検収後バグ追完条項と保守契約の切り分け
契約不適合の是正と、通常保守・改修・機能追加を混同しないための整理です。
9.1 契約不適合の追完と保守は目的が異なる
契約不適合の追完は、納入時点で契約内容に適合していなかった成果物を、契約内容に適合させるための救済である。これに対し、保守は、検収後の運用を継続するためのサービスであり、問い合わせ対応、障害受付、監視、軽微修正、環境変更対応、法令改正対応、セキュリティパッチ、SLA対応などを含む。
両者は重なることもあるが、法的性質と費用負担が異なる。契約不適合の追完は、原則として乙の責任範囲であれば無償である。他方、保守は通常、月額費用または作業費用により提供される。
9.2 保守契約に含めるべき事項
検収後のバグ・ミス対応を実効化するには、保守契約に次の事項を定めるとよい。
次の比較表は、検収後バグ追完条項と保守契約の切り分けで確認すべき項目を項目、内容の列で整理したものです。契約レビューで重要なのは、各列の違いから責任範囲、手続、期限、費用負担のどこを条文に落とすべきかを読み取ることです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受付窓口 | 問い合わせ・障害受付の方法、時間帯 |
| 重大度分類 | 緊急、重大、通常、軽微など |
| 初動時間 | 受付から一次回答までの時間 |
| 復旧目標 | 暫定復旧、恒久対応の目標 |
| 原因調査 | 調査範囲、ログ提供、費用負担 |
| 契約不適合との関係 | 乙起因の不適合は無償、対象外は有償など |
| 法令改正対応 | 標準対応か個別見積か |
| 外部環境変更 | OS、ブラウザ、SaaS、API変更の扱い |
| セキュリティ | 脆弱性情報、パッチ、緊急対応 |
| データ復旧 | バックアップ、復旧責任、費用 |
| SLA | 稼働率、応答時間、免責、サービスクレジット |
保守契約がない場合、検収後の不具合対応は、契約不適合か有償改修かの二択になりやすく、現場対応が硬直化する。中長期運用を前提とするシステムでは、検収後条項と保守契約をセットで設計すべきである。
9.3 「無償保証期間」という言葉の危険性
実務では、「検収後1年間は無償保証」といった表現が使われることがある。しかし、「保証」という言葉は曖昧である。保証期間中であれば、どのような障害でも無償対応なのか、契約不適合に限るのか、甲の操作ミスや環境変更も含むのかが不明確になりやすい。
そのため、契約書では「無償保証期間」ではなく、次のように分解して定めるのが望ましい。
- 契約不適合に係る無償追完期間
- 保守サービスの提供期間
- 一次調査の無償範囲
- 甲起因・外部起因の場合の有償対応
- 緊急対応の費用精算
- 法令改正・環境変更対応の扱い