2σ Guide

非上場会社で
持株会を作る場合の留意点

従業員持株会・役員持株会を、福利厚生だけでなく資本政策、退職時の株式回収、非上場株式評価、金商法、労務、税務、IPO・M&Aまで含めて整理します。

3類型 従業員・役員・グループ型
50名 金商法の勧誘人数確認
10段階 導入ロードマップ
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非上場会社で 持株会を作る場合の留意点

制度を作る前に、出口、価格、説明、手続、将来イベントを同時に見る必要があります。

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非上場会社で 持株会を作る場合の留意点
制度を作る前に、出口、価格、説明、手続、将来イベントを同時に見る必要があります。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 非上場会社で 持株会を作る場合の留意点
  • 制度を作る前に、出口、価格、説明、手続、将来イベントを同時に見る必要があります。

POINT 1

  • 非上場会社で持株会を作る場合の留意点の全体像
  • 制度を作る前に、出口、価格、説明、手続、将来イベントを同時に見る必要があります。
  • 持株会の成否は出口と価格の設計で決まります
  • 非上場会社の持株会は、単なる福利厚生制度ではありません。
  • 次の重要ポイントは、非上場会社の持株会で特に後日の紛争や審査指摘につながりやすい論点をまとめたものです。

POINT 2

  • 非上場会社の持株会とは何か ― 基本類型と民法組合型の設計
  • 従業員持株会、役員持株会、グループ持株会では、目的も規制も管理方法も変わります。
  • 持株会とは、従業員、役員、取引先などが金銭を拠出し、特定の会社の株式を取得・保有するための組織または制度です。
  • 非上場会社では、市場で容易に売買できる株式がありません。
  • 次の比較一覧は、持株会規約で明確にすべき事項と、その理由を整理したものです。

POINT 3

  • 非上場会社の持株会が上場会社と違う3つの留意点
  • 市場売却ができない
  • 市場価格がない
  • 支配権維持と従業員保護が衝突する
  • 流動性、株価の客観性、従業員保護と支配権維持の緊張関係が、制度設計の重さを左右します。

POINT 4

  • 非上場会社で持株会を作る前に見る会社法上の留意点
  • 1. 持株会が買い取る:まず規約上の通常ルートで対応します。
  • 2. 持株会の資金を確認する:不足する場合は追加拠出や次回拠出で調整できるか検討します。
  • 3. 会社による取得が可能か:会社法上の自己株式取得手続と分配可能額を確認します。
  • 4. 指定買取人を検討:創業株主、資産管理会社、既存株主などを受け皿にします。
  • 5. 価格と支払時期を明確化:端数処理と税務処理まで文書化します。

POINT 5

  • 非上場会社の持株会でも金商法・開示規制を確認する留意点
  • 自社株以外を運用対象に含める
  • 持株会の目的が従業員による自社株取得から離れ、別の投資運用に見えやすくなります。
  • 事務局が裁量的に売買時期を決める
  • 会員の個別投資判断や裁量運用との関係が問題になり得ます。

POINT 6

  • 非上場会社の持株会規約で最重要となる出口・買取価格の留意点
  • 文書セット、任意加入、退職時の株式回収、価格算定を同じ制度文書の中で整えます。
  • 持株会規約は制度の中核です。
  • 次の文書一覧は、持株会を運用するために必要となりやすい文書セットを整理したものです。
  • 退職時・退会時には規約所定の価格で売却する義務があることも、個別同意で確認する必要があります。

POINT 7

  • 非上場会社の持株会で税務・労務・非上場株式評価を整える留意点
  • 評価目的を分け、給与天引き、奨励金、低廉取得、配当、退会時譲渡を個別に確認します。
  • 非上場株式の評価は、目的ごとに異なります。
  • どの評価が税務目的で、どの評価が契約上の精算目的なのかを分けて読むことで、退会時価格の説明可能性を高められます。
  • 取得価額固定方式は管理しやすい一方、会社価値が大きく上昇した場合に従業員が値上がり益を得られない設計になりやすい方式です。

POINT 8

  • 非上場会社の持株会で会計・内部統制・ガバナンスを固める留意点
  • 資金と株式は従業員の財産に関わるため、事務局任せにせず統制と利益相反管理を置きます。
  • 次の内部統制一覧は、持株会の資金・株式・会員持分を安全に管理するための統制を整理したものです。
  • 非上場会社でも会員財産を扱う点は変わらないため、申込受付から退会精算までの分担と承認を読み取ることが重要です。
  • IPO準備会社では、持株会台帳が上場審査、証券会社審査、監査法人レビューの対象となる可能性があります。

まとめ

  • 非上場会社で 持株会を作る場合の留意点
  • 非上場会社で持株会を作る場合の留意点の全体像:制度を作る前に、出口、価格、説明、手続、将来イベントを同時に見る必要があります。
  • 非上場会社の持株会とは何か ― 基本類型と民法組合型の設計:従業員持株会、役員持株会、グループ持株会では、目的も規制も管理方法も変わります。
  • 非上場会社で持株会を作る前に見る会社法上の留意点:定款、譲渡制限、株式供給方法、自己株式取得、株主名簿の整備が土台になります。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

非上場会社で持株会を作る場合の留意点の全体像

制度を作る前に、出口、価格、説明、手続、将来イベントを同時に見る必要があります。

非上場会社の持株会は、単なる福利厚生制度ではありません。株主構成、支配権、従業員インセンティブ、退職時の株式回収、非上場株式の評価、金融商品取引法上の勧誘規制、賃金控除、税務処理、将来のIPO・M&Aまでを同時に設計する資本政策上の制度です。

