2σ Guide

現地パートナーの選定基準を
企業法務の視点で整理します

海外進出、代理店、合弁、委託、サプライチェーンで誰と組むかを、営業上の相性ではなく、法務・コンプライアンス・内部統制・契約後管理まで含む判断基準として確認します。

3層不適格・評価・監視
13基準法務横断の確認軸
100点スコアリング例
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現地パートナーの選定基準を 企業法務の視点で整理します

海外取引の入口で、候補者をどう見て、どこで止め、契約後にどう見続けるかを整理します。

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現地パートナーの選定基準を 企業法務の視点で整理します
海外取引の入口で、候補者をどう見て、どこで止め、契約後にどう見続けるかを整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 現地パートナーの選定基準を 企業法務の視点で整理します
  • 海外取引の入口で、候補者をどう見て、どこで止め、契約後にどう見続けるかを整理します。

POINT 1

  • 現地パートナーの選定基準の全体像
  • 海外取引の入口で、候補者をどう見て、どこで止め、契約後にどう見続けるかを整理します。
  • 不適格基準
  • 評価基準
  • 監視基準

POINT 2

  • 現地パートナーの選定基準は機能から考えます
  • 接触先
  • その相手が自社のために誰と接触するのかを確認します。
  • アクセス範囲
  • 自社の名義、ブランド、技術、データ、資金、顧客情報にどこまでアクセスするのかを確認します。

POINT 3

  • 現地パートナーの選定基準を設計する基本思想
  • 1. 探索とリスク分類:候補先を探索し、国、業種、役割、報酬、情報アクセス、代替可能性でリスクを分類します。
  • 2. DD、承認、契約反映:調査結果を基に承認、条件付き承認、却下を判断し、表明保証、監査権、解除権などに反映します。
  • 3. 導入統制と定期再審査:契約開始時研修、報告様式、定期モニタリング、年次確認、更新DDを運用します。
  • 4. 臨時審査と終了処理:重大事象があれば支払停止、調査、証拠保全、解除判断を行い、終了時はデータ、知財、在庫、顧客移行を整理します。

POINT 4

  • 現地パートナーの選定基準で見る財務・品質・情報管理
  • 契約履行能力だけでなく、不正、税務、品質事故、情報漏えい、技術流出を確認します。
  • 第6基準 ― 財務健全性、税務、会計、支払実務
  • 第7基準 ― 契約履行能力、品質、オペレーション
  • 第8基準 ― 個人情報、営業秘密、サイバーセキュリティ

POINT 5

  • 現地パートナーの選定基準で見る人権・競争法・知財・紛争履歴
  • 社会的責任、販売規制、ブランド保護、過去の問題を候補者評価に組み込みます。
  • 第9基準 ― 人権、労務、環境、サステナビリティ
  • 第10基準 ― 競争法、販売規制、取引適正化
  • 第11基準 ― 知的財産、ブランド、技術流出

POINT 6

  • 現地パートナーの選定基準を契約条項に落とし込みます
  • 1. 必要条項を提示:反贈収賄、制裁、個人情報、監査、再委託、解除、補償を提示します。
  • 2. 受入れ可否を確認:拒否、修正、代替案の理由を文書で確認します。
  • 3. 不採用または経営付議:監査権、制裁条項、実質的支配者開示などの拒否は高リスクとして扱います。
  • 4. 条件付き承認:研修、報酬制限、追加監査、再審査期限を条件にします。

POINT 7

  • 現地パートナーの選定基準を点数化します
  • 制裁・支配
  • 制裁対象者または制裁対象者による所有・支配が疑われる場合、実質的支配者の開示を拒む場合は、重大リスクとして扱います。
  • 公務員関係
  • 外国公務員、国営企業幹部、規制当局者、その親族が秘匿された利害関係を持つ場合は、経営付議を検討します。

POINT 8

  • 現地パートナーの選定基準に応じてDD深度を変えます
  • 低リスク、中リスク、高リスクで調査範囲と承認者を変えます。
  • 低リスクDD
  • 中リスクDD
  • 高リスクDD

まとめ

  • 現地パートナーの選定基準を 企業法務の視点で整理します
  • 現地パートナーの選定基準の全体像:海外取引の入口で、候補者をどう見て、どこで止め、契約後にどう見続けるかを整理します。
  • 現地パートナーの選定基準は機能から考えます:肩書や紹介経路ではなく、自社の責任にどこまで結び付くかで調査深度を決めます。
  • 現地パートナーの選定基準を設計する基本思想:リスクベース、入口審査と継続管理、積極基準と消極基準を一体で設計します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

現地パートナーの選定基準の全体像

海外取引の入口で、候補者をどう見て、どこで止め、契約後にどう見続けるかを整理します。

海外進出、国際販売、共同開発、現地生産、代理店・販売店起用、合弁、M&A、業務委託、サプライチェーン構築では、契約条件と同じくらい「誰と組むか」が重要です。現地パートナーは、市場情報、行政手続、顧客開拓、人材採用、許認可、物流、アフターサービス、規制対応を補完します。一方で、贈収賄、制裁違反、犯罪収益、個人情報漏えい、知的財産流出、競争法違反、労務・人権問題、税務・会計不正、契約不履行、紛争の入口にもなります。

現地パートナーの選定基準は、単なる営業上の相性ではなく、法務・コンプライアンス・内部統制・ガバナンス・財務・税務・人権・データ保護・紛争解決を横断する意思決定基準として設計します。特に、取引開始前に排除または解消する基準、候補者を比較する基準、契約後も見続ける基準を分けると、実務で使いやすくなります。

次の一覧は、現地パートナーの選定基準を3層に分けたものです。何を表しているかというと、取引開始前に止めるべきリスク、比較評価で見るべき能力、契約後に継続確認する事項の関係です。読者にとって重要なのは、営業上の魅力が高くても、不適格基準に触れる相手を採用しない線引きを持つことです。ここでは、各層の役割と読み取るべき判断ポイントを確認します。

Layer 01

不適格基準

制裁対象、実質的支配者の不透明性、外国公務員との不適切な関係、重大な贈収賄・詐欺・横領の履歴、許認可欠如、重大な人権侵害、個人情報保護体制の欠落などを確認します。

Layer 02

評価基準

市場アクセス、専門能力、財務健全性、内部統制、記録管理、契約遵守能力、技術保護能力、紛争対応力などを点数化して候補者を比較します。

Layer 03

監視基準

契約前の一回限りの調査で終えず、リスクに応じた更新、監査、研修、認証、通報、契約解除判断を含む継続プロセスとして運用します。

注意このページは一般的な情報提供です。国、業種、契約類型、規制当局の運用により結論が変わる可能性があります。具体的な取引では、現地法、税務、会計、労務、知財、データ保護、輸出管理、制裁、人権DDなどの専門家と連携して判断する必要があります。

