2σ Guide

記者会見を開くべき
基準とタイミング

企業不祥事、事故、情報漏えい、サイバー攻撃、会計不正などで、会見を開くべきか、開くならいつかを、企業法務・危機管理・開示実務の観点から整理します。

7つ判断軸
24〜72時間初回会見の目安
16点以上レベルAの目安
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記者会見を開くべき 基準とタイミング

危機時の会見は、謝罪イベントではなく、被害拡大防止と説明責任を両立させる経営判断です。

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記者会見を開くべき 基準とタイミング
危機時の会見は、謝罪イベントではなく、被害拡大防止と説明責任を両立させる経営判断です。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 記者会見を開くべき 基準とタイミング
  • 危機時の会見は、謝罪イベントではなく、被害拡大防止と説明責任を両立させる経営判断です。

POINT 1

  • 記者会見を開くべき基準とタイミングの全体像
  • 危機時の会見は、謝罪イベントではなく、被害拡大防止と説明責任を両立させる経営判断です。
  • 最適解は節目ごとの公開説明です
  • 説明責任、法令遵守、被害拡大防止、取引市場の公正、内部統制、証拠保全、顧客対応、従業員保護まで含む経営判断です。
  • 単に炎上しているか、報道されたか、謝罪が必要かだけで決めると、必要な注意喚起の遅れや、未確認情報の断定を招きます。

POINT 2

  • 記者会見を開くべき基準とタイミングの前提になる用語整理
  • 会見、公表、第一報、中間報告、最終報告、適時開示を分けると、対応順序を誤りにくくなります。
  • 法令上の義務、直接連絡、公開説明を分けます
  • 表では、それぞれの役割と読み取るべき実務上の違いを整理しています。
  • 会見を開いても法令報告や本人通知の代替にはならず、法令報告を済ませても社会への公開説明が不要になるとは限りません。

POINT 3

  • 記者会見を開くべき基準とタイミングを決める七つの判断軸
  • 生命・身体・財産への危険
  • 報告・公表・通知の義務
  • 影響を受ける範囲
  • 情報の公平性
  • 経営責任・組織性
  • 情報空白と憶測
  • 説明可能性と準備状況
  • 危険、義務、影響範囲、公平性、経営責任、情報空白、準備状況を総合して判断します。

POINT 4

  • 記者会見を開くべき重大度A〜Dとスコアリング
  • 重大度を分類し、第一報・会見・個別通知・限定対応のどれを優先するかを決めます。
  • 簡易スコアで初期判定します
  • 重大度A〜Dは、会見を開くべき基準とタイミングを実務で使える形に落とし込む分類です。
  • 表では、基準、例、タイミング、説明者の違いを読み取れます。

POINT 5

  • 記者会見を開くタイミング ― 発覚直後から最終報告まで
  • 1. 司令塔を立てます:証拠保全と問い合わせ集約も始めます。
  • 2. 短い公式文を準備します
  • 3. 第一報の要否を判断します
  • 4. 会見実施の一次判断をします
  • 5. 初回会見の標準帯です
  • 6. 中間報告を検討します
  • 7. 最終報告・再発防止会見を検討します

POINT 6

  • 上場会社が記者会見を開くべき基準とタイミングの注意点
  • TDnet、インサイダー取引規制、フェア・ディスクロージャー、IR説明との整合を先に設計します。
  • 上場会社の記者会見では、社会への説明だけでなく、市場の公平性を守る必要があります。
  • 重要なのは、TDnet等の開示、会見資料、IR説明、記者質問への回答範囲が矛盾しないように読むことです。
  • 適時開示情報はTDnetを通じて開示することが基本です。

POINT 7

  • 非上場会社・中小企業が記者会見を開くべき基準と代替手段
  • 上場していなくても、顧客・従業員・取引先・地域社会への説明責任は残ります。
  • 非上場会社の簡易判断式
  • 生命・身体・財産の危険
  • 対象者が今取るべき行動

POINT 8

  • 記者会見を開くべき基準とタイミングを事案類型別に見る
  • 個人情報、サイバー、製品、食品、医療、会計、品質、労務、刑事・行政では重視点が変わります。
  • 事案類型ごとの判断表は、同じ「危機」でも会見の目的と慎重事項が異なることを示しています。
  • 表から、類型ごとに会見必要性が高まる条件と、初回説明で扱うべき内容を読み取ります。

まとめ

  • 記者会見を開くべき 基準とタイミング
  • 記者会見を開くべき基準とタイミングの全体像:危機時の会見は、謝罪イベントではなく、被害拡大防止と説明責任を両立させる経営判断です。
  • 記者会見を開くべき基準とタイミングの前提になる用語整理:会見、公表、第一報、中間報告、最終報告、適時開示を分けると、対応順序を誤りにくくなります。
  • 記者会見を開くべき重大度A〜Dとスコアリング:重大度を分類し、第一報・会見・個別通知・限定対応のどれを優先するかを決めます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

記者会見を開くべき基準とタイミングの全体像

危機時の会見は、謝罪イベントではなく、被害拡大防止と説明責任を両立させる経営判断です。

企業が不祥事、事故、情報漏えい、製品欠陥、会計不正、役職員の犯罪、ハラスメント、行政処分、重大訴訟、サイバー攻撃、サービス停止などに直面したとき、記者会見を開くべきか、開くならいつかという判断は、広報だけで完結しません。説明責任、法令遵守、被害拡大防止、取引市場の公正、内部統制、証拠保全、顧客対応、従業員保護まで含む経営判断です。