制度を急いで作ると、退職者との買取価格紛争、少数株主問題、税務否認、開示規制違反、給与天引きの労務不備、IPO審査上の指摘、M&A時の株主整理コストとして後から表面化しやすくなります。

重要な前提このページは一般的な法務・税務・会計・労務上の検討事項を整理するものです。実際の制度設計では、定款、株主構成、増資履歴、従業員数、財務状況、上場予定、相続・事業承継、外国人従業員の有無、グループ会社構成によって結論が変わります。

次の重要ポイントは、非上場会社の持株会で特に後日の紛争や審査指摘につながりやすい論点をまとめたものです。制度全体を点でなく線で確認するために重要であり、出口と価格、説明手続、将来イベントを同じ比重で読み取る必要があります。

持株会の成否は出口と価格の設計で決まります

市場で売却できない非上場株式では、退職時・退会時・相続時・M&A時に、誰が、いくらで、どの手続により株式を引き取るかを先に決めておくことが制度運用の中心になります。

検討の出発点は、会社側の支配権安定と従業員側の経済的保護を両立させることです。会社の都合だけで価格や議決権を設計すると、従業員の財産権、契約上の公平、労務上の任意性と衝突する可能性があります。

Section 01

非上場会社の持株会とは何か ― 基本類型と民法組合型の設計

従業員持株会、役員持株会、グループ持株会では、目的も規制も管理方法も変わります。

持株会とは、従業員、役員、取引先などが金銭を拠出し、特定の会社の株式を取得・保有するための組織または制度です。日本証券業協会のガイドラインでは、従業員持株会、拡大従業員持株会、役員持株会、拡大役員持株会、取引先持株会などに分類されています。

次の比較表は、非上場会社で問題になりやすい3つの類型を、参加者、目的、重要論点ごとに整理したものです。どの類型を選ぶかで法務・税務・労務の確認範囲が変わるため、自社がどの制度を作ろうとしているのかを最初に読み分けることが重要です。

類型主な参加者主な目的特に重要な論点
従業員持株会従業員福利厚生、経営参加意識、安定株主形成退職時買取、給与天引き、奨励金課税、勧誘規制
役員持株会取締役・監査役・執行役等経営責任と株主利益の一致、資本政策役員報酬規制、利益相反、未公表情報管理
グループ持株会・拡大持株会子会社・関連会社の従業員等グループ横断のインセンティブ子会社負担、外国法、税務、対象会社との関係性

非上場会社では、市場で容易に売買できる株式がありません。そのため制度の本質は、投資機会の提供だけでなく、退職時・退会時・相続時・M&A時に株式をどう処理するかを事前に決めることにあります。

次の比較一覧は、持株会規約で明確にすべき事項と、その理由を整理したものです。規約の曖昧さは、配当、議決権、退会時精算、相続時対応のいずれにも波及するため、各項目を単なるひな形ではなく自社の運用に照らして読むことが重要です。

規約で明確にすべき事項理由
会員資格従業員、子会社従業員、執行役員、役員を混在させるかで法務・税務・労務が変わります。
拠出金の性質給与天引き後の金銭が、会員の出資か、預り金か、貸付金かを曖昧にしないためです。
株式の名義と実質帰属株主名簿上の名義、議決権行使、配当配分、相続時処理に影響します。
入会・退会・休止任意加入性、退職時の処理、休職時の扱いを明確にします。
退会時の買取価格紛争の頻出論点であり、曖昧な文言は後日の訴訟リスクになります。
議決権行使方法理事長一任か、会員指図を反映するかでガバナンス上の意味が変わります。
配当・株式分割・合併等の処理非上場会社でも資本取引や組織再編は起こり得ます。
M&A・IPO時の処理売却義務、ロックアップ、証券会社移管、制度転換を事前に想定できます。

実務上、従業員持株会は法人格のある会社や社団法人ではなく、民法上の組合として設計されることが多い構成です。この場合、外形的には理事長名義で株式を保有し、経済的には各会員の拠出割合に応じた持分として管理するため、名義と実質帰属を分けて記録する必要があります。

Section 02

非上場会社の持株会が上場会社と違う3つの留意点

流動性、株価の客観性、従業員保護と支配権維持の緊張関係が、制度設計の重さを左右します。

上場会社株式であれば市場価格があり、一定の手続で売却できます。非上場会社株式には通常そのような市場がないため、株式を取得した従業員が退職したとき、誰に、いくらで、どの原資で売却するのかが直ちに問題になります。

次の3つの項目は、上場会社型の発想をそのまま使うと見落としやすい違いを示しています。非上場会社では、投資機会よりも出口と株主管理の設計が重くなるため、それぞれの違いから発生するリスクを読み取ることが重要です。

流動性

市場売却ができない

退職者が株式を持ち続ける、相続人が株主になる、第三者への譲渡承認請求が出るといった問題が生じ得ます。

評価

市場価格がない

取得価格、退会時価格、税務評価、会計評価、M&A価格、裁判所が決める価格は一致するとは限りません。

公平性

支配権維持と従業員保護が衝突する

会社側の都合だけで取得価格、退会価格、譲渡制限、議決権行使を設計すると、財産権や契約上の公平性と衝突します。

非上場株式には市場価格がないため、税務評価をそのまま万能の時価として扱うことも危険です。国税庁の取引相場のない株式評価は相続税・贈与税の場面で重要ですが、退会時価格として常に契約上・労務上・会計上妥当とは限りません。

