでなく、株主総会参考書類と事業報告の開示を確認します。役員選任議案がある場合や、事業年度末日に公開会社に当たる場合は、保険契約の概要を株主に説明する場面が生じます。
次の表は、開示場面ごとに確認する内容を整理したものです。どの書類に、誰を対象として、どの程度の概要を書くかを分けて確認すると、招集通知や事業報告の作成時に漏れを防ぎやすくなります。
| 開示場面 | 主な対象 | 記載する内容 |
|---|---|---|
| 株主総会参考書類 | 取締役、監査等委員を務める取締役、会計参与、監査役、会計監査人の選任議案 | 候補者が被保険者に含まれること、契約内容の概要、主な免責、保険料負担を記載します。 |
| 事業報告 | 事業年度末日に公開会社に当たる株式会社 | 被保険者の範囲、契約内容の概要、職務執行の適正性を損なわない措置、保険料負担を記載します。 |
| 任意開示 | 上場会社の有価証券報告書、コーポレートガバナンス報告書、統合報告書など | 責任限定契約、会社補償契約、D&O保険、社外役員支援体制との整合性を確認します。 |
事業報告では、被保険者が実質的に保険料を負担している場合の負担割合、填補対象となる保険事故の概要、役員等の職務執行の適正性を損なわないようにするための措置を示します。会社が全額負担する場合は、保険料を全額会社が負担している旨を記載することが一般的です。
開示文案を作るときは、補償対象と免責事由を並べて説明します。たとえば、職務執行に関する責任追及による損害賠償金や争訟費用を補償する一方、犯罪行為、故意の法令違反、私的利益供与に起因する損害は対象外とすることで、職務執行の適正性に配慮していることを示します。
更新決議、親子会社の費用負担、会社補償契約との違いを確認します。
D&O保険は1年更新が多く、更新時にも会社法430条の3の「内容の決定」が問題になります。重要な変更がない更新でも、新たな保険期間について契約内容を決める行為に当たるため、更新の都度、取締役会決議を行う運用が安全です。
次の一覧は、更新時に前年契約と比較すべき項目を示しています。増減や変更の理由を説明できるようにしておくことで、単なる例年処理ではなく、取締役会が実質的に内容を確認したことを示しやすくなります。
保険者、保険期間、支払限度額、保険料、被保険者の範囲を前年と比較します。
基本条件主要な補償内容、免責事由、免責金額、自己負担額、付帯特約の変更を確認します。
契約内容過去1年間の事故、請求、通知状況と、次年度のリスク環境を整理します。
リスク評価グループD&O保険では、親会社が契約者となり、国内外子会社の役員まで被保険者に含めることがあります。次の表は、誰が保険料を実質負担するかによって親会社と子会社の手続が変わることを示しており、少数株主がいる子会社では特に慎重に読む必要があります。
| ケース | 親会社の手続 | 子会社の手続 |
|---|---|---|
| 親会社が契約者となり、親会社が全額負担 | 親会社取締役会決議を行います。 | 原則不要と整理されることが多いですが、説明や同意を検討します。 |
| 100%子会社が実質負担 | 親会社取締役会決議を行います。 | 株主全員同意の整理もあり得ますが、実務上は子会社取締役会決議を行う運用が安全です。 |
| 少数株主のいる子会社が実質負担 | 親会社取締役会決議を行います。 | 子会社取締役会決議が必要になる可能性が高く、少数株主保護も確認します。 |
| 子会社が自ら契約者となる | 親会社側はグループ承認規程に従います。 | 子会社の株主総会または取締役会決議が必要です。 |
役員個人が契約者となる保険料を会社が負担する場合は、会社法430条の3が直接想定する会社契約とは異なります。役員報酬規制、給与課税、源泉徴収、社会保険、利益相反取引、会社の経費性が問題になりやすいため、D&O保険料を会社負担にするなら、原則として会社を保険契約者とする設計が明確です。
D&O保険と会社補償契約は混同されやすい制度です。次の比較表は、保険会社が支払う仕組みと会社自身が補償する仕組みの違いを示しており、会社法430条の2と430条の3の手続を分けて整理するために重要です。
| 項目 | D&O保険 | 会社補償契約 |
|---|---|---|
| 根拠規定 | 会社法430条の3 | 会社法430条の2 |
| 支払主体 | 保険会社 | 会社 |