現地パートナーを検討するときは、相手の名称ではなく機能を見ます。販売店、代理店、紹介者、通関業者、ITベンダー、製造委託先、共同研究先、M&A対象会社など、名称が違っても、自社のブランド、資金、技術、データ、行政接点に影響する場合は、選定基準を厳格にします。

Section 01

現地パートナーの選定基準は機能から考えます

肩書や紹介経路ではなく、自社の責任にどこまで結び付くかで調査深度を決めます。

現地パートナーとは、海外または特定地域で自社の事業活動を補完・代替・共同遂行する第三者です。典型例には、販売代理店、販売店、総代理店、商社、紹介者、ロビイスト、許認可コンサルタント、通関業者、物流業者、現地製造委託先、保守業者、合弁相手、フランチャイジー、ライセンシー、共同研究先、クラウド・ITベンダー、データ処理委託先、現地採用代行会社、M&A対象会社、現地スポンサー、政府案件の入札協力者があります。

企業法務で重要なのは、名称ではなく実際の機能です。代理店という名称でも政府調達の紹介者として公務員に接触することがあります。販売店でも価格拘束や販売地域制限を設けると競争法リスクが生じます。ITベンダーでも個人情報を扱うと委託先管理、越境移転、情報セキュリティの問題になります。製造委託先でも労働、安全衛生、環境、人権、品質表示、輸出管理、知的財産流出の問題が発生します。

次の一覧は、候補者の肩書ではなく機能を確認するための4つの問いです。何を表しているかというと、相手の行為が自社の責任や信用にどこまでつながるかを見分ける入口です。読者にとって重要なのは、答えが重いほど調査、契約条項、監査、代替先確保を強める必要がある点です。各問いから、自社が管理すべき責任範囲を読み取ります。

接触先

その相手が自社のために誰と接触するのかを確認します。政府機関、国営企業、病院、学校、公共事業体が含まれる場合は厳格に見ます。

アクセス範囲

自社の名義、ブランド、技術、データ、資金、顧客情報にどこまでアクセスするのかを確認します。

責任連動

相手の行為が、自社の法的責任、行政処分、刑事責任、民事責任、信用毀損に結び付くかを確認します。

管理可能性

相手の失敗を、契約、保険、監査、解除、代替先確保によって管理できるかを確認します。

「紹介されたから」「有名だから」という理由だけでは、選定基準を満たした証明になりません。知人の紹介、業界団体イベントでの名刺交換、有力企業との取引実績、政府関係者との人脈、流暢な日本語、過度に前向きな提案、短期間での許認可取得の約束は、評価開始のきっかけにすぎません。

贈収賄、制裁、マネーロンダリング、人権、個人情報、競争法の領域では、第三者を通じたリスクが問題になります。第三者管理では、候補者の資格・関係性、第三者を必要とする事業上の合理性、サービス内容の明確化、報酬の相当性、継続的な監視、監査権、研修の有無を確認します。

実務の見方営業担当者の経験則だけで完結させず、法務、コンプライアンス、財務、税務、内部監査、情報セキュリティ、プライバシー、知財、人事労務、事業部門が共同で判断する統制プロセスにします。
Section 02

現地パートナーの選定基準を設計する基本思想

リスクベース、入口審査と継続管理、積極基準と消極基準を一体で設計します。

すべての候補先に同じ調査を行うわけではありません。小額の一般備品購入先と、政府案件の入札を支援する現地代理人では、必要な調査水準が異なります。現地パートナーの選定基準は、リスクの大きさに比例して深くします。

次の比較表は、リスク分類で見る代表的な評価軸を示しています。何を表しているかというと、国・業種・役割・報酬・情報アクセス・支配関係・代替可能性ごとに、低リスクと高リスクの境目を把握するための視点です。読者にとって重要なのは、どの軸が高リスク側に寄るかでDD深度や承認者が変わる点です。各行から、候補者調査を深くする根拠を読み取ります。

評価軸低リスク例高リスク例
国・地域汚職、制裁、人権、治安リスクが低い地域です。高汚職地域、紛争地域、制裁迂回懸念地域です。
業種一般消費財の民間販売です。防衛、資源、医薬、建設、インフラ、政府調達、金融です。
役割単純な再販売です。公務員接触、許認可取得、通関、入札支援、現金取扱いです。
報酬市場相場に近い固定報酬です。成功報酬、高額コミッション、第三国口座払いです。
情報アクセス限定的な商品情報にとどまります。個人情報、営業秘密、ソースコード、顧客DBへアクセスします。
支配関係独立した取引先です。合弁、共同支配、ブランド使用、委任代理が含まれます。
代替可能性複数候補があります。単一候補、解除困難、現地法上の補償義務が重い関係です。

候補者調査は契約前の一回限りでは足りません。契約後に実質的支配者が変わる、下請先に再委託する、政府案件に関与し始める、報酬体系が変わる、制裁対象者と取引する、顧客データの取扱いが増えるといった変化が起こります。

次の時系列は、現地パートナー選定を契約前から契約終了まで続く管理として見るための順番です。何を表しているかというと、候補探索、リスク分類、DD、承認、契約、導入、監視、再審査、臨時審査、終了処理の連続性です。読者にとって重要なのは、契約締結をゴールにせず、更新や解除判断まで証跡化することです。各段階で、どの部署が何を確認するかを読み取ります。

1から2

探索とリスク分類

候補先を探索し、国、業種、役割、報酬、情報アクセス、代替可能性でリスクを分類します。

3から5

DD、承認、契約反映

調査結果を基に承認、条件付き承認、却下を判断し、表明保証、監査権、解除権などに反映します。

6から8

導入統制と定期再審査

契約開始時研修、報告様式、定期モニタリング、年次確認、更新DDを運用します。

9から10

臨時審査と終了処理

重大事象があれば支払停止、調査、証拠保全、解除判断を行い、終了時はデータ、知財、在庫、顧客移行を整理します。

現地パートナーの選定基準は、候補者を比較する積極基準と、原則として採用しない消極基準に分けます。営業上は魅力的でも、消極基準に触れる候補者を例外的に採用し続けると、選定基準は社内統制として機能しません。

重要制裁対象、実質的支配者不明、重大な贈収賄・詐欺・横領、許認可欠如、重大な人権侵害、データ保護不備などは、点数評価の前に止めるべき事項として扱います。
Section 03

