2σ Guide

高プロ制度の
対象業務と年収要件

高度プロフェッショナル制度を導入する前に、対象業務5類型、年収1,075万円以上、職務明確性、本人同意、健康確保措置を一体で確認するための実務整理です。

5類型 対象業務
1,075万円 年収要件
104日 年間休日
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高プロ制度の 対象業務と年収要件

年収だけではなく、業務・職務・手続・健康管理を一体で見る制度です。

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高プロ制度の 対象業務と年収要件
年収だけではなく、業務・職務・手続・健康管理を一体で見る制度です。
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  • 高プロ制度の 対象業務と年収要件
  • 年収だけではなく、業務・職務・手続・健康管理を一体で見る制度です。

POINT 1

  • 高プロ制度の対象業務と年収要件の全体像
  • 1. 省令上の5類型に入るか:金融商品開発、資産運用・取引、アナリスト、コンサルタント、研究開発のいずれかを確認します。
  • 2. 個々の職務が明確か:業務内容、責任の程度、求められる成果水準を文書で特定します。
  • 3. 年収1,075万円以上を確実に満たすか:変動賞与の不確実な部分を除き、契約上確実に支払われる賃金で計算します。
  • 4. 手続と健康確保を運用できるか:労使委員会、本人同意、健康管理時間、休日、報告、記録保存を継続できる体制を確認します。

POINT 2

  • 高プロ制度の対象業務は5類型に限られます
  • 部署名では判断しません
  • 研究開発部、投資部、コンサル部という部署名だけでは足りません。
  • 常態的な従事が必要です

POINT 3

  • 高プロ制度の年収要件は1,075万円以上です
  • 確実に支払われる賃金だけで計算し、変動部分を慎重に扱います。
  • 要件を満たし得る設計
  • 想定年収だけでは危険な設計
  • 最低保証を含める設計

POINT 4

  • 職務明確性・労使委員会・本人同意が不可欠です
  • 1. 職務記述書を作成します:業務内容、責任、成果水準、裁量、対象外業務を具体化します。
  • 2. 労使委員会で法定事項を決議します:対象業務、対象者範囲、健康管理時間、休日、選択的措置、撤回、苦情処理などを5分の4以上で決議します。
  • 3. 所轄労働基準監督署へ届け出ます:適正な決議と届出がない場合、制度の法律上の効果が生じないリスクがあります。
  • 4. 本人に説明し、同意を得ます:適用除外の内容、同意期間、賃金額、不同意・撤回時の取扱いを明らかにします。

POINT 5

  • 高プロ制度でも健康管理時間と休日確保は中核です
  • 1. 健康管理時間を客観的に把握します
  • 2. 休日と過大な健康管理時間を確認します:年104日以上、4週間を通じ4日以上の休日に不足がないか、健康管理時間が高止まりしていないかを確認します。
  • 3. 選択的措置と健康・福祉確保措置を発動します:勤務間インターバル、健康管理時間の上限、連続休日、臨時健康診断、医師面接、相談窓口などを決議内容に沿って実施します。
  • 4. 行政報告と労使委員会での共有を行います:健康管理時間、休日、選択的措置、健康・福祉確保措置の実施状況を整理し、報告と見直しに使います。

POINT 6

  • 高プロ制度の実務チェックリストとリスク分析
  • 未払賃金リスク
  • 要件を満たさない場合、時間外労働、休日労働、深夜労働に関する割増賃金が問題になります。
  • 行政対応リスク
  • 届出、記録、周知、報告、賃金支払に不備がある場合、行政指導や是正勧告の対象となり得ます。

POINT 7

  • 高プロ制度の導入前に整える文書と役割分担
  • 文書化と部門連携により、対象業務・年収要件の判断を証跡化します。
  • 文書名だけでなく、どの要件の証跡になるかを読み取ることが重要です。
  • 5類型への該当性、対象外業務との区別、時間裁量の有無を記録します。
  • 業務内容、責任、成果、水準、裁量範囲を具体化し、職務明確性を担保します。

POINT 8

  • 高プロ制度の対象業務と年収要件に関するFAQ
  • 個別事案への断定を避け、一般的な制度説明として整理します。
  • Q1 ― 年収1,075万円以上の法務部員に高プロ制度を適用できますか。
  • Q2 ― ITエンジニアやAIエンジニアは研究開発業務になりますか。
  • Q3 ― 外資系コンサルティング会社のマネージャーは対象になりますか。