| 契約相手 | 会社と保険会社 | 会社と役員等 |
| 決議機関 | 株主総会または取締役会 | 株主総会または取締役会 |
| 主な機能 | 役員責任リスクを保険で移転します。 | 会社が役員を直接補償します。 |
| 実務上の位置づけ | 役員リスク管理の基本になります。 | D&O保険の不足部分を補完することがあります。 |
会社規模や成長段階ごとの手続、監査役等の確認観点を整理します。
D&O保険は上場会社だけの制度ではありません。非上場会社、中小企業、オーナー企業、スタートアップ、IPO準備会社でも、取締役、監査役、社外役員、VC派遣役員、CFO、CTOなどの責任が問題になることがあります。
次の一覧は、会社規模や成長段階によってD&O保険の会社負担手続で注意する点をまとめたものです。自社の段階に近い項目を見ることで、決議と開示のどこを厚く確認すべきか把握できます。
取締役会非設置会社では株主総会決議が必要です。全株式に譲渡制限がある非公開会社では事業報告開示が不要な場合もありますが、会社法430条の3決議は別に確認します。
100%株主の会社でも、将来の相続、事業承継、少数株主の出現、金融機関、M&A、IPO、税務調査を考えると議事録整備に意味があります。
VC派遣役員、社外役員候補者、IPO審査、上場後の開示責任、証券訴訟リスクを踏まえ、導入時から取締役会決議と説明資料を整えます。
監査役、監査等委員、監査委員は、D&O保険の被保険者になる一方で、取締役会の監督にも関わります。次の一覧は、監査役等が確認する観点を示しており、保護される側と監督する側の両面を整理するために重要です。
会社法430条の3に基づく決議が適切で、取締役会資料が十分かを確認します。
役員、退任役員、子会社役員、海外役員を含む範囲が合理的かを確認します。
犯罪行為、故意の法令違反、私的利益供与などが免責とされているかを確認します。
株主総会参考書類、事業報告、更新時の決議漏れ、グループ会社按分を確認します。
IPO準備会社では、D&O保険の有無や付保内容を社外役員候補者が確認することがあります。導入時の決議、上場前後の支払限度額見直し、英文D&Oや海外訴訟対応、役員選任議案の開示準備まで、上場後の運用を見据えて設計します。
取締役会議案、株主総会議案、保存資料、役割分担を実務向けに整理します。
議案や議事録は、後日の税務調査、監査、株主からの質問、取締役責任追及、IPO審査、M&Aデューデリジェンスで確認されることがあります。結論だけでなく、会社法430条の3に基づく決議根拠、会社負担の合理性、免責条項、委任範囲、添付資料を残します。
次の表は、取締役会議案と株主総会議案に入れる要素を整理したものです。議案の形式が異なっても、保険契約の主要内容と会社負担を具体的に示す点は共通しており、空欄を作らないことが読み取りどころです。
| 要素 | 取締役会議案での整理 | 株主総会議案での整理 |
|---|---|---|
| 議案名 | 役員等賠償責任保険契約更新または締結の件とします。 | 役員等賠償責任保険契約締結の件とします。 |
| 根拠 | 会社法430条の3第1項に基づく決議根拠を説明します。 | 同じく会社法430条の3第1項に基づく決議根拠を明記します。 |
| 主要条件 | 契約者、保険者、被保険者、期間、限度額、補償対象、免責、保険料を示します。 | 株主が契約内容を判断できる程度に主要条件を示します。 |
| 会社負担 | 保険料は全額当社が負担する旨、または負担割合を明記します。 | 全額負担または負担割合を決議事項として示します。 |
| 委任範囲 | 主要条件に実質的変更を生じさせない範囲で、契約締結事務を代表取締役等に委任します。 | 契約締結事務を代表取締役に委任する範囲を示します。 |
| 適正性確保 | 犯罪行為、故意の法令違反、私的利益供与などを免責とすることを説明します。 | 同様に、職務執行の適正性を損なわない措置を示します。 |
議事録と添付資料の保存は、決議そのものと同じくらい重要です。次の一覧は、後日確認されやすい資料を示しており、法務、税務、監査、保険金請求、M&A、IPO審査の場面で何を提示できるようにするかを読み取れます。
会社法430条の3に基づく決議、保険契約の主要内容、保険料と会社負担、会社負担の合理性、適正性確保措置、特別利害関係、委任範囲を残します。
記録見積書、保険証券案、約款、特約、補償内容比較表、前年度比較表、法務メモ、税務確認メモ、監査役等への説明資料を保存します。