注意持株会を、友好的株主の形成や株式流出防止だけを目的に運用すると、従業員の財産形成制度としての説明と矛盾しやすくなります。任意加入、価格算定、議決権、退職時精算を同時に整える必要があります。
Section 03

非上場会社で持株会を作る前に見る会社法上の留意点

定款、譲渡制限、株式供給方法、自己株式取得、株主名簿の整備が土台になります。

一般用語としての非上場会社と、会社法上の公開会社は同じ概念ではありません。非上場会社であっても、発行する株式の全部または一部について譲渡制限がなければ、会社法上は公開会社に当たる可能性があります。

次の定款確認一覧は、持株会導入前に見るべき項目と確認理由を整理したものです。退職者・相続人・第三者への株式流出を防げるかは定款の内容に左右されるため、各列から自社の手続上の弱点を読み取ることが重要です。

定款確認項目確認理由
全株式に譲渡制限があるか退職者・相続人・第三者への流出防止に直結します。
譲渡承認機関は誰か株主総会、取締役会、代表取締役等により実務手続が変わります。
相続人等への売渡請求規定があるか従業員死亡時・相続時の株式流出防止に影響します。
種類株式の有無議決権制限株式を持株会に持たせるかなどの設計に影響します。
発行可能株式総数新株発行による供給余地に影響します。
株券発行会社か否か株券管理・紛失・名義書換の実務に影響します。
取締役会設置会社か否か募集株式発行、譲渡承認、自己株式取得の決裁に影響します。

次の比較表は、持株会が株式を取得する3つの供給方法を整理したものです。既存株主の希薄化、譲渡承認、価格の公正性、税務関係が方式ごとに異なるため、単に実行しやすい方法ではなく、将来の説明可能性を読み取る必要があります。

供給方法内容主な会社法・実務上の論点
新株発行会社が新たに株式を発行し、持株会または理事長に割り当てる方法です。募集株式発行手続、既存株主の希薄化、発行価格の公正性を確認します。
自己株式処分会社が保有する自己株式を持株会へ処分する方法です。募集株式発行に近い手続、処分価格、会計処理を確認します。
既存株主からの譲渡オーナー株主等が持株会へ株式を譲渡する方法です。譲渡承認、譲渡価格、贈与・譲渡所得、支配権移転を確認します。

退職者から会社が株式を買い取る設計は分かりやすく見えますが、自己株式取得には会社法上の手続と財源規制があります。次の判断の流れは、株式回収の受け皿を複数用意する考え方を示しており、会社が常に買い取れるわけではない点を読み取ることが重要です。

退職者株式の受け皿を確認する順番

持株会が買い取る

まず規約上の通常ルートで対応します。

持株会の資金を確認する

不足する場合は追加拠出や次回拠出で調整できるか検討します。

会社による取得が可能か

会社法上の自己株式取得手続と分配可能額を確認します。

困難
指定買取人を検討

創業株主、資産管理会社、既存株主などを受け皿にします。

可能
価格と支払時期を明確化

端数処理と税務処理まで文書化します。

株主名簿管理が不十分な会社では、持株会導入前に過去の株式譲渡、相続、増資、株券発行の有無を確認する必要があります。理事長名義で保有する場合は、株主名簿上の株主、実質会員持分、議決権行使者、配当受領者を分けて整理します。

Section 04

非上場会社の持株会でも金商法・開示規制を確認する留意点

非上場だから無関係とはいえず、勧誘人数、金額、私募、説明資料、未公表情報管理を確認します。

株式は金融商品取引法上の有価証券であり、非上場会社が従業員に株式取得を勧誘する場合でも、勧誘人数、発行価額、売出価額、取得者数、過去の勧誘との通算、自己株式処分か新株発行かによって開示規制が問題になります。

次の確認一覧は、金商法・開示規制の入口で見るべき項目を整理したものです。50名以上への勧誘、1億円以上の募集・売出し、2026年4月提出法案における5億円基準への見直しなど、時期により確認が必要な数値があるため、対象人数と金額の列を特に読む必要があります。

検討項目実務上の確認
勧誘対象者数50名以上に取得勧誘・売付け勧誘を行うか、過去3か月通算を含めて確認します。
発行・売出価額有価証券通知書または届出書の金額基準に該当するか、過去1年通算を含めて確認します。
供給方法新株発行、自己株式処分、既存株主売却のどれかを分け、自己株式処分は募集側で検討します。
私募該当性少人数私募等の要件、転売制限、告知事項の要否を確認します。
説明資料投資リスク、換金制限、価格算定、退会時処理を十分に記載しているか確認します。
外部関与証券会社、コンサル、株式仲介業者が勧誘・媒介を行う場合、登録規制との関係を確認します。

次の注意要素の一覧は、通常の福利厚生制度を超えて、投資スキームや不公正な勧誘と見られやすい設計をまとめたものです。自社株式を継続的に取得する制度として説明できるかを確認するために重要で、裁量運用や過度な期待表示を避けるべき点を読み取れます。