現地パートナーの選定基準13項目を確認します

事業合理性、法的適格性、反贈収賄、制裁、財務、品質、情報管理、人権、競争法、知財、紛争、契約統制を横断します。

第1基準 ― 事業上の必要性と役割の明確性

最初に確認するのは、その現地パートナーを起用する合理性です。第三者を起用する理由が曖昧な場合、報酬が裏金、紹介料、政治的アクセスの対価、架空役務の隠れ蓑になりやすくなります。

次の表は、起用目的から代替手段までの確認事項をまとめたものです。何を表しているかというと、候補者を使う事業上の理由を、契約書に落とせる粒度で確認するための質問です。読者にとって重要なのは、役務、成果物、報酬根拠を説明できない相手ほど不正リスクが高まる点です。各行から、社内承認で説明すべき材料を読み取ります。

確認事項実務上の質問
起用目的何を実現するために起用するのか、自社で対応できない理由は何かを確認します。
役割範囲販売、紹介、許認可、物流、保守、製造、データ処理など、どの機能を担うかを確認します。
接触対象政府機関、国営企業、病院、学校、公共事業体、民間顧客のいずれと接触するかを確認します。
成果物レポート、見込顧客リスト、会議記録、納品物、保守記録など、提出物を確認します。
報酬根拠報酬が作業量、成果、相場、リスク、専門性に見合うかを確認します。
代替手段他候補、自社拠点、専門士業、商工会議所、JETRO等の公的支援で代替できるかを確認します。

第2基準 ― 法的存在、権限、許認可

候補者が実在し、適法に設立・登録され、必要な権限を持つことは基本です。署名権限、法人代表者、定款・商業登記、営業許可、業法上の登録、輸出入ライセンス、医薬・食品・建設・金融・人材紹介などの許認可を確認します。

次の表は、法的存在と契約能力を確認する資料例です。何を表しているかというと、契約の有効性、許認可、税務登録、所在地、外資規制などを証拠で確認するための項目です。読者にとって重要なのは、署名者やライセンスの確認不足が紛争時の契約有効性や解除可能性に直結する点です。各列から、取得すべき資料の種類を読み取ります。

項目取得・確認する資料例
法人格商業登記簿、設立証明書、会社番号、定款、存続証明書を確認します。
代表権取締役名簿、署名権限証明、委任状、取締役会決議を確認します。
許認可業法ライセンス、販売許可、輸出入許可、通関登録、医療機器・医薬品登録を確認します。
税務登録納税者番号、VAT/GST登録、源泉税関連登録を確認します。
所在地実在するオフィス、倉庫、工場、連絡先、ウェブサイト、現地訪問記録を確認します。
契約能力契約締結権限、親会社承認要否、外資規制・合弁規制の有無を確認します。

第3基準 ― 実質的支配者、政治的関係、利益相反

法人名だけでは不十分です。実質的支配者が不透明な会社、名義株主を多用する会社、オフショア法人を挟む会社、政治家・公務員・軍関係者・国営企業幹部の親族が関与する会社は高リスクです。

次の表は、所有・支配・政治的関係を確認する観点です。何を表しているかというと、登記上の名義人だけでは見えない支配者、利益相反、犯罪関係、変更管理を確認する入口です。読者にとって重要なのは、実質的支配者の開示拒否そのものがレッドフラッグになる点です。各行から、候補者に求める開示範囲を読み取ります。

項目確認ポイント
株主構成直接株主、間接株主、議決権、優先株、信託、名義株主の有無を確認します。
実質的支配者最終的な自然人、支配権を持つ者、利益を受ける者を確認します。
政治的関係政治家、公務員、国営企業幹部、軍関係者、規制当局OBとの関係を確認します。
利益相反自社役職員、顧客、入札関係者、調達担当者との親族・投資関係を確認します。
反社・犯罪関係犯罪収益、暴力団・マフィア・テロ組織、詐欺グループとの関係を確認します。
変更管理支配者変更時の通知義務、承認権、解除権を確認します。

第4基準 ― 反贈収賄・腐敗防止

政府調達、公共インフラ、医療、教育、資源、建設、防衛、通関、許認可、税関、警察・消防・環境当局との接点がある案件では、代理人やコンサルタントを通じた支払が問題になりやすくなります。

次の表は、反贈収賄の観点で合格水準とレッドフラッグを並べたものです。何を表しているかというと、公務員接点、報酬、役務、贈答接待、下請利用、記録管理、内部体制を見比べる基準です。読者にとって重要なのは、役務内容と支払根拠が説明できない支払を避けることです。各行から、追加調査や不採用判断の兆候を読み取ります。

基準合格水準レッドフラッグ
公務員接点接触先、目的、会議記録、許認可手続が明確です。「任せてくれれば早い」「非公式に処理できる」と説明します。
報酬役務内容・相場・地域水準に照らして合理的です。高額成功報酬、現金払い、第三国口座、前払い要求があります。
役務内容契約書と成果物で特定できます。「関係構築」「便宜供与」など曖昧です。
贈答・接待社内規程と現地法に従い、事前承認と記録があります。公務員への高額接待、旅行、家族招待、寄付要求があります。
下請利用事前承認、DD、契約上のフローダウンがあります。実態不明のサブエージェントを使います。
記録管理請求書、作業報告、会議記録、支払根拠が保存されます。架空請求、丸めた請求、説明不能な経費があります。
内部体制反贈収賄規程、研修、通報窓口、監査対応があります。規程がない、監査拒否、過去不祥事を説明しない状態です。

第5基準 ― 制裁、輸出管理、AML/CFT、経済安全保障

制裁対象者との関係、輸出管理規制、迂回輸出、軍事転用、マネーロンダリング、テロ資金供与、拡散金融のリスクを確認します。米ドル決済、米国原産品・技術、EU制裁対象地域、ロシア関連取引、半導体・工作機械・化学品・暗号資産・デュアルユース品目を扱う場合は、特に厳格な確認が必要です。

次の表は、制裁・輸出管理・AML/CFTで確認する範囲です。何を表しているかというと、候補者名だけでなく、役員、株主、実質的支配者、関連会社、最終需要者、決済経路まで広げて見るための項目です。読者にとって重要なのは、直接の制裁該当だけでなく、所有・支配や迂回利用のリスクを見落とさないことです。各行から、取引停止や追加確認の対象を読み取ります。