記者会見は、法令上の報告、届出、通知、適時開示、公表そのものではなく、社会・市場・被害者・顧客・従業員・取引先に向けて、経営者または責任者が説明責任を果たすための対外説明手段です。単に炎上しているか、報道されたか、謝罪が必要かだけで決めると、必要な注意喚起の遅れや、未確認情報の断定を招きます。

この強調表示は、記者会見を開くべき基準とタイミングの中核を表しています。危機対応で重要なのは、社会的説明責任と質疑応答の必要性が高い節目を見極め、第一報・中間報告・最終報告を分けて設計する点です。ここから、会見の有無を一つのイベントではなく、情報発信全体の中で読む必要があります。

最適解は節目ごとの公開説明です

危険性が高い事案では、全調査の完了を待つと遅れます。一方で、事実確認が不十分なまま詳細に踏み込みすぎると、誤情報、二次被害、名誉毀損、個人情報漏えい、証拠隠滅疑義、証券規制上の問題を招きます。

したがって、最初に確認すべき判断軸は、生命・身体・財産への危険、法令・規則・契約上の報告や公表の要否、影響範囲、質疑応答による説明の必要性、経営責任、情報空白の危険、第一報として説明できる準備状況です。

  • 危険があるなら、早く知らせます。
  • 市場情報なら、公平に知らせます。
  • 被害者がいるなら、直接知らせます。
  • 社会的説明責任があるなら、公開の場で説明します。
  • 原因が不明なら、不明であることを明確にして説明します。
Section 01

記者会見を開くべき基準とタイミングの前提になる用語整理

会見、公表、第一報、中間報告、最終報告、適時開示を分けると、対応順序を誤りにくくなります。

記者会見を開くべき基準とタイミングを考える前提として、まず会見、公表、第一報、中間報告、最終報告、適時開示、フェア・ディスクロージャー・ルールを分けて理解します。用語を分けることが重要なのは、法令上の義務と社会への説明が同じ手段ではなく、対応順序を誤ると被害者対応や市場規制に影響するためです。表では、それぞれの役割と読み取るべき実務上の違いを整理しています。

用語意味実務での位置づけ
記者会見報道機関に公式説明を行い、質疑応答を受ける対外コミュニケーションです。双方向性があり、説明の矛盾や未説明論点が明らかになりやすい手段です。
公表会社の情報を不特定多数が知り得る状態に置くことです。ウェブ掲載、プレスリリース、TDnet、EDINET、会見、顧客通知など複数の方法があります。
第一報詳細調査が完了する前に、判明範囲で出す初回の公式説明です。原因断定ではなく、被害拡大防止、不明点の明示、問い合わせ先、調査方針を示します。
中間報告初動対応後、調査が進んだ段階の追加説明です。被害範囲、暫定原因、追加措置、当局対応、最終報告の目安を示します。
最終報告社内調査、外部調査、第三者委員会、再発防止策を踏まえた包括的説明です。原因、責任、処分、再発防止策、経営としての実行責任が問われます。
適時開示上場会社が投資判断に重要な会社情報を迅速・正確・公平に開示する制度です。記者会見は原則としてTDnet等による開示後の説明手段として設計します。
フェア・ディスクロージャー・ルール未公表の重要情報を特定者へ選別的に伝えることを抑制する制度です。会見で未公表重要情報を話さないよう、開示済み情報と回答範囲を事前にそろえます。

法令上の義務、直接連絡、公開説明を分けます

企業危機で混同されやすい三つの層を分けることが重要です。会見を開いても法令報告や本人通知の代替にはならず、法令報告を済ませても社会への公開説明が不要になるとは限りません。次の比較表から、自社がどの層をまだ満たしていないかを読み取ります。

代表例本質
法令・規則上の義務適時開示、臨時報告書、個人情報保護委員会への漏えい等報告、本人通知、重大製品事故報告、食品リコール届出、業法上の報告会社が守る最低限の法的義務です。
対象者への直接連絡被害者通知、顧客メール、取引先説明、従業員説明、株主説明、委託元・委託先連絡被害拡大防止と個別の権利利益保護を目的にします。
社会への公開説明プレスリリース、ウェブ掲載、記者会見、説明動画、FAQ、記者向け説明公共性、透明性、信頼回復、説明責任を担います。
注意上場会社では、TDnet開示前の会見が内部者取引やフェア・ディスクロージャー上の問題を生む可能性があります。会見は市場に対する第一開示手段ではなく、開示後の説明手段として設計します。
Section 02

記者会見を開くべき基準とタイミングを決める七つの判断軸

危険、義務、影響範囲、公平性、経営責任、情報空白、準備状況を総合して判断します。

七つの判断軸は、記者会見を開くべき基準とタイミングを初期判定するための一覧です。重要なのは、どれか一つだけで決めず、危険、義務、影響範囲、公平性、経営責任、情報空白、準備状況を同時に見ることです。この一覧から、自社事案がどの軸で強く会見方向に傾くかを読み取ります。