自社株以外を運用対象に含める

持株会の目的が従業員による自社株取得から離れ、別の投資運用に見えやすくなります。

事務局が裁量的に売買時期を決める

会員の個別投資判断や裁量運用との関係が問題になり得ます。

外部者を広く参加させる

従業員福利厚生としての説明が弱まり、勧誘・媒介の確認範囲が広がります。

元本保証や利回り保証に近い説明をする

投資リスクを軽く見せる説明は、契約法・労務・金商法上のリスクになります。

未公表のM&A・IPO情報を背景に勧誘する

情報格差を利用した不公正な加入勧誘と評価されるおそれがあります。

登録のない外部業者が勧誘する

非上場株式の勧誘・媒介に関する登録規制との関係を確認する必要があります。

未公表情報の管理では、加入受付期間、価格決定日、重要情報の確認、説明資料の統一、記録保存を制度に組み込みます。次の比較表は管理項目と内容を並べたもので、加入や拠出変更のタイミングが会社の重要情報と重ならないようにするための実務を読み取ることが重要です。

管理項目内容
加入受付期間年1回または半期1回など、あらかじめ固定します。
価格決定日決算承認後、第三者評価後など客観的時点に固定します。
未公表重要情報の確認M&A、資金調達、業績急変、IPO申請、重要訴訟等を把握した役職員の加入・拠出変更を制限します。
説明資料の統一口頭説明のばらつきや過度な期待表現を防ぎます。
記録保存勧誘対象者、説明資料、同意書、質疑応答を保存します。
Section 05

非上場会社の持株会規約で最重要となる出口・買取価格の留意点

文書セット、任意加入、退職時の株式回収、価格算定を同じ制度文書の中で整えます。

持株会規約は制度の中核です。非上場会社では市場売却という出口がないため、上場会社向けの規約ひな形をそのまま流用すると、退会時処理、買取価格、株主名簿名義、相続時対応、M&A時対応が不足することがあります。

次の文書一覧は、持株会を運用するために必要となりやすい文書セットを整理したものです。各文書は役割が異なり、規約だけでは給与控除、株式譲渡、事務委託、評価ルールを十分に処理できないため、文書ごとの守備範囲を読み取ることが重要です。

文書主な内容
持株会設立契約書会員が組合を設立する根拠、目的、出資、組合財産を定めます。
持株会規約会員資格、拠出、株式取得、退会、配当、議決権、価格算定を定めます。
運営細則事務手続、申込書、変更届、休止届、端数処理、事務局権限を定めます。
入会申込書・同意書投資リスク、換金制限、退会時売渡義務、個人情報利用への同意を記録します。
株式譲渡制限契約退職時・退会時・資格喪失時の売渡義務、価格、支払期日を定めます。
会社・持株会間契約事務委託、奨励金、情報提供、個人情報、費用負担を整理します。
労使協定・給与控除同意給与天引きを行う場合の労働基準法対応を整えます。
株式評価ルール算定方式、基準日、第三者評価、改定手続、例外事由を定めます。

入会時には、非上場株式で自由に売却できないこと、元本保証ではないこと、配当が常に行われるとは限らないこと、業績悪化・倒産・M&A・IPO延期のリスクがあることを平易に説明し、記録化します。退職時・退会時には規約所定の価格で売却する義務があることも、個別同意で確認する必要があります。

次の比較表は、退職者を株主として残した場合に発生し得る問題をまとめたものです。非上場会社では株主が増えるほど総会運営、情報管理、相続、M&Aの手続負担が大きくなるため、株式回収条項の必要性を読み取ることが重要です。

問題内容
株主総会運営招集通知、議決権、委任状取得、所在不明株主対応が増えます。
情報管理退職者や相続人に計算書類等を提供する場面が生じます。
敵対化退職トラブルや解雇紛争と株主権行使が結びつくことがあります。
相続相続人が多数に分散し、株主管理が困難になります。
M&A全株主の同意・売却手続に時間がかかります。
価格紛争譲渡承認請求や価格決定手続をめぐる争いに進む可能性があります。

次の価格方式の比較表は、退会時買取価格の主な定め方を、長所と短所に分けて整理したものです。価格方式は従業員の納得感と会社の資金繰りを同時に左右するため、どの方式が低くなりやすく、どの方式が運用コストを生むかを読み取ることが重要です。

方式内容長所短所
取得価額固定方式会員が取得した価格で買い戻します。予測可能性が高く、資金計画を立てやすいです。会社価値上昇時に従業員の不満が大きくなり得ます。
額面・発行価額方式歴史的な額面または発行価額で買い戻します。古い制度では単純です。現在は額面株式制度がなく、説明が難しい場合があります。
配当還元方式配当を基礎に少数株主価値を算定します。税務評価と親和性があります。無配会社や成長会社では低額になりやすいです。
純資産価額方式会社の純資産を基礎に算定します。資産会社では説明しやすいです。収益力や将来価値を反映しにくいです。
類似業種比準方式類似業種の株価等を基礎に算定します。税務上の評価と親和性があります。小規模会社や特殊会社では適用に注意が必要です。
DCF・第三者評価方式将来キャッシュフロー等を評価します。M&A・投資家評価に近いです。コストが高く、毎年実施しにくいです。
折衷方式取得価額、配当還元、純資産、第三者評価を組み合わせます。バランスを取りやすいです。算式が複雑になりやすいです。

最高裁判例には、退職時・売却時に持株を一定額で譲渡させる合意の有効性を認めた事例があります。ただし、どのような低額買取条項でも常に有効になるわけではありません。制度目的、加入時説明、取得価格、配当実績、奨励金、任意加入性、価格算定の明確性、情報格差を総合的に見て、不当な拘束や著しい不利益と評価されない設計が必要です。