証跡導入目的、管掌部署、更新時期、決議事項、会社負担の原則、子会社按分、被保険者の範囲、免責確認、保険金請求時の手続を定めます。
運用役割分担もあらかじめ決めておきます。法務部は会社法該当性、議案、議事録、開示文案を作り、商事法務担当は取締役会運営と招集通知・事業報告に反映します。経理・財務部は支払、会計処理、予算、子会社按分を担当し、税務部や税理士は給与課税、源泉徴収、損金処理を確認します。リスク管理部、保険ブローカー、監査役等、社外取締役、外部専門家、公認会計士も必要に応じて関与します。
導入・更新前、当日、決議後、よくある誤り、具体的場面を確認します。
D&O保険の会社負担手続は、導入・更新前、当日、決議後で確認事項が変わります。チェックリストを3段階に分けると、取締役会の前に潰すべき論点と、決議後に保存すべき証跡を混同しにくくなります。
次の表は、3つの段階で最低限確認したい項目を集約したものです。左列で時点を確認し、右列でその時点に必要な証跡がそろっているかを読み取ります。
| 段階 | 確認する項目 |
|---|---|
| 導入・更新前 | 会社契約者、被保険者に役員等を含むか、会社法430条の3該当性、除外類型、決議日程、保険料会社負担、子会社手続、免責事由、支払限度額、税務根拠、開示要否、更新時の再決議を確認します。 |
| 取締役会当日 | 議案名、会社法430条の3に基づく決議根拠、主要内容、会社負担、合理性、適正性確保措置、特別利害関係、決議結果、代表取締役への委任範囲を記録します。 |
| 決議後 | 決議内容どおりの契約、保険証券、支払証憑、税務処理、給与課税不要の証跡、株主総会参考書類、事業報告、次回更新時期、子会社決議を確認します。 |
よくある誤りは、どれも手続の順番や証跡不足から起きます。次の一覧は、D&O保険の会社負担で特に見落としやすい失敗を示しており、自社の運用を点検するときの警告項目として使えます。
契約締結または更新前に内容を決定しておくため、支払後の報告では説明が弱くなります。
更新も新たな保険期間の内容決定と評価され得るため、年次更新時の決議運用が安全です。
保険料の会社負担は税務上も会社法上も重要なため、明記します。
犯罪行為、故意の法令違反、私的利益供与が免責となるかを確認します。
子会社が実質負担する場合、子会社側の承認や取締役会決議が問題になり得ます。
役員選任議案の参考書類や公開会社の事業報告に記載が必要になる場合があります。
会社法430条の3の枠組みから外れ、役員報酬や給与課税が問題になりやすくなります。
具体的場面では、新規導入、既存契約の更新、期中就任、期中買収、不祥事発覚後の見直しで確認事項が変わります。新規導入では見積取得、会社法該当性、税務確認、社外役員・監査役等への説明、決議、契約締結、開示、更新管理の順に進めます。更新時は前年との差分を明確にし、期中就任では将来就任役員が自動的に被保険者に含まれるかを確認します。M&Aで子会社が加わる場合は、買収前行為を補償するか、買収後行為だけを補償するかを切り分けます。不祥事発覚後は、既知事実除外、故意・法令違反免責、会社の責任追及方針との整合性を慎重に確認します。
会社負担、決議、更新、被保険者、役員報酬、支払限度額を一般情報として整理します。
一般的には、会社法430条の3に基づき、役員等賠償責任保険契約の内容を株主総会または取締役会設置会社の取締役会で決議し、その内容に基づいて会社が負担する形であれば、会社負担は可能と整理されています。ただし、契約内容、機関設計、負担割合、税務処理によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士、税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、取締役会設置会社では会社法430条の3第1項により取締役会決議が必要とされています。取締役会非設置会社では株主総会決議が必要です。ただし、上場会社や公開会社では、株主総会参考書類や事業報告の開示も別途必要になる場合があります。
一般的には、令和元年改正会社法施行後は会社法430条の3に基づく決議手続が中心とされています。社外取締役や監査役への事前説明はガバナンス上有用ですが、常に社外取締役全員の同意が法定手続になるとは限りません。具体的には会社の機関設計や契約内容を踏まえて確認します。