AXIS 01

生命・身体・財産への危険

死亡、重傷、疾病、火災、爆発、感電、中毒、感染、医療事故、使用中止や回収が必要な場合は、公開説明の必要性が高まります。

AXIS 02

報告・公表・通知の義務

適時開示、個人情報漏えい等報告、重大製品事故報告、食品リコール届出、業法上の報告、契約通知を確認します。

AXIS 03

影響を受ける範囲

少数者に限定されるか、多数の顧客、不特定多数、株主、地域社会、公共インフラまで広がるかで、会見の必要性が変わります。

AXIS 04

情報の公平性

一部メディア、投資家、取引先だけに情報が偏ると問題になります。上場会社では開示済み情報と回答範囲をそろえます。

AXIS 05

経営責任・組織性

役員関与、組織的隠蔽、長期放置、内部統制不備、第三者委員会、役員処分が絡む場合は、経営トップの説明が求められやすくなります。

AXIS 06

情報空白と憶測

SNSの誤情報、断片的報道、従業員不安、なりすましや詐欺などの二次被害が広がる場合は、情報空白を埋める必要があります。

AXIS 07

説明可能性と準備状況

確認済み事実、未確認事項、時系列、被害範囲、窓口、想定問答、話してはいけない事項、次回公表予定を最低限整えます。

法令・規則・契約上の義務を確認します

この比較表は、代表的な義務や制度が会見判断へどう影響するかを表しています。期限や制度名だけを見るのではなく、被害拡大防止や公平な説明とどう組み合わせるかが重要です。各行から、先に済ませるべき報告・通知と、会見で補完すべき説明を読み取ります。

領域代表的な義務・制度会見判断への影響
上場会社適時開示、臨時報告書、インサイダー取引規制、フェア・ディスクロージャー・ルールTDnet・EDINET等の前に会見しません。市場影響が大きい場合は開示後に会見を検討します。
個人情報個人情報保護委員会への漏えい等報告、本人通知速報は知った時点から概ね3〜5日以内が目安です。確報は原則30日以内、不正目的のおそれなどでは60日以内です。
製品安全重大製品事故報告、リコール、公表重大製品事故は知った日から10日以内の報告が示されています。生命・身体危険では注意喚起を優先します。
食品食品衛生法・食品表示法に基づく自主回収届出健康被害、アレルゲン、消費期限誤表示では迅速な公表が重要です。
サイバー個人情報、業法、重要インフラ、上場開示、警察・IPA・JPCERT/CC等への連携技術情報共有と被害公表を分け、二次被害防止の第一報を検討します。
労務労働災害、ハラスメント、公益通報、労基署対応被害者保護とプライバシーを優先しつつ、組織的問題なら経営説明が必要です。
刑事・行政当局調査、社内調査、刑事告発、リニエンシー等捜査・調査への支障を避け、法務主導で発表時期を設計します。

影響範囲と公開説明の濃度を対応させます

次の表は、影響範囲ごとの原則対応を示しています。少数者向けの個別対応で足りる場面と、不特定多数や市場へ公平に届けるべき場面を分けるために重要です。自社の事案がどの行に近いかを読み取り、過剰な会見と不足した公表の両方を避けます。

影響範囲原則対応
特定の少数者に限定個別通知、個別説明、必要に応じプレスリリースを行います。会見は通常不要です。
多数の顧客・利用者ウェブ公表、FAQ、問い合わせ窓口、必要に応じ会見を検討します。
不特定多数の消費者迅速な注意喚起、メディア活用、会見を強く検討します。
株主・投資家に重大影響適時開示後、IR説明、記者会見または投資家向け説明を検討します。
地域社会・公共インフラに影響自治体・当局と連携し、会見または共同説明を検討します。
Section 03

記者会見を開くべき重大度A〜Dとスコアリング

重大度を分類し、第一報・会見・個別通知・限定対応のどれを優先するかを決めます。

重大度A〜Dは、会見を開くべき基準とタイミングを実務で使える形に落とし込む分類です。重要なのは、レベルAでは公開質疑を含む説明を早く検討し、レベルDでは個別対応や情報管理を優先するなど、重大度ごとに手段と時期を変える点です。表では、基準、例、タイミング、説明者の違いを読み取れます。

重大度基準タイミングと説明者
レベルA生命・身体・大規模財産被害、上場市場への重大影響、組織的隠蔽、重大な公益侵害、社会的混乱があります。死亡・重傷事故、大規模漏えい、ランサムウェアによる重要サービス停止、粉飾決算、品質偽装、役員犯罪、全国的リコールなどです。数時間以内に第一報を検討し、初回会見は第一報後24〜72時間以内が目安です。代表取締役、担当役員、危機管理責任者、外部専門家が候補です。
レベルB被害は重大ですが、生命・身体危険が切迫していない、または影響範囲・社会的関心が中程度以上です。限定項目の数千〜数万人規模漏えい、長時間サービス停止、重要取引先との契約解除、ハラスメント対応、役職員刑事事件などです。24時間以内にプレスリリースや対象者通知を検討し、48〜96時間以内に会見または記者向け説明を検討します。
レベルC影響範囲は限定的で、公表は必要または望ましいものの、公開質疑までは通常不要です。少数顧客への誤請求、限定的システム不具合、軽微な表示誤り、二次被害可能性が低い誤送信などです。対象者へ速やかに個別通知し、必要に応じウェブ掲載やFAQを出します。問い合わせ集中時は書面回答や短時間説明を検討します。
レベルD影響が社内または特定少数者に限定され、公表が権利利益、捜査、営業秘密、セキュリティを害するおそれが大きい場合です。個人のプライバシーに関わる労務トラブル、守秘義務のある取引紛争、攻撃を誘発する脆弱性詳細などです。外部公表よりも、被害者対応、証拠保全、内部調査、当局相談、契約対応、報道時の短い公式文準備を優先します。

簡易スコアで初期判定します

この採点表は、重大度を初期判定するための比較一覧です。点数は機械的な結論ではなく、危険、人数、法令、公平性、組織性、情報空白、質疑応答の必要性を並べて抜け漏れを減らすために使います。合計だけでなく、生命・身体危険や法令・規則上の公表性が高い行を重く読むことが重要です。