まとめ

  • 高プロ制度の 対象業務と年収要件
  • 高プロ制度の対象業務と年収要件の全体像:年収だけではなく、業務・職務・手続・健康管理を一体で見る制度です。
  • 高プロ制度の対象業務は5類型に限られます:部署名や肩書ではなく、個々の職務・裁量・成果との関係で見ます。
  • 高プロ制度の年収要件は1,075万円以上です:確実に支払われる賃金だけで計算し、変動部分を慎重に扱います。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

高プロ制度の対象業務と年収要件の全体像

年収だけではなく、業務・職務・手続・健康管理を一体で見る制度です。

高プロ制度は、法令上限定された高度専門業務に常態として従事し、職務が明確で、確実に支払われる見込みの年間賃金が1,075万円以上である労働者に限って検討できる制度です。年収だけで判断すると、未払割増賃金、行政対応、健康管理、内部統制のリスクが一気に高まります。

最初の結論対象業務、職務明確性、年収要件、労使委員会決議、本人同意、健康確保措置がつながって初めて、高プロ制度の適用可能性を検討できます。

次の一覧は、制度を判断するときの入口、導入手続、運用の3層を表しています。各層がそろっているかを見ることが重要で、どれか一つが弱い場合は制度全体の安定性が下がる点を読み取ります。

入口

対象業務・職務・年収

省令上の5類型に該当し、対象業務に常態として従事し、職務内容と責任が明確で、年間1,075万円以上が確実に見込まれるかを確認します。

手続

労使委員会と本人同意

労使委員会の5分の4以上の決議、労働基準監督署への届出、制度効果を明示した本人同意、職務合意を整えます。

運用

健康管理と記録保存

健康管理時間、年104日以上・4週4日以上の休日、選択的措置、苦情処理、定期報告、記録保存を実際に動かします。

次の判断の流れは、年収の高さに引っ張られず、制度要件を順番に見るためのものです。上から順に確認し、途中で欠ける項目があれば、その時点で設計を見直す必要があると読み取ります。

高プロ制度の入口判断

省令上の5類型に入るか

金融商品開発、資産運用・取引、アナリスト、コンサルタント、研究開発のいずれかを確認します。

個々の職務が明確か

業務内容、責任の程度、求められる成果水準を文書で特定します。

年収1,075万円以上を確実に満たすか

変動賞与の不確実な部分を除き、契約上確実に支払われる賃金で計算します。

手続と健康確保を運用できるか

労使委員会、本人同意、健康管理時間、休日、報告、記録保存を継続できる体制を確認します。

Section 01

高プロ制度の対象業務は5類型に限られます

部署名や肩書ではなく、個々の職務・裁量・成果との関係で見ます。

高プロ制度の対象業務は、省令上の5類型に限定されています。次の一覧は、それぞれの類型で中心となる仕事と、実務で確認すべき境界を示しています。肩書や部署名ではなく、実際の職務と裁量の内容を読み取ることが重要です。

類型1

金融商品の開発

金融工学、統計、数学、経済学などを用いて、新たな金融商品のリスク・収益構造を設計し、モデルやシミュレーションを検証する業務です。

類型2

資産運用・取引

ファンドマネージャー、トレーダー、ディーラーなどが、自らの投資判断に基づいて運用や取引を行う業務です。

類型3

分析評価・投資助言

有価証券市場、企業価値、経済動向などを分析し、その評価に基づいて投資判断に資する助言を行う業務です。

類型4

重要事項のコンサルティング

顧客企業の経営上重要な事項について調査・分析し、事業再編、人事制度改革、海外展開などの考案または助言を行う業務です。

類型5

研究開発

新たな技術、商品、役務を生み出すため、専門的・科学的知識を用いて新たな価値を創出する業務です。

次の表は、各類型で対象になり得る業務と、対象外になりやすい業務を並べたものです。列ごとの違いを見比べることで、単なる企画、補助、販売、保守、定型作業では足りない点を確認できます。