一般的には、更新も新たな保険期間について契約内容を決定する行為と評価され得るため、更新の都度、取締役会決議を行う運用が安全とされています。特に保険料、支払限度額、被保険者、免責条項、特約に変更がある場合は、決議要否を慎重に確認します。
一般的には、省略できると断定するのは慎重に扱う必要があります。会社法430条の3は契約内容の決定に決議を求めており、同内容更新でも新たな保険期間の契約内容を決める場面になります。具体的な運用は、会社の規程、過去の決議内容、変更の有無を踏まえて確認します。
一般的には、見解が分かれる論点です。全取締役が同一条件で被保険者となる通常のD&O保険では、共通利害関係として議決参加を認める整理があり得ます。他方、一部役員に有利な設計では特別利害関係が問題になりやすいため、議事録上の整理や専門家確認が必要になる場合があります。
一般的には、監査役も会社法上の役員等に含まれ、D&O保険の被保険者に含める設計があります。ただし、株主総会参考書類や事業報告では、監査役候補者や監査役を被保険者に含む場合の記載を確認する必要があります。
一般的には、会計監査人も会社法上の役員等に含まれます。ただし、監査法人独自の賠償責任保険や監査契約との関係があるため、会社のD&O保険に含めるかは契約設計によって変わります。独立性、被保険者範囲、保険料負担を確認します。
一般的には、通常の執行役員は会社法上の執行役とは異なり、会社法上の役員等に当然に含まれるわけではありません。ただし、約款上は執行役員や管理職を被保険者に含めることがあります。会社法430条の3の対象性は、会社法上の役員等を被保険者に含むかを基準に確認します。
一般的には、親会社が契約者となり親会社が全額負担する場合は、親会社の取締役会決議で足りると整理されることがあります。他方、子会社が自社役員分を実質負担する場合は、子会社側でも利益相反取引承認または取締役会決議を行う運用が安全とされます。少数株主のいる子会社では特に慎重な確認が必要です。
一般的には、会社法430条の3に基づいて会社がD&O保険契約を締結し会社が保険料を負担する場合、国税庁は役員個人への給与課税不要の取扱いを示しています。そのため、通常は役員報酬として処理する前提ではありません。ただし、役員個人契約の保険料を会社が補填する場合などは別の整理が必要です。
一般的には、D&O保険は保険契約の範囲内で損害や費用を填補する仕組みであり、責任そのものを消滅させる制度ではありません。犯罪行為、故意の法令違反、私的利益供与などは免責となることが多く、保険金支払の可否は契約条項と事実関係で変わります。
一般的には、会社規模、上場・非上場、業種、海外展開、M&A、訴訟リスク、財務状況、役員構成、過去事故、投資家構成によって変わります。同業他社水準や保険市場も参考になりますが、具体的な金額は法務、リスク管理、保険ブローカー、外部専門家と協議して確認する必要があります。
一般的には、責任限定契約とD&O保険は機能が異なるため併用されることがあります。責任限定契約は社外取締役等の会社に対する責任を一定範囲で限定する制度であり、D&O保険は保険契約の範囲で損害や費用を補償する仕組みです。併用時は、定款、契約内容、開示、保険の支払範囲を確認します。
一般的には、不祥事の内容、認識、故意、犯罪行為、私的利益供与、法令違反の認識、免責条項によって結論が変わります。故意の違法行為や犯罪行為は免責となることが多いです。保険金請求時には、会社の責任追及方針、調査、訴訟対応、保険会社への通知を慎重に整理する必要があります。
決議、支払、開示、税務、更新管理を一つの証跡として残すことが重要です。
D&O保険の保険料を会社負担する場合の手続きは、会社法430条の3に基づき、保険契約の主要内容と会社負担を、株主総会または取締役会で決議し、その決議内容に沿って契約締結、保険料支払、開示、税務処理を行うことに集約されます。
次の強調部分は、実務担当者が最後に確認すべき到達点を示しています。決議だけ、支払だけ、開示だけで切り離さず、会社法、税務、商事法務、監査、リスク管理を一体で見ることが読み取りどころです。
保険契約の主要内容、会社負担、免責、税務根拠、開示、グループ会社按分を同じ資料群で追える状態にすると、監査、税務調査、株主説明、M&A、IPO審査に対応しやすくなります。
このページの内容を確認するための法令・公的資料・実務資料です。