条項設計「適正価格」「時価」「会社が合理的に定める価格」といった曖昧な文言は避け、基準日、算式、評価資料、端数処理、支払期限、異議申立方法を定めることが実務上重要です。
Section 06

非上場会社の持株会で税務・労務・非上場株式評価を整える留意点

評価目的を分け、給与天引き、奨励金、低廉取得、配当、退会時譲渡を個別に確認します。

非上場株式の評価は、目的ごとに異なります。税務評価、規約上の退会時価格、M&A価格、会社法上の売買価格を混同すると、従業員説明、税務処理、紛争対応で説明が難しくなります。

次の比較表は、評価目的ごとに典型的な評価方法と注意点を並べたものです。どの評価が税務目的で、どの評価が契約上の精算目的なのかを分けて読むことで、退会時価格の説明可能性を高められます。

評価目的典型的な評価方法注意点
入会時取得価格第三者評価、純資産、配当還元、直近増資価格従業員に経済的利益を与える場合は給与課税等に注意します。
退会時買取価格規約上の算式、取得価額固定、配当還元契約上の明確性と公平性が重要です。
相続・贈与税評価国税庁の取引相場のない株式評価税務目的の評価であり、契約上の公正価格とは限りません。
会社法上の売買価格協議または裁判所決定規約価格と異なる可能性があります。
M&A価格買収者との交渉価格、DCF、EBITDA倍率等少数株主にも同条件を及ぼすかが問題になります。
IPO時評価証券会社・市場・上場審査による評価上場前の価格と上場時公募価格は異なり得ます。

取得価額固定方式は管理しやすい一方、会社価値が大きく上昇した場合に従業員が値上がり益を得られない設計になりやすい方式です。採用する場合は、値上がり益を得る制度ではないこと、退職時に同額で売り渡す義務があること、M&A売却時に別処理を置くかを明確に説明します。

給与から持株会拠出金を天引きする場合は、労働基準法24条の賃金全額払い原則との関係で、労使協定と本人同意が必要になります。労使協定だけでは足りず、入会申込、拠出額指定、給与控除への同意、変更・停止手続を整える必要があります。

次の運用一覧は、加入の任意性を確保するための実務を整理したものです。上司からの強い勧誘や未加入者の不利益取扱いを避けるために重要で、説明会、申込期間、同意書、休止・退会手続を読み取る必要があります。

項目推奨運用
説明会人事評価者だけでなく、法務・経理・外部専門家が説明します。
申込期間十分な検討期間を設けます。
同意書リスク説明を読んだことを個別確認します。
取消し・休止一定期間内の撤回、休職時の休止、退会手続を整えます。
未加入者不利益取扱いをしない旨を明記します。
若年社員投資経験が乏しいことを前提に、平易な資料を用意します。

会社が拠出額の5%、10%、20%などの奨励金を支給することがあります。奨励金は従業員に対する経済的利益であり、税務上は給与所得として扱われるのが基本です。給与計算、源泉徴収、年末調整、社会保険・労働保険上の報酬該当性について事前確認が必要です。

次の税務一覧は、従業員側と会社側で生じ得る課税・会計論点を分けて整理したものです。誰にどの税務が生じるかを誤ると、源泉徴収、給与処理、譲渡所得、みなし配当の処理に影響するため、場面ごとの区別を読み取ることが重要です。

場面・支出主な税務・処理
奨励金の受領原則として給与所得課税を検討します。
配当の受領配当所得課税を検討します。
株式の低廉取得時価との差額が給与所得・一時所得・贈与等となる可能性があります。
退会時売却譲渡所得課税を検討します。
相続持分または株式の相続税評価を確認します。
会社の奨励金支出損金性、給与課税、源泉徴収、社会保険を確認します。
自己株式取得資本等取引、みなし配当、源泉、分配可能額を確認します。
オーナー株主との譲渡譲渡所得、同族会社税制、行為計算否認リスクを確認します。

民法組合型の持株会では、組合自体が課税主体となるのか、会員にパススルーされるのか、配当・譲渡損益をどのように会員へ帰属させるのかを整理します。会員別持分台帳、拠出金台帳、配当金台帳、退会精算台帳を整備し、監査可能な証跡を残すことが重要です。

Section 07

非上場会社の持株会で会計・内部統制・ガバナンスを固める留意点

資金と株式は従業員の財産に関わるため、事務局任せにせず統制と利益相反管理を置きます。

持株会制度では、新株発行または自己株式処分による資本取引、奨励金の費用処理、会社が負担する事務委託料、役員持株会の場合の役員報酬該当性、株式報酬に近い設計をした場合の費用認識など、会計上も複数の取引が発生します。

次の内部統制一覧は、持株会の資金・株式・会員持分を安全に管理するための統制を整理したものです。非上場会社でも会員財産を扱う点は変わらないため、申込受付から退会精算までの分担と承認を読み取ることが重要です。

統制内容
職務分掌申込受付、給与控除、入金確認、株式取得、台帳更新、退会精算を分けます。
承認拠出額変更、退会精算、価格算定、配当配分に承認手続を設けます。
残高照合持株会口座、株式数、会員別持分を定期照合します。
証跡保存申込書、同意書、計算書、決議書、評価資料を保存します。
監査監査役、内部監査、外部会計士による確認を行います。
不正防止理事長・事務局による単独出金や恣意的配分を防ぎます。