類型対象になり得る実務対象外になりやすい実務
金融商品の開発新興国株式や複雑なデリバティブを組み込む商品の設計、リスクモデル、期待収益、ストレステスト、価格変動シミュレーションです。既存商品の名称変更、販売資料、販売促進、データ入力、定型的な商品登録です。
資産運用・取引投資対象、売買時期、リスク許容度、ヘッジ方針を専門判断で決める運用や自己勘定取引です。顧客注文の取次、上司の指示に従う取引処理、窓口販売、市場時間中の常時待機です。
分析評価・投資助言業界構造、企業価値、財務・非財務情報、規制環境を分析し、投資判断に資するレポートを作成する業務です。データ入力、定型的な市場情報配信、上位者の単純補助、一定時間を設定した相談対応です。
コンサルタント顧客企業の海外展開、事業再編、人事制度改革、業務改革について、調査・分析に基づく戦略案を示す業務です。調査だけ、助言だけ、営業支援、個人顧客向け相談、上席者やシフトに拘束される実行支援です。
研究開発AI、半導体、バイオ、素材、ロボティクス、医療機器、エネルギーなどで新規性ある技術・商品・役務を創出する業務です。既存システムの保守、仕様書どおりの実装、完成品検査、品質管理、実験準備、材料調達です。

次の注意点の一覧は、対象業務の判断で誤りが起きやすい部分を表しています。部署名、肩書、付随業務、時間指示のどこに弱点があるかを読み取ることで、導入前の修正箇所を見つけやすくなります。

部署名では判断しません

研究開発部、投資部、コンサル部という部署名だけでは足りません。個々の労働者が実際に担う業務で判断します。

常態的な従事が必要です

対象業務に付随する情報整理は含まれ得ますが、品質管理、営業支援、社内調整などを日常的に担う場合は慎重な検討が必要です。

具体的な時間指示は危険です

始業・終業時刻、出勤日、会議出席、日々の作業工程を拘束すると、時間裁量が失われるおそれがあります。

次の比較表は、会社の指示が時間裁量を奪うかどうかを判断するためのものです。左列はリスクが高い運用、右列は成果や品質を管理しつつ裁量を残す運用として読み分けます。

確認項目リスクが高い運用比較的許容されやすい運用
出勤日月曜から金曜まで必ず出勤と命じます。休日確保のための予定共有や希望確認をします。
始業・終業9時出社・18時退社を義務付けます。成果物の納期・基本方針を共有します。
会議特定日時の会議出席を一方的に義務付けます。本人の裁量を尊重し、調整可能な会議運営にします。
納期業務量に比べ著しく短い期限を設定します。合理的な成果期限を設定し、遂行方法は本人に委ねます。
日々の作業作業手順・工程を日々指示します。成果水準・品質基準を合意します。
Section 02

高プロ制度の年収要件は1,075万円以上です

確実に支払われる賃金だけで計算し、変動部分を慎重に扱います。

年収要件は1,075万円以上ですが、判断対象は「確実に支払われると見込まれる賃金」です。次の表は賃金項目ごとの基本的な扱いを示しています。不確実な賞与や業績給を過大に入れると、要件充足の根拠が弱くなる点を読み取ります。

賃金項目算入の方向性理由・確認点
基本給原則として算入しやすいです。労働契約上、具体額が定められ、確実に支払われるためです。
固定の職務手当・役割手当具体額が明確なら算入し得ます。支給条件と減額可能性を確認します。
最低保証付き賞与最低保証部分のみ算入し得ます。最低保証の法的拘束力と明確性が重要です。
完全業績連動賞与原則として算入しにくいです。支給額があらかじめ確定していないためです。
変動報酬変動部分は慎重に扱います。成果・業績で額が変わるため、確実性を確認します。
交通費・株式報酬・退職金個別検討が必要です。賃金性、評価額、年間賃金としての確実性を確認します。

次の計算例は、同じ高年収者に見えても、確実に支払われる部分だけで1,075万円に届くかが変わることを表しています。合計額だけでなく、どの項目を入れているかを読み取ることが重要です。

例1

要件を満たし得る設計

基本給75万円×12か月で900万円、固定職務手当10万円×12か月で120万円、最低保証賞与100万円を加えると、合計1,120万円です。

例2

想定年収だけでは危険な設計

基本給85万円×12か月で1,020万円、最低保証のない業績連動賞与300万円は0円として扱う可能性があります。採用資料上は1,320万円でも、要件を満たさない可能性があります。