評価項目0点1点2点3点
生命・身体危険なし軽微重傷・健康被害のおそれ死亡・重大被害・切迫危険
影響人数1〜10人11〜999人1,000人以上不特定多数・全国規模
法令・規則上の公表性なし任意報告・契約報告法定報告・本人通知適時開示・重大事故・行政公表
市場・業績影響なし軽微重要上場維持・資金調達・決算に重大影響
経営責任・組織性個人ミス管理不備部門横断不備役員関与・隠蔽・組織不正
情報空白・炎上なし問い合わせあり報道・SNS拡散誤情報・二次被害・取引所照会
質疑応答の必要性低い中程度高い公開質疑なしでは信頼確保が困難
目安0〜5点はレベルDまたはC、6〜10点はレベルCまたはB、11〜15点はレベルB、16点以上はレベルAの検討領域です。ただし、生命・身体危険が3点、または法令・規則上の公表性が3点なら、合計にかかわらずレベルAまたはBとして扱う方向で検討します。
Section 04

記者会見を開くタイミング ― 発覚直後から最終報告まで

0〜1時間、3時間、6時間、24時間、48〜72時間、1〜2週間、1〜3か月の節目で対応を分けます。

発覚後の時系列は、記者会見を開くべきタイミングを決める実務上の骨格です。重要なのは、すべてを把握してから動くのではなく、司令塔、短い公式文、第一報、一次判断、初回会見、中間報告、最終報告を段階化する点です。次の時系列から、各段階で何を決めるべきかを読み取ります。

0〜1時間

司令塔を立てます

法務、コンプライアンス、危機管理、広報、該当部門長へ即時連絡し、重大危機の可能性があれば経営陣、CLO、CCO、CFO、CISO、監査役・社外取締役へエスカレーションします。証拠保全と問い合わせ集約も始めます。

3時間以内

短い公式文を準備します

詳細が不明な段階でも、会社として確認中であること、外部専門機関と調査中であること、影響が確認された場合の公表方針などを短く示す文案を用意します。

6時間以内

第一報の要否を判断します

生命・身体危険、顧客が直ちに取るべき行動、外部から明らかなサービス停止、二次被害のおそれ、報道・SNS拡散、当局照会があれば、第一報を強く検討します。

24時間以内

会見実施の一次判断をします

会見の有無、出席者、時刻、会見前に完了させる開示・報告・通知、説明する範囲、控える範囲、想定問答、次回報告時期を決めます。

48〜72時間

初回会見の標準帯です

レベルA・Bでは、事案概要、発覚経緯、初動対応、暫定影響範囲、被害拡大防止策、当局連携、調査体制、次回公表予定を説明できる段階で会見を検討します。

1〜2週間

中間報告を検討します

大規模漏えい、会計不正、品質不正、ハラスメント、贈収賄、サイバー攻撃では、調査体制、対象範囲、判明被害、暫定原因、追加措置、当局対応、第三者委員会の要否を示します。

1〜3か月

最終報告・再発防止会見を検討します

原因、責任、処分、被害者救済、再発防止、モニタリング体制、社外役員の関与、企業文化の問題を経営者自身の言葉で説明します。

第一報で説明すべき事項は、原因の断定ではありません。発生した可能性、発覚経緯、影響し得る対象、対象者が今取るべき行動、追加情報の出し方を示すことです。

重要最も危険なのは、調査中を理由に必要な注意喚起を遅らせることです。次に危険なのは、早く説明しようとして未確認情報を断定することです。早さと正確性は、説明の粒度を調整することで両立させます。
Section 05

上場会社が記者会見を開くべき基準とタイミングの注意点

TDnet、インサイダー取引規制、フェア・ディスクロージャー、IR説明との整合を先に設計します。

上場会社の記者会見では、社会への説明だけでなく、市場の公平性を守る必要があります。この一覧は、会見前に必ず設計すべき実務項目を表しています。重要なのは、TDnet等の開示、会見資料、IR説明、記者質問への回答範囲が矛盾しないように読むことです。

01

TDnet前の会見は原則避けます

適時開示情報はTDnetを通じて開示することが基本です。会見は、原則としてTDnet等による開示後の説明手段として位置づけます。

適時開示市場公平性
02

未公表重要情報を話しません

損害額、業績影響、特別損失、重要契約解除、行政処分見込み、役員辞任、M&Aや資金調達などは、開示要否を確認してから回答範囲を決めます。

FD想定問答
03

会見資料と開示資料を整合させます

会見で適時開示より詳細な事実を説明する場合でも、投資判断に影響する新情報を追加するなら、追加開示の要否を検討します。

資料整合
04

取引時間中・引け後・休日を設計します

適時開示は直ちに行うことが原則です。会見時刻は、TDnet開示後に記者・投資家・顧客へ公平に情報が届く時間を考慮して設定します。

時刻設計
05

IR説明会と記者会見を分けます

記者会見は社会・報道機関向け、IR説明会は投資家・アナリスト向けです。重大不祥事では両方が必要になり得ますが、説明内容を一致させます。

IR
回答方針未公表の重要情報に該当し得る質問には、現時点で開示すべき事項が決定した場合には適時適切に開示する旨を回答し、会見の場で新情報を漏らさない準備が必要です。
Section 06

非上場会社・中小企業が記者会見を開くべき基準と代替手段

上場していなくても、顧客・従業員・取引先・地域社会への説明責任は残ります。

非上場会社や中小企業でも、顧客、従業員、取引先、地域社会、金融機関、監督官庁に対する説明責任は残ります。この比較表は、会見という形式に限らず、必要な人に必要な情報を届ける手段を選ぶためのものです。上場していないことだけで公開説明を不要と判断しない点を読み取ります。