IPO準備会社では、持株会台帳が上場審査、証券会社審査、監査法人レビューの対象となる可能性があります。早期から統制を整えることが、後日の手戻りを防ぎます。

次の利益相反一覧は、会社、オーナー株主、役員、従業員株主の利害がずれやすい場面を整理したものです。どの場面で誰の利益が対立するかを把握することで、外部評価、会員説明、議事録、監査役確認の必要性を読み取れます。

場面利益相反の内容
オーナー株主から持株会への譲渡オーナーは高く売りたい一方、従業員は安く買いたい関係になります。
退職者株式の買取退職者は高く売りたい一方、会社・持株会は安く買いたい関係になります。
M&A売却経営陣は取引を進めたい一方、従業員株主は条件を知りたい関係になります。
議決権行使経営陣の議案に対し、会員の意思が反映されるかが問題になります。
規約変更会社に有利な変更が既存会員に不利益を与えることがあります。
役員持株会役員報酬、インセンティブ、利益相反取引が絡みます。

理事長名義で株式を保有する場合、株主総会における議決権をどのように行使するかを規約で定めます。理事長が一括して行使する方式は事務上簡便ですが、会員の意思を無視する仕組みになりやすいため、議案内容の周知、会員指図の反映、不統一行使の取扱いを検討します。

Section 08

非上場会社の持株会をIPO・M&A・事業承継に耐える制度にする留意点

流動性イベント、役員持株会、個人情報管理まで、導入時から将来の処理を組み込みます。

将来IPOを予定している会社では、持株会を早期に整備した方がよい場合があります。一方、雑に作った持株会はIPO準備で大きな障害となります。上場後は市場購入、インサイダー取引規制、役職員売買ルール、証券会社事務委託が中心になるため、非上場時代の退会時買取・価格固定ルールをどう終了または変更するかも検討します。

次の確認一覧は、IPO準備で持株会について確認されやすい項目を整理したものです。株主名簿、反社会的勢力確認、過去の株式移動、規約の有効性、インサイダー管理の列から、審査前に整えるべき証跡を読み取ることが重要です。

IPO準備上の確認事項内容
株主名簿の正確性持株会名義、理事長名義、実質会員の整合性を確認します。
反社会的勢力チェック会員、理事長、譲渡人、関係者を確認します。
過去の株式移動低廉譲渡、有利発行、贈与、名義株の有無を確認します。
規約の有効性退会時売渡義務、価格、議決権、規約変更を確認します。
インサイダー管理上場準備段階から情報管理を整えます。
証券会社対応上場後持株会への移管、売買ルール、奨励金を確認します。
ストックオプションとの関係インセンティブ制度の重複・整合性を確認します。

M&Aでは、買主が全株式取得を希望することが多く、持株会会員や退職者が多数いると、株式譲渡契約、同意取得、本人確認、税務書類、支払手続が煩雑になります。規約に売却協力義務、ドラッグ・アロングに類似する条項、理事長の代理権、会員への分配方法を定めておくと、取引実行可能性が高まります。

事業承継目的で使う場合、持株会が実質的にオーナーの相続税対策だけを目的とし、従業員の投資実態や経済的利益が乏しい設計は税務・民事の両面で問題になり得ます。後継者、資産管理会社、種類株式、属人的株式、相続人等への売渡請求、遺言、株主間契約と一体で検討します。

次の比較表は、役員持株会を従業員持株会と混在させた場合に生じやすい問題を整理したものです。役員は未公表情報や報酬規制に近い立場にあるため、従業員福利厚生と経営者インセンティブを分けて読むことが重要です。

問題内容
情報格差役員は未公表情報を知っている可能性が高くなります。
報酬規制役員への経済的利益が役員報酬に該当し得ます。
利益相反役員が価格・規約・買取条件を決定する立場にあります。
税務役員給与、事前確定届出給与、損金不算入等の問題があります。
ガバナンス従業員福利厚生と経営者インセンティブが混在します。

持株会は、会員の氏名、住所、社員番号、所属、給与控除額、拠出額、持分、配当、退会理由、銀行口座、税務情報を扱います。会社が事務局を担う場合、個人情報保護法上の利用目的、第三者提供、委託先管理、安全管理措置を整え、マイナンバーが必要な場面では番号法上の管理を通常の会員台帳と分ける必要があります。

Section 09

非上場会社で持株会を導入する実務手順とチェックリスト

目的整理から年次見直しまで、制度文書と専門家レビューを段階的に進めます。

非上場会社で持株会を作る場合、目的整理、現状調査、法規制判定、価格設計、文書作成、社内決裁、説明・募集、株式取得、運用、年次見直しの順に進めるのが標準的です。

次の時系列は、導入プロセスを10段階で整理したものです。順番が前後すると定款・株主名簿・金商法・価格設計の手戻りが起きやすいため、各段階の作業と関与専門家を読み取ることが重要です。