項目確認内容
リストスクリーニング法人名、旧社名、役員、株主、実質的支配者、関連会社、船舶、口座、住所を対象に確認します。
地理的リスク制裁対象国・地域、紛争地域、迂回輸出に利用されやすい第三国との関係を確認します。
最終需要者最終顧客、エンドユーザー、エンドユース、再販売先、再輸出先を確認します。
物品・技術輸出管理分類、デュアルユース該当性、暗号・AI・半導体・化学品・軍民両用技術を確認します。
決済米ドル決済、第三国口座、暗号資産、現金、相殺決済、異常な支払経路を確認します。
AML/CFT実質的支配者、資金源、犯罪収益リスク、テロ資金供与・拡散金融リスクを確認します。
契約統制制裁遵守条項、再輸出禁止、最終用途証明、解除権、監査権、通知義務を確認します。
Section 04

現地パートナーの選定基準で見る財務・品質・情報管理

契約履行能力だけでなく、不正、税務、品質事故、情報漏えい、技術流出を確認します。

第6基準 ― 財務健全性、税務、会計、支払実務

財務状態は契約履行能力だけでなく、不正リスクにも関係します。資金繰りに困ったパートナーは、過大請求、前払い要求、品質低下、無断再委託、従業員賃金未払い、税務滞納、横領、顧客資金の流用に走る可能性があります。

次の表は、財務・税務・会計・支払実務で確認する項目です。何を表しているかというと、候補者の継続性、支払経路の妥当性、帳簿保存、価格相当性を確認するための範囲です。読者にとって重要なのは、支払先や請求根拠の異常が、贈収賄や税務否認にもつながる点です。各行から、契約前に取得すべき証跡を読み取ります。

項目確認内容
財務諸表売上、利益、純資産、債務超過、キャッシュフロー、監査済みか否かを確認します。
税務納税証明、VAT/GST、源泉税、移転価格、PE認定リスクを確認します。
支払条件前払い要求、第三国口座、個人口座、現金、請求書の整合性を確認します。
債務・担保銀行借入、担保設定、訴訟・差押え、破産・再生手続を確認します。
会計統制請求・領収・支払承認、職務分掌、帳簿保存、監査対応を確認します。
価格相当性役務・物品の市場価格、コミッション率、利益率、異常な割戻しを確認します。

第7基準 ― 契約履行能力、品質、オペレーション

現地パートナーは、法的に問題がないだけでは足りません。実際に契約を履行できる能力が必要です。能力評価は、営業資料だけでなく、現地訪問、顧客照会、試験発注、監査、KPI、品質記録、苦情処理記録で裏付けます。

次の表は、契約履行能力と品質を評価する項目です。何を表しているかというと、人員、設備、実績、品質、供給、報告、改善の各面から、実際に任せられる相手かを確認する視点です。読者にとって重要なのは、品質や納期の問題が行政処分、製品回収、損害賠償、個人情報漏えいに広がる場合がある点です。各行から、事業部門と法務部門が共同で見るべき材料を読み取ります。

項目評価内容
人員営業、技術、法務、品質、倉庫、カスタマーサポートの人数と経験を確認します。
設備工場、倉庫、ITシステム、保守設備、セキュリティ、BCPを確認します。
実績類似製品、類似市場、類似顧客での実績、リファレンスを確認します。
品質ISO 9001等、品質管理手順、検査記録、返品・苦情対応を確認します。
供給能力在庫、納期、物流、通関、アフターサービス、代替供給体制を確認します。
報告能力売上報告、顧客情報、在庫情報、苦情情報、事故報告の正確性を確認します。
改善能力問題発生時の是正措置、再発防止、原因分析、教育訓練を確認します。

第8基準 ― 個人情報、営業秘密、サイバーセキュリティ

顧客情報、従業員情報、取引先情報、医療情報、位置情報、購買履歴、アプリ利用履歴、ID、ログ、営業秘密、ソースコード、設計図、研究データにアクセスする場合、プライバシーと情報管理の選定基準が必要です。

次の表は、データと営業秘密を扱う候補者に確認する事項です。何を表しているかというと、データ分類、処理目的、越境移転、再委託、安全管理、事故対応、返還・削除までを確認する全体像です。読者にとって重要なのは、契約後にデータを渡してから管理不能になるリスクを契約前に潰すことです。各行から、情報管理条項と監査項目に反映すべき内容を読み取ります。

項目確認内容
データ分類個人情報、要配慮情報、営業秘密、顧客秘密、技術情報の範囲を確認します。
処理目的何のために、どのデータを、どの国で、誰が処理するのかを確認します。
越境移転本人同意、十分性認定、契約措置、移転先国の制度、再移転を確認します。
委託先管理再委託の有無、再委託先DD、承認手続、契約上の同等義務を確認します。
技術的安全管理アクセス制御、暗号化、ログ、MFA、脆弱性管理、バックアップを確認します。
組織的安全管理規程、教育、権限管理、事故対応、監査、退職者管理を確認します。
インシデント対応漏えい時の通知期限、初動報告、証拠保全、顧客・当局対応を確認します。
データ返還・削除契約終了時の返還、削除証明、バックアップ削除、監査権を確認します。

営業秘密・知的財産では、秘密保持契約だけでは足りません。秘密情報の範囲、アクセス権限、持出制限、リバースエンジニアリング禁止、競合先への提供禁止、成果物の権利帰属、改良発明、共同開発成果、オープンソース利用、AI学習利用、退職者管理まで確認します。

Section 05

現地パートナーの選定基準で見る人権・競争法・知財・紛争履歴

社会的責任、販売規制、ブランド保護、過去の問題を候補者評価に組み込みます。

第9基準 ― 人権、労務、環境、サステナビリティ

児童労働、強制労働、賃金未払い、長時間労働、ハラスメント、差別、安全衛生、結社の自由、移民労働者の手数料負担、土地収奪、環境汚染、廃棄物処理、温室効果ガス、地域住民への影響を確認します。

次の表は、人権・労務・環境で確認する項目です。何を表しているかというと、現地パートナーの低価格や短納期の裏側に、労務・安全衛生・環境・サプライチェーンの問題がないかを見る視点です。読者にとって重要なのは、人権・労務DDがCSRにとどまらず、輸入規制、公共調達、開示、投資家対応、顧客監査に直結する点です。各行から、監査や契約条項に反映する確認範囲を読み取ります。

項目確認内容
労働雇用契約、賃金、労働時間、残業、休暇、社会保険、派遣・請負の適法性を確認します。
強制労働パスポート保管、採用手数料、債務労働、移動制限、退職制限を確認します。
児童労働年齢確認、若年労働者管理、危険業務禁止を確認します。
安全衛生労災記録、防護具、事故対応、設備点検、教育訓練を確認します。
差別・ハラスメント通報制度、懲戒、調査、是正措置を確認します。
環境許認可、廃棄物、排水、排気、化学物質、土壌汚染、環境事故を確認します。
苦情処理労働者・地域住民の苦情受付、救済、報復禁止を確認します。
サプライチェーン下請先、原材料、鉱物、農産物、縫製、物流先のリスクを確認します。

第10基準 ― 競争法、販売規制、取引適正化

販売店、代理店、総代理店、フランチャイジー、共同販売先の場合、競争法上の選定基準が重要です。販売価格の拘束、再販売価格維持、地域制限、顧客制限、競業避止、独占供給、抱き合わせ、最恵待遇、情報交換、入札談合、競合他社との共同販売は、国・地域によって違法リスクがあります。

次の表は、販売規制・競争法で見る確認事項です。何を表しているかというと、価格、地域、顧客、競合関係、入札、情報交換、取引適正化を契約前に確認する視点です。読者にとって重要なのは、販売パートナーへの指示内容が、現地法や日本法上の違反リスクに変わることです。各行から、販売政策と契約条項で調整すべき点を読み取ります。

項目確認内容
価格再販売価格を拘束していないか、推奨価格と拘束の区別ができるかを確認します。
地域・顧客独占地域、顧客制限、オンライン販売制限が現地法上許容されるかを確認します。
競合関係パートナーが競合他社も扱う場合、機密情報遮断があるかを確認します。
入札競合との価格調整、受注調整、見積合わせに関与しないかを確認します。
情報交換価格、数量、顧客、販売計画などセンシティブ情報の交換を防げるかを確認します。
優越的地位一方的な代金減額、返品、協賛金要求、支払遅延がないかを確認します。
取引適正化中小受託者保護、書面交付、支払期日、協議、手形払禁止等への対応を確認します。

日本では、2026年1月1日に従来の下請法が改正され、通称「取適法」として位置づけられています。海外の現地パートナーを使う場合でも、日本側の発注行為、国内委託先、再委託、物流委託、情報成果物作成委託との関係で、日本法上の取引適正化規制が問題になる可能性があります。

第11基準 ― 知的財産、ブランド、技術流出

販売、製造、修理、共同開発、ライセンス、マーケティングを任せる場合、商標、特許、意匠、著作権、営業秘密、ノウハウ、ドメイン名、SNSアカウント、広告素材、技術資料の管理が必要です。

次の表は、知財・ブランド・技術流出に関する確認事項です。何を表しているかというと、現地で便利に見える登録や運用が、後にブランドや技術を相手に握られるリスクにならないかを見る観点です。読者にとって重要なのは、契約終了時に商標、資料、金型、データを取り戻せる設計にすることです。各行から、知財担当と契約担当が確認すべき条項を読み取ります。

項目確認内容
商標現地で自社商標を誰が登録するか、冒認出願を防げるかを確認します。
ブランド使用ロゴ、広告、販売資料、SNS、展示会での使用ルールがあるかを確認します。
技術資料設計図、仕様書、ソースコード、製造条件、試験データのアクセス範囲を確認します。
模倣品模倣品調査、摘発協力、通関差止、販売経路の監視を確認します。
共同開発成果物、改良発明、バックグラウンドIP、フォアグラウンドIPの帰属を確認します。
退職者技術者・営業担当の退職後の情報持出し対策を確認します。
契約終了在庫処分、ブランド使用停止、資料返還、金型・治具・データ削除を確認します。

第12基準 ― 紛争履歴、評判、行政処分、報道

過去の問題は将来のリスクを完全には予測しませんが、重要な兆候になります。訴訟、仲裁、行政処分、刑事事件、倒産、税務滞納、労働争議、顧客苦情、メディア報道、SNS炎上、NGOレポート、制裁・ブラックリスト、公共調達停止、業界団体処分を確認します。

次の表は、過去の紛争・評判を確認する範囲です。何を表しているかというと、候補者の説明能力と再発防止策を、公開情報や照会で確認するための観点です。読者にとって重要なのは、過去の問題を一律に排除するのではなく、性質、時期、関与者、是正措置、経営陣交代、外部監査の有無を見分けることです。各行から、高リスク扱いにすべき兆候を読み取ります。

項目確認内容
民事紛争契約不履行、代金未払い、品質紛争、販売代理店解除紛争を確認します。
刑事・行政贈収賄、詐欺、横領、税務、労働、安全、環境、個人情報処分を確認します。
仲裁国際仲裁、商事仲裁、建設・販売・ライセンス紛争を確認します。
評判顧客照会、業界評判、メディア、SNS、NGO、従業員レビューを確認します。
公共調達入札停止、指名停止、国際機関の制裁・デバーメントを確認します。
説明能力過去問題の事実関係、是正措置、再発防止策を説明できるかを確認します。
Section 06

現地パートナーの選定基準を契約条項に落とし込みます

契約で統制できるかを、候補者評価の第13基準として確認します。

第13基準は、契約による統制可能性です。どれほど魅力的な候補者でも、必要条項を受け入れない相手は危険です。現地パートナーの選定基準には、契約交渉で必要条項を受け入れる意思があるかを含めます。

次の表は、現地パートナー契約で最低限検討する条項と目的です。何を表しているかというと、選定時に確認したリスクを、表明保証、誓約、監査権、通知義務、解除権、補償、終了処理へつなぐ方法です。読者にとって重要なのは、DD結果を契約に反映しなければ統制が続かない点です。各行から、自社の契約テンプレートに不足している条項を読み取ります。

条項目的
役務範囲・成果物架空役務、曖昧な紹介料、不履行を防ぎます。
報酬・支払条件相場性、請求根拠、税務、贈収賄、制裁リスクを管理します。
法令遵守現地法、日本法、反贈収賄、制裁、輸出管理、競争法、個人情報をカバーします。
表明保証実質的支配者、許認可、訴訟、制裁非該当、反贈収賄違反なしを確認します。
監査権帳簿、請求、支払、下請、在庫、品質、情報管理を確認します。
記録保存会議記録、請求書、領収書、顧客接触、贈答接待、下請記録を保存させます。
研修・認証コンプライアンス研修、年次確認書、行動規範遵守を義務付けます。
再委託制限サブエージェント、下請、関連会社利用を事前承認制にします。
通知義務支配者変更、許認可喪失、違反疑い、当局調査、情報漏えいを報告させます。
解除権贈収賄、制裁、重大違反、監査拒否、支配者不透明化時に解除できるようにします。
補償違反により自社が被った損害、罰金、調査費用、第三者請求を補償させます。
紛争解決準拠法、裁判管轄、仲裁地、言語、暫定措置、証拠保全を明確にします。
契約終了在庫、顧客、データ、知財、秘密情報、未収金、移行支援を整理します。

「監査権は一切受け入れない」「実質的支配者は開示しない」「公務員との接触記録は残せない」「第三国口座でないと受け取れない」「再委託先は開示できない」という回答は、重大な減点または不採用理由になり得ます。

次の判断の流れは、契約条項の受入れ状況を採用判断につなげる方法です。何を表しているかというと、候補者が必要条項を受け入れるか、拒否理由が合理的か、代替統制で補えるかを順番に見ます。読者にとって重要なのは、条項拒否を単なる交渉上の姿勢と見ず、リスク管理能力の不足として評価することです。分岐から、承認、条件付き承認、不採用の境目を読み取ります。

契約統制の判断手順

必要条項を提示

反贈収賄、制裁、個人情報、監査、再委託、解除、補償を提示します。

受入れ可否を確認

拒否、修正、代替案の理由を文書で確認します。

拒否が重大
不採用または経営付議

監査権、制裁条項、実質的支配者開示などの拒否は高リスクとして扱います。

補完可能
条件付き承認

研修、報酬制限、追加監査、再審査期限を条件にします。

Section 07

現地パートナーの選定基準を点数化します

定性的な不安を、配点、判定、即時不採用事項に分けて社内説明しやすくします。

現地パートナーの選定では、定性的判断だけでは社内説明が難しくなります。スコアリングを使うと、意思決定の透明性が高まります。ただし、制裁対象や実質的支配者開示拒否などの重大事項は、点数にかかわらず止める基準として扱います。

次の表は、100点満点で評価カテゴリと配点を置いた例です。何を表しているかというと、事業適合性だけに偏らず、法的適格性、反贈収賄・制裁、財務、品質、情報管理、人権、契約統制を同時に評価する配分です。読者にとって重要なのは、高得点の候補者でも重大な不適格事項があれば採用しない点です。配点から、自社の業種に合わせて重みを調整する箇所を読み取ります。

カテゴリ配点主な評価要素
事業適合性15市場アクセス、顧客基盤、商品理解、事業戦略との適合を評価します。
法的適格性15法人格、署名権限、許認可、外資規制、契約能力を評価します。
反贈収賄・制裁20公務員接点、報酬相当性、制裁・PEP・UBO、AML/CFTを評価します。
財務・税務・会計10財務健全性、税務登録、請求・支払統制、監査対応を評価します。
オペレーション・品質10人員、設備、品質、納期、事故対応、顧客対応を評価します。
データ・知財・情報管理10個人情報、営業秘密、サイバー、知財保護、再委託管理を評価します。
人権・労務・環境10労働、安全衛生、環境許認可、苦情処理、サプライチェーンを評価します。
契約統制・ガバナンス10監査権、解除権、通知義務、研修、継続モニタリングを評価します。
合計100不適格事項の有無を別途確認します。

次の表は、点数帯ごとの判定例です。何を表しているかというと、採用、条件付き採用、保留、不採用を、追加条項や監査などの対応に結び付ける基準です。読者にとって重要なのは、点数だけで終わらせず、低い項目の改善条件や再審査期限を決めることです。各行から、承認メモに書くべき実務対応を読み取ります。

点数判定実務対応
85点以上採用可標準契約と通常モニタリングで対応します。
70点から84点条件付き採用追加条項、研修、監査、報酬制限、再審査期限を設定します。
50点から69点原則保留追加DD、外部専門家調査、経営承認、代替候補比較を行います。
49点以下不採用重大リスクが解消されない限り契約しません。

次の一覧は、点数にかかわらず即時不採用または経営会議・コンプライアンス委員会付議を検討する事項です。何を表しているかというと、スコアリングで平均化してはいけない重大リスクです。読者にとって重要なのは、例外承認を現場判断にせず、経営レベルでリスク受容を記録することです。各項目から、候補者評価の停止条件を読み取ります。

制裁・支配

制裁対象者または制裁対象者による所有・支配が疑われる場合、実質的支配者の開示を拒む場合は、重大リスクとして扱います。

公務員関係

外国公務員、国営企業幹部、規制当局者、その親族が秘匿された利害関係を持つ場合は、経営付議を検討します。

支払異常

役務内容が曖昧で、高額成功報酬、第三国口座、現金、暗号資産、別口座払いを求める場合は、支払を止めて確認します。

許認可・履歴

必要許認可がない場合、重大な贈収賄、詐欺、横領、マネーロンダリング、人権侵害、情報漏えいの合理的説明がない場合は採用しません。

条項拒否

監査権、反贈収賄条項、制裁条項、データ保護条項、解除権、書面契約を拒否する場合は重大な減点になります。

記録拒否

「現地では普通」「記録は残さない」「税金を避けるため別口座に払う」と説明する場合は、採用を停止して確認します。

Section 08

現地パートナーの選定基準に応じてDD深度を変えます

低リスク、中リスク、高リスクで調査範囲と承認者を変えます。

低リスクDDは、少額・短期・公務員接点なし・個人情報なし・標準商品購入のような取引で用います。法人登録、制裁リスト、基本的な評判、契約書、請求書、支払口座の一致を確認します。

中リスクDDは、販売店、保守委託、現地マーケティング、一般的な製造委託などで用います。法人資料、実質的支配者、財務概要、許認可、顧客照会、反贈収賄質問票、データ・情報管理、下請利用、契約条項受入れを確認します。

高リスクDDは、政府案件、許認可支援、通関、医療・建設・資源・防衛・金融、合弁、M&A、個人情報大量処理、制裁リスク地域、人権リスクの高いサプライチェーンで用います。現地法、フォレンジック会計、税務、データ保護、環境・人権などの専門家を起用します。

次の一覧は、リスク分類ごとのDD深度をまとめています。何を表しているかというと、取引リスクが上がるほど、公開情報確認から現地訪問、帳簿監査、専門家調査、経営承認へ深くなる関係です。読者にとって重要なのは、低リスクの簡易確認を高リスク案件へ流用しないことです。各分類から、自社案件に必要な調査範囲を読み取ります。

Low

低リスクDD

法人登録、制裁リスト、基本的な評判、契約書、請求書、支払口座の一致を確認します。標準商品購入や少額短期取引で使います。

Middle

中リスクDD

法人資料、実質的支配者、財務概要、許認可、顧客照会、反贈収賄質問票、情報管理、下請利用、条項受入れを確認します。

High

高リスクDD

登記・支配者の深掘り、公務員関係、訴訟・制裁・報道、財務・税務・支払経路、現地監査、人権・情報セキュリティ監査、経営承認を行います。

次の表は、社内外の責任分担です。何を表しているかというと、営業だけに判断を委ねず、法務、コンプライアンス、財務、税務、情報セキュリティ、知財、人権、内部監査、経営陣がどの論点を持つかを示しています。読者にとって重要なのは、誰がどの根拠でリスクを受容したかを証跡化することです。各行から、承認手順に入れる担当者を読み取ります。

部門・専門家主な役割
事業部門起用目的、商流、役務内容、候補比較、KPI、代替案を説明します。
法務担当・企業内弁護士契約類型、準拠法、責任範囲、解除、紛争解決、現地法論点を整理します。
外部弁護士・外国法弁護士現地法、代理店保護規制、業法、外資規制、訴訟・仲裁リスクを確認します。
コンプライアンス担当反贈収賄、制裁、行動規範、通報、研修、第三者管理を設計します。
経理・財務・税務財務健全性、支払条件、源泉税、移転価格、PE、会計処理を確認します。
公認会計士・フォレンジック専門家財務DD、不正兆候、支払・請求・帳簿の異常を確認します。
個人情報・セキュリティ担当データ処理、越境移転、委託先管理、サイバーセキュリティを確認します。
知財担当・弁理士商標、特許、営業秘密、ライセンス、共同開発、模倣品対策を確認します。
労務・人権・環境担当労働、安全衛生、環境、人権DD、苦情処理を確認します。
内部監査選定プロセス、承認証跡、モニタリング、例外処理の有効性を検証します。
経営陣高リスク案件のリスク受容、条件付き承認、不採用を最終判断します。

コンプライアンス・マネジメントシステムの発想では、法令・規制・倫理基準への適合を確保し、リスクを軽減し、誠実性とガバナンスを高める枠組みが重視されます。現地パートナーの選定基準も、誰が、どの根拠で、どのリスクを受容したのかを記録する管理システムとして設計します。

Section 09

現地パートナーの選定基準に組み込むレッドフラッグ

見つけた時点で記録し、解消方法、追加調査、承認者を明確にします。

レッドフラッグは、直ちに不採用を意味する場合もあれば、追加調査を意味する場合もあります。重要なのは、見つけた時点で記録化し、誰がどのように解消したかを残すことです。

次の表は、分野別の代表的なレッドフラッグです。何を表しているかというと、事業合理性、支払、公務員接点、実質的支配者、制裁、許認可、財務、個人情報、知財、人権、環境、契約、行動の異常を一覧で確認するための材料です。読者にとって重要なのは、違和感を見つけた時点で支払や契約締結を急がず、追加調査と承認に回すことです。各行から、候補者評価で見逃しやすい兆候を読み取ります。

分野レッドフラッグ
事業合理性起用理由が曖昧です。役務内容を説明できません。候補者本人が実務を行いません。
報酬相場より高い成功報酬、前払い要求、現金払い、第三国口座・個人口座・暗号資産払いがあります。
公務員接点公務員との非公式関係を強調します。許認可取得を保証します。会議記録を残しません。
実質的支配者株主・役員・UBOを開示しません。オフショア法人・名義株主が多い状態です。
制裁制裁対象地域・迂回輸出リスク地域との不自然な取引があります。最終需要者を開示しません。
反社・犯罪詐欺、横領、贈収賄、マネーロンダリング、密輸、偽造品の噂・報道があります。
許認可必要ライセンスがありません。期限切れ、名義貸し、許認可証の真偽不明があります。
財務債務超過、税滞納、頻繁な社名変更、倒産歴、監査拒否があります。
個人情報再委託先不明、アクセス制御なし、漏えい対応不明、越境移転説明不能があります。
知財自社商標を相手名義で登録しようとします。競合へ技術資料を共有します。
人権・労務低賃金、長時間労働、パスポート保管、児童労働、労災隠し、労働者の苦情があります。
環境許認可なし、廃棄物処理不明、事故隠し、地域住民との紛争があります。
契約反贈収賄条項、監査権、解除権、制裁条項、データ保護条項を拒否します。
行動質問への回答が遅く、資料が矛盾し、説明が変わり、社内承認を急がせます。

現地パートナー選定では、基本情報、事業合理性、コンプライアンス、財務・税務・会計、データ・知財、契約・モニタリングのチェックリストを用意します。正式名称、旧社名、登記番号、代表者、株主、署名権限、許認可、実在する拠点を確認します。起用目的、自社で対応できない理由、役務内容、成果物、報告頻度、報酬相当性、代替候補も確認します。

制裁・PEP・反社・犯罪歴、実質的支配者、公務員・国営企業・政治家との関係、反贈収賄質問票、過去の不祥事、訴訟、行政処分、コンプライアンス規程、研修、通報制度、監査対応を確認します。財務諸表、税務登録、納税状況、支払口座、請求書、作業報告、支払証跡の保存方法を確認し、高額成功報酬、前払い、第三国口座払いを排除します。

個人情報、営業秘密、技術資料へのアクセス範囲、越境移転、委託、再委託、情報セキュリティ、商標、ライセンス、共同開発成果、秘密保持、契約終了時の返還・削除・ブランド使用停止を確認します。契約では、反贈収賄、制裁、輸出管理、競争法、個人情報、知財、人権、監査、解除、再委託、年次認証、研修、更新DD、重大事象通知、終了時移行計画を整えます。

Section 10

現地パートナーの選定基準は契約後モニタリングで維持します

契約後の変化を、更新、研修、監査、支払停止、解除判断につなげます。

現地パートナーの選定基準は、契約締結後に初めて真価を問われます。モニタリング結果を契約更新、報酬支払、販売目標、契約解除判断に結び付けます。監査で問題が見つかっても、是正要求、期限、再監査、支払保留、解除の仕組みがなければ実効性は下がります。

次の表は、契約開始から終了までの継続管理です。何を表しているかというと、頻度ごとに研修、報告、年次確認、現地監査、重大事象対応、終了処理を組み込む方法です。読者にとって重要なのは、モニタリングを形式的な年次確認にせず、支払・更新・解除へ連動させることです。各行から、自社の契約管理表に入れるべき予定を読み取ります。

頻度実施事項
契約開始時コンプライアンス研修、行動規範配布、請求・報告様式の確認を行います。
月次・四半期売上、顧客接触、在庫、苦情、請求、支払、贈答接待、下請利用を確認します。
年次実質的支配者確認、制裁チェック、反贈収賄認証、契約遵守確認、リスク再評価を行います。
高リスク案件現地監査、帳簿監査、インタビュー、第三者調査、研修再実施を行います。
重大事象時支払停止、調査、証拠保全、外部弁護士起用、当局対応、契約解除判断を行います。
契約終了時データ削除、資料返還、在庫処理、顧客通知、知財使用停止、未払精算を行います。
Section 11