例3

最低保証を含める設計

基本給82万円×12か月で984万円、業績給の最低保証100万円を加えると1,084万円です。最低保証の明確性と減額可能性を確認します。

次の式は、適用期間が1年未満の場合の年換算方法を示しています。期間中の賃金額だけを見るのではなく、12か月換算で1,075万円以上になるかを確認します。

適用期間中に確実に支払われる賃金 × 12 ÷ 適用月数

たとえば6か月で560万円が確実に支払われる場合、560万円×12÷6で1,120万円となり、年換算で要件を満たし得ます。

次の一覧は、年収要件を確認するときに見落としやすい賃金設計上の論点です。制度適用前後で賃金が減っていないか、変動報酬を過大に入れていないかを読み取ります。

確認項目実務上の見方
確実に支払われる年間賃金労働契約書、給与規程、報酬通知で1,075万円以上を確認します。
変動賞与・業績連動給全額を機械的に算入せず、最低保証部分と変動部分を分けます。
適用前後の賃金比較従前の割増賃金を含め、制度適用による賃金減少がないように設計します。
報酬改定・異動・休職決議期間、同意期間、報酬改定時、異動時に年収要件を再確認します。
Section 03

職務明確性・労使委員会・本人同意が不可欠です

入口要件を、制度手続と本人への説明に接続します。

高プロ制度では、対象業務と年収要件だけでなく、職務の明確化、労使委員会決議、本人同意が制度の骨格になります。次の表は、職務明確性の書面で何を特定するかを表しています。抽象的な職種名ではなく、対象職務とそれ以外の職務を分ける点を読み取ります。

文書化事項記載の方向性
業務の内容新規AI診断支援アルゴリズムの研究開発など、対象業務類型との対応関係を明確にします。
責任の程度研究計画策定、モデル設計、検証責任、成果物レビュー責任などを明示します。
求められる成果技術検証レポート、特許出願候補、プロトタイプ、投資助言レポートなどを明示します。
裁量の範囲働く時間帯、作業方法、分析手法、研究手順などを本人裁量とする範囲を示します。
対象外業務保守、品質検査、営業支援、部下の勤怠管理などを対象職務から除外します。
変更手続職務変更時には再度合意を得ることを定めます。

次の判断の流れは、職務合意から本人同意までの手続を表しています。順番に沿って資料を整えることで、同意の任意性と労使委員会での審議可能性を確保する必要があります。

導入手続の基本順序

職務記述書を作成します

業務内容、責任、成果水準、裁量、対象外業務を具体化します。

労使委員会で法定事項を決議します

対象業務、対象者範囲、健康管理時間、休日、選択的措置、撤回、苦情処理などを5分の4以上で決議します。

所轄労働基準監督署へ届け出ます

適正な決議と届出がない場合、制度の法律上の効果が生じないリスクがあります。

本人に説明し、同意を得ます

適用除外の内容、同意期間、賃金額、不同意・撤回時の取扱いを明らかにします。

次の一覧は、労使委員会で決議する主な事項を表しています。対象業務や対象者だけでなく、健康・苦情・撤回・記録まで同時に設計する必要がある点を読み取ります。

区分決議事項確認ポイント
1対象業務法令上の5類型に該当するかを具体的に示します。
2対象労働者の範囲職務明確性、年収、常態的従事、裁量の有無を確認します。
3健康管理時間客観的方法を原則とし、例外的な自己申告を限定します。
4休日・選択的措置年104日以上・4週4日以上の休日と法定の選択的措置を実施します。
5同意撤回・苦情処理申出先、方法、撤回後の配置・処遇、守秘、記録を定めます。
6不利益取扱い禁止・保存不同意・撤回を理由とする不利益取扱いを禁止し、記録保存と報告を整えます。
Section 04

高プロ制度でも健康管理時間と休日確保は中核です

労働時間規制の適用除外と、健康管理の不要化を混同しないことが重要です。

高プロ制度は通常の労働時間管理と異なりますが、健康管理時間の把握は義務の中心です。次の時系列は、健康確保の運用項目を導入後にどう確認するかを表しています。休日や面接指導が数値管理とつながる点を読み取ります。