場面検討する公開説明注意点
食品、医療、教育、介護、保育、交通、建設、金融、IT、EC、宿泊、観光、物流、プラットフォーム代表者名義の公表文、ウェブ掲載、顧客メール、FAQ、地元記者クラブへの資料提供、オンライン説明、取引先説明会、自治体・業界団体を通じた周知非上場でも不特定多数の生活に影響するため、公開説明の必要性が高まります。
大規模会見が負担になる中小企業正確な公表文、個別通知、問い合わせ窓口、短いオンライン説明、FAQ形式よりも、危険情報、対象者が取るべき行動、次回公表予定が届くことを優先します。
会見しない判断個別連絡、被害拡大防止策、当局報告要否の確認、問い合わせ窓口、報道時の短い公式文、判断記録何もしないという意味ではありません。会見しない理由を社内で記録します。

非上場会社の簡易判断式

次の一覧は、公開説明や準会見を検討するための実務上の問いを表しています。二つ以上当てはまる場合、個別説明だけで足りるかを慎重に見直すことが重要です。どの問いが自社のリスクを押し上げているかを読み取ります。

CHECK

生命・身体・財産の危険

人の安全や財産に危険がある場合は、公開説明の必要性が高まります。

CHECK

対象者が今取るべき行動

使用中止、受診、パスワード変更、カード停止などが必要なら、早い注意喚起を検討します。

CHECK

100人超または不特定多数

影響者が多い場合や特定できない場合は、個別通知だけでは届かない可能性があります。

CHECK

行政・警察・監督官庁への報告

外部機関への報告が動く事案では、社会への説明との整合も確認します。

CHECK

報道・SNS・口コミの拡散

情報空白が憶測を広げている場合、公式見解を示す必要があります。

CHECK

経営者・組織的管理不備

管理職や組織性が問題になる場合、代表者または責任者の説明が求められやすくなります。

Section 07

記者会見を開くべき基準とタイミングを事案類型別に見る

個人情報、サイバー、製品、食品、医療、会計、品質、労務、刑事・行政では重視点が変わります。

事案類型ごとの判断表は、同じ「危機」でも会見の目的と慎重事項が異なることを示しています。重要なのは、個人情報、サイバー、製品、食品、医薬・医療機器、会計、品質、労務、刑事・行政で、誰に何を早く届けるべきかが違う点です。表から、類型ごとに会見必要性が高まる条件と、初回説明で扱うべき内容を読み取ります。

類型会見必要性が高まる場合初回説明で重視すること
個人情報漏えい要配慮個人情報、金融情報、認証情報、医療情報、子どもの情報、1,000人超、不正アクセス、二次被害のおそれ、複数層への影響、報道・SNS拡散がある場合です。漏えいまたはおそれの概要、対象者、項目、本人が取るべき行動、不審連絡への注意、窓口、委員会報告、外部調査状況を示します。
サイバー攻撃・ランサムウェアサービス停止、重要インフラ・医療・金融・行政・教育・物流への影響、個人情報・機密情報漏えいのおそれ、感染拡大やなりすまし被害がある場合です。被害内容・対応情報と攻撃技術情報を分け、数時間以内の第一報、24〜72時間以内の初回会見、技術詳細の粒度調整を検討します。
製品事故・リコール死亡、重傷、火災、爆発、感電、中毒、同種事故の再発可能性、多数流通、脆弱な利用者への影響、使用中止や回収が必要な場合です。対象製品名、型番、製造・販売期間、危険の内容、使用中止・回収・交換方法、確認箇所、窓口、当局報告、原因調査中であることを示します。
食品事故・アレルゲン表示漏れ健康被害、アレルゲン表示漏れ、全国流通、対象商品の特定困難、喫食中止の必要、学校給食・病院・介護施設への影響がある場合です。対象商品、ロット、販売期間、健康被害のおそれ、喫食中止・返品方法、医療機関受診の目安、行政届出、問い合わせ窓口を示します。
医薬品・医療機器・化粧品Class I相当の回収、患者・医療機関が直ちに対応すべき場合、使用継続で重篤な健康被害のおそれがある場合です。一般向け説明だけでなく、医療従事者向け情報、患者向けFAQ、医療機関への直接通知を組み合わせます。
会計不正・粉飾決算過年度訂正、監査法人指摘、第三者委員会、役員関与、上場廃止や監理銘柄等のリスク、業績修正・特別損失がある場合です。投資者保護を中心に、適時開示、EDINET、監査法人、取引所、当局対応を整理したうえで説明します。
品質不正・検査不正安全性への影響、長期・組織的実施、複数拠点・複数製品、顧客仕様・法令基準・認証基準違反、経営層の把握疑いがある場合です。対象製品、期間、安全性評価、顧客対応、出荷停止、第三者調査、再発防止の方向性を示します。
ハラスメント・労務不祥事役員・著名人・管理職の関与、被害者複数、長期放置、自殺・重大精神疾患・労災・訴訟・行政指導、公共性の高い団体での発生がある場合です。被害者保護、プライバシー、調査協力者の保護を優先し、被害者特定につながる説明を避けます。
役職員の刑事事件・贈収賄・独禁法違反役員逮捕、家宅捜索、贈収賄、横領、背任、詐欺、カルテル、談合、顧客・株主・取引先への重大影響がある場合です。捜査・調査への協力、会社が確認している事実、社内調査体制、再発防止の方向性を示し、個別の刑事責任は断定しません。
行政処分・業務停止業務停止、登録取消、改善命令、課徴金、行政指導の社会的影響、顧客契約やサービス継続への影響、組織的管理不備がある場合です。処分内容、顧客への影響、サービス継続、再発防止計画を説明します。処分を争うか受け入れるかで発言内容を調整します。
Section 08