1. 目的整理

制度目的を決める

福利厚生、資本政策、IPO、事業承継の優先順位を、経営陣、法務、税務顧問で確認します。

2. 現状調査

定款・株主名簿・過去増資を確認

株券、過去の株式移動、従業員数、株式評価を、弁護士、司法書士、会計士と確認します。

3. 法規制判定

会社法・金商法・労務・税務を見る

弁護士、社労士、税理士が、開示規制、給与控除、課税関係を整理します。

4. 価格設計

入会価格・退会価格を決める

M&A時価格、評価基準日、例外事由を、税理士、会計士、株価算定機関と設計します。

5. 文書作成

規約・契約・同意書を整える

説明資料、労使協定、株式譲渡制限契約を弁護士・社労士と作成します。

6. 社内決裁

取締役会・株主総会を実施

募集株式発行、自己株式処分、譲渡承認などの決裁を法務・司法書士と進めます。

7. 説明・募集

説明会と同意取得を実施

人事、法務、外部専門家が質疑応答を行い、申込受付と同意取得を記録します。

8. 株式取得

払込・譲渡承認・台帳作成

経理、司法書士、事務局が、株主名簿記載と会員別台帳を整えます。

9. 運用

給与控除・配当・退会精算

人事、経理、内部監査が、持分管理と監査証跡を残します。

10. 年次見直し

価格・規約・法改正対応

全専門家で、価格改定、規約改定、会員説明、法改正対応を行います。

次のチェックリストは、導入前に未確認のまま残してはいけない項目を一覧化したものです。定款・株主名簿から給与天引き、M&A・IPO時処理、外部専門家レビューまで、未確認の項目が制度リスクになるため、確認欄を順に読み取ることが重要です。

チェック項目確認
定款上、全株式に譲渡制限がある
譲渡承認機関が明確である
株主名簿が最新である
過去の名義株・未承認譲渡がない
持株会の目的が文書化されている
株式供給方法が決まっている
新株発行・自己株処分・既存株主譲渡の手続が確認済み
金商法上の勧誘人数・金額基準を確認した
有価証券通知書・届出書・私募要件を確認した
給与天引きの労使協定と本人同意を整備した
奨励金の給与課税・社会保険処理を確認した
入会時価格・退会時価格の算式が明確である
退職時の株式買取資金の手当てがある
M&A・IPO時の処理が規約にある
会員説明資料に投資リスクが記載されている
役員持株会を従業員持株会と区別している
会員別台帳・口座・出金統制が整備されている
外部専門家レビューを受けている

次の専門家一覧は、非上場会社の持株会で関与しやすい担当者と役割を整理したものです。単一専門家だけでは会社法、金商法、税務、労務、会計、IPO対応を網羅しにくいため、誰がどの領域を担当するかを読み取ることが重要です。

弁護士・企業内法務

会社法、金商法、契約、規約、利益相反、紛争予防を担当します。

規約金商法

税理士・公認会計士

非上場株式評価、奨励金課税、譲渡所得、会計処理、内部統制、IPO準備を担当します。

評価会計

社会保険労務士・人事

給与控除、労使協定、社会保険、従業員説明、休職・退職時処理を担当します。

労使協定同意

経理・内部監査・コンプライアンス

拠出金管理、台帳照合、不正防止、個人情報、反社チェック、証跡保存を担当します。

台帳監査
Section 10

非上場会社の持株会で起きやすい失敗例と条項設計の留意点

曖昧な買取条項、金商法の見落とし、奨励金処理の誤解、IPO・M&A条項の欠落を避けます。

よくある失敗は、制度の目的や出口を詰める前に規約だけを作ることです。退職時の株式回収、買取価格、金商法、奨励金、株主名簿、流動性イベントの扱いを曖昧にすると、制度導入後に株主・従業員・税務・審査の問題として戻ってきます。

次の失敗例の一覧は、非上場会社の持株会で特に多い落とし穴を整理したものです。どの失敗も、条項の一文ではなく、手続、価格、説明、証跡の不足から生じるため、自社の規約・説明資料の弱点を読み取ることが重要です。

会社が買い取るとだけ書く

自己株式取得には会社法上の手続と財源規制があるため、持株会、指定買取人、既存株主、会社の順序を定めます。

買取価格を時価とだけ書く

非上場株式の時価は一義的ではないため、基準日、算式、資料、例外、支払時期を明記します。

上場益を期待させる

退職時は取得価額で売却させる制度と、将来の値上がりを強調する説明は矛盾しやすくなります。

金商法の人数・金額基準を見落とす

従業員向けであっても、50名以上への勧誘、金額基準、通算規定、自己株式処分を確認します。

奨励金を非課税福利厚生と誤解する

奨励金は給与課税の対象となるのが基本であり、給与明細、源泉徴収、社会保険、会計処理を整えます。

株主名簿が古いまま進める

過去の株式譲渡や相続を整理しないまま導入すると、真正な株主の確認が困難になります。

IPO・M&A条項がない

会員の同意取得、売却代金分配、ロックアップ、税務通知で混乱しやすくなります。

条項例を考える際は、そのまま使える完成条項としてではなく、自社の定款、株主構成、株式評価、労務運用、将来イベントに合わせて修正する素材として扱います。会員資格、退会事由、売渡義務、価格算定、議決権の各条項について、対象者、例外、通知、支払、異議申立を具体化する必要があります。

会員資格

会員は、会社に雇用される正社員のうち、規約に同意し、入会申込書を提出した者とする考え方が基本になります。契約社員、パートタイマー、子会社従業員、執行役員を含める場合は、理事会等が別途定める基準により会員資格を認める設計が考えられます。

退会事由

退職、死亡、懲戒解雇、休職期間満了、会社外への転籍、会員資格喪失、本人の退会申出などを定めます。懲戒解雇時だけ不利な価格にするなど制裁的な設計は、労働紛争が株式紛争に発展しやすいため慎重な検討が必要です。

売渡義務

会員が退会した場合、当該会員は持株会持分および対応する株式について、持株会または持株会が指定する者に売り渡すという構造が考えられます。会社が買主になる場合は、自己株式取得手続と財源規制に従う旨を入れる必要があります。