日次・週次

健康管理時間を客観的に把握します

タイムカード、PCログ、ICカード、勤怠システムなどを用い、事業場内にいた時間と事業場外で労働した時間を基礎に確認します。

月次

休日と過大な健康管理時間を確認します

年104日以上、4週間を通じ4日以上の休日に不足がないか、健康管理時間が高止まりしていないかを確認します。

随時

選択的措置と健康・福祉確保措置を発動します

勤務間インターバル、健康管理時間の上限、連続休日、臨時健康診断、医師面接、相談窓口などを決議内容に沿って実施します。

6か月以内ごと

行政報告と労使委員会での共有を行います

健康管理時間、休日、選択的措置、健康・福祉確保措置の実施状況を整理し、報告と見直しに使います。

次の表は、健康管理と休日確保で実務上確認すべき項目を示しています。数値そのものだけでなく、客観的な記録方法と不足時の介入があるかを読み取ります。

項目実務上の確認
健康管理時間事業場内にいた時間と事業場外で労働した時間を、客観的方法で把握します。やむを得ない場合の自己申告は例外として扱います。
除外時間休憩時間などを除く場合は、内容・性質を具体化し、客観的方法で特定します。一律差し引きは避けます。
休日確保1年間を通じ104日以上、かつ4週間を通じ4日以上の休日を確保します。年次有給休暇や特別休暇はこの休日に含めません。
選択的措置勤務間インターバルと深夜回数制限、健康管理時間の上限、連続休日、臨時健康診断のいずれかを実施します。
健康・福祉確保措置面接指導、代償休日、相談窓口、配置転換、産業医等による助言指導などを健康管理時間に応じて運用します。
Section 05

高プロ制度の実務チェックリストとリスク分析

導入前後の確認項目を、賃金・行政・健康・内部統制のリスクに接続します。

次のチェックリストは、対象業務、年収要件、手続・運用を導入前に確認するためのものです。各行の「はい」が実質的な根拠資料で説明できるかを読み取ると、制度設計の弱点を見つけやすくなります。

区分チェック項目確認
対象業務省令上の5類型のいずれかに該当しますか。□ はい □ いいえ
対象業務職務記述書で対象業務の具体的範囲を明記していますか。□ はい □ いいえ
対象業務対象労働者が対象業務に常態として従事していますか。□ はい □ いいえ
裁量時間帯・時間配分について本人に広範な裁量がありますか。□ はい □ いいえ
年収確実に支払われる年間賃金が1,075万円以上ですか。□ はい □ いいえ
年収変動賞与・業績連動給を全額算入していませんか。□ はい □ いいえ
手続労使委員会で5分の4以上の決議を行い、届出をしていますか。□ はい □ いいえ
同意本人同意と職務合意を書面または適法な電磁的方法で取得していますか。□ はい □ いいえ
健康健康管理時間、休日、選択的措置、苦情処理、定期報告を実際に運用していますか。□ はい □ いいえ

次の一覧は、制度不備がどのリスクに広がるかを表しています。賃金、行政、健康、ガバナンスのどこで影響が出るかを読み取ることで、法務・人事・監査が見るべき範囲を把握できます。

未払賃金リスク

要件を満たさない場合、時間外労働、休日労働、深夜労働に関する割増賃金が問題になります。高年収者ほど基礎単価が高くなります。

行政対応リスク

届出、記録、周知、報告、賃金支払に不備がある場合、行政指導や是正勧告の対象となり得ます。

健康障害リスク

成果責任が重く時間境界が曖昧な職務では、健康管理時間の過大化、睡眠不足、メンタルヘルス不調に注意が必要です。

内部統制リスク

上場企業、金融機関、研究開発部門などでは、労務コンプライアンスが人的資本開示、内部通報、監査にも接続します。

Section 06

高プロ制度の導入前に整える文書と役割分担

文書化と部門連携により、対象業務・年収要件の判断を証跡化します。

次の一覧は、高プロ制度の対象業務と年収要件を検討する際に整備しておく文書を表しています。文書名だけでなく、どの要件の証跡になるかを読み取ることが重要です。

01

対象業務該当性検討メモ

5類型への該当性、対象外業務との区別、時間裁量の有無を記録します。

入口要件
02

職務記述書・職務合意書

業務内容、責任、成果、水準、裁量範囲を具体化し、職務明確性を担保します。

職務明確性
03

年収要件算定表

確実に支払われる賃金だけで1,075万円以上かを確認し、変動部分を分けます。

年収要件
04

労使委員会決議案・本人同意書

法定決議事項と制度効果、同意期間、賃金額、撤回手続を明示します。

手続
05

健康管理時間・休日管理規程

客観的把握方法、休日取得計画、アラート、面接指導、報告の流れを定めます。

健康確保
06

苦情処理・撤回手続規程

申出先、処理手順、守秘、撤回後の配置・処遇、不利益取扱い禁止を定めます。

運用証跡

次の表は、専門家・社内部門ごとの役割を示しています。高プロ制度は人事だけで完結せず、法務、労務、監査、産業保健、会計・税務、情報システムが連携する点を読み取ります。