記者会見で説明すべき事項と次回公表予定

冒頭発言、被害者配慮、確認済み事実、被害拡大防止策、当局連携、次回公表予定を順に示します。

記者会見で説明すべき事項は、謝罪の言葉だけではありません。次の判断の流れは、冒頭発言から質疑応答までの標準順序を表しています。重要なのは、被害拡大防止、確認済み事実、不明点、今後の公表予定を順番に示し、読者や対象者が何をすればよいかを読み取れる状態にすることです。

会見説明の基本順序

冒頭発言

何が起き、誰に影響し、会社が何をしているかを短く示します。

被害者・関係者への配慮

お詫びだけで終わらせず、対象者に必要な行動を示します。

概要・発覚経緯・確認済み事実

判明事実、未確認事項、今後確認する事項を分けます。

影響範囲と被害拡大防止策

対象者、暫定件数、回収、通知、問い合わせ窓口、代替手段を説明します。

当局・専門機関との連携

取引所、監督官庁、警察、外部専門機関、監査法人などへの報告・連携状況を示します。

調査・再発防止・次回公表予定

調査体制、再発防止の方向性、中間報告や最終報告の目安を示します。

確認済み、未確認、今後確認、回答不能を分けます

次の表は、会見で信頼性を保つための説明区分を表しています。重要なのは、分かっていないことを隠さず、しかし断定しないことです。各区分から、回答できる範囲と回答できない理由を読み取ります。

区分説明例
確認済み対象製品、発生日時、発覚経緯、確認済みの影響範囲など、裏付けがある事実を述べます。
未確認漏えい件数、原因、損害額、責任の所在など、調査中の事項は調査中と明示します。
今後確認外部専門機関の一次調査結果を踏まえ、2週間以内を目途に中間報告を行うなど、次の時期を示します。
回答不能捜査、個人情報、セキュリティ、未公表重要情報に関わる事項は、理由を添えて詳細を控えます。

対象者の具体的行動を示します

この一覧は、会見が会社側の説明だけでなく、対象者に必要な行動を届ける場であることを表しています。重要なのは、商品やサービスの種類ごとに、読み手が次に何をすればよいかが分かることです。

製品

使用中止・回収・交換

型番、製造期間、確認箇所、連絡先、回収または交換方法を示します。

食品

喫食中止・返品・受診

対象商品、ロット、健康被害のおそれ、医療機関受診の目安を示します。

個人情報

パスワード変更・不審連絡注意

不審メール、SMS、電話、カード利用履歴確認などの注意点を示します。

サイバー

なりすまし防止・添付不開封

取引先確認、添付ファイル不開封、代替連絡手段などを示します。

サービス停止

代替手段・復旧見込み

利用者が使える代替手段、復旧予定、補償方針の検討状況を示します。

Section 09

記者会見で説明してはいけない事項・慎重に扱う事項

未確認の原因、個人情報、セキュリティ、捜査、未公表重要情報は、話せる範囲を事前に線引きします。

慎重に扱う事項の一覧は、会見で話すこと自体が二次被害や法的リスクを生む領域を表しています。重要なのは、沈黙するのではなく、話せない理由を説明しつつ、説明可能な事実と対象者への対応を切り分けることです。各項目から、事前に回答方針を作るべき論点を読み取ります。

未確認の原因断定

委託先のミス、一部社員の独断、当社に過失がない、健康被害はない、漏えいはないなどを調査前に断定しません。

責任回避に見える表現

法的責任を留保する必要があっても、被害者への配慮と再発防止の姿勢が伝わる表現に整えます。

個人情報・プライバシー

被害者、従業員、通報者、調査協力者、医療情報、家族情報、ハラスメント被害の詳細、漏えいデータのサンプルは原則として出しません。

セキュリティ上危険な情報

未修正の脆弱性、管理画面URL、構成図、攻撃者との交渉、検知回避につながる情報は公表粒度を調整します。

捜査・行政調査に影響する情報

供述内容、証拠の所在、社内調査の未公表事実、当局とのやり取り、処分見込み、他社名・関係者名を慎重に扱います。

将来見通し・業績影響

上場会社は、将来見通し、業績予想修正、特別損失、重要契約、資金調達などについて、適時開示とフェア・ディスクロージャーを確認します。

言い換え原因が未確定な場合は、現時点では原因を特定できておらず、外部専門機関とともにログ、関係者ヒアリング、管理体制を調査している旨を説明します。
Section 10

記者会見に出席すべき人と部門別の役割分担

代表者、担当役員、法務、広報、IR、CISO、人事、会計、社外役員の役割を分けます。

出席者の基本形は、事案の専門性と経営責任の重さに合わせて変わります。この表は、誰が会見に出るべきかを類型別に整理したものです。重要なのは、経営責任を会社自身が語り、専門家は事実・技術・手続を補足する役割として読むことです。

事案出席者の基本形
死亡・重大事故代表取締役、事業責任者、品質・安全責任者、法務責任者、必要に応じ技術専門家
個人情報漏えい代表または担当役員、CISO、個人情報保護責任者、法務責任者、外部フォレンジック専門家
会計不正代表取締役、CFO、監査役・監査等委員、外部弁護士、第三者委員会委員長
品質不正代表取締役、品質保証責任者、事業責任者、外部調査委員
ハラスメント代表または人事担当役員、コンプライアンス責任者、外部弁護士。被害者保護の観点から出席者を絞ります。
サイバー攻撃代表または担当役員、CISO、法務責任者、広報、外部専門機関
行政処分代表取締役、担当役員、法務責任者、業法責任者