現地パートナーの選定基準でよくある失敗を防ぎます

営業先行、曖昧な役務、再委託、データ管理不能、解除困難を予防します。

よくある失敗は、営業部門だけで候補者を決め、法務には契約書レビューだけを依頼することです。この場合、実質的支配者、許認可、公務員接点、報酬相当性、制裁、個人情報、知財、人権の確認が後回しになります。予防策として、候補者推薦時点で法務・コンプライアンスの一次審査を義務付けます。

契約書があっても、「市場開拓支援」「関係構築」「プロジェクト推進」など抽象的な役務内容で高額コミッションを支払うと、対価の説明が難しくなります。成果物、活動記録、会議記録、訪問先、報告頻度、承認手続を契約に書き込みます。

契約後にサブエージェントが現れる失敗もあります。契約相手は問題がなくても、実際には別の紹介者、親族会社、政治関係者、通関業者、コンサルタントが動くことがあります。再委託・サブエージェントを事前承認制にし、同等のDDと契約条項を下位委託先にも適用します。

個人情報・営業秘密を委託先に渡した後で管理不能になる失敗では、アクセス制御、再委託、越境移転、削除証明を確認していないことが多いです。契約前にデータの流れを作成し、個人情報・営業秘密・技術情報のアクセス範囲、保管国、再委託先、削除方法を確認します。

解除できない契約を結ぶ失敗では、現地法上の代理店・販売店保護、解除補償、独占権、長期更新、在庫買戻し、顧客引継ぎ制限が問題になります。現地法の確認を得て、契約期間、更新、解除事由、違反時解除、補償、在庫、顧客、データ、知財の処理を明確にします。

次の一覧は、企業規模ごとの実装方法です。何を表しているかというと、中小企業、上場企業・大企業、スタートアップで、同じ選定基準をどの粒度で制度化するかの違いです。読者にとって重要なのは、専門部署の有無にかかわらず、最低限の記録、契約、承認、再確認を残すことです。各区分から、自社に合う導入単位を読み取ります。

SME

中小企業

候補者情報シートを作り、実質的支配者、制裁、許認可、役務内容、報酬、契約条項を必須確認にします。契約書なし、現金払い、第三国口座払い、監査拒否は原則禁止にします。

Enterprise

上場企業・大企業

第三者リスク管理規程、リスク分類、契約管理システム、制裁スクリーニング、内部監査、教育、通報制度を整備し、例外承認を経営会議や委員会に集約します。

Startup

スタートアップ

最初から契約書、DD記録、承認記録を残します。商標・ドメイン・顧客データを相手に握らせず、投資家DDに耐える第三者管理を意識します。

社内規程には、対象となる第三者の範囲、リスク分類の基準、必須確認事項、高リスク案件の定義、DDの実施者と承認者、使用する外部データベース・調査会社・専門家、レッドフラッグ発見時の対応、例外承認の方法、契約必須条項、契約後のモニタリング、更新・再審査、記録保存期間、内部監査、違反時の是正・解除・報告を含めます。

規程は作成だけで機能しません。営業担当者が使える質問票、法務が使える契約条項集、コンプライアンス担当が使えるリスク分類表、経営陣が使える承認メモ、内部監査が使える検証手順に分解します。

結論現地パートナーの選定基準は、契約前の審査だけではなく企業統治です。外部にいる相手が、自社のブランド、資金、顧客、技術、データ、行政接点、サプライチェーン、社会的信用に影響するため、合理的な基準、リスクに応じた調査、発見事項への対応、継続的な監視を記録します。
FAQ

現地パートナーの選定基準に関するFAQ

一般的な制度・実務の考え方として、判断が分かれやすい点を整理します。

紹介者経由の候補者ならDDを簡略化できますか

一般的には、紹介者経由であることは評価開始のきっかけにとどまり、DDを省く根拠にはなりにくいとされています。ただし、取引規模、国・地域、役割、公務員接点、情報アクセス、報酬形態によって調査深度は変わる可能性があります。具体的な対応は、候補者情報と取引条件を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

実質的支配者を開示しない候補者は必ず不採用ですか

一般的には、実質的支配者の開示拒否は重要なレッドフラッグとされています。ただし、現地法、上場会社か否か、金融機関や公証人による確認資料の有無、代替的な証明方法によって評価が変わる可能性があります。具体的な採否や追加調査の範囲は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

ISO認証があれば反贈収賄や品質リスクは十分ですか

一般的には、ISO認証は参考要素になり得ますが、それだけで安全と判断することは慎重に扱われます。認証範囲、審査機関、実際の運用、問題発生時の対応、対象取引との関係によって結論が変わる可能性があります。具体的な評価は、認証資料、監査結果、契約条項を確認したうえで専門家へ相談する必要があります。

小規模な海外取引でも契約条項や監査権は必要ですか

一般的には、取引規模が小さくても、公務員接点、個人情報、営業秘密、制裁地域、再委託、成功報酬がある場合は契約条項や監査権の重要性が高まるとされています。ただし、取引内容や相手方の役割によって必要な条項は変わる可能性があります。具体的には、契約類型とリスクを整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Reference

現地パートナーの選定基準の参考資料

国際機関・海外当局の資料

  • OECD, OECD Due Diligence Guidance for Responsible Business Conduct
  • OECD, OECD Guidelines for Multinational Enterprises on Responsible Business Conduct
  • United Nations OHCHR, Guiding Principles on Business and Human Rights
  • U.S. Department of Justice, FCPA Resource Guide
  • U.S. Department of Justice, Evaluation of Corporate Compliance Programs
  • UK Ministry of Justice, Bribery Act 2010 guidance
  • World Bank Group, Integrity Compliance Guidelines
  • FATF, Guidance on Beneficial Ownership of Legal Persons
  • U.S. Department of the Treasury, OFAC, Sanctions List Search
  • European Commission, Guidance on due diligence
  • European Data Protection Board, International data transfers

日本の公的資料

  • 経済産業省「外国公務員贈賄防止指針について」
  • 個人情報保護委員会「法令・ガイドライン等」
  • 公正取引委員会「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」
  • 公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」
  • JETRO「日本企業がタイ企業をパートナーとしてビジネスを始める際の留意点」

国際規格

  • ISO 37001 Anti-bribery management systems
  • ISO 37301 Compliance management systems