担当者主な役割
弁護士・労務法務担当法的要件、労使委員会決議、本人同意、紛争リスクを検討します。
社会保険労務士労基署届出、就業規則、労務管理、実務運用を整えます。
人事担当評価制度、賃金制度、対象者選定、本人説明を担います。
コンプライアンス・内部監査不利益取扱い防止、内部通報、対象業務・年収・健康管理時間の監査を担います。
産業医・保健師健康管理時間、面接指導、メンタルヘルス対応、保健指導に関与します。
情報システム担当PCログ、入退室記録、勤怠システム、証跡管理を支えます。
FAQ

高プロ制度の対象業務と年収要件に関するFAQ

個別事案への断定を避け、一般的な制度説明として整理します。

Q1 ― 年収1,075万円以上の法務部員に高プロ制度を適用できますか。

一般的には、通常の企業法務、契約審査、紛争管理、コンプライアンス相談、株主総会対応などは、省令上の5類型に当然には該当しないとされています。ただし、職務内容や外部顧客向けの業務実態などで評価は変わる可能性があります。具体的な判断は、職務記述書や業務実態を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2 ― ITエンジニアやAIエンジニアは研究開発業務になりますか。

一般的には、新たな技術・商品・役務を創出する研究開発としての実質がある場合に検討対象となります。受託開発、保守運用、既存システム導入、仕様書どおりの実装、品質テスト、カスタマーサポートでは、対象業務と評価しにくい可能性があります。具体的には、研究テーマ、裁量、成果物、補助業務の割合を確認する必要があります。

Q3 ― 外資系コンサルティング会社のマネージャーは対象になりますか。

一般的には、顧客企業の事業運営に関する重要事項について調査分析し、経営戦略や業務改革案を考案・助言する業務であれば検討対象となり得ます。ただし、顧客都合の会議や稼働時間に強く拘束される場合、時間裁量や対象業務性の判断が変わります。具体的には、契約内容、成果物、上席者の関与、時間配分の実態を確認する必要があります。

Q4 ― 役員、執行役員、管理監督者にも高プロ制度が必要ですか。

一般的には、取締役等が労働基準法上の労働者でない場合、高プロ制度の対象として論じる前提を欠きます。執行役員や管理職については、実態として労働者か、管理監督者か、高プロ制度の対象労働者かを区別する必要があります。個別の地位や権限によって結論が変わるため、専門家へ確認する必要があります。

Q5 ― 業績連動賞与を含めれば1,075万円を超える場合、年収要件を満たしますか。

一般的には、支給額があらかじめ確定していない業績連動賞与の変動部分は、年収要件の根拠にしにくいとされています。最低保証額が契約上明確で、確実に支払われると見込まれる場合は、その最低保証部分を検討できます。具体的には、就業規則、労働契約、賞与規程の文言を確認する必要があります。

Q6 ― 本人が残業代はいらないと同意すれば適用できますか。

一般的には、本人同意だけでは高プロ制度を適用できません。対象業務、年収要件、職務明確性、労使委員会決議、届出、健康管理時間把握、休日確保、選択的措置などが必要です。個別の導入可否は、制度全体の要件充足を確認したうえで判断する必要があります。

Q7 ― 高プロ制度の対象者には年次有給休暇は不要ですか。

一般的には、不要にはなりません。高プロ制度は労働時間、休憩、休日、深夜割増賃金に関する規定の適用除外を扱う制度であり、年次有給休暇を消滅させる制度ではありません。休日確保との関係も含め、具体的な運用は最新の資料と社内規程を確認する必要があります。

Reference

参考資料

公的資料・法令名を中心に整理しています。

公的資料・法令

  • 厚生労働省「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法及び労働安全衛生法の施行について」
  • 労働基準法施行規則
  • 厚生労働省告示第88号「労働基準法第41条の2第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」
  • 厚生労働省「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について」