部門別の役割を分けます

この一覧は、会見判断を一部門だけで抱え込まないための役割分担を表しています。重要なのは、法務が止め役だけになるのではなく、広報、IR、セキュリティ、人事、会計、取締役会がそれぞれの観点で説明可能な範囲を作る点です。どの部門に確認すべき論点が残っているかを読み取ります。

法務部門

法令・規則上の報告、公表、通知の要否、訴訟・刑事・行政・契約・個人情報・労務・知財リスク、話せる事項と控える事項、想定問答を整理します。

線引き

広報部門

報道状況・SNS状況、記者対応窓口、会見運営、プレスリリース、FAQ、メディア別の誤解や関心を整理します。

社会の関心
IR

IR部門

適時開示要否、TDnet資料と会見資料の整合、投資家・アナリスト対応、フェア・ディスクロージャー、業績影響の説明粒度を管理します。

市場公平性

情報セキュリティ部門・CISO

侵害範囲、ログ保全、外部フォレンジック、復旧方針、技術情報の公表可否、二次被害防止策、JPCERT/CC・IPA・警察等との連携を担います。

技術事実

人事・労務部門

被害者保護、関係者ヒアリング、懲戒・処分手続、労基署・労働局対応、メンタルヘルス、従業員説明、社労士・産業医連携を担います。

保護

経理・会計・内部監査

不正金額、会計処理、監査法人対応、内部統制評価、過年度訂正、公認会計士・フォレンジック会計士との連携を担います。

数値整合
代表者死亡・重傷・重大健康被害、組織的隠蔽、上場会社の重大案件、役員関与、会社の存続・信頼に関わる事案、再発防止を経営方針として説明する事案では、代表取締役の出席を検討します。
Section 11

記者会見を開く前後のチェックリストと判断メモ

開催判断、事実確認、資料、役割、リハーサル、会見後対応、判断メモを一覧で確認します。

会見前チェックリストは、開催判断、事実確認、資料、役割、リハーサルの抜け漏れを防ぐための一覧です。重要なのは、会見をするかどうかだけでなく、会見しない理由も記録し、法令・通知・被害者対応・市場対応との整合を確認する点です。表から、会見前に未完了の準備を読み取ります。

区分確認事項
開催判断生命・身体・財産への危険、対象者が取るべき行動、報告・公表・通知義務、上場会社の適時開示・FD・インサイダー規制、当局連絡、個別連絡方針、会見目的、会見しない理由の記録
事実確認発覚日時、発生日時または期間、発見者・発見経緯、影響範囲、対象商品・サービス・システム・拠点、暫定人数・件数・金額、二次被害のおそれ、原因確認状況、調査中事項、証拠保全状況
資料冒頭説明文、プレスリリース、時系列表、対象者向けFAQ、問い合わせ窓口、想定問答、適時開示資料との整合、ウェブ掲載文、社内向け説明文、取引先向け説明文
役割分担司会者、主説明者、技術・会計・法務補足者、記録担当、SNS監視担当、追加質問対応担当、取引所・当局対応担当、被害者・顧客対応担当
リハーサル冒頭説明を3分以内で説明できること、専門用語なしで事案概要を説明できること、答えられない質問への方針、未確認事項を断定しない訓練、被害者配慮、厳しい質問、追加開示が必要になる回答の回避

会見後も対応は続きます

会見後チェックリストは、会見を実施して終わりにしないための一覧です。重要なのは、会見で話した内容を公開資料・FAQ・従業員説明・当局共有・次回公表予定へ反映し、発言と実対応のずれを防ぐことです。表から、直後、24時間以内、1週間以内の優先事項を読み取ります。

時期確認事項
会見直後会見内容、配布資料、FAQ、問い合わせ先の公開、会見録・動画の公開可否、未回答質問、誤報・誤解、SNS反応、従業員共有、取引先・顧客向け説明の更新
24時間以内追加FAQ、問い合わせ傾向の分析、被害者対応の補正、追加開示要否、当局・取引所・監査法人への共有、次回公表予定の再確認
1週間以内中間報告の要否、暫定再発防止策、第三者委員会・外部調査の要否、役員処分・社内処分の検討体制、会見発言と実対応の齟齬確認

判断メモで社内合意を残します

次の表は、取締役会、危機対策本部、法務・広報・IRで共有する判断メモの構成を表しています。重要なのは、会見の必要性だけでなく、会見しない場合のリスク、代替手段、説明可能事項、控える事項、今後のスケジュールを残すことです。

項目記録する内容
1. 事案の概要発覚日時、発生日時・期間、発覚経緯、現時点で判明している事実、未確認事項
2. 被害・影響生命・身体への影響、財産的被害、影響人数・件数、顧客・取引先・従業員・株主への影響、二次被害のおそれ
3. 法令・規則・契約上の対応適時開示、法定開示、個人情報保護委員会報告、本人通知、監督官庁報告、警察・IPA・JPCERT/CC等への連絡、契約上の通知義務
4. 対外状況報道状況、SNS状況、記者問い合わせ、取引先問い合わせ、従業員不安
5. 会見開催の必要性開催目的、会見しない場合のリスク、会見する場合のリスク、代替手段
6. 推奨判断レベル分類、推奨対応、推奨時期、出席者、会見前に必要な開示・通知
7. 会見で説明する事項説明可能事項、説明を控える事項、想定される厳しい質問
8. 今後のスケジュール第一報、会見、中間報告、最終報告
Section 12

記者会見を開くべき基準とタイミングのFAQ

個別事案への断定を避け、一般的な制度・実務上の考え方として整理します。

法令上の会見義務がなければ、会見しなくてもよいですか

一般的には、記者会見の開催を直接義務づける法令が常にあるわけではありません。ただし、法令上の形式義務がないことと、社会的・経営的に公開説明が不要であることは別です。死亡事故、重大な個人情報漏えい、長期サービス停止、広範な消費者被害、役員関与などでは、個別事情によって公開説明の必要性が高まる可能性があります。具体的な対応は、事実関係と関係法令を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

上場会社はTDnet前に会見できますか

一般的には、適時開示情報に当たる可能性がある事項は、TDnet等による開示を先行させる実務が基本とされています。TDnet前に記者会見で未公表重要情報を伝えると、内部者取引やフェア・ディスクロージャー上の問題が生じる可能性があります。ただし、人命・身体安全に関わる緊急注意喚起などでは、消費者・顧客への迅速な連絡と市場対応を同時並行で設計する必要があります。個別の順序は、取引所、開示担当、弁護士等と確認する必要があります。

調査が終わっていなくても第一報を出すべきですか

一般的には、生命・身体への危険、二次被害、サービス停止、なりすまし被害、報道やSNS拡散がある場合、全調査の完了を待たずに第一報を検討することがあります。ただし、第一報は原因や責任を断定する場ではなく、確認済み事実、不明点、対象者が取るべき行動、窓口、次回公表予定を示すものです。具体的な粒度は、被害状況、証拠関係、法令報告、セキュリティ上の配慮により変わります。

中小企業は大規模な会見を開くべきですか

一般的には、大規模会見が常に必要とは限りません。ウェブ掲載、代表者名義の公表文、顧客メール、FAQ、地元記者クラブへの資料提供、オンライン説明、取引先説明会などで足りる場合もあります。ただし、対象者が多い、危険が切迫している、報道が広がっている、組織的管理不備が問われる場合は、会見または準会見を検討する必要があります。

外部弁護士が会見で前面に出れば安全ですか

一般的には、外部弁護士は法的に答えられない事項の整理、調査体制の説明、第三者性の補足に有用です。一方で、経営責任、被害者対応、再発防止は会社自身が説明する必要があります。弁護士だけが前面に出ると、会社が自ら説明していない印象を与える可能性があります。出席者は、事案の重大性、専門性、被害者保護、上場規制を踏まえて決めます。

Section 13

記者会見を開くべき基準とタイミングの結論

会見は演出ではなく、何が起き、何をしており、何を変えるのかを公開の場で説明する実務です。

記者会見を開くべき基準とタイミングは、単純なマニュアルでは決まりません。しかし、判断不能でもありません。最初に確認すべき順序は、誰に危険があるのか、誰に知らせる必要があるのか、どの法令・規則・契約が動くのか、何を今すぐ言えるのか、何をまだ言ってはいけないのか、会見でなければ果たせない説明責任があるのか、会見の前に必要な開示・通知・報告が終わっているかです。

このまとめは、最終判断で見るべき七つの問いを表しています。重要なのは、記者会見を危機対応の演出ではなく、被害者、顧客、従業員、取引先、株主、社会へ、何が起き、何をしており、何を変えるのかを説明する実務として読むことです。

01

危険

生命・身体・財産への危険があるかを最初に確認します。

02

通知先

被害者、顧客、従業員、取引先、株主、当局の誰に知らせるかを決めます。

03

法令・規則・契約

適時開示、法定報告、本人通知、契約通知、業法報告を確認します。

04

言えること

確認済み事実、被害抑止策、窓口、調査方針、次回公表予定を整理します。

05

言えないこと

未確認の原因、個人情報、セキュリティ詳細、捜査、未公表重要情報を切り分けます。

06

会見の必要性

公開質疑なしでは公平性・透明性・信頼性を確保しにくいかを確認します。

07

前提対応

会見前に必要な開示、通知、報告、個別連絡、問い合わせ体制が整っているかを確認します。

結論確認済み事実に基づく第一報、調査の進展に応じた中間報告、原因と再発防止を示す最終報告を分け、記者会見は社会的説明責任と質疑応答の必要性が高い節目で実施します。
Reference

この記事の参考情報源

取引所・金融規制

  • 日本取引所グループ「会社情報適時開示ガイドブック」
  • 日本取引所グループ FAQ「適時開示に関する実務要領」
  • 日本取引所グループ FAQ「決算短信等」
  • 金融庁「フェア・ディスクロージャー・ルールガイドライン」

個人情報・製品・食品・医薬関連

  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
  • 個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」
  • 経済産業省「重大製品事故の報告」
  • 消費者庁「消費生活用製品の重大製品事故の報告義務等について」
  • 厚生労働省「自主回収報告制度(リコール)に関する情報」
  • 消費者庁「食品表示リコール情報及び違反情報サイト」
  • 厚生労働省「医薬品等回収関連情報」
  • 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「回収情報」

サイバー・危機管理・会社法

  • 経済産業省「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」
  • 経済産業省「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」
  • サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス検討会「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンスの概要」
  • 国家サイバー統括室「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス検討会」
  • 日本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」
  • e-Gov法令検索「会社法」
  • ISO「ISO 22361 2022 Crisis management Guidelines」
  • Centers for Disease Control and Prevention「Crisis and Emergency Risk Communication Introduction」