価格算定

退会時売渡価格は、別紙の株式評価規程に定める算式、算定基準日、基礎資料、重大事由がある場合の補正、外部専門家の関与、通知方法を具体化します。会社の一方的裁量が広すぎると紛争になりやすいため、補正事由を限定し、会員への通知を義務付けることが望ましい設計です。

議決権

持株会名義または理事長名義で保有する株式に係る議決権は理事長が行使しつつ、会員が自己の持分に対応する議決権について賛否の指図を行える設計が考えられます。指図がない場合の扱いも運営細則で明確にします。

FAQ

非上場会社の持株会でよくある質問

制度設計で迷いやすい論点を、一般的な情報として整理します。

非上場会社でも従業員持株会を作れますか

一般的には、非上場会社でも従業員持株会を設計することはあります。ただし、定款上の譲渡制限、株主名簿、株式供給方法、金商法上の勧誘規制、給与控除、税務処理、退会時の株式回収によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

退職者には必ず取得価額で売ってもらえますか

一般的には、退会時の売渡義務や価格算定を規約・契約で定める設計があります。ただし、制度目的、加入時説明、取得価格、配当実績、任意加入性、価格算定の明確性などによって評価が変わる可能性があります。具体的な有効性や条項内容は、個別事情を踏まえて弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

給与天引きは労使協定があれば十分ですか

一般的には、法令で認められる控除以外を賃金から控除するには労使協定が必要とされています。ただし、持株会は投資性のある制度であり、本人の入会申込、拠出額指定、給与控除同意、変更・停止手続の有無によって労務リスクが変わる可能性があります。具体的な運用は、社労士や弁護士等へ相談する必要があります。

奨励金は福利厚生として非課税にできますか

一般的には、持株会の奨励金は従業員に対する経済的利益として給与所得課税の検討対象になるとされています。ただし、支給方法、対象者、金額、会計処理、社会保険・労働保険上の報酬該当性によって整理が変わる可能性があります。具体的な税務・労務処理は、税理士や社労士等へ相談する必要があります。

IPOやM&Aを予定していなければ条項は不要ですか

一般的には、現時点で予定が明確でなくても、IPO・M&A・事業承継時の処理を規約に置いておくことが望ましいとされています。ただし、会社の資本政策、株主構成、会員数、将来計画によって必要な条項は変わる可能性があります。具体的な規約設計は、会社資料を踏まえて弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Section 11

非上場会社で持株会を作る場合の留意点まとめ

制度を作ることより、運用可能な出口・価格・説明・手続まで組み込むことが重要です。

非上場会社で持株会を作る場合の留意点は、次の十項目に集約できます。各項目は単独ではなく、会社法、金商法、税務、労務、会計、ガバナンス、IPO・M&Aが相互に影響するため、全体のつながりを読み取ることが重要です。

01

目的を明確にする

福利厚生、資本政策、事業承継、IPO準備、M&A対応のどれを重視するかを決めます。

02

定款と株主名簿を整備する

譲渡制限、相続人売渡請求、株主名簿、過去の株式移動を確認します。

03

株式供給方法を選ぶ

新株発行、自己株式処分、既存株主譲渡の法務・税務・会計を比較します。

04

金商法を確認する

勧誘人数、金額、通算、私募、通知書・届出書の要否を確認します。

05

任意加入と説明を徹底する

投資リスク、換金制限、退会時売渡義務を平易に説明し、同意を記録します。

06

退会時の株式回収を設計する

退職者、死亡、相続、資格喪失、M&A、IPOの処理を規約に入れます。

07

買取価格を明確にする

「時価」「適正価格」ではなく、基準日、算式、資料、例外、支払時期を定めます。

08

税務を軽視しない

奨励金、低廉譲渡、配当、譲渡所得、相続・贈与、自己株式取得を確認します。

09

給与天引きと奨励金の労務処理を整える

労使協定、本人同意、給与計算、社会保険を確認します。

10

IPO・M&Aに耐える制度にする

名義、台帳、反社チェック、議決権、売却協力、上場後移行を見据えます。

持株会は、従業員のエンゲージメントを高め、安定株主を形成し、事業承継やIPO準備にも資する制度になり得ます。しかし、非上場株式は流動性が乏しく、評価が難しく、退職者・相続人・少数株主との紛争を生みやすい性質があります。

結論非上場会社で持株会を作る場合は、制度を作ること自体ではなく、出口、価格、説明、手続、将来イベントまで含めて運用可能にすることが中心課題です。
Reference

この記事の参考情報源

公的資料・業界ガイドライン・判例情報を中心に確認しています。

公的資料・法令

  • e-Gov法令検索「会社法」
  • e-Gov法令検索「民法」第667条
  • e-Gov法令検索「労働基準法」
  • 和歌山労働局「賃金の支払い」
  • 国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」
  • 財務省関東財務局「企業内容等開示制度の概要」
  • 金融庁「第221回国会における金融庁関連法律案」
  • 内閣法制局「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」

ガイドライン・税務資料・研究資料

  • 日本証券業協会「持株制度に関するガイドライン」
  • 国税庁「従業員持株会の課税関係に関する一考察」
  • 国税庁文書回答事例「従業員持株会を利用した信託型インセンティブプランに係る税務上の取扱い」
  • 琉大法学「非公開会社の従業員持株制度における株式譲渡制限契約に関する若干の考察」

判例情報

  • 最高裁平成21年2月17日判決
  • 最高裁平成7年4月25日判決
  • 持株会の退会時価格・株式譲渡制限に関する判